JP4426724B2 - Ldcamと称される分子 - Google Patents

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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、T細胞機能を調節する、または改変することが可能な、LDCAMと称される新規ペプチドに関する。より詳細には、本発明は、T細胞表面分子と相互作用して情報伝達を改変し、それ自体に結合し、そしてB7L−1と称される別の新規ポリペプチドに結合し、そしてナチュラルキラー細胞集団の増加を生じる新規ポリペプチドを含む。本発明は、LDCAM分子、LDCAM分子をコードするDNA、組換えLDCAMポリペプチドを産生するための方法、およびこうしたLDCAMポリペプチドを含む薬剤組成物を含む。
【0002】
関連技術の説明
接着分子は、免疫系および他の細胞系内の細胞情報伝達において、重要な役割を果たす。T細胞受容体複合体により送達される抗原特異的シグナルに加え、T細胞による免疫反応の形態および種類は、抗原提示細胞(APC)上の接着分子により仲介される、共刺激(costimulatory)シグナルに応じる。こうした共刺激情報伝達の1つは、接着分子B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)を伴い、前記分子は、そのT細胞表面受容体、CD28およびCTLA4(CD152)を通じ、重要なシグナルを送る。B7−1は、CD28と相互作用し、サイトカイン産生、細胞増殖、およびエフェクターおよび記憶T細胞の生成を情報伝達する。CD28を通じたシグナルが遮断されると、T細胞アネルギーまたは免疫偏向が起こり、非常に抑圧されたまたは改変された免疫反応を生じる可能性がある。
【0003】
B7−1はまた、T細胞CTLA4受容体とも相互作用する。その情報伝達は複雑であるが、1つの構成要素は、負のフィードバックシグナルを提供し、T細胞のCD28シグナルを減弱させる。本シグナルの非存在下では、激しいT細胞増殖およびエフェクター細胞活性化が続く。本フィードバック制御が正しく働かないと、自己免疫疾患およびリンパ球増殖が生じる可能性がある。例えば、CD28およびB7−1(およびB7−2)相互作用が、抗CTLA4抗体で遮断された際、腫瘍免疫の増加およびリンパ球増殖が観察されてきている。
【0004】
B7−2は、B7−1のものとは異なる細胞上で、そしてAPC活性化の異なる段階で発現されるが、本分子もまた、CD28およびCTLA4を通じ、T細胞に共刺激シグナルを送達する。B7−2シグナルは、B7−1情報伝達から生じる免疫反応と同一の、または異なる免疫反応を導く可能性がある。B7−2情報伝達の性質は、細胞の背景および共刺激のタイミング次第である。
【0005】
B7−1およびB7−2は、同じ細胞受容体に結合するが、アミノ酸レベルで、弱くしか関連していない。しかし、どちらも、伸長された免疫グロブリンドメインを含むスーパーファミリーのメンバーであり、そしてそれらの共有される配列相同性の多くは、Ig−ドメインサブファミリーに特徴的である、共通のIgドメインによる共有される特定の残基のためである。
【0006】
抗原に対するT細胞反応に、他の接着分子が重要であることを示唆する証拠がある。例えば、抗原によるT細胞受容体の結合に反応して起こるT細胞増殖およびサイトカイン産生は、特定の疾患ではCD28の非存在下で起こる可能性がある。増殖およびサイトカイン産生はまた、CD28の非存在下での記憶反応、およびCD28が遺伝的に除去されている系において起こる可能性もある。いくつかの場合、T細胞増殖は、CD48またはICAM/LFA系内での相互作用に依存する。さらに、ALCAMとして知られる接着分子は、そのT細胞リガンド、CD6と相互作用し、CD3シグナルを調節する。
【0007】
明らかに、T細胞表面受容体を通じた情報伝達は、免疫系のバランスを維持するのに重要な役割を果たす。活性化シグナル、例えばCD28およびB7−1の間の共刺激情報伝達が主である系は、自己免疫および炎症を導く可能性がある。阻害性シグナル、例えばCTLA4の間の共刺激情報伝達が主である免疫系は、感染細胞または癌細胞を攻撃する能力がより低い。T細胞情報伝達に関与する新規分子を単離することは、その受容体を介し伝達される生物学的シグナル(類)を研究するのに、非常に望ましい。さらに、こうした分子の同定は、自己免疫、炎症および感染に関連する疾患状態を制御しそして治療する手段を提供する。
【0008】
発明の概要
本発明は、LDCAMと称される哺乳動物ポリペプチドを提供する。LDCAMは、リンパ由来樹状細胞上に見出され、そしてB7−1を含む接着分子に限定された相同性を示すため、こう名付けられた。本明細書に記載されるLDCAM分子は、それ自体に結合し、B7L−1(1998年8月7日に提出された同時係属出願S/N 60/095,663(本明細書に援用される)に記載される)と限定された相同性を有し、そしてこれに対し、B7−L1が結合タンパク質である、単離または均質タンパク質を含む。本発明はさらに、LDCAMをコードする単離DNAおよび哺乳動物LDCAMをコードするDNAを含む発現ベクターを含む。本発明の範囲内に、LDCAMをコードするDNAを含む発現ベクターでトランスフェクションまたは形質転換されている宿主細胞、およびこうした宿主細胞を、LDCAMの発現を導く条件下で培養することにより、LDCAMを産生するための方法がある。さらに本発明の範囲内にあるのは、LDCAM分子の可溶性型を含む薬剤組成物、および該薬剤組成物を投与することにより、T細胞免疫反応を調節するための方法である。本発明に含まれるさらなる方法には、個体に薬剤組成物を投与することにより、またはex vivoでLDCAMおよびナチュラルキラー細胞前駆細胞を合わせることにより、ナチュラルキラー細胞を生成することが含まれる。
【0009】
発明の詳細な説明
LDCAMと称される新規タンパク質が本明細書に提供される。さらに提供されるのは、LDCAMをコードするDNA、LDCAMを含む組換え発現ベクター、およびLDCAMを発現するのに適した条件下で、発現ベクターで形質転換されている宿主細胞を培養し、そして発現されたLDCAMを回収することを含む、組換えLDCAMポリペプチドを産生するための方法である。
【0010】
B7−1に対し配列類似性を有し、1998年8月7日に提出された同時係属出願S/N 60/095,663号に記載される分子であるB7L−1は、本発明のLDCAMポリペプチドの結合タンパク質である。B7L−1は、LDCAM結合タンパク質であるため、そしてB7L−1およびLDCAMは、バンド4.1およびPDZファミリーメンバーの潜在的な結合部位を含む細胞内ドメインで相同性を示し、そして多くの同一の細胞種上に見られるため、これらの細胞結合型は、結合された際、同様のシグナルを送達する可能性がある。したがって、これらは共受容体(co−receptor)または対構造(counterstructure)と称される。ヒトB7L−1の長または短細胞外型をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号7および配列番号9に示される。配列番号7および配列番号9のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号8および配列番号10に開示される。
【0011】
B7L−1が結合する細胞株を同定するため、そして続いてB7L−1が結合するタンパク質を単離するため、B7L−1/Fc融合タンパク質を実施例1に記載されるように調製し、そして実施例2に記載される結合研究を行った。実施例3は、B7L−1が結合する細胞株であるWI−26から調製したcDNAライブラリーをスクリーニングし、そして全長LDCAMヒトクローンを同定することを記載する。実施例3に記載されるように単離されたヒトLDCAMをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に示され、そしてそれによりコードされるアミノ酸配列は、配列番号2に示される。配列番号2に記載される、コードされるヒトLDCAMアミノ酸配列は、1−38の38アミノ酸のリーダー配列を含む374アミノ酸の予測される細胞外ドメイン;21アミノ酸(375−395)の膜貫通ドメインおよびアミノ酸の細胞質ドメイン(396−442)を有する。
【0012】
実施例5および6は、ヒトLDCAM/Fcを作成し、そして結合研究に用い、ヒトLDCAMが結合する細胞株を同定することを記載する。細胞株の中で陽性に同定されたのは、S49.1細胞およびFlt3−L処理マウスの脾臓およびリンパ節由来のリンパ性樹状細胞であった。実施例7は、発現ライブラリーのプールをスクリーニングし、ネズミLDCAMクローンを同定することを記載する。単離ネズミLDCAM DNA配列は、配列番号3に開示される。配列番号3のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列は、配列番号4に開示される。コードされるネズミLDCAMアミノ酸配列(配列番号4)は、356アミノ酸(残基1−356)の予測される細胞外ドメイン;21アミノ酸(357−377)の膜貫通ドメイン;およびアミノ酸残基378−423を含む細胞質ドメインを有する。配列番号3および配列番号4は、全長成熟ネズミLDCAM配列を記載する。ヒトLDCAM配列に比較すると、シグナル配列は、完全には記載されていない。
【0013】
本明細書に記載される精製哺乳動物LDCAM分子は、B7−1および他の細胞接着分子に、限定された全体的な相同性を有する、I型膜貫通タンパク質である。LDCAMはB7L−1の細胞質領域に高い相同性を有する。以下の実施例6に記載されるように、LDCAMタンパク質は、広範囲の発現を示す。特に、ヒトLDCAM mRNAは、乳房、網膜、胎児肝臓、脾臓、胎児心臓、肺、筋肉、胎盤、甲状腺、および肺癌腫で見出される。LDCAMメッセージを有する細胞株にはWi−26が含まれる。マウスLDCAM mRNAは、全胚、精巣、三重ネガティブ細胞ネズミ脾臓およびリンパ節CD8+、S49.1および樹状細胞上で見出される。
【0014】
配列番号1および3に開示されるDNA配列の発見により、ヒトおよびマウスLDCAMタンパク質をコードするDNAを含む発現ベクター;該発現ベクターでトランスフェクションまたは形質転換されている宿主細胞;均質なタンパク質としての生物学的に活性があるLDCAM;およびLDCAMと免疫反応性である抗体の構築が可能になる。
【0015】
B7L−1同様、LDCAMは、ポリオウイルス受容体、デルタオポイド(opoid)結合タンパク質および接着分子に対し、限定された相同性を有する。さらに、実施例13に記載されるように、LDCAMは、ConAおよびPHAにより引き起こされるT細胞増殖を遮断し、LDCAMがT細胞仲介免疫反応を調節するのに有用であることが示唆される。LDCAMは、TCR mAb誘導T細胞増殖を阻害せず、マイトジェン誘導T細胞増殖に対するLDCAMの阻害効果は、IL−2などのサイトカイン分泌の阻害のためであるか、またはLDCAM結合パートナーの活性化および発現の増加後のT細胞の下流反応制御のためであることが示唆される。こうしたものに限定されないが、LDCAM分子の特定の使用が以下に記載される。
【0016】
本明細書において、LDCAMという用語は、配列番号2のアミノ酸配列1−442および配列番号4のアミノ酸配列1−423を有するポリペプチドを含む。さらに、LDCAMは、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列と高い度合いの類似性または高い度合いの同一性を有し、そして生物学的に活性がある、ポリペプチドを含む。「LDCAM」という用語は、それ自体と結合しそして複合体を形成するポリペプチド、B7L−1が結合タンパク質であるポリペプチド、並びに抗原およびマイトジェンに反応し、T細胞シグナルを改変するポリペプチドの種類を指す。
【0017】
「ネズミLDCAM」という用語は、配列番号3のDNAの生物学的に活性がある遺伝子産物を指し、そして「ヒトLDCAM」という用語は、配列番号1のDNAの生物学的に活性がある遺伝子産物を指す。用語「LDCAM」にさらに含まれるのは、主に、該タンパク質のB7L−1共結合(co−binding)部分を含み、生物学的活性を保持し、そして分泌されることが可能である、可溶性または一部切除(truncated)タンパク質である。こうした可溶性タンパク質の特定の例は、配列番号2のアミノ酸1−374の配列を含むもの、および配列番号4のアミノ酸1−356の配列を含むものである。あるいは、こうした可溶性タンパク質は、リーダー配列を除いてもよく、そしてしたがって、配列番号2のアミノ酸39−374を含んでもよい。
【0018】
LDCAMを指す場合、「生物学的に活性がある」という用語は、該LDCAMがマイトジェンに反応したT細胞シグナルを改変することが可能であることを意味する。
【0019】
「単離されている」は、LDCAMが、例えば組換え宿主細胞培養の精製産物のように、または精製抽出物のように、他のタンパク質またはポリペプチドと関連していないことを意味する。
