JP2008232067A - エンジンの排気ガス浄化システム - Google Patents

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Abstract

【課題】排気ガスの浄化を効果的に行い、安定した触媒の浄化作用を実現させる。
【解決手段】純ガソリンをエンジン10の燃焼用インジェクタ14へ供給するとともに、所定のエタノール濃度をもつエタノール混合ガソリンを改質用インジェクタ25へ供給する。そして、触媒温度が上限温度を超えると判断すると、第1、第2のバルブ42、44を制御することによって燃料の供給先を切り替え、エタノール混合ガソリンを燃焼用インジェクタ14へ、純ガソリンを改質用インジェクタ25へ所定期間供給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンの排気ガス浄化システムに関し、特に、エタノール混合ガソリンなどのアルコール混合燃料を使用可能なエンジンの排気ガス浄化システムに関する。
エンジンの排気ガスを浄化する三元触媒などの触媒は、高温状態になると、触媒(貴金属)のシンタリング現象によって触媒活性が低下する。このような触媒劣化を防止するため、触媒温度(排気ガス温度)が高くなると、エンジンに供給されるガソリンの噴射量を増加し、ガソリンの気化潜熱で排気ガス温度を低下させる(特許文献1参照)。
一方、排気ガスを改質し、水素および一酸化炭素を含む改質ガスをエンジンの吸気系に環流させる排気リフォームシステムが知られている(特許文献2参照)。そこでは、エンジンの吸気系へ再循環させる排気ガス(EGRガス)にガソリンを添加し、ガソリンとの混合ガスを改質触媒に通すことによって改質ガスを生成する。改質反応時に排気ガスの熱が回収されることから熱量の大きな燃料によって燃焼が生じ、その結果、熱効率が上昇し、燃費性能が向上する。
また、環境問題の諸事情から、エタノール混合ガソリンといったバイオ燃料がFFV(Flexible Fuel Vehicle)などの自動車に供給されているが、エタノールの改質反応の良好性から、エタノール混合ガソリンを改質してエンジンに供給することが可能である(特許文献3参照)。
特開2006−70891号公報 特開2004−92520号公報 特開2006−144736号公報
ガソリンの改質反応時の吸熱量は高く、改質反応を促進させるためには改質触媒を高温状態に維持する必要がある。そのため、排気温度の低い低速、低負荷時(部分負荷時)には、改質反応が生じにくい。その結果、排気ガスの改質に利用されず、熱効率、排気ガス浄化の改善に役立つことなく燃料が消費される。一方で、アルコール混合燃料を改質反応のため供給する場合、触媒温度が上昇しているのにそのままアルコール混合燃料を改質反応のために供給し続けると、触媒劣化が進行する。
したがって、燃料性状の異なる燃料をエンジンの吸気系(もしくはシリンダ内)、改質器など様々な構成要素に供給可能なエンジンでは、その供給先の用途に適した燃料を供給する必要があり、一方で、触媒温度を常に触媒作用の十分働く範囲に調整することが要求される。そして、このような適切な燃料供給および触媒温度の調整を効果的に行うことが必要である。
本発明のエンジンの排気ガス浄化システムは、アルコール成分の含む燃料を使用可能なエンジンの排気ガス浄化システムであり、例えば、FFV、バイフューエル式自動車などに適用可能である。本発明のエンジンでは、第1の燃料をエンジンに供給可能であり、また、第1の燃料に比べてアルコール濃度の高い第2の燃料をエンジンおよび排気ガスへ供給可能である。ここで、燃料をエンジンに供給することは、エンジンの筒内(燃焼室)へ送られる吸入空気と混合させて燃焼させるため、燃料噴射装置を通してエンジンの吸気系および/又はエンジンの筒内へ燃料を供給することを表す。一方、排気ガスに燃料を供給することは、例えばEGRシステム、排気リフォームシステムに設けられる排気ガス改質のための改質器、あるいは排気系に組み込まれるNO浄化器など、排気ガス浄化に関する目的、用途で排気ガスに対して燃料を供給することを表す。例えば、改質触媒によって排気ガスを改質し、エンジンの吸気系に環流させる改質器に第2の燃料を供給してもよい。なお、NO浄化器では、(例えば特許文献3に記載されているように)エタノールなどのアルコールのNO還元性能が高いことを利用して、アルコール燃料が還元剤として排気ガスに直接添加される。
