JP4422420B2 - クロモン誘導体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロモン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(2)
Figure 0004422420
(式中、R1は水素原子または低級アルキル基を表わす。)
で示されるニトロクロモン誘導体や一般式(9)
Figure 0004422420
(式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノクロモン誘導体は、医薬中間体として有用な化合物である(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。
【0003】
一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体の製造方法としては、例えばニトロ置換2−ヒドロキシアセトフェノンを出発原料とする方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。ニトロ置換2−ヒドロキシアセトフェノンは、2−ヒドロキシアセトフェノンをニトロ化することにより製造されるが、該ニトロ化反応におけるニトロ基の導入位置の選択性が低く、ニトロ基の置換位置の異なる異性体が副生するため、該異性体の除去操作が必要であり、ニトロ置換2−ヒドロキシアセトフェノンを出発原料とする前記方法は、工業的には必ずしも十分満足し得る方法ではなかった。
【0004】
また、一般式(9)で示されるアミノクロモン誘導体は、一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体と水素を、パラジウム触媒の存在下に反応させることにより製造する方法が知られているが(例えば非特許文献2参照。)、ニトロ基の還元のみならず、2位の炭素−炭素二重結合部位や4位のカルボニル部位の還元も進行しやすいため、2位の炭素−炭素二重結合部位や4位のカルボニル部位も還元された過還元体が副生しやすく、そのため、一般式(9)で示されるアミノクロモン誘導体の収率が低く、工業的には改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−95144号公報
【非特許文献1】
Eur.J.Med.Chem.,32,547(1997)
【非特許文献2】
J.Chem.Soc.(C),2230(1970)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、上記一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体および上記一般式(9)で示されるアミノクロモン誘導体の工業的により有利な製造方法について鋭意検討したところ、ニトロフェノール類から容易に誘導可能な下記一般式(1)
Figure 0004422420
(式中、R1およびR2は、それぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
で示されるジカルボン酸誘導体と酸類を反応させることにより、一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体が得られること、該ニトロクロモン誘導体を、有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下に水素と反応させることにより、過還元体の副生を抑制し、一般式(9)で示されるアミノクロモン誘導体を収率よく得ることができることを見いだし、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、一般式(1)
Figure 0004422420
(式中、R1およびR2は、それぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
で示されるジカルボン酸誘導体と酸類とを反応させることを特徴とする一般式(2)
Figure 0004422420
(式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるニトロクロモン誘導体の製造方法および有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下、前記一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体と水素を反応させることを特徴とする一般式(9)
Figure 0004422420
(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノクロモン誘導体の製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、一般式(1)
Figure 0004422420
で示されるジカルボン酸誘導体(以下、ジカルボン酸誘導体(1)と略記する。)について説明する。
【0009】
ジカルボン酸誘導体(1)の式中、R1およびR2は、それぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0010】
ジカルボン酸誘導体(1)には、−CO21で示される基と−CO22で示される基が、炭素−炭素二重結合に対して、同じ側にあるマレイン酸誘導体と反対側にあるフマル酸誘導体の2つの幾何異性体が存在するが、本発明には、いずれか一方の幾何異性体を用いてもよいし、2つの幾何異性体の混合物を用いてもよい。2つの幾何異性体の混合物を用いる場合、幾何異性体の混合割合は任意である。
【0011】
かかるジカルボン酸誘導体(1)としては、例えば2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチル、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチル、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチル、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチル、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチル、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチル、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジエチル、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジエチル、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸ジエチル、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジエチル、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジエチル、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジエチル、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−プロピル)、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−プロピル)、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−プロピル)、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−プロピル)、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−プロピル)、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−プロピル)、
【0012】
2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−ブチル)、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−ブチル)、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−ブチル)、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−ブチル)、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−ブチル)、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−ブチル)、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(tert−ブチル)、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(tert−ブチル)、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(tert−ブチル)、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(tert−ブチル)、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(tert−ブチル)、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(tert−ブチル)、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−ヘキシル)、2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−ヘキシル)、2−(3−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−ヘキシル)、2−(3−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−ヘキシル)、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジ(n−ヘキシル)、2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジ(n−ヘキシル)等の単独または混合物が挙げられる。
【0013】
続いて、かかるジカルボン酸誘導体(1)と酸類とを反応させて、一般式(2)
Figure 0004422420
(式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるニトロクロモン誘導体(以下、ニトロクロモン誘導体(2)と略記する。)を製造する方法について、説明する。
【0014】
酸類としては、例えば発煙硫酸、濃硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロスルホン酸等の単独または混合物が挙げられ、なかでもクロロスルホン酸、濃硫酸、クロロスルホン酸と濃硫酸の混合物が好ましい。
【0015】
かかる酸類の使用量は、ジカルボン酸誘導体(1)に対して、通常1重量倍以上である。その上限は特にないが、容積効率や経済性を考慮すると、実用的には、ジカルボン酸誘導体(1)に対して、50重量倍以下である。なお、ジカルボン酸誘導体(1)として、後述するジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)とを反応させて得られるジカルボン酸誘導体(1)を含む反応液をそのまま用いた場合には、該反応液中に残存する塩基を中和するための酸量を考慮して酸の使用量を決めればよい。
【0016】
ジカルボン酸誘導体(1)と酸類との反応は、その両者を混合、接触させればよく、その混合順序は特に制限されないが、酸類にジカルボン酸誘導体(1)を加えることが好ましい。
【0017】
また、ジカルボン酸誘導体(1)と酸類との反応は通常無溶媒で実施されるが、有機溶媒の存在下に実施してもよい。有機溶媒としては、酸類と反応しないものであれば特に制限されない。また、反応温度は、用いる酸類の種類によって異なるが、通常0〜150℃、好ましくは50〜120℃である。
【0018】
反応終了後、例えば得られたニトロクロモン誘導体(2)を含む反応液と、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等の用いた酸類に不活性で分液し得る溶媒を混合し、分液処理することにより、ニトロクロモン誘導体(2)を含む有機層を得ることができ、該有機層を濃縮処理することにより、ニトロクロモン誘導体(2)を取り出すことができる。
【0019】
また、ニトロクロモン誘導体(2)を含む反応液に、水を作用せしめることにより、一般式(3)
Figure 0004422420
で示されるニトロクロモン誘導体(以下、ニトロクロモン誘導体(3)と略記する。)を得ることもできる。
【0020】