【0020】
本明細書において、「LDCAM変異体(variant)」は、天然LDCAMと実質的に相同であるが、1つまたはそれ以上の欠失、挿入または置換のため、天然LDCAM(ヒト、ネズミまたは他の哺乳動物種)のものと異なるアミノ酸配列を有する、ポリペプチドを意味する。変異体アミノ酸配列は、好ましくは、天然LDCAMアミノ酸配列に少なくとも80%同一であり、最も好ましくは少なくとも90%同一である。同一性パーセントは、例えばDevereuxら(Nucl. Acids Res. 12:387, 1984)に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、およびSchwartzおよびDayhoff監修,Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation,pp.353−358, 1979に記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res. 14:6745, 1986の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらに0.10のペナルティ;および(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。変異体は、保存的置換配列を含んでもよく、つまり既定のアミノ酸残基を、同様の物理化学的特性を有する残基により置換してもよい。保存的置換の例には、1つの脂肪族残基を互いに、例えばIle、Val、Leu、またはAlaを互いに置換するもの、あるいはLysおよびArg;GluおよびAsp;またはGlnおよびAsn間といった、1つの極性残基から別のものへの置換が含まれる。他のこうした保存的置換、例えば、同様の疎水性特性を有する領域全体の置換が、周知である。天然発生LDCAM変異体または対立遺伝子(allele)もまた、本発明に含まれる。こうした変異体の例は、選択的mRNAスプライシング事象またはLDCAMタンパク質のタンパク質分解切断から生じるものであり、ここでLDCAM結合特性は保持される。mRNAの選択的スプライシングは、例えば、一部切除されているが生物学的に活性があるLDCAMを生じる可能性があり、例えば該タンパク質の天然発生可溶性型などがある。タンパク質分解に起因すると考えられる変動には、例えば、異なる種類の宿主細胞における発現に際しての、LDCAMタンパク質からの1つまたはそれ以上の末端アミノ酸(一般的に1−5末端アミノ酸)のタンパク質分解的除去によるNまたはC末端の相違が含まれる。
【0021】
実施例9は、LDCAM結合研究および該分子の機能的特性を調べることに向けられる研究に利用してもよい、新規LDCAM/Fc融合タンパク質の構築を記載する。実施例に記載されるヒトIgG1 Fc領域に関し、他の抗体Fc領域を置換してもよい。他の適切なFc領域は、プロテインAまたはプロテインGに高親和性で結合することが可能なもの、あるいは、ヒトまたはネズミIgG1 Fc領域の断片、例えば鎖間ジスルフィド結合が形成されるであろうような、少なくともヒンジ領域を含む断片を含むものである。LDCAM融合タンパク質は、容易に精製される利点を提供する。さらに、2つの別個の融合タンパク質鎖のFc領域間にジスルフィド結合が形成され、二量体を生じる。
【0022】
上に記載されるように、本発明の一つの側面は、可溶性LDCAMポリペプチドである。可溶性LDCAMポリペプチドは、天然LDCAMの細胞外ドメインのすべてまたは一部を含むが、細胞膜上へのポリペプチドの保持を生じるであろうシグナルを欠く。可溶性LDCAMポリペプチドは、最初に合成される際、好都合に、天然(または異種性)シグナルペプチドを含み、分泌を促進するが、シグナルペプチドは、細胞からのLDCAMの分泌に際し、切断される。本発明に含まれる可溶性LDCAMポリペプチドは、B7L−1に結合する能力、またはそれ自体に結合する能力を保持する。あるいは、本発明の可溶性LDCAMは、T細胞反応を改変する能力を保持する。可溶性LDCAMは、該可溶性LDCAMタンパク質が分泌されることが可能である限り、シグナルの一部または細胞質ドメインの一部またはその他の配列を含んでもよい。
【0023】
可溶性LDCAMは、望ましいタンパク質を発現する損なわれていない(intact)細胞を、例えば遠心分離により、培地から分離し、そして望ましいタンパク質の存在に関し、培地または上清をアッセイすることにより同定し(そしてその非可溶性膜結合型から区別し)てもよい。培地におけるLDCAMの存在は、該タンパク質が細胞から分泌され、そしてしたがって、望ましいタンパク質の可溶性型であることを示す。
【0024】
LDCAMの可溶性型は、天然結合LDCAMタンパク質より、多くの利点を持つ。可溶性ポリペプチドは細胞から分泌されるため、組換え宿主細胞からのタンパク質の精製が容易になる。さらに、可溶性タンパク質は、一般的に、静脈内投与に、より適している。
【0025】
可溶性LDCAMポリペプチドの例には、天然LDCAMタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分を含むものが含まれる。例えば、可溶性ヒトLDCAMタンパク質は、配列番号2のアミノ酸38−374または1−374を含み、そして可溶性ネズミLDCAMは、配列番号4のアミノ酸1−356を含む。さらに、全細胞外ドメインより少ないものを含む一部切除可溶性LDCAMタンパク質が、本発明に含まれる。宿主細胞で最初に発現される際、可溶性LDCAMは、使用される宿主細胞内で機能する、以下に記載される、異種性シグナルペプチドの1つを含んでもよい。あるいは、該タンパク質は天然シグナルペプチドを含んでもよい。本発明の1つの態様において、可溶性LDCAMは、(NからC末端に)酵母α−因子シグナルペプチド、以下に、そして米国特許第5,011,912号に記載されるFLAG(登録商標)ペプチド、および配列番号2のアミノ酸39−374または配列番号4の21−356からなる可溶性LDCAMを含む融合タンパク質として、発現させてもよい。本組換え融合タンパク質は、酵母細胞で発現され、そして該細胞から分泌される。FLAG(登録商標)ペプチドは、タンパク質の精製を容易にし、そして続いて、ウシ粘膜エンテロキナーゼを用い、可溶性LDCAMから切断することが可能である。可溶性LDCAMタンパク質をコードする単離DNA配列が、本発明に含まれる。
【0026】
可溶性ポリペプチドを含む、一部切除LDCAMは、いくつかの慣用的技術のいずれにより、調製してもよい。望ましいDNA配列は、それ自体知られる技術を用い、化学的に合成してもよい。DNA断片はまた、全長クローン化DNA配列の制限エンドヌクレアーゼ消化により産生し、そしてアガロースゲル上の電気泳動により単離してもよい。単数または複数の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含むリンカーを使用し、望ましいDNA断片を発現ベクターに挿入してもよいし、または断片を、天然に存在する切断部位で消化してもよい。周知のポリメラーゼ連鎖反応法もまた使用し、望ましいタンパク質断片をコードするDNA配列を増幅してもよい。さらなる代替法として、既知の突然変異誘発技術を使用し、望ましい点、例えば受容体結合ドメインの最後のアミノ酸のコドンのすぐ下流に、停止コドンを挿入してもよい。
【0027】
上述のように、本発明は、組換えおよび非組換え両方の、単離されたまたは均質なLDCAMポリペプチドを提供する。さらに、本発明の範囲内にあるのは、望ましい生物学的活性を保持する天然LDCAMタンパク質の変異体および誘導体である。こうした活性は、LDCAMがそれ自体に結合する能力、またはB7L−1に結合する能力、またはT細胞情報伝達を改変する能力を含む。LDCAM変異体および誘導体は、天然LDCAMポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の突然変異により得てもよい。天然アミノ酸配列の改変は、いくつかの慣用法のいずれにより達成してもよい。天然配列断片への連結を可能にする制限部位が隣接する、突然変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の遺伝子座に突然変異を導入してもよい。連結後、生じた再構築配列は、望ましいアミノ酸挿入、置換、または欠失を有する類似体(analog)をコードする。
【0028】
あるいは、オリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異誘発法を使用し、あらかじめ決定されたコドンが置換、欠失または挿入により改変されている可能性がある、改変遺伝子を提供してもよい。上述の改変を作成する典型的な例は、すべて本明細書に援用される、Walderら(Gene 42:133, 1986);Bauerら(Gene 37:73, 1985);Craik(BioTechniques, January 1985, 12−19);Smithら(Genetic Engineering:Principles and Methods, Plenum Press, 1981);Kunkel(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488, 1985);Kunkelら(Methods in Enzymol. 154:367, 1987);並びに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号に開示されている。
【0029】
他の化学部分、例えばグリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基およびそれらに匹敵するものと共有または凝集結合体を形成することにより、LDCAMを修飾し、LDCAM誘導体を生成してもよい。LDCAMの共有誘導体は、LDCAMアミノ酸側鎖上の、あるいはLDCAMポリペプチドのN末端またはC末端、またはその細胞外ドメインの、官能基上に、化学部分を連結することにより、調製してもよい。本発明の範囲内の他のLDCAM誘導体には、N末端またはC末端融合体としての組換え培養中の合成によるなど、LDCAMまたはその断片と他のタンパク質またはポリペプチドとの共有または凝集結合体が含まれる。例えば、結合体は、LDCAMポリペプチドのN末端にシグナルまたはリーダーポリペプチド配列(例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)のα−因子リーダー)を含んでもよい。シグナルまたはリーダーペプチドは、翻訳と同時にまたは翻訳後に、合成部位から細胞膜または細胞壁の内部または外部の部位への、結合体の運搬を指示する。
【0030】
LDCAMポリペプチド融合体は、LDCAMの精製および同定を容易にするため添加されるペプチドを含んでもよい。こうしたペプチドには、例えば、ポリHisまたは米国特許第5,011,912号およびHoppら, Bio/Technology :1204, 1988に記載される抗原性同定ペプチドが含まれる。
【0031】
本発明はさらに、結合する天然パターン糖鎖付加を含むまたは含まないLDCAMポリペプチドを含む。酵母または哺乳動物発現系(例えばCOS−7細胞)で発現されたLDCAMは、発現系の選択に基づき、分子量および糖鎖付加パターンにおいて、天然LDCAMポリペプチドと同様である可能性も、または有意に異なる可能性もある。細菌発現系、例えば大腸菌(E. coli)でのLDCAMポリペプチドの発現は、非糖鎖付加分子を提供する。
【0032】
アミノ酸残基または配列の多様な付加または置換、あるいは生物学的活性または結合に必要とされない末端または内部残基または配列の欠失をコードする同等(equivalent)DNA構築物が、本発明に含まれる。例えば、LDCAM細胞外ドメインのN糖鎖付加部位を修飾し、糖鎖付加を妨げてもよく、これにより哺乳動物および酵母発現系における炭水化物減少類似体の発現が可能になる。真核ポリペプチドのN糖鎖付加部位はアミノ酸トリプレットAsn−X−Yにより特徴付けられ、ここでXはPro以外のいかなるアミノ酸でもよく、そしてYはSerまたはThrである。配列番号2のヒトLDCAMポリペプチドは、アミノ酸67−69、101−103、113−115、165−167、304−306、および308−310にこうしたトリプレットを6つ含む。同様に、配列番号4のネズミLDCAMポリペプチドは、アミノ酸49−51、83−85、95−97、147−149、286−288および290−292にこうしたトリプレットを6つ含む。これらのトリプレットをコードするヌクレオチド配列に対する適切な置換、付加または欠失は、Asn側鎖での炭水化物残基の結合の防止を生じるであろう。例えば、Asnが異なるアミノ酸により置換されるように選択される、単一のヌクレオチドの改変は、N糖鎖付加部位を不活性化するのに十分である。タンパク質のN糖鎖付加部位を不活性化するための既知の方法には、本明細書に援用される、米国特許第5,071,972号およびEP 276,846に記載されるものが含まれる。
