JP4427969B2 - 水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法 - Google Patents
水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法、具体的には、脱溶剤時における加温条件の穏和化、及び、製造時間の短縮により、製造コストを削減でき、得られる水性ポリウレタンエマルジョンが良好な外観を有し、かつ、粘度の小さい水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自己乳化性ポリウレタン樹脂は、分子内に親水性基を有するので、界面活性剤を用いなくても良好な分散性を有し、乾燥後の被膜の強度に優れ、塗料、接着剤、粘着剤、コーティング剤等として広く用いられている。
【0003】
これまでに、親水性有機溶剤の存在下で、カルボキシル基及びスルホン酸基のうち少なくとも1種を有する自己分散性ウレタンブレポリマーに改質剤をパイプライン中で連続的に混合した後、上記ウレタンプレポリマーと上記改質剤との混合物を水中に分散させ、その後鎖延長反応及ぴ脱溶剤を行うウレタンエマルジョンの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法によれば、製造に要する時間を短縮する方法として、50〜150℃の高温下で重合反応をさせる方法が採られている。
【0004】
しかし、この方法を用いて水性ポリウレタンエマルジョンを得ようとする場合、製造時に高温下で反応させる必要上、加熱することに要する製造コストがかかり、また、この製造方法により得られる水性ポリウレタンエマルジョンは外観上白濁し易く、更に、得られる水性ポリウレタンエマルジョンについて、均一な粘度を得るのが難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−176062号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に鑑み、製造にかかる時間を短縮することができ、同時に加温を低く抑えることで製造コストの低減を図り、かつ、良好な外観、更には残存溶剤を低減しつつ粘度の小さい水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、脱溶剤工程を工夫することにより、これらの問題を解決することを見出した。
【0008】
すなわち本発明は以下の(1)〜(4)に示されるものである。
【0009】
(1) アセトン又メチルエチルケトンのいずれか1種類からなる沸点100℃未満の非アルコール系親水性有機溶剤(A)の総含有量が1質量%以上であるポリウレタン系水分散物から、(A)の総含有量が1質量%未満になるまで(A)を除去する水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
(A)を除去する工程が、以下に示す工程1〜工程3を1サイクルとして2サイクル行い、かつ、工程1における真空度(P)が、
第一サイクル: 9.1<P≦40.0(kPa)
第二サイクル: 3.9<P≦ 9.1(kPa)
であることを特徴とする、水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
工程1:ポリウレタン系水分散物の液温を50℃未満に維持し、かつ真空度を一定範囲に維持しながら、該除去中に(A)と水の共沸物の留出量を測定する。
工程2:(A)と水の共沸物の1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認する。
工程3:真空度を上げる。
【0010】
(2)工程2における1分間当たりの留出量が、除去前における(A)と水の総仕込量の0.001〜1.5質量%に相当する量であることを特徴とする、前記(1)の水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
【0012】
(3) アセトン又メチルエチルケトンのいずれか1種類からなる沸点100℃未満の非アルコール系親水性有機溶剤(A)及びイソプロパノールからなる沸点100℃未満のアルコール系親水性有機溶剤(B)の総含有量が1質量%以上であるポリウレタン系水分散物から、(A)及び(B)の総含有量が1質量%未満になるまで(A)及び(B)を除去する水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
(A)及び(B)を除去する工程が、以下に示す工程1〜工程3を1サイクルとして3サイクル行い、かつ、工程1における真空度(P)が、
第一サイクル:13.1<P≦40.0(kPa)
第二サイクル: 9.1<P≦13.1(kPa)
第三サイクル: 3.9<P≦ 9.1(kPa)
であることを特徴とする、水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
工程1:ポリウレタン系水分散物の液温を50℃未満に維持し、かつ真空度を一定範囲に維持しながら、該除去中に(A)、(B)、及び水の共沸物の留出量を測定する。
工程2:(A)、(B)、及び水の共沸物の1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認する。
工程3:真空度を上げる。
【0013】
