JP4421837B2 - プラスチック基板製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、次のようなプラスチック基板を製造するプラスチック基板製造方法に関するものである。即ち、プラスチック層を有する基体に複数の孔からなる印刷パターンが形成された印刷マスクや、基体に複数のインク吐出孔が形成されたインクジェットノズル基板などといったプラスチック基板である。
【0002】
【従来の技術】
近年、この種のプラスチック基板としては、特許文献1に記載のプラスチックマスクが知られている。このプラスチックマスクは、基体たるプラスチック板に、紫外線レーザー加工たるエキシマレーザー加工による複数の孔からなる印刷パターンが形成されたものである。
【0003】
また、インクジェットノズル基板としては、特許文献2に記載のものが知られている。このインクジェットノズル基板は、基体たるプラスチック板に、エキシマレーザー加工による複数のインク吐出孔が形成されたものである。更に、このインクジェットノズル基板は、基板のインク吐出側の表面に撥水性膜が被覆されている。かかる撥水性膜が被覆されるのは次に説明する理由による。即ち、数千[dpi]などといった優れた解像度を実現するという近年の要望に伴い、インクジェットノズル基板は、そのインク吐出孔がよりファインピッチ化される傾向にある。このようなファインピッチなインクジェットノズル基板では、インク吐出孔周囲へのインクダレが画質低下の大きな要因になってくる。そこで、インク吐出孔周囲へのインクダレを抑えるべく、フッ素系樹脂からなる撥水性膜がインク吐出側の面に被覆されるのである。
【0004】
【特許文献1】
特許第3279761号公報
【特許文献2】
特開平7−304175号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献2に記載のインクジェットノズル基板において、撥水性膜は基体表面に対するフッ素系樹脂溶液の塗布及び乾燥によって得られたものである。かかる撥水性膜では、撥水性膜の定着性に不安があり、製造後の使用に伴って基体表面から剥離してしまうそれがある。
【0006】
なお、印刷用のプラスチックマスクにおいては、その表面や、印刷パターンとして形成された複数の孔内壁に撥液性を帯びさせるのが望ましい。孔内壁に撥液性を帯びさせることで、孔内壁からの印刷材(例えばはんだペーストなど)の抜け性を良好にして、抜け性の不良による印刷不良を抑えることができるからである。また、印刷剤刷り付け面とは反対側の面(被印刷体に密着せしめられる面)の孔周囲に撥液性を帯びさせることで、孔周囲への印刷材の広がりを抑えてより綺麗なパターンを印刷することができるからである。これらの効果を得るべく、上述のインクジェットノズル基板と同様の撥水性膜をプラスチックマスクの孔内壁や表面に被覆することが考えられるが、かかる撥水性膜についても、撥水性膜の定着性に不安が残る。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面や孔内壁における撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチック基板を製造することができるプラスチック基板製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくともプラスチック層を有する基体に紫外線レーザー加工による複数の孔が形成され、且つ該孔内壁に撥液処理が施されたプラスチック基板を製造するプラスチック基板製造方法において、上記紫外線レーザー加工の際に上記基体を支持するための支持台と、おもて面を下にして該支持台上に支持される上記基体との間にフッ素化合物溶液を介在させて、該おもて面を該フッ素化合物溶液で覆う覆液工程と、該フッ素化合物溶液を凍結させて該基体を該支持台上に凍結固定する工程と、該支持台上に凍結固定される該基体に対してその裏面側から紫外線レーザー光を照射して孔を加工し、且つ、該孔が加工された際の衝撃によって該支持台上から飛び散った凍結済みのフッ素化合物溶液を付着させた該孔内壁に対して紫外線レーザーを引き続き照射して撥液処理を施す紫外線レーザー照射工程とを実施することを特徴とするものである。