ニトロクロモン誘導体(2)を含む反応液に作用せしめる水の使用量は特に制限されないが、ニトロクロモン誘導体(2)に対して、通常0.5〜100重量倍であり、好ましくは1〜20重量倍である。なお、前記反応液に作用せしめる水として、例えば塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を含んだ水を用いてもよい。
【0021】
ニトロクロモン誘導体(2)を含む反応液に水を加えてもよいし、前記反応液を水に加えてもよいが、前記反応液を水に加えることが好ましい。前記反応液に水を作用せしめる温度は、通常0〜100℃である。
【0022】
ニトロクロモン誘導体(2)を含む反応液に水を作用せしめることにより、ニトロクロモン誘導体(3)が得られるが、通常ニトロクロモン誘導体(3)は、結晶として析出しており、水を作用せしめた後、そのままもしくは冷却処理した後、濾過処理することにより、ニトロクロモン誘導体(3)を取り出すことができる。水を作用せしめる条件によっては、ニトロクロモン誘導体(2)の2位の−CO21で示される基の加水分解反応が完全に進行せず、ニトロクロモン誘導体(3)とニトロクロモン誘導体(2)の混合物が得られることもある。
【0023】
かくして得られるニトロクロモン誘導体(2)としては、例えば5−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0024】
5−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0025】
5−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0026】
5−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン等が挙げられる。
【0027】
また、ニトロクロモン誘導体(3)としては、5−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが挙げられる。
【0028】
また、前記で得られたニトロクロモン誘導体(3)は、エステル化せしめることにより、一般式(4)
Figure 0004422420
(式中、R3は低級アルキル基を表わす。)
で示されるニトロクロモン誘導体(以下、ニトロクロモン誘導体(4)と略記する。)に導くこともできる。
【0029】
ニトロクロモン誘導体(3)をエステル化せしめる方法としては、公知のカルボン酸類をエステル化する方法、例えば酸触媒の存在下に、低級アルコール類を作用せしめる方法、カルボン酸類をカルボン酸ハロゲン化物に変換した後、低級アルコール類を作用せしめる方法、有機溶媒中、塩基の存在下にアルキル化剤を作用せしめる方法等が挙げられる(例えば日本化学会編 実験化学講座 第四版第22巻 43頁、日本化学会編 新実験化学講座 第14巻 1002頁、Comprehensive Organic Functional Group Transformations,,121(1995)等)。なかでも、有機溶媒中、塩基の存在下にアルキル化剤を作用せしめる方法が好ましい。
【0030】
以下、ニトロクロモン誘導体(3)をエステル化せしめる方法の代表例として、有機溶媒中、塩基の存在下、ニトロクロモン誘導体(3)にアルキル化剤を作用せしめて、ニトロクロモン誘導体(4)を得る方法について説明する。
【0031】
有機溶媒としては、例えば水、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等の非プロトン性極性溶媒、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒の単独または混合溶媒が好ましい。かかる有機溶媒の使用量は、ニトロクロモン誘導体(3)に対して、通常1〜50重量倍である。
【0032】
塩基としては、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、例えば水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の三級アミン類、例えばピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン等のピリジン類等の単独または混合物が挙げられる。なかでも三級アミン類が好ましい。
【0033】
かかる塩基の使用量は特に制限されないが、あまり多いと経済的に不利になりやすく、また煩雑な精製処理が必要となりやすいため、実用的には、ニトロクロモン誘導体(3)に対して、0.8〜5モル倍、好ましくは0.9〜3モル倍である。
【0034】
アルキル化剤としては、例えば塩化メチル、塩化エチル、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、塩化n−ブチル、塩化イソブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化n−プロピル、臭化イソプロピル、臭化n−ブチル、臭化イソブチル、臭化n−ペンチル、臭化n−ヘキシル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化n−ブチル、ヨウ化イソブチル、ヨウ化n−ペンチル、ヨウ化n−ヘキシル等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル類、例えばメタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸n−プロピル、メタンスルホン酸イソプロピル、クロロメタンスルホン酸メチル、クロロメタンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸イソプロピル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ノナフルオロブタンスルホン酸メチル、ノナフルオロブタンスルホン酸エチル等のスルホン酸アルキルエステル類、例えば硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸ジアルキル類等が挙げられ、硫酸ジアルキル類が好ましい。
【0035】
アルキル化剤の使用量は特に制限されないが、あまり多いと経済的に不利になりやすく、また煩雑な精製処理も必要となりやすいため、実用的には、ニトロクロモン誘導体(3)に対して、0.8〜5モル倍、好ましくは0.9〜3モル倍である。また、反応温度は、反応液の凝固点より高い温度〜反応液の還流温度の範囲であればよく、好ましくは10〜100℃である。
【0036】
反応終了後、例えば反応液に、必要に応じて水および水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、ニトロクロモン誘導体(4)を取り出すことができる。
【0037】
かかるニトロクロモン誘導体(4)としては、例えば5−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0038】
5−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0039】
5−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0040】
5−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−ニトロ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン等が挙げられる。
【0041】
続いて、原料であるジカルボン酸誘導体(1)の製造方法について説明する。ジカルボン酸誘導体(1)のうち、R1およびR2が低級アルキル基であるジカルボン酸誘導体は、例えば一般式(5)
Figure 0004422420
(式中、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、低級アルキル基を表わし、X1はハロゲン原子を表わす。)
で示されるジハロコハク酸誘導体(以下、ジハロコハク酸誘導体(5)と略記する。)および一般式(6)
Figure 0004422420
(式中、RおよびRはそれぞれ上記と同一の意味を表わし、X2およびX3はそのいずれか一方が水素原子を、他方がハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(6)と略記する。)からなる群から選ばれる少なくとも一つと一般式(7)
Figure 0004422420
で示されるニトロフェノール類(以下、ニトロフェノール類(7)と略記する。)とを、有機溶媒中、塩基の存在下に反応させることにより、容易に得ることができる。
【0042】
ジハロコハク酸誘導体(5)の式中、X1はハロゲン原子を表わし、ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0043】
かかるジハロコハク酸誘導体(5)としては、例えば2,3−ジクロロコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジヨードコハク酸ジメチル、2,3−ジクロロコハク酸ジエチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,3−ジヨードコハク酸ジエチル、2,3−ジクロロコハク酸ジ(n−プロピル)、2,3−ジブロモコハク酸ジ(n−プロピル)、2,3−ジヨードコハク酸ジ(n−プロピル)、2,3−ジクロロコハク酸ジイソプロピル、2,3−ジブロモコハク酸ジイソプロピル、2,3−ジヨードコハク酸ジイソプロピル、2,3−ジクロロコハク酸ジ(n−ブチル)、2,3−ジブロモコハク酸ジ(n−ブチル)、2,3−ジヨードコハク酸ジ(n−ブチル)、2,3−ジクロロコハク酸ジイソブチル、2,3−ジブロモコハク酸ジイソブチル、2,3−ジヨードコハク酸ジイソブチル、2,3−ジクロロコハク酸ジ(sec−ブチル)、2,3−ジブロモコハク酸ジ(sec−ブチル)、2,3−ジヨードコハク酸ジ(sec−ブチル)、2,3−ジクロロコハク酸ジ(tert−ブチル)、2,3−ジブロモコハク酸ジ(tert−ブチル)、2,3−ジヨードコハク酸ジ(tert−ブチル)、2,3−ジクロロコハク酸ジ(n−ペンチル)、2,3−ジブロモコハク酸ジ(n−ペンチル)、2,3−ジヨードコハク酸ジ(n−ペンチル)、2,3−ジクロロコハク酸ジ(n−ヘキシル)、2,3−ジブロモコハク酸ジ(n−ヘキシル)、2,3−ジヨードコハク酸ジ(n−ヘキシル)等が挙げられる。
【0044】
かかるジハロコハク酸誘導体(5)は、フィッシャー投影式で表記した場合、二つの置換基X1が、同一側に配置されるエリスロ体と反対側に配置されるスレオ体が存在するが、本反応には、エリスロ体またはスレオ体のいずれか一方を用いてもよいし、エリスロ体とスレオ体の混合物を用いてもよい。エリスロ体とスレオ体の混合物を用いる場合、その混合割合は任意である。スレオ体の方が、エリスロ体よりも反応性が高いため、スレオ体単独もしくはスレオ体の含有割合が高いエリスロ体とスレオ体の混合物を用いることが好ましい。スレオ体の含有割合が高いエリスロ体とスレオ体の混合物を用いる場合のスレオ体の含有割合は、70重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。
【0045】
かかるジハロコハク酸誘導体(5)は、市販されているものを用いてもよいし、例えば特開昭56−90017号公報記載の方法に準じて、フマル酸化合物もしくはマレイン酸化合物と、ハロゲン化剤とを反応させることにより製造したものを用いてもよい。
【0046】
フマル酸化合物もしくはマレイン酸化合物としては、例えばフマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジ(n−プロピル)、マレイン酸ジ(n−プロピル)、フマル酸ジイソプロピル、マレイン酸ジイソプロピル、フマル酸ジ(n−ブチル)、マレイン酸ジ(n−ブチル)、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、フマル酸ジ(sec−ブチル)、マレイン酸ジ(sec−ブチル)、フマル酸ジ(tert−ブチル)、マレイン酸ジ(tert−ブチル)、フマル酸ジ(n−ペンチル)、マレイン酸ジ(n−ペンチル)、フマル酸ジ(n−ヘキシル)、マレイン酸ジ(n−ヘキシル)等が挙げられる。ハロゲン化剤としては、例えば塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0047】
化合物(6)の式中、X2およびX3はそのいずれか一方が水素原子を、他方がハロゲン原子を表わし、ハロゲン原子としては、上記したものと同様のものが挙げられる。かかる化合物(6)も、−CO2で示される基と−CO2で示される基が、炭素−炭素二重結合に対して、同じ側にあるE体(マレイン酸型構造)と反対側にあるZ体(フマル酸型構造)が存在するが、そのいずれか一方を用いてもよいし、両者の任意の割合の混合物を用いてもよい。Z体の方が、E体よりも反応性が高いため、Z体単独もしくはZ体の含有割合の高いE体とZ体の混合物を用いることが好ましい。Z体の含有割合の高いE体とZ体の混合物を用いる場合のZ体の含有割合は、70重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。
