JP2010270664A - 内燃機関の排気浄化システム - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料改質器による改質ガスの生成を効率的に行いつつ、生成した改質ガスを要求に応じて迅速に供給できるエンジンの排気浄化システムを提供すること。
【解決手段】排気浄化システム1は、エンジン2の排気管4に設けられ、エンジン2で燃焼する混合気を理論空燃比よりもリーンにしたときに排気中のNOxを捕捉し、還元雰囲気下で捕捉したNOxを還元する触媒コンバータ43と、排気管4とは別に設けられ、燃料及び空気を原料として水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、生成した改質ガスを排気管4のうち触媒コンバータ43の上流側に供給する燃料改質器8と、エンジン2の運転状態及び触媒コンバータ43の状態の少なくとも何れかに応じて、燃料改質器8における改質ガスの生成量及び改質ガスの生成に関する応答速度を制御するECU7と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】排気浄化システム1は、エンジン2の排気管4に設けられ、エンジン2で燃焼する混合気を理論空燃比よりもリーンにしたときに排気中のNOxを捕捉し、還元雰囲気下で捕捉したNOxを還元する触媒コンバータ43と、排気管4とは別に設けられ、燃料及び空気を原料として水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、生成した改質ガスを排気管4のうち触媒コンバータ43の上流側に供給する燃料改質器8と、エンジン2の運転状態及び触媒コンバータ43の状態の少なくとも何れかに応じて、燃料改質器8における改質ガスの生成量及び改質ガスの生成に関する応答速度を制御するECU7と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関の排気浄化システムに関する。
近年、発電機や自動車等の内燃機関から大気中へ排出される様々な環境汚染物質が問題視されている。環境汚染物質は、酸性雨や光化学スモッグの原因となるうえ、人体の健康被害の原因ともなり、世界的にその排出量を規制する動きがある。特に、ディーゼルエンジンやガソリンのリーンバーンエンジン等の内燃機関では、希薄燃焼を行うため、例えば窒素酸化物(NOx)が多く排出される。NOx等は、車両上での浄化が容易ではないため、その効率的な浄化技術の検討が進められている。
例えば、希薄燃焼が行われる内燃機関からの排気中に含まれるNOxを浄化する方法として、排気が酸素過剰となるリーン条件(酸化雰囲気)下において、NOx浄化触媒を通してNOxを一時的に捕捉(より具体的には、吸着又は吸蔵)する技術が知られている。この技術では、NOxを捕捉した後、一時的に燃料噴射量を増加させることで排気中の酸素濃度が低く炭化水素及び一酸化炭素濃度が高いリッチ条件(還元雰囲気)を作り出し、捕捉されたNOxを還元する。
特許文献1や特許文献2には、カリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属等と、白金等を組み合わせてなるNOx浄化触媒を用いた技術が示されている。この技術では、先ず、リーン条件下において酸素を利用し、NOx浄化触媒上でNOxをNO3 −の形で酸化、吸収する。次いで、内燃機関をリッチ条件に制御することにより、排気中に酸素が少なく、かつ一酸化炭素及び炭化水素が多く存在する状態を周期的に形成するとともに、リッチ条件下において、リーン条件下で吸収されたNOxを、一酸化炭素及び炭化水素を用いて効率良く接触還元し、排気中のNOxを浄化する。
NOx浄化触媒を備える排気浄化システムでは、NOxを還元する際における還元剤としては、上述のように炭化水素や一酸化炭素が用いられる場合が多いが、例えば特許文献3には、水素を含む改質ガスを還元剤とした排気浄化システムが示されている。特許文献3に示された排気浄化システムでは、改質触媒を備える燃料改質器を内燃機関とは別に運転し、改質触媒における燃料改質反応により、空気と燃料を改質して改質ガスを生成し、この改質ガスを還元剤として排気通路内に導入し、NOx浄化触媒に供給する。このように、水素を含んだ改質ガスを還元剤として利用することにより、内燃機関の低温始動時から、高いNOx浄化性能を発揮することができる。
ところで、上述の燃料改質反応とは、燃料に含まれる炭化水素を用いて約600℃〜1200℃といった高温にて反応を進め、水素や一酸化炭素を含む改質ガスを生成する反応である。燃料改質反応は、酸化剤の違いにより、部分酸化反応と水蒸気改質反応との2種類に大きく分類される。
部分酸化反応により、改質ガスを生成する反応を、反応式(I)に示す。この反応は、燃料及び酸素を原料とした発熱反応である。このため、自発的に反応が進行する結果、一旦反応が開始すると、外部からの熱の供給が不要である。ただし、高温状態で燃料と酸素とを共存させた場合には、反応式(II)に示すような燃焼反応(完全酸化反応)も触媒上で同時に進行する。このため、触媒温度が意図する以上に上昇するおそれがあり、反応の制御が容易ではない。
CnHm+1/2nO2→nCO+1/2mH2 (I)
CnHm+(n+1/2m)O2→nCO2+1/2mH2O (II)
CnHm+1/2nO2→nCO+1/2mH2 (I)
CnHm+(n+1/2m)O2→nCO2+1/2mH2O (II)
水蒸気改質反応により、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成する反応を、反応式(III)に示す。この反応は、燃料及び水を原料とした吸熱反応である。このため、自発的には反応が進行しない結果、外部からの熱の供給が不可欠である一方、反応の制御は容易である。
CnHm+nH2O→nCO+(n+1/2m)H2 (III)
CnHm+nH2O→nCO+(n+1/2m)H2 (III)
ところで、部分酸化反応を利用した場合、改質触媒における改質反応を自発的に発生させるためには、改質触媒を約300℃の活性開始温度以上にする必要がある。また、要求に応じて瞬時に改質ガスの製造を開始するためには、改質触媒を約600℃〜1200℃程度の反応温度にする必要がある。そこで従来の排気浄化システムでは、改質ガスの導入が要求されると、改質触媒の温度が上述の活性開始温度に達するまでは電気ヒータなどの外部からの加熱手段を用いて改質触媒を加熱した後、反応による自己発熱で上述の反応温度までさらに加熱する。改質触媒の温度が反応温度にまで達した後は、反応温度を維持しながら改質ガスの生成及び供給を定常的に行う。
一方、NOx浄化触媒を備えた排気浄化システムにおいて、燃料改質器により生成された改質ガスは、内燃機関の運転中、常に要求されているわけではない。このため、改質ガスを排気通路に導入する必要のない時には、燃料改質器における改質ガスの生成を停止する必要がある。しかしながら、このように燃料改質器の運転を一旦停止すると、改質触媒の温度は大きく低下してしまう。特に、改質触媒の温度が上述の活性開始温度より低い温度にまで低下してしまうと、この状態から改質ガスの生成及び供給を再び開始するまでに、改質触媒を再び昇温するだけの時間がかかってしまう。このため、改質ガスの導入の要求が生じてから、実際に改質ガスの供給が開始するまでの応答性が低下してしまう。
以上のような改質ガスの応答性を向上するための解決方法として、改質ガスを一時的に貯蔵するタンクを設けることが考えられる。すなわち、燃料改質器で生成した改質ガスをタンクに貯蔵しておき、改質ガスを導入する必要が生じた場合には、貯蔵された改質ガスを適宜使用する。この方法によれば、改質ガスを導入する必要が生じる度に改質触媒を昇温する必要がなくなるので、応答性を向上することができる。しかしながら、改質ガスを貯蔵するタンクを利用する場合、様々な課題が発生する。
まず、タンク内に改質ガスを貯蔵するためには、燃料改質器の内圧をタンクの内圧以上にする必要があるが、この場合、改質反応の効率が低下してしまい、改質ガスの生成にかかる燃料消費量が増加したり未改質の炭化水素が排出されたりする。また、タンクを配置する空間を車両に確保する必要が生じる他、改質ガスをタンクから排気通路に供給するための装置も必要となるため、システムの構成が複雑になったりコストがかかったりするおそれがある。
一方、水蒸気改質反応を利用した場合であっても、上述のような部分酸化反応を利用した場合と同様に課題が生じる。水蒸気改質反応は、上述のように部分酸化反応と異なり吸熱反応であるため、反応中であっても外部から加熱する必要がある。したがって、水蒸気改質反応を利用する場合、燃料改質器を常時加熱するための膨大なエネルギーが必要となるため、結果として燃費が大幅に悪化するおそれがある。
本発明は上述した点を考慮してなされたものであり、燃料改質器による改質ガスの生成を効率的に行いつつ、生成した改質ガスを要求に応じて迅速に供給できる内燃機関の排気浄化システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(例えば、後述のエンジン2)の排気通路(例えば、後述の排気管4)に設けられ、前記内燃機関で燃焼する混合気を理論空燃比よりもリーンにしたときに排気中のNOxを捕捉し、還元雰囲気下で前記捕捉したNOxを還元する触媒コンバータ(例えば、後述の触媒コンバータ43)を備える内燃機関の排気浄化システム(例えば、後述の排気浄化システム1)を提供する。排気浄化システムは、前記排気通路とは別に設けられ、燃料及び空気を原料として水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、当該生成した改質ガスを前記排気通路のうち前記触媒コンバータの上流側に供給する燃料改質器(例えば、後述の燃料改質器8)と、前記内燃機関の運転状態及び前記触媒コンバータの状態の少なくとも何れかに応じて、前記燃料改質器における改質ガスの生成量及び改質ガスの生成に関する応答速度を制御する改質器制御手段(例えば、後述のECU7、及び後述の図4の改質器制御処理の実行に係る手段)と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、燃料改質器で水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、生成した改質ガスを触媒コンバータの上流側に供給する。ここで、触媒コンバータが水素及び一酸化炭素の酸化反応が起こる温度となった場合には、水素及び一酸化炭素の酸化反応により触媒コンバータを昇温することができる。これにより、触媒コンバータのライトオフ時間を短縮することができる。また、還元性能の高い水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを供給することにより、触媒コンバータにおけるNOxの浄化動作を促進することができる。したがって、内燃機関の低温始動時から、高いNOx浄化性能を発揮することができる。
また、本発明によれば、燃料改質器を排気通路とは別に設ける。これにより、排気通路内の排気の成分、温度、及び流速、すなわち内燃機関の運転状態に影響されることなく、改質ガスを生成するための改質反応を効率的に行うことができる。したがって、燃料改質器における触媒の使用量を少なくすることができる。また、燃料改質器を排気通路とは別に設けることにより、内燃機関とは別系統の制御を行うことができるので、内燃機関の排気温度が上昇するよりも早く燃料改質器を活性化し、改質ガスの生成及び供給を開始することができる。例えば、触媒コンバータに流入する排気を還元雰囲気にすべく、内燃機関の制御により一酸化炭素を製造する場合、特に内燃機関の低温始動時には、副次的に多くの炭化水素が生成されたり、内燃機関の燃焼が不安定になることによりノイズや振動が発生したりすることがある。これに対して、本発明によれば、燃料改質器で水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成することにより、内燃機関の制御を簡素にするとともに、低温始動時におけるノイズや振動の発生を抑制することができる。
