JP5233137B2 - Ocb液晶表示素子 - Google Patents

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本発明は、液晶組成物にベンド配向を形成させ位相差補償フィルムを組み合わせたOCB(Optically Compensated Birefringence)液晶表示素子に関する。
TN(Twisted Nematic)液晶表示素子(LCD)や、STN(Supertwisted Nematic)−LCDのように、ねじり構造(twist)を持った液晶表示素子は、このねじり構造のためいずれも視野角が狭く、上下左右から視角をもって観察すると画像の反転やコントラストの低下などの不具合を有していた。この問題を解決するために、TN方式の液晶表示素子に位相差フィルムをつけたり、配向分割法を組み合わせた方式が提案されたが、視野角の改善を十分でなかったり、製造が困難など未解決点も多く残っている。
視野角改善に加え、高速応答対応の目的で、液晶がベンド構造を持ったセルに位相差フィルムを組み合わせたOCB(Optically Compensated Birefringence)モードが提案されている(特許文献1及び非特許文献1)。
インフラの整備に伴い、屋外での使用を念頭に置いた動画対応表示の使用を可能とする、広い使用温度範囲で低消費電力(長時間のバッテリー駆動が可能)の液晶表示素子への要請が強まっている。OCB液晶表示素子では残留リタデーションを光学的に補償するための位相差フィルムを上下に配置し、黒表示を行っている。
OCBモードのベンドセルでは、電圧無印加の状態では安定構造であるスプレイ配向をしており、このスプレイ配向は電圧印加によりベンド配向に変化する。スプレイ配向からベンド配向に転移するときの電圧はスプレイ-ベンド転移臨界電圧(Vcr)と呼ばれる。表示をするには、まず初期状態としてベンド配向を確保する必要があるため、OCBモードでの駆動電圧はVcr以上となる。低消費電力化には黒を表示させる電圧(黒電圧)およびVcrを低く設定できる液晶組成物が求められている。
黒電圧およびVcrを低くするためには、液晶の誘電率異方性(Δε)を大きくするか、弾性定数K11、K33の絶対値を小さくする必要がある。Δεが大きいと、周囲の汚染の影響を受けやすくなるため、AM-LCDに要求される高い電圧保持率を維持することが難しくなるという問題があり、信頼性の観点から弾性定数K11、K33の絶対値を小さくすることが望まれている。
弾性定数K11とK33を比較した場合、K11を小さくすることの方がより黒表示電圧の低減には有効である。しかしながら従来の技術では弾性定数K11を下げるためには液晶のネマチック相転移温度を下げることしか有効な手段がなく、小さな弾性定数K11の液晶を使用する場合は、液晶表示素子の動作温度範囲が著しく損なわれ実用上問題であった。 一方、ナフタレン骨格を有する化合物を用いた液晶組成物は既に知られている(特許文献2及び3)。しかしながら、従来ナフタレン系化合物を用いた液晶組成物は、TN型のアクティブマトリックス液晶表示素子を念頭に開発が進められてきた。TN型のアクティブマトリックス液晶表示素子とOCB液晶表示素子は表示方式が異なるため、必要とされる物性値が大きく異なる。そのため、OCB液晶表示素子において具体的にどの様な化合物をもちいて、液晶組成物におけるどの様な物性値を改善することが、OCB液晶表示素子の表示特性を改善できるかについては言及されていなかった。
以上のことから、液晶相温度範囲が広く、広がりの弾性定数K11の小さい液晶組成物を得ることは困難であり、OCB液晶表示素子の表示特性改善の障害となっていた。
特開平7−84254号公報 特開2001−40354号公報 特開2004−231789号公報 SID93DIGEST(277頁)
本発明が解決しようとする課題は、広がりの弾性定数K11の小さい液晶組成物を用いることにより黒電圧が低く、かつ動作温度範囲の広いOCB液晶表示素子を提供することにある。
本発明は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、透明電極を有する2枚の基板間及び配向膜から構成されるベンド配向セルに液晶組成物を挟持し、位相差補償フィルムを組み合わせた構造を有する液晶表示素子において、該液晶組成物が一般式(1)、
Figure 0005233137
(式中、B1は(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -O- 及び又は -S- に置き換えられてもよい)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -N- に置き換えられてもよい)
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)及び基(b)はCH3又はハロゲンで置換されていても良く、
L1は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-を表し、
B1及びL1が複数存在する場合はそれらは同一でも良く異なっていても良く、
lは0、1又は2を表し、
mは0又は1を表し、
Q1は-OCH2-、-OCF2-、-OCHF-、-CF2-、又は単結合を表し、
X1〜X5はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。) で表される化合物を20質量%〜80質量%含有し、
かつ該液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移温度が100℃〜140℃であり、広がりの弾性定数K11が6pN<K11<9pNであり、曲がりの弾性定数K33が8pN<K33<16pNであることを特徴とする液晶表示素子を提供する。