【0009】
このプラスチック基板製造方法においては、紫外線レーザー光の照射によって得た孔の内壁に対して、支持台上から飛び散った凍結済みのフッ素化合物溶液を付着させつつ紫外線レーザー光を引き続き照射する。すると、フッ素化合物溶液中のフッ素化合物が光分解しつつ、孔内壁の少なくともプラスチック層が励起して、フッ素化合物の官能基と、孔内壁プラスチック層における化学的構造の側鎖の官能基が置換される。そして、この置換によって孔内壁プラスチック層にフッ素系の官能基が結合することで、孔内壁が撥液性に改質せしめられる。このようにして改質された孔内壁は、その撥液性を長期間安定して維持することができる。よって、孔内壁の撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチック基板を製造することができる。
【0010】
請求項2の発明は、少なくともプラスチック層を有する基体に紫外線レーザー加工による複数の孔が形成され、且つ該基体の表面に撥液処理が施されたプラスチック基板を製造するプラスチック基板製造方法において、上記紫外線レーザー加工の際に上記基体を支持するための支持台として、紫外線レーザー反射性を発揮する表面を有するものを用い、該支持台と、おもて面を下にして該支持台上に支持される上記基体との間にフッ素化合物溶液を介在させて、該おもて面を該フッ素化合物溶液で覆う覆液工程と、該支持台上に支持される該基体に対してその裏面側から紫外線レーザー光を照射して孔を加工し、且つ、該基体を透過した後に該支持台で反射した反射レーザー光を該おもて面の孔周囲に照射して該孔周囲に撥液処理を施す紫外線レーザー照射工程とを実施することを特徴とするものである。
【0011】
このプラスチック基板製造方法においては、基体を打ち抜いて孔を加工した紫外線レーザー光が支持台で反射して反射レーザー光が、基体のおもて面のフッ素化合物溶液で覆われている孔周囲を照射する。すると、フッ素化合物溶液中のフッ素化合物が光分解しつつ、おもて面の孔周囲のプラスチックが励起して、フッ素化合物の官能基と、孔周囲における化学的構造の側鎖の官能基が置換される。そして、この置換によって孔周囲のプラスチック層にフッ素系の官能基が結合することで、孔周囲が撥液性に改質せしめられる。このようにして改質された孔周囲は、その撥液性を長期間安定して維持することができる。よって、おもて面の孔周囲の撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチック基板を製造することができる。更には、紫外線レーザー光の照射によって孔の加工と、その孔の周囲の改質とを1度に行うことができるので、孔加工用の工程と、おもて面の孔周囲を撥液性に改質せしめるための工程とを別々に行うことによる作業の煩雑化を回避することもできる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2のプラスチック基板製造方法において、上記紫外線レーザー照射工程に先立って、上記支持台上に支持される上記基体をその裏面側から気体によって加圧する加圧工程を実施することを特徴とするものである。
【0013】
このプラスチック基板製造方法においては、紫外線レーザー光を基体の裏面側からおもて面側に貫通せしめて孔を加工する際に、気体によってその孔を裏面側からおもて面側に加圧する。このことにより、孔が貫通したときのフッ素化合物溶液の孔内への飛び散りを抑える。よって、支持台上から飛び散ったフッ素化合物溶液を付着させた孔内壁に対して紫外線レーザー光を照射して撥液性を帯びさせてしまうといった事態を阻止することができる。そして、このことにより、孔内壁に撥液処理を施さず、且つおもて面の孔周囲に撥液処理を施したプラスチック基板を製造することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2又は3のプラスチック基板製造方法において、上記支持台と上記基体との間に介在させたフッ素化合物溶液を凍結させて、該基体を該支持台上に凍結固定することを特徴とするものである。
【0015】