内燃機関は、一般的に高回転数及び高負荷時において特に多くのNOxを排出するので、内燃機関の運転状態が高回転数及び高負荷である場合には、燃料改質器で改質ガスを生成しこれを排気通路内に供給することにより、触媒コンバータにおけるNOxの浄化動作を促進することが好ましい。一方、内燃機関の運転状態が上記以外でありNOxの排出量が比較的少なく、改質ガスを供給せずとも触媒コンバータでNOxを浄化できる場合には、不必要な燃料の消費を低減するために、燃料改質器における改質ガスの生成はできるだけ抑制することが好ましい。また、触媒コンバータが未活性である状態で改質ガスを供給すると、改質ガス中の一酸化炭素が触媒コンバータを通過して大気に放出される場合もあるので、不必要な燃料の消費を低減するためには、触媒コンバータが未活性である場合にも、燃料改質器における改質ガスの生成はできるだけ抑制することが好ましい。
これに対して、本発明によれば、内燃機関の運転状態や触媒コンバータの状態に応じて、燃料改質器における改質ガスの生成量を制御することにより、必要に応じて適切に改質ガスを生成するとともに、不必要な燃料の消費を低減することができる。また、本発明によれば、燃料改質器における改質ガスの生成量に加えて、改質ガスの生成に関する応答速度を制御する。ここで、改質ガスの生成に関する応答速度とは、より具体的には、改質ガスの生成の要求が発生してから、実際に改質ガスを生成するまでの時間を示す。このように、燃料改質器の応答速度をも制御することにより、改質ガスを貯蔵するためのタンクを別途設けることなく、必要が生じた場合には速やかに改質ガスの供給を開始することができる。
これに対して、本発明によれば、内燃機関の運転状態や触媒コンバータの状態に応じて、燃料改質器における改質ガスの生成量を制御することにより、必要に応じて適切に改質ガスを生成するとともに、不必要な燃料の消費を低減することができる。また、本発明によれば、燃料改質器における改質ガスの生成量に加えて、改質ガスの生成に関する応答速度を制御する。ここで、改質ガスの生成に関する応答速度とは、より具体的には、改質ガスの生成の要求が発生してから、実際に改質ガスを生成するまでの時間を示す。このように、燃料改質器の応答速度をも制御することにより、改質ガスを貯蔵するためのタンクを別途設けることなく、必要が生じた場合には速やかに改質ガスの供給を開始することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記燃料改質器は、供給された原料を改質し改質ガスを生成する改質触媒(例えば、後述の改質触媒82)と、当該改質触媒に所定量の空気と所定量の燃料とを供給する原料供給手段(例えば、後述の燃料ガス供給装置83)と、を含んで構成され、前記改質器制御手段は、前記改質触媒に原料を供給せず当該改質触媒における改質ガスの生成を停止する停止モードと、前記改質触媒に原料を供給し当該改質触媒において改質ガスを生成する改質モードと、前記改質触媒の温度を所定の温度に保持しながら、当該改質触媒における改質ガスの生成を停止又は抑制するスタンバイモードと、を含む複数の運転モードで前記燃料改質器を制御することを特徴とする。
本発明によれば、改質器制御手段は、改質ガスの生成を停止する停止モードと、改質ガスを生成する改質モードと、改質触媒の温度を所定の温度に保持しながら、改質ガスの生成を停止又は抑制するスタンバイモードとを含む複数の運転モードで燃料改質器を制御する。特にこれら3つの運転モードのうち、改質ガスの生成を停止又は抑制しながらも、改質触媒の温度を所定の温度を保持するスタンバイモードを設定することにより、改質ガスが不要な場合にはその生成を停止又は抑制しつつ、改質ガスが要求された時には、運転モードをスタンバイモードから改質モードに切り替えて、改質ガスの生成及び供給を迅速に開始することができる。特にここで、スタンバイモードでの運転時には改質触媒の温度を所定の温度に制御しているので、スタンバイモードから改質モードに切り替えて改質ガスの生成を開始する際に、改質触媒を改めて時間をかけて加熱したりする必要がなく、したがって、改質ガスの要求が生じてから実際に改質ガスの供給を開始するまでにかかる時間を短縮することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記スタンバイモードでの運転時における原料の空燃比(例えば、後述の改質空燃比AFs)は、前記改質モードでの運転時における原料の空燃比(例えば、後述の改質空燃比AFr)よりもリーン(AFs>AFr)であり、かつ、前記スタンバイモードでの運転時における燃料の供給量(例えば、後述の燃料量Cs)は、前記改質モードでの運転時における燃料の供給量(例えば、後述の燃料量Cr)よりも少ない(Cs<Cr)ことを特徴とする。
スタンバイモードでの運転時における原料の空燃比及び燃料の供給量をそれぞれAFs及びCsとし、改質モードでの運転時における原料の空燃比及び燃料の供給量をAFr及びCrとした場合、本発明によれば、下記式(1)及び(2)が満たされるように、燃料改質器が制御される。
AFs>AFr (1)
Cs<Cr (2)
AFs>AFr (1)
Cs<Cr (2)
本発明によれば、上記式(1)及び(2)が満たされるように燃料改質器を制御することにより、特にスタンバイモードでの運転時において、改質触媒が劣化する程の高温になったり、コークの発生による活性低下が生じたりすることなく、改質触媒の温度を最適な温度に保持することができる。また、改質モードに対して、スタンバイモードでの運転時における燃料の消費量を少なくすることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記スタンバイモードでの運転時において前記改質触媒に供給する原料の空燃比(例えば、後述の改質空燃比AFs)は、理論空燃比(例えば、後述の燃焼理論空燃比)よりもリーンであることを特徴とする。
本発明によれば、スタンバイモードでの運転時には、改質触媒に供給する原料の空燃比を理論空燃比よりもリーンにする。このように、改質触媒に供給する原料の空燃比を理論空燃比よりもリーンにすると、改質触媒では、水素及び一酸化炭素を生成する部分酸化反応(下記式(3)参照)に対して、下記反応式(4)に示すような完全酸化反応が優位に進行する。この完全酸化反応は、部分酸化反応に対して発熱量が多い。したがって、本発明によれば、スタンバイモードでの運転時には、原料の空燃比を理論空燃比よりもリーンにし、主に完全酸化反応を進行させることにより、改質ガスを生成することなく、改質触媒を最適な温度に保持するための熱を少ない燃料で効率的に発生させることができる。
CnHm+1/2nO2→nCO+1/2mH2 (3)
CnHm+(n+1/4m)O2→nCO2+1/2mH2O (4)
CnHm+1/2nO2→nCO+1/2mH2 (3)
CnHm+(n+1/4m)O2→nCO2+1/2mH2O (4)
請求項5に記載の発明は、請求項2から4の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質モードでの運転時において前記改質触媒に供給する原料の空燃比(例えば、後述の改質空燃比AFr)は、理論空燃比(例えば、後述の燃焼理論空燃比)よりもリッチであることを特徴とする。
本発明によれば、改質モードでの運転時には、改質触媒に供給する原料の空燃比を理論空燃比よりもリッチにする。このように、改質触媒に供給する原料の空燃比を理論空燃比よりもリーンにすると、改質触媒では、上記反応式(4)に示す完全酸化反応に対して、上記反応式(3)に示す部分酸化反応が優位に進行する。したがって、本発明によれば、改質モードでの運転時には、原料の空燃比を理論空燃比よりもリッチにし、主に部分酸化反応を進行させることにより、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを効率的に生成することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項2から5の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記スタンバイモードでの運転時、及び、前記スタンバイモードでの運転と前記改質モードでの運転との移行時において、前記改質触媒の最高温度を300℃以上1200℃未満の範囲内に制御することを特徴とする。
本発明によれば、スタンバイモードでの運転時、及びスタンバイモードでの運転と改質モードでの運転との間の移行時において、改質触媒の最高温度を300℃以上1200℃未満の範囲内に制御する。ここで、改質触媒の最高温度とは、改質触媒のうち最も温度が高い部分の温度を意味する。改質触媒を利用した燃料の改質反応では、改質触媒の温度が、改質反応が自発的に起こり始める活性開始温度である約300℃を下回った場合、外部から加熱しない限り、原料を供給しても改質反応は進行しない。すなわち、停止モードから直接改質モードへ移行する場合には、加熱する必要がある。したがって、本発明によれば、改質触媒の最高温度を300℃以上に制御することにより、スタンバイモードを設定することによる効果を十分に発揮することができる。一方、改質触媒の温度が1200℃を上回った場合、改質触媒の熱劣化が促進され、改質性能を保持できなくなるおそれがある。したがって、本発明によれば、上述のように改質触媒の最高温度を制御することにより、改質触媒を熱劣化させることなくNOxの排出時期に同期して応答性良く改質ガスを生成及び供給することができる。
なお、一般的に改質触媒の温度が高いほど、改質モード移行時の応答性が向上する傾向がある。このため、改質触媒の最高温度は、600℃以上1200℃未満の範囲内に制御されることがより好ましい。この場合、スタンバイモードでの運転から改質モードでの運転へ移行するのに必要な時間をさらに短縮することができる。
なお、一般的に改質触媒の温度が高いほど、改質モード移行時の応答性が向上する傾向がある。このため、改質触媒の最高温度は、600℃以上1200℃未満の範囲内に制御されることがより好ましい。この場合、スタンバイモードでの運転から改質モードでの運転へ移行するのに必要な時間をさらに短縮することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項2から6の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質触媒は、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、ジルコニア、アルミナ、及びチタニアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含むことを特徴とする。
ところで、上述のような3つの運転モードで燃料改質器を制御する場合、特にスタンバイモードで燃料改質器を効率的に運転する場合、燃料改質器の改質触媒には、具体的には以下に示すような性能を有することが望ましい。つまり、スタンバイモードにおいて、不必要な改質ガスを生成することなく、少ない燃料ガスで改質触媒の温度を高温に保持するには、スタンバイモードでの運転時における完全酸化反応活性が比較的高いことが好ましい。また、スタンバイモードから改質モードへ速やかに移行し改質ガスを生成するには、改質触媒の燃焼開始温度は300℃以下であることが好ましい。本発明によれば、上述のような金属触媒成分及び複合酸化物を含む改質触媒を用いることにより、上述の2つの性能を達成し、効率的なスタンバイモードの運転が可能となる。この他、本発明によれば、上述のような金属触媒成分と複合酸化物を含む改質触媒を用いることにより、改質モードでの運転時における部分酸化反応活性を高くしながら、約1200℃までの使用温度に対する熱劣化を小さくすることもできる。
請求項8に記載の発明は、請求項2から7の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記排気浄化システムは、前記触媒コンバータの温度を検出又は推定する触媒コンバータ温度検出手段(例えば、後述の排気温度センサ92、及びECU7)をさらに備える。また、前記改質器制御手段は、前記触媒コンバータ温度検出手段の出力値(例えば、後述の触媒コンバータ温度T_LNC)に基づいて、前記燃料改質器の運転モードを切り替えることを特徴とする。