【0048】
かかる化合物(6)としては、例えば2−クロロフマル酸ジメチル、2−クロロマレイン酸ジメチル、2−ブロモフマル酸ジメチル、2−ブロモマレイン酸ジメチル、2−ヨードフマル酸ジメチル、2−ヨードマレイン酸ジメチル、2−クロロフマル酸ジエチル、2−クロロマレイン酸ジエチル、2−ブロモフマル酸ジエチル、2−ブロモマレイン酸ジエチル、2−ヨードフマル酸ジエチル、2−ヨードマレイン酸ジエチル、2−クロロフマル酸ジ(n−プロピル)、2−クロロマレイン酸ジ(n−プロピル)、2−ブロモフマル酸ジ(n−プロピル)、2−ブロモマレイン酸ジ(n−プロピル)、2−ヨードフマル酸ジ(n−プロピル)、2−ヨードマレイン酸ジ(n−プロピル)、2−クロロフマル酸ジイソプロピル、2−クロロマレイン酸ジイソプロピル、2−ブロモフマル酸ジイソプロピル、2−ブロモマレイン酸ジイソプロピル、2−ヨードフマル酸ジイソプロピル、2−ヨードマレイン酸ジイソプロピル、
【0049】
2−クロロフマル酸ジ(n−ブチル)、2−クロロマレイン酸ジ(n−ブチル)、2−ブロモフマル酸ジ(n−ブチル)、2−ブロモマレイン酸ジ(n−ブチル)、2−ヨードフマル酸ジ(n−ブチル)、2−ヨードマレイン酸ジ(n−ブチル)、2−クロロフマル酸ジイソブチル、2−クロロマレイン酸ジイソブチル、2−ブロモフマル酸ジイソブチル、2−ブロモマレイン酸ジイソブチル、2−ヨードフマル酸ジイソブチル、2−ヨードマレイン酸ジイソブチル、2−クロロフマル酸ジ(sec−ブチル)、2−クロロマレイン酸ジ(sec−ブチル)、2−ブロモフマル酸ジ(sec−ブチル)、2−ブロモマレイン酸ジ(sec−ブチル)、2−ヨードフマル酸ジ(sec−ブチル)、2−ヨードマレイン酸ジ(sec−ブチル)、2−クロロフマル酸ジ(sec−ブチル)、2−クロロマレイン酸ジ(sec−ブチル)、2−ブロモフマル酸ジ(sec−ブチル)、2−ブロモマレイン酸ジ(sec−ブチル)、2−ヨードフマル酸ジ(sec−ブチル)、2−ヨードマレイン酸ジ(sec−ブチル)、2−クロロフマル酸ジ(tert−ブチル)、2−クロロマレイン酸ジ(tert−ブチル)、2−ブロモフマル酸ジ(tert−ブチル)、2−ブロモマレイン酸ジ(tert−ブチル)、2−ヨードフマル酸ジ(tert−ブチル)、2−ヨードマレイン酸ジ(tert−ブチル)、
【0050】
2−クロロフマル酸ジ(n−ペンチル)、2−クロロマレイン酸ジ(n−ペンチル)、2−ブロモフマル酸ジ(n−ペンチル)、2−ブロモマレイン酸ジ(n−ペンチル)、2−ヨードフマル酸ジ(n−ペンチル)、2−ヨードマレイン酸ジ(n−ペンチル)、2−クロロフマル酸ジ(n−ヘキシル)、2−クロロマレイン酸ジ(n−ヘキシル)、2−ブロモフマル酸ジ(n−ヘキシル)、2−ブロモマレイン酸ジ(n−ヘキシル)、2−ヨードフマル酸ジ(n−ヘキシル)、2−ヨードマレイン酸ジ(n−ヘキシル)等が挙げられる。
【0051】
かかる化合物(6)は、例えば上記ジハロコハク酸誘導体(5)と塩基を反応させることにより得ることができる。塩基としては、例えばトリエチルアミン等の有機塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基等が挙げられ、その使用量は、ジハロコハク酸誘導体(5)に対して、通常1〜2モル倍である。
【0052】
反応条件等によっては、ジハロコハク酸誘導体(5)の一部が未反応のまま残存し、ジハロコハク酸誘導体(5)と化合物(6)との混合物が得られることもあるが、該混合物をニトロフェノール類(7)との反応に用いてもよい。
【0053】
ニトロフェノール類(7)としては、2−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、4−ニトロフェノールが挙げられる。
【0054】
ジカルボン酸誘導体(1)は、ジハロコハク酸誘導体(5)または化合物(6)のいずれか一方とニトロフェノール類(7)とを反応させて製造してもよいし、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)との混合物とニトロフェノール類(7)とを反応させて製造してもよい。
【0055】
ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)のうち、いずれか一方を他方に対して1モル倍以上用いればよい。
【0056】
ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)との反応は、有機溶媒中で実施され、有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等の非プロトン性極性溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジメチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン等のピリジン系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、好ましくは非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素系溶媒およびハロゲン化炭化水素系溶媒の単独もしくは混合溶媒が挙げられる。その使用量は、ニトロフェノール類(7)に対して、通常2〜50重量倍である。
【0057】
塩基としては、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、例えば水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、例えばトリエチルアミン、ピリジン等の有機アミン類等の単独または混合物が挙げられ、アルカリ金属水素化物およびアルカリ金属炭酸塩が好ましく、アルカリ金属炭酸塩がより好ましい。
【0058】
塩基の使用量は、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)の使用量に応じて、適宜設定すればよい。例えばジハロコハク酸誘導体(5)とニトロフェノール類(7)とを反応させる場合であって、ニトロフェノール類(7)の使用量が少ないときの塩基の使用量は、ニトロフェノール類(7)に対して、通常2モル倍以上であり、ジハロコハク酸誘導体(5)の使用量が少ないときの塩基の使用量は、ジハロコハク酸誘導体(5)に対して、通常2モル倍以上である。また例えば化合物(6)とニトロフェノール類(7)とを反応させる場合であって、ニトロフェノール類(6)の使用量が少ないときの塩基の使用量は、ニトロフェノール類(7)に対して、通常1モル倍以上であり、化合物(6)の使用量が少ないときの塩基の使用量は、化合物(6)に対して、通常2モル倍以上である。塩基の使用量の上限は特にないが、あまり多いと経済的に不利になりやすいため、実用的には、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)のうち、使用量の少ない方に対して、10モル倍以下、好ましくは5モル倍以下である。
【0059】
反応温度は、通常20〜150℃である。また、反応は、通常有機溶媒中で、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)と塩基とを混合、接触させればよく、その混合順序は特に制限されないが、ニトロフェノール類(7)と塩基との混合物に、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つを混合することが好ましい。
【0060】
相間移動触媒を反応系に共存させることにより、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)との反応をよりスムーズに進行させ、ジカルボン酸誘導体(1)をより収率よく得ることができる。
【0061】
相間移動触媒としては、例えば塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ(n−プロピル)アンモニウム、塩化テトライソプロピルアンモニウム、塩化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム等の塩化第四級アンモニウム塩、例えば臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ(n−プロピル)アンモニウム、臭化テトライソプロピルアンモニウム、臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、臭化トリメチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム等の臭化第四級アンモニウム塩、例えばヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラ(n−プロピル)アンモニウム、ヨウ化テトライソプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、ヨウ化トリメチルベンジルアンモニウム、ヨウ化トリエチルベンジルアンモニウム等のヨウ化第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
相間移動触媒を用いる場合の使用量は、ジハロコハク酸誘導体(5)および化合物(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つとニトロフェノール類(7)のうち、使用量の少ない方に対して、通常0.005〜0.5モル倍、好ましくは0.01〜0.2モル倍である。
【0063】
反応終了後、ジカルボン酸誘導体(1)を含む反応液が得られ、例えば該反応液に水および必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加え、分液処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、ジカルボン酸誘導体(1)を取り出し、酸類との反応に用いることができる。取り出したジカルボン酸誘導体(1)は、通常の精製手段によりさらに精製した後、用いてもよい。また前記分液処理により得られたジカルボン酸誘導体(1)を含む有機層を、そのままもしくは洗浄処理した後、用いてもよい。また前記反応液をそのまま、不溶分が含まれる場合には、必要に応じて該不溶分を濾過等により除去した後、用いてもよい。
【0064】
ジカルボン酸誘導体(1)のうち、R1およびR2が水素原子であるジカルボン酸誘導体は、前記で得られたR1およびR2が低級アルキル基であるジカルボン酸誘導体を、例えばAust.J.Chem.,48,677(1995)等に記載の公知の方法に準じて、加水分解処理することにより、得ることができる。
【0065】
続いて、有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下、ニトロクロモン誘導体(2)と水素を反応させて、一般式(9)
Figure 0004422420
(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノクロモン誘導体(以下、アミノクロモン誘導体(9)と略記する。)を製造する方法について説明する。かかる方法により、ニトロ基の還元のみならず、2位の炭素−炭素二重結合部位や4位のカルボニル部位も還元された過還元体の副生を抑制し、収率よくアミノクロモン誘導体(9)を得ることができる。
【0066】
金属触媒の金属種としては、例えばパラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、コバルト等の後周期遷移金属が挙げられる。金属触媒としては、かかる金属種が、例えば活性炭、シリカ、アルミナ等の担体に担持された、例えばパラジウム/炭素、白金/炭素、ロジウム/炭素、ルテニウム/炭素、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ等の不均一系金属触媒、例えばクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル等の均一系金属触媒が挙げられる。
【0067】
かかる金属触媒の使用量は、ニトロクロモン誘導体(2)に対して、通常金属重量換算で0.00001〜0.01重量倍である。かかる金属触媒は、そのまま用いてもよいし、例えば水に安定な金属触媒であれば、水と混合して用いてもよい。
【0068】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、例えばリン酸一水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩、例えばトリエチルアミン、トリ(n−ブチル)アミン、ジメチルアニリン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン等の第三級アミン類、例えばピリジン、2−メチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類等が挙げられ、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属カルボン酸塩、第三級アミン類、ピリジン類が好適であり、なかでもアルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属カルボン酸塩が特に好適である。かかる塩基はそれぞれ単独で用いてもよいし、二つ以上を混合して用いてもよい。また、そのまま用いてもよいし、例えば前記触媒、後述する有機溶媒や水と混合して用いてもよい。