【0033】
別の例において、生物学的活性に必須でないCys残基をコードする配列を改変し、Cys残基が欠失され、または他のアミノ酸で置換されるようにし、再生の際、誤った分子内ジスルフィド架橋が形成されるのを妨げてもよい。他の同等物は、KEX2プロテアーゼ活性が存在する酵母系における発現を亢進させるため、隣接する二塩基性アミノ酸残基を修飾することにより調製される。EP 212,914は、タンパク質のKEX2プロテアーゼプロセシング部位を不活性化するための部位特異的突然変異誘発の使用を開示する。KEX2プロテアーゼプロセシング部位は、Arg−Arg、Arg−Lys、およびLys−Arg対を改変し、これらの隣接する塩基性残基の発生を除去するため、残基を欠失、付加、または置換することにより、不活性化される。Lys−Lys対はKEX2切断にかなり感受性が低く、そしてArg−LysまたはLys−ArgのLys−Lysへの変換は、KEX2部位を不活性化する保存的なそして好ましいアプローチを代表する。
【0034】
本発明の範囲内にある核酸配列には、中程度のまたは非常にストリンジェントな条件下で、本明細書に開示されるLDCAMヌクレオチド配列にハイブリダイズし、そして生物学的に活性があるLDCAMをコードする、単離DNAおよびRNA配列が含まれる。中程度にストリンジェントな条件には、Sambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第二版, Vol. 1, pp 101−104, Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)に定義されるように、5 X SSC、0.5% SDS、1.0 mM EDTA(pH 8.0)の前洗浄溶液の使用および約55℃、5 X SSC、一晩のハイブリダイゼーション条件が含まれる。非常にストリンジェントな条件には、より高温度のハイブリダイゼーションおよび洗浄が含まれる。当業者は温度および洗浄溶液塩濃度は、核酸分子の長さなどの要因にしたがい、必要に応じ調整してもよいことを認識するであろう。
【0035】
1つ以上のコドンが同一のアミノ酸をコードする可能性がある、遺伝暗号の既知の縮重のため、DNA配列は配列番号1および3に示されるものと異なり、そしてなお、それぞれ配列番号2および配列番号4のアミノ酸配列を有するLDCAMタンパク質をコードする可能性がある。こうした変異体DNA配列は、沈黙(silent)突然変異(例えば、PCR増幅中に発生する)から生じてもよいし、または天然配列の意図的な突然変異誘発の産物であってもよい。
【0036】
本発明は、生物学的に活性があるLDCAMをコードする同等の単離DNA配列であって:(a)配列番号1および配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含むcDNA;(b)中程度にストリンジェントな条件下で(a)のDNAとハイブリダイズすることが可能であり、そして生物学的に活性があるLDCAMをコードするDNA;および(c)遺伝暗号の結果として、(a)、または(b)に定義されるDNAに対し縮重しており、そして生物学的に活性があるLDCAMをコードするDNA、より選択される、前記DNA配列を提供する。こうしたDNA同等配列にコードされるLDCAMタンパク質が、本発明に含まれる。
【0037】
配列番号1および配列番号3のDNA配列に同等であるDNAは、配列番号2および配列番号4を含むポリペプチドをコードするDNA配列に、中程度および非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするであろう。こうしたDNAにコードされるLDCAMタンパク質の例には、限定されるわけではないが、LDCAM断片(可溶性断片を含む)および上述のような、単数または複数の不活性化N糖鎖付加部位、不活性化KEX2プロテアーゼプロセシング部位、または保存的アミノ酸置換を含むLDCAMタンパク質が含まれる。他の哺乳動物種由来のDNAにコードされるLDCAMタンパク質であって、そして該DNAが配列番号1または配列番号3のcDNAにハイブリダイズするであろう前記タンパク質もまた、本発明に含まれる。
【0038】
B7L−1に結合する能力を有する変異体は、いかなる適切なアッセイにより同定してもよい。LDCAMの生物学的活性は、例えば、B7L−1の結合ドメインへの結合に関する競合(すなわち競合的結合アッセイ)により、測定してもよい。
【0039】
LDCAMポリペプチドに関する競合的結合アッセイの1つの種類は、放射標識可溶性LDCAM、並びにB7L−1を発現している損なわれていない細胞を用いる。損なわれていない細胞の代わりに、可溶性B7L−1/Fc融合タンパク質、例えばプロテインA、プロテインGあるいは該分子のB7L−1またはFc部分に対する抗体と、該融合タンパク質のFc部分との相互作用を通して、固相に結合しているB7L−1/Fcを代用してもよい。競合的結合アッセイの別の種類は、放射標識可溶性LDCAM受容体、およびLDCAMを発現している損なわれていない細胞を利用する。
【0040】
競合的結合アッセイは、慣用的方法論にしたがい、行ってもよい。例えば、放射標識LDCAMを、推定上のLDCAM相同体と競合させるのに用い、B7L−1または表面結合LDCAM受容体に対する結合活性に関し、アッセイしてもよい。定性的結果は、競合的オートラジオグラフィープレート結合アッセイにより得てもよく、またはスキャッチャードプロットを利用して定量的結果を生成してもよい。
【0041】
あるいは、LDCAM結合タンパク質、例えばB7L−1および抗LDCAM抗体などを、表面上にLDCAMを発現する細胞を同定し、分離し、または精製するのに適した、カラムクロマトグラフィーマトリックスまたは同様の支持体などの固相に結合させてもよい。LDCAM結合タンパク質の、固相接触表面への結合は、いかなる手段により達成してもよく、例えば、B7L−1/Fc融合タンパク質を構築し、そしてこうしたものをプロテインAまたはプロテインGの相互作用を通じ固相に結合させることによってもよい。タンパク質を固相に固定するための多様な他の手段が当業に周知であり、そして本発明での使用に適している。例えば、磁気微小球体をB7L−1で被覆し、そして磁気場を通じインキュベーション容器に保持してもよい。LDCAM発現細胞を含む細胞混合物の懸濁物を、その上にB7L−1ポリペプチドを有する固相と接触させる。その表面上にLDCAMを有する細胞は、固定されたB7L−1に結合し、そして非結合細胞をその後洗い流す。このアフィニティー結合法は、こうしたLDCAM発現細胞を溶液から精製し、スクリーニングし、または分離するのに有用である。陽性に選択された細胞を固相から遊離させる方法は当業に知られ、そして例えば、酵素の使用を含む。こうした酵素は、好ましくは、細胞に対し非毒性および非傷害性であり、そして好ましくは、細胞表面結合パートナーを切断することに向けられる。B7L−1:LDCAM相互作用の場合、酵素は、好ましくは、生じた細胞懸濁物をLDCAM成分から遊離させる。精製細胞集団は、特に胎児組織から得た場合、その後、成熟(成体)組織に再定着させる(repopulate)のに用いてもよい。
【0042】
あるいは、LDCAM+細胞を含むと疑われる細胞混合物をまず、ビオチン化B7L−1とインキュベーションしてもよい。インキュベーション期間は、典型的には、LDCAMへの十分な結合を確実にするため、少なくとも連続1時間である。生じた混合物をその後、アビジン被覆ビーズを充填したカラムに通過させ、それによりアビジンに対するビオチンの高親和性が、ビーズへの細胞の結合を提供する。アビジン被覆ビーズの使用は当業に知られる。Berensonら, J. Cell. Biochem., 10D:239(1986)を参照されたい。非結合成分の洗浄および結合細胞の遊離は、慣用法を用いて行う。
【0043】
上述のように、B7L−1はLDCAMを発現している細胞を分離するのに用いてもよい。代替法において、LDCAMあるいはその細胞外ドメインまたは断片を、B7L−1発現細胞を検出するため、125Iなどの検出可能部分と結合させてもよい。125Iでの放射標識は、高比放射能に標識されている機能する125I−LDCAM分子を生じるいくつかの標準的方法論のいずれにより行ってもよい。あるいは該分子のB7L−1領域またはFc領域に対するヨウ素化またはビオチン化抗体を用いてもよい。比色または蛍光分光反応を触媒することが可能な酵素、ビオチン、あるいはアビジンなどの別の検出可能部分を用いてもよい。B7L−1発現に関し試験すべき細胞を標識LDCAMポリペプチドと接触させてもよい。インキュベーション後、非結合標識LDCAMを除去し、そして検出可能部分を用い、結合を測定する。
【0044】
LDCAM(変異体を含む)の結合特性はまた、上述のものと類似の競合アッセイにおいて、結合体化可溶性LDCAM/Fc(例えば、125I−LDCAM/Fc)を用い、決定してもよい。しかしこの場合、固体支持体に結合している、LDCAM/Fcを発現している損なわれていない細胞を用い、推定上のLDCAM変異体を含む試料が、LDCAMの結合体化可溶性結合パートナーとの結合に関し競合する度合いを測定する。
【0045】
LDCAMに関しアッセイする他の手段には、抗LDCAM抗体、LDCAMに反応し増殖する細胞株、またはLDCAMの存在下で増殖する組換え細胞株の使用が含まれる。
【0046】
本明細書に開示されるLDCAMタンパク質はまた、LDCAMに対する結合親和性という点で、B7L−1または他のLDCAM結合タンパク質の生物学的活性を測定するのに、使用してもよい。1つの例として、B7L−1の修飾(例えば化学的修飾、一部切除、突然変異など)後、生物学的活性が保持されているかを測定するのにLDCAMを用いてもよい。このように、B7L−1タンパク質の生物学的活性を、例えば、調査研究、またはおそらく臨床に用いる前に、確定することが可能である。
【0047】
LDCAMタンパク質は、例えば異なる条件下でのB7L−1または他のLDCAM結合タンパク質の貯蔵寿命および安定性をモニターするための、「品質保証」研究を行うものにより、使用されてもよい試薬としての使用を見出す。例えば、LDCAMを結合親和性研究に使用し、異なる温度で保存されている、または異なる細胞種で産生されたB7L−1タンパク質の生物学的活性を測定してもよい。修飾B7L−1タンパク質のLDCAMに対する結合親和性を、非修飾B7L−1タンパク質のものと比較し、B7L−1の生物学的活性に対する該修飾のいかなる不利な影響も検出する。同様に、LDCAMタンパク質の生物学的活性を、B7L−1を用い、評価してもよい。
【0048】
LDCAMポリペプチドはまた、結合している剤を、B7L−1またはLDCAMを持つT細胞または他の細胞に搬送するためのキャリアーとしての使用も見出す。LDCAMタンパク質を用い、in vitroまたはin vivo法において、これらの細胞に診断または治療剤を搬送してもよい。実施例5に記載されるように、LDCAMは、EBV形質転換細胞株である、PAE81BM細胞株上に見られる。したがって、こうしたキャリアー使用の1つの例は、本細胞を治療剤/LDCAM結合体に曝露し、いかなるものでもよいEBV癌に対し、該剤が細胞傷害性を示すかどうか評価することである。さらに、LDCAMは抗原提示に重要である樹上細胞およびCD40L活性化B細胞上に発現されるため、LDCAMは、これらの細胞を標的化し、同定し、そして精製するのに有用なキャリアーである。また、LDCAM/診断剤結合体を使用し、in vitroまたはin vivoで、樹状細胞およびB細胞の存在を検出してもよい。実施例6は、ヒトLDCAM mRNA、転写物が、ヒト乳房、網膜、胎児肝臓、脾臓、胎児心臓、肺、胎盤、甲状腺および肺癌腫に見られることを示す。マウスLDCAM mRNA発現に関する同様の研究により、マウスLDCAM mRNAが全胚、精巣、リンパ由来樹上細胞および三重ネガティブ細胞に見られることが示された。LDCAMはそれ自体に結合するため、LDCAMを用い、これらの組織におけるその機能上の役割を研究することが可能である。
【0049】
LDCAMに結合しているいくつかの異なる治療剤または他の機能するマーカーを、アッセイにおいて、結合体中で用い、細胞に対する該剤の細胞傷害性効果を検出し、そして比較し、または組織および細胞におけるLDCAMの役割を研究してもよい。LDCAMポリペプチドに結合させてもよい診断および治療剤には、限定されるわけではないが、薬剤、毒素、放射性核種、発色団、比色もしくは蛍光分光反応を触媒する酵素、およびそれらに匹敵するものが、意図される適用にしたがって選択される特定の剤と共に含まれる。薬剤の例には、多様な型の癌を治療するのに用いられるもの、例えばL−フェニルアラニンナイトロジェンマスタードなどのナイトロジェンマスタードまたはシクロホスファミド、シス−ジアミノジクロロ白金などの挿入剤(intercalating agents)、5−フルオロウラシルなどの代謝拮抗物質、ビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、およびブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシンなどの抗生物質、並びにそれらの誘導体が含まれる。毒素の中には、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A、リボソーム不活性化タンパク質、トリコセセンなどのマイコトキシン、並びにそれらの誘導体および断片(例えば一本鎖)がある。診断使用に適した放射性核種には、限定されるわけではないが、123I、131I、99mTc、111In、および76Brがある。治療使用に適した放射性核種には、限定されるわけではないが、131I、211At、77Br、186Re、188Re、212Pb、212Bi、109Pd、64Cu、および67Cuがある。