本発明のエンジンの排気ガス浄化システムは、エンジンへ供給する燃料を第1の燃料または第2の燃料との間で切り替える燃料供給切替手段を備える。第1の燃料としては、アルコールの含まれる燃料(アルコール混合ガソリンなど)、もしくはアルコールの含まれない燃料(例えば純ガソリンなど)を用いればよい。
一方、第2の燃料は、所定のアルコール濃度をもつ燃料であり、第1の燃料に比べてアルコール濃度が高い(第1の燃料にアルコールが含まれない場合、第1の燃料をアルコール濃度0とみなす)。例えば、改質器などに第2の燃料を供給する場合、高濃度のアルコール混合燃料、あるいは濃度100%の純アルコールを第2の燃料として供給すればよい。改質器へ第2の燃料を供給する場合、アルコールの改質反応の良好性によって可燃性のよい排気ガスが吸気系に環流される。その結果、燃焼が安定することによって浄化触媒が正常に機能する。
また、本発明の排気ガス浄化システムは、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒の触媒温度を検出する触媒温度検出手段を備える。触媒としては、排気ガスの後処理用として設けられる触媒(例えば、三元触媒)などがある。ここで、触媒温度を検出することには、触媒を通る排気ガスの排気温度から触媒温度(触媒床温)を推定し、あるいはエンジン回転数、負荷などの運転状況から触媒温度を推定することも含まれる。
そして、本発明では、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、燃料供給切替手段が、第1の燃料の代わりに第2の燃料をエンジンへ供給する。ここで、所定の上限温度は、触媒の劣化が始まる温度付近を表し、触媒劣化の始まる一定の幅をもった温度範囲内にある温度を上限温度として定めればよい。上限温度は、触媒特性によって決まる。また、上限温度を超えるということには、推定によって超えると判断することも含まれる。第2の燃料をエンジンへ供給する間、第1の燃料を第2の燃料と交換して排気ガスに対して供給してもよく、また、第1の燃料供給を停止するようにしてもよい。
一般に、酸素成分を組成に含むアルコールは、ガソリンなどの燃料と比べて燃焼速度が速い。そのため、排気バルブが開いた時点におけるシリンダ内の燃焼ガス温度が抑えられ、排気ガス温度をより低下させることができる。第2の燃料はアルコール濃度が相対的に高いことから、第2の燃料をエンジンに供給することによって排気ガスの温度が低下する。
また、アルコールは、気化潜熱がガソリンなどの燃料と比べて相対的に大きく、気化する際にシリンダ内のガスから奪う熱量は、ガソリンなどの燃料に比べて大きい。そのため、少ない燃料量で大きな冷却効果が得られる。さらに、アルコールはガソリンなどの燃料と比べて発熱量が相対的に小さいため、排気ガス温度の上昇がガソリンなどに比べて抑えられる。
このように、触媒が正常に働く温度範囲でエンジンが運転されている間、燃焼以外の目的でアルコール濃度の高い燃料を排気ガスに供給することにより、排気ガスが浄化されるとともに、熱効率、燃料消費が改善される。その一方で、触媒温度が上限温度を超えて触媒温度の調整が必要な場合、アルコール濃度の高い第2の燃料をエンジンへ供給し、触媒劣化を防ぐことを最優先とした燃料供給制御が行われる。これにより、触媒温度が迅速に低下する。なお、触媒温度が上限温度以下に戻った場合、第1の燃料をエンジンに、第2の燃料を排気ガスに再び供給すればよい。また、排気ガス浄化用の触媒は、改質器の前側(エンジン側)に設けてもよく、あるいは、後側(排出口側)に設けてもよい。
三元触媒で排気ガスの浄化を図る場合、理論空燃比を中心とした領域(ウインド)で空燃比を制御する必要がある。したがって、EGRシステム、排気リフォームシステムにおける改質器などに第2の燃料が供給される場合、燃料供給切替手段は、触媒温度が所定の上限温度を超えるとき又は超えると予測されると、第1の燃料を改質器に供給するのがよい。この場合、第1の燃料、第2の燃料が切り替えられる構成となるため、触媒を通る排気ガスの空気過剰率は一定に維持される。
