JP4428453B2 - 気泡ポンプ型熱輸送機器 - Google Patents

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Description

本発明は熱輸送機器に関するものであり、特に外部動力を必要としない気泡ポンプを利用した気泡ポンプ型熱輸送機器に関するものである。
従来、外部動力を用いない熱輸送機器として、熱サイフォン(重力利用ヒートパイプ)が使用されていた。しかし、熱サイフォンは熱輸送方向が制限され、特に上部から下方への熱輸送が困難であった。このような背景のもと、新しい熱輸送機器として気泡ポンプを利用した熱輸送機器が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。この熱輸送機器は、特許文献1の図1に示されるように、高温度に昇温した熱交換用循環溶液及び熱交換用循環溶液から相変化した高温度の蒸気を収容する熱交換循環溶液収納容器を備えている。また、この熱交換循環溶液収納容器には、溶液送出口と気液二相流体送入口とが設けられており、上記溶液送出口と上記気液二相流体送入口の間には循環溶液輸送パイプが連接している。上記循環溶液輸送パイプは、上記溶液送出口に接続する溶液送出パイプと、熱交換循環溶液収納容器内を貫通する容器内パイプと、上記気液二相流体送入口に接続する気液二相流体送入パイプとを含み、上記溶液送出パイプには顕熱放出熱交換器が設けられ、上記気液二相流体送入パイプには加熱熱交換器が設けられている。
特開2002−122392号公報(第3−4頁、図1、図2)
このような構成の従来の熱輸送機器は、熱交換用循環溶液の気液相変化により生じる循環溶液輸送パイプ内の循環溶液の密度差を利用して、高熱源から低熱源へ熱を輸送するものであり、外部動力を用いず任意の方向に熱輸送ができるものであった。
しかしながら、上記従来の熱輸送機器においては、最大熱輸送量が小さく、熱抵抗が大きい(熱特性が悪い)という問題があった。また、小さな温度差における熱輸送が難しいという問題があった。
さらに、熱負荷が小さい場合においては、循環溶液輸送パイプ中を循環する熱交換用循環溶液の循環流量の脈動が生じ、振動が生じるという問題があった。
本発明は上記のような問題が生じる原因を解明し、熱抵抗が小さく、熱輸送量の大きな気泡ポンプ型の熱輸送機器を提供することを目的とする。また、循環溶液の循環流量の脈動が生じにくい信頼性の高い気泡ポンプ型の熱輸送機器を提供することを目的とする。
本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器は、交換用循環溶液と上記循環溶液の蒸気とが収容された熱交換循環溶液収納容器、この収納容器内の上記熱交換用循環溶液を上記収納容器外に送出する溶液送出口、高温の熱交換用循環溶液と上記循環溶液の蒸気泡とからなる気液二相流体を上記収納容器に送入する気液二相流体送入口、並びに上記溶液送出口と連接すると共に、顕熱放出熱交換器が設けられる第1輸送路と、内部の熱交換用循環溶液と上記収納容器内の熱交換用循環溶液、または内部の熱交換用循環溶液と上記収納容器内の熱交換用循環溶液および上記収納容器内の熱交換用循環溶液の蒸気とが熱交換する第2輸送路と、上記気液二相流体送入口と連接すると共に、加熱熱交換器が設けられる第3輸送路とを有し、上記第1輸送路ないし上記第3輸送路を連接した循環溶液輸送路を備え、上記熱交換循環溶液収納容器の下部に上記気液二相流体送入口が設けられ、上記熱交換循環溶液収納容器の下部の上記気液二相流体送入口の両側に上記溶液送出口が設けられ、上記第1輸送路は、上記気液二相流体送入口の両側に設けられた両方の溶液送出口に連接し、途中で合流して上記第2輸送路に接続されているものである。
この発明は、交換用循環溶液と上記循環溶液の蒸気とが収容された熱交換循環溶液収納容器、この収納容器内の上記熱交換用循環溶液を上記収納容器外に送出する溶液送出口、高温の熱交換用循環溶液と上記循環溶液の蒸気泡とからなる気液二相流体を上記収納容器に送入する気液二相流体送入口、並びに上記溶液送出口と連接すると共に、顕熱放出熱交換器が設けられる第1輸送路と、内部の熱交換用循環溶液と上記収納容器内の熱交換用循環溶液、または内部の熱交換用循環溶液と上記収納容器内の熱交換用循環溶液および上記収納容器内の熱交換用循環溶液の蒸気とが熱交換する第2輸送路と、上記気液二相流体送入口と連接すると共に、加熱熱交換器が設けられる第3輸送路とを有し、上記第1輸送路ないし上記第3輸送路を連接した循環溶液輸送路を備え、上記熱交換循環溶液収納容器の下部に上記気液二相流体送入口が設けられ、上記熱交換循環溶液収納容器の下部の上記気液二相流体送入口の両側に上記溶液送出口が設けられ、上記第1輸送路は、上記気液二相流体送入口の両側に設けられた両方の溶液送出口に連接し、途中で合流して上記第2輸送路に接続されているので、左右、前後への傾斜の影響、および体積力の方向の影響を受け難くなる。
実施の形態1.
前述の従来の熱輸送機器は機器の最大熱輸送量が小さく、熱抵抗が大きい等の問題があるが、本発明ではこのような問題が生じる原因が容器内の圧力増大によるものであることを解明した。
即ち、熱負荷が増加すると、加熱熱交換器で生じる蒸気泡が大量に熱交換循環溶液収納容器へ流入するようになり、容器内パイプ外壁での熱交換能力が小さいため該蒸気泡が凝縮しきれなくなり、機器内圧力が増大する。圧力増大により、機器内飽和温度は上昇し、容器内パイプの内外温度差が大きくなり、加熱熱交換器と顕熱放出熱交換器との間の温度差が増大するため、機器の熱抵抗は大幅に悪く(大きく)なる。また、この容器内パイプの内外温度差が大きくなければ熱を輸送することができず、小さな温度差における熱輸送が難しい。さらに、容器内の圧力増大によって引き起こされる熱輸送限界のために最大熱輸送量が小さくなる。即ち、容器内の圧力増大によって飽和温度が上昇するが、飽和温度の増加と共に上記飽和温度に対する飽和圧力の上昇率が大きくなるため、熱負荷の増加につれて急激に機器内圧力が増大する。一方、従来の気泡ポンプ型熱輸送機器は循環溶液の密度差に起因する浮力を利用して熱輸送するものであるが、機器内圧力の増加に伴い、発生する蒸気泡の密度が増大するため蒸気泡の体積が小さくなり大きな浮力を得ることができなくなる。このため液の循環流量が小さくなり、容器内パイプを介した熱交換能力が低下する。その結果、飽和温度が上昇し、さらに機器内圧力が増大する。これら一連の悪循環による機器内圧力増大によって引き起こされる熱輸送限界のために最大熱輸送量が小さくなる。また、さらなる機器内圧力増大により機器の破壊を招くこととなる。
本実施の形態の気泡ポンプ型熱輸送機器は、上記のような悪循環を生じる圧力へできるだけ到達しないように構成を工夫した点に特徴があり、機器内圧力の上昇が抑制できる構成とするとともに、容器内パイプを介した熱交換能力を向上させて熱負荷に対する圧力上昇率を小さくしており、これにより最大熱輸送量を大きくすることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態1を図を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態1による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図1において、熱交換循環溶液収納容器4は高温度に昇温した熱交換用循環溶液1と該溶液1が相変化して潜熱を保有する高温度の蒸気12とを収容する。また、この熱交換循環溶液収納容器4内には隔壁3が設けられており、隔壁3により、容器4内は第1の空間4aと第2の空間4bとに空間分割されている。第1の空間4aと第2の空間4bとは開孔2または隙間(連通孔)で連通しており、熱交換用循環溶液1はこの開孔2を通じ両空間4a、4bに跨って収容されている。即ち、第1の空間4aと第2の空間4bとは、熱交換用循環溶液1が満たされている部分に設けられた開孔2で連通しており、高温度の蒸気12が収容されている空間(蒸気空間)では連通していない。また、熱交換循環溶液収納容器4には容器4内の熱交換循環溶液1を送出する溶液送出口5と気液二相流体送入口8とが設けられている。二相流体送入口8からは、高温に昇温された熱交換用循環溶液1と高温度に昇温されて沸騰した熱交換用循環溶液1の蒸気泡13との気液二相流体が流入する。二相流体送入口8より流入する上記気液二相流体は第1の空間4a内にのみ流入し、第2の空間4b内には流入しない構成となっている。また、前述のように、第1の空間4aと第2の空間4bとは、開孔2により連通し、両空間4a、4bを熱交換用循環溶液1が自由に移動できるように構成されているため、第1の空間4a内に気液二相流体が流入し、各空間内の圧力に圧力差が生じたとき、上記圧力差により第1の空間4aの気液界面位置と第2の空間4bの気液界面位置とが容易に変化する構造になっている。