【0069】
かかる塩基の使用量は、ニトロクロモン誘導体(2)に対して、通常0.01モル倍以上であり、その上限は特に制限なく、例えば反応条件下で液体である塩基であれば、反応溶媒を兼ねて、大過剰量用いてもよいが、経済的な面等も考慮すると、実用的には、ニトロクロモン誘導体(2)に対して、5モル倍以下である。
【0070】
反応温度は通常0〜100℃である。水素の使用量は、ニトロクロモン誘導体(2)に対して、通常3モル倍以上であり、その上限は特に制限されない。水素は単独で用いてもよいし、例えば窒素等の反応に不活性な気体と混合して用いてもよい。
【0071】
反応は、常圧で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。加圧条件下で実施する場合は、実用的な面も考慮して、5MPa以下の加圧条件下で実施することが好ましい。
【0072】
反応は、通常有機溶媒もしくは水と有機溶媒の混合溶媒の存在下に実施され、有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジメチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられる。また、塩基として、反応条件下で液体の塩基を用いる場合には、該塩基を溶媒として用いてもよい。かかる有機溶媒の使用量は、ニトロクロモン誘導体(2)に対して、通常2〜50重量倍である。水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合の有機溶媒に対する水の使用割合は、通常0.01〜500重量%である。
【0073】
本反応は、通常ニトロクロモン誘導体(2)、金属触媒、塩基および有機溶媒の混合物に、水素を加えることにより実施される。
【0074】
不均一系金属触媒を用いた場合には、通常反応液から、該不均一系金属触媒を濾過処理により除去することにより、アミノクロモン誘導体(9)を含む溶液が得られ、該溶液を濃縮処理することにより、アミノクロモン誘導体(9)を取り出すことができる。また、該溶液を晶析処理することにより、アミノクロモン誘導体(9)を取り出すこともできる。晶析処理としては、例えば前記溶液を一部濃縮処理する方法、そのままもしくは一部濃縮処理した後に冷却処理する方法、前記溶液と貧溶媒(アミノクロモン誘導体(9)の溶解度が低い溶媒)を混合する方法等が挙げられる。
【0075】
かかる方法では、ニトロクロモン誘導体(2)のニトロ基だけでなく、2位の炭素−炭素二重結合部位や4位のカルボニル部位の還元も進行した過還元体の副生が抑制されているため、純度の良好なアミノクロモン誘導体(9)を取り出すことができるが、取り出したアミノクロモン誘導体(9)を、例えば再結晶等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。なお、前記不均一系金属触媒の除去の際に、酸類を添加してもよく、酸類としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。酸類の添加量は、用いた塩基に対して、通常0.1〜3モル倍である。不均一系金属触媒除去の際に酸類を添加した場合には、酸類の添加量によって、アミノクロモン誘導体(9)とアミノクロモン誘導体(9)の酸付加塩との混合物あるいはアミノクロモン誘導体(9)の酸付加塩の単独が得られることがある。
【0076】
均一系金属触媒を用いた場合は、例えば反応液をそのまま晶析処理することにより、アミノクロモン誘導体(9)を取り出してもよいし、反応液中の触媒を凝集・濾過処理により除去した後、濃縮処理、晶析処理等を行い、取り出してもよい。
【0077】
かくして、得られるアミノクロモン誘導体(9)としては、例えば5−アミノ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−(n−プロポキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0078】
5−アミノ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−イソプロポキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−(n−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−イソブトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、
【0079】
5−アミノ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−(tert−ブトキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−(n−ペンチルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、5−アミノ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、6−アミノ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、7−アミノ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン、8−アミノ−2−(n−ヘキシルオキシカルボニル)−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン等が挙げられる。
【0080】
かかるアミノクロモン誘導体(9)のうち、2位の置換基がエステル基、すなわちRが低級アルキル基であるアミノクロモン誘導体は、アシル化することにより、アミノ基がアシル化されたN−アシルアミノクロモン誘導体に容易に導くことができる。かかるアミノクロモン誘導体のアシル化は、通常アミノクロモン誘導体とアシル化剤を混合、接触させることにより実施される。アシル化剤としては、例えばカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、活性化されたカルボン酸等が挙げられ、カルボン酸ハロゲン化物が好ましい。かかるアシル化剤の使用量は、アミノクロモン誘導体に対して、通常1〜5モル倍である。
【0081】
カルボン酸ハロゲン化物としては、例えば酢酸クロリド、安息香酸クロリド、4−(4−フェニルブトキシ)安息香酸クロリド等の脂肪族または芳香族カルボン酸ハロゲン化物が挙げられる。カルボン酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水安息香酸等の脂肪族または芳香族カルボン酸無水物が挙げられる。活性化されたカルボン酸としては、例えば1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドで活性化された酢酸、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドで活性化された安息香酸、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドで活性化された4−(4−フェニルブトキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0082】
アミノクロモン誘導体のアシル化は、通常有機溶媒の存在下に実施される。有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられ、その使用量は、アミノクロモン誘導体に対して、通常2〜50重量倍である。
【0083】
アシル化温度は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜100℃である。
【0084】
アミノクロモン誘導体をアシル化する際に、塩基を共存させてもよい。塩基としては、無機塩基、有機塩基いずれを用いてもよい。無機塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。有機塩基としては、例えばトリエチルアミン等の三級アミン、例えばピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン等のピリジン類等が挙げられる。かかる塩基はそのまま用いてもよいし、例えば水や前記有機溶媒と混合して用いてもよい。かかる塩基を用いる場合のその使用量は、アミノクロモン誘導体に対して、通常1〜5モル倍である。なお、かかる塩基のうち、反応条件下で液体である塩基は、反応溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよい。
【0085】
アミノクロモン誘導体をアシル化した後、得られる反応液を、例えば抽出処理、濃縮処理等の通常の後処理することにより、N−アシルアミノクロモン誘導体を取り出すことができる。
【0086】
また、得られたN−アシルアミノクロモン誘導体は、アンモニアと反応させることによりカルバモイルクロモン誘導体に、また、該カルバモイルクロモン誘導体は、脱水剤と反応させることにより、クロモンニトリル誘導体にそれぞれ容易に導くことができる(下記反応スキーム参照。)。
Figure 0004422420
【0087】
N−アシルアミノクロモン誘導体とアンモニアの反応および得られたカルバモイルクロモン誘導体と脱水剤との反応は、例えば特開平3−95144号公報、特開昭61−50977号公報、特開平7−25842号公報、特開平7−53491号公報等に記載されている方法に準じて実施すればよい。
【0088】
例えば、N−アシルクロモン誘導体とアンモニアとの反応は、例えばメタノール等の低級アルコール、前記芳香族炭化水素系溶媒、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒、前記エーテル系溶媒、前記非プロトン性極性溶媒等の反応に不活性な溶媒中で実施され、アンモニアとしては、アンモニア水、アンモニアガス、アンモニアの前記溶媒溶液のいずれを用いてもよい。
【0089】
また、カルバモイルクロモン誘導体との反応で用いられる脱水剤としては、例えばオキシ塩化リン、塩化チオニル等が挙げられる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、分析は高速液体クロマトグラフィにより行った。
【0091】
実施例1
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸250重量部を仕込んだ。これに、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルを含む混合物(含量:82.1重量%、フマル酸/マレイン酸比=58/42)50重量部を、内温50℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、内温70℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:92%)。反応液を室温まで冷却後、水300重量部にゆっくり注加し、内温60℃で1時間保温した後、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランと8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶混合物30重量部を得た(8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:58.5重量%、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:39.8重量%)。8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、32%、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、50%であった。
【0092】
実施例2
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸25重量部を仕込んだ後、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸と2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸とを含む混合物(含量:65.7重量%)5重量部を加えた。その後、内温60℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:70%)。反応液を室温まで冷却後、水50重量部にゆっくり注加し、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶2.2重量部を得た(含量:96.9重量%、取得率:65%)。
【0093】
実施例3
