JP4424541B2 - 水解紙の製造方法および水解紙 - Google Patents

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本発明は、大量の水を消費する湿式抄造法によらずに水解紙を製造する方法、およびこれにより得られる水解紙に関する。さらに詳しくは、エアレイド法を基本として、極く少量の水分を付与することにより、木材パルプのセルロース繊維どうしの水素間結合を部分的に発生させ、効率良く水解紙を製造する方法およびこれにより得られる水解紙に関する。
これまで、ドライ状で使用した後でトイレなどに流せる水解紙については古くからいくつかの提案がなされている。例えば、便座シート、トイレクリーナーなどの用途に使用されている。しかしながら、普通の湿式抄造による紙をベースとした場合は、構成するセルロース繊維のほとんどが水素間結合によって相互固定されているので、トイレの水流程度の機械的せん断力を与えた程度では解離しにくい。叩解を少なくして繊維どうしのからまりの状態を少なくした、いわゆるトイレットペーパーのような場合は、使用する時に少量の水分が存在していたら簡単に破れてしまい、特にウエット状で使用されるウエットワイパーには使用できない。従って、ウエット強度を補強しつつ、かつ大量の水によるせん断力では解離する作用のある薬剤を付与する方法が提案され、トイレクリーナーなどに実用化されている(特許文献1,2,3)。
従来から知られているエアレイド不織布は、パルプ繊維層をベースとしてポリアクリル酸エステル系やポリ酢酸ビニル系などのケミカルバインダー樹脂を表層にスプレーしたり塗布したり、全体に含浸したりして繊維間結合を形成している。
また、粉末状のバインダー樹脂を付与する方法や、繊維状バインダーを混合する方法なども知られている(特許文献4,5)。
さらに、古来より知られている湿式抄造によるパルプ紙では、分散剤、粘剤、紙力増強剤、発泡抑制剤などの抄紙助剤が使用されている。これらの剤は、化学薬剤であって、抄紙工程からの排水、および製造された紙に微量残存し、地球環境や人に対するなんらかの影響がある可能性を完全に否定することは困難である。より万全な安全性、安心感を考えれば、このような化学物質を一切使用しないパルプ紙の意義は大きいと考えられる。
特許文献6には、パルプ繊維層を乾式(水を使用しない)で形成する方法として、機械的な方法が示されている。しかしながら、この方法では均一な地合いの紙は得られず、特に薄い紙の場合は実用上の価値が少なかった。
特許第2549159号 特許第2584508号 特公平05−20093号 特開2000−504792号公報 特開2000−345454号公報 特開2001−62811号公報
本発明は、このような特別な問題を克服するためになされたものであり、その目的とするところは、ケミカルバインダー、繊維状バインダーなどのバインダー類や、抄紙助剤などの化学薬剤などを使用せず、好ましくは木材パルプのみを原料とする、地球環境への影響のない、人への安全性、衛生性に優れたパルプ紙、特に水解紙を提供することである。
本発明は、木材パルプ繊維100重量%からなる繊維層をエアレイド法で形成したのちに、該繊維層に対して5〜50重量%の水分を付与してから、100℃〜200℃で熱圧処理して、目付10〜300g/mとなすことを特徴とする水解紙の製造方法および上記方法によって清掃される水解紙に関する。
本発明では、上記熱圧処理が、1対の加熱ローラーの間での、線圧10〜50kgf/cm、温度120〜180℃のカレンダー処理であるのが好ましい。
また、本発明では、木材パルプ繊維層の全体に対して、さらに1〜70重量%の粉粒状高分子吸収体を含有させてもよい。
本発明の水解紙の製造方法は、エアレイド不織布製造法によって初めて均一性の高い、地合いの良好な紙が得られ、実用上の価値に優れる。本発明の製造方法によれば、ケミカルバインダー、繊維状バインダーなどのバインダー類や、抄紙助剤などの化学薬剤などを使用せず、好ましくは木材パルプのみを原料とする、地球環境への影響のない、人への安全性、衛生性に優れたパルプ紙、特に水解紙を得ることが可能である。
エアレイド不織布製造法による(混合)繊維層の形成:
本発明の水解紙は、エアレイド不織布製造法によって、基材となる(混合)繊維層を形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、離解した木材パルプ(平均長さ=0.5〜5mm、平均太さ=0.01〜0.1mm)を主体とし、さらに必要に応じて、繊維長0.1〜7mm、繊度0.1〜30デニール程度の熱接着性繊維を混合したものを噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上に(混合)繊維層を形成するものである。その後、繊維層を熱圧処理することで繊維間を結合し不織布として一体化させる。
繊維量、噴き出し条件、空気サクション条件、熱圧処理条件などを調節することにより所定の厚さに仕上げて本発明に用いられる(混合)繊維層を得ることができる。
ここで、木材パルプ繊維としてはN材(マツ、スギ、ヒノキ)、L材(ブナ、ナラ、カバ、ユーカリ)などが挙げられる。
木材パルプ繊維の平均長さは、0.5〜5mm、好ましくは1〜4mmであり、0.5mm未満では、未分散繊維が多くなり不織布地合いが悪くなる。一方、5mmを超えるような木材繊維は殆ど無い。また、同繊維の平均太さは、0.005〜0.2mm、好ましくは0.01〜0.1mmであり、0.005mm未満の木材繊維は殆ど無い。一方、0.2mmを超えるような木材繊維も殆ど無い。
また、木材パルプ繊維に必要に応じて混合される熱接着性合成繊維としては、熱で溶融して相互に結合する繊維であれば、どのような繊維でもよいが、芯鞘型複合繊維および/またはフィブリル状の合成パルプが好ましい。
このうち、芯鞘型複合繊維としては、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE、PET/共重合PET、PP/共重合PPなどが挙げられる。芯鞘型複合繊維において、芯部を構成するものはPPもしくはPETであり、鞘部を構成するものはPEもしくは共重合PETである。これらは、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で変性されていても差し支えがない。
フィブリル状の合成パルプとしては、三井化学(株)製のSWP(ポリエチレン、またはポリプロピレン)が挙げられる。
さらに、PET(ポリエチレンテレフタレート)のような合成ポリマーの未延伸繊維であっても良い。この場合の接着処理の条件としては、加熱のみでなく加圧も必要となる。
本発明の不織布に用いられる熱接着性合成繊維は、上述のとおり、繊維長が0.1〜7mmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜5mmである。繊維長が0.1mm未満であると粉末状になるため多孔質ネットコンベアーから抜け落ちる割合が高くなり加工が難しい。一方、繊維長が7mmを超えると繊維の紡出量が減るため生産性が悪化するばかりか、繊維どうしの絡まりが発生し易くなり、地合いが悪化する。また、上記繊維の繊度は0.1〜30デニールであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜20デニールである。繊度が0.1デニール未満であると、未分散繊維が多くなり地合いが悪くなる。一方、繊度が30デニールを超えると不織布の風合いや表面性が荒くなる。
なお、熱接着性合成繊維は捲縮していても、していなくてもよく、またストランドチョップであってもよい。捲縮している場合、ジグザグ型の二次元捲縮繊維およびスパイラル型やオーム型などの三次元(立体)捲縮繊維の何れも使用できる。
ここで、(混合)繊維層の熱接着性合成繊維の含有量は0〜10重量%であり、好ましくは0〜8重量%、さらに好ましくは0〜5重量%である。熱接着性合成繊維の混合量が10重量%を超えると紙の強力はアップするものの、水解性を失い好ましくない。実用上、強度をあまり必要としない用途、例えば便座シートのような場合には熱接着性合成繊維は0であっても良い。この場合は、特に水解性が良好となる。
本発明の水解紙の製造に際しては、使用時に大量の水分を吸液する能力を必要とする用途(例えば各種の衛生材料、ペットシーツ、メディカル用などが挙げられる)においては、高分子吸収体(SAP)を混在させておくのが好ましい。粉粒状高分子吸収体が混在している場合、廃棄するときに、水解性を有していれば処理しやすいというメリットを生じる。エアレイド不織布製造法によってパルプ繊維層を形成するにあたり、あらかじめ粉粒状高分子吸収体をパルプ繊維と混合しておくことによって、容易に含有させることができる。