熱交換用循環溶液1は、熱特性が高く(例えば熱伝導率が高い、比熱が大きい)、流動特性が良く(例えば粘性係数が小さい)、気体に対する液体の密度比が大きな流体が好ましく、蒸留水、アルコール、液体金属などの単一成分よりなる液体、不凍液、アルコール水溶液等の水溶液、あるいは磁性流体などの混合液体であって、気液の相変化を生ずる流体が使用される。蒸気12は、該熱交換用循環溶液1またはその一部が気化したものであるが、空気などの不凝縮ガスを混入させても良い。
熱交換循環溶液収納容器4に設けられた上記溶液送出口5と上記気液二相流体送入口8との間には循環溶液輸送パイプAが連接しており、熱交換用循環溶液1が循環する循環溶液輸送路を構成している。
循環溶液輸送パイプAは、上記溶液送出口5に接続する溶液送出パイプ(第1輸送路)6と、熱交換循環溶液収納容器4の第1の空間4a内を通過する容器内パイプ(第2輸送路)7と、上記気液二相流体送入口8に接続する気液二相流体送入パイプ(第3輸送路)9とを含み、熱交換循環溶液収納容器4に収容された熱交換用循環溶液1は、該容器4を出て、溶液送出パイプ6から容器内パイプ7を経、さらに気液二相流体送入パイプ9を経て該容器4に戻る。
循環溶液輸送パイプAのうち、上記溶液送出パイプ6には顕熱放出熱交換器10が設けられ、溶液送出パイプ6内を循環する循環溶液はパイプ壁より熱を放出する。また、上記気液二相流体送入パイプ9には加熱熱交換器11が設けられ、溶液送出パイプ6内を循環する循環溶液はパイプ壁より熱を吸熱し加熱される。
加熱熱交換器11は、電子機器等の発熱体の放熱部、または上記発熱体から熱を輸送する機器の放熱部であり、顕熱放出熱交換器10は、ヒートパイプ等の熱輸送機器の受熱部、または自然・強制対流熱伝達、輻射等を利用する放熱壁である。また、加熱熱交換器11が設けられる気液二相流体送入パイプ9、および顕熱放出熱交換器10が設けられる溶液送出パイプ6を、直接任意空間(空気中、水中、土壌など)に剥き出しに設置し、熱伝導、自然・強制対流熱伝達、輻射等を利用して加熱もしくは放熱しても良い。さらに、フィン等を放熱壁または該剥き出し部外表面に設けても良い。また、顕熱放出熱交換器10の冷却手法として走行風を利用しても良い。
また、加熱熱交換器11、および顕熱放出熱交換器10は流路沿いに複数設置しても良い。
循環溶液輸送パイプAは、熱交換用循環溶液1を移送する円管、楕円管、矩形管、コルゲート管(フレキシブルパイプ)等からなる通路である。また、循環溶液輸送パイプAのうち、加熱熱交換器11が設けられる気液二相流体送入パイプ9、顕熱放出熱交換器10が設けられる溶液送出パイプ6、および容器内パイプ7の各パイプ壁面は熱交換を行う伝熱壁の役割を有し、各パイプの内部に伝熱促進用の乱流促進体、または旋回流促進体(例えば、ねじりテープ)、またはフィンなどを設けても良く、また単位体積当たりの伝熱面積を増大させるためにらせん管または蛇行管としても良い。さらに、容器内パイプ7は、容器内パイプ7内の熱交換用循環溶液1と、容器内パイプ7外の熱交換用循環溶液1および蒸気12との熱交換を行うものであり、容器内パイプ7の外表面にフィン等を設けても良い。
次に、本実施の形態1による熱輸送機器の動作を説明する。熱交換循環溶液収納容器4内に収容された高温度の熱を保有する熱交換用循環溶液1は、循環溶液輸送パイプAを流動しながら機器内を循環するが、高温度の上記熱交換用循環溶液1は、循環溶液輸送パイプAの溶液送出パイプ6を通過する際に、顕熱放出熱交換器10で顕熱を放出し、熱交換して低温度に冷却される。冷却後、容器内パイプ7を通過する際に、第1の空間4a内に収容された高温の熱交換用循環溶液1、または高温の熱交換用循環溶液1と上記循環溶液の蒸気12で予熱されて昇温する。昇温された熱交換用循環溶液1は、気液二相流体送入パイプ9に設けられた加熱熱交換器11によってさらに高温度に昇温されて沸騰し、蒸気泡13を発生させながら熱交換循環溶液収納容器4に戻る。熱交換循環溶液収納容器4に戻った熱交換用循環溶液1は、再度、循環溶液輸送パイプAを流動し、冷却、予熱、沸騰温度への昇温を繰り返す。
本実施の形態の熱輸送機器においては、熱交換用循環溶液1の相変化により生じる循環溶液輸送パイプA内の密度差(密度差により生じる浮力)を利用して、機器内を熱交換用循環溶液1が循環するようにしている。即ち、加熱熱交換器11から気液二相流体送入口8までの気液二相流体送入パイプ9内の気液二相流体の見かけの密度と、該区間高さと同じ高さ区間における循環溶液輸送パイプA内の熱交換用循環溶液1の密度との密度差を利用して熱交換用循環溶液1を循環させている。また、この循環を繰り返すことにより、加熱熱交換器11から伝達された高温度の熱を顕熱放出熱交換器10へ輸送し、顕熱放出熱交換器10から熱を必要とする別の機器または低熱源に輸送するようにしている。
また、本実施の形態の熱輸送機器においては、熱輸送の際、加熱熱交換器11から伝えられる熱量(熱負荷)の増加と共に、熱交換循環溶液収納容器4に流入する蒸気泡13の量が増大し、第1の空間4a内の蒸気12の量が増大するが、第1の空間4aに連通する第2の空間4bにより気液界面が自己調整され、第1の空間4a内の圧力上昇を抑制することができる。また、気液界面位置が変化することにより、容器内の蒸気と熱交換する部分が増え、凝縮能力が高くなり、機器内圧力の上昇を抑制することができる。これにより機器内飽和温度の上昇を抑えることができるので、加熱熱交換器11と顕熱放出熱交換器10との間の温度差が大きくならず、小さな温度差における熱輸送も容易となる。さらに、第1の空間4a内の圧力上昇が抑制できるので最大熱輸送量の低下が抑制できる。また、容器内の圧力上昇が抑制できるため、熱交換循環溶液収納容器および各パイプの外壁を厚くする必要が無く、機器を軽量化することが可能となる。
また、熱量(熱負荷)の増加と共に、第1の空間4aおよび第2の空間4bの気液界面が自己調整され、図2に示すように、容器内パイプ7が収容された第1の空間4a内の気液界面は低下し、逆に容器内パイプ7が収容されていない第2の空間4b内の気液界面は高くなる。これにより容器内パイプ7が蒸気12と接触する面積が増大し、つまりより高熱伝達である凝縮熱伝達により熱交換が行われる面積が増大し、容器パイプ7での熱交換に伴う熱抵抗が小さくなる。
なお、従来の構成の熱輸送機器において、熱負荷が小さい場合、循環溶液の循環流量の脈動が生じるが、これは従来の熱輸送機器においては、常に容器内パイプが熱交換溶液収納容器内の気液界面より上方を通過する構成であることによる。即ち、気液界面より上方においては熱交換溶液収納容器内圧力より容器内パイプ内の圧力が低いため、容器内パイプ中の熱交換用循環溶液が沸騰しやすく、発生した蒸気泡が循環溶液輸送パイプ中の熱交換用循環溶液の循環を阻害し、さらには循環流量の脈動が生じるためである。また、容器内パイプが蒸気と接している面積が大きいため、熱負荷が小さく、循環溶液の流れが遅いと、該容器内パイプでの熱交換が良過ぎて該容器内パイプ中で沸騰が生じ、発生した蒸気泡が循環溶液輸送パイプ中の熱交換用循環溶液の循環を阻害し、さらには循環流量の脈動が生じるためである。
