JP4427943B2 - 液晶組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学的表示材料として有用なネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のTN、STN等の液晶ディスプレイでは、相対向した2枚の基板に形成した電極間に電圧を印加する事により、ほぼ基板界面に垂直な電界を発生させ、電界方向(またはそれと垂直な方向)に液晶を動作させることにより表示を行っていた。特表平5-505247、EP588568には、配向制御層を有する2枚の基板間の液晶層が液晶分子の長軸をほぼ基板と平行にして配向し、液晶を駆動するための電場が液晶層に対してほぼ平行になるように駆動される方式IPS(In-Plain Switching)が記載されている。IPSディスプレイは、TNやSTNなどのねじれ構造を持ち、電界により液晶が基板面とほぼ平行な状態から垂直な状態に動作する事により表示する方式に比べ、基板とほぼ平行な面内で動作する事により表示するため、視角特性が優れたものである。しかし基板にほぼ平行な横電界を印加するため、従来のねじれ型方式とは異なったIPS方式に最適化された幅広い液晶温度範囲、低温での液晶安定性、低電圧駆動特性、低い粘性、短い応答時間、加熱・光に対する安定性、高い電圧保持率を同時に持つ液晶組成物が望まれていたが十分満足する液晶材料は得られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、液晶相温度範囲と低温での液晶安定性のバランスに優れ、大きい誘電率異方性と低い粘性を同時に有するIPS用液晶組成物を提供し、これを用いた幅広い温度領域で使用可能で、低電圧駆動特性と短い応答時間を有するIPSディスプレイを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために、種々の液晶化合物を用いた液晶組成物を検討した結果、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)、一般式(3) 及び一般式(4)で表される化合物をそれぞれ特定量組み合わせることにより、液晶相温度範囲と低温での液晶安定性のバランスに優れ、大きい誘電率異方性と低い粘性を同時に有するIPS用液晶組成物が得られ、これを応用することで幅広い温度領域で使用可能で、低電圧駆動特性と短い応答時間を有するIPSディスプレイを見いだし本発明に至った。
【0005】
すなわち本発明は、第一成分として一般式(1)
【化9】
(式中R1は、炭素数2〜15のアルケニル基または炭素数3〜15のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物から選ばれる化合物を1種又は2種以上を2〜30質量%含有し、第二成分として一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)
【0006】
【化10】
【0007】
【化11】
【0008】
【化12】
【0009】
(式中R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数2〜15のアルケニル基であり、この基は非置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH2基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-OCO-O-により置き換えられても良く、A1、A2及びA3はそれぞれ独立して
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -O- 及び/又は -S- に置き換えられてもよい)
(b) 1,4-フェニレン(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -N- に置き換えられてもよい)
(c) 1,4-シクロヘキセニレン、1,4-ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)、基(b)、基(c)はCN又はハロゲンで置換されていてもよく、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-(CH2)4-、-CH=CH-CH2CH2-、-CH2CH2-CH=CH- 又は単結合であり、l、m、n、o及びpはそれぞれ独立して0、1又は2であり、X1〜X10はそれぞれ独立してH、F又はClであり、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ独立して-OCH2-、-OCF2-、-OCHF-、-CF2-又は単結合であり、Y1、Y2及びY3はそれぞれ独立してF又はClである。) で表される化合物群から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を5〜60質量%含有し、配向制御層を有する2枚の基板間の液晶層が液晶分子の長軸をほぼ基板と平行にして配向し、液晶を駆動するための電場が液晶層に対してほぼ平行になるように駆動されることを特徴とする、アクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記液晶組成物を使用した、マトリクス状に配置された画素部にスイッチング素子が設けられているアクティブマトリクス型液晶表示素子を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)という。)は、駆動電圧の低下に非常に大きな効果を有しながら、低粘性効果も同時に有している。しかし、液晶組成物中に多量に添加することにより、ネマチック相下限温度を上昇させる問題点があった。一方、一般式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)という。)、一般式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)という。)、一般式(4)で表される化合物(以下、化合物(4)という。)は電流値の増加を抑制する効果とAM-LCD駆動方式に必要な高い電圧保持率を有している。また戸外の過酷な熱・太陽光・UV光の環境においても、安定で電流値増加などによる表示不良を起こしにくいという特徴を有している。さらにネマチック温度範囲を拡大する効果も同時に有している。