このプラスチック基板製造方法においては、フッ素化合物溶液の凍結によって基体を支持台上にしっかりと固定するので、レーザー加工時の基体の微妙な動きによる孔加工精度の悪化を抑えることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用したプラスチック基板製造方法の第1実施形態として、プラスチックマスク製造方法(以下、マスク製造方法という)について説明する。図1は、本マスク製造方法に用いるエキシマレーザー加工装置を示す概略構成図である。このエキシマレーザー加工装置は、エキシマレーザー装置1、XYテーブル2、メインコントローラ3などを備えている。メインコントローラ3は、加工装置全体の制御を司るものであり、エキシマレーザー装置1や後述のテーブルコントローラ22に電気的に接続されている。
【0017】
上記XYテーブル2上には、基体100が保持されている。この基体100は、プラスチック層だけからなる単層構造となっている。この基体100に対してエキシマレーザー照射によって複数の孔が加工されることで、複数の孔からなる印刷パターンが形成されたプラスチックマスクが製造される。そして、このプラスチックマスクは、例えば電子部品の表面実装における電極パターン印刷に用いられる。この電極パターン印刷とは、電子回路基板上にはんだペーストからなる電極パターンが印刷されることを意味する。印刷された電極パターンの上に電子部品がマウントされた後、リフローが施されることで、その電極パターンが固化して電子部品が電子回路基板上に表面実装される。
【0018】
XYテーブル2は、支持台たるワーク保持台20上に基体100を保持するようになっている。ワーク保持台20は、X−Y方向に移動することで、エキシマレーザー装置1から発せられるクリプトンフッ素エキシマレーザー光(以下、エキシマレーザー光という)Lの基体100に対する照射ポイントを変化させる。このワーク保持台20の移動は、XYテーブル2のテーブルコントローラ22によって制御される。
【0019】
上記エキシマレーザー装置1は、レーザー発振器10と、加工ヘッド11とを有している。レーザー発振器10から発振された波長248[nm]のエキシマレーザー光Lは、図示しない反射ミラーや集光レンズなどを有する加工ヘッド11を経て、基体100に照射される。これにより、基体100には、図示しない孔が形成される。
【0020】
図2は、XYテーブル2の要部を示す側面図である。同図において、XYテーブル2は、図示しないエキシマレーザー装置の加工ヘッド(図1の11)に対して、基体100が保持されたワーク保持台20をX軸方向(図中奥行き方向)及びY軸方向(図中左右方向)に相対移動させる。具体的には、ワーク保持台20の下面には、図中奥行き方向に延在するX溝が形成された脚23が2つ固定されている。また、ワーク保持台20の図中下方には、Y軸移動台24が配設されている。このY軸移動台24の上面には、図中奥行き方向に延在するXガイドレール25が2つ固定されている。ワーク保持台20は、その下面に固定された2つの脚23のX溝を、それぞれXガイドレール25に係合させるようにレール上に載置されることで、Y軸移動台24に支持される。ワーク保持台20とY軸移動台24との間には、リニアモータ26が設けられている。このリニアモータ26は、ワーク保持台20の下面に固定された下面電極部26aと、これに対向するようにY軸移動台24の上面に固定された上面電極部26bとを有している。これら電極部が励磁されると、図中X軸方向に向かう電磁力がワーク保持台20に作用する。これにより、ワーク保持台20がXガイドレール25に沿ってX軸方向に移動する。Y軸移動台24は、図示しない支持部上に支持されており、ワーク保持台20をX軸方向に移動させるのと同様の機構により、支持部上でY軸方向に移動するようになっている。
【0021】