本実施の形態では、図1に示すように、熱輸送の初期状態において、全部またはほとんどの容器内パイプ7が熱交換用循環溶液1と接し、蒸気12と接する部分が少ないように構成されている。即ち、容器内パイプ(第2輸送路)7は、少なくとも熱輸送の初期状態において、第1の空間内の気液界面位置より下、または容器内パイプ(第2輸送路)7の頂部が上記気液界面位置と近接するように設置されている。これにより熱負荷が小さい場合には上記状態が保たれるため、熱交換循環溶液収納容器4内の圧力と容器内パイプ7内の圧力差が小さく、また容器内パイプ7を介した熱交換能力が小さいため、容器内パイプ7内で沸騰し難く、循環流量の脈動が起こり難い。熱負荷が大きい場合は、熱輸送が進むにつれて、図2に示すように容器内パイプ7は蒸気12と接し、熱交換能力が大きくなるが、循環溶液の流れが早く、循環溶液の温度は比較的低い温度であるため、容器内パイプ7を介し蒸気12と熱交換しても沸騰し難い。
上記実施の形態において、気液二相流体送入パイプ9は、図3に示すように、第1の空間4a内に突き出しても良い。この時、パイプ9の口、即ち、気液二相流体送入口8は、常に第1の空間4a内の気液界面より下方、即ち熱交換用循環溶液1中にあるべきである。熱交換循環溶液収納容器4を縦長にし、気液二相流体送入パイプ9を長くするほど密度差が大きくなり、熱交換用循環溶液1を循環するための大きな駆動力が得られ、熱輸送能力が向上する。ただし、気液二相流体送入パイプ9が長すぎると、圧力損失が大きくなり過ぎるので、その長さはこの点を考慮して最適値に設計する必要がある。
また、溶液送出口5は高温度の熱交換用循環溶液1を送出するためのものであり、熱交換用循環溶液1と共に蒸気泡13が流入すると、熱交換用循環溶液1の循環方向と逆向きに浮力が働き、熱交換用循環溶液1の循環流量を減少させるので、蒸気泡13流入防止のために溶液送出口5に、蒸気泡と同じ又は蒸気泡より小さい径の金網またはじゃま板を設置すると良い。
また、上記実施の形態において、熱交換循環溶液収納容器4、顕熱放出熱交換器10、および加熱熱交換器11の位置関係は、加熱熱交換器11が熱交換循環溶液収納容器4より下方にあればよく、これらが本実施の形態とは異なる位置関係にあっても良い。例えば顕熱放出熱交換器10が加熱熱交換器11および熱交換循環溶液収納容器4より上方にあっても良い。
また、加熱熱交換器11と熱交換循環溶液収納容器4の二相流体送入口8との間の距離が十分に長い場合は、この部分のパイプ9a内の熱交換循環溶液1にはたらく浮力により熱交換循環溶液1が循環することができるため、加熱熱交換器11を水平姿勢に設けることができる。図4は加熱熱交換器11を水平にした気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。このようにすることにより、水平面からの熱輸送が可能になる。
なお、この場合、加熱熱交換器11は出口側が水平より少し上に傾いているほうがより好ましい。
なお、図4では、加熱熱交換器11の設置部分から沸騰し始めているが、加熱熱交換器11の設置部分では沸騰せず、パイプ9a内で沸騰することがある。このような沸騰はフラッシュ蒸発と呼ばれるもので、下方では水頭圧が大きく高圧であるため沸騰しないが、上方になるほど水頭圧が小さくなり、より低圧(液体の飽和圧力以下)になり沸騰し始めるためである。このような状態であっても、パイプ9a内の熱交換循環溶液1にはたらく浮力により熱交換循環溶液1が循環することができるため、加熱熱交換器11を水平姿勢に設けることができる。
また、上記実施の形態において、第1の空間4a内の蒸気空間は、周囲空間(外気)と連通させない方がよいが、第2の空間4b内の蒸気空間は、周囲空間と連通してもよい。
また、隔壁3は第1の空間4aと第2の空間4bとの間の熱交換を行う役割を有しており、隔壁3両面にフィン等を取付けても良い。
以上のように本実施の形態による熱輸送機器においては、外部動力を用いることなく、熱交換循環溶液の密度差を利用して機器内を熱交換循環溶液が連続的に循環するようにしたので、あらゆる方向(水平、下部から上方、上方から下方など)へ大量の熱を輸送することができる。また、長距離輸送も可能となる。また、可動部を有するポンプ等を有さないために、耐久性・信頼性に富み、コンパクトで軽量である。
さらに、熱交換循環溶液収納容器内に開孔を有する隔壁を設置して容器内を分割し、機器内の圧力上昇を自動的に抑制できるようにしているので、熱抵抗が小さく、熱輸送能力が向上する。また、加熱熱交換器と顕熱放出熱交換器との間の温度差が小さい場合でも大量の熱を輸送することができる。さらに、熱負荷に応じて気液界面が自己調整されるので、低熱負荷から高熱負荷まで安定して熱を輸送することができる。
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図5において、熱交換循環溶液収納容器4は、実施の形態1と同様、隔壁3により第1の空間4aと第2の空間4bとに分割されているが、本実施の形態2では外側の空間が第1の空間4aであり、容器内パイプ7は内側の第2の空間4bの周囲を囲んでらせん状に第1の空間4a内に設けられている。このような構成としても上記実施の形態1と同様の効果がある。
また、図6は本発明の実施の形態2による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図6において、熱交換循環溶液収納容器4は隔壁3により第1の空間4aと第2の空間4bとに分割され、図5のものと同様、外側の空間が第1の空間4aであるが、容器内パイプ7は、第1の空間4aを構成する容器外壁に隣接して第1の空間4aを囲み、らせん状に設けられている。このような構成としても容器内パイプ7内を循環する循環溶液1は、第1の空間4a内の循環溶液1、または第1の空間4a内の循環溶液1および上記溶液の蒸気12と熱交換することができ、図1および図5に示すものと同様の効果がある。
また、図5および図6に示すものにおいても、熱輸送の初期状態において、全部またはほとんどの容器内パイプ7が第1の空間4a内の熱交換用循環溶液1とのみ熱交換するように、容器内の気液二相界面を調整することにより、容器内パイプ7内で沸騰し難く、循環流量の脈動が起こり難くなる。
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。また、図8は本発明の実施の形態3による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図7、8において、熱交換循環溶液収納容器4は隔壁により内部空間を分割することなく、該容器4外に該容器4と連結された熱交換循環溶液収納補助容器14を設けている。この場合、熱交換循環溶液収納容器4が実施の形態1の第1の空間4aに、熱交換循環溶液収納補助容器14が実施の形態1の第2の空間4bに対応した機能を果たす。
なお、熱交換循環溶液収納補助容器14の設置場所は、容器4と加熱熱交換器11との間の気液二相流体送入パイプ9以外の部分で、容器4の下部と連通するように設置すればよく、図7、図8の構成に限らない。
このようにしても、実施の形態1と同様に、内圧上昇ひいては系内飽和温度の上昇を抑制することができ、熱抵抗を小さくすることができる。また、熱交換循環溶液収納容器4内に隔壁3を設置する煩わしさが解消され、容易に製作することが可能となる。
また、熱交換循環溶液収納補助容器14内または該容器14外壁にヒータなどの加熱器を設置し、該容器14内温度を制御することにより、熱交換循環溶液収納容器4内圧力を調節することができ、加熱熱交換器11内の沸騰温度を制御することができ、加熱熱交換器11の温度を調節することができる。
なお、この場合は容器14内に空気等の不凝縮性ガスを封入し、不凝縮性ガスの膨張、収縮を利用して容器4内の圧力を調整すると良い場合がある。また,該容器14外壁に加熱器を設置した場合、該容器14内壁に金網などの多孔質物質を内張りすると、常に該内壁が熱交換循環溶液で濡らされ、該容器14壁が乾くことによる温度上昇を防止することができる。
実施の形態4.