【0012】
本発明の液晶組成物は、化合物(1)と化合物(2)、化合物(3) 及び化合物(4)のそれぞれの化合物から1種又は2種以上選ばれる化合物を含有する組成物である。化合物(1)と化合物(2)、化合物(3) 及び化合物(4)はお互いの欠点を補うことにより、組成物として、幅広い液晶温度範囲、低温での液晶安定性、低電圧駆動特性、低い粘性、短い応答時間、加熱・光に対する安定性、高い電圧保持率を同時に持ち、IPS用液晶組成物として非常に有用である。
【0013】
本発明の液晶組成物は、化合物(1)から選ばれる化合物を1種〜5種の範囲で含有することが好ましく、1種〜3種の範囲で含有することが特に好ましい。また、式中R1は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、式(a)〜(e)のアルケニル基が特に好ましい。
【化13】
(式は右端で環に結合するものとする。)
一般式(1)から選ばれる化合物の含有量は、5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0014】
化合物(2)、化合物(3) 及び化合物(4)から選ばれる化合物は1種〜15種の範囲で含有することが好ましく、1種〜10種の範囲で含有することが特に好ましい。また一般式(2)中、R2は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基又は式(a)〜(e)のアルケニル基が特に好ましい。
【0015】
式中X1〜X10はそれぞれ独立してH、F又はClであり、X1〜X4、X5〜X8、X9〜X10のうちそれぞれ少なくとも1個はFであることが好ましい。Q1〜Q3は単結合が好ましい。Y1〜Y3はFが好ましい。
【0016】
化合物(1)の好ましい化合物として、A1がトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z1、Q1が単結合であり、Y1がFである化合物(6)を挙げることができる。
【化14】
r、sはそれぞれ独立して0、1又は2であるが、r+sは1又は2が好ましい。
【0017】
化合物(2)の好ましい化合物として、A2がトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z2、Q2が単結合であり、Y2がFである化合物(7)を挙げることができる。
【化15】
t、uはそれぞれ独立して0、1又は2であるが、t+uは1又は2が好ましい。
化合物(3)の好ましい化合物として、A3がトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z3、Q3が単結合であり、Y3がFである化合物(8)を挙げることができる。
【化16】
vは0又は1が好ましい。
【0018】
化合物(6)のさらに好ましい化合物として以下の化合物群を挙げることができる。
【化17】
【0019】
化合物(7)のさらに好ましい化合物として以下の化合物群を挙げることができる。
【化18】
【0020】
化合物(8)のさらに好ましい化合物として以下の化合物群を挙げることができる。
【化19】
【0021】
一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)から選ばれる化合物の含有量は、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜45質量%が特に好ましい。
ネマチック液晶相温度範囲の拡大は、最近要望の高まっている携帯端末ディスプレイ用としても有用である。本発明による組成物は、特に、ネマチック相が結晶やスメクチックに転移するネマチック相下限温度に対して拡大効果があるため、本発明の液晶組成物を使用した液晶表示素子は、戸外の低温の環境でも高いコントラストでの動作が可能となる。本発明のネマチック-アイソトロピック転移温度は70℃〜120℃が好ましく、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度(℃)は-80℃〜-10℃が好ましいが、さらに好ましくはネマチック-アイソトロピック転移温度が70℃〜100℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度(℃)が-80℃〜-20℃である。
【0022】
一般式(5)
【化20】
(式中R4、R5は、一般式(2)のR2の定義と同じであり、A4〜A6はA1の定義と同じであり、Z4、Z5はそれぞれ独立して-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-(CH2)4-、-CH=CH-CH2CH2-、-CH2CH2-CH=CH- 、-CH=N-N=CH-又は単結合であり、qは0、1又は2である。)で表される化合物(以下、化合物(5)と言う。)の含有率の合計は、20質量%〜60質量%が好ましく、30質量%〜55質量%が特に好ましい。
【0023】
化合物(5)の好ましい化合物として以下の化合物群を挙げることができる。
【化21】
【0024】
本発明の液晶組成物は、IPSディスプレイ用として有用であるが、、AM-LCD方式で駆動されるIPSディスプレイ用組成物として特に有用なものである。
【0025】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0026】
Tni :ネマチック相上限温度;ネマチック-アイソトロピック転移温度(℃)