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸15重量部を仕込んだ後、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジエチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジエチルとを含む混合物(含量:84.4重量%、フマル酸/マレイン酸比=49/51)3重量部を、内温50℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、内温70℃に昇温し、同温度で7時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:70%)。反応液を室温まで冷却後、水24重量部にゆっくり注加し、内温60℃で1時間保温した後、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶1.3重量部を得た(含量:86.4重量%)。取得率:64%。なお、該結晶中には、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、0.1重量%含まれていた。
【0094】
実施例4
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、発煙硫酸20重量部を仕込んだ後、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸と2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸とを含む混合物(含量:65.7重量%)2重量部を加えた。その後、内温25℃で2時間、さらに内温50℃で2時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:35%)。反応液を室温まで冷却した後、水40重量部にゆっくり注加し、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶0.28重量部を得た(含量:95.2重量%、取得率:20%)。
【0095】
実施例5
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸300重量部を仕込んだ。これに、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルを含む混合物(含量:81.1重量%、フマル酸/マレイン酸比=57/43)60重量部を、内温50℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、内温60℃に昇温し、同温度で5時間、内温70℃で3時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:86%)。反応液を室温まで冷却後、水360重量部にゆっくり注加し、内温60℃で8時間保温した後、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶30重量部を得た(含量:96.7重量%)。取得率:73%。なお、該結晶中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、2.5重量%含まれていた。
【0096】
実施例6
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、室温でトルエン60重量部およびスルホラン20重量部を仕込み、さらに2−ニトロフェノール20重量部を加えた。これに、炭酸カリウム60重量部をゆっくり加え、内温100℃に昇温し、同温度で1時間攪拌、保持した。内温80℃に冷却し、臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム4.7重量部を加え、エリスロ−2,3−ジブロモコハク酸ジメチル50重量部とトルエン40重量部とからなる混合溶液を4時間かけて滴下し、同温度で7時間攪拌、保持し、反応させた。反応液を室温まで冷却し、水180重量部を加えて分液処理し、得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで5重量%食塩水で洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを含む混合物(油状)42.4重量部を得た。2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを合わせた含量:82.0重量%、2−ニトロフェノールに対する収率:86.1%。
【0097】
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸200重量部を仕込み、上記で得た2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを含む混合物40重量部を内温50℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、内温70℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、反応させ、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(2−ニトロフェノールに対する反応収率:80%)。該反応液を室温まで冷却した後、水200重量部に反応液をゆっくり、内温が60℃以下を保つよう注加した。内温60℃に調整し、同温度で1時間保温後、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶19.2重量部を得た(含量:85.7重量%)。2−ニトロフェノールに対する8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、51.4%であった。なお、該結晶中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、9.5重量%含まれていた。
【0098】
実施例7
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、室温でトルエン10.5重量部およびスルホラン3重量部を仕込み、さらに2−ニトロフェノール3重量部を加えた。これに、炭酸カリウム6重量部をゆっくり加え、内温100℃に昇温し、同温度で1時間攪拌、保持した。内温80℃に冷却し、臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム0.7重量部を加え、2−ブロモフマル酸ジメチルと2−ブロモマレイン酸ジメチルとを含む混合物5.5重量部とトルエン7.5重量部とからなる混合溶液を3時間かけて滴下し、同温度で5時間攪拌、保持し、反応させた。反応液を室温まで冷却し、水21重量部を加えて分液処理し、得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで5重量%食塩水で洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを含む混合物(油状)5.8重量部を得た。2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを合わせた含量:81.4重量%、2−ニトロフェノールに対する収率:77.7%。
【0099】
2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルの1H−NMRスペクトル(DMSO−d6溶媒,TMS基準,単位:ppm)
δ8.16(1H,d),7.85(1H,t),7.55(1H,t),7.50(1H,d),5.56(1H,s),3.82(3H,s),3.64(3H,s)
【0100】
2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルの1H−NMRスペクトル(DMSO−d6溶媒,TMS基準,単位:ppm)
δ8.05(1H,d),7.65(1H,t),7.34(1H,t),7.20(1H,d),6.80(1H,s),3.74(3H,s),3.68(3H,s)
【0101】
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸20重量部を仕込み、上記で得た2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを含む混合物4重量部を内温50℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、内温70℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、反応させ、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(2−ニトロフェノールに対する反応収率:72.7%)。該反応液を室温まで冷却した後、水24重量部に反応液をゆっくり、内温が60℃以下を保つよう注加した。内温60℃に調整し、同温度で1時間保温後、内温0℃まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランと8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶混合物2.0重量部を得た(8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:36.9重量%、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:61.2重量%)。
【0102】
2−ニトロフェノールに対する8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、19.3%、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、34.0%であった。
【0103】
実施例8
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸50.2重量部を仕込んだ。これに、濃硫酸(含量:98重量%)25.1重量部を1時間かけて滴下した後、内温60℃に昇温した。2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルを含む混合物(含量:89.6重量%、フマル酸/マレイン酸比=54/46)25.6重量部を、内温60℃に保ちながら6時間かけて滴下した。滴下終了後、内温95℃に昇温し、同温度で4時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:88%)。反応液を、水113重量部にゆっくり注加し(この間、内温は85℃以下を保った)、内温85℃で6時間保温した後、内温25℃まで徐々に冷却した。析出結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶16.7重量部を得た(含量:96.0重量%)。取得率:81.5%。なお、該結晶中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、3.8重量%含まれていた。
【0104】
実施例9
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、室温でトルエン44.1重量部、スルホラン4.2重量部、炭酸カリウム21.1重量部および臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム2.0重量部を仕込んだ。これを、内温105℃に昇温した後、2−ニトロフェノール17.0重量部を含むトルエン溶液34.3重量部を2時間かけて滴下した。同温度で1時間攪拌、保持した。内温70℃に冷却し、スレオ−2,3−ジブロモコハク酸ジメチルとエリスロ−2,3−ジブロモコハク酸ジメチルとを含む混合物(スレオ体/エリスロ体比=98/2)40.1重量部を含むトルエン溶液47.7重量部を3時間かけて滴下し、同温度で7時間攪拌、保持し、反応させた。反応液を室温まで冷却し、水51重量部を加えて分液処理し、得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで5重量%食塩水で洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを含む混合物(油状、フマル酸/マレイン酸比=54/46)37.8重量部を得た。2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルとを合わせた含量:89.6重量%、2−ニトロフェノールに対する収率:98.7%。
【0105】