X軸移動台24の上面には、それぞれ図中X軸方向に延在するメイン凸部27a、サブ凸部27bが設けられている。メイン凸部27aの側面、サブ凸部27bの側面には、それぞれメインリニアスケール28a、サブリニアスケール28bが固定されている。これらスケールは、X軸方向に刻まれた目盛り図示しない目盛りを有している。一方、ワーク保持台20の下面には、メイン位置検出センサ29aと、サブ位置検出センサ29bとが、それぞれメインリニアスケール28a、サブリニアスケール28bの目盛りを読み取ることができるように固定されている。これら位置検出センサとしては、例えば反射型フォトセンサを用いることができる。メイン位置検出センサ29aは、メインリニアスケール28aの目盛りによって得られたON/OFF信号を、テーブルコントローラ22に出力する。テーブルコントローラ22は、この信号に基づいてリニアモータ26に対する励磁を制御し、図示しない加工ヘッド(図1の11)に対して基体100をX軸方向に相対移動させる。また、サブ位置検出センサ29bはサブリニアスケール28bの目盛りによって得られたON/OFF信号をテーブルコントローラ22及びメインコントローラ(図1の3)に出力する。メインコントローラはこの信号に基づいてエキシマレーザー発振器(図1の10)を制御して、エキシマレーザー光を発振させる。なお、このレーザー加工装置では、Y軸方向については、メイン位置検出センサとメインリニアスケールとを対向させて配設しているが、サブ位置検出センサとサブリニアスケールとは設けていない。
【0022】
メイン位置検出センサ29aとしては分解能1[μm]のものが使用されており、メインリニアスケール28aとしては目盛り間隔0.17[mm]のものが使用されている。一方、サブ位置検出センサ29bとしては分解能0.1[μm]のものが使用されており、サブリニアスケール28bとしては幅0.5[μm]の目盛りを0.17[mm]間隔で備えるものが使用されている。これらリニアスケールとしては、例えば株式会社レニショー社製のものを用いることができる。メイン位置検出センサ29aからON信号が発生した直後にサブ位置検出センサ28bから発せられるON信号が、各レーザー光のショット開始信号として用いられる。そして、サブ位置検出センサ28bから発せられる次のON信号が各レーザー光のショット停止信号として用いられる。
【0023】
かかる構成のXYテーブル2のワーク保持台20上に保持される基体100に対し、φ=数十[μm]の孔を所定のピッチでエキシマレーザー加工することができる。エキシマレーザーはプラスチック材をアブレーション加工することができる。このアブレーション現象は熱伝導よりも高速に起こるため、孔の内壁を熱溶融によって変形させるといった事態を生ずることがなく、内壁平滑性に優れた孔を得ることができる。なお、言うまでもなく、波長248[nm]のエキシマレーザー光は、紫外線レーザーである。
【0024】
図3は、上記ワーク保持台20を示す拡大断面図である。ワーク保持台20の表面からは、矩形状の壁が突出しており、これによって浴槽部20aが形成されている。この浴槽部20aの底面には、エキシマレーザー光を反射し得る金や白金等の材料からなるレーザー反射層20bが被覆されている。また、図示しないプラスチック基板をこのレーザー反射層20bから浮かせた状態で支持するワーク支持部20cが形成されている。
【0025】
上記浴槽部20a内には、図4に示すようにフッ素化合物溶液Sが注がれる。そして、浴槽壁に設けられたオーバーフロー部20dから余分な溶液がオーバーフローすることで、溶液の液面レベルWLがワーク支持部20cの天端と同じレベルになる。この状態で基体100がワーク支持部20c上に載置される。すると、図5に示すように、支持台たるワーク保持台20のレーザー反射層(台表面)20bと、基体100の下面(おもて面)との間に、フッ素化合物溶液Sが介在する。これにより、基体100の下面(おもて面)をフッ素化合物溶液Sで覆う覆液工程が実施される。
【0026】
ワーク保持台20は、図示しない凍結チャック手段を有している。この凍結チャック手段は、浴槽部20a内に満たされたフッ素化合物溶液Sを凍結させることで、レーザー反射層20bと基体100の下面(おもて面)とを氷架橋する。これにより、基体100がワーク保持台20上に凍結固定され、レーザー加工時のプラスチック板100の位置ズレによる加工精度の悪化が回避される。また、氷を介してプラスチック板100がワーク保持台20面(レーザー反射層20b)に密着することで、ワーク保持台20での撓みも阻止される。よって、プラスチック板100の撓みによる加工精度の悪化も回避される。かかる凍結チャックとしては、例えばエミネントサプライ社製の凍結チャックを用いることができる。なお、凍結チャックを用いずに、フッ素化合物溶液Sを液体窒素等の冷媒によって凍結させることで、プラスチック板100を凍結固定してもよい。
