以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料改質装置を備えた内燃機関を示す概略構成図である。同図に示される内燃機関1は、例えば車両の走行用駆動源として用いられると好適なものである。内燃機関1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料成分を含む混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストン4を往復移動させることにより動力を発生する。なお、図1には、1気筒のみが示されるが、本実施形態の内燃機関1は、多気筒エンジンとして構成される。
各燃焼室3の吸気ポートは、吸気マニホールド5を構成する吸気管5aにそれぞれ接続され、各燃焼室3の排気ポートは、排気マニホールド6を構成する排気管6aにそれぞれ接続されている。また、内燃機関1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁Viと、排気ポートを開閉する排気弁Veとが燃焼室3ごとに配設されている。各吸気弁Viおよび各排気弁Veは、例えば、可変バルブタイミング機能等を有する動弁機構7によって開閉させられる。更に、内燃機関1のシリンダヘッドには、点火プラグ8が燃焼室3ごとに配設されている。また、排気マニホールド6には、各燃焼室3からの排気ガスの空燃比を検出する排気空燃比センサ(O2センサ)SAFが設置されている。そして、排気マニホールド6は、それぞれ排気浄化触媒を含む排気浄化装置としての前段触媒装置9aおよび後段触媒装置9bに接続されている。
図1に示されるように、吸気マニホールド5を構成する各吸気管5aは、サージタンク10に接続されており、サージタンク10には、給気管L1が接続されている。これらの吸気マニホールド5(各吸気管5a)、サージタンク10および給気管L1は、内燃機関1の吸気路を構成する。給気管L1は、エアクリーナ11を介して図示されない空気取入口に接続されており、給気管L1の中途(サージタンク10とエアクリーナ11との間)には、スロットルバルブ(本実施形態では、電子制御式スロットルバルブ)12が組み込まれている。また、サージタンク10には、圧力センサSPが設けられており、圧力センサSPは、サージタンク10の内部圧力を検出する。
更に、給気管L1には、エアクリーナ11とスロットルバルブ12との間に位置するように第1エアフローメータAFM1が設置されている。そして、給気管L1からは、スロットルバルブ12と第1エアフローメータAFM1との間(スロットルバルブ12の上流側)に定められた分岐部BPにおいてバイパス管(改質空気供給路)L2が分岐されている。バイパス管L2は、中途に、エアポンプAP、第2エアフローメータAFM2、流量調整弁14および開閉弁15を分岐部BP側からこの順番で含み、その先端(分岐部BP側の端部と反対側の端部)は、燃料改質装置20に接続されている。なお、エアポンプAP、第2エアフローメータAFM2、流量調整弁14および開閉弁15の配置順序は、この順序に限られるものではなく、エアポンプAPが流量調整弁14および開閉弁15の上流側に配置されていれば、それ以外の順序は任意に定めることができる。
燃料改質装置20は、両端が閉鎖された概ね筒状の本体21を有し、本体21の内部には、上述のバイパス管L2が接続される空燃混合部22と、空燃混合部22に隣接する改質反応部23とが画成されている。空燃混合部22には、バイパス管L2に加えて、改質用燃料噴射弁16が接続されている。改質用燃料噴射弁16は、燃料ポンプ17を介して燃料タンク18に接続されており、ガソリン等の炭化水素系燃料(液体燃料)を空燃混合部22内に噴射可能なものである。また、改質反応部23には、例えばジルコニアにロジウムを担持させた改質触媒が配置されると共に、改質触媒を予熱するための電気式プレヒータ24が配置されている。
更に、本体21の内部には、改質反応部23の下流側に改質燃料分配室25が画成されている。改質燃料分配室25には、改質燃料供給管26の基端が接続されており、改質燃料供給管26の先端側は、各燃焼室3に向けて分岐されている。改質燃料供給管26の各先端部には、改質燃料供給ノズル27が装着されており、各改質燃料供給ノズル27は、対応する燃焼室3の吸気ポート近傍に配置されている。なお、各改質燃料供給ノズル27と改質燃料分配室25とを個別に連絡するように、複数の改質燃料供給管26が燃焼室3ごとに設けられてもよい。また、内燃機関1は、改質燃料供給管26内の改質燃料を冷却するための熱交換器28を有している。熱交換器28の冷却媒体としては、例えばエンジン冷却水が用いられる。更に、燃料改質装置20の改質燃料分配室25には、その内部の流体のCO2濃度を検出するためのCO2センサScが備えられている。CO2センサScとしては、赤外光式センサや、半導体センサ等を採用することができる。