(4) 工程2における1分間当たりの留出量が、除去前における(A)、(B)、及び水の総仕込量の0.001〜1.5質量%に相当する量であることを特徴とする、前記(3)の水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。本発明は親水性有機溶剤の総含有量が1質量%以上のポリウレタン系水分散物から、親水性有機溶剤の総含有量が1質量%未満になるまで親水性有機溶剤を除去する水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、親水性有機溶剤の除去工程を、以下に示す工程1〜工程3を1サイクルとして、該サイクルを(親水性有機溶剤の種類数+1)サイクル行うことを特徴とする。
工程1:ポリウレタン系水分散物の液温を50℃未満に維持し、真空度を維持しながら、該除去中に親水性有機溶剤と水の共沸物の留出量を測定する。
工程2:親水性有機溶剤及び水の共沸物の1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認する。
工程3:真空度を上げる。
【0016】
本発明において「親水性」有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解度が2%以上の有機溶剤をいう。本発明では、油系から水系に転相させるため、「親水性」でない有機溶剤では、転相が困難になる。また、「沸点が100℃未満」とは、1013hPaの気圧下における沸点が100℃未満であることをいう。親水性有機溶剤とは1種類以上の沸点100℃未満の非アルコール系親水性有機溶剤(A)及び1種類以上の沸点100℃未満のアルコール系親水性有機溶剤(B)の総括概念である。沸点が100℃以上の有機溶剤では、ポリウレタン系水分散物からの除去が困難になる。
【0017】
具体的な、沸点100℃未満の非アルコール系親水性有機溶剤(A)としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0018】
また具体的な、沸点100℃未満のアルコール系親水性有機溶剤(B)としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、ウレタン化時の反応温度、目的とする樹脂に対する溶解性、水に対する溶解度、脱有機溶剤工程の省力化等を考慮した場合、(A)としてはアセトン又はメチルエチルケトン、(B)としてはイソプロパノールを用いる。
【0020】
本発明において自己乳化性ポリウレタン樹脂とは、親水性基を有するポリウレタン系樹脂のことであり、その構造については特に限定されるものではない。ここで、親水性基としては、ポリ(オキシエチレン)基のようなノニオン系親水性基、−COOM、−SO3M (Mはアルカリ金属、アンモニウム基、有機アミンを示す)のようなアニオン系親水性基、4級アンモニウム塩基のようなカチオン系親水性基がある。
【0021】
本発明における自己乳化性ポリウレタン樹脂は、長鎖ポリオール、親水性基及び活性水素を有する化合物、有機ポリイソシアネート、必要に応じて鎖延長剤を反応させて得られるものである。なお、ポリウレタン樹脂に親水性基を導入する方法としては、親水性基及び活性水素を有する化合物を用いる方法が一般的である。
【0022】
長鎖ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオール等が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、公知のコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。また、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0024】
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、前述のポリエステルポリオール、ポリカーポネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
【0026】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0027】
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0028】
また、活性水素を2個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオールの他に、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂類も長鎖ポリオールとして好適に使用できる。
【0029】
これらの長鎖ポリオールの数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましい。
【0030】
親水性基及び活性水素を有する化合物における親水基のうち、アニオン性親水性基は酸と塩基性中和剤からなり、カチオン性親水基は塩基と酸性中和剤又はハロゲン化アルキル系四級化剤からなる。
【0031】