図9は本発明の実施の形態4による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図9において、熱交換循環溶液収納容器4は、上記各実施の形態のように開孔2を有する隔壁3により分割されてはおらず、容器4の上部に設けられた開孔15により容器4外の周囲空間と連通するように構成されている。
このようにすることにより、容器4内と周囲空間とが連通するため、機器内の圧力は常に周囲圧力であり、機器内圧力が上昇することが無い。また、機器内圧力が上昇しないので、機器内飽和温度は常に周囲圧力下の飽和温度となり、飽和温度の上昇を抑えることができる。本実施の形態では、容器内の圧力上昇が抑制できるため、耐圧設計制限を緩和することができ、機器を構成する壁の厚さを薄くすることができ、軽量で低コストになる。また、容器4は液漏れが無いように製作すればよく、気密性は必要でなくなり、製作が容易となる。さらに、真空容器とする必要がないので、液封入作業が容易となる。ただし、開孔15からの埃の侵入、あるいは開孔15からの蒸気漏れによる液不足に対する対応が必要であり、定期的なメンテナンスが必要である。
なお、本実施の形態においては、前述のように、開孔15により容器4内と周囲空間とが連通するため、機器内の圧力は常に一定であり、熱負荷が増加しても容器内の気液二相界面はほとんど変化しない。このような構成の場合、上記各実施の形態のように、熱輸送の初期状態において容器内パイプ7のほとんどが熱交換用循環溶液1と接し、蒸気12と接する部分が少ないと、熱負荷が増加しても気液二相界面がほとんど変化しないため容器内における熱交換が十分に行われない。本実施の形態においては、容器内パイプ7は容器4内を上から下に貫通するように構成されており、容器内パイプ7は常に蒸気12と熱交換用循環溶液1と接するように構成している。これにより、高熱負荷においても、容器内での熱交換が十分に行われるようになる。
実施の形態5.
図10は本発明の実施の形態5による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図10に示すように、熱交換循環溶液収納容器4に、循環溶液輸送パイプAが2本設置されている。循環溶液輸送パイプAを2本以上設置することにより、伝熱面積が増大し、熱抵抗が小さくなる。また、分散する高熱源から、または分散する低熱源への熱輸送が容易になる。また、熱交換循環溶液収納容器4を複数の循環溶液輸送パイプAに対し共有化できることから、複数の熱輸送機器を設ける場合よりもコンパクトになる。
実施の形態6.
図11は本発明の実施の形態6による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図11に示すように、気液二相流体送入パイプ9の加熱熱交換器11が設けられた部分、溶液送出パイプ6の顕熱放出熱交換器10が設けられた部分、および容器内パイプ7を、それぞれ分配容器16aと集合容器16bとを介して複数に分割された循環溶液輸送パイプとする。
このようにすることにより、各部の伝熱面積が増大し、熱抵抗および摩擦圧力損失が小さくなる。また平面、曲面および無形の流体中からの熱回収および放熱が容易になる。さらに、分配容器16aと集合容器16bとの間の、上記複数に分割された循環溶液輸送パイプを細管とすることにより、熱伝達を向上させることができ、さらに伝熱特性を向上させることができる。
実施の形態7.
図12は本発明の実施の形態7による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図12に示すように、循環溶液輸送パイプAが、1本の気液二相流体送入パイプ9と、1本の溶液送出パイプ6と、2本の容器内パイプ7,7aと、2本の容器内パイプ7,7a間に設けられた1本の第1容器外パイプ(第4輸送路)6aとで構成されている。容器外パイプ6aには、溶液送出パイプ6に設けたものと同様の顕熱放出熱交換器10が設けられている。
このようにすることにより、容器4内および顕熱放出熱交換器10部分の伝熱面積が増大し、熱抵抗が小さくなる。
また、2本以上の第1容器外パイプ6aと3本以上の容器内パイプ7,7aにより循環溶液輸送パイプAをさらに並列流路にすることにより、循環溶液輸送パイプAを一巡する間の摩擦圧力損失を小さくすることができ、より熱交換用循環溶液1の循環流量を増大させることができる(顕熱輸送量が増大する)。結果として、全体の熱抵抗が小さくなり、加熱熱交換器11と顕熱放出熱交換器10との間の温度差が小さくても大量の熱を輸送することができる。さらに固体平面および曲面や無形の流体中などからの熱回収あるいは放熱が容易になる。
なお、上記実施の形態において、溶液送出パイプ6及び容器外パイプ6aに設けられる顕熱放出熱交換器10は、それぞれ異なる顕熱放出熱交換器10、10aが設けられても良い。
本実施の形態において、加熱熱交換器11に最も近い容器内パイプ7以外の容器内パイプ7aが、熱交換循環収納容器4内を通過せず、この容器内パイプ7aに別の加熱熱交換器11aを設けても良い。即ち、図13に示すように、容器内パイプ(第2輸送路)7と溶液送出パイプ(第1輸送路)6との間に、加熱熱交換器11aと顕熱放出熱交換器10aとが設けられた第2容器外パイプ(第5輸送路)7bを備えるようにしてもよい。また、第2容器外パイプ(第5輸送路)7bを複数設けても良い。
このようにすることにより、1つの熱交換溶液収納容器4で、点在する熱源からの熱回収および熱輸送を容易に行うことができる。またコンパクトになる。
さらに、加熱熱交換器11を制御することにより(例えば、加熱熱交換器11としてヒータを取付け、このヒータへ供給する電力を調節する)、熱交換用循環溶液1の循環流量を調節することができ、他の加熱熱交換器11aから熱を輸送することができると共に、加熱熱交換器11aの温度を調節することができる。
実施の形態8.