加えて、内燃機関1は、各吸気管5a(各吸気ポート)に装備された通常燃料噴射弁160を有しており、燃料改質装置20を作動させた状態、または、燃料改質装置20に対する空気および燃料の供給を停止させた状態で、各通常燃料噴射弁160から上記燃料ポンプ17により圧送されるガソリン等の炭化水素系燃料を各吸気管5a(吸気ポート)内に噴射させて動力を得ることが可能である。なお、通常燃料噴射弁160は、対応する燃焼室3内に炭化水素系燃料を直接噴射するものであってもよい。
図2は、上述の内燃機関1の制御ブロック図である。同図に示されるように、内燃機関1は、制御手段として機能する電子制御ユニット(以下「ECU」という)30を有している。ECU30は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート、および、各種情報やマップ等が記憶されるメモリを含む。そして、このECU30の入出力ポートには、上述の動弁機構7、点火プラグ(イグナイタ)8、スロットルバルブ12、流量調整弁14、開閉弁15、改質用燃料噴射弁16、通常燃料噴射弁160、電気式プレヒータ24、エアポンプAP、更には、スタータ19等が適宜制御回路等を介して接続されている。
また、ECU30の入出力ポートには、各種センサ類、すなわち、上述のエアフローメータAFM1およびAFM2、CO2センサSc、圧力センサSP、排気空燃比センサSAF等が接続されている。第1エアフローメータAFM1は、空気取入口から給気管L1に取り入れられた空気の総流量(全燃焼室3に供給される空気の総量)を検出し、検出値を示す信号をECU30に与える。また、第2エアフローメータAFM2は、バイパス管L2を流通する空気の流量を検出し、検出値を示す信号をECU30に与える。CO2センサSc、圧力センサSPおよび排気空燃比センサSAFも、それぞれ検出値を示す信号をECU30に与える。
更に、ECU30の入出力ポートには、イグニッションスイッチ31、アクセル位置センサ32、クランク角センサ33、水温センサSWおよびシフトポジションセンサSSP等が接続されている。アクセル位置センサ32は、図示されないアクセルペダルの踏込量を示す信号をECU30に与え、クランク角センサ33は、内燃機関1のクランク角を示す信号をECU30に与え、水温センサSWは、内燃機関1の冷却系統を流通する冷却水の温度を示す信号をECU30に与え、シフトポジションセンサSSPは、図示されない変速機のシフト位置を示す信号をECU30に与える。ECU30は、エアフローメータAFM1,AFM2、アクセル位置センサ32、クランク角センサ33、シフトポジションセンサSSP等からの信号等に基づいて、スロットルバルブ12や流量調整弁14の開度、改質用燃料噴射弁16や通常燃料噴射弁160による燃料噴射量、点火プラグ8による点火タイミング、吸気弁Viおよび排気弁Veの開閉タイミング等を制御する。
さて、例えば機関始動時や低負荷時等、所定条件の下で上述の内燃機関1を作動させる場合、燃料改質装置20の空燃混合部22に対して、ECU30によって制御されるエアポンプAPや流量調整弁14等を含むバイパス管L2を介して空気が導入されると共に、ECU30によって制御される改質用燃料噴射弁16からガソリン等の炭化水素系燃料が噴射される。ガソリン等の炭化水素系燃料は、空燃混合部22にて気化すると共にバイパス管L2からの空気と混ざり合い、改質反応部23へと流れ込む。改質反応部23では、改質触媒により炭化水素系燃料と空気とが反応させられ、次の(1)式にて表わされる部分酸化反応が進行する。
CmHn+(m/2)O2 → mCO+(n/2)H2 …(1)
そして、上記(1)式の反応が進行することにより、燃料成分であるCOおよびH2を含む改質ガス(改質燃料)が生成され、得られた改質ガスは、燃料改質装置20から改質燃料供給管26および改質燃料供給ノズル27を介して各燃焼室3の吸気ポートに供給される。また、各燃焼室3の吸気ポートには、ECU30によって開度調整される給気管L1のスロットルバルブ12を介して空気が導入される。従って、燃料改質装置20から各吸気ポートに導入された改質ガスは、更に空気と混ざり合った後、各燃焼室3内に吸入される。そして、所定のタイミングで各点火プラグ8が点火されると、各燃焼室3内で燃料成分であるCOおよびH2が燃焼してピストン4を往復移動させ、これにより、内燃機関1から所望の動力を得ることができる。