ノニオン性親水性基及び活性水素を有する化合物としては、活性水素を1個以上含有するポリ(オキシアルキレン)エーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。ポリ(オキシアルキレン)エーテルの製造に開始剤として用いられる活性水素含有化合物としては、メタノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アニリン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。これらのうちでは、分散安定性を考慮した場合、メタノール、エタノール、エチレングリコールのような分子量がより小さいアルコールを用いるほうが親水性がより高いものとなるため好ましい。また、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの製造に用いられる脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。これらのうちでは、分散安定性を考慮した場合、低級脂肪酸を用いるほうが親水性がより高いものとなるため好ましい。また、該ポリアルキレンエーテルアルコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等に存在するポリエーテル鎖は、一般には3〜90個、特に好ましくは5〜50個の純粋なオキシエチレン基及び/又は全オキシアルキレン基中でオキシエチレン基を少なくとも70%以上含むポリエーテル鎖でも良い。
【0032】
アニオン性の親水性基の導入方法は、活性水素を1個以上有する有機酸類及び中和剤を用いる。活性水素を1個以上有する有機酸類としては、α−オキシプロピオン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸、ε−オキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸をヒドロキシル化したヒドロキシ脂肪酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸等のモノアミン型アミノ酸等、又は2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸含有ポリオール、イミノジ酢酸とグリシドールの付加物、5−ヒドロキシスルホイソフタル酸を用いたポリエステルポリオール、カルボン酸含有ポリオールを開始剤としたポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールとカルボン酸含有ポリオールとのエステル交換物が挙げられる。また、前述した高分子ポリオールや低分子ポリオール等のポリオール類やポリアミン類と、ポリカルボン酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を含有するハーフエステル混合物やハーフアミド混合物も使用可能である。特に、無水ピロメリット酸等の酸無水物にポリオールを付加させた場合は、2個のカルボン酸が生成するため、ポリエステルポリオールの分子鎖内に親水性極性基を導入できる。その他のアニオン性親水性基に転換する基としては、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0033】
塩基性中和剤としては、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類、アンモニア等が挙げられるが、乾燥後の耐候性や耐水性を向上させるためには、熱によって容易に解離する揮発性の高いもの又はポリイソシアネート硬化剤と反応するアミノアルコールが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノールアミンが好ましい。また、これら有機酸類及び塩基性中和剤は、それぞれ単独又は2種以上の混合物でも使用することができる。
【0034】
カチオン性の親水性基の導入方法は、活性水素を1個以上有する3級アミン類及び酸性中和剤、四級化剤から選択されるものからなる。活性水素を1個以上有する3級アミンとしては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン又は炭素数が2より大きいアルキル鎖を有するN−アルキルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、N,N′−ジヒドロキシエチルピペラジン、トリエタノールアミン、トリスイソプロパノールアミン、N,N′−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−ビス−(3−アミノプロピル)−アミン、N−メチル−ビス−(2−アミノプロピル)−アミン等が挙げられる。
【0035】
酸性中和剤としては、塩酸、酢酸、乳酸、シアノ酢酸、燐酸及び硫酸等が挙げられる。四級化剤としては、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド、又は、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0036】
また、第3級アミン含有ポリオールとスルホベタインとの反応物等の両性化合物も使用できる。
【0037】
前記親水性基の導入方法のうちで、耐候性、製造法等を考慮した場合、カルボン酸含有低分子ポリオールと、アミン系の塩基性中和剤の組み合わせが好ましく、特に2,2−ジメチロールプロピオン酸及び/又は2,2−ジメチロールブタン酸と、トリエチルアミンの組み合わせが好ましい。