触媒温度が上限温度以下に下がったことを検出してから再び第1の燃料および第2の燃料をそれぞれエンジンおよび排気ガスに供給してもよいが、触媒温度が低下するときの変化はある程度推定可能であること、また、できるだけ速やかに元の燃料供給状態に戻す必要があるため、燃料供給切替手段は、所定期間第2の燃料をエンジンに供給するようにするのが望ましい。燃料供給切替手段は、第2の燃料を所定期間エンジンへ供給した後、第2の燃料に換えて第1の燃料をエンジンへ供給する。触媒温度が低下するときの変化の程度は、アルコール濃度によって異なる。必要以上に触媒温度を下げると、触媒の活性化作用が十分働かない恐れがある。そのため、第2の燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段を設け、燃料供給切替手段は、アルコール濃度に応じて所定期間を設定するのが望ましい。例えば、冷却効果の大きいアルコール濃度が高いほど、所定期間を短くするようにすればよい。
エンジン回転数、アクセルペダルの開度など運転状況によって排気ガス温度の上昇具合は異なり、ドライバの運転特性が触媒温度上昇に大きく影響する。したがって、急激な排気温度の上昇があっても事前に予測して触媒温度調整を行うため、触媒温度および走行状況に基づいて第2の燃料をエンジンへ供給開始するタイミングを決定するのがよい。例えば、走行状況に関するパラメータとその走行状況に応じた触媒温度の時系列変化とを記録する記録手段を設ける。そして、燃料供給切替手段は、走行状況から予測される触媒温度に基づいて、第2の燃料をエンジンへ供給開始するタイミングを決定する。
本発明のエンジンは、第1の燃料をエンジンの燃料噴射装置に供給可能であって、第1の燃料に比べてアルコール濃度の高い第2の燃料をエンジンの燃料噴射装置および排気系へ供給可能な燃料供給手段と、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、第1の燃料および第2の燃料の供給先を燃料噴射装置および排気系との間で選択可能な燃料供給切替調整手段とを備える。排気系には、EGRシステム、改質器を備えた排気リフォームシステム、NO浄化器などが含まれる。そして、本発明では、燃料供給切替調整手段が、触媒温度が所定の上限温度を超えない間、第1の燃料および第2の燃料をそれぞれ燃料噴射装置および排気系へ供給し、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、第1の燃料に換えて第2の燃料を燃料噴射装置へ供給することを特徴とする。
一方、他の態様として特徴づけられる本発明のエンジンの排気ガス浄化システムは、アルコールの含まれるもしくはアルコールの含まれない燃料を、エンジンおよびエンジンからの排気ガスに対して供給可能なエンジンの排気ガス浄化システムであって、排気ガスを浄化する触媒の触媒温度を検出する触媒温度検出手段と、触媒温度が所定の上限温度を超えない間、エンジンに供給する燃料に比べてアルコール濃度の高い燃料を排気ガスに供給し、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、上限温度を超えるまでの間エンジンに供給していた燃料に比べてアルコール濃度の高い燃料をエンジンに供給する燃料供給切替手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、排気ガスの浄化を効果的に行い、安定した触媒の浄化作用を実現させることができる。
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態であるエンジンの排気ガス浄化システムについて説明する。
図1は、エンジンの排気ガス浄化システムの概略的構成図である。