例えば、触媒コンバータが活性に達していない状態で改質ガスを供給すると、改質ガスは触媒コンバータ上で反応に供されることなく、その下流側へ排出されてしまう。この場合、改質ガスの生成にかかる燃料が無駄になるばかりか、エミッションの成分が悪化してしまう。本発明によれば、触媒コンバータ温度検出手段は触媒コンバータの温度を検出又は推定し、改質器制御手段は触媒コンバータ温度検出手段の出力値に基づいて、燃料改質器の運転モードを切り替える。これにより、触媒コンバータの活性状態に応じて、適切な時期に改質ガスを生成したり停止したりすることができるので、上述のようなエミッションの成分の悪化や燃費の悪化を防止することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項2から8の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記排気浄化システムは、前記内燃機関のNOx排出量を検出又は推定するNOx排出量検出手段(例えば、後述のクランク角センサ94、アクセル開度センサ95、ECU7、及び図4のステップS5の実行に係る手段)をさらに備える。前記改質器制御手段は、前記NOx排出量検出手段の出力値(例えば、後述のNOx排出量Q_NOx)に基づいて、前記燃料改質器の運転モードを切り替えることを特徴とする。
本発明によれば、NOx排出量検出手段は内燃機関のNOx排出量を検出又は推定し、改質器制御手段はNOx排出量検出手段の出力値に基づいて、燃料改質器の運転モードを切り替える。これにより、内燃機関のNOx排出量に応じて、適切な時期に改質ガスを生成したり停止したりすることができる。すなわち、NOx排出量が多い場合には改質ガスを生成することでNOx浄化率を向上することができる。また、NOx排出量が少なく、改質ガスが不要である場合には改質ガスの生成を停止することで、燃費が悪化するのを防止できる。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記NOx排出量検出手段は、前記内燃機関の回転数(例えば、後述のエンジン回転数NE)、前記内燃機関の燃料噴射量(例えば、後述の燃料噴射量QINJ)、前記内燃機関の混合気の空燃比、前記内燃機関の吸入空気量、前記内燃機関の過給圧、前記内燃機関の燃料噴射時期、及び前記内燃機関の燃料噴射圧のうち少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記NOx排出量を推定することを特徴とする。
本発明によれば、NOx排出量検出手段は、内燃機関の回転数、燃料噴射量、混合気の空燃比、吸入空気量、過給圧、燃料噴射時期、及び燃料噴射圧などのパラメータに基づいてNOx排出量を推定する。これにより、NOx排出量を検出するための特別なセンサを追加することなく、NOx排出量を精度良く推定することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項2から10の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記内燃機関が停止状態となったことに応じて、前記燃料改質器を前記停止モードで運転することを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関が停止状態となったことに応じて、燃料改質器を停止モードで運転することにより、内燃機関が停止している間も燃料改質器が運転され続けることによる燃費の悪化を防止することができる。
請求項12に記載の発明は、請求項2から11の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記内燃機関のNOx排出量(例えば、後述のNOx排出量Q_NOx)が所定値(例えば、後述の判定値Q_TH)より大きく、かつ、前記触媒コンバータの温度(例えば、後述の触媒コンバータ温度T_LNC)が所定値(例えば、後述の判定値T_TH)以下である場合には、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで運転することを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関のNOx排出量が所定値より大きく、かつ、触媒コンバータの温度が所定値以下である場合には、燃料改質器をスタンバイモードで運転する。これにより、触媒コンバータが未活性の状態で改質ガスが供給されることによるエミッションの成分の悪化や燃費の悪化を防止することができる。また、燃料改質器をスタンバイモードで運転することにより、触媒コンバータが活性した際には、速やかに運転モードを改質モードに切り替えて、改質ガスの生成及び供給を開始し、内燃機関から排出されたNOxを浄化することができる。
請求項13に記載の発明は、請求項2から12の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記内燃機関のNOx排出量(例えば、後述のNOx排出量Q_NOx)が所定値(例えば、後述の判定値Q_TH)より大きく、かつ、前記触媒コンバータの温度(例えば、後述の触媒コンバータ温度T_LNC)が所定値(例えば、後述の判定値T_TH)より大きい場合には、前記燃料改質器を前記改質モードで運転することを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関のNOx排出量が所定値より大きく、かつ触媒コンバータの温度が所定値より大きい場合には、燃料改質器を改質モードで運転する。これにより、活性した触媒コンバータにおいて、燃料改質器で生成した改質ガスにより排気中のNOxを効率的に浄化することができる。
請求項14に記載の発明は、請求項2から13の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記燃料改質器の運転モードに応じて、前記内燃機関の吸入空気量を変化させる吸気量変更手段(例えば、ECU7、スロットル弁32、及び図4のステップS15の実行に係る手段)をさらに備えることを特徴とする。
本発明によれば、燃料改質器の運転モードに応じて内燃機関の吸入空気量を変化させる。燃料改質器の運転モードが変化すると、触媒コンバータに流入する排気の空燃比が変化する。また、内燃機関の吸入空気量が変化しても、触媒コンバータに流入する排気の空燃比が変化する。したがって、燃料改質器の運転モードに合わせて、触媒コンバータに流入する排気の空燃比を、触媒コンバータにおいて排気を浄化するのに適した空燃比にすることができる。
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記吸気量変更手段は、前記燃料改質器が前記改質モードで運転される場合には、他の運転モードで運転される場合と比較して吸入空気量を少なくすることを特徴とする。
本発明によれば、燃料改質器を改質モードで運転し改質ガスを排気通路に供給する際には、改質ガスを供給しない他の運転モードで運転する場合と比較して、排気の空燃比が低減される。これにより、供給した改質ガス中に含まれる水素が、排気中の酸素と反応することにより不要に消費されてしまうのを防止することができる。
請求項16に記載の発明は、請求項14又は15に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記排気浄化システムは、前記燃料改質器を前記改質モードで運転した場合における前記内燃機関の吸入空気量の目標値(例えば、後述の目標吸入空気量QAIR_TRGT)を設定するとともに、当該目標値が、前記内燃機関の運転状態に応じて設定された吸入空気量の下限値(例えば、後述の吸入空気量下限値QAIR_LLIM)以下であるか否かを判別する吸気量低減可否判定手段(例えば、後述のECU7、及び図5の吸気絞り判定処理の実行に係る手段)をさらに備える。また、前記改質器制御手段は、前記吸気量低減可否判定手段により前記吸入空気量の目標値が前記下限値以下であると判別された場合には、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで運転することを特徴とする。
本発明によれば、燃料改質器を改質モードで運転した場合における内燃機関の吸入空気量の目標値が、内燃機関の運転状態に応じて設定された吸入空気量の下限値以下である場合には、燃料改質器をスタンバイモードで運転する。これにより、改質ガスの供給に合わせて吸入空気量を低減してしまい、内燃機関の燃焼が不安定になるのを防止することができる。したがって、内燃機関の燃焼を安定に維持しながら、燃料改質器により改質ガスを効率的に生成することができる。
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記吸気量低減可否判定手段は、前記内燃機関の回転数(例えば、後述のエンジン回転数NE)、前記内燃機関の冷却水の温度、前記内燃機関の吸気の温度、及び前記内燃機関の排気の還流量のうち少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記内燃機関の吸入空気量の下限値を設定することを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関の回転数、冷却水の温度、吸気の温度、及び排気の還流量のうち少なくとも1つのパラメータに基づいて内燃機関の吸入空気量の下限値を設定する。これにより、吸入空気量の下限値を、内燃機関の状態に応じて適切に設定することができる。
請求項18に記載の発明は、請求項2から17の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記内燃機関がアイドル状態のまま所定時間経過した場合には、前記燃料改質器の運転モードを、スタンバイモードから停止モードに切り替えることを特徴とする。
内燃機関がアイドル状態にある場合、NOx排出量は比較的少なく改質ガスは要求されないが、運転者の操作により内燃機関が高回転及び高負荷状態に急激に変化してしまい、これに応じて改質ガスが要求される場合もある。したがって、このような改質ガスの要求に速やかに応答できるように、内燃機関がアイドル状態にある場合には、燃料改質器をスタンバイモードで運転することが好ましい。しかしながら、スタンバイモードでの運転を継続すると、改質触媒の温度を保持するための燃料を無駄に消費されてしまう。これに対して本発明によれば、内燃機関がアイドル状態のまま所定時間が経過した場合には、燃料改質器の運転モードをスタンバイモードから停止モードに切り替えることにより、燃費の悪化を軽減することができる。
請求項19に記載の発明は、請求項2から18の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記内燃機関のNOx排出量(例えば、後述のNOx排出量Q_NOx)が所定値(例えば、後述の判定値Q_TH)以下であり、かつ、前記触媒コンバータの温度(例えば、後述の触媒コンバータ温度T_LNC)が所定値(例えば、後述の判定値T_TH)より高い場合には、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで運転することを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関のNOx排出量が所定値以下であり、かつ、触媒コンバータの温度が所定値より高い場合には、燃料改質器をスタンバイモードで運転する。これにより、運転者の操作により、内燃機関のNOx排出量が急激に増加した場合であっても、燃料改質器の運転モードをスタンバイモードから改質モードに切り替えて、改質ガスの供給を速やかに開始し、排気中のNOxを浄化することができる。
請求項20に記載の発明は、請求項2から19の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記改質器制御手段は、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで所定の時間に亘って運転し続けた場合には、前記燃料改質器の運転モードを、前記スタンバイモードから前記停止モードに切り替えることを特徴とする。
本発明によれば、燃料改質器をスタンバイモードで所定の時間に亘って運転し続けた場合には、燃料改質器の運転モードをスタンバイモードから停止モードに切り替える。したがって、スタンバイモードで運転し続けた場合における燃費の悪化を軽減することができる。
請求項21に記載の発明は、請求項1から20の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記触媒コンバータは、白金、セリア、及びゼオライトを含むことを特徴とする。