【0038】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これら有機ジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等のいわゆる変性ポリイソシアネートも使用できる。更に、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のような、いわゆるポリメリック体といわれるポリイソシアネートも使用できる。これらの有機ポリイソシアネ−トは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
必要に応じて用いられる鎖延長剤としては、数平均分子量500未満の分子内に2個以上の活性水素を含有する化合物、具体的には、前述の低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコール等が挙げられる。また、場合によっては水も鎖延長剤となりうる。
【0040】
その他必要に応じて、反応停止剤を用いても良い。反応停止剤の具体的なものとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のようなモノオール類、エチルアミン、ブチルアミン等のような第一モノアミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のような第二モノアミン類、場合によっては、先に記載したアミノアルコール類が用いられる。
【0041】
本発明における前記親水性有機溶剤の総含有量を1質量%以上のポリウレタン系水分散物の製造方法としては、例えば以下の(イ)〜(ハ)に示される方法が挙げられる。
(イ)長鎖ポリオール、親水基及び活性水素含有化合物、並びに必要に応じて鎖延長剤を非アルコール系親水性有機溶剤(A)に溶解させておき、その後有機ポリイソシアネートを反応させて、高分子量のポリウレタン樹脂の溶液とした後、水を仕込んで転相させる。なお中和や四級化が必要な場合は、ウレタン化反応の前か、水仕込み前がよい。
(ロ)長鎖ポリオール及び必要に応じて鎖延長剤を非アルコール系親水性有機溶剤(A)に溶解させておき、その後有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーの溶液とした後、水を仕込んで転相させ、その後あらかじめアルコール系親水性有機溶剤(B)にポリアミン系の鎖延長剤を溶解させておき、このアミン液を仕込んで鎖延長させる。なお中和や四級化が必要な場合は、ウレタン化(プレポリマー化)反応の前か、水仕込み前〜最中がよい。
(ハ)長鎖ポリオール、親水基及び活性水素含有化合物、並びに必要に応じて鎖延長剤を非アルコール系親水性有機溶剤(A)に溶解させておき、その後有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーの溶液とした後、水を仕込んで転相・水による鎖延長反応させる。なお、中和や四級化が必要な場合は、ウレタン化(プレポリマー化)反応の前か、水仕込み前〜最中がよい。
【0042】
ノニオン系の親水性基導入量は、ポリウレタン樹脂中に0.1〜40質量%、アニオン系やカチオン系の親水性基導入量は、0.1〜1.0mmol/gが良く、好ましい量は、ノニオン系では、1〜30質量%、アニオン系及びカチオン系では、0.2〜0.8mmol/gである。各々の親水性基導入量が下限未満の場合は、ポリウレタン樹脂の水分散安定性が悪くなる。また、親水性基導入量が上限を越える場合は、塗膜の耐水性が悪くなる。
【0043】
このようにして得られたポリウレタン系水分散物は、全親水性有機溶剤の総含有量が1質量%以上であり、ポリウレタン樹脂、全親水性有機溶剤、及び水の好ましい質量構成比は以下の関係を満たす質量構成比である。
ポリウレタン樹脂:親水性有機溶剤=30:70〜70:30
ポリウレタン樹脂:水=10:90〜50:50
【0044】
なお、ポリウレタン樹脂の原料にダイアセトンアルコールのような、ケト基又はアルドール基を有する活性水素含有化合物を用いた場合、ポリヒドラジン系化合物を配合しておくと、一液硬化性を付与できる。
【0045】
ポリヒドラジン系化合物、すなわち1分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物としては、例えば、4,4′−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、N,N′−ヘキサメチレンビスセミカルバジド等のジヒドラジド化合物、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジカルボン酸ジヒドラジド、ヘキサデカンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド類、炭酸ジヒドラジド類、カルボヒドラジド、チオカルボジヒドラジド、ビスセミカルバジド類、酸ヒドラジド系ポリマー類等が挙げられる。これらの1分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