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸50.2重量部を仕込んだ。これに、濃硫酸(含量:98重量%)25重量部を1時間かけて滴下した後、内温60℃まで昇温した。これに、上記で得た2−(2−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(2−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルを含む混合物25.3重量部を、内温60℃に保ちながら4時間かけて滴下した。滴下終了後、内温95℃に昇温し、同温度で4時間攪拌、保持し、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:88%)。反応液を、水113重量部にゆっくり注加し(この間、内温85℃以下に保った)、内温85℃で6時間保温した後、内温25℃まで徐々に冷却した。析出結晶を濾取、乾燥し、8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶16.3重量部を得た(含量:84.6重量%)。取得率:74.0%。なお、該結晶中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、13.8重量%含まれていた。
【0106】
実施例10
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、クロロスルホン酸79.3重量部を仕込んだ。内温60℃まで昇温後、2−(4−ニトロフェノキシ)フマル酸ジメチルと2−(4−ニトロフェノキシ)マレイン酸ジメチルを含む混合物(含量:55.8重量%、フマル酸/マレイン酸比=52/48)20.2重量部を、内温60℃で加えた後、内温100℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持し、6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む反応液を得た(反応収率:95%)。反応液を、内温60℃で水120重量部にゆっくり注加し、同温度で1時間保温した後、内温25℃まで徐々に冷却した。析出結晶を濾取、乾燥し、6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランと6−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶混合物10.8重量部を得た(6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:23.0重量%、6−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:58.5重量%)。6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、24.9%、6−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの取得率は、58.5%であった。
【0107】
実施例11
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、前記実施例1と同様にして得られた8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランと8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶混合物90重量部(6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:51.6重量%、6−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン含量:47.1重量%)、メタノール540重量部および濃硫酸(含量:96重量%)9.78重量部を仕込み、11時間加熱還流させた。その後、室温まで冷却し、6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含むメタノール溶液633重量部を得た。6−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの収率は98%であった。
【0108】
実施例12
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、前記実施例8で得られた8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶9.97重量部(含量:96.0重量%、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン3.8重量%含む)、トルエン29.9重量部およびN,N−ジメチルホルムアミド0.09重量部を仕込み、内温50℃まで昇温した。塩化チオニル5.09重量部を0.5時間で滴下後、同温度で9.5時間保温した。さらに塩化チオニル1.0重量部を仕込み、同温度で2時間保温した後、室温まで冷却した。反応液を約半量になるまで濃縮処理し、得られた残渣を、内温10℃に冷却した後、エタノール2.99重量部を内温が15℃以上にならないように注意しながら、0.5時間かけて滴下した。その後、室温まで昇温し、水19.9重量部を仕込み、固形物をセライト濾過で除去し、濾過残をトルエン10重量部で洗浄処理した。濾液と洗浄液を混合した後、静置、分液処理し、得られた有機層と水10重量部を混合し、10重量%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.5に調整した。水層を分離した後、有機層を濃縮処理し、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの薄黄色固体10.63重量部(含量:94.5重量%)を得た。収率:94%。なお、該固体中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、3.5重量%含まれていた。
【0109】
実施例13
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、前記実施例8で得られた8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶8重量部(含量:96.0重量%、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン3.8重量%含む)および酢酸エチル24重量部を仕込み、トリエチルアミン3.7重量部を加え、内温70℃まで昇温した。ジエチル硫酸5.5重量部を1時間かけて滴下し、同温度で5時間保温した。酢酸エチル54.8重量部および水12重量部を加えた後、室温まで冷却し、分液処理し、得られた有機層を、5重量%硫酸9.7重量部、次いで水8重量部で洗浄処理し、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む有機層84.7重量部(含量:9.9重量%)を得た。収率:98%。なお、該有機層中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、0.3重量%含まれていた。
【0110】
実施例14
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、前記実施例8で得られた8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶0.24重量部(含量:96.0重量%、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン3.8重量%含む)および酢酸エチル0.96重量部を仕込み、水0.02重量部およびトリエチルアミン0.13重量部を加え、内温70℃まで昇温した。ジエチル硫酸0.19重量部を3時間かけて滴下し、同温度で6時間保温した。酢酸エチル0.24重量部および15重量%食塩水0.15重量部を加えた後、内温50℃まで冷却し、分液処理した。得られた有機層に、水0.18重量部および10重量%硫酸0.007重量部を加えた後、分液処理し、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む有機層1.42重量部(含量:17.8重量%)を得た。収率:98%。なお、該有機層中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、0.5重量%含まれていた。
【0111】
実施例15
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、室温でエタノール10重量部、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン(含量:96.4重量%)1重量部、5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.2重量部およびピリジン0.17重量部を仕込み、常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を15〜25℃に保ち、常圧条件下で5時間水素を供給した。その後、窒素置換して、反応を終了させた。反応液を濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。
【0112】
濾別したパラジウム/炭素等の不溶分をアセトニトリルで洗浄し、得られた洗液を先に得た8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液と混合し、得られた混合液を、減圧条件下、濃縮処理し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの黄色結晶0.85重量部を得た。含量は、91重量%であり、取得率は、89%であった。なお、該黄色結晶中には、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン(ニトロ基とともに、2位の炭素−炭素二重結合部位が還元され、4位のカルボニル部位がアルコールに還元されたもの;以下、過還元体Aと略記する。)と8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソクロマン(ニトロ基とともに、2位の炭素−炭素二重結合部位が還元されたもの;以下、過還元体Cと略記する。)が含まれており、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン(過還元体Aの4位のヒドロキシ部位がさらに還元されたもの;以下、過還元体Bと略記する。)は、検出限界以下であった。
過還元体Aの収率:0.5%、過還元体Cの収率:8.2%。
【0113】
実施例16
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、室温で酢酸エチル30重量部、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン(含量:95.4重量%)4重量部、炭酸ナトリウム0.77重量部および5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.38重量部を仕込み、常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を28〜32℃に保ち、常圧条件下で4時間水素を供給した。その後、窒素置換して、反応を終了させた。反応液に、テトラヒドロフラン30重量部を加え、30分攪拌した後、濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの収率は92%であった。過還元体AおよびBは、いずれも検出限界以下であり、過還元体Cが収率4.8%で生成していた。
【0114】
実施例17
実施例16において、炭酸ナトリウム0.77重量部に代えて炭酸水素ナトリウム0.61重量部を用いた以外は実施例16と同様に実施して、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの収率は94%であった。過還元体AおよびBは、いずれも検出限界以下であり、過還元体Cが収率5.2%で生成していた。
【0115】
実施例18
実施例16において、炭酸ナトリウム0.77重量部に代えて酢酸ナトリウム0.59重量部を用い、水素の供給時間を5時間とした以外は実施例16と同様に実施して、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの収率は97%であった。過還元体AおよびBは、いずれも検出限界以下であり、過還元体Cが収率2.9%で生成していた。
【0116】
実施例19
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む酢酸エチル溶液(含量:18重量%)20重量部および酢酸エチル13.4重量部を仕込んだ。さらに、予め酢酸ナトリウム0.56重量部と5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.19重量部とを水1.1重量部に混合しておいた触媒懸濁液を仕込み、常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を38〜42℃に保ち、常圧条件下で4時間水素を供給した。その後、窒素置換して、反応を終了させた。反応液に、アセトニトリル33重量部を加え、30分攪拌した後、濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの収率は94%であった。過還元体AおよびBは、いずれも検出限界以下であり、過還元体Cが収率1.8%で生成していた。