粉粒状高分子吸収体としては、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の部分加水分解物、架橋ポリアクリル酸塩系、ポリエチレンオキサイド系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系などである。好ましくは架橋ポリアクリル酸塩である。
粉粒状高分子吸収体の含有量としては、(混合)繊維層に対して、1〜70重量%であり、好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。含有量が1重量%未満では水分吸収の能力が不十分であり、一方で、70重量%を超えると水分付与して熱圧処理をしても実用上の紙強度が出難く好ましくない。
なお、本発明の水解紙には、必要に応じて種々の機能を持たせるため、他の繊維を含んでいてもよい。例えば、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルニトリル、ポリフェニレンサルファイトなどの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維などの無機繊維、ポリ乳酸などの生分解性繊維などが挙げられる。この場合、混綿割合は、全体として、20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
本発明では、以上のような繊維などを原料とするエアレイド不織布製造法により、極めて地合いの良好な、つまり均一性の良好な水解紙が得られるという大きな特徴を有する。
均一性は、本発明が意図する水解紙の用途において極めて重要であり、既存の乾式不織布では得られ難い。また、本製造法によれば、タテ/ヨコの強力比率がほぼ1/1に近いというメリットも有する。
さらに、抄紙薬剤やケミカルバインダーを使用していないので、製造時や廃棄時における環境汚染や環境負荷の恐れも無い。
カレンダー処理:
次に、この(混合)繊維層に極く少量の水を付与してから、カレンダー装置によって熱圧を加え、セルロース繊維間の結合を生じさせて、本発明の水解紙を得ることができる。カレンダー処理する前の繊維層に少量の水を噴霧しておいてから熱オーブンを通過させ、あらかじめ若干のセルロース間結合を生じさせておいても良い。
水の付与量は、(混合)繊維層に対し、5〜50重量%であり、好ましくは6〜40重量%、さらに好ましくは7〜30重量%である。また、この際の水としては蒸気であってもよく、蒸気を使用することにより熱効率が上がる。水の付与量が5重量%未満では、セルロース繊維間の水素結合が少なく、紙強度が弱くなるため実用上の問題を生じる。一方、水の付与量が50重量%を超えると、セルロース繊維間の水素結合が強固となり、水解性を失う。
なお、水中に繊維を分散させて抄紙する既存の方法によれば、繊維量に対して数十倍から数百倍の大量の水を使う必要があり、この既存の抄紙法に較べて本方法がいかに少量の水分で済ませることができるかが容易に理解できる。また、水に、CMC(カルボキシルメチルセルロース)や部分ケン化ポバールなどの水溶性バインダーを10重量%以下の少量混合しておいても良い。
水の付与方法としては噴霧、コーティング、含浸などの方法が挙げられるが、パルプ層の地合いに影響しにくい方法としては、片面もしくは両面からの噴霧法が好ましい。
カレンダー処理に用いるローラーとしては、全体に均一な熱圧を加えるため、平滑表面の一対の金属ローラーを用いることが好ましいが、多段ローラーであっても良い。また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、凸凹表面のエンボスローラーであっても良い。カレンダー処理においては、1対の加熱ローラーの隙間を調整し所望の厚さの不織布に加工する方法が好ましい。この場合、隙間は小さいほど圧力が高まり、強度付与のためには好ましいが、厚手の紙の処理には、隙間を設けるのが良い。隙間は、0〜3mm、さらに好ましくは0〜2mmである。