【0050】
こうした剤は、いかなる適切な慣用法により、LDCAMに結合させてもよい。LDCAMはタンパク質であり、例えば、望ましい剤の官能基と反応し、共有結合を形成することが可能である、アミノ酸側鎖上の官能基を含む。あるいは、タンパク質または剤を誘導体化し、望ましい反応性官能基を生成し、または結合させてもよい。誘導体化には、多様な分子をタンパク質に結合させるのに入手可能である、二官能性カップリング試薬(Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォード)の1つの結合を伴ってもよい。タンパク質を放射標識するためのいくつかの技術が知られる。放射性核種金属を、例えば適切な二官能性キレート剤を用いることにより、LDCAMに結合させてもよい。
【0051】
LDCAMおよび適切な診断または治療剤を含む(好ましくは共有結合している)結合体をこのように調製する。該結合体を投与し、またはそうでなければ特定の適用に適した量で使用してもよい。
【0052】
上述のように、LDCAMはConAおよびPHAにより引き起こされるT細胞増殖を遮断し、そしてTCR mAb誘導T細胞増殖を阻害しないため、マイトジェン誘導T細胞増殖に対するLDCAMの阻害効果は、サイトカイン、例えばIL−2分泌の阻害のためである可能性がある。したがって、本発明のLDCAMの別の使用は、T細胞において、IL−2産生にLDCAMが果たす役割を研究するための研究ツールとしてのものである。本発明のLDCAMポリペプチドはまた、B7L−1の検出またはその相互作用の検出のためのin vitroアッセイにおいても、使用してもよい。
【0053】
本発明の1つの態様は、免疫系の機能不全と関連する障害の治療法に向けられる。より詳細には、LDCAMはConA刺激T細胞およびPHA刺激T細胞を遮断することが知られているため、LDCAMはT細胞反応により仲介される炎症および自己免疫障害を治療するのに有用である可能性がある。LDCAMタンパク質、好ましくは可溶性ポリペプチド、および薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリアーを含む組成物を哺乳動物に投与し、こうした炎症または自己免疫障害を治療してもよい。
【0054】
LDCAM/Fcの形の可溶性LDCAMを注射されているSCIDマウスは、脾臓細胞性の増加を経験する。この増加は一部、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)としても知られる、DX−5+細胞の増加のためである。LDCAM/Fc、およびNK細胞増殖因子であるIL−15を注射されると、SCIDマウスは、NK細胞の累積的な増加を示す。これはさらに、LDCAM、LDCAM断片、および可溶性LDCAMが、NK細胞を生成する能力の証拠となる。この発見を考慮し、本発明の別の態様は、個体に、LDCAM、可溶性LDCAM、またはLDCAM断片を含む、本発明の薬剤組成物を投与することにより、個体においてNK細胞の数を増加させるための方法を含む。別の態様において、NK細胞をLDCAMまたはLDCAMの可溶性型と接触させ、NK細胞の増殖を可能にすることにより、ex vivoでNK細胞を増殖させてもよい。同様に、LDCAMまたはLDCAMの可溶性型を、さらなるサイトカイン類または増殖因子類と組み合わせて投与することにより、直前で記載したように、in vivoまたはex vivoで、NK細胞を生成してもよい。したがって、in vivoまたはex vivoで、NK細胞を生成するための本方法は、さらに、LDCAMと連続して、または同時に組み合わせ、有効量のサイトカインを使用することを含んでもよい。こうしたサイトカインには、限定されるわけではないが、インターロイキン(「IL」)IL−15、IL−3およびIL−4、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)またはGM−CSF/IL−3融合体からなる群より選択されるコロニー刺激因子(「CSF」)、あるいは他のサイトカイン、例えばTNF−α、CD40結合タンパク質(例えばCD40−L)、4−1BBアンタゴニスト(例えば4−1BBおよび4−1BB−Lと免疫反応性である抗体)またはc−kitリガンドが含まれる。
【0055】
NK細胞は、巨大顆粒リンパ球であり、TまたはBリンパ球とは形態および機能が異なる。NK細胞は、非MHC制限方式で、特定の腫瘍細胞およびウイルス感染細胞の殺傷を仲介する。さらに、NK細胞は、骨髄移植レシピエントによるドナー細胞の拒絶に関与する。LDCAMはNK細胞数を増加させるため、LDCAM、可溶性LDCAM、またはLDCAM断片は、ウイルス感染細胞および感染性疾患と戦うのに有用である。同様に、LDCAM、可溶性LDCAM、およびLDCAM断片は、腫瘍細胞を殺すのに有用である。したがって、本発明の範囲内に、感染性疾患を治療するための方法、および腫瘍に罹患している個体を治療するための方法がある。こうした治療法は、腫瘍細胞を殺すため、または感染性疾患と戦う能力を亢進させるため、LDCAM、LDCAMの可溶性型、またはLDCAM断片を、NK細胞数を増加させる必要がある個体に投与することを伴う。同様に、LDCAM、可溶性LDCAM、例えばLDCAM融合タンパク質、またはLDCAM断片を、連続して、または同時にサイトカインと組み合わせて投与し、本発明の治療法を実行してもよい。こうしたサイトカインには、限定されるわけではないが、インターロイキン(「IL」)IL−15、IL−3およびIL−4、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)またはGM−CSF/IL−3融合体からなる群より選択されるコロニー刺激因子(「CSF」)、あるいは他のサイトカイン、例えばTNF−α、CD40結合タンパク質(例えばCD40−L)、4−1BBアンタゴニスト(例えば4−1BBおよび4−1BB−Lと免疫反応性である抗体)またはc−kitリガンドが含まれる。
【0056】
さらに本発明の範囲内には、移植のレシピエントによる、器官および骨髄移植拒絶を予防するまたはその影響を減少させるための方法がある。こうした方法は、LDCAM阻害剤を含む組成物でレシピエントを処置し、こうしてNK細胞集団の増加を阻害し、そしてNK細胞が移植片を拒絶する能力を減少させることを伴う。
【0057】
本発明のLDCAMポリペプチドを、薬学的に有用な組成物を調製するのに用いられる既知の方法にしたがい処方してもよい。LDCAMは、単一の活性成分として、または他の既知の活性成分と共に、薬学的に適切な希釈剤(例えば、Tris−HCl、酢酸、リン酸)、保存剤(例えば、チメロサル、ベンジルアルコール、パラベン類)、乳化剤、可溶化剤、アジュバントおよび/またはキャリアーと混合して組み合わせてもよい。適切なキャリアーおよびそれらの処方は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版, 1980, Mack Publishing Co.に記載されている。さらに、こうした組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンと複合体化している、またはポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどのポリマー化合物に取り込まれている、またはリポソーム、微小乳剤、ミセル、単層もしくは多層小胞、赤血球ゴーストもしくはスフェロブラストに取り込まれているLDCAMを含んでもよい。こうした組成物は、LDCAMの物理的状態、可溶性、安定性、in vivo放出速度、およびin vivoクリアランス速度に影響するであろう。LDCAMはまた、組織特異的受容体、リガンドまたは抗原に対する抗体に結合していてもよいし、または組織特異的受容体のリガンドにカップリングしていてもよい。LDCAM結合タンパク質が腫瘍細胞上に見られる場合、LDCAMを毒素と結合し、それによりLDCAMを用い、特定の部位に毒素を搬送してもよいし、あるいはLDCAMを用い、こうした腫瘍細胞を続いて投与される剤に感受性にしてもよい。
【0058】
LDCAMは、局所、非経口、または吸入によるなどで、投与してもよい。「非経口」という用語には、皮下注射、静脈内、筋内、槽内注射、または注入技術が含まれる。これらの組成物は、典型的には、LDCAMの有効量を、単独でまたは他のいかなる活性成分であってもよいものの有効量と組み合わせ、含むであろう。組成物に含まれるこうした投薬量および望ましい薬剤濃度は、意図される使用、患者の体重および年齢、並びに投与経路を含む、多くの要因に応じ変化する可能性がある。予備的用量は動物試験にしたがい決定してもよく、そしてヒト投与のための投薬量の見積もりを、当業に認められる実施にしたがい、行ってもよい。
【0059】
LDCAMポリペプチドは、共有結合もしくは非共有結合している二量体または三量体などの、オリゴマーとして存在してもよい。オリゴマーは、異なるLDCAMポリペプチド上のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合により連結されていてもよい。本発明の1つの態様において、LDCAM二量体は、T細胞、B7L−1またはそれ自体へのLDCAMの結合に干渉しない方式で、LDCAMを抗体(例えばIgG1)のFc領域に、融合させることにより、生成される。Fcポリペプチドは、好ましくは、可溶性LDCAM(リガンド結合部分のみを含む)のC末端に融合される。抗体由来ポリペプチドの多様な部分(Fcドメインを含む)に融合している異種性ポリペプチドを含む融合タンパク質の一般的な調製は、例えば、本明細書に援用される、Ashkenaziら(PNAS USA 88:10535, 1991)およびByrnら(Nature 344:677, 1990)に記載されてきている。LDCAM:Fc融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を適切な発現ベクターに挿入する。LDCAM:Fc融合タンパク質を、抗体分子によく似た形で集合するのを可能にし、その結果、鎖間ジスルフィド結合がFcポリペプチド間に形成され、二価LDCAMを生じる。融合タンパク質が抗体の重鎖および軽鎖両方で作成されている場合、4つものLDCAM細胞外領域を持つLDCAMオリゴマーを形成することが可能である。あるいは、2つの可溶性LDCAMドメインをペプチドリンカーで連結してもよい。
【0060】
LDCAMポリペプチドの発現に適した宿主細胞には、原核、酵母またはより高次の真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主での使用に適したクローニング用および発現用ベクターは、例えば、Pouwelsら, Cloning Vectors: A Laboratory Manual, ニューヨーク州エルセビア(1985)に記載されている。細胞不含翻訳系もまた、本明細書に開示されるDNA構築物由来のRNAを用い、LDCAMポリペプチドを産生するのに使用してもよい。
【0061】
原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌またはバチルス属(Bacillus)が含まれる。形質転換に適した原核宿主細胞には、例えば、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、並びにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、およびブドウ球菌属(Staphylococcus)内の多様な他の種が含まれる。大腸菌などの原核宿主細胞において、組換えポリペプチドの該原核宿主細胞における発現を容易にするため、LDCAMポリペプチドがN末端メチオニン残基を含んでもよい。N末端メチオニンは、発現された組換えLDCAMポリペプチドから切断されてもよい。
【0062】