本発明によれば、触媒コンバータに白金、及びセリアを含める。これにより、触媒コンバータに流入する排気中の一酸化炭素と水蒸気のシフト反応により水素を生成するとともに、生成した水素と酸化雰囲気下で捕捉したNOxによりアンモニアを生成することができる。また、触媒コンバータにゼオライトを含めることにより、生成したアンモニアを貯蔵するとともに、貯蔵したアンモニアにより排気中のNOxを還元することができる。本発明によれば、このような触媒コンバータに対して水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを供給することにより、上記シフト反応による水素生成を促進するとともに、アンモニアの合成量及び貯蔵量を増大し、NOxの浄化性能を向上することができる。
また、触媒コンバータにおける水素の生成、アンモニアの生成、及びアンモニアの貯蔵といった機能は、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化活性より高温で発現する。このため、触媒コンバータが水素及び一酸化炭素の酸化活性が十分に起こる温度となった場合には、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化反応により触媒コンバータを昇温することで、上述のような機能によるNOxの浄化が可能になるまでの時間を短縮することができる。
また、触媒コンバータにおける水素の生成、アンモニアの生成、及びアンモニアの貯蔵といった機能は、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化活性より高温で発現する。このため、触媒コンバータが水素及び一酸化炭素の酸化活性が十分に起こる温度となった場合には、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化反応により触媒コンバータを昇温することで、上述のような機能によるNOxの浄化が可能になるまでの時間を短縮することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の排気浄化システム1、及びこれを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)2の構成を示す模式図である。エンジン2は、各気筒21の燃焼室内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンである。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の排気浄化システム1、及びこれを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)2の構成を示す模式図である。エンジン2は、各気筒21の燃焼室内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンである。
エンジン2に燃料を供給する燃料供給系は、燃料タンク23に貯留された燃料を加圧する燃料ポンプ(図示せず)と、この燃料ポンプにより加圧された燃料をエンジン2の気筒21ごとに設けられたインジェクタに供給するコモンレール(図示せず)と、を含んで構成される。
インジェクタからの燃料噴射量QINJは、後述する電子制御ユニット(以下、「ECU」という)7によって設定される。また、このインジェクタの開弁時間は、設定された燃料噴射量QINJが得られるように、ECU7からの駆動信号により制御される。
エンジン2には、吸気が流通する吸気管3と、排気が流通する排気管4と、排気管4内の排気の一部を吸気管3に還流する排気還流通路5と、吸気管3に吸気を圧送する過給機6とが設けられている。
吸気管3は、吸気マニホールド31の複数の分岐部を介してエンジン2の各気筒21の吸気ポートに接続されている。排気管4は、排気マニホールド41の複数の分岐部を介してエンジン2の各気筒21の排気ポートに接続されている。排気還流通路5は、排気マニホールド41から分岐し吸気マニホールド31に至る。
過給機6は、排気管4に設けられた図示しないタービンと、吸気管3に設けられた図示しないコンプレッサと、を備える。タービンは、排気管4を流通する排気の運動エネルギーにより駆動される。コンプレッサは、タービンにより回転駆動され、吸気を加圧し吸気管3内へ圧送する。また、タービンは、図示しない複数の可変ベーンを備えており、可変ベーンの開度を変化させることにより、タービン回転数(回転速度)を変更できるように構成されている。タービンのベーン開度は、ECU7により電磁的に制御される。
吸気管3のうち過給機6の上流側には、エンジン1の吸入空気量を制御するスロットル弁32が設けられている。このスロットル弁32は、アクチュエータを介してECU7に接続されており、その開度はECU7により電磁的に制御される。また、吸気管3のうち過給機6の下流側には、過給機6により加圧された吸気を冷却するためのインタークーラ33が設けられている。
排気還流通路5は、排気マニホールド41と吸気マニホールド31とを接続し、エンジン2から排出された排気の一部を還流する。排気還流通路5には、還流される排気を冷却するEGRクーラ51と、排気の還流量を制御するEGR弁52と、が設けられている。EGR弁52は、図示しないアクチュエータを介してECU7に接続されており、その弁開度はECU7により電磁的に制御される。
排気管4のうち過給機6の下流側には、排気を浄化する触媒コンバータ43が設けられている。また、排気管4には、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素(HC)を含む改質ガスを生成し、生成した改質ガスを排気管4内に触媒コンバータ43の上流側から供給する燃料改質器8が接続されている。
触媒コンバータ43は、エンジン2で燃焼する混合気を理論空燃比よりもリーンに設定し、流入する排気の酸素濃度が比較的高い酸化雰囲気にしたときに、排気中のNOxを捕捉する。また、触媒コンバータ43は、流入する排気の還元剤(水素、一酸化炭素、及び炭化水素など)濃度が比較的高い還元雰囲気にしたときに、上記捕捉したNOxを還元する。
本実施形態では、触媒コンバータ43として、触媒担体に2つの層からなるNOx浄化触媒を担持させることによって形成されたものを用いる。
NOx浄化触媒の下層は、白金を4.5(g/L)と、セリアを60(g/L)と、アルミナを30(g/L)と、Ce−Pr−La−Oxを60(g/L)と、Zr−Oxを20(g/L)と、で構成される材料を水系媒体とともにボールミルに投入して攪拌、混合することでスラリーを製造し、このスラリーを触媒担体にコーティングして形成される。
また、NOx浄化触媒の上層は、β型のゼオライトに鉄(Fe)及びセリウム(Ce)をイオン交換したものを75(g/L)と、アルミナを7(g/L)と、バインダーを8(g/L)と、で構成される材料を、水系媒体とともにボールミルに投入して攪拌、混合することでスラリーを製造し、このスラリーを上述の下層にコーティングして形成される。
NOx浄化触媒の下層は、白金を4.5(g/L)と、セリアを60(g/L)と、アルミナを30(g/L)と、Ce−Pr−La−Oxを60(g/L)と、Zr−Oxを20(g/L)と、で構成される材料を水系媒体とともにボールミルに投入して攪拌、混合することでスラリーを製造し、このスラリーを触媒担体にコーティングして形成される。
また、NOx浄化触媒の上層は、β型のゼオライトに鉄(Fe)及びセリウム(Ce)をイオン交換したものを75(g/L)と、アルミナを7(g/L)と、バインダーを8(g/L)と、で構成される材料を、水系媒体とともにボールミルに投入して攪拌、混合することでスラリーを製造し、このスラリーを上述の下層にコーティングして形成される。
以上のようなNOx浄化触媒を担持して構成された触媒コンバータ43は、具体的には以下のように動作し、排気中のNOxを浄化する。
[リーン状態1]
先ず、エンジン2の混合気を理論空燃比よりもリーン側に設定する所謂リーンバーン運転を行い、触媒コンバータ43に流入する排気を酸化雰囲気にすると、排気中のNOxは、上層を通過して下層に到達し、白金によって酸化(例えば、NO→NO2)される。そして、酸化されたNOx(例えば、NO2)は、下層に一旦吸着されて貯蔵される。このとき、白金はNO酸化触媒として機能し、セリアやCe−Pr−La−Oxは、NOx吸着材として機能する。
先ず、エンジン2の混合気を理論空燃比よりもリーン側に設定する所謂リーンバーン運転を行い、触媒コンバータ43に流入する排気を酸化雰囲気にすると、排気中のNOxは、上層を通過して下層に到達し、白金によって酸化(例えば、NO→NO2)される。そして、酸化されたNOx(例えば、NO2)は、下層に一旦吸着されて貯蔵される。このとき、白金はNO酸化触媒として機能し、セリアやCe−Pr−La−Oxは、NOx吸着材として機能する。
[リッチ状態]
次に、例えば、エンジン2の混合気を理論空燃比近傍若しくは理論空燃比よりもリッチ側に設定する所謂リッチ運転を行うことにより、触媒コンバータ43に流入する排気を還元雰囲気にすると、排気中の一酸化炭素と水のシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される(下記式(5)参照)。また、上記リーン状態1で貯蔵されていたNOx及び排気中のNOxは水素と反応し、アンモニアが生成される(下記式(6)参照)。ここで生成されたアンモニアは、上層に移動し、ゼオライトに吸着されて貯蔵される。
CO+H2O→H2+CO2 (5)
NOx+H2→NH3 (6)
次に、例えば、エンジン2の混合気を理論空燃比近傍若しくは理論空燃比よりもリッチ側に設定する所謂リッチ運転を行うことにより、触媒コンバータ43に流入する排気を還元雰囲気にすると、排気中の一酸化炭素と水のシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される(下記式(5)参照)。また、上記リーン状態1で貯蔵されていたNOx及び排気中のNOxは水素と反応し、アンモニアが生成される(下記式(6)参照)。ここで生成されたアンモニアは、上層に移動し、ゼオライトに吸着されて貯蔵される。
CO+H2O→H2+CO2 (5)
NOx+H2→NH3 (6)
[リーン状態2]
次に、再びリーンバーン運転を行い、触媒コンバータ43に流入する排気を酸化雰囲気にすると、上層に貯蔵されたアンモニアと、排気中のNOxとがアンモニア選択接触還元法(NH3−SCRという)による反応で窒素に変換され(下記式(7)参照)、当該窒素は上層から放出される。このとき、鉄及びセリウムイオン交換βゼオライトは、NH3−SCR触媒として機能する。
NOx+NH3+O2→N2+H2O (7)
次に、再びリーンバーン運転を行い、触媒コンバータ43に流入する排気を酸化雰囲気にすると、上層に貯蔵されたアンモニアと、排気中のNOxとがアンモニア選択接触還元法(NH3−SCRという)による反応で窒素に変換され(下記式(7)参照)、当該窒素は上層から放出される。このとき、鉄及びセリウムイオン交換βゼオライトは、NH3−SCR触媒として機能する。
NOx+NH3+O2→N2+H2O (7)
このように、触媒コンバータ43によれば、還元剤供給中に生成されるアンモニアがゼオライトに吸着され、吸着したアンモニアがリーンバーン運転中にNOxと反応するので、NOxの浄化を効率良く行うことができる。
燃料改質器8は、排気管4にその一端側が接続されたガス通路81と、このガス通路81内に設けられた改質触媒82と、燃料ガスをガス通路81の他端側から改質触媒82に供給する燃料ガス供給装置83と、を含んで構成される。
燃料ガス供給装置83は、燃料タンク23に貯蔵された燃料と、コンプレッサ84により供給された空気とを所定の割合で混合して燃料ガスを製造し、この燃料ガスをガス通路81内の改質触媒82に供給する。この燃料ガス供給装置83は、改質触媒82に供給される空気の量を制御する空気バルブ85と、改質触媒82に供給される燃料の量を制御する燃料バルブ86と、これら空気バルブ85及び燃料バルブ86を介して供給された空気と燃料を混合し改質触媒82に噴射する図示しない噴射器と、を備える。これら空気バルブ85及び燃料バルブ86は、それぞれ図示しないアクチュエータを介してECU7に接続されており、改質触媒82に供給する空気の量及び燃料の量、並びに、燃料ガスの燃料量に対する空気量の割合(以下、「改質空燃比」という)は、ECU7により制御される。