ところで、上述のように、改質ガスを用いて内燃機関1を運転するに際しては、燃料改質装置20における改質反応が良好に進行して所望の燃料成分が得られるように、改質反応部23における改質効率を高く維持する必要がある。また、改質反応部23における改質効率は、改質反応部23(改質触媒)における炭化水素系燃料および空気の空燃比と相関関係を有しており、改質ガス中のCOやH2といった燃料成分の収率(改質効率)を高めるためには、改質反応部23における炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cを1付近に設定することが好ましい。
一方、改質触媒により炭化水素系燃料と空気とを反応させ、上記(1)式の部分酸化反応を進行させて燃料成分を得る場合、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cが適正値である1付近にある場合(例えば、図3において、1.0から値aまでの範囲)、改質触媒を流出した流体中のCO2やH2Oの濃度は、図3に示されるように、O/Cに対して概ね線形に変化する。また、上記O/Cが1を多少超えたあたりから(例えば、O/C=1.05位から)、酸素過多となって例えば次の(2)の完全酸化反応が進行し、図3に示されるように改質触媒を流出した流体中のCO2やH2Oの濃度が著しく高まる。
CH1.869+1.467・O2 → CO2+0.935・H2O +596.5〔kJ〕…(2)
これらの点に鑑みて、本実施形態の燃料改質装置20では、改質反応部23におけるO/Cを1付近に設定するために、制御手段としてのECU30によって図4に示される改質制御ルーチンが実行される。この場合、ECU30は、まず、運転条件フラグの値を確認し(S10)、運転条件フラグが「0」である場合、アクセル位置センサ32等の検出値に基づいて内燃機関1の運転条件(例えば、目標トルク)を読み込む(S12)。更に、ECU30は、所定のマップを用いて、S12にて読み込んだ機関運転条件に対応した燃料改質装置20への空気供給量(以下、適宜「改質空気供給量」という)を求めると共に、求めた改質空気供給量との関係で、改質反応部23(改質触媒)における混合気のO/Cが1になるように改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を算出する(S14)。
S14にて改質空気供給量と燃料噴射量とを設定すると、ECU30は、S14にて定めた量の空気と、S14に定めた量の炭化水素系燃料とが燃料改質装置20に供給されるように、流量調整弁14および改質用燃料噴射弁16を制御する(S16)。なお、ECU30は、S16の処理に先立って、S14にて定められる改質空気供給量と燃料噴射量とを踏まえた上で、各燃焼室3に吸入される混合気の空燃比を所望の値にするためのスロットルバルブ12の開度をS12で読み込んだ機関運転条件に応じて算出しており、S16では、流量調整弁14および改質用燃料噴射弁16に加えて、スロットルバルブ12の開度をも制御する。
S16の処理の後、ECU30は、CO2センサScからの信号に基づいて、改質触媒の下流側、すなわち、改質反応部23から改質燃料分配室25へと流出した改質ガスに含まれるCO2の濃度Vを取得し(S18)、まず、CO2濃度Vが予め定められた閾値VHHを下回っているか否か判定する(S20)。閾値VHHは、O/Cが1より充分に大きいときの改質ガス中のCO2濃度であり(図3参照)、S20にてCO2濃度Vが閾値VHH以上であると判断される場合には、燃料改質装置20に何らかのトラブルが発生していると想定される。このため、ECU30は、S20で否定判断を行った場合、燃料改質装置20に何らかの故障が発生しているとみなし、図示されない所定の警告灯を点灯させるなどして警報を発生させた上で(S21)、改質制御ルーチンを一旦終了させる。このように、図3に示される特性を利用すれば、改質ガス中のCO2濃度Vに基づいて、燃料改質装置20の故障判定を実行することができる。