LDCAMポリペプチドは、好ましくはサッカロミセス属(例えば、S.セレビシエ(S. cerevisiae))由来の、酵母宿主細胞において発現されてもよい。酵母の他の属、例えばピキア属(Pichia)、K.ラクティス(K. lactis)またはクロイベロミセス属(Kluyveromyces)もまた使用してもよい。酵母ベクターは、しばしば、2μ酵母プラスミド由来の複製起点配列、自律複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能マーカー遺伝子を含むであろう。酵母ベクターに適したプロモーター配列には、とりわけ、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら, J. Biol. Chem. 255:2073, 1980)あるいは、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の解糖酵素(Hessら, J. Adv. Enzyme Reg. :149, 1968;およびHollandら, Biochem. 17:4900, 1978)のプロモーターが含まれる。酵母発現に用いるのに適した他のベクターおよびプロモーターはHitzeman, EPA−73,657またはFleerら, Gene, 107:285−195(1991);およびvan den Bergら, Bio/Technology, :135−139(1990)にさらに記載されている。他の代替物は、Russellら(J. Biol. Chem. 258:2674, 1982)およびBeierら(Nature 300:724, 1982)に記載されるグルコース抑制可能ADH2プロモーターである。酵母および大腸菌両方において複製可能なシャトルベクターは、大腸菌での選択および複製のため、pBR322由来のDNA配列(Ampr遺伝子および複製起点)を上述の酵母ベクターに挿入することにより、構築してもよい。
【0063】
酵母α−因子リーダー配列を使用し、LDCAMポリペプチドを直接分泌させてもよい。α−因子リーダー配列は、しばしば、プロモーター配列および構造遺伝子配列の間に挿入される。例えば、Kurjanら, Cell 30:933, 1982;Bitterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:5330, 1984;米国特許第4,546,082号;およびEP 324,274を参照されたい。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を容易にするのに適した他のリーダー配列が当業者に知られる。リーダー配列を、その3'端近傍に、1つまたはそれ以上の制限部位を含むよう修飾してもよい。これは、リーダー配列の構造遺伝子への融合を容易にするであろう。
【0064】
酵母形質転換プロトコルが当業者に知られる。こうしたプロトコルの1つがHinnenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1929, 1978に記載されている。Hinnenらのプロトコルは、Trp+形質転換体を選択培地中で選択し、ここで該選択培地は0.67%酵母窒素基剤、0.5%カザミノ酸,2%グルコース,10μg/mlアデニンおよび20μg/mlウラシルからなる。
【0065】
ADH2プロモーター配列を含むベクターにより形質転換されている酵母宿主細胞は、発現を誘導するため「リッチ」培地中で増殖させてもよい。リッチ培地の例は、80μg/mlアデニンおよび80μg/mlウラシルを補った、1%酵母エキス、2%ペプトン、および1%グルコースからなるものである。ADH2プロモーターの抑制解除(derepression)は、培地からグルコースが枯渇したとき起こる。
【0066】
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系もまた、組換えLDCAMポリペプチドを発現するのに使用してもよい。昆虫細胞において異種性タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系がLuckowおよびSummers, Bio/Technology 6:47 (1988)に概説されている。哺乳動物起源の樹立細胞株もまた、使用してもよい。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, Cell 23:175, 1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、およびBHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMcMahanら(EMBO J. 10:2821, 1991)に記載されるようなアフリカミドリザル(African green monkey)腎臓細胞株CVI(ATCC CCL 70)由来のCV−1/EBNA−1細胞株が含まれる。
【0067】
哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳調節配列を、ウイルスゲノムより切り出してもよい。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒト・サイトメガロウイルス由来である。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列、例えばSV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライシング、およびポリアデニル化部位を用い、哺乳動物宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝要素を提供してもよい。ウイルス初期および後期プロモーターは、どちらもウイルス複製起点をも含む可能性がある断片として容易にウイルスゲノムから得られるため、特に有用である(Fiersら, Nature 273:113, 1978)。SV40ウイルス複製起点部位に位置するHind III部位からBgl I部位に渡るおよそ250 bpの配列が含まれていれば、より小さいまたはより大きいSV40断片もまた用いてもよい。
【0068】
哺乳動物宿主細胞において用いるのに典型的な発現ベクターを、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol. :280, 1983)に開示されるように構築してもよい。C127ネズミ乳腺上皮細胞における哺乳動物cDNAの安定した高レベル発現に有用な系を、Cosmanら(Mol. Immunol. 23:935, 1986)に実質的に記載されるように構築してもよい。Cosmanら, Nature 312:768, 1984に記載される有用な高発現ベクター、PMLSV N1/N4はATCC 39890として寄託されている。さらなる有用な哺乳動物発現ベクターは、本明細書に援用される、EP−A−0367566、および1991年5月16日に提出された米国特許出願第07/701,415号に記載されている。ベクターはレトロウイルス由来であってもよい。天然シグナル配列の代わりに、そしてイニシエーターメチオニンに加え、異種性シグナル配列、例えば、米国特許第4,965,195号に記載されるIL−7のシグナル配列;Cosmanら, Nature 312:768(1984)に記載されるIL−2受容体のシグナル配列;EP 367,566に記載されるIL−4シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載されるI型IL−1受容体シグナルペプチド;およびEP 460,846に記載されるII型IL−1受容体シグナルペプチドを添加してもよい。
【0069】
本発明にしたがった、単離され、精製されているまたは均質なタンパク質としてのLDCAMは、上述のように組換え発現系により産生してもよいし、または天然発生細胞から精製してもよい。LDCAMは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による解析に際し、単一のタンパク質バンドにより示されるように、実質的に均質に精製することが可能である。
【0070】
LDCAMを産生するための1つの方法は、LDCAMをコードするDNA配列を含む発現ベクターで形質転換されている宿主細胞を、LDCAMの発現を促進するのに十分な条件下で培養することを含む。LDCAMを次いで、使用される発現系に応じ、培地または細胞抽出物から回収する。当業者に知られるように、組換えタンパク質を精製するための方法は、使用される宿主細胞および組換えタンパク質が培地に分泌されるかどうかなどの要因にしたがい、変化するであろう。
【0071】
例えば、組換えタンパク質を分泌する発現系を使用する場合、培地をまず、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を用い、濃縮してもよい。濃縮段階に続き、濃縮物をゲル濾過媒体などの精製マトリックスに適用してもよい。あるいは、陰イオン交換樹脂、例えばジエチルアミノエチル(DEAE)側鎖を有するマトリックスまたは支持体を使用してもよい。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製に通常使用される他の種類であってもよい。あるいは、陽イオン交換段階を使用してもよい。適切な陽イオン交換体には、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む多様な不溶性マトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい。最後に、疎水性逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)媒体(例えば、側鎖(pendant)メチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲル)を使用する1つまたはそれ以上の逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)段階を使用し、LDCAMをさらに精製してもよい。前記の精製段階のいくつかまたはすべてを多様な組み合わせで用いる方法が周知であり、そして実質的に均質な組換えタンパク質を提供するのに使用されうる。
【0072】
発現されたLDCAMポリペプチドをアフィニティー精製するのに、LDCAM結合タンパク質のリガンド結合ドメインを含むアフィニティーカラムを利用することが可能である。LDCAMポリペプチドは、慣用的技術を用いて、例えば、高塩溶出緩衝液中、そしてその後、使用のためより低塩緩衝液中に透析することによって、あるいは利用されたアフィニティーマトリックスに応じて、pHまたは他の構成要素を変化させることによって、アフィニティーカラムから除去してもよい。あるいは、アフィニティーカラムはLDCAMに結合する抗体を含んでもよい。実施例5は、本発明のLDCAMを、LDCAMに対して向けられるモノクローナル抗体を生成するのに使用するための方法を記載する。
【0073】
細菌培養において産生される組換えタンパク質を、最初に宿主細胞を破壊し、遠心分離し、不溶性ポリペプチドであれば細胞沈澱から、または可溶性ポリペプチドであれば上清流体から抽出し、その後1つまたはそれ以上の濃縮、塩析、イオン交換、アフィニティー精製またはサイズ排除クロマトグラフィー段階を行うことにより単離してもよい。最後に、最終精製段階に、RP−HPLCを使用してもよい。微生物細胞を、凍結融解サイクル、超音波、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、いかなる簡便な方法により破壊してもよい。
【0074】
形質転換酵母宿主細胞は、好ましくは、精製を単純にするため、分泌ポリペプチドとしてLDCAMを発現するよう使用される。酵母宿主細胞発酵から分泌される組換えポリペプチドは、Urdalら(J. Chromatog. 296:171, 1984)に開示されるものと類似の方法により精製してもよい。Urdalらは、分離用HPLCカラム上での組換えヒトIL−2精製のための、2つの連続する逆相HPLC段階を記載する。
【0075】
LDCAM核酸の有用な断片には、標的LDCAM mRNA(センス)またはLDCAM DNA(アンチセンス)配列に結合することが可能な一本鎖核酸配列(RNAまたはDNA)を含む、アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、本発明にしたがい、LDCAM cDNAのコード領域の断片を含む。こうした断片は一般的に、少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14ないし約30ヌクレオチドを含む。既定のタンパク質をコードするcDNA配列に基づき、アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを得る能力は、例えば、SteinおよびCohen(Cancer Res. 48:2659, 1988)およびvan der Krolら(BioTechniques 6:958, 1988)に記載されている。