改質触媒82は、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、ジルコニア、アルミナ、及びチタニアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含む。この改質触媒82は、燃料ガス供給装置83から供給された燃料ガスを改質し、水素、一酸化炭素、及び炭化水素を含む改質ガスを生成する。より具体的には、この改質触媒82は、燃料ガスを構成する炭化水素と空気との部分酸化反応により、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成する。
本実施形態では、この改質触媒82として、セリア及びロジウムの粉末を、セリアに対するロジウムの質量比が1%となるように秤量し、この粉末を水系媒体とともにボールミルに投入して攪拌、混合することでスラリーを製造し、このスラリーをメタル製の担体にコーティングし、さらに600℃で2時間に亘り乾燥、焼成して調製されたものを用いる。
燃料改質器8は、グロープラグやスパークプラグなどを含んで構成された図示しない加熱ヒータを備えており、燃料改質器8の始動とともに、改質触媒82を加熱することが可能となっている。また、この燃料改質器8は、排気管4とは別に設けられている。すなわち、燃料改質器8の燃料ガス供給装置83及び改質触媒82は、排気管4内には設けられていない。
以上のように構成された燃料改質器8は、後述のECU7から送信された制御信号に基づいて駆動される。本実施形態では、改質ガスの生成量及び改質ガスの生成に関する応答速度が異なる複数の運転モードを準備し、これら運転モードで選択的に燃料改質器8を運転することにより、燃料改質器における改質ガスの生成量及び応答速度を制御する。ここで、改質ガスの生成に関する応答速度とは、より具体的には、改質ガスの生成の要求が発生してから、実際に改質ガスを生成するまでの時間を示す。以下、これら複数の運転モードについて、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
図2は、燃料改質器の複数の運転モードを模式的に示す図である。
本実施形態では、燃料改質器8の運転モードとして、停止モードと、改質モードと、スタンバイモードとの3種類を準備する。
本実施形態では、燃料改質器8の運転モードとして、停止モードと、改質モードと、スタンバイモードとの3種類を準備する。
停止モードとは、燃料ガス供給装置の駆動を停止し改質触媒に燃料ガスを供給せず、改質触媒における改質ガスの生成を停止する運転モードを示す。停止モードでの運転時には、改質ガスを生成しないので、それに伴う改質触媒の温度上昇もない。この停止モードでの燃料改質器の運転は、基本的には、エンジンの停止時の他、エンジンの運転時であっても差し当たり改質ガスが要求されないと判断された時などに行われる。
改質モードとは、燃料ガス供給装置を駆動し燃料ガスを改質触媒に供給することにより、改質触媒において改質ガスを生成する運転モードを示す。改質モードでの運転時には、改質ガスを効率良く生成させるため、最適な空気量、燃料量、及び改質空燃比に調整された燃料ガスを供給する。また、改質モードでの運転時には、改質ガスを生成するに伴って発生する熱により改質触媒は高温になる。また、この改質モードでの燃料改質器の運転は、基本的には、エンジンの運転時であって改質ガスが要求される時、すなわちNOxが比較的多く排出される高回転、高負荷でエンジンを運転している時などに行われる。
スタンバイモードとは、燃料ガス供給装置を駆動し燃料ガスを改質触媒に供給することにより、改質触媒の温度を所定の温度に保持しながら、この改質触媒における改質ガスの生成を停止又は抑制する運転モードを示す。このスタンバイモードでは、改質触媒の温度をできるだけ少ない量の燃料で高温に保持し、かつ、水素や一酸化炭素などの改質ガスを極力生成されない様に、最適な空気量、燃料量、及び改質空燃比に調整された燃料ガスを供給する。また、スタンバイモードでの運転時には、改質ガスの生成を停止又は抑制しながらも、改質触媒の温度を所定の温度に保持することにより、要求が発生した場合に、速やかに改質モードへの移行を可能にする。このスタンバイモードでの燃料改質器の運転は、基本的には、エンジンの運転時であって、改質ガスが要求されていない時、すなわちNOxの排出量が比較的少ない低回転、低負荷でエンジンを運転している時や、近いうちに改質ガスの要求が発生すると予測される時などに行われる。
ここで、各運転モードにおける空気量、燃料量、燃料ガスの改質空燃比、及び改質触媒の温度の最適な形態について詳細に説明する。
以下の説明では、停止モードでの運転時における空気量及び燃料量を、それぞれO0及びC0とする。また、改質モードでの運転時における空気量、燃料量、及び改質空燃比を、それぞれ、Or、Cr、及びAFrとし、スタンバイモードでの運転時における空気量、燃料量、及び改質空燃比を、それぞれ、Os、Cs、及びAFsとする。
以下の説明では、停止モードでの運転時における空気量及び燃料量を、それぞれO0及びC0とする。また、改質モードでの運転時における空気量、燃料量、及び改質空燃比を、それぞれ、Or、Cr、及びAFrとし、スタンバイモードでの運転時における空気量、燃料量、及び改質空燃比を、それぞれ、Os、Cs、及びAFsとする。
停止モードでは、燃料ガス供給装置の駆動を停止し、改質触媒には空気及び燃料を供給しない。したがって、空気量O0及び燃料量C0は、下記式(8)に示すように、それぞれ値0とする。
O0=0,C0=0 (8)
O0=0,C0=0 (8)
図3は、改質空燃比に対する燃料量、改質触媒の温度、及び改質ガスの生成量の関係を示す図である。なお図3には、燃料量を一定の値に保ちながら改質空燃比を変化させた場合における改質触媒の温度及び改質ガスの生成量を、実線及び破線で示す。また、実線は、破線で示す例よりも燃料量を多くした場合を示す。
図3に示すように、改質空燃比を燃焼理論空燃比以下で変化させると、改質ガスの生成量は改質空燃比に応じて大きく変化するが、改質空燃比を燃焼理論空燃比以上にすると、改質ガスは生成されなくなる。これは、燃焼理論空燃比を境として、燃焼理論空燃比以下では改質ガスを生成する下記式(9)に示すような部分酸化反応が優位に進行するのに対し、燃焼理論空燃比以上では改質ガスを生成しない下記式(10)に示すような完全酸化反応が優位に進行するためであると考えられる。また、完全酸化反応による発熱量は、部分酸化反応による発熱量よりも大きいので、改質触媒の温度は改質空燃比を燃焼理論空燃比の近傍にした時に最大となる。また、図3に示すように、燃焼理論空燃比以下の改質空燃比では改質ガスを効率的に生成できる比率が存在する。
CnHm+1/2nO2→nCO+1/2mH2 (9)
CnHm+(n+1/4m)O2→nCO2+1/2mH2O (10)
CnHm+1/2nO2→nCO+1/2mH2 (9)
CnHm+(n+1/4m)O2→nCO2+1/2mH2O (10)
また、図3中の実線と破線を比較して理解できるように、燃料量を少なくすると、改質ガスの生成量は少なくなり、改質触媒の温度は低くなるが、改質空燃比に対するこれら改質ガスの生成量及び改質触媒の温度の変化の特性は定性的には変わらない。
以上のような改質反応の特性を利用して、改質モード及びスタンバイモードでの運転時における改質空燃比AFr,AFsを設定する。
改質モードでは、部分酸化反応を優位に進行させて改質ガスを高効率で生成できるように、下記式(11)に示すように、改質空燃比AFrを燃焼理論空燃比より小さく(リッチ)になるように設定する。より具体的には、図3中の黒丸に示すように、燃焼理論空燃比より小さく、かつ、改質ガスの生成量が最大となるような値、すなわち改質理論空燃比に改質空燃比AFrを設定する。また、この時、改質モードでの運転時における空気量Orと燃料量Crは、改質触媒の温度がその耐熱温度を上回らないように設定する。
AFr<燃焼理論空燃比 (11)
AFr<燃焼理論空燃比 (11)
一方スタンバイモードでは、上述のように設定された改質モードにおける改質空燃比AFrに対し、改質空燃比を小さくしても大きくしても、燃料量を少なくすることにより改質ガスの生成量を抑制することができる。しかしながら、仮にスタンバイモードにおける改質空燃比AFsを、改質モードにおける改質空燃比AFrよりも小さくした場合、コークや未改質の炭化水素が発生し易くなり、改質触媒の活性低下を引き起こすおそれがある。このため、下記式(12)に示すように、スタンバイモードでの運転時における改質空燃比AFsは、改質モードでの運転時における改質空燃比AFrよりも大きく(リーン)なるように設定する。
AFs>AFr (12)
AFs>AFr (12)
また、スタンバイモードでは、完全酸化反応を優位に進行させて改質触媒を高温に保持しておくための熱量を効率的に発生できるように、下記式(13)に示すように、改質空燃比AFsを燃焼理論空燃比よりも大きく(リーン)なるように設定する。
AFs>燃焼理論空燃比 (13)
AFs>燃焼理論空燃比 (13)
また、上記式(12)のもとで、スタンバイモードでの運転時における燃料量Csを改質モードでの運転時における燃料量Crよりも多く設定すると、改質触媒の温度が改質モードでの温度と比較して高くなり、改質触媒が劣化するおそれがある。このため、下記式(14)及び図3中の白丸に示すように、スタンバイモードでの運転時における燃料量Csは改質モードでの運転時における燃料量Crよりも少なくなるように設定する。
Cs<Cr (14)
Cs<Cr (14)
また、スタンバイモードでの運転時、及び、スタンバイモードでの運転と改質モードでの運転との間の移行時には、改質触媒の劣化を抑制しながらモード間の移行を速やかに行うことができるように、改質触媒の最高温度を300℃以上1200℃未満の範囲内に制御する。
図1に戻って、ECU7には、排気温度センサ92、及びエアフローセンサ93が接続されている。排気温度センサ92は、排気管4のうち触媒コンバータ43に流入する排気の温度TEを検出し、検出値に略比例した信号をECU7に送信する。エアフローセンサ93は、エンジン2に吸入される吸入空気量QAIRを検出し、検出値に略比例した信号をECU7に送信する。また、触媒コンバータ43の温度T_LNCは、排気温度センサ92の検出値に基づいて、ECU7により算出される。
この他、ECU7には、クランク角センサ94、アクセル開度センサ95、及びイグニッションスイッチ96が接続されている。
クランク角センサ94は、エンジン2のクランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号をECU7に送信する。このCRK信号は、所定のクランク角(例えば30°)ごとに送信される。アクセル開度センサ95は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル開度」という)APを検出し、検出値に略比例した信号をECU7に送信する。イグニッションスイッチ96は、図示しない車両の運転席に設けられ、車両の起動又は停止を指令する信号をECU7に送信する。
ここで、エンジン2の回転数(以下、「エンジン回転数」という)NEは、クランク角センサ94から送信されたCRK信号に基づいて、ECU7により算出される。上述のインジェクタからの燃料噴射量QINJは、エンジン回転数NE及びアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、ECU7により算出される。
ECU7は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換するなどの機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU7は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果などを記憶する記憶回路と、インジェクタ22などに制御信号を出力する出力回路と、を備える。以上のようなハードウェア構成により、ECU7には、以下に示す改質器制御処理を実行するモジュールが構成される。
図4〜図9を参照して、本実施形態の改質器制御処理について説明する。
図4は、改質器制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、エンジンの運転状態や触媒コンバータの状態に応じて適切な運転モードで燃料改質器を制御する処理であり、イグニッションスイッチがオンにされた後、ECUにおいて所定の周期で行われる。