図14は本発明の実施の形態8による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図14(a)は図14(c)のA−A線断面、図14(b)は図14(c)のB−B線断面である。
本実施の形態においては、熱交換循環溶液収納容器4は高温度に昇温した熱交換用循環溶液1および蒸気12を収容する。また、熱交換循環溶液収納容器4には容器4内の熱交換循環溶液1を送出する溶液送出口5と熱交換用循環溶液1を容器4内に送入する溶液送入口80を備えている。熱交換循環溶液収納容器4に設けられた上記溶液送出口5と上記溶液送入口80との間には循環溶液輸送パイプAが連接しており、熱交換用循環溶液1が循環する循環溶液輸送路を構成している。
循環溶液輸送パイプAは、上記溶液送出口5に接続する溶液送出パイプ(第1輸送路)6と、熱交換循環溶液収納容器4内を通過し、内部の熱交換用循環溶液と容器内の熱交換用循環溶液とが熱交換する容器内パイプ(第2輸送路)7と、上記溶液送入口80に接続する溶液送入パイプ(第3輸送路)90とを含み、熱交換循環溶液収納容器4に収容された熱交換用循環溶液1は、該容器4を出て、溶液送出パイプ6から容器内パイプ7を経、さらに溶液送入パイプ90を経て該容器4に戻る。循環溶液輸送パイプAのうち、上記溶液送出パイプ6には顕熱放出熱交換器10が設けられ、上記溶液送入パイプ90には加熱熱交換器11が設けられる。
加熱熱交換器11が設けられる溶液送入パイプ90は、容器4内に突き出しており、溶液送入口80が容器内の気液界面より下方になるように構成されている。また、溶液送入口80と加熱熱交換器11との間の、容器内に突き出たパイプ90aが、容器内パイプ7と接するように構成されており、容器内パイプ7内の熱交換用循環溶液1とパイプ90a内の熱交換用循環溶液1およびパイプ90a内の熱交換用循環溶液の蒸気泡13とが熱交換する。
なお、溶液送入口80より熱交換循環溶液収納容器4に蒸気泡13が流入することがあるが、容器4内の熱交換循環溶液1または蒸気泡13が容器内パイプ7と接しており、この部分で熱交換することにより、該蒸気泡13は凝縮する。また、溶液送入パイプ90内の蒸気泡13の量が変化することから、予め容器4内には蒸気12が存在する空間ができるように溶液1を封入する必要がある。
また、図14においては、溶液送入パイプ90の加熱熱交換器11から溶液送入口80までの部分は分配容器16aを介して複数に分割された構成となっている。また、容器内パイプ7は、実施の形態6と同様、分配容器16aと集合容器16bとを介して複数に分割された構成となっている。
また、熱交換循環溶液収納容器4は、隔壁3により分割されてはおらず、第1の空間のみで構成されている。
本実施の形態では、加熱熱交換器11により溶液送入パイプ90内の熱交換用循環溶液1は沸騰するが、容器内パイプ7と接するパイプ90a内で、沸騰して生じた蒸気泡13が凝縮し、溶液送入口80からは凝縮された熱交換循環溶液1が容器内に送入される。パイプ90a内の蒸気量は熱負荷の増加と共に増大することから、凝縮する部分の面積および溶液1を攪拌する力が増大し、より効率良く熱交換する。したがって、本実施の形態では、パイプ90a内の蒸気量の変化により、この部分の伝熱特性が変化し、機器内の圧力上昇を自動的に抑制できるようにしているので、熱抵抗が小さく、熱輸送能力が向上する。つまり、実施の形態1同様、熱交換循環溶液収納容器内の熱交換特性が熱負荷の増加と共に増大する。
このようにすることにより、実施の形態1と同様、本実施の形態による熱輸送機器においても、外部動力を用いることなく、熱交換循環溶液の密度差を利用して機器内を熱交換循環溶液が連続的に循環するようになり、あらゆる方向へ大量の熱を輸送することができる。また、長距離輸送も可能となる。また、可動部を有するポンプ等を有さないために、耐久性・信頼性に富み、コンパクトで軽量である。
さらに、パイプ90a内の蒸気量の変化により、この部分の伝熱特性が変化し、機器内の圧力上昇を自動的に抑制できるようにしているので、熱抵抗が小さく、熱輸送能力が向上する。
また、加熱熱交換器と顕熱放出熱交換器との間の温度差が小さい場合でも大量の熱を輸送することができる。
さらに、熱交換循環溶液収納容器内の気液界面以下に容器内パイプ7が設けられていることから、低熱負荷で見られる循環流量の脈動が発生せず、低熱負荷から高熱負荷まで安定して熱を輸送することができる。
なお、加熱熱交換器から直接第2輸送路に熱が伝わると、蒸気発生量が低下し、熱交換循環溶液の循環流量が減少することから、加熱熱交換器と第2輸送路の間には断熱溝を設ける方が良い。
実施の形態9.
図15は本発明の実施の形態9による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図15に示すように、熱交換循環溶液収納容器4の周囲に放熱熱交換器17を設けたものである。
このようにすることにより、加熱熱交換器11から入熱した熱量を放熱熱交換器17および顕熱放出熱交換器10の両方に輸送することができ、放熱能力が向上する。
放熱熱交換器17は、他の熱輸送機器の受熱部であり、また熱交換循環溶液収納容器4外壁を直接周囲流体に剥き出しにし、水冷、自然空冷、強制空冷(走行風利用も含む)、輻射を利用して放熱しても良く、該外壁にフィンを取付けても良い。
このような構成は、主に放熱を目的にしたものであり、放熱量を小さくしたい場合は該外壁を断熱しても良い。例えば、ある時間においては放熱量を大きくする目的で該外壁を剥き出しにし放熱し、別の時間においては顕熱放出熱交換器10へ熱を輸送することを目的とし、該外壁の周囲に断熱用のカバーを設置しても良い。
また、顕熱放出熱交換器10を加熱器として放熱熱交換器17を放熱器として使用すると、下部から上方へも熱を輸送することができ、両方向へ熱を輸送することができる。
実施の形態10.
図16は本発明の実施の形態10による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図16に示すように、ループ収納容器18内に本発明の構成の熱輸送機器本体を内挿している。即ち、ループ収納容器18内に第1の空間4aと第2の空間4bとで構成される熱交換循環溶液収納容器4が収容され、加熱熱交換器11および顕熱放出熱交換器10はループ収納容器18に接して配設されている。また、溶液循環パイプAを構成する容器内パイプ7、気液二相流体送入パイプ9、および溶液送出パイプ6は、それぞれループ収納容器18内に収容され、第1の空間4a内、加熱熱交換器11の設置部分、および顕熱放出熱交換器10の設置部分においてらせん状に配設されている。
このようにすることにより、土壌中または建物の壁の中などに埋設しやすくなる。
また、図17は本発明の実施の形態10による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図17に示す気泡ポンプ型熱輸送機器は、ループ収納容器18と加熱熱交換器11とが接する部分のループ収納容器18内部、およびループ収納容器18と顕熱放出熱交換器10とが接する部分のループ収納容器18内部に、それぞれ仕切り板19を設置し、さらに仕切られた部分の中にそれぞれ熱交換溶液20を適量封入したものである。
このようにすることにより、溶液循環パイプAとループ収納容器18との接触熱抵抗を小さくすることができ、熱輸送特性が向上する。
ループ収納容器18は、土壌、または周囲流体、または受熱部もしくは放熱部と熱交換する役割を有し、該ループ収納容器18内外壁にフィンを取付けても良い。特に、顕熱放出熱交換器10が設置される部分の周りにらせん状のフィンを取付けると、土壌中への埋設がさらに容易になる。
さらに、図18は本発明の実施の形態10による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図18に示す気泡ポンプ型熱輸送機器は、実施の形態8のものを4重管構造として構成したものである。この場合、図18に示すように、不必要な熱交換部には断熱材(空気または真空断熱を含む)20aを設け、熱の交換を小さくする方が良い。
このようにすることにより、より簡易に製作することができ、低コスト化できる。
実施の形態11.
図19は本発明の実施の形態11による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図19に示すように、気液二相流体送入パイプ9の途中路に補助ヒータ21を設けている。
このようにすることにより、加熱熱交換器10と顕熱放出熱交換器11との間の温度差が小さく、加熱熱交換器10内の熱交換用循環溶液1が沸騰しない場合でも、補助ヒータ21に通電し加熱することにより、加熱熱交換器10内で沸騰を生じさせることができる。これにより、熱交換用循環溶液1が溶液循環パイプA内を循環できるようになり、温度差が小さい場合でも、熱を輸送することができる。
なお、補助ヒータ21の位置は、気液二相流体送入パイプ9の内部の溶液が上昇する部分であれば、図19に示すように加熱熱交換器10の下部であってもよいし、加熱熱交換器10の上部であってもよい。
また、補助ヒータ21を設けた部分のパイプ内壁または加熱熱交換器11を設けた部分の内壁に気泡核を設けても良い。気泡核は、流体の流動・攪拌、流体および通路壁の温度変化等によらず、安定して上記内壁面または流体通路中に気体を残留させる役割を有しており、図20(a)に示すようなパイプ内壁面A1上に設けた引っかき傷22、あるいは図20(b)に示すような小さな導管23により流体(熱交換用循環溶液)1の流路と連結された空間(リエントラント型キャビティ)24のことである。図20のような窪みは機械的または化学的加工により形成してもよく、また、金網を内壁に内張りして形成しても良い。あるいは、図21に示すように金属粒子25をパイプ内壁面A1上に焼結、または接合させて気泡核26を形成しても良い。
この構造によれば、低温度で内部圧力が低い場合においても、気泡核内に存在する残留気体が蒸気泡13の発生の起点となり、蒸気泡13を容易に発生させることができ、熱輸送の起動が起こりやすく、また熱特性も向上する。また、パイプ内部の流体と加熱熱交換器部分のパイプ内壁との間の温度差が小さい場合でも沸騰が容易に起こり、熱特性が向上する。
実施の形態12.