【0076】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への結合は、二重鎖の亢進した分解、転写または翻訳の未成熟な終結、または他の手段によるものを含む、いくつかの手段の1つにより、標的配列の転写または翻訳を遮断する二重鎖の形成を生じる。このように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用い、LDCAMタンパク質の発現を遮断してもよい。アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドはさらに、修飾糖−ホスホジエステル骨格(または、WO 91/06629に記載されるものなど、他の糖結合)を有するオリゴヌクレオチドを含み、そしてこのような糖結合は内因性ヌクレアーゼに耐性である。こうした耐性糖結合を持つオリゴヌクレオチドは、in vivoで安定である(すなわち酵素分解に抵抗することが可能である)が、標的ヌクレオチド配列に結合することが可能な配列特異性を保持する。センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例には、WO 90/10448に記載されるものなどの有機部分、およびポリ(L−リジン)などの標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増加させる他の部分に共有結合するオリゴヌクレオチドが含まれる。さらに、エリプチシンなどの挿入剤、およびアルキル化剤または金属錯体がセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合し、標的ヌクレオチド配列へのアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を修飾してもよい。
【0077】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、CaPO4仲介DNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含む、いかなる遺伝子トランスファー法により、またはエプスタイン・バーウイルスなどの遺伝子トランスファーベクターを用いることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入されてもよい。好ましくは、アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、適切なレトロウイルスベクターに該アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを挿入し、その後、細胞をin vivoまたはex vivoで該挿入配列を含む該レトロウイルスベクターと接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入される。適切なレトロウイルスベクターには、限定されるわけではないが、ネズミレトロウイルスM−MuLV、N2(M−MuLV由来のレトロウイルス)由来のもの、またはDCT5A、DCT5BおよびDCT5Cと称される二重コピーベクター(PCT出願US 90/02656を参照されたい)が含まれる。
【0078】
センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、WO 91/04753に記載されるように、リガンド結合分子との結合体の形成により、標的ヌクレオチド配列を含む細胞に導入されてもよい。適切なリガンド結合分子には、限定されるわけではないが、細胞表面受容体、増殖因子、他のサイトカイン、または細胞表面受容体に結合する他のリガンドが含まれる。好ましくは、リガンド結合分子の結合体化は、リガンド結合分子がその対応する分子または受容体に結合する能力に実質的に干渉せず、あるいはセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその結合体型が細胞内に入るのを遮断しない。あるいは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO 90/10448に記載されるように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により、標的核酸配列を含む細胞に導入されてもよい。センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは、内因性リパーゼにより、細胞内で分離される。
【0079】
上記に加え、以下の例は、特定の態様を例示するため提供され、そして本発明の範囲を限定するためではない。
【0080】
【実施例】
実施例1
B7L−1/Fc融合タンパク質の調製
以下は、B7L−1が結合する細胞を同定するのに用いた、B7L−1/Fcタンパク質の生成を記載する。該融合タンパク質は、ヒトB7L−1の可溶性細胞外領域および突然変異タンパク質(mutein)ヒトFc領域を含み、そしてまず、B7L−1の細胞外領域に隣接するプライマーを用い、ヒトB7L−1の細胞外領域をコードするcDNAを単離することにより調製した(米国特許第5,011,912号を参照されたい)。
【0081】
B7L−1の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド(1998年8月7日に提出された同時係属出願S/N 60/095,663号の配列番号1のヌクレオチド108−1249)を単離するため、B7L−1の細胞外領域に隣接するオリゴヌクレオチドを、PCR反応におけるプライマーとして用い、反応のテンプレートであったクローン#44904からPCR産物を得た。生じたPCR産物を、プライマーにより取りこまれたSal1およびBglII部位で、Sal1およびBglII制限酵素を用い、消化した。より低いFc受容体結合のため突然変異しているヒトIgG1 Fc領域を含む発現ベクター(pDC409)に、生じた断片を連結した。
【0082】
生じたDNA構築物をサル腎臓細胞株CV−1/EBNAに(psv3neoの共トランスフェクションと共に)トランスフェクションした。0.5%低免疫グロブリンウシ血清を含む培地で7日間培養した後、0.2%アジ化物溶液を上清に添加し、そして0.22μmフィルターを通し上清を濾過した。その後、およそ1lの培養上清を、10 ml/分で、4.6 x 100 mmプロテインAカラム(PerSeptive BiosystemsのPOROS 20A)を用い、BioCad プロテインA HPLCタンパク質精製系を通過させた。プロテインAカラムは、上清中の融合タンパク質のFc部分に結合し、融合タンパク質を固定し、そして上清中の他の構成要素がカラムを通過するのを可能にする。カラムを30mlのPBS溶液で洗浄し、そして結合している融合タンパク質をpH3.0に調整したクエン酸でHPLCカラムから溶出させた。溶出した精製融合タンパク質は、溶出の際、pH7.4の1M HEPES溶液を用い、中和した。
【0083】
実施例2
B7L−1結合研究
実施例1に記載されるように調製したB7L−1/Fc融合タンパク質を用い、標準的フローサイトメトリー方法論にしたがい、定量的結合研究を用い、B7L−1結合に関し、細胞株をスクリーニングした。スクリーニングする各細胞に関し、該方法は、細胞をインキュベーションし、PBS中の2% FCS(ウシ胎児血清)、5%正常ヤギ血清および5%ウサギ血清で1時間ブロッキングすることを含んだ。その後、ブロッキングされた細胞をB7L−1/Fc融合タンパク質5μg/mlと、PBS中の2% FCS、5%ヤギ血清および5%ウサギ血清中でインキュベーションした。インキュベーション後、試料をFACS緩衝液(PBS中の2% FCS)で2回洗浄し、そしてその後、マウス抗ヒトFc/ビオチン(Jackson Researchから購入)およびSAPE(Molecular Probesから購入したストレプトアビジン−フィコエリトリン)で処理した。この処理は、抗ヒトFc/ビオチンをすべての結合しているB7L−1/Fcに結合させ、そしてSAPEを抗ヒトFc/ビオチンに結合させ、細胞に結合しているB7L−1/Fc上に蛍光同定標識を生じさせる。蛍光検出フローサイトメトリーを用い、すべての結合しているタンパク質に関し細胞を解析した。結果により、ヒトB7L−1は、ヒト肺上皮細胞株(WI−28)、ヒトBリンパ芽球株(DaudiおよびPAE8LBM1)、ヒト新鮮扁桃腺B細胞、flt3−L処理動物の脾臓/リンパ節由来のネズミCD8+樹状細胞およびネズミT細胞リンパ腫S49.1によく結合することが示された。
【0084】
実施例3
B7−1対受容体に関するWI−26発現ライブラリーのスクリーニング
以下は、実施例1に記載されるように調製したB7L−1/Fc融合タンパク質を用いた発現クローニングライブラリーのスクリーニングを記載する。発現ライブラリーは、Current Protocols In Molecular Biology, Vol.1,(1987)に記載される方法を用い、ヒト細胞株WI−26から調製した。標準的間接結合法を用い、スライドオートラジオグラフィーにより、CV1/EBNA細胞のトランスフェクション単層を、放射ヨウ素化B7L−1/Fc融合タンパク質を用い、B7L−1対受容体の発現に関し、アッセイした。対受容体を発現している細胞を示す陽性スライドを同定し、そしておよそ2,000の個々のクローンを含む1つのプールを、B7L−1/Fc融合タンパク質の結合に関し、潜在的に陽性と同定した。
【0085】
プールの力価を測定し、そしてその後、掻きとって、CV1/EBNA細胞にトランスフェクションするためのプールされたプラスミドDNAを提供した。より小さいプールをスクリーニングした後、1つのプールが、B7L−1/Fcに結合することが可能な発現遺伝子産物の存在により示されるように、B7L−1対受容体に関し、陽性のクローンを含んだ。陽性プールの力価を測定し、そして蒔いて個々のコロニーを得た。潜在的な候補クローン各々からDNAを単離し、再トランスフェクションし、そして再スクリーニングした。生じた陽性クローンは、1535ヌクレオチドのcDNA挿入物を含んだ。B7L−1対受容体(LDCAM)のcDNAコード領域は、配列番号1に開示されるものに対応する。配列番号1にコードされるアミノ酸配列は、配列番号2に開示される。
【0086】
実施例4
ヒトLDCAMの発現
以下は、CV1/EBNA細胞における全長膜結合ヒトLDCAMの発現を記載する。ヒトLDCAMを発現するためのベクター構築物は、配列番号1のコード領域をpDC409発現ベクターに連結することにより、調製した。発現ベクターをその後、CV1/EBNA細胞にトランスフェクションし、そしてMcMahanら, EMBO J. 10:2821, 1991に記載される技術を用い、LDCAMを発現した。
【0087】
細胞にショックを与え、そして数日インキュベーションした後、膜結合LDCAMを有する細胞を回収し、1%パラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、そしてその損なわれていない形で用いた。
【0088】
配列番号1のヌクレオチド8ないし1130にコードされるLDCAM細胞外領域を含むLDCAMの可溶性型を発現させるため、配列番号1の細胞外コード領域を、pDC409発現ベクターに連結することにより、ベクター構築物を調製する。該ベクターをCV1/EBNA細胞にトランスフェクションする。
【0089】
新鮮な培地中の3日のインキュベーション期間後、可溶性型を含むCV1/EBNA細胞上清を回収し、そしてHPLC技術またはアフィニティークロマトグラフィー技術を用い、LDCAMを単離することにより、可溶性LDCAMを回収する。
【0090】
実施例5
LDCAM結合研究
LDCAMが結合する細胞株を同定するため、以下の実施例9に記載されるLDCAM/Fc融合タンパク質を調製し、そして細胞結合およびFACSアッセイに用いた。標準的細胞結合およびFACS方法論を用いると、LDCAMはBリンパ芽球細胞株、DAUDIおよびPAE8LBM1、ヒトB7L−1でトランスフェクションされた細胞、LDCAMでトランスフェクションされた細胞、S49.1細胞、およびFlt3−L処理マウスの脾臓およびリンパ節由来のリンパ性DCに結合することが見出された。
【0091】
実施例6
LDCAMを発現している組織の同定
標準的RT−PCR方法論、ノーザン解析およびESTデータベース(GENBANK)配列マッチングを用い、ヒトLDCAMおよびマウスLDCAMのmRNA発現に関し、いくつかの細胞株を調べた。結果により、LDCAMは広範囲の組織分布を有することが立証された。ヒトLDCAMの発現は、乳房、網膜、胎児肝臓、脾臓、胎児心臓、肺、筋肉、胎盤、甲状腺、および肺癌腫に見出された。マウスLDCAM mRNAは、全胚、精巣、および三重ネガティブ細胞で見出された。
【0092】
実施例7
ネズミLDCAMの単離
可溶性B7L−1がネズミリンパ腫S49.1(実施例2)への結合を示したため、ネズミLDCAM cDNAクローンに関し、S49.1発現ライブラリーをスクリーニングした。該方法は、S49.1細胞株RNA並びに配列番号7および配列番号8に記載されるプライマーを用いた、RT−PCR方法論を伴った。これらのプライマーは、データベース中に発見され、そしてヒトLDCAMに相同性を有する、ネズミESTに基づく。cDNAを、該プライマーを用い、PCRにより増幅し、ネズミLDCAMがS49.1細胞に存在することを確認した。