S20にてCO2濃度Vが閾値VHHを下回っていると判断した場合(S20で肯定判断を行った場合)、ECU30は、更に、S18にて取得したCO2濃度Vが予め定められた閾値VL以上であるか否か判定する(S22)。本実施形態では、閾値VLの値は、図3に示されるように、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cが1.0である場合の改質ガス中のCO2の濃度とされる。また、S22にてCO2濃度Vが閾値VL以上であると判断した場合、ECU30は、S18にて取得したCO2濃度Vが予め定められた閾値VHを上回っているか否か判定する(S24)。本実施形態では、閾値VHの値は、図3に示されるように、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cが値a(a>1.0であり、例えば、a=1.02〜1.03)である場合の改質ガス中のCO2の濃度とされる。
ここで、S22にてCO2濃度Vが閾値VLを下回っていると判断される場合、改質反応部23への燃料噴射量が過剰であるか、あるいは、改質空気供給量が不足していることにより、改質反応部23におけるO/Cが1.0を下回っている(改質反応部23内がリッチになっている)ことになる。このため、ECU30は、S22にて否定判断を行った場合、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔF(ただし、ΔFは正の所定値である)だけ減少させるように補正量(−ΔF)を設定する(S26)。なお、S26では改質空気供給量を所定量だけ減少させるように補正量が設定されてもよい。
また、S22にてCO2濃度Vが閾値VL以上であると判断された後、S24にてCO2濃度Vが予め定められた閾値VHを上回っていると判断された場合、改質反応部23への燃料噴射量が不足しているか、あるいは、改質空気供給量が過剰であることにより、改質反応部23におけるO/Cが値aを上回っている(改質反応部23内がリーンになりすぎている)ことになる。このため、ECU30は、S24にて肯定判断を行った場合、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔFだけ増加させるように補正量(+ΔF)を設定する(S28)。なお、S28において、改質空気供給量を所定量だけ増加させるように補正量が設定されてもよい。
一方、S22にてCO2濃度Vが閾値VL以上であると判断された後、S24にてCO2濃度Vが予め定められた閾値VH以下である判断された場合、改質反応部23への燃料噴射量や改質空気供給量が概ね適正であり、改質反応部23におけるO/Cが1.0から値aまでの範囲に含まれていることになる。この場合、基本的には、改質反応部23におけるO/Cが改質ガス中の燃料成分の収率(改質効率)を高める1付近に保たれていることになるが、O/Cが1.0から値aの範囲内にある場合、若干の酸素過剰状態(リーン状態)となる。
このため、本実施形態において、ECU30は、S24にて否定判断を行った場合、改質反応部23におけるO/Cを1.0により一層近づけるための補正量(ΔFm)を設定する(S30)。本実施形態では、例えば内燃機関1の回転数および吸入空気量(第1エアフローメータAFM1の検出値)に応じて燃料噴射量の増量分を上記補正量(ΔFm)として規定するマップがECU30の記憶装置に格納されており、S30にて、ECU30は、このマップから補正量(ΔFm)を読み出す。
なお、S30で用いられるマップは、例えば内燃機関1の回転数および吸入空気量に応じて、その時点の燃料噴射量に対する燃料増量分の割合を規定するものであってもよい。また、S30で用いられるマップは、例えば内燃機関1の回転数および吸入空気量に応じて、改質空気供給量の減量分またはその時点の改質空気供給量に対する減量分の割合を規定するものであってもよい。
上述のS26,S28またはS30の処理の後、ECU30は、各種センサからの信号に基づいて、目標トルク等の機関運転条件が変動したか否か判定する(S32)。そして、ECU30は、S32にて機関運転条件が変動していないと判断した場合にのみ、上述の運転条件フラグを「1」とした上で(S34)、上述のS10以降の処理を再度実行する。
S10以降の処理が再度実行される際、切換開始フラグが「1」とされていれば(S10にて運転条件フラグが「0」ではないと判断された場合)、S12およびS14の処理はスキップされる。そして、S10以降の処理が再度実行される際には、S26にて補正量(−ΔF)が設定されている場合、次のS16では、設定されている燃料噴射量からΔFを差し引いた量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射され、S28にて補正量(+ΔF)が設定されている場合、次のS16では、設定されている燃料噴射量にΔFだけ加算した量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射される。