エンジン10は、ガソリン、あるいはエタノールの含まれるエタノール混合ガソリンを使用可能な火花点火式の4気筒4ストロークエンジンであり、FFV(Flexible Fuel Vehicle)などの自動車(図示せず)に取り付けられている。エアクリーナー(図示せず)を通って吸気管12に入った空気は、インジェクタ14(以下では、燃焼用インジェクタという)から噴射される燃料と混合され、エンジン10のシリンダ内へ吸入される。吸入された混合気は点火栓(図示せず)によって点火され、燃焼する。
燃焼ガスは、排気ガスとしてエンジン10から排出され、排気管16を通って触媒コンバータ18へ送られる。触媒コンバータ18に流入した排気ガスに含まれる有害成分(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、酸化窒素物(NO)は、触媒コンバータ18の3元触媒によって浄化(酸化、還元)される。浄化された排気ガスは、排気管16の下流側に設けられた改質室20へ流れていく。
一方、触媒コンバータ18を通った排気ガスの一部は、排気管16の分岐管16Aを通る。このとき、インジェクタ25(以下では、改質用インジェクタという)から排気ガスに向けて燃料が噴射される。気化された燃料と混合した排気ガス(以下、混合排気ガスという)は、改質器20へ流入する。改質器20は、改質機能とともに熱交換機能を備えた触媒装置であり、Ri、Ni、Coなどの貴金属触媒を担時した担体23の間に排気ガス通路22が形成される。
改質器20では、改質触媒の作用によって水蒸気改質反応が生じる。これにより、混合排気ガスから水素(H)と一酸化炭素(CO)を含む改質ガスが生成される。このとき、排気ガスの熱が回収され、熱量の大きな改質ガスが環流管24、EGRバルブ26を通って吸気管12に環流され、吸入空気とともにエンジン10のシリンダへ送られる。EGRバルブ26は、環流させる排気ガスの量を調整する。
CPU、RAM、ROMを備えたECU30は、エンジン10のサイクル運動を制御しクランクシャフトのポジション検出センサ27、排気ガスの酸素濃度を検出するOセンサ29、エタノール濃度を検出する静電誘導型アルコール濃度センサ31、触媒温度センサ33など、各センサからの信号を検出する。また、クランクシャフトの回転位置に従って燃焼用インジェクタ14、改質用インジェクタ25、EGRバルブ26、電磁スロットルバルブ28、点火栓などへ制御信号を出力する。吸排気弁(図示せず)はクランクシャフトの回転に合わせて吸排気ポートを開閉し、これにより吸気〜排気のサイクルでエンジン10が運転される。ECU30のROMには、エンジン制御に関するプログラムがあらかじめ格納されている。
燃料タンク32には、エタノールの含まれないガソリン(以下では、純ガソリンという)F1が貯留されており、一方、燃料タンク34には、所定のエタノール濃度をもつアルコール混合ガソリンF2が貯留されている。ここでは、高濃度エタノール混合ガソリン(例えば50%以上)が貯留されている。純ガソリンF1は、燃料タンク32内に設けられた燃料ポンプ52によって吸い上げられ、燃料供給管36を通って燃焼用インジェクタ14へ供給される。一方、エタノール混合ガソリンF2は、燃料タンク34内に設けられた燃料ポンプ54によって吸い上げられ、燃料供給管38を通って改質用インジェクタ25へ送られる。
燃料供給管36、38の燃料タンク側には、燃料供給調整部40が構成されており、二股用の第1のバルブ42、第2のバルブ44を備える。燃料供給管36は、分岐部36Aで2方向に分岐し、第1のバルブ42、第2のバルブ44と連通する。同様に、燃料供給管38は、分岐部38Aで分岐し、第1のバルブ42、第2のバルブ44と連通する。第1のバルブ42、第2のバルブ44は、ECU30からの制御信号に基づいて開閉動作する。
ECU30は、理論空燃比に基づいた混合気燃焼を行うため、Oセンサ29によって検出される酸素濃度に基づいて燃焼用インジェクタ14、改質用インジェクタ25からの燃料噴射量を調整する。すなわち、空気過剰率λ=1となるように、純ガソリンF1の燃料噴射量、エタノール混合ガソリンF2の燃料噴射量が調整されている。