図22は本発明の実施の形態12による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。本実施の形態においては、図22に示すように、熱交換循環溶液収納容器4の左右両端に溶液送出口5,5aが設けられており、溶液送出パイプ6はこれら溶液送出口5,5aの両方に連接し、途中で合流して容器内パイプ7に接続されている。
気泡ポンプ型熱輸送機器を車載に搭載した場合、傾斜および重力の影響により、熱交換循環溶液収納容器4内の熱交換用循環溶液1の気液界面が変動して、溶液送出口5が蒸気空間に剥き出しになることがある。その場合、溶液送出パイプ6内に蒸気を引き込むため、熱交換用循環溶液1の循環が悪くなり、熱輸送特性が悪くなってしまう。これに対し、本実施の形態のように、熱交換循環溶液収納容器4に複数の溶液送出口5,5aを設け、溶液送出パイプ6はこれら複数の溶液送出口と連接すると共に、連接部分が合流して容器内パイプ7と連接するように構成することにより、左右、前後への傾斜の影響、および体積力(例えば重力)の方向の影響を受け難くなる。
図23は本発明の実施の形態12による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。図23(b)は図23(a)のB−B線断面である。図23に示すものにおいては、熱交換循環溶液収納容器4は横置きに設置され、その左右両端に溶液送出口5,5aが設けられており、溶液送出パイプ6はこれら溶液送出口5,5aの両方に連接し、途中で合流して容器内パイプ7に接続されている。
なお、本実施の形態において、気液二相流体送入パイプ9の加熱熱交換器11が設けられた部分は分配容器16aを介して複数に分割された循環溶液輸送パイプとしている。また、容器内パイプ7は分配容器16aと集合容器16bとを介して複数に分割された循環溶液輸送パイプとしている。
このように構成しても、図22のものと同様の効果がある。
実施の形態13.
図24〜図27は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を、筐体または建物内の空調システム、あるいは空調補助システムとして応用した場合の具体的な構成を示す図である。
図24および図25において、制御機器などの発熱体28を保護している筐体27の中に加熱熱交換器11を設置し、周囲空気(室外機30)、または地下(土壌、下水、熱利用する場合の蓄熱体)29に顕熱放出熱交換器10を設置したものである。
このようにすることにより、無負荷で熱を輸送することができる。また、該筐体または建物内の温度変化を小さくすることもできる。従って、これまで使用されてきた空調機器の代替、または該空調機器の補助システムとして使用することにより、エネルギーを削減することができる。
なお、加熱熱交換器11の設置箇所は筐体27の中に限らず、発熱体に直接、あるいは太陽光が入射する筐体もしくは建物の屋根、屋上、屋根裏、側壁等のいずれかに設置してもよい。また、顕熱放出熱交換器10の設置箇所も上記の他、河川、海等であってもよい。
図26はビル空調システムおよび床暖房システムに応用した例を示す。図26において、建物31の屋上に熱源32が設置され、この熱源32からの熱は本発明の熱輸送機器100によって輸送され、床暖房33および建物内の空調34に使用される。
従来、ビル空調システムの多くが、設置、メンテナンス、および放熱の容易さから、その熱源および冷熱源を屋上に設置することが多いことから、機械駆動型ポンプを利用して下方へ熱を輸送している。しかし、該ビル空調システムに本発明の熱輸送機器を使用することにより、上記機械駆動型ポンプが不要となり、熱媒体輸送のために必要とされるエネルギーを削減することができる。また、機械駆動型ポンプから生じる騒音を無くすことができる。
また、床暖房においても、ボイラーにより昇温された作動流体を、床に埋設された流路へ機械駆動型ポンプにより送入し床暖房を行っていたが、機械駆動型ポンプの代わりに本発明の熱輸送機器を使用することにより、機械駆動型ポンプに要されたエネルギーを削減できると共に、機械駆動型ポンプから生じる騒音を無くすことができる。
図27は温室栽培の空調システムに応用した例を示す。近年の農業はより高度化しており、多くの作物が温室栽培されるようになった。機械的に温度・湿度の管理を行う場合も多くなっているが、ほとんどの場合、温室内の温度管理は人の手により行われており、非常に煩雑な作業であった。
このような場合でも、図27に示されるように、均熱性に優れる土壌29に、本発明の熱輸送機器の顕熱放出熱交換器10を設置すれば、ビニールハウス35内の温度変化を小さくすることができる。逆に、地熱を利用して温室内温度を上昇させると、これまで室温を高い温度の状態に保つために使用されてきたボイラーなどに消費されるエネルギーを削減することができる。
実施の形態14.
図28は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を屋外計測機器放冷素子として応用した場合の具体的な構成を示す図である。
屋外計測・制御機器や変圧器(例えば、送配電線中継機や渋滞計測機器等)の性能向上、大容量化およびコンパクト化などにより内部発熱密度が増大しており、その冷却方法が問題になっている。また、屋外機器の冷却に関しては、天候に左右される部分が大きく、天候に左右されない冷却素子が必要である。さらに、空冷用のフィン等が筐体表面に設置される例が多く、埃等の目詰まりによる冷却性能の低下および悪天候(例えば、台風など)に起因する破損などの問題がある。また、砂漠地帯では日中の周囲環境温度が高いため、発熱体の冷却は深刻な問題である。
そこで、図28に示すように、本発明の熱輸送機器100をこれらの冷却素子として使用し、顕熱放出熱交換器10を土壌29中または電柱36等の破壊しにくいものの内部に設置することにより、上記の問題が解決される。
実施の形態15.
図29は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器をヒートアイランド現象の抑制に用いた場合の具体的な構成を示す図である。
都市においては、大地の表面がコンクリートやアスファルトに覆われ、土壌が剥き出しになっている部分および緑地が著しく減少している。それゆえ、その地方の大気温度が上昇しやすくなっており、いわゆるヒートアイランド現象が生じている。
この現象の解決方法として、図29に示すように、本発明の熱輸送機器100を利用し、加熱熱交換器11をヒートパイプ37を介して路面38および空調用室外機39などに設置し、顕熱放出熱交換器10を土壌29、あるいは河川、下水などに設置し、太陽光からの入熱量および生活から生じる排熱を積極的に地中等に熱輸送することにより、ヒートアイランド現象を抑制することができる。また、周囲環境温度が低下することにより、冷房に費やす電力の削減が達せられ、CO2削減に大きく貢献できる。
図30は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を、季間融雪、あるいは砂漠の緑地化に用いた場合の具体的な構成を示す図である。
冬季における道路上の積雪によるスリップ事故、屋根の雪かき、道路上の除雪作業など、豪雪地方では積雪による問題がある。本発明の実施の形態10に示した熱輸送機器は、土壌に埋設しやすく、また両方向熱輸送可能な熱輸送機器であることから、上記熱輸送機器100を図30に示すように設置し、夏季の太陽エネルギーを土壌(または専用の蓄熱体)29に蓄熱し、冬季にその熱量を使用し、降り積もる雪を融雪することが可能である。しかも、無負荷かつ制御の必要性が無く、メンテンナンスフリーであり、山中などの電力を得ることが困難な場所での使用も可能である。
同様に、本熱輸送機器を砂漠に埋設することにより、昼間の太陽エネルギーを土壌に蓄熱し、夜間そのエネルギーを大気に放出する。このようにすることにより、砂漠地帯特有の昼夜間の大きな気温変動を抑制することができ、また水分蒸発を抑制することができるため、砂漠の緑地化事業の手助けができる。
実施の形態16.