すなわち、本発明による燃料改質装置20では、図3に関連して説明された特性を踏まえて、CO2センサScにより検出されるCO2濃度VがVLからVHまでの範囲内に含まれるように改質反応部23に対する炭化水素系燃料の供給量が補正される。これにより、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cを、およそ1から1をわずかに上回る値aまでの範囲内に精度よく設定することが可能となる。
この結果、燃料改質装置20では、改質反応部23における改質効率を良好に維持すると共に、燃料改質装置20における未改質燃料を減少させることが可能となる。また、改質触媒を流出した改質ガスに含まれるCO2やH2の濃度は、改質触媒における反応状況を直ちに反映することから、CO2濃度Vを用いれば、改質触媒での反応状況に応じた適切な空燃比制御を実行することができる。更に、改質触媒の温度は、上記O/Cが例えばおよそ1.05を超えたあたりから急激に上昇することから、上述のように、O/Cを、およそ1から1をわずかに上回る値aまでの範囲内に保つことにより、改質触媒の過剰な昇温をも抑制することが可能となる。
また、本実施形態では、CO2濃度VがVLからVHまでの範囲内に含まれると判断され、S30にて補正量(ΔFm)が設定されている場合、次のS16では、設定されている燃料噴射量にΔFmを加算した量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射されることになる。このように、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cがおよそ1から1をわずかに上回る値aまでの範囲に含まれている場合、更に、改質反応部23に対する炭化水素系燃料の供給量を僅かに増加させることにより、改質反応部23におけるO/Cを1.0により一層近づけることが可能となる。これにより、燃料改質装置20に対する燃料供給量を適正にすることができる。
なお、改質燃料分配室25にCO2センサScを設ける代わりに、H2Oセンサを設置してもよい。すなわち、図3に関連して説明された特性を利用すれば、H2Oセンサによって改質触媒を流出した改質ガスに含まれるH2Oの濃度を検出し、H2O濃度に基づいて改質触媒における炭化水素系燃料および空気の空燃比を設定(補正)することも可能である。また、閾値VLおよびVHの設定の仕方は、上述の例に限られるものではなく、改質反応部23におけるO/Cが1付近に収まる範囲内で任意に定めることができる。
〔第2実施形態〕
以下、図5および図6を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上述の第1実施形態に関連して説明されたものと同一の要素には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略される。
図5は、上述の燃料改質装置20において実行され得る他の改質制御ルーチンを説明するためのフローチャートである。図5に示される改質制御ルーチンを実行する場合も、ECU30は、まず、運転条件フラグの値を確認し(S40)、運転条件フラグが「0」である場合、アクセル位置センサ32等の検出値に基づいて内燃機関1の運転条件(例えば、目標トルク)を読み込むと共に、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量の補正量ΔFを積算した値ΔFTOTをリセットする(S42)。
更に、ECU30は、所定のマップを用いて、S42にて読み込んだ機関運転条件に対応した改質空気供給量を求めると共に、求めた改質空気供給量との関係で、改質反応部23(改質触媒)における混合気のO/Cが1になるように改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を算出する(S44)。そして、ECU30は、S44にて定めた量の空気と、S44に定めた量の炭化水素系燃料とが燃料改質装置20に供給されるように、流量調整弁14および改質用燃料噴射弁16を制御する(S46)。なお、ECU30は、S46にて、各燃焼室3に吸入される混合気の空燃比が所望の値になるように、スロットルバルブ12の開度をも制御する。
S46の処理の後、ECU30は、CO2センサScからの信号に基づいて、改質触媒の下流側、すなわち、改質反応部23から改質燃料分配室25へと流出した改質ガスに含まれるCO2の濃度Vを取得し(S48)、取得したCO2濃度Vが予め定められた閾値VL以上であるか否か判定する(S50)。本実施形態においても、閾値VLの値は、図3に示されるように、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cが1.0である場合の改質ガス中のCO2の濃度とされる。