第1のバルブ42は、純ガソリンの供給先を燃焼用インジェクタ14および改質用インジェクタ25へ選択的に切り替え可能であり、同様に、第2のバルブ44も、エタノール混合燃料の供給先を燃焼用インジェクタ14および改質用インジェクタ25へ選択的に切り替え可能である。後述するように、触媒劣化の生じる高温領域まで触媒温度が上昇するのを防止するため、必要に応じて第1、第2のバルブ42、44の開閉が切り替えられ、エタノール混合ガソリンF2が燃焼用インジェクタ14へ供給され、純ガソリンF1が改質用インジェクタ25へ供給される。
図2は、ECU30によって実行される燃料供給制御処理のフローチャートである。また、図3は、燃料供給制御処理のタイミングチャートを示した図である。
ステップS101では、運転状況に関するパラメータが検出される。ここでは、パラメータとして触媒コンバータ18を通る排気ガスの温度(触媒床温)を検出し、検出される排気ガス温度を触媒温度とみなす。ステップS102では、検出された排気ガス温度に基づき、触媒温度が上限温度Tmを超えているか否かが判断される。
3元触媒は、所定温度以上(約250度)から活性化するが、触媒温度が過度に上昇することで高温領域(例えば約750度以上)に達すると、触媒(貴金属)の粒成長による表面積減少などの理由から浄化機能が低下する。ここでは、触媒劣化が始まる一定の幅をもった温度範囲内の所定の温度を上限温度Tmとする。ステップS102において触媒温度が上限温度Tmを超えていないと判断されると、ステップS107へ進み、純ガソリンF1のエンジン10への供給、アルコール混合燃料の改質器20への供給が維持されるように、第1のバルブ42、第2のバルブ44が制御される。
改質器20における水蒸気改質反応は吸熱反応であり、上述したように、排気ガスの熱を吸収することによって混合排気ガスが改質される。混合排気ガスのエタノール成分(COH))は、排気ガス中に含まれる二酸化炭素(CO)、水(HO)、窒素(N)と反応し、水素(H)と一酸化炭素(CO)を含む改質ガスが生じる。同様に、混合排気ガス中のガソリン成分もCO、H、Nと反応し、水素と一酸化炭素を含む改質ガスが生成される。
熱量の大きな改質ガスが環流されて燃焼する結果、燃焼ガスの熱量が増加し、熱効率が向上する。さらに、改質ガス中のHは可燃性が良好であるため、エンジン10のシリンダ内での燃焼速度が速まり、ノッキングが生じにくくなる。その結果、シリンダ内での燃焼が安定化し、EGR率、すなわち排気ガス(ここでは改質ガス)のEGR率を大きく設定できる。大量の改質ガス供給によって、ポンピングロスの低減、NOx排出量低減が実現され、燃費性能が改善される。
エタノールの改質反応における吸熱量は、ガソリンに比べて小さい。そのため、低速低負荷時のように排気ガス温度が比較的低温であっても、改質反応を効率よく活性化させることができる。また、ガソリンと違って燃料成分に硫黄分がほとんど含まれていないため、改質触媒の硫黄被毒を防止する。また、酸素を含むため、燃料中の炭素分が析出して改質触媒の表面を覆う炭素被毒(コーキング)が生じにくい。このようなエタノールの特性により、エンジン10の熱効率が上昇し、燃料消費が改善される。
一方、ステップS102において、上限温度Tmを超えていると判断された場合、ステップS103へ進み、燃料を切り替える期間(ここでは、切替設定期間という)Lが設定される。そして、ステップS104では、エタノール混合ガソリンF2が燃焼用インジェクタ14へ、純ガソリンF1が改質用インジェクタ25へ供給されるように、第1のバルブ42、第2のバルブ44が動作する。ECU30のROMには、あらかじめ所定の切替設定期間Lのデータが格納されている。
酸素成分を多く含むエタノールは、ガソリンと比べて燃焼速度が速い。そのため、燃焼室内の排気ガス温度が低下する。また、上述したように純ガソリンの改質反応における吸熱量は、エタノールに比べて非常に大きい。そのため、改質器20を通る排気ガスの熱が多く回収され、排気ガス温度が低下する。
また、エタノールの気化潜熱がガソリンに比べて大きいため、従来のようにガソリンの噴射量を増加させる方法に比べ、より短期間で排気温度の冷却効果を得ることができる。さらに、エタノールの発熱量がガソリンに比べて小さいため、燃焼ガス(排気ガス)の温度上昇が抑制され、より少ない燃料で排気温度の冷却効果を得ることができる。このようなエタノールの特性により、触媒温度が低下し、上限温度Tm以下に収まる(図3参照)。