図31は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器をポンプレス水冷システムに応用した場合の具体的な構成を示す図である。
電車、自動車に搭載される電子機器の発熱量は年々増加しており、従来空冷により放熱されていたものが、水冷しなければ対応できない状況にまで達している。しかし、空冷システムから水冷システムへの移行は、コスト高、設置位置の制限(主にポンプ設置位置により制限されたり、冷却水配管を短くするために制限されたりする)、信頼性、メンテナンスが必要等、多くの問題が生じる。本発明の熱輸送機器を利用すれば、循環用ポンプが不必要になり、該ポンプ設置のためのスペースが不要となる。また、本発明の熱輸送機器は柔軟な配置が可能であることから設置位置の制限が軽減される。
図31(a)、(b)は本実施の形態の具体的な構成を示す図であり、第1の空間と加熱熱交換器と分配容器と集合容器とを一体成形し、これを電装部40に設置している。また、顕熱放出熱交換器10をファン41に設置している。このようにすることにより、信頼性の高い、コンパクトなポンプレス水冷システムが低コストで実現できる。さらに、従来の冷却システムでは発熱体から冷却水へ熱を伝えるために対流熱伝達を利用していたため、伝熱面に多数のフィンを取付けて伝熱面積を大きくしなければならず、フィン製作のためにコスト高になっていたが、本発明では沸騰対流熱伝達を利用するため熱伝達特性が良く、この部分でのフィン製作は必ずしも必要でなく、低コスト化が可能となる。
実施の形態17.
図32は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を高効率焼却炉に用いた場合の具体的な構成を示す図である。
焼却炉は、一般に煙突効果を利用して低温の新鮮な空気を吸気し、燃焼により発生した高温ガスを排出する。低温空気の吸気のために、燃焼温度が低くなりその効率が低下すると共に、高い煙突を設置しなければならない。
本発明の熱輸送機器を利用し、図32に示すように、熱輸送機器101により、燃焼室42から送出される高温ガス43が保有する熱エネルギーを、送風路44から吸気される空気45に与え、高温の新鮮な空気を燃焼室42に自然送風するようにする。また、熱輸送機器102により、上記高温ガス43が保有する熱エネルギーを、燃焼室42に輸送されるゴミ46に与え、ゴミ46を予熱して、ゴミ46に含まれる水分を除去することにより、燃焼効率を向上させることができる。また、高い煙突を設置する必要が無くなる。さらに、このようにすることにより燃焼温度が上昇することから、小型焼却炉で特に問題とされる有害なダイオキシンなどの発生を抑制することができる。
また、大型の焼却炉においては、排ガス中の有害成分除去のために、化学処理機47を設け、排ガスを数回低温にする必要があるが、最終的に排ガスを排出するために再加熱し高温ガスにしている。このような部分にも本発明の熱輸送機器103により、上記高温ガス43が保有する熱エネルギーを、最終排出される排ガスへ輸送すれば、有効に熱エネルギーが利用できる。また、図示しないが、本発明の熱輸送機器により、有害成分除去に際して除去される熱量を最終排出される排ガスへ輸送してもよく、有効に熱エネルギーを利用できる。
さらに、本発明の熱輸送機器を使用して、燃焼エネルギーを利用し、回収された空き缶などの低融点金属を精錬することも可能であり、ゴミ回収と精錬作業を融合した高効率型精錬所を構築することができる。
さらに、本発明の熱輸送機器に対し、発電システム(熱交換循環溶液1の循環を利用)を装着することにより、ごみ発電を行うことも可能である。
実施の形態18.
図33は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器をハイブリッド熱利用システムに用いた場合の構成を示す図である。
図33に示すように、ソーラーパネル48に、本発明の熱輸送機器の加熱熱交換器11を設置し、熱交換循環溶液1として、例えば磁性流体を封入する。また、循環溶液輸送パイプAの周りに導線49を巻きつける。このようにすることにより、ソーラーパネル48の温度を低下させ、その発電能力低下を防止すると共に、熱交換循環溶液1の循環により導線49内を電流が流れ、発電することができる。また、顕熱放出熱交換器10を蓄熱体(例えば、断熱容器に入った水)と接するように設置し、その熱を別の用途(例えば、家庭用温水)に利用することができる。
実施の形態19.
図34は、人工的に良い漁場を作るために、または飲料、化粧品用として注目されている海洋深層水を汲上げるために、本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を応用した場合の具体的な構成を示す図である。
図34に示すように、本発明の熱輸送機器100の加熱熱交換器11を海洋上部の高温海水または太陽光が入射する大気中に設置し、海洋深層水部分と海洋表面とを連結するように設置された円筒形パイプ50の下端内に顕熱放出熱交換器10を設置することにより、円筒形パイプ50の下端内の海洋深層水の温度が上昇し、周囲低温海水との密度差による浮力により、該円筒形パイプ50中を海洋深層水が自然に上昇するので、この海洋深層水を容易に汲上げることが可能となる。
実施の形態20.
図35は本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を淡水化事業へ応用した場合の具体的な構成を示す図である。
太陽熱を利用し、海水を蒸発させ、発生する蒸気を別の容器中で凝縮することにより淡水化する技術が広く利用されている。しかし、淡水化を行う多くの地方では、凝縮するための冷熱源が無い場合が多い。
図35に示すように、本発明の熱輸送機器100の加熱熱交換器11を、太陽熱により蒸発した海水の蒸気51が通過する通路中に設置すると共に、土壌29中に熱輸送機器100の顕熱放出熱交換器10を設置し、土壌中の冷熱を利用することにより、高効率で海水52を淡水53に淡水化することができ、場所を選ばずに淡水化を行うことができる。
また、土壌中の冷熱の変わりに、低温の海水を使用しても良い。
また、遭難時の携帯用非常淡水化機器としても利用できる。
実施の形態21.
図36および図37は、各々本発明の気泡ポンプ型熱輸送機器を月面居住区の建設に用いた場合の具体的な構成を示す図である。
今日、宇宙航行技術の発達により月面に行くことさえ可能になった。しかし、月面においては、太陽光が入射する場合表面温度が150℃以上になり、逆に太陽光が入射しない場合、−150℃以下になることもあり、300K程度の温度変動がある。それゆえ、通常の固体は熱応力により破壊し、月面上は砂漠化している。したがって、月面上に建築物を建設したとしてもその寿命は短い。
図36に示すように、本発明の熱輸送機器を利用し、建築物54の壁および屋根に加熱熱交換器11を埋設し、月面55の地中に顕熱放出熱交換器10を埋設して地中を蓄熱体として利用することにより該温度変動幅を縮小し、建築物の建設を可能にすることができる。その際、図36に示すように、円周方向の温度分布を小さくするために、ループヒートパイプ56を加熱熱交換器11の内側または外側に設置する方が望ましい。また、ヒートパイプ57により地中に蓄熱された熱を建築物54の床に輸送するようにしても良い。
また、図37に示すように、クレータ58内の、常に影の部分に建築物54を建設すると、温度変動は小さく、建築物54の寿命は長くなるが、人が居住するためには、建築物54の内部温度を地球環境程度の温度に保持しなければならない。そのために、ソーラーパネルにより発電し、その電力を用いて室内を温度管理する方法が考えられるが、万一の故障の際、−150℃以下の環境になることが考えられる。そこで、図37に示すように、加熱熱交換器11を日の当たる表面または表層中に設置し、本発明の熱輸送機器101により該表面へ入射する太陽エネルギーを土壌中に蓄熱し、さらに本発明の熱輸送機器102、またはヒートパイプなどにより蓄熱された地中の熱を建築物54内に輸送して、建築物温度を補償するシステムを作ることができる。このようにすることにより、室内温度管理に使用されるエネルギーを小さくすることができ、また万一の際、人間が生存する最低限度の温度環境を保証することができる。
このような手法により、月面居住が可能になり、さらなる宇宙航行、天体観測および無重力加工技術の進展が促進される。
実施の形態22.