また、S50にてCO2濃度Vが閾値VL以上であると判断した場合、ECU30は、S48にて取得したCO2濃度Vが予め定められた閾値VHを上回っているか否か判定する(S52)。本実施形態においても、閾値VHの値は、図3に示されるように、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cが値a(a>1.0であり、例えば、a=1.02〜1.03)である場合の改質ガス中のCO2の濃度とされる。
本実施形態において、S50にてCO2濃度Vが閾値VLを下回っていると判断される場合、改質反応部23への燃料噴射量が過剰であるが、あるいは、改質空気供給量が不足していることにより、改質反応部23におけるO/Cが1.0を下回っている(改質反応部23内がリッチになっている)ことになる。このため、ECU30は、S50にて否定判断を行った場合、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔF(ただし、ΔFは正の所定値である)だけ減少させるように補正量(−ΔF)を設定すると共に、ΔFTOT=ΔFTOT−ΔFとする補正量ΔFの積算処理を実行する(S54)。
また、S50にてCO2濃度Vが閾値VL以上であると判断された後、S52にてCO2濃度Vが予め定められた閾値VHを上回っていると判断された場合、改質反応部23への燃料噴射量が不足しているか、あるいは、改質空気供給量が過剰であることにより、改質反応部23におけるO/Cが値aを上回っている(改質反応部23内がリーンになりすぎている)ことになる。このため、ECU30は、S52にて肯定判断を行った場合、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔFだけ増加させるように補正量(+ΔF)を設定すると共に、ΔFTOT=ΔFTOT+ΔFとする補正量ΔFの積算処理を実行する(S56)。
更に、S50にてCO2濃度Vが閾値VL以上であると判断した後、S52にてCO2濃度Vが予め定められた閾値VH以下である判断した場合、ECU30は、改質反応部23におけるO/Cを1.0により一層近づけるための補正量(ΔFm)を設定する(S58)。本実施形態においても、例えば内燃機関1の回転数および吸入空気量に応じて燃料噴射量の増量分を上記補正量(ΔFm)として規定するマップがECU30の記憶装置に格納されており、S30にて、ECU30は、このマップから補正量(ΔFm)を読み出す。
そして、本実施形態では、S54またはS56の処理を実行した場合、ECU30は、補正量ΔFの積算値ΔFTOTの絶対値が所定値αを上回っているか否か判定する(S58)。ここで、ΔFTOTの絶対値が所定値αを上回るということは、炭化水素系燃料の増量補正または減量補正の何れかがある程度行われたとしても、改質反応部23におけるO/Cが所定範囲内(本実施形態では、1.0から値aまでの範囲)に収まらないということを意味するから、燃料改質装置20に何らかのトラブルが発生している可能性が高いものと想定される。このため、ECU30は、S60で肯定判断を行った場合、燃料改質装置20に何らかの故障が発生しているとみなし、図示されない所定の警告灯を点灯させるなどして警報を発生させた上で(S62)、改質制御ルーチンを一旦終了させる。このように、燃料改質装置20の故障判定は、改質触媒における炭化水素系燃料および空気の空燃比(O/C)を設定するための補正量ΔFの積算値ΔFTOTに基づいて実行されてもよい。
S60にて否定判断がなされた場合、または、S30の処理の後、ECU30は、各種センサからの信号に基づいて、目標トルク等の機関運転条件が変動したか否か判定する(S64)。そして、ECU30は、S64にて機関運転条件が変動していないと判断した場合にのみ、上述の運転条件フラグを「1」とした上で(S66)、上述のS40以降の処理を再度実行する。