ステップS105では、燃料を切り替えてから切替設定期間Lを経過しているか否かが判断される。切替設定期間Lを経過すると、ステップS106へ進み、第1および第2のバルブ42、44の切り替え動作により、純ガソリンF1が燃焼用インジェクタ14へ、エタノール混合ガソリンF2が改質用インジェクタ25へ供給される。純ガソリンF1およびエタノール混合ガソリンF2の燃料噴射量は燃料を切り替えている間も変化しないため、空気過剰率λは1に維持される。エンジン10の運転中、ステップS101〜S107は繰り返し実行される。
このように第1の実施形態によれば、純ガソリンがエンジン10の燃焼用インジェクタ14に供給されるとともに、所定のエタノール濃度をもつエタノール混合ガソリンが改質用インジェクタ25へ供給される。そして、触媒温度が上限温度Tmを超えると判断されると、第1、第2のバルブ42、44によって燃料の供給先が切り替えられ、エタノール混合ガソリンが燃焼用インジェクタ14へ、純ガソリンが改質用インジェクタ25へ所定期間供給される。
改質反応を促進させるエタノール成分を含む燃料を供給することによって、排気ガスの浄化が効果的に行われ、それとともに燃料消費が改善される。一方で、上限温度Tmを超える温度付近ではエタノール成分を含む燃料がガソリンの代わりに供給されるため、迅速に触媒温度低下が実現される。そのため、無駄な燃料消費をすることなく、触媒の温度をその浄化作用が正常に働く適切な範囲に収めることができる。
次に、図4、図5を用いて第2の実施形態であるエンジンの排気ガス浄化システムについて説明する。第2の実施形態では、アルコール濃度に応じて切替設定時間を変更する。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じである。
図4は、第2の実施形態における燃料供給制御処理のタイミングチャートである。また、図5は、エタノール濃度と排気温度との関係を示した線図である。ECU30は、運転状況に関するパラメータ(図3のステップS101参照)として、排気ガス温度とともにエタノール濃度を検出する。そして、ステップS103では、マップデータに基づき、検出されるエタノール濃度に応じた切替設定期間Lが決定される。
ECU30のROMには、エタノール濃度に応じた切替設定期間Lのデータが格納されている。各エタノール濃度の切替設定期間Lは、エタノール濃度を変化させたときの触媒温度低下の経時変化に基づいて定められている。
図5には、エンジン回転数、トルクを一定とした場合におけるエタノール濃度と排気ガス温度の関係が図示されている。図5から明らかなように、エタノール濃度が高いほど排気ガス温度が低下する。そのため、エタノール濃度が高い燃料を長期間燃料用インジェクタ14へ供給すると、必要以上に触媒温度が低下し、触媒浄化機能が十分に発揮されない。第2の実施形態では、エタノール濃度が高い燃料ほど切替設定時間Lが短い。
図4には、エタノール濃度A、エタノール濃度Bのエタノール混合ガソリンを使用した場合の排気温度の経時変化が表されており、エタノール濃度Bの方がエタノール濃度Aよりも濃度が高い。エタノール濃度Aの場合には切替設定期間LAだけ燃料が切り替えられる一方、エタノール濃度Bの場合には切替設定期間LBだけ燃料が切り替えられる。
次に、図6を用いて、第3の実施形態であるエンジンの排気ガス浄化システムについて説明する。第3の実施形態では、走行状況に応じて触媒温度変化を予測し、燃料の切り替えタイミングを決定する。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。アルコール濃度はここでは一定とする。
図6は、第3の実施形態における燃料噴射制御処理のタイミングチャートである。ECU30は、運転状況に関するパラメータとして、排気ガス温度とともに、要求トルク(アクセル開度)、エンジン回転数など排気ガス温度の上昇に関連するパラメータ(走行状況に関するパラメータという)を取得する。そして、パラメータと記録された触媒温度の時系列変化に基づいて、触媒温度の上昇具合を予測する。