【0117】
実施例20
攪拌装置および温度計を付したガラス製加圧反応容器に、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む酢酸エチル溶液(含量:18重量%)507重量部、酢酸エチル122重量部、酢酸ナトリウム1.4重量部、5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)1.8重量部および水14.4重量部を仕込んだ。0.4MPaで5回窒素置換した後、0.66MPaで5回水素置換した。その後、内温50〜56℃に保ち、水素圧0.66MPaで9時間水素を供給し、反応させた後、窒素置換し、反応を終了させた。内温70℃に昇温し、同温度で濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去した。濾液を静置後、水層を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む有機層を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの収率は93%であった。過還元体AおよびBは、いずれも検出限界以下であり、過還元体Cが収率4%で生成していた。
【0118】
得られた8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む有機層を、攪拌装置、冷却管および温度計を付した容器に仕込み、内温60℃に調整した。減圧度60kPaで濃縮処理し、該有機層から酢酸エチル153重量部を留去した。常圧に戻し、内温58℃で、濃縮残液に種晶を加えた後、内温40℃までゆっくり冷却した後、減圧度26.6kPaで濃縮処理し、酢酸エチル260重量部を留去した。再度常圧に戻し、内温0℃まで冷却し、同温度で1時間保持した後、析出結晶を濾取し、乾燥させた。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン結晶の取得量:66.5重量部(純度:100重量%、結晶の取得率:94%)。8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン基準の取得率:88%
【0119】
比較例1
攪拌装置、冷却管、温度計を付した反応容器に、室温でエタノール10重量部、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン(含量:96.4重量%)1重量部および5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.2重量部を仕込み、常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を15〜25℃に保ち、常圧条件下で5時間水素を供給した。さらに内温40℃で3時間水素を供給した後、窒素置換して、反応を終了させた。反応液を濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。
【0120】
濾別した不溶分をアセトニトリルで洗浄し、洗浄液を先に得た8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液と混合した後、減圧条件下で濃縮処理し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの山吹色のベトベトした結晶0.85重量部を得た。含量は、67重量%であり、取得率は、64%であった。なお、該結晶中には、過還元体A、過還元体Bおよび過還元体Cが含まれていた。
過還元体Aの収率は12.2%、過還元体Cの収率は17.7%であり、過還元体Bは0.1%(LC面積百分率値)であった。
【0121】
比較例2
攪拌装置、冷却管、温度計を付した反応容器に、室温でエタノール10重量部、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン(含量:96.4重量%)1重量部、酢酸0.13重量部および5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.2重量部を仕込み、常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を15〜25℃に保ち、常圧条件下で4時間水素を供給した。さらに内温40℃で2時間水素を供給した後、窒素置換して、反応を終了させた。反応液を濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た。
【0122】
濾別した不溶分をアセトニトリルで洗浄し、洗浄液を先に得た溶液と混合した後、減圧条件下で濃縮処理し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの茶色のベトベトした結晶0.9重量部を得た。含量は、60重量%であり、取得率は、62%であった。なお、該結晶中には、過還元体A、過還元体Bおよび過還元体Cが含まれていた。過還元体Aの収率は、5.5%、過還元体Cの収率は11.5%であり、過還元体Bは1%(LC面積百分率値)であった。
【0123】
比較例3
攪拌装置、冷却管、温度計を付した反応容器に、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む酢酸エチル溶液(含量:18重量%)25重量部および酢酸エチル7.5重量部を仕込んだ。さらに、5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.09重量部と水0.4重量部からなる触媒懸濁液を仕込み、常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を55℃に保ち、常圧条件下で4.5時間水素を供給した。その後、窒素置換して、反応を終了させた。反応液に、酢酸エチル32重量部を加えた後、濾過処理して、パラジウム/炭素等の不溶分を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む溶液を得た(収率:82%)。過還元体Bは検出限界以下であったが、過還元体Aが収率0.9%、過還元体Cが収率13.9%生成していた。
【0124】
実施例21
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、実施例20と同様の操作により得られた8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン結晶45重量部、5−エチル−2−メチルピリジン29重量部およびトルエン495重量部を仕込んだ。内温60℃まで昇温し、同温度で、4−(4−フェニルブトキシ)安息香酸クロリドを含むトルエン溶液(含量:20.4重量%)286.8重量部を3時間かけて滴下した。その後同温度で5時間さらに攪拌、保持した後、20重量%硫酸水溶液を加え、内温80℃に昇温し、分液処理した。得られた有機層を、20重量%硫酸水溶液、次いで水で洗浄処理した後、内温50℃までゆっくりと冷却した。その後、減圧条件下で、トルエン260重量部を濃縮除去し、内温0℃までゆっくり冷却し、析出結晶を濾取した。濾取した結晶を洗浄、乾燥させ、8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン(8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを1.8重量%含む)90.7重量部を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランに対する取得率:97%。
【0125】
実施例22
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、実施例8で得られた8−ニトロ−2−カルボキシ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランの結晶100重量部(含量:96.0重量%、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン3.8重量%含む)および酢酸エチル427.9重量部を仕込み、水25.0重量部およびトリエチルアミン41.69重量部を加え、内温60℃まで昇温し、同温度で6時間攪拌、反応させた。その後40kPaに減圧し、7時間減圧条件下で還流脱水処理を行った。複圧した後、揮発分の酢酸エチル82.1重量部およびトリエチルアミン2.1重量部を仕込み、内温70℃に昇温した。ジエチル硫酸64.8重量部を3時間かけて滴下し、同温度で4時間保持した。さらに、トリエチルアミン3.9重量部およびジエチル硫酸6.1重量部を追加し、3時間保持した。酢酸エチル100重量部および15重量%食塩水64重量部を加えた後、内温50℃まで冷却し、分液処理した。得られた有機層に、水75重量部および10重量%硫酸2.4重量部を加えた後、分液処理し、8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む有機層574.5重量部(含量:18.0重量%)を得た。収率:96%。なお、該有機層中には、8−ニトロ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、0.5重量%含まれていた。
【0126】
攪拌装置および温度計を付した反応容器に、上記で得られた8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン酢酸エチル溶液561.7重量部、酢酸エチル167.7重量部、酢酸ナトリウム1.6重量部、5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)1.6重量部および水6.3重量部を仕込んだ。常圧で窒素置換、次いで水素置換を行った。内温を50〜57℃に保ち、常圧条件下で4時間水素を供給した。その後、5重量%パラジウム/炭素(含水率:50重量%)0.5重量部および水2.1重量部を追加仕込みし、さらに、15時間水素を供給した。その後、窒素置換して、反応を終了させた。内温70℃に昇温し、同温度で濾過処理し、容器内の付着を酢酸エチル104重量部で洗い込み、パラジウム/炭素等の不溶分を除去した。濾液を静置後、水層を除去し、8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを含む有機層800重量部(含量:10.8重量%)を得た。収率:95%。なお、該有機層中には、8−アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが0.3重量%含まれていた。過還元体AおよびBは、いずれも検出限界以下であり、過還元体Cが収率2%で生成していた。
【0127】
上記で得た8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン酢酸エチル溶液765重量部を攪拌装置、冷却管および温度計を付した容器に仕込み、内温48℃に調整した。種晶を加えた後、内温40℃までゆっくり冷却した後、減圧度26.6kPaで濃縮処理し、酢酸エチル492重量部を留去した。常圧に戻し、内温0℃まで冷却し、同温度で1時間保持した後、析出結晶を濾取し、乾燥させた。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン結晶の取得量:82.2重量部(結晶の取得率:95%)。8−ニトロ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン基準の取得率:90%。なお、該結晶中には、8−アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランが、1.7重量%含まれていた。
【0128】
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、上記で得た8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン結晶45重量部、5−エチル−2−メチルピリジン29重量部およびトルエン495重量部を仕込んだ。内温60℃まで昇温し、同温度で、4−(4−フェニルブトキシ)安息香酸クロリドを含むトルエン溶液(含量:20.4重量%)286.8重量部を3時間かけて滴下した。その後同温度で5時間さらに攪拌、保持した後、20重量%硫酸水溶液を加え、内温80℃に昇温し、分液処理した。得られた有機層を、20重量%硫酸水溶液、次いで水で洗浄処理した後、内温50℃までゆっくりと冷却した。その後、減圧条件下で、トルエン260重量部を濃縮除去し、内温0℃までゆっくり冷却し、析出結晶を濾取した。濾取した結晶を洗浄、乾燥させ、8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン(8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−メトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランを1.8重量%含む)90.7重量部を得た。8−アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランに対する取得率:97%。