S40以降の処理が再度実行される際、切換開始フラグが「1」とされていれば、S42およびS44の処理はスキップされる。そして、S40以降の処理が再度実行される際には、S54にて補正量(−ΔF)が設定されている場合、次のS46では、設定されている燃料噴射量からΔFを差し引いた量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射され、S56にて補正量(+ΔF)が設定されている場合、次のS46では、設定されている燃料噴射量にΔFだけ加算した量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射される。これにより、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cを、およそ1から1をわずかに上回る値aまでの範囲内に精度よく設定することが可能となり、改質反応部23における改質効率を良好に維持し、改質触媒の過剰な昇温を抑制すると共に、燃料改質装置20における未改質燃料を減少させることができる。
更に、本実施形態では、S58にて補正量(ΔFm)が設定されている場合、次のS46では、設定されている燃料噴射量にΔFmを加算した量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射されることになる。これにより、改質反応部23におけるO/Cを1.0により一層近づけることが可能となり、燃料改質装置20に対する燃料供給量を適正にすることができる。なお、本実施形態において、S54では改質空気供給量を所定量だけ減少させるように補正量が設定されてもよく、S56では改質空気供給量を所定量だけ増加させるように補正量が設定されてもよい。そして、S54やS56にて改質空気供給量の補正量を積算し、当該積算値に基づいて燃料改質装置20の故障判定を実行してもよい。
また、図5のS42,S54,S56およびS60で用いられる補正量ΔFの積算値ΔFTOTは、図6に示されるように、改質触媒における炭化水素系燃料および空気の空燃比(O/C)を設定するための補正量を設定した回数の積算値nで置き換えられてもよい。すなわち、図6の改質制御ルーチンにおいて、ECU30は、S55にて、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔFだけ減少させるように補正量(−ΔF)を設定すると、それと同時に補正回数の積算値nを1だけディクリメントする。また、ECU30は、S57にて、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔFだけ増加させるように補正量(+ΔF)を設定すると、それと同時に補正回数の積算値nを1だけインクリメントする。
そして、ECU30は、S55またはS57の処理の後、S61にて補正回数の積算値nの絶対値が所定値βを上回っているか否か判定する。ここで、補正回数の積算値nが所定値βを上回るということは、炭化水素系燃料の増量補正または減量補正の何れかがある程度の回数だけ行われても、改質反応部23におけるO/Cが所定範囲内(本実施形態では、1.0から値aまでの範囲)に収まらないということを意味するから、燃料改質装置20に何らかのトラブルが発生している可能性が高いものと想定される。このため、ECU30は、S61で肯定判断を行った場合、燃料改質装置20に何らかの故障が発生しているとみなし、図示されない所定の警告灯を点灯させるなどして警報を発生させた上で(S62)、改質制御ルーチンを一旦終了させる。
このような図6の改質制御ルーチンを採用しても、図5の改質制御ルーチンを採用した場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、図6の改質制御ルーチンでは、S40にて運転条件フラグが「0」であると判断された場合に、機関運転条件の読込みと共に、補正回数の積算値nのリセットが実行されることになる(S43)。
〔第3実施形態〕
以下、図7を参照しながら、本発明の第3実施形態について説明する。なお、上述の第1実施形態等に関連して説明されたものと同一の要素には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略される。
図7は、上述の燃料改質装置20において実行され得る更に他の改質制御ルーチンを説明するためのフローチャートである。図7に示される改質制御ルーチンを実行する場合、ECU30は、まず、運転条件フラグの値を確認し(S100)、運転条件フラグが「0」である場合、アクセル位置センサ32等の検出値に基づいて内燃機関1の運転条件(例えば、目標トルク)を読み込む(S102)。更に、ECU30は、所定のマップを用いて、S102にて読み込んだ機関運転条件に対応した改質空気供給量を求めると共に、求めた改質空気供給量との関係で、改質反応部23(改質触媒)における混合気のO/Cが1になるように改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を算出する(S104)。