図4は、改質器制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、エンジンの運転状態や触媒コンバータの状態に応じて適切な運転モードで燃料改質器を制御する処理であり、イグニッションスイッチがオンにされた後、ECUにおいて所定の周期で行われる。
ステップS1では、イグニッションスイッチがオンからオフにされたか否かを判別する。ステップS1における判別がYESの場合、すなわち、イグニッションスイッチがオフにされた場合には、エンジンが停止状態となったことに応じて燃料改質器の運転を停止すべく、ステップS2に移る。ステップS1における判別がNOの場合、すなわち、エンジンが運転した状態である場合には、ステップS3に移る。
ステップS2では、燃料改質器を停止モードで運転し、この処理を終了する。
ステップS3では、前回の制御サイクル時において、燃料改質器の運転モードが、停止モードから改質モードへ又はスタンバイモードから改質モードへ切り替えられたか否かを判別する。このステップS3の判別がNOの場合には、ステップS5に移る。このステップS3の判別がYESの場合には、ステップS4に移り、後述のディレイタイマDELを初期値にリセットした後、ステップS5に移る。
ステップS5では、今回の制御サイクルにおいてエンジンから排出されたNOxの量(以下、「NOx排出量」という)Q_NOxを算出し、ステップS6に移る。このNOx排出量Q_NOxは、より具体的には、エンジン回転数NE及び燃料噴射量QINJなどのエンジンの運転状態を示すパラメータに基づいて、所定のマップを検索することにより算出される。
ステップS6では、NOx排出量Q_NOxに応じて燃料改質器の運転モードを切り替えるため、NOx排出量Q_NOxが所定の判定値Q_THより大きいか否かを判別する。
ステップS6の判別がNOである場合、すなわちNOx排出量Q_NOxが判定値Q_TH以下である場合には、基本的には改質ガスを導入する必要はないと判断し、ステップS7に移る。
ステップS7では、触媒コンバータ温度T_LNCに応じて燃料改質器の運転モードをより適切に切り替えるため、触媒コンバータの温度T_LNCが、触媒コンバータの活性温度の近傍に設定された所定の判定値T_THより高いか否かを判別する。
ステップS7では、触媒コンバータ温度T_LNCに応じて燃料改質器の運転モードをより適切に切り替えるため、触媒コンバータの温度T_LNCが、触媒コンバータの活性温度の近傍に設定された所定の判定値T_THより高いか否かを判別する。
ステップS7の判別がNOである場合、すなわち、NOx排出量Q_NOxが判定値Q_TH以下でありかつ触媒コンバータ温度T_LNCも判定値T_TH以下である場合には、差し当たり改質ガスが要求されないと判断し、停止モードで運転すべくステップS2に移る。
ステップS7の判別がYESの場合、すなわち、NOx排出量Q_NOxが判定値Q_TH以下でありかつ触媒コンバータ温度T_LNCが判定値T_THより高い場合には、改質ガスが要求された場合に速やかに改質ガスの供給を開始できるように、スタンバイモードで運転すべくステップS8に移る。
ステップS8では、ディレイタイマDELを減算(DEL←DEL−1)した後、ステップS9に移る。そして、ステップS9では、ディレイタイマDELが「0」になったか否かを判別する。このステップS9の判別がNOである場合、ステップS10に移り、燃料改質器をスタンバイモードで運転する。一方、このステップS9の判別がYESである場合、すなわち、ディレイタイマの初期値に応じた時間に亘って燃料改質器をスタンバイモードで運転し続けた場合には、ステップS2に移り、燃料改質器を停止モードで運転する。
一方、ステップS6の判別がYESである場合、すなわちNOx排出量Q_NOxが判定値Q_THより大きい場合には、エンジンから排出されたNOxを浄化するには、改質ガスを導入する方が好ましいと判断し、ステップS11に移る。
ステップS11では、触媒コンバータ温度T_LNCに応じて燃料改質器の運転モードをより適切に切り替えるため、触媒コンバータの温度T_LNCが、判定値T_THより高いか否かを判別する。
ステップS11では、触媒コンバータ温度T_LNCに応じて燃料改質器の運転モードをより適切に切り替えるため、触媒コンバータの温度T_LNCが、判定値T_THより高いか否かを判別する。
ステップS11の判別がNOである場合、すなわちNOx排出量Q_NOxが判定値Q_THより大きいにもかかわらず、触媒コンバータ温度T_LNCが判定値T_TH以下である場合には、改質ガスが要求された場合に速やかに改質ガスの供給を開始できるように、スタンバイモードで運転すべくステップS10に移る。なおこの場合、ディレイタイマDELの減算は行わない。
一方、ステップS11の判別がYESである場合には、ステップS12に移る。
ステップS12では、吸気絞り判定処理を実行し、ステップS13に移る。この吸気絞り判定処理は、エンジンに流入する新気の流量を絞る吸気絞り運転が可能であることを判定する処理である。
ステップS12では、吸気絞り判定処理を実行し、ステップS13に移る。この吸気絞り判定処理は、エンジンに流入する新気の流量を絞る吸気絞り運転が可能であることを判定する処理である。
図5は、吸気絞り判定処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS21では、燃料改質器を改質モードで運転した場合におけるエンジンの吸入空気量QAIRの目標値(以下、「目標吸入空気量」という)QAIR_TRGTを設定し、ステップS22に移る。この目標吸入空気量QAIR_TRGTは、燃料改質器で生成した改質ガスをエンジンの排気とともに触媒コンバータに供給した場合に、この触媒コンバータでNOxを効率的に浄化できるような値に設定される。また、この目標吸入空気量QAIR_TRGTは、燃料改質器が停止モード及びスタンバイモードで運転される場合における吸入空気量よりも少ない値に設定される。より具体的には、本実施形態では、このような目標吸入空気量QAIR_TRGTを、エンジン回転数NE及び燃料噴射量QINJなどのエンジンの運転状態を示すパラメータの他、燃料改質器の改質ガスの生成量などに基づいて、図示しないマップを検索することにより設定する。
ステップS21では、燃料改質器を改質モードで運転した場合におけるエンジンの吸入空気量QAIRの目標値(以下、「目標吸入空気量」という)QAIR_TRGTを設定し、ステップS22に移る。この目標吸入空気量QAIR_TRGTは、燃料改質器で生成した改質ガスをエンジンの排気とともに触媒コンバータに供給した場合に、この触媒コンバータでNOxを効率的に浄化できるような値に設定される。また、この目標吸入空気量QAIR_TRGTは、燃料改質器が停止モード及びスタンバイモードで運転される場合における吸入空気量よりも少ない値に設定される。より具体的には、本実施形態では、このような目標吸入空気量QAIR_TRGTを、エンジン回転数NE及び燃料噴射量QINJなどのエンジンの運転状態を示すパラメータの他、燃料改質器の改質ガスの生成量などに基づいて、図示しないマップを検索することにより設定する。
ステップS22では、吸入空気量QAIRに対する下限値(以下、「吸入空気量下限値」という)QAIR_LLIMを後述のステップS25で設定するために、この吸入空気量下限値QAIR_LLIMに対する下限ベース値LLIM_BASを設定し、ステップS23に移る。この吸入空気量下限値QAIR_LLIMは、エンジンの燃焼を安定に維持するために必要な吸入空気量の下限値を示す。本実施形態では、この下限ベース値LLIM_BASを、エンジン回転数NEに基づいて図6に示すようなマップを検索することにより設定する。
ステップS23では、上記下限ベース値LLIM_BASに乗算される水温補正係数Ktwを、エンジンの冷却水の温度に基づいて設定し、ステップS24に移る。本実施形態では、この水温補正係数Ktwを、エンジンの冷却水の温度に基づいて、図7に示すようなマップを検索することにより設定する。
ステップS24では、上記下限ベース値LLIM_BASに乗算されるEGR補正係数Kegrを、エンジンの排気の還流量に基づいて設定し、ステップS25に移る。本実施形態では、このEGR補正係数Kegrを、排気の還流量に基づいて、図8に示すようなマップを検索することにより設定する。
ステップS25では、下記式(15)に示すように、下限ベース値LLIM_BAS、水温補正係数Ktw、及びEGR補正係数Kegrを乗算したものを、吸入空気量下限値QAIR_LLIMとして設定し、ステップS26に移る。
QAIR_LLIM=LLIM_BAS×Ktw×Kegr (15)
QAIR_LLIM=LLIM_BAS×Ktw×Kegr (15)
ステップS26では、目標吸入空気量QAIR_TRGTが、上述のようにエンジンの運転状態に基づいて設定された吸入空気量下限値QAIR_LLIMよりも大きいか否かを判別する。
ステップS26の判別がYESである場合には、吸入空気量QAIRが目標吸入空気量QAIR_TRGTに一致するように吸気絞り運転を実行しても、エンジンの燃焼が不安定になることはないと判断し、ステップS27に移る。そして、ステップS27では、吸気絞り運転を実行可能であることを示す絞り判定フラグF_AIRを「1」にセットし、この処理を終了する。
一方、ステップS26の判別がNOである場合には、吸入空気量QAIRが目標吸入空気量QAIR_TRGTに一致するように吸気絞り運転を実行すると、エンジンの燃焼が不安定になるおそれがあると判断し、ステップS28に移る。そして、ステップS28では、絞り判定フラグF_AIRを「0」にセットし、この処理を終了する。
図4に戻って、ステップS13では、絞り判定フラグF_AIRが「1」であるか否かを判別する。この判別がNOである場合、すなわち、吸気絞り運転が可能でない場合には、ステップS14に移る。
ステップS14では、エンジンがアイドル状態であるか否かを判別する。このステップS14の判別がYESの場合には、ステップS8に移り、ディレイタイマDELの減算を行った後、燃料改質器をスタンバイモード又は停止モードで運転する。すなわち、エンジンがアイドル状態である場合には、始めは燃料改質器をスタンバイモードで運転するが、アイドル状態のままディレイタイマの初期値に応じた時間が経過した場合には、燃料改質器の運転モードをスタンバイモードから停止モードに切り替える。また、ステップS14の判別がNOの場合には、ステップS10に移り、ディレイタイマDELの減算を行わずに燃料改質器をスタンバイモードで運転する。
一方、ステップS13の判別がYESの場合、すなわち、吸気絞り運転が可能である場合には、ステップS15に移る。ステップS15では、NOx排出量Q_NOxが判定値Q_THより大きく、触媒コンバータ温度T_LNCが判定値T_THより高く、さらに吸気絞り運転が可能であると判定されたことに応じて、吸入空気量QAIRが目標吸入空気量QAIR_TRGTに一致するように吸気絞り運転を実行するとともに、燃料改質器を改質モードで運転する。
図9は、改質器制御処理の具体例を示すタイムチャートである。
図9には、時刻t0においてイグニッションスイッチをオンにしてエンジンを始動するとともに車両の走行を開始した例を示す。
図9には、時刻t0においてイグニッションスイッチをオンにしてエンジンを始動するとともに車両の走行を開始した例を示す。
先ず、時刻t0から車両を走行し始めることにより、触媒コンバータ温度T_LNCとNOx排出量Q_NOxが上昇し始める。走行開始直後は、触媒コンバータ温度T_LNC及びNOx排出量Q_NOxは、それぞれの判定値T_TH,Q_THより小さいので、燃料改質器は停止モードで運転される(ステップS6,S7,S2参照)。
時刻t1において、NOx排出量Q_NOxが判定値Q_THを上回ったことに応じて燃料改質器はスタンバイモードで運転され(ステップS6,S11,S10参照)、その後、時刻t2において、触媒コンバータ温度T_LNCも判定値T_THを上回ったことに応じて燃料改質器は改質モードで運転される(ステップS6,S11,S12,S13,S15参照)。
その後、NOx排出量Q_NOxが減少し始め、時刻t3〜t5の間でNOx排出量Q_NOxが判定値Q_THを下回り続ける。そこで、時刻t3から、ディレイタイマDELの減算が開始するとともに燃料改質器はスタンバイモードで運転され、時刻t4においてディレイタイマDELが「0」となったことに応じて燃料改質器は停止モードで運転される(ステップS8,S9,S10参照)。