【0129】
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、上記で得た8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン45重量部およびクロロベンゼン180重量部を仕込んだ。内温25℃で、アンモニア/メタノール溶液(アンモニア含量:16.1重量%)58.8重量部を2時間かけて滴下し、同温度で6時間さらに攪拌、保持した。内温60℃まで昇温し、過剰アンモニアガスを留去後、メタノール除去のため、さらに80℃まで昇温し、同温度で30分保温した。次いで、内温50℃まで冷却し、13.3kPaの減圧条件下で、残メタノールを0.1%以下となるまで濃縮処理した。濃縮残渣に、5−エチル−2−メチルピリジン6.8重量部およびメタンスルホン酸4.4重量部を仕込み、100℃まで昇温し、同温度で4時間攪拌、保持した。反応液を内温65℃まで冷却後、メタノール45重量部を滴下し、0℃までゆっくり冷却し、析出している結晶を濾取した。濾取した結晶を洗浄、乾燥させ、8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−カルバモイル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン41重量部を得た。8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−エトキシカルボニル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランに対する取得率:96%。
【0130】
実施例23
攪拌装置、冷却管および温度計を付した反応容器に、5−エチル−2−メチルピリジン288重量部およびオキシ塩化リン43.7重量部を仕込み、内温60℃まで昇温し、同温度で、2時間攪拌、保持した。内温40℃まで冷却後、前記実施例22と同様に実施して得られた8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−カルバモイル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン72重量部およびトルエン360重量部を仕込み、同温度で、6時間攪拌、保持した。トルエン634重量部と50重量%硫酸水192重量部の懸濁液に、得られた反応液を注加混合した後、84℃まで昇温、静置分液した。得られた有機層を同温度で、塩水で2回、さらにリン酸二水素ナトリウム水で順次洗浄した後、活性白土と活性炭を加えた。30分攪拌後、活性白土と活性炭を濾別除去し、8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−シアノ−4−オキソ−4H−ベンゾピランのトルエン溶液を得た。
【0131】
蒸留装置、攪拌器および温度計を装着したフラスコに、水1236重量部、リン酸二水素ナトリウム1.8重量部およびリン酸水素二ナトリウム0.2重量部を仕込み、内温99℃に調整した。得られた8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−シアノ−4−オキソ−4H−ベンゾピランのトルエン溶液を、内温95℃に保ちながら、約2.5時間かけて注ぎ、同時にトルエン−水の共沸混合物を常圧留去させた。注加終了後まもなくトルエンの留出は終了し、結晶が水中に析出した。析出している結晶を濾取し、洗浄、乾燥させ、8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−シアノ−4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン64重量部を得た。8−[4−(4−フェニルブトキシ)ベンゾイル]アミノ−2−カルバモイル−4−オキソ−4H−1−ベンゾピランに対する取得率:92%。
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、入手が容易なニトロフェノール類から容易に誘導できるジカルボン酸誘導体を原料として、医薬中間体として有用なニトロクロモン誘導体およびアミノクロモン誘導体を製造できるため、工業的に有利である。

Claims (15)

  1. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させることを特徴とする一般式(2)
    Figure 0004422420
    (式中、R1は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるニトロクロモン誘導体の製造方法。
  2. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させ、得られる反応液に水を作用せしめることを特徴とする一般式(3)
    Figure 0004422420
    で示されるニトロクロモン誘導体の製造方法。
  3. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R 1 およびR 2 はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させ、得られる反応液に水を作用せしめて、一般式(3)
    Figure 0004422420
    で示されるニトロクロモン誘導体を得、該ニトロクロモン誘導体をエステル化せしめることを特徴とする一般式(4)
    Figure 0004422420
    (式中、R3は低級アルキル基を表わす。)
    で示されるニトロクロモン誘導体の製造方法。
  4. 一般式(1)で示されるジカルボン酸誘導体が、一般式(5)
    Figure 0004422420
    (式中、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、低級アルキル基を表わし、X1はハロゲン原子を表わす。)
    で示されるジハロコハク酸誘導体および一般式(6)
    Figure 0004422420
    (式中、RおよびRはそれぞれ上記と同一の意味を表わし、X2およびX3はそのいずれか一方が水素原子を、他方がハロゲン原子を表わす。)
    で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つと一般式(7)
    Figure 0004422420
    で示されるニトロフェノール類とを、有機溶媒中、塩基の存在下に反応させて得られるジカルボン酸誘導体または該ジカルボン酸誘導体を加水分解処理して得られるジカルボン酸誘導体である請求項1〜3のいずれかに記載のニトロクロモン誘導体の製造方法。
  5. 一般式(8)
    Figure 0004422420
    (式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体。
  6. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R 1 およびR 2 はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させ、一般式(2)
    Figure 0004422420
    (式中、R 1 は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるニトロクロモン誘導体を得、該ニトロクロモン誘導体と水素を、有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下、反応させることを特徴とする一般式(9)
    Figure 0004422420
    (式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるアミノクロモン誘導体の製造方法。
  7. 塩基が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属カルボン酸塩、第三級アミン類およびピリジン類からなる群から選ばれる少なくとも一つの塩基である請求項6記載のアミノクロモン誘導体の製造方法。
  8. 塩基が、アルカリ金属炭酸水素塩およびアルカリ金属カルボン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの塩基である請求項6記載のアミノクロモン誘導体の製造方法。
  9. 一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体の式中、ニトロ基の置換位置が、8位であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載のアミノクロモン誘導体の製造方法。
  10. 一般式(2)で示されるニトロクロモン誘導体の式中、Rが低級アルキル基であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか記載のアミノクロモン誘導体の製造方法。
  11. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R は低級アルキル基を表わし、R は水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させ、一般式(2)
    Figure 0004422420
    (式中、R 1 は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるニトロクロモン誘導体を得、該ニトロクロモン誘導体と水素を、有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下、反応させて一般式(9)
    Figure 0004422420
    (式中、R は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるアミノクロモン誘導体を得、該アミノクロモン誘導体をアシル化することを特徴とするN−アシルアミノクロモン誘導体の製造方法。
  12. アシル化剤として、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物または活性化されたカルボン酸を用いてアシル化する請求項11に記載のN−アシルアミノクロモン誘導体の製造方法。
  13. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R は低級アルキル基を表わし、R は水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させ、一般式(2)
    Figure 0004422420
    (式中、R 1 は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるニトロクロモン誘導体を得、該ニトロクロモン誘導体と水素を、有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下、反応させて一般式(9)
    Figure 0004422420
    (式中、R は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるアミノクロモン誘導体を得、該アミノクロモン誘導体をアシル化させて、N−アシルアミノクロモン誘導体を得、該N−アシルアミノクロモン誘導体とアンモニアを反応させることを特徴とするカルバモイルクロモン誘導体の製造方法。
  14. 一般式(1)
    Figure 0004422420
    (式中、R は低級アルキル基を表わし、R は水素原子または低級アルキル基を表わす。)
    で示されるジカルボン酸誘導体とクロロスルホン酸を反応させ、一般式(2)
    Figure 0004422420
    (式中、R 1 は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるニトロクロモン誘導体を得、該ニトロクロモン誘導体と水素を、有機溶媒中、金属触媒および塩基の存在下、反応させて一般式(9)
    Figure 0004422420
    (式中、R は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるアミノクロモン誘導体を得、該アミノクロモン誘導体をアシル化させて、N−アシルアミノクロモン誘導体を得、該N−アシルアミノクロモン誘導体とアンモニアを反応させてカルバモイルクロモン誘導体を得、該カルバモイルクロモン誘導体と脱水剤を反応させることを特徴とするクロモンニトリル誘導体の製造方法。
  15. 1およびR2が、それぞれ同一または相異なる低級アルキル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニトロクロモン誘導体の製造方法。
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