本発明のOCB液晶表示素子は、広がりの弾性定数が小さく、ネマチック温度範囲の広い液晶組成物を用いることにより、動作電圧が低く、動作温度範囲が広く、非常に実用的である。
本願発明のOCB液晶表示素子に使用される液晶組成物において、一般式(1)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種〜5種が好ましく、1種〜3種がより好ましい。
一般式(1)で表される化合物の含有率は、20〜80質量%の範囲であることが好ましく、20〜50質量%の範囲であることがより好ましい。
一般式(1)において、B1はtrans-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、3-fluoro-1,4-フェニレン基又は3,5-difluoro-1,4-フェニレン基が好ましく、trans-1,4-シクロへキシレン基又は3-fluoro-1,4-フェニレン基がより好ましい。L1は、単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-であるが、-CH2CH2-、-OCF2-、-CF2O-又は単結合が好ましく、-CH2CH2-、-CF2O-又は単結合がより好ましく、-CH2CH2-又は単結合が特に好ましい。
Q1は-OCH2-、-OCF2-、-OCHF-、-CF2-、又は単結合であるが、-OCF2-、-CF2-、又は単結合が好ましく、単結合がより好ましい。X1〜X5はそれぞれ独立してH、F又はClであるが、-H、又は-Fが好ましく、X5はFがより好ましい。
さらに詳述すると、一般式(1)の具体的な構造として以下の化合物が好ましく、化合物(1-14)、(1-16)、(1-20)、(1-22)が特に好ましい。
Figure 0005233137
Figure 0005233137
本発明に使用される液晶組成物において、ネマチック−アイソトロピック転移温度は100℃〜140℃であることが好ましく、100℃〜120℃であることがより好ましい。25℃における広がりの弾性定数K11が6pN<K11<9pNであることが好ましい。25℃における曲がりの弾性定数K33が8pN<K33<16pNであることが好ましく、8pN<K33<14pNであることがより好ましい。
液晶組成物の物性値を調整し、さらに低粘性化、低電圧化を達成させるために第二成分として、一般式(2)
Figure 0005233137
(式中、B2はB1と同じ意味を表し、
L2及びL3はそれぞれ独立にL1と同じ意味を表し、
B2、L2及びL3が複数存在する場合はそれらは同一でも良く異なっていても良く、
nは3又は5を表し
oは0、1又は2を表し、
Q2はQ1と同じ意味を表し、
X6、X7及びX8はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。
一般式(2)で表される化合物を2種〜15種含有することが好ましく、2種〜10種がより好ましく、4種〜7種がさらに好ましい。
一般式(2)で表される化合物の含有率は、5〜60質量%の範囲であることが好ましく、30〜60質量%の範囲であることがより好ましい。
B2はtrans-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、3-fluoro-1,4-フェニレン基又は3,5-difluoro-1,4-フェニレン基が好ましく、1,4-フェニレン基又はtrans-1,4-シクロへキシレン基がより好ましい。L2およびL3は、単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-であるが、-CH2CH2-、-OCF2-、-CF2O-又は単結合が好ましく、-CH2CH2-、-CF2O-又は単結合がより好ましく、-CH2CH2-又は単結合が特に好ましい。
Q2は、-OCF2-、-CF2-、又は単結合が好ましく、単結合がより好ましい。X4〜X8はそれぞれ独立して、-H、又は-Fが好ましく、X8はFが好ましい。
さらに詳述すると、一般式(2)は、具体的な構造として以下の一般式で表される化合物が好ましい。
Figure 0005233137
Figure 0005233137
本発明の液晶表示素子は、特にアクティブマトリクス駆動用液晶表示素子として有用であり、反射モード又は半透過モード用液晶表示素子として用いることもできる。
本発明の液晶組成物に使用されるネマテチック液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
以下に例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下のおよび比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
TN-I :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)を液晶相上限温度とする
Δε :誘電率異方性
Δn :屈折率異方性
γ1 :回転粘性(mPa・s)
K11 :広がりの弾性定数(pN)
K33 :曲がりの弾性定数 (pN)
Vcr :スプレイからベンドへの転移電圧(V)(セル厚5.5μmのOCBセルに液晶を注入し、電圧20V印加後電圧を下げ、スプレイとベンドが釣り合う電圧。)
黒電圧 :セル厚5.5μmのOCBセルにおいて黒表示となる電圧(V)
化合物記載に下記の略号を使用する。
末端のn(数字) CnH2n+1-
2 -CH2CH2-
On -OCnH2n+1
F -F
ndm- CnH2n+1-C=C-(CH2)m-1-
-T- -C≡C-
Figure 0005233137
(実施例1、2) 液晶組成物の調製
以下に示すネマチック液晶組成物(No.1)及び(No.2)を調整しその物性値を測定し、その結果を表1に示す。