T-n :ネマチック相下限温度;クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度(℃)
Δε:25℃での誘電率異方性 (-)
Δn :25℃での複屈折率(-)
η :20℃での粘度(mPa・s)
HR :60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDに注入し、5V印加、フレームタイム20ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印加電圧との比を%で表した値)
TN-LCD表示素子の作製は以下のようにして行った。
【0027】
対向する平面透明電極上に配向膜「AL-1051」(JSR社製)を塗布し、この配向膜をラビングして90°配向状態を形成したツイスト角90℃のTN-LCDセルを作製し、このセルに液晶組成物を注入してTN-LCD表示素子を作製した。
また、実験で使用した試験用IPSディスプレイは、特表平5-505247号公報記載の櫛形構造を有するセルを作成した。電極間隔は20μm、セル厚は5μmである。
【0028】
化合物の記載に下記の略号を使用する。
【化22】
【0029】
例えば、以下に示すように略号を用いる。
【化23】
【0030】
(実施例1・比較例1〜3)
ネマチック組成物No.1を調整し、この組成物の諸特性を測定した結果を比較例1〜3と共に表1に示す。
【表1】
【0031】
実施例1は、化合物(1)を含まない比較例1と比較して、実用上十分に広いネマチック温度範囲を有していながら大きなΔεと低い粘性を同時に実現している。化合物(2)、化合物(3)、化合物(4)を含まない比較例2は粘性は比較的低いもののΔεが小さくネマチック相下限温度がかなり高い。又、比較例3は化合物(1)の使用量が多すぎるため、Δεは大きいものの、粘性が高くネマチック相下限温度も高いものであった。実施例1の液晶組成物を用いて作製したIPSディスプレイの特性は比較例1を用いたIPSディスプレイと比較して低電圧で駆動でき、しかも高速に応答した。また、60℃での恒温槽に500時間放置後の保持率も95%を達成しており、アクティブマトリクス型液晶表示素子用として十分使用できるレベルであった。
【0032】
比較例3は、60℃での恒温槽に500時間放置後の保持率が80%まで低下しており、アクティブマトリクス型液晶表示素子用として使用できるレベルをわずかに下回っていた。
【0033】
(実施例2及び比較例4、5)
ネマチック組成物No.2を調整し、この組成物の諸特性を測定した結果を比較例4、5と共に表2に示す。
【表2】
【0034】
実施例2と比較例4及び比較例5を比較すると、これらは実用上十分に広いネマチック温度範囲を有して。しかし、比較例4では粘性が高く、比較例5ではΔεが小さい欠点を有しており、実施例2が十分に広いネマチック温度範囲、低い粘性及び大きなΔεを同時に実現していることが解る。実施例2を用いて作製したIPSディスプレイの特性は比較例4、比較例5を用いたIPSディスプレイと比較して高速に応答した。また60℃での恒温槽に500時間放置後の保持率も95%を達成しており、アクティブマトリクス型液晶表示素子用として十分使用できるレベルであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のIPS用液晶組成物は、液晶相温度範囲と低温での液晶安定性のバランスに優れ、大きい誘電率異方性と低い粘性を同時に有する、これを液晶表示素子に用いた場合、幅広い温度領域で使用可能で、低電圧駆動特性と短い応答時間を有するため、AM-LCD方式で駆動されるIPSディスプレイ用組成物として有用である。
Claims (5)
- 第一成分として一般式(1)
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -O- 及び/又は -S- に置き換えられてもよい)
(b) 1,4-フェニレン(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -N- に置き換えられてもよい)
(c) 1,4-シクロヘキセニレン、1,4-ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はCN又はハロゲンで置換されていてもよく、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-CH=CH-CH2CH2-、-CH2CH2-CH=CH- 又は単結合であり、l、m、n、o及びpはそれぞれ独立して0、1又は2であり、X1〜X10はそれぞれ独立してH、F又はClであり、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ独立して-OCH2-、-OCF2-、-OCHF-、-CF2-又は単結合であり、Y1、Y2及びY3はそれぞれ独立してF又はClである。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を5〜60質量%含有することを特徴とし、配向制御層を有する2枚の基板間の液晶層が液晶分子の長軸をほぼ基板と平行にして配向し、液晶を駆動するための電場が液晶層に対してほぼ平行になるように駆動されるアクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物。 - ネマチック−アイソトロピック転移温度が70℃〜120℃であり、クリスタル又はスメクチック−ネマチック転移温度が-80℃〜-10℃であり、屈折率の異方性が0.04〜0.13である請求項1記載の液晶組成物。
- 請求項1〜4の何れかに記載の液晶組成物を用いた、配向制御層を有する2枚の基板間の液晶層が液晶分子の長軸をほぼ基板と平行にして配向し、液晶を駆動するための電場が液晶層に対してほぼ平行になるように駆動されるアクティブマトリクス型液晶表示素子。
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