カレンダー処理により熱接着する際の温度は、用いる熱接着性合成繊維の種類や、全体の目付により適宜選択されるが、100〜200℃であり、好ましくは110〜190℃で、さらに好ましくは120〜180℃である。熱圧処理温度が100℃未満では、水の沸点以下であるため、セルロース繊維どうしの水素間結合を生じにくく、紙強度が出ない。一方、200℃を超えると、セルロース繊維が劣化し始めるので、逆に紙強度が弱くなり好ましくない。
カレンダー処理の線圧は、5〜100kgf/cmが好ましく、さらに好ましくは10〜50kgf/cmである。5kgf/cm未満では、セルロース繊維間の水素結合が不十分で、一方、100kgf/cmを超えると、不織布の密度が高くなりすぎて硬い風合いのものとなってしまう。
本発明の水解紙は、その厚みが0.01〜3mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜2mmである。0.01mm以下だと、薄過ぎて実用上取扱い性が悪化し、一方、3mmを超えると繊維層内部の水分の乾燥が困難になる。
さらに、本発明に用いられる水解紙には、消臭、抗菌、防カビ、撥水、難燃、着色などの効果を有する繊維や物質を含有させても良い。
さらに、本発明に用いられる水解紙は、2層以上の多層でもよく、また、各層を構成する繊維は、同一でも異なっていてもよい。
本発明の水解紙の目付は、10〜300g/mであり、好ましくは12〜250g/m、さらに好ましくは、15〜200g/mである。目付が10g/m未満では、紙強度が弱すぎて実用上の問題を生じ、一方、300g/mを超えると繊維層の内部まで水分を付与することが困難となる。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
粉砕した木材パルプ(ウエアハウザー社製・NB416)を、上記のエアレイド不織布製造法によって空気と共に多孔質ネットコンベアー上に噴出させ、コンベアー下からサクションで引きながら、25g/mの繊維層をコンベアー上に形成した。次に、30℃の水分を繊維重量に対して12重量%となるように噴霧した。さらに、この水分保有の繊維層を、表面温度160℃、線圧20kgf/cm、隙間0の一対の金属ローラー間を通して熱圧処理し、本発明の水解紙を得た。得られた水解紙を用いて、乾燥時引張強度、水解性について評価した。
乾燥時引張強度
測定方法は試料サイズが巾25mm、チャック間100mm、引張速度300mm/分で測定した。MDはMACHINE DIRECTION、CDはCROSS DIRECTIONである。
水解性
測定方法は、水を溢れる状態まで入れた1000mlポリビーカーに25cm角の試料を置き、直ちにその中央に静かに20gの分銅をのせたときに、分銅が試料を突き破るまでに要する時間を測定した。
<比較例1>
イトマン(株)の市販のトイレットペーパー(商品名;トイレットペーパー HARD SINGLE、湿式抄紙法)
<比較例2>
レーヨン繊維をPVA樹脂で接着した水溶性ケミカルボンド不織布(金星製紙(株)製、品番K−25)
これらの結果を表1に示す。
得られた本発明の水解紙は、比較例に比べ、実用上十分な乾強力、特にヨコ強力を有し、かつ大量の水中での攪拌により、1分以内に解離する能力を有する、実用性に富む水解紙であった。







Figure 0004424541
本発明の水解紙は、トイレクリーナー、便座シート、植生用シート、金魚すくい用シート、各種ワイパー、各種の衛生材料、ペットシーツ、メディカル用などの用途に有用である。

Claims (4)

  1. 木材パルプ繊維100重量%からなる繊維層をエアレイド法で形成したのちに、該繊維層に対して5〜50重量%の水分を付与してから、100℃〜200℃で熱圧処理して、目付10〜300g/mとなすことを特徴とする水解紙の製造方法。
  2. 熱圧処理が、1対の加熱ローラーの間での、線圧10〜50kgf/cm、温度120〜180℃のカレンダー処理である請求項1記載の水解紙の製造方法。
  3. 木材パルプ繊維層の全体に対して、さらに1〜70重量%の粉粒状高分子吸収体を含有させる請求項1または2記載の水解紙の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれかの製造方法によって得られる水解紙。
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