Figure 0005233137
実施例1、2のネマチック液晶組成物(No.1)、(No.2)の特性は、ネマチック相-等方性液体相転移温度(TN-I)がそれぞれ100.4℃、100.9℃と100℃を超えているにも関わらず、広がり弾性定数K11がそれぞれ7.5pN、8.2pNと小さいものであった。セル厚5.5μmのOCBセルでのVcrがそれぞれ1.91V、1.96Vと2V以下であり、黒電圧もそれぞれ5.5V、5.6Vと低電圧で駆動できた。
(実施例3、4) 液晶組成物の調製
以下に示すネマチック液晶組成物(No.3)及び(No.4)を調整しその物性値を測定し、その結果を表2に示す。
Figure 0005233137
実施例3、4のネマチック液晶組成物(No.3)、(No.4)の特性は、ネマチック相-等方性液体相転移温度(TN-I)がそれぞれ104.9℃、106.2℃と100℃を超えているにも関わらず、広がり弾性定数K11がそれぞれ9.0pN、8.8pNと小さいものであった。セル厚5.5μmのOCBセルでのVcrがそれぞれ1.98V、2.00Vと2V以下であり、黒電圧もそれぞれ5.5Vと低電圧で駆動できた。
(比較例1、2)液晶組成物の調製
比較例として以下に示すネマチック液晶組成物(R1)、(R2)を調製しその物性値を測定し、その結果を表3に示す。
Figure 0005233137
比較例1、2は第一成分を20%未満しか含んでいないものであり、ネマチック相-等方性液体相転移温度(TN-I)がそれぞれ103.5℃、105.0℃と100℃を超えているため広がり弾性定数K11がそれぞれ10.6pN、10.4pNと実施例と比較して大きいものであった。セル厚5.5μmのOCBセルでのVcrがそれぞれ2.08V、2.05Vと2Vを超えており、実用上好ましくなかった。黒電圧もそれぞれ5.8Vと液晶組成物(No.1〜No.4)と比較して高電圧であった。
(比較例3、4)液晶組成物の調製
比較例として以下に示すネマチック液晶組成物(R3)、(R4)を調製しその物性値を測定し、その結果を表4に示す。
Figure 0005233137
比較例3、4は液晶組成物(No.1)および(No.2)において、第一成分の化合物を含まず、第二成分の化合物が10%未満のものであり、ネマチック相-等方性液体相転移温度(TN-I)は液晶組成物(No.1)および(No.2)と同様それぞれ102.0℃、100.8℃と100℃を超えているが、広がり弾性定数K11がそれぞれ9.7pN、9.3pNと実施例と比較して大きいものであった。セル厚5.5μmのOCBセルでのVcrもそれぞれ2.05V、2.07Vと液晶組成物(No.1)および(No.2)と比較して高く、実用上好ましくなかった。黒電圧もそれぞれ5.8V、5.7Vと液晶組成物(No.1〜No.4)と比較して高電圧であった。

Claims (4)

  1. 透明電極を有する2枚の基板間及び配向膜から構成されるベンド配向セルに液晶組成物を挟持し、位相差補償フィルムを組み合わせた構造を有する液晶表示素子において、該液晶組成物が一般式(1)
    Figure 0005233137
    (式中、B1は(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -O- 及び又は -S- に置き換えられてもよい)
    (b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は -N- に置き換えられてもよい)
    からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)及び基(b)はCH3又はハロゲンで置換されていても良く、
    L1は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-を表し、
    B1及びL1が複数存在する場合はそれらは同一でも良く異なっていても良く、
    lは0、1又は2を表し、
    mは0又は1を表し、
    Q1は-OCH2-、-OCF2-、-OCHF-、-CF2-、又は単結合を表し、
    X1〜X5はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。) で表される化合物を20質量%〜80質量%含有し、
    かつ該液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移温度が100℃〜140℃であり、広がりの弾性定数K11が6pN<K11<9pNであり、曲がりの弾性定数K33が8pN<K33<16pNであることを特徴とする液晶表示素子。
  2. 液晶組成物が第二成分として一般式(2)
    Figure 0005233137
    (式中、Rはエチル基又はビニル基を表し、
    B2はB1と同じ意味を表し、
    L2及びL3はそれぞれ独立にL1と同じ意味を表し、
    B2、L2及びL3が複数存在する場合はそれらは同一でも良く異なっていても良く、
    oは0、1又は2を表し、
    Q2はQ1と同じ意味を表し、
    X6、X7及びX8はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。)で表される化合物を含有する請求項1記載の液晶表示素子。
  3. 一般式(1)においてl+m=1または2となる化合物を20質量%〜60質量%含有する、請求項1記載の液晶表示素子。
  4. 一般式(1)が一般式(1a)
    Figure 0005233137
    (式中X2は一般式(1)におけると同じ意味を表す。) で表され、該化合物の含有量が20質量%〜40質量%である、請求項1記載の液晶表示素子。
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