【0093】
増幅産物をクローニング用ベクターにクローン化し、そしてLDCAM cDNA挿入物を含むクローンを、ヒトLDCAMコード領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションにより、検出した。ヒトLDCAMに比較し、5’伸長を含むcDNAを検出するため、コード領域の5’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーおよびcDNA挿入物に隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用い、cDNAクローンの5’領域が増幅されるように、アンカーPCRを行った。PCR産物をゲル電気泳動により調べ、そしてその長さを、ヒトLDCAM cDNAから同様に得た増幅産物と比較した。より長い5’PCR産物を提供するクローンのcDNA挿入物を配列決定し、ヒトLDCAMと比べ、最初の4アミノ酸以外すべてをコードするネズミLDCAM cDNAを得た。ネズミLDCAMのヌクレオチド配列は、配列番号3に示される。配列番号3のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列は、配列番号4に提供される。
【0094】
実施例8
ネズミLDCAMポリペプチドの発現
ネズミ細胞外B7L−1を発現するためのベクター構築物を調製するため、配列番号3のコード領域をpDC409発現ベクターに連結した。発現ベクターをその後、CV1/EBNA細胞にトランスフェクションし、そしてMcMahanら, EMBO J. 10:2821, 1991に記載される技術を用い、LDCAMを発現した。
【0095】
細胞にショックを与え、そして数日インキュベーションした後、可溶性ネズミLDCAMを含む細胞上清を集め、そしてHPLC技術を用い、タンパク質を回収した。
【0096】
実施例9
LDCAM/融合タンパク質の調製
以下は、LDCAMが結合する細胞を同定するのに用いた、ヒトLDCAM/Fcタンパク質の生成を記載する。該融合タンパク質は、ヒトLDCAMの可溶性細胞外領域および突然変異タンパク質ヒトFc領域を含み、そしてまず、LDCAMの細胞外領域に隣接するプライマーを用い、ヒトLDCAMの細胞外領域をコードするcDNAを単離することにより調製した(米国特許第5,011,912号を参照されたい)。
【0097】
LDCAMの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド、配列番号1のヌクレオチド16−1137を単離するため、LDCAMの細胞外領域に隣接するオリゴヌクレオチドを、PCR反応におけるプライマーとして用い、WI−26クローンからPCR産物を得た。プライマーは配列番号5および配列番号6に示される。生じたPCR産物を、プライマーにより取りこまれたSal1およびBglII部位で、Sal1およびBglII制限酵素を用い、消化した。より低いFc受容体結合のため突然変異しているヒトIgG1 Fc領域を含む発現ベクター(pDC409)に、生じた断片を連結した。
【0098】
生じたDNA構築物をサル腎臓細胞株CV−1/EBNAにトランスフェクションした。0.5%低免疫グロブリンウシ血清を含む培地で7日間培養した後、0.2%アジ化物溶液を上清に添加し、そして0.22μmフィルターを通し上清を濾過した。その後、およそ1lの培養上清を、10 ml/分で、4.6 x 100 mmプロテインAカラム(PerSeptive BiosystemsのPOROS 20A)を用い、BioCad プロテインA HPLCタンパク質精製系を通過させた。プロテインAカラムは、上清中の融合タンパク質のFc部分に結合し、融合タンパク質を固定し、そして上清中の他の構成要素がカラムを通過するのを可能にする。カラムを30mlのPBS溶液で洗浄し、そして結合している融合タンパク質をpH3.0に調整したクエン酸でHPLCカラムから溶出させた。溶出した精製融合タンパク質は、溶出の際、pH7.4の1M HEPES溶液を用い、中和した。
【0099】
実施例10
LDCAMに対するモノクローナル抗体
本実施例は、LDCAMに対するモノクローナル抗体を調製するための方法を例示する。精製LDCAM、細胞外ドメインなどのその断片、合成ペプチドまたはLDCAMを発現する細胞を用い、慣用的な技術、例えば、米国特許第4,411,993号に記載される技術を用い、LDCAMに対するモノクローナル抗体を生成してもよい。簡潔には、LDCAMを免疫原として、完全フロイントアジュバント中に乳化し、そして10−100μgの範囲の量を皮下または腹腔内注射し、マウスを免疫する。10ないし12日後、不完全フロイントアジュバント中に乳化した、さらなるLDCAMで、免疫動物に追加免疫する。その後、毎週ないし隔週の免疫スケジュールで、マウスに定期的に追加免疫する。後眼窩出血または尾先端切除により、血清試料を定期的に採取し、ドットブロットアッセイまたはELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により、LDCAM抗体に関し試験する。
【0100】
適切な抗体力価の検出後、陽性動物に最後に一度、生理食塩水中のB7L−1を静脈内注射する。3から4日後、動物を屠殺し、脾臓細胞を採取し、そして脾臓細胞をネズミ骨髄腫細胞株、例えばNS1または好ましくはp3x63Ag8.653(ATCC CRL 1580)に融合させる。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、これを非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、および脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害するため、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン)選択培地中の多重マイクロタイタープレート中に蒔く。
【0101】
ハイブリドーマ細胞をEngvallら, Immunochem. :871, 1971、および米国特許第4,703,004号に開示される技術を適合させることにより、精製B7L−1に対する反応性に関し、ELISAによりスクリーニングする。好ましいスクリーニング技術はBeckmannら(J. Immunol. 144:4212, 1990)に記載される抗体捕捉技術である。陽性ハイブリドーマ細胞を、同系BALB/cマウスに腹腔内注射し、高濃度の抗B7L−1−Lモノクローナル抗体を含む腹水を産生してもよい。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、多様な技術によりフラスコまたは回転ビン(roller bottle)中でin vitroで増殖させてもよい。マウス腹水中に産生されたモノクローナル抗体を、硫酸アンモニウム沈澱に続くゲル排除クロマトグラフィーにより精製してもよい。あるいは、抗体がプロテインAまたはプロテインGに結合することに基づくアフィニティークロマトグラフィーも用いてもよく、B7L−1に結合することに基づくアフィニティークロマトグラフィーも用いてもよい。
【0102】
実施例11
ノーザンブロット解析によるLDCAM発現の検出
以下は、本発明のLDCAMポリペプチドを発現する組織および細胞種を同定するために行った、ノーザンブロット実験を記載する。
【0103】
総RNA 5μgないし10μgを、1.2%アガロースホルムアルデヒドゲル上で分画し、そして該RNAをHybondナイロン膜(Amersham、イリノイ州アーリントンハイツ)上にブロットすることにより、ノーザンブロットを生成した。Maniatis(Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載されるような標準的ノーザンブロット生成法を用いた。いくつかの異なる供給源由来のmRNA 1μgを含むポリA+多数組織ブロットを、Clontechから購入した。
【0104】
LDCAMのコード領域を含むリボプローブは、製造者の指示にしたがい、PromegaのRiboprobe Combination KitおよびT7 RNAポリメラーゼを用い、生成した。ノーザンブロットの探査(probing)および陽性結合プローブに関する、生じたx線フィルムの視覚化の結果、ネズミLDCAMに関し、5.0kBのハイブリダイズしているmRNAが、肺、肝臓、脳、精巣および脾臓樹状細胞に検出された。異なる大きさを有する、ハイブリダイズしているさらなるmRNAには、肺および精巣におけるおよそ1.9kBのmRNA;LPS刺激骨髄マクロファージ、肺および精巣におけるおよそ3.0kBのmRNA;抗T細胞受容体抗体刺激脾臓T細胞、LPS刺激骨髄マクロファージ、および精巣におけるおよそ7.0kBのハイブリダイズしているmRNAが含まれ;そしておよそ9.0kBのハイブリダイズしているmRNAが、胸腺および抗T細胞受容体抗体刺激脾臓T細胞で検出された。
【0105】
実施例12
免疫系細胞結合研究
以下は、LDCAMが特定の活性化免疫系細胞に結合することを立証する、FACS細胞結合実験を記載する。研究および比較目的のため、B7L−1の結合特性もまた、含まれる。研究された細胞は、ネズミT細胞、ヒトT細胞、ネズミB細胞、ネズミNK細胞、ヒト内皮細胞、およびヒト腫瘍細胞株を含んだ。
【0106】
ネズミT細胞結合を研究するため、BALB/cネズミリンパ節(LN)細胞を、培地単独で、および異なる刺激の存在下で、18−20時間培養した。培養細胞を採取し、そしてB7L1/Fc融合タンパク質、LDCAM/Fc融合タンパク質およびコントロールFcタンパク質を用いた結合研究のため調製した。一晩培養した後、BALB/cネズミLN細胞は、典型的には>90% CD3+である。フローサイトメトリー解析を用い、結合タンパク質を検出した。表Iに示される結果は、未刺激T細胞(培地)および(刺激による)刺激T細胞の平均蛍光強度単位(MFI)として表された、観察された結合を示す。
【0107】
表I
【0108】
【表1】
Figure 0004426724
【0109】
T細胞サブセットにより解析すると、LN CD4+ネズミT細胞の75−80%が、in vitroでの抗TCR刺激後、検出可能なLDCAM結合を示した。LN CD8+ネズミT細胞の約50%は、検出可能な結合を示す。さらに、CD4+ T細胞は、CD8+ネズミT細胞が示すより、高いレベルのLDCAM結合を示す。結果により、LDCAM/Fcが低いレベルで未処置(naive)T細胞に結合することが示される。しかし、ポリクローナル刺激で一晩活性化した後、結合は、刺激に応じ、5−20倍増加した。研究した刺激のうち、PMAは、少なくともネズミT細胞に対するLDCAM結合を誘導し、そして抗TCRは最も高い結合を誘導する。
【0110】
LDCAMおよびその対構造B7L1に対するヒトT細胞結合を研究するため、ヒト末梢血(PB)T細胞を、培地単独で、または異なる刺激の存在下で、18−20時間培養した。培養細胞を採取し、そしてB7L1/Fc融合タンパク質、LDCAM/Fc融合タンパク質およびコントロールFcタンパク質のいずれかを用いた結合研究のため調製した。ヒトPB T細胞上の結合タンパク質は、フローサイトメトリー解析を用い、検出した。表IIは、未刺激T細胞(培地)および(刺激による)刺激T細胞のMFIとして表された、観察された結合を示す。
【0111】
表II
【0112】
【表2】
Figure 0004426724
【0113】
結果は、PMAが、ネズミT細胞に対するよりも、ヒトT細胞に対し、より強いLDCAM結合を誘導することを示す。B7L1結合の非存在下で、ネズミおよびヒトT細胞両方に対し、LDCAMの特異的な結合が存在することにより、LDCAMがB7L1、または異なる分子に結合し、それ自体に結合しないことが示唆される。研究により、T細胞はほとんどまたはまったくB7L1を発現しないことが示されているため、LDCAMは別の結合パートナーを有する可能性がある。
【0114】
上に記載されるものと同様の研究を行い、ネズミ脾臓B細胞に対するLDCAMおよびB7L1結合を評価した。B7L1またはLDCAM結合のどちらも、未刺激ネズミB細胞上で検出されなかった。muCD40LまたはLPSを用い、ネズミ脾臓B細胞を培養すると、低レベルのLDCAM結合が誘導されたが、認識できるレベルのB7L1結合は検出されなかった。
【0115】
ネズミNK細胞に対する結合を研究するため、IL−15処理CB−17/SCIDマウスから脾臓を除去し、そして非常に濃縮されそして活性化されたネズミNK細胞の供給源として用いた。IL−15処理SCIDマウスから単離された脾臓細胞は、60−80%がDX−5陽性である。DX−5は、多くの異なる系統のマウス由来のNK細胞上で発現されている全(pan)NKマーカーである。上述のようにフローサイトメトリー解析を行い、DX−5+のin vivo IL−15活性化ネズミNK細胞に対するB7L1およびLDCAM結合を検出した。表IIIはネズミNK細胞結合研究の結合の結果を示す。