自動車の運転の仕方はドライバによって様々であり、エンジン低回転による走行を好むドライバもいれば、高回転を常に維持する走行を好むドライバもいる。第3の実施形態では、運転特性に依存する触媒温度の変化を記憶し、その走行状況に合わせて触媒温度が上限温度Tmを超えるタイミングを予測する。ECU30は、走行状況のパラメータ値とともに記憶された一連の排気温度の時系列変化の履歴データに基づいて、今現在の走行状況から触媒温度の上限温度Tmを超える時期が推定される。
例えば、アクセル開度が大きく、エンジン回転数が高い場合、急速に排気ガス温度が上昇する。ECU30は、過去のデータに基づいて上限温度Tmを超えると予想する時期を燃料供給切り替えのタイミングと決定し、現在の排気温度から上限温度Tmを超える予測時期までの期間を算出する。算出された期間経過後に、燃料供給が切り替えられる。
触媒コンバータ18は、改質器20の後方(排気側)へ設置してもよい。また、改質器20では、部分酸化法、オートサーマル酸化法などによって排気ガスを改質してもよい。さらに、エタノールのNO還元性能が優れていることから、改質器の代わりにNOx浄化器を設け、還元剤として排気ガスにエタノール混合燃料を添加させてもよい。
エタノール混合ガソリンをエンジン10へ供給している間、純ガソリンを供給禁止するように構成してもよく、純ガソリンを吸い上げないように燃料ポンプを制御してもよい。すなわち、触媒温度が高い場合には、エタノール濃度の高い燃料を第1に優先してエンジン10へ供給する。エンジンへ供給する燃料としてはエタノール混合燃料でもよく、改質器へ供給する燃料のエタノール濃度が相対的に高ければよい。また、改質触媒を備えた改質器以外の改質器にエタノール混合燃料を供給してもよい。さらに、2つの燃料タンクから別々に供給されてくる燃料のどちらか一方をエンジンへ選択的に供給する調整弁を設けた構成でもよく、調整弁は、エンジンに供給する燃料を、エタノール混合ガソリンと純ガソリンとの間で切り替えるようにすればよい。
燃料タンクを2つ設ける代わりに、所定のエタノール濃度をもつエタノール混合ガソリンを従来公知の方法(濃縮膜など)で分離濃縮し、エタノール濃度の高い燃料を改質器に供給し、エタノール濃度の低い純ガソリンに近い燃料をエンジン10へ供給するようにしてもよい。あるいは、エタノール100%の燃料(ニートエタノール)と純ガソリンを別々に用意し、エンジン側へ供給する燃料、改質器側へ供給する燃料をそれぞれ所定のエタノール濃度となるように調合することも可能である。この場合、触媒温度が高温になると、相対的にエタノール濃度の高い燃料をエンジンに供給する燃料して調合生成する。
燃料としては、エタノール以外のアルコール混合燃料、火花点火式エンジン以外のエンジン(内燃機関)を使用することも可能であり、様々なアルコール混合燃料、エンジンを使用したときにも排気ガスの浄化および触媒の温度調整が可能である。例えば、バイオ燃料の使用可能なディーゼルエンジンなどにも排気ガスリフォームシステムを設け、燃料を切り替えることによって触媒温度を調整するように構成することが可能である。
第1の実施形態であるエンジンの排気ガス浄化システムの概略的構成図である。 ECUによって実行される燃料供給制御処理のフローチャートである。 燃料供給制御処理のタイミングチャートを示した図である。 第2の実施形態における燃料供給制御処理のタイミングチャートである。 エタノール濃度と排気温度との関係を示した線図である。 第3の実施形態における燃料噴射制御処理のタイミングチャートである。
符号の説明
10 エンジン
14 燃焼用インジェクタ
18 触媒コンバータ
20 改質器
25 改質用インジェクタ
30 ECU
40 燃料供給調整部
42 第1のバルブ
44 第2のバルブ
F1 純ガソリン
F2 エタノール混合ガソリン

Claims (8)

  1. 第1の燃料をエンジンに供給可能であって、前記第1の燃料に比べてアルコール濃度の高い第2の燃料をエンジンおよび排気ガスへ供給可能なエンジンの排気ガス浄化システムであって、
    エンジンに供給する燃料を前記第1の燃料または前記第2の燃料に切り替える燃料供給切替手段と、