本発明によって得られた水性ポリウレタンエマルジョンには、水系システムで慣用される添加剤や助剤を配合できる。この添加剤や助剤としては、例えば、顔料、染料、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、揺変剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、造膜助剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等が挙げられる。
【0047】
次に、上記のポリウレタン系水分散物から親水性有機溶剤を除去する方法について述べる。
【0048】
本発明の最大の特徴は、上記のポリウレタン系水分散物に含まれる親水性有機溶剤(非アルコール系親水性有機溶剤、及びアルコール系親水性有機溶剤)を除去する方法にある。即ち、ポリウレタン系水分散物から、親水性有機溶剤の含有量が1質量%未満になるまで親水性有機溶剤を除去する水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、親水性有機溶剤を除去する工程が以下に示す工程1〜工程3を1サイクルとして該サイクルを(使用している親水性有機溶剤の種類数+1)サイクル行うことを特徴とする。
工程1:ポリウレタン系水分散物の液温を50℃未満に維持しながら、真空度を維持しながら、該除去中に該親水性有機溶剤と水の共沸物の留出量を測定する。
工程2:親水性有機溶剤と水の共沸物の1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認する。
工程3:真空度を上げる。
【0049】
本発明においては、上記のポリウレタン系水分散物に含まれる親水性有機溶剤の除去を行うに際して、該ポリウレタン系水分散物の温度を50℃未満に維持しながら除去操作を行う。該ポリウレタン系水分散物の温度を50℃以上にして除去操作を行うと、特にアンモニア等の揮発性の高い中和剤を使用している場合は、突沸が起きやすくなり、また、樹脂から中和剤が飛散し、樹脂の分散能が低下するため、目的物である水性ポリウレタンエマルジョンの外観が白濁してしまうので好ましくない。
【0050】
本発明においては、原則として、脱溶剤方法としてバッチ式蒸留を前提としている。脱溶剤方法としては他に、薄膜蒸留等連続的に行う方法もあるが、原則として本発明の方法には望ましくない。
【0051】
親水性有機溶剤と水の共沸物の留出量を測定する方法としては、特に限定されず、留出量を実際に手動で測定する方法、又は留出量を何らかの装置を用いて自動的に測定する方法等、公知の方法を用いて行うことが可能である。
【0052】
なお、上記のように減圧雰囲気条件下において水が共沸する場合があるが、本発明においては、脱溶剤終了後に必要に応じて、目的とする樹脂につき所望される固形分になるように水を添加して補正を行うことが可能なので、脱溶剤の際に水が共沸しても構わない。
【0053】
親水性有機溶剤と水の共沸物の1分間当たりの留出量は、該親水性有機溶剤の全量と水の総仕込量に対して0.001〜1.5%に相当する量であることが好ましく、更には、該親水性有機溶剤の全量と水の総仕込量に対して0.003〜1.4%に相当する量であることがより好ましい。
【0054】
なお、上記の好ましい留出量については、用いられる設備における分留の能力にもよるが、全体の仕込量が多くなるほど、1分間当たりの留出量としては、親水性有機溶剤の全量と水の総仕込量に対する上記の%の値は、より小さい値になることが好ましい。
【0055】
本発明においてはこのように、1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認した時点で、真空度を上げる手法により脱溶剤を行う。この場合、真空度は徐々に真空度を上げていくのではなく、真空度を一定範囲に維持し、前述の留出量が一定量未満になったことを確認した時点で真空度を上げ、再び真空度を一定範囲に維持する方法を採る。徐々に真空度を上げていく方法を採った場合、バッチごとに得られる目的物である水性ポリウレタンエマルジョンの粘度が不均一となり、本発明において所望される安定した粘度の水性ポリウレタンエマルジョンを得ることができない。
【0056】
サイクル数において、具体的には、非アルコール系親水性有機溶剤(A)としてアセトンのみを用いた場合は1種類+1=2サイクルとなり、非アルコール系親水性有機溶剤(A)としてアセトン、及びアルコール系親水性有機溶剤(B)としてイソプロパノールを用いた場合は2種類+1=3サイクルとなる。
【0057】
脱溶剤工程が2サイクルの場合、各サイクルにおける真空度(P)は以下の条件で行われる。
第一サイクル: 9.1<P≦40.0(kPa)
第二サイクル: 3.9<P≦ 9.1(kPa)
【0058】
また、脱溶剤工程が3サイクルの場合、各サイクルにおける真空度(P)は以下の条件で行われる。
第一サイクル:13.1<P≦40.0(kPa)
第二サイクル: 9.1<P≦13.1(kPa)
第三サイクル: 3.9<P≦ 9.1(kPa)
【0059】
上記のように各サイクルにおける真空度を調節することにより、突沸させることなく、目的とする親水性有機溶剤含有量になるまでの脱溶剤時間を短縮させることができる。
【0060】
このように、親水性有機溶剤の除去を行うに際して、このような多段階の一定減圧条件を設定することにより、目的物である水性ポリウレタンエマルジョン中に残存する該親水性有機溶剤をより少なくすることを可能にし、かつ、安定した粘度を有する水性ポリウレタンエマルジョンを得ることができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた水性ポリウレタンエマルジョンについての外観、樹脂の粒径、エマルジョンの粘度、水分散体中のアセトン(又はメチルエチルケトン(MEK))残存量、水分散体中のイソプロパノール(IPA)残存量を各々次の方法により測定した。