【0116】
表III
【0117】
【表3】
Figure 0004426724
【0118】
ネズミおよびヒトT細胞上で観察されたものと対照的に、LDCAMおよびB7L1結合は、in vivo活性化ネズミNK細胞上で検出することが可能であった。
【0119】
ヒト内皮細胞に対するB7L1およびLDCAM結合を研究することに向けられた実験の結果、異なるドナー由来のヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)に対し、いかなる結合も示されなかった。しかし、1人のドナー由来の1つのHUVECでは、コントロールFcに比べ、B7L1が低レベルでCD62EおよびCD106を誘導した。
【0120】
表IVは、ヒト腫瘍細胞株に対するB7L1およびLDCAM結合を評価することに向けられる実験の結果を詳細に示す。結果は、LDCAMまたはB7L1に結合している細胞のパーセンテージとして表す。
【0121】
表IV
【0122】
【表4】
Figure 0004426724
【0123】
**コントロールFcの結合は引かれているため、これはバックグラウンド上の正味%+細胞結合である。
結果により、卵巣癌腫細胞株および2つのヒトB細胞腫瘍株(MP−1および扁桃腺G)に対する有意なLDCAM結合が示される。これらの結果は、LDCAMが特定の種類のB細胞リンパ腫または異なる種類の癌腫のマーカーであることを示す。さらに、LDCAMまたはB7L1により仲介される生物学的情報伝達は、これらの種類の腫瘍に対し、機能する抗腫瘍効果を仲介する可能性がある。
【0124】
実施例13
T細胞増殖に対するLDCAMの影響
以下の議論は、ポリクローナル刺激により誘導されるネズミおよびヒトT細胞増殖に対するLDCAMの影響を評価するのに行った実験を記載する。
【0125】
LDCAM/Fc融合タンパク質およびB7L1/Fc融合タンパク質を、in vitroネズミT細胞増殖の標準的なモデルにおいて、評価した。正常BALB/cマウスからリンパ節(LN)細胞を得て、そして培地中の培養に置いた。多様な量のコントロールFc、B7L1/FcおよびLDCAM/Fcを単独で、またはConA、PHAまたは固定TCR mAbを含むT細胞の異なるポリクローナル刺激の存在下で、培地中に置いた。
【0126】
これらの実験の結果により、LDCAMがConA誘導ネズミT細胞増殖を強く阻害し(〜0.625μg/mlで50%阻害)、PHA誘導増殖を中程度に阻害し(〜5μg/mlで50%阻害)、そして固定TCR mAbで誘導された増殖には影響を与えないことが立証された。ヒト末梢血T細胞増殖アッセイでは、LDCAMはConA誘導増殖を阻害するが、PHAまたはOKT3誘導増殖を有効には阻害しない。B7L1/Fcは、ネズミまたはヒトT細胞の増殖反応には影響を与えない。
【0127】
結果により、マイトジェン誘導ネズミおよびヒトT細胞増殖に対するLDCAM/Fcの阻害効果は、サイトカイン(特にIL−2)分泌の阻害のため、または活性化後のT細胞の下流反応の制御およびLDCAM結合パートナーの発現増加のためであることが示唆される。LDCAMはまた、T細胞、T細胞およびAPCまたはT細胞およびNK細胞の間の細胞から細胞への相互作用も調節する可能性がある。LDCAMがTCR mAb誘導増殖を阻害することができなかったことにより、ConAおよびPHAにより誘導された増殖は非常にサイトカイン依存性である一方、抗TCR mAbに誘導されるものはより依存しないため、サイトカイン異常制御が起こっていることが示唆される。
【0128】
実施例14
ネズミT細胞サイトカイン産生に対するLDCAMの影響
以下は、PHA、ConAおよびTCR mAbでのT細胞のin vivo活性化後の、ネズミLN細胞または精製T細胞サイトカイン分泌に対するLDCAMの影響に関し、LDCAMを評価するために行った実験を記載する。結果を表Vに示す。検出されたサイトカインレベルは、pg/mlで表す。
【0129】
表V
【0130】
【表5】
Figure 0004426724
【0131】
結果により、LDCAM/Fcが、ConAおよびPHAにより誘導されるネズミLN T細胞 IL−2およびIFN−ガンマ産生を有意に阻害することが示される。固定抗TCR mAbを用い、ネズミT細胞からのサイトカイン産生を誘導した場合、サイトカイン産生に対し、LDCAMの、より明白でない影響が観察された。LDCAMは、TCR活性化後のIFN−ガンマ産生を減少させた。対照的に、TCR活性化後のIL−2産生は、減少しなかった。これらの実験において、T細胞により非常に少量のIL−4しか生成されなかったため、IL−4または他のさらなるサイトカイン/ケモカインのT細胞産生に対し、LDCAMが影響を与えているかどうかは評価しなかった。
【0132】
実施例15
ネズミ混合細胞活性化アッセイに対するLDCAMの影響
in vitro混合細胞アッセイを開発し、T細胞がCD40L/CD40相互作用を通じ、B細胞を活性化する能力を調べた。該アッセイは、脾臓細胞およびLN細胞を、抗TCR mAbと、in vitroで36時間培養した後、T細胞が活性化され、そしてB細胞/APCと相互作用した後に起こるTおよびB細胞/APC細胞活性化をフローサイトメトリー解析することを伴う。
【0133】
脾臓細胞を抗TCR mAb、ConA、PHAと、または培地単独で、コントロールFcまたはLDCAM/Fcと36時間培養した。2色染色およびフローサイトメトリー解析を用い、CD25、CD69、CD54、CD45Rb、CD44、CD28、CD23、CD86およびCD152の細胞表面発現を調べることにより、CD19+ B細胞およびCD3+ T細胞活性化を追った。
【0134】
結果により、PHAまたはConAでの活性化後、CD69、CD54、およびCD25の発現は、培養中のT細胞およびB細胞上で、数倍増加することが立証された。これらの増加にほとんど影響を持たないコントロールFcと比べ、LDCAMは、ConAでの活性化を介し、本培養系において、両方の細胞種上で誘導されるCD69、CD54およびCD25の発現を有意に(非活性化T細胞とほとんど同じレベルまで)減少させた。ConAは、表面上に活性化分子(例えばCD40L)を発現するT細胞を活性化する。活性化分子は、B細胞の表面上の受容体に結合し、そしてB細胞を活性化し、細胞表面上に多様な活性化関連タンパク質を発現する。PHA活性化TおよびB細胞の阻害は、ConAでの活性化後に観察されるものより、穏やかな度合いで起こった。
【0135】
さらに、LDCAMは、ConAと培養した脾臓細胞におけるCD3+およびCD3−両方の細胞上に発現されるCD45RBのレベルを減少させた。CD45RBレベルの減少に対するこの効果は、LDCAMを、TCR mAbで刺激された脾臓細胞と培養した際、より顕著であり、そして刺激としてPHAを用いた場合、または細胞を培地単独で培養した場合、観察されなかった。
【0136】
TCR mAbを用い、コントロールFcまたはLDCAM/Fcの存在下で培養脾臓細胞を刺激すると、本刺激によりT細胞およびB細胞上に誘導されたCD69、CD25、およびCD25のレベルは、LDCAMにより影響を受けないことが示された。しかし、LDCAMは、CD3+ T細胞および非T細胞両方の細胞上のCD28の発現を増加させた。1つの実験において、増加は5−10倍であり、そして他の実験では増加は50%だった。これはまた、TCR mAbに加え、ConAを刺激として用いた1つの実験でも観察された。LDCAMは、TCR mAb活性化後のB細胞(50%減少)およびT細胞(20−30%減少)上のCD45RB発現強度の中程度の減少を引き起こした。
【0137】
興味深いことに、LDCAMは、脾臓細胞がポリクローナルT細胞刺激の非存在下で培養された場合、該脾臓細胞上のCD45RB発現に影響を与えない。げっ歯類におけるCD45RB発現は、T細胞が未処理細胞から記憶細胞に進行するにつれ、減少すると報告されてきている。また、異なるCD4+ T細胞亜集団(subpopulation)は、高いまたは低いレベルのCD45RBを発現し、そしてin vivoで別個の免疫機能を仲介する。
【0138】
上に論じられる結果により、特定の免疫刺激条件下、ConAおよびPHAによる特定の刺激下で、LDCAMは、混合細胞アッセイにおいて、細胞レベルでT細胞活性化を阻害し、そしてIL−2およびIFN−ガンマ産生を減少させることにより、少なくとも部分的にこれらのマイトジェンにより誘導されたT細胞増殖を阻害することが示唆される。
【0139】
LDCAMは、TCR mAb誘導活性化により誘導されたIFNガンマ産生を、穏やかに下方制御するが、本系においてIL−2産生にほとんど影響を与えず、そして固定TCR mAbにより誘導されるネズミT細胞増殖に影響を与えない。LDCAMは、TCR mAbが活性化するT細胞およびB細胞のCD28発現の増加およびCD45RB発現の減少を引き起こす。これらのデータに基づき、LDCAMまたはT細胞上のその結合パートナーは、限定されるわけではないが、抗腫瘍免疫反応、DTH反応、およびT細胞依存抗感染性疾患免疫反応を含む、in vivoのT細胞エフェクター依存免疫反応を制御する(増加させる、減少させるまたは向けなおす(redirect))可能性がある。
【0140】
上の結果により、LDCAMが、T細胞活性化経路を調節するのに有用であり、そして自己免疫疾患および炎症を治療するのに用いることが可能であることが示唆される。
【0141】
実施例16
LDCAM.FcはネズミNK細胞に結合し、そしてNK細胞増殖を引き起こす
以下は、LDCAMが脾臓NK細胞表面に恒常的に結合し、そしてIL−15でのこれらの細胞の活性化がLDCAM結合レベルを増加させたことを立証する実験を記載する。該実験はまた、CB−17 SCIDマウスへのLDCAM:Fcの投与およびNK細胞増殖および脾臓における活性化に対する投与の影響も記載する。
【0142】
12の年齢一致雌CB−17/SCIDマウスを4群に分け、1群あたり3匹の動物を用いた。第0日、第1日および第2日に、群I、群II、群IIIおよび群IVに、以下のタンパク質をIP投与した:群Iのマウスに、10μgのヒトIgGを投与し;群IIのマウスに、10μgのヒトIL−15を投与し;群IIIのマウスに、10μgのヒトLDCAM:Fc(Immunexのロット#7488−16)を投与し;そして、群IVに、各10μgのヒトLDCAM:FcおよびヒトIL−15を投与した。
【0143】
第3日(実験の4日目)、マウスを安楽死させ、そして脾臓を除去した。各脾臓を別個に数え、そしてその後、フローサイトメトリーのため、共にプールした。各処理群の脾臓中のNK細胞の数は、全ネズミNK細胞マーカーとしてDX−5抗体を用いたフローサイトメトリーにより、測定した。さらに、CD69およびCD54発現を含むNK細胞活性化の他の測定値を評価した。
【0144】
実験の結果を表VIに示す。LDCAM:Fc単独の投与(群III)は、ヒトIgGコントロール群(群I)より、約5倍、回収された総脾臓細胞数を増加させた。ヒトIL−15単独の投与(群II)は、コントロール群(群I)より、約9倍、回収された総脾臓細胞数を増加させた。IL−15およびLDCAMの組み合わせ処置は、脾臓細胞数を累積的に増加させた。
【0145】
脾臓から回収されたNK細胞の数は、脾臓における総細胞回収と相関した。より詳細には、LDCAMは、回収NK細胞において約5倍の増加を誘導し;IL−15は、回収NK細胞において約9倍の増加を引き起こし;そしてLDCAMおよびIL−15の組み合わせは、処理マウスの脾臓から回収されたNK細胞の数において約13倍の増加を誘導した。LDCAMはまた、脾臓において、CD69およびCD54を発現するNK細胞の数も増加させた。この増加は、LDCAM:Fc投与後の、in vivoでのNK細胞上のCD69またはCD54の発現の特異的増加よりむしろ、総NK細胞増殖のためであった。
【0146】
表VI
【0147】
【表6】
Figure 0004426724
【配列表】
Figure 0004426724
Figure 0004426724
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Claims (4)

  1. 炎症性疾患に罹患している哺乳動物において、T細胞免疫反応を調節するための医薬組成物であって、配列番号2のアミノ酸39−374を含むポリペプチドを含む、前記医薬組成物
  2. 個体においてナチュラルキラー細胞を生成するための医薬組成物であって、配列番号2のアミノ酸39−374を含むポリペプチドを含む、前記医薬組成物
  3. 個体において感染性疾患またはウイルス感染を治療するための医薬組成物であって、配列番号2のアミノ酸39−374を含むポリペプチドを含む、前記医薬組成物
  4. それを必要とする個体において腫瘍細胞を殺すための医薬組成物であって、配列番号2のアミノ酸39−374を含むポリペプチドを含む、前記医薬組成物
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