この他、循環型社会システムの構築への応用が考えられる。
省エネルギーおよび温暖化対策の一つとして、循環型社会システム、特にエネルギーの長距離輸送技術が検討されている。しかし、これまでの熱輸送技術ではエネルギーの使用および高低差に関連する問題などがあり、実現することが難しかった。本発明の熱輸送機器は、無動力であらゆる方向へ熱を輸送することができ、また顕熱輸送であることから、流路の上下方向の蛇行を問題にしないので、本発明の熱輸送機器により連結された高効率エネルギー循環都市を実現することができる。
実施の形態23.
また、建物の高層化に対する地下室利用への応用が考えられる。現在もなお住宅取得の要望は高いが、利便性の良い土地を見出すことは非常に難しく、また住宅を建設するための土地の値段は依然として高い。そこで、現在、住宅建設は従来の2階建て住宅から3階または4階建て住宅へ移行し、土地の面積は小さいが床面積の広い住宅が数多く建築されるようになった。しかし、従来から考えられている地下の利用は一向に進んでいない。原因は、地下の居住空間は、空気の入れ替えが難しく、多湿の空間になりやすいため、居住空間および保管庫としても不向きであるからである。
図38に示すように、住宅壁面に地下から屋根裏への通路59、60を作り、本発明の熱輸送機器100を一方の通路59内に設置し、加熱熱交換器11が住宅の壁面に、顕熱放出熱交換器10が通路下端内になるように取付けることにより、通路下端内空気温度が上昇し、通路59を介して屋根裏に熱および空気が輸送される(煙突効果)。また、地下室61へと連結するもう一方の通路60から、新鮮な空気が流入することから、地下室61が多湿で空気の淀んだ空間にはならず、地下に快適な生活空間を提供することができる。
実施の形態24.
さらに、パソコン等の電子機器の冷却への応用が考えられる。現在使用されているパソコンでは、発熱量が大きくファンを用いた強制空冷放熱が行われている。ファンの静音性能は日々向上しているものの、さらなる静音性が求められている。
そこで、パソコン内底部または横側の広い空間に自然空冷式の顕熱放出熱交換器11を設け、一方発熱するCPUを気液二相流体送入パイプ9に取付けることにより、ファンを必要とせず有効に放熱することができる。また、顕熱放出熱交換器として筐体壁を利用しても良い。このようにすることにより、ファンレス放熱システムを構築することができ、低騒音のパソコンを提供することができる。
本発明の実施の形態1による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態1による気泡ポンプ型熱輸送機器(高熱負荷の場合)を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態1による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態1による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態2による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態2による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態3による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態3による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態4による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態5による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態6による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態7による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態7による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態8による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態9による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態10による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態10による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態10による他の気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態11による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態11に係わる気泡核を示す図である。 本発明の実施の形態11に係わる他の気泡核を示す図である。 本発明の実施の形態12による気泡ポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態12による他のポンプ型熱輸送機器を示す断面構成図である。 本発明の実施の形態13による筐体の空調システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態13による筐体の他の空調システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態13によるビル空調システムおよび床暖房システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態13による温室栽培の空調システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態14による屋外計測機器放冷素子を示す構成図である。 本発明の実施の形態15によるヒートアイランド現象の抑制への応用例を示す構成図である。 本発明の実施の形態15による季間融雪、あるいは砂漠の緑地化への応用例を示す構成図である。 本発明の実施の形態16によるポンプレス水冷システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態17による高効率焼却炉を示す構成図である。 本発明の実施の形態18によるハイブリッド熱利用システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態19による海洋深層水の汲上げへの応用例を示す構成図である。 本発明の実施の形態20による淡水化事業へ応用例を示す構成図である。 本発明の実施の形態21による月面居住区の建設への応用例を示す構成図である。 本発明の実施の形態21による月面居住区の建設への他の応用例を示す構成図である。 本発明の実施の形態23による地下室利用への応用例を示す構成図である。
符号の説明
1 熱交換用循環溶液、2,15 開孔、3 隔壁、4 熱交換循環溶液収納容器、4a 第1の空間、4b 第2の空間、5,5a 溶液送出口、6 溶液送出パイプ、6a 第1容器外パイプ、7,7a 容器内パイプ、7b 第2容器外パイプ、8 気液二相流体送入口、9 気液二相流体送入パイプ、10,10a 顕熱放出熱交換器、11,11a 加熱熱交換器、12 蒸気、13 蒸気泡、14 熱交換循環溶液収納補助容器、16a 分配容器、16b 集合容器、17 放熱熱交換器、18 ループ収容容器、19 仕切り板、20 熱交換溶液、20a 断熱材、21 補助ヒータ、22 引っかき傷、23 導管、24 空間、25 金属粒子、26 気泡核、27 筐体、28 発熱体、29 土壌、30 室外機、31 建物、32 熱源、33 床暖房、34 空調、35 温室、36 電柱、37,56,57 ヒートパイプ、38 路面、39 空調用室外機、40 電装部、41 ファン、42 燃焼室、43 高温ガス、44 送風路、45 空気、46 ゴミ、47 化学処理機、48 ソーラーパネル、49 導線、50 円筒形パイプ、51 海水の蒸気、52 海水、53 淡水、54 建築物、55 月面、58 クレータ、59,60 通路、61 地下室、80 溶液送入口、90 溶液送入パイプ、100,101,102,103 熱輸送機器。

Claims (5)

  1. 熱交換用循環溶液と上記循環溶液の蒸気とが収容された熱交換循環溶液収納容器、
    この収納容器内の上記熱交換用循環溶液を上記収納容器外に送出する溶液送出口、
    高温の熱交換用循環溶液と上記循環溶液の蒸気泡とからなる気液二相流体を上記収納容器に送入する気液二相流体送入口、
    並びに上記溶液送出口と連接すると共に、顕熱放出熱交換器が設けられる第1輸送路と、内部の熱交換用循環溶液と上記収納容器内の熱交換用循環溶液、または内部の熱交換用循環溶液と上記収納容器内の熱交換用循環溶液および上記収納容器内の熱交換用循環溶液の蒸気とが熱交換する第2輸送路と、上記気液二相流体送入口と連接すると共に、加熱熱交換器が設けられる第3輸送路とを有し、上記第1輸送路ないし上記第3輸送路を連接した循環溶液輸送路を備え、
    上記熱交換循環溶液収納容器の下部に上記気液二相流体送入口が設けられ、上記熱交換循環溶液収納容器の下部の上記気液二相流体送入口の両側に上記溶液送出口が設けられ、
    上記第1輸送路は、上記気液二相流体送入口の両側に設けられた両方の溶液送出口に連接し、途中で合流して上記第2輸送路に接続されていることを特徴とする気泡ポンプ型熱輸送機器。
  2. 第3輸送路の加熱熱交換器が設けられた部分は、複数に分割され、並列流路を構成していることを特徴とする請求項1記載の気泡ポンプ型熱輸送機器。
  3. 気液二相流体送入口は、複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の気泡ポンプ型熱輸送機器。
  4. 第2輸送路は、複数の循環溶液輸送パイプと、上記循環溶液輸送パイプの上流に設けられた分配容器と、上記循環溶液輸送パイプの下流に設けられた集合容器とを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の気泡ポンプ型熱輸送機器。
  5. 熱交換循環溶液収納容器には、熱交換用循環溶液の蒸気に不凝縮ガスが混入した気体が収容されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の気泡ポンプ型熱輸送機器。
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