水分散体の外観:目視により確認。
樹脂の粒径:レーザーゼータ電位計(大塚電子(株)製)を用いて測定。
粘度:ビスメトロン粘度計VSA−L型(芝浦システム(株)製)を用いて測定。
アセトン(MEK)残存量:ガス・クロマトグラフィーを用いて測定。
IPA残存量:ガス・クロマトグラフィーを用いて測定。
【0062】
使用原料
ポリオールA:1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルジオール
数平均分子量=2,000
ポリオールB:ネオペンチルグリコール/エチレングリコール=9/1、イソフタル酸/アゼライン酸=5/5(各モル比)の混合ジオールと混合ジカルボン酸から得られるポリエステルジオール
数平均分子量=2,000
ポリオールC:エチレングリコールを開始剤として、ε−カプロラクトンを開環させたジオール
数平均分子量=2,000
NPG :ネオペンチルグリコール
DMBA :2,2−メチロールブタン酸
H12−MDI:水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI :2,4−トリレンジイソシアネート
IPDI :イソホロンジイソシアネート
MEK :メチルエチルケトン
DOTDL :ジオクチルチンジラウレート
TEA :トリエチルアミン
IPDA :イソホロンジアミン
DETA :ジエチレントリアミン
MEA :モノエタノールアミン
IPA :イソプロパノール
【0063】
〔ポリウレタン系水分散物の合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた、容量:5Lの反応器を乾燥空気で置換した後、アセトン(1)を300g、ポリオールAを491.8g仕込み、液温を50℃に温度調節した。次に、H12MDIを209.4g、DOTDLを0.08g仕込み、50℃にて2時間反応させた。次に、あらかじめアセトン(2)を300g、DMBAを36.4g、TEAを24.8g配合しておいた液を仕込んで、50℃で更に5時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー液を得た。このプレポリマー液に、あらかじめIPAを200g、蒸留水(2)を1200g、IPDAを23.5g、DETAを10.4g、MEAを3.7g配合しておいた液を仕込み、鎖延長反応及び転相を行い、ポリウレタン系水分散物PU−1/AIを得た。
【0064】
合成例2
合成例1と同様な容量:2Lの反応器を乾燥空気で置換した後、MEK(1)を124g、ポリオールBを191.1、g、NPGを19.9g、DMBAを14.1g仕込み、液温を50℃に温度調節した。次に、TDIを65.2g、DOTDLを0.03g仕込み、70℃にてイソシアネート基が消失するまで反応させた。その後、MEK(2)を176gを仕込んで希釈した後、TEAを9.7g仕込んカルボン酸を中和してポリウレタン樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に蒸留水(1)を700g仕込んで転相を行い、ポリウレタン系水分散物PU−2/Mを得た。
【0065】
合成例3
合成例1と同様な容量:2Lの反応器を乾燥空気で置換した後、アセトン(1)を165g、ポリオールCを287.8g、NPGを7.5g、DMBAを10.6g仕込み、液温を50℃に温度調節した。次に、IPDIを79.9g、DOTDLを0.04g仕込み、50℃にて2時間反応させた。次に、アセトン(3)を135g仕込んで希釈し、次いでTEAを7.3g仕込んでカルボン酸を中和した。その後、蒸留水(1)を500g仕込んで、転相させた。この液に、あらかじめIPAを100g、蒸留水(2)を100g、IPDAを2.2g、DETAを3.9g、MEAを1.9g配合しておいた液を仕込んで鎖延長反応を行い、ポリウレタン系水分散物PU−3/MIを得た。
【0066】
合成例4
合成例1と同様な容量:2Lの反応器を乾燥空気で置換した後、MEK(1)を113g、ポリオールCを234.9g、NPGを12.2g、DMBAを17.4g仕込み、液温を50℃に温度調節した。次に、IPDIを79.9g、DOTDLを0.04g仕込み、70℃にて2時間反応させた。次に、MEK(2)を187g仕込んで希釈し、次いでTEAを11.9g仕込んでカルボン酸を中和して、イソシアネート基末端プレポリマー液を得た。この液に、あらかじめIPAを100g、蒸留水(2)を600g、IPDAを18.0g、MEAを1.4g配合しておいた液の仕込み及び転相を行い、ポリウレタン系水分散物PU−4/MIを得た。
【0067】
合成例1〜4を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
〔水性ポリウレタンエマルジョンの製造〕