時刻t5では、NOx排出量Q_NOxが再び判定値Q_THを上回ったことに応じて、燃料改質器の運転モードは停止モードから改質モードに切り替えられ、ディレイタイマがリセットされる(ステップS3,S4参照)。その後、時刻t6〜t7の間では触媒コンバータ温度T_LNCが判定値T_THを下回り続けたことに応じて燃料改質器はスタンバイモードで運転され(ステップS6,S11、S10参照)、時刻t7〜t8の間では触媒コンバータ温度T_LNCが再び判定値T_THを上回り続けたことに応じて燃料改質器は改質モードで運転される(ステップS6,S11,S15参照)。
時刻t8以降では、触媒コンバータ温度T_LNCは判定値T_THを上回り続けるが、NOx排出量Q_NOxは判定値Q_THを下回る。このため、時刻t8から燃料改質器は改質モードからスタンバイモードに切り替えられるとともに、ディレイタイマDELの減算が開始する(ステップS6,S7,S8,S9,S10)。しかしながら、時刻t9では、ディレイタイマが「0」になる前に、NOx排出量Q_NOxが判定値Q_THを上回ったことに応じて、燃料改質器はスタンバイモードから停止モードではなく改質モードに切り替えられ、また、これに伴いディレイタイマはリセットされる(ステップS3,S4参照)。また、時刻t10では、NOx排出量Q_NOxが判定値Q_THを下回ったことに応じて、運転モードが改質モードからスタンバイモードに切り替えられる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、燃料改質器8で水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、生成した改質ガスを触媒コンバータ43の上流側に供給する。ここで、触媒コンバータ43が水素及び一酸化炭素の酸化反応が起こる温度となった場合には、水素及び一酸化炭素の酸化反応により触媒コンバータ43を昇温することができる。これにより、触媒コンバータ43のライトオフ時間を短縮することができる。また、還元性能の高い水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを供給することにより、触媒コンバータ43におけるNOxの浄化動作を促進することができる。したがって、エンジン2の低温始動時から、高いNOx浄化性能を発揮することができる。
また、本実施形態によれば、燃料改質器6を排気管4とは別に設ける。これにより、排気管4内の排気の成分、温度、及び流速、すなわちエンジン2の運転状態に影響されることなく、改質ガスを生成するための改質反応を効率的に行うことができる。したがって、燃料改質器8における触媒の使用量を少なくすることができる。また、燃料改質器8を排気管4とは別に設けることにより、エンジン2とは別系統の制御を行うことができるので、エンジン2の排気温度が上昇するよりも早く燃料改質器8を活性化し、改質ガスの生成及び供給を開始することができる。例えば、触媒コンバータ43に流入する排気を還元雰囲気にすべく、エンジン2の制御により一酸化炭素を製造する場合、特にエンジン2の低温始動時には、副次的に多くの炭化水素が生成されたり、エンジン2の燃焼が不安定になることによりノイズや振動が発生したりすることがある。これに対して、本実施形態によれば、燃料改質器8で改質ガスを生成することにより、エンジン2の制御を簡素にするとともに、低温始動時におけるノイズや振動の発生を抑制することができる。
これに対して、本実施形態によれば、エンジン2の運転状態や触媒コンバータ43の状態に応じて、燃料改質器8における改質ガスの生成量を制御することにより、必要に応じて適切に改質ガスを生成するとともに、不必要な燃料の消費を低減することができる。また、本実施形態によれば、燃料改質器8における改質ガスの生成量に加えて、改質ガスの生成に関する応答速度を制御する。このように、燃料改質器8の応答速度をも制御することにより、改質ガスを貯蔵するためのタンクを別途設けることなく、必要が生じた場合には速やかに改質ガスの供給を開始することができる。
本実施形態によれば、停止モードと、改質モードと、スタンバイモードとを含む複数の運転モードで燃料改質器8を制御する。特にこれら3つの運転モードのうち、改質ガスの生成を停止又は抑制しながらも、改質触媒82の温度を所定の温度を保持するスタンバイモードを設定することにより、改質ガスが不要な場合にはその生成を停止又は抑制しつつ、改質ガスが要求された時には、運転モードをスタンバイモードから改質モードに切り替えて、改質ガスの生成及び供給を迅速に開始することができる。特にここで、スタンバイモードでの運転時には改質触媒82の温度を所定の温度に制御しているので、スタンバイモードから改質モードに切り替えて改質ガスの生成を開始する際に、改質触媒82を改めて時間をかけて加熱したりする必要がなく、したがって、改質ガスの要求が生じてから実際に改質ガスの供給を開始するまでにかかる時間を短縮することができる。
本実施形態によれば、上記式(12)及び(14)が満たされるように燃料改質器8を制御することにより、特にスタンバイモードでの運転時において、改質触媒82が劣化する程の高温になったり、コークの発生による活性低下が生じたりすることなく、改質触媒82の温度を最適な温度に保持することができる。また、改質モードに対して、スタンバイモードでの運転時における燃料の消費量を少なくすることができる。
本実施形態によれば、改質モードでの運転時には、改質空燃比を燃焼理論空燃比よりもリッチにし、主に部分酸化反応を進行させることにより、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを効率的に生成することができる。
本実施形態によれば、スタンバイモードでの運転時、及びスタンバイモードでの運転と改質モードでの運転との間の移行時において、改質触媒82の最高温度を300℃以上1200℃未満の範囲内に制御する。このように改質触媒82の最高温度を制御することにより、改質触媒82を熱劣化させることなくNOxの排出時期に同期して応答性良く改質ガスを生成及び供給することができる。
本実施形態によれば、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、ジルコニア、アルミナ、及びチタニアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物とを含む改質触媒82を用いることにより、効率的なスタンバイモードの運転が可能となる。この他、本実施形態によれば、上述のような金属触媒成分と複合酸化物を含む改質触媒82を用いることにより、改質モードでの運転時における部分酸化反応活性を高くしながら、約1200℃までの使用温度に対する熱劣化を小さくすることもできる。
本実施形態によれば、触媒コンバータの温度T_LNCに基づいて、燃料改質器8の運転モードを切り替える。これにより、触媒コンバータ43の活性状態に応じて、適切な時期に改質ガスを生成したり停止したりすることができるので、エミッションの成分の悪化や燃費の悪化を防止することができる。
本実施形態によれば、NOx排出量Q_NOxに基づいて、燃料改質器8の運転モードを切り替える。これにより、エンジン2のNOx排出量に応じて、適切な時期に改質ガスを生成したり停止したりすることができる。すなわち、NOx排出量が多い場合には改質ガスを生成することでNOx浄化率を向上することができる。また、NOx排出量が少なく、改質ガスが不要である場合には改質ガスの生成を停止することで、燃費が悪化するのを防止できる。
本実施形態によれば、エンジン2が停止状態となったことに応じて、燃料改質器8を停止モードで運転することにより、エンジン2が停止している間も燃料改質器8が運転され続けることによる燃費の悪化を防止することができる。
本実施形態によれば、エンジン2のNOx排出量Q_NOxが判定値Q_THより大きく、かつ、触媒コンバータの温度T_LNCが判定値T_TH以下である場合には、燃料改質器8をスタンバイモードで運転する。これにより、触媒コンバータ43が未活性の状態で改質ガスが供給されることによるエミッションの成分の悪化や燃費の悪化を防止することができる。また、燃料改質器8をスタンバイモードで運転することにより、触媒コンバータ43が活性した際には、速やかに運転モードを改質モードに切り替えて、改質ガスの生成及び供給を開始し、エンジン2から排出されたNOxを浄化することができる。
本実施形態によれば、エンジン2のNOx排出量Q_NOxが判定値Q_THより大きく、かつ触媒コンバータ43の温度T_LNCが判定値T_THより大きい場合には、燃料改質器8を改質モードで運転する。これにより、活性した触媒コンバータ43において、燃料改質器8で生成した改質ガスにより排気中のNOxを効率的に浄化することができる。
本実施形態によれば、燃料改質器8の運転モードに応じてエンジン2の吸入空気量QAIRを変化させる。燃料改質器8の運転モードが変化すると、触媒コンバータ43に流入する排気の空燃比が変化する。また、エンジン2の吸入空気量QAIRが変化しても、触媒コンバータ43に流入する排気の空燃比が変化する。したがって、燃料改質器8の運転モードに合わせて、触媒コンバータに流入する排気の空燃比を、触媒コンバータ43において排気を浄化するのに適した空燃比にすることができる。
本実施形態によれば、燃料改質器8を改質モードで運転し改質ガスを排気管4に供給する際には、改質ガスを供給しない他の運転モードで運転する場合と比較して、排気の空燃比が低減される。これにより、供給した改質ガス中に含まれる水素が、排気中の酸素と反応することにより不要に消費されてしまうのを防止することができる。
本実施形態によれば、燃料改質器8を改質モードで運転した場合におけるエンジン2の吸入空気量の目標値QAIR_TRGTが、エンジン2の運転状態に応じて設定された吸入空気量の下限値QAIR_LLIM以下である場合には、燃料改質器8をスタンバイモードで運転する。これにより、改質ガスの供給に合わせて吸入空気量を低減してしまい、エンジン2の燃焼が不安定になるのを防止することができる。したがって、エンジン2の燃焼を安定に維持しながら、燃料改質器8により改質ガスを効率的に生成することができる。
本実施形態によれば、エンジン2がアイドル状態のままディレイタイマDELの初期値に応じた時間が経過した場合には、燃料改質器8の運転モードをスタンバイモードから停止モードに切り替えることにより、燃費の悪化を軽減することができる。
本実施形態によれば、エンジン2のNOx排出量Q_NOxが判定値Q_TH以下であり、かつ、触媒コンバータ43の温度T_LNCが判定値T_THより高い場合には、燃料改質器8をスタンバイモードで運転する。これにより、運転者の操作により、エンジン2のNOx排出量が急激に増加した場合であっても、燃料改質器8の運転モードをスタンバイモードから改質モードに切り替えて、改質ガスの供給を速やかに開始し、排気中のNOxを浄化することができる。
本実施形態によれば、燃料改質器8をスタンバイモードでディレイタイマDELの初期値に応じた時間に亘って運転し続けた場合には、燃料改質器8の運転モードをスタンバイモードから停止モードに切り替える。したがって、スタンバイモードで運転し続けた場合における燃費の悪化を軽減することができる。
本実施形態によれば、白金、セリア、及びゼオライトを含む触媒コンバータ43に対して、水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを供給することにより、シフト反応による水素生成を促進するとともに、アンモニアの合成量及び貯蔵量を増大し、NOxの浄化性能を向上することができる。
また、触媒コンバータ43における水素の生成、アンモニアの生成、及びアンモニアの貯蔵といった機能は、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化活性より高温で発現する。このため、触媒コンバータ43が水素及び一酸化炭素の酸化活性が十分に起こる温度となった場合には、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化反応により触媒コンバータを昇温することで、上述のような機能によるNOxの浄化が可能になるまでの時間を短縮することができる。