そして、ECU30は、S104にて定めた量の空気と、S104に定めた量の炭化水素系燃料とが燃料改質装置20に供給されるように、流量調整弁14および改質用燃料噴射弁16を制御する(S106)。なお、ECU30は、S106にて、各燃焼室3に吸入される混合気の空燃比が所望の値になるように、スロットルバルブ12の開度をも制御する。S106の処理の後、ECU30は、CO2センサScからの信号に基づいて、改質触媒の下流側、すなわち、改質反応部23から改質燃料分配室25へと流出した改質ガスに含まれるCO2の濃度Vを取得し(S108)、取得したCO2濃度Vが予め定められた閾値VRを下回っているか否か判定する(S110)。本実施形態において、閾値VRの値は、例えば、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cが1.0である場合の改質ガス中のCO2濃度とされる。
S110にてCO2濃度Vが閾値VRを下回っていると判断される場合、改質反応部23への燃料噴射量が過剰であるか、あるいは、改質空気供給量が不足していることにより、改質反応部23におけるO/Cが1.0を下回っている(改質反応部23内がリッチになっている)ことになる。このため、ECU30は、S110にて肯定判断を行った場合、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔFS(ただし、ΔFSは正の所定値である)だけ減少させるように補正量(−ΔFS)を設定する(S112)。
一方、S110にてCO2濃度Vが閾値VR以上であると判断される場合、改質反応部23への燃料噴射量が不足しているか、あるいは、改質空気供給量が過剰であることにより、改質反応部23におけるO/Cが1.0以上となっている(改質反応部23内がリーンになっている)ことになる。このため、ECU30は、S110にて否定判断を行った場合、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を所定量ΔFL(ただし、ΔFLは正の所定値である)だけ増加させるように補正量(−ΔFL)を設定する(S114)。ここで、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を減少させるべくS112にて設定される補正量ΔFSは、改質用燃料噴射弁16からの燃料噴射量を増加させるべくS114にて設定される補正量ΔFLよりも大きい値とされており、本実施形態では、例えば、ΔFS=3×ΔFLとされる。
S112またはS114の処理の後、ECU30は、各種センサからの信号に基づいて、目標トルク等の機関運転条件が変動したか否か判定する(S116)。そして、ECU30は、S11にて機関運転条件が変動していないと判断した場合にのみ、上述の運転条件フラグを「1」とした上で(S118)、上述のS100以降の処理を再度実行する。
S100以降の処理が再度実行される際、切換開始フラグが「1」とされていれば、S102およびS104の処理はスキップされる。そして、S100以降の処理が再度実行される際には、S112にて補正量(−ΔFS)が設定されている場合、次のS106では、設定されている燃料噴射量からΔFSを差し引いた量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射され、S114にて補正量(+ΔFL)が設定されている場合、次のS106では、設定されている燃料噴射量にΔFLだけ加算した量の炭化水素系燃料が改質用燃料噴射弁16から噴射される。
この場合、S112にて設定される補正量ΔFSは、S114にて設定される補正量ΔFLよりも(絶対値が)大きいので、改質反応部23内がリッチ(O/C<1)である場合には、改質反応部23への炭化水素系燃料の供給量が充分に増加させられ、改質反応部23内がリッチ状態のままとされてしまうことが確実に抑制される。また、改質反応部23内がリーン(O/C>1)である場合、改質反応部23への炭化水素系燃料の供給量の減少分は比較的小さいので、改質反応部23内がリッチ状態とされてしまうことが確実に抑制される。
従って、図7の改質制御ルーチンを採用しても、改質触媒に対して供給される炭化水素系燃料中の炭素原子に対する空気中の酸素原子の比O/Cを、およそ1から1をわずかに上回る値aまでの範囲(改質反応部23内がややリーンになる範囲)内に精度よく設定することが可能となり、改質反応部23における改質効率を良好に維持し、改質触媒の過剰な昇温を抑制すると共に、燃料改質装置20における未改質燃料を減少させることができる。