    排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、
    前記排気ガス浄化触媒の触媒温度を検出する触媒温度検出手段とを備え、
    前記燃料供給切替手段が、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、前記第1の燃料に換えて前記第2の燃料を前記エンジンへ供給することを特徴とするエンジンの排気ガス浄化システム。
  2. 前記排気ガスを改質する改質器をさらに有し、
    前記燃料供給切替手段が、前記第2の燃料を前記改質器に供給することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気ガス浄化システム。
  3. 前記燃料供給切替手段が、前記第1の燃料を前記エンジンとともに前記排気ガスに供給可能であって、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、前記排気ガスに前記第1の燃料を供給する請求項1に記載のエンジンの排気ガス浄化システム。
  4. 前記燃料供給切替手段が、前記第2の燃料を前記エンジンへ供給してから所定期間経過すると、前記第2の燃料に換えて前記第1の燃料を前記エンジンに供給することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気ガス浄化システム。
  5. 前記第2の燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段をさらに有し、
    前記燃料供給切替手段が、アルコール濃度に応じて前記所定期間を設定することを特徴とする請求項4に記載のエンジンの排気ガス浄化システム。
  6. 走行状況に関するパラメータとその走行状況に応じた触媒温度の時系列変化とを記録する記録手段をさらに有し、
    前記燃料供給切替手段が、走行状況から予測される触媒温度に基づいて、前記第2の燃料を前記エンジンへ供給開始するタイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気ガス浄化システム。
  7. 第1の燃料をエンジンの燃料噴射装置に供給可能であって、前記第1の燃料に比べてアルコール濃度の高い第2の燃料を前記エンジンの燃料噴射装置および排気系へ供給可能な燃料供給手段と、
    排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、
    前記第1の燃料および前記第2の燃料の供給先を前記燃料噴射装置および前記排気系との間で選択可能な燃料供給切替調整手段とを備え、
    前記燃料供給切替調整手段が、触媒温度が所定の上限温度を超えない間、前記第1の燃料および前記第2の燃料をそれぞれ前記燃料噴射装置および前記排気系へ供給し、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、前記第1の燃料に換えて前記第2の燃料を前記燃料噴射装置へ供給することを特徴とするエンジン。
  8. アルコールの含まれるもしくはアルコールの含まれない燃料を、エンジンおよび前記エンジンからの排気ガスに対して供給可能なエンジンの排気ガス浄化システムであって、
    前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、
    前記排気ガス浄化触媒の触媒温度を検出する触媒温度検出手段と、
    触媒温度が所定の上限温度を超えない間、前記エンジンに供給する燃料に比べてアルコール濃度の高い燃料を前記排気ガスに供給し、触媒温度が所定の上限温度を超える又は超えると予測される場合、上限温度を超えるまでの間前記エンジンに供給していた燃料に比べてアルコール濃度の高い燃料を前記エンジンに供給する燃料供給切替手段と
    を備えたことを特徴とするエンジンの排気ガス浄化システム。
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