実施例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた、容量:1Lの反応器にポリウレタン系水分散物PU−1/AIを500g仕込んだ。液温を45℃に保ちながら真空度を14.6kPaまで減圧し、1分間あたりの流量が0.6g(=親水性有機溶剤及び水の総仕込量に対して0.4%に相当する量)未満になったことを確認するまで脱溶剤(第一サイクル)を行った。この後、真空度を11.3kPaにして、引き続き液温を45℃以下に保ちながら、1分間当たりの溶剤等の留出量が0.6g未満になったことを確認するまで脱溶剤(第二サイクル)を行った。更に真空度を9.0kPaにして、引き続き液温を45℃以下に保ちながら、1分間当たりの溶剤等の留出量が0.6g未満になったことを確認するまで脱溶剤(第三サイクル)を行った。最後に固形分が40%になるように水で仕込み補正を行い、水性ポリウレタンエマルジョンEM−1を得た。結果を表2に示す。
【0070】
実施例2〜4、比較例1〜2
実施例1と同様にして、表2に示す条件で脱溶剤を行い、水性ポリウレタンエマルジョンEM−2〜6を得た。結果を表2に示す。なお、PU−2は使用した有機溶剤の種類数が1種類(MEKのみ)であるので、脱溶剤工程は2サイクルとした。EM−6においては、無理矢理1サイクルで脱溶剤を行った。その他は3サイクルである。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例では、良好な外観を有する水性ポリウレタンエマルジョンが得られた。一方、比較例1では脱溶剤時の液温が高すぎたために突沸が発生し、その度に留出ラインが詰まってライン洗浄しなければならなかったため、脱溶剤工程に第1サイクル:70分、第2サイクル:25分、第3サイクル:35分の合計130分要した。また、実施例4と比較すると、脱溶剤時の温度が高いため、平均粒径が大きくなった。比較例2では脱溶剤工程が1サイクルであるため有機溶剤残存量が多くなり、引火点が計測された。
【0073】
【発明の効果】
本発明による製造方法により、水性ポリウレタンエマルジョンの製造に要する時間の短縮、及び、低温での脱溶剤処理が可能となり、かかる製造コストの削減を可能とすることができる。また、該製造方法により得られる水性ポリウレタンエマルジョンは、平均粒径が小さく、より良好な外観を有することが可能になる。更に、本発明による製造方法の最大の特徴である脱溶剤につき、徐々に減圧していく方法によらず、真空度を多段階設定することにより、樹脂中に残存する溶剤をより少なくすることができ、しかも低粘度の水性ポリウレタンエマルジョンを得ることがことができる。
Claims (4)
- アセトン又メチルエチルケトンのいずれか1種類からなる沸点100℃未満の非アルコール系親水性有機溶剤(A)の総含有量が1質量%以上であるポリウレタン系水分散物から、(A)の総含有量が1質量%未満になるまで(A)を除去する水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
(A)を除去する工程が、以下に示す工程1〜工程3を1サイクルとして2サイクル行い、かつ、工程1における真空度(P)が、
第一サイクル: 9.1<P≦40.0(kPa)
第二サイクル: 3.9<P≦ 9.1(kPa)
であることを特徴とする、水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
工程1:ポリウレタン系水分散物の液温を50℃未満に維持し、かつ真空度を一定範囲に維持しながら、該除去中に(A)と水の共沸物の留出量を測定する。
工程2:(A)と水の共沸物の1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認する。
工程3:真空度を上げる。 - 工程2における1分間当たりの留出量が、除去前における(A)と水の総仕込量の0.001〜1.5質量%に相当する量であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
- アセトン又メチルエチルケトンのいずれか1種類からなる沸点100℃未満の非アルコール系親水性有機溶剤(A)及びイソプロパノールからなる沸点100℃未満のアルコール系親水性有機溶剤(B)の総含有量が1質量%以上であるポリウレタン系水分散物から、(A)及び(B)の総含有量が1質量%未満になるまで(A)及び(B)を除去する水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法において、
(A)及び(B)を除去する工程が、以下に示す工程1〜工程3を1サイクルとして3サイクル行い、かつ、工程1における真空度(P)が、
第一サイクル:13.1<P≦40.0(kPa)
第二サイクル: 9.1<P≦13.1(kPa)
第三サイクル: 3.9<P≦ 9.1(kPa)
であることを特徴とする、水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
工程1:ポリウレタン系水分散物の液温を50℃未満に維持し、かつ真空度を一定範囲に維持しながら、該除去中に(A)、(B)、及び水の共沸物の留出量を測定する。
工程2:(A)、(B)、及び水の共沸物の1分間当たりの留出量が一定量未満になったことを確認する。
工程3:真空度を上げる。 - 工程2における1分間当たりの留出量が、除去前における(A)、(B)、及び水の総仕込量の0.001〜1.5質量%に相当する量であることを特徴とする、請求項3に記載の水性ポリウレタンエマルジョンの製造方法。
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