また、触媒コンバータ43における水素の生成、アンモニアの生成、及びアンモニアの貯蔵といった機能は、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化活性より高温で発現する。このため、触媒コンバータ43が水素及び一酸化炭素の酸化活性が十分に起こる温度となった場合には、改質ガスに含まれる水素及び一酸化炭素の酸化反応により触媒コンバータを昇温することで、上述のような機能によるNOxの浄化が可能になるまでの時間を短縮することができる。
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。
上記実施形態では、図4のステップS5においてNOx排出量Q_NOxを算出するに当たり、エンジン回転数NEと燃料噴射量QINJの2つのパラメータを用いてマップを検索したが、これに限るものではない。NOx排出量Q_NOxは、エンジン回転数NEや燃料噴射量QINJの他、エンジンの混合気の空燃比、エンジンに吸入される吸入空気量QAIR、エンジンの過給圧、エンジンの燃料噴射時期、及びエンジンの燃料噴射圧などのエンジンの運転状態を示すパラメータに基づいて算出することができる。
上記実施形態では、図4のステップS5においてNOx排出量Q_NOxを算出するに当たり、エンジン回転数NEと燃料噴射量QINJの2つのパラメータを用いてマップを検索したが、これに限るものではない。NOx排出量Q_NOxは、エンジン回転数NEや燃料噴射量QINJの他、エンジンの混合気の空燃比、エンジンに吸入される吸入空気量QAIR、エンジンの過給圧、エンジンの燃料噴射時期、及びエンジンの燃料噴射圧などのエンジンの運転状態を示すパラメータに基づいて算出することができる。
上記実施形態では、図5のステップS22〜S25において、吸入空気量下限値QAIR_LLIMを設定する際、エンジンの冷却水の温度に基づいて検索された水温補正係数Ktw、及び排気の還流量に基づいて検索されたEGR補正係数Kegrを下限ベース値LLIM_BASに乗算したが、これに限らない。補正係数としては、エンジン回転数NEに基づいて検索されたものや、エンジンの吸気の温度に基づいて検索されたものを用いてもよい。
上記実施形態では、図4のステップS7及びステップS11において、同じ判定値T_THに基づいて触媒コンバータの状態を判断したが、これに限らず、各ステップで異なる判定値を用いてもよい。
上記実施形態では、本発明を車両に搭載されたディーゼルエンジンに適用した例を示したが、本発明は、これに限らない。本発明は、例えば、リーンバーンエンジンや、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。
1…排気浄化システム
2…エンジン(内燃機関)
32…スロットル弁(吸気量変更手段)
4…排気管(排気通路)
43…触媒コンバータ
7…ECU(NOx排出量検出手段、触媒コンバータ温度検出手段、改質器制御手段、吸気量変更手段、吸気量低減可否判定手段)
8…燃料改質器
82…改質触媒
83…燃料ガス供給装置(原料供給手段)
92…排気温度センサ(触媒コンバータ温度検出手段)
94…クランク角センサ(NOx排出量検出手段)
95…アクセル開度センサ(NOx排出量検出手段)
2…エンジン(内燃機関)
32…スロットル弁(吸気量変更手段)
4…排気管(排気通路)
43…触媒コンバータ
7…ECU(NOx排出量検出手段、触媒コンバータ温度検出手段、改質器制御手段、吸気量変更手段、吸気量低減可否判定手段)
8…燃料改質器
82…改質触媒
83…燃料ガス供給装置(原料供給手段)
92…排気温度センサ(触媒コンバータ温度検出手段)
94…クランク角センサ(NOx排出量検出手段)
95…アクセル開度センサ(NOx排出量検出手段)
Claims (21)
- 内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関で燃焼する混合気を理論空燃比よりもリーンにしたときに排気中のNOxを捕捉し、還元雰囲気下で前記捕捉したNOxを還元する触媒コンバータを備える内燃機関の排気浄化システムであって、
前記排気通路とは別に設けられ、燃料及び空気を原料として水素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、当該生成した改質ガスを前記排気通路のうち前記触媒コンバータの上流側に供給する燃料改質器と、
前記内燃機関の運転状態及び前記触媒コンバータの状態の少なくとも何れかに応じて、前記燃料改質器における改質ガスの生成量及び改質ガスの生成に関する応答速度を制御する改質器制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。 - 前記燃料改質器は、供給された原料を改質し改質ガスを生成する改質触媒と、当該改質触媒に所定量の空気と所定量の燃料とを供給する原料供給手段と、を含んで構成され、
前記改質器制御手段は、
前記改質触媒に原料を供給せず当該改質触媒における改質ガスの生成を停止する停止モードと、
前記改質触媒に原料を供給し当該改質触媒において改質ガスを生成する改質モードと、
前記改質触媒の温度を所定の温度に保持しながら、当該改質触媒における改質ガスの生成を停止又は抑制するスタンバイモードと、を含む複数の運転モードで前記燃料改質器を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。 - 前記スタンバイモードでの運転時における原料の空燃比は、前記改質モードでの運転時における原料の空燃比よりもリーンであり、かつ、前記スタンバイモードでの運転時における燃料の供給量は、前記改質モードでの運転時における燃料の供給量よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記スタンバイモードでの運転時において、前記改質触媒に供給する原料の空燃比は、理論空燃比よりもリーンであることを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質モードでの運転時において、前記改質触媒に供給する原料の空燃比は、理論空燃比よりもリッチであることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記スタンバイモードでの運転時、及び、前記スタンバイモードでの運転と前記改質モードでの運転との間の移行時において、前記改質触媒の最高温度を300℃以上1200℃未満の範囲内に制御することを特徴とする請求項2から5の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質触媒は、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、ジルコニア、アルミナ、及びチタニアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物又はこれらを基本組成とした複合酸化物と、を含むことを特徴とする請求項2から6の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記触媒コンバータの温度を検出又は推定する触媒コンバータ温度検出手段をさらに備え、
前記改質器制御手段は、前記触媒コンバータ温度検出手段の出力値に基づいて、前記燃料改質器の運転モードを切り替えることを特徴とする請求項2から7の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。 - 前記内燃機関のNOx排出量を検出又は推定するNOx排出量検出手段をさらに備え、
前記改質器制御手段は、前記NOx排出量検出手段の出力値に基づいて、前記燃料改質器の運転モードを切り替えることを特徴とする請求項2から8の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。 - 前記NOx排出量検出手段は、前記内燃機関の回転数、前記内燃機関の燃料噴射量、前記内燃機関の混合気の空燃比、前記内燃機関の吸入空気量、前記内燃機関の過給圧、前記内燃機関の燃料噴射時期、及び前記内燃機関の燃料噴射圧のうち少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記NOx排出量を推定することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記内燃機関が停止状態となったことに応じて、前記燃料改質器を前記停止モードで運転することを特徴とする請求項2から10の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記内燃機関のNOx排出量が所定値より大きく、かつ、前記触媒コンバータの温度が所定値以下である場合には、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで運転することを特徴とする請求項2から11の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記内燃機関のNOx排出量が所定値より大きく、かつ、前記触媒コンバータの温度が所定値より大きい場合には、前記燃料改質器を前記改質モードで運転することを特徴とする請求項2から12の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記燃料改質器の運転モードに応じて、前記内燃機関の吸入空気量を変化させる吸気量変更手段をさらに備えることを特徴とする請求項2から13の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記吸気量変更手段は、前記燃料改質器が前記改質モードで運転される場合には、他の運転モードで運転される場合と比較して吸入空気量を少なくすることを特徴とする請求項14に記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記燃料改質器を前記改質モードで運転した場合における前記内燃機関の吸入空気量の目標値を設定するとともに、当該目標値が、前記内燃機関の運転状態に応じて設定された吸入空気量の下限値以下であるか否かを判別する吸気量低減可否判定手段をさらに備え、
前記改質器制御手段は、前記吸気量低減可否判定手段により前記吸入空気量の目標値が前記下限値以下であると判別された場合には、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで運転することを特徴とする請求項14又は15に記載の内燃機関の排気浄化システム。 - 前記吸気量低減可否判定手段は、前記内燃機関の回転数、前記内燃機関の冷却水の温度、前記内燃機関の吸気の温度、及び前記内燃機関の排気の還流量のうち少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記内燃機関の吸入空気量の下限値を設定することを特徴とする請求項16に記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記内燃機関がアイドル状態のまま所定時間経過した場合には、前記燃料改質器の運転モードを、スタンバイモードから停止モードに切り替えることを特徴とする請求項2から17の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記内燃機関のNOx排出量が所定値以下であり、かつ、前記触媒コンバータの温度が所定値より高い場合には、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで運転することを特徴とする請求項2から18の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記改質器制御手段は、前記燃料改質器を前記スタンバイモードで所定の時間に亘って運転し続けた場合には、前記燃料改質器の運転モードを、前記スタンバイモードから前記停止モードに切り替えることを特徴とする請求項2から19の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
- 前記触媒コンバータは、白金、セリア、及びゼオライトを含むことを特徴とする請求項1から20の何れかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
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