【0027】
上述のようにしてワーク保持台20上に凍結固定された基体100に対しは、その上面(裏面)側からエキシマレーザー光Lが照射される。照射されたエキシマレーザー光Lは、図6に示すように基体100をアブレーション加工して吐出孔100aを形成しながら、基板100を貫通する。この貫通の際の衝撃により、孔100aの直下に位置していた凍結フッ素化合物S’が孔100a内に飛び散って孔内壁に付着する。このように凍結フッ素化合物S’が付着した状態で孔内壁に引き続きエキシマレーザー光Lが照射されると、その凍結フッ素化合物S’中のフッ素化合物が光分解されながら、孔内壁のプラスチック材が励起せしめられる。そして、孔内壁におけるプラスチック材の末端の官能基と、フッ素化合物の末端の官能基とが置換され、プラスチック材の末端にフッ素系の官能基が結合する。この結合により、孔内壁が撥液性に改質せしめられる。このようにして改質された孔内壁は、その撥液性を長期間安定して維持することができる。なお、エキシマレーザー光Lでなくても、波長400[nm]以下のレーザー光であれば、同様に孔内壁を改質させることができる。
【0028】
一方、孔100aを打ち抜いたエキシマレーザー光Lは、孔100aの下にある凍結フッ素化合物S’を光分解しながら透過した後に、レーザー反射層20bで反射して、反射レーザー光となって逆戻りし始める。この際、図示のようにスポット中心側から外側に向けて徐々に拡散して行くのに伴ってエネルギーを減衰させていく。そして、基体100の下面(おもて面)における吐出孔100aの周囲(以下、孔周囲領域という)に到達してそこを励起せしめる。すると、孔周囲領域におけるプラスチック材の末端の官能基と、フッ素化合物の末端の官能基とが置換され、プラスチック材の末端にフッ素系の官能基が結合する。この結合により、孔周囲領域が撥液性に改質せしめられる。このようにして改質された孔周囲領域も、その撥液性を長期間安定して維持することができる。
【0029】
基体100のプラスチック層に用いるプラスチック材としては、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネイト(PC)などが挙げられる。また、フッ素化合物溶液としては、旭硝子株式会社製のサイトップ(商品名)や、ダイキン工業株式会社製のユニダイン(商品名)などが挙げられる。これらを用いた場合には、プラスチック材表面の末端基をフッ素樹脂中のパーフルオロアルキル基「−(CFCF)nCF」に置換することで、改質された撥液性のプラスチック表面を得ることができる。
【0030】
以上のようにして製造されたプラスチックマスクは、孔100a内に撥液処理が施されているため、孔内からの印刷材の抜け性を向上せしめて、抜け性の不良による印刷不良を抑えることができる。
【0031】
ところで、プラスチックマスクは、エキシマレーザー加工時にレーザー照射面(裏面)であった面を被印刷体に密着せしめられながら、スキージ等の印刷材刷り付け部材によって反対側の面(おもて面)側から孔内に印刷材が刷り込まれる。そして、被印刷体から離間されるのに伴って、孔内部の印刷材を被印刷体の表面に抜けさせて、パターンを印刷する。このようにして印刷を行うのは次に説明する理由による。即ち、図6に示したように、孔100aはレーザー照射面(裏面)側が広口となり、おもて面側が狭口となる。よって、狭口となるおもて面を印刷材刷り込み面とすることで、孔100aの狭口側から広口側へと印刷材をすり抜けさせて、孔内からの印刷材の抜け性を向上させることができるからである。
【0032】
しかしながら、近年においては、例えば厚さ数百[μm]といったプラスチックマスクに代えて、厚さ数十[μm]といった薄厚のものが製造されるようになってきている。かかるプラスチックマスクでは、孔径の裏表における差が殆どないため、どちらの面を印刷材刷り付け面としても差し支えない。そこで、本マスク製造方法によって製造されたプラスチックマスクについては、レーザー照射面(裏面)を印刷材刷り込み面として使用する。すると、撥液処理が施された上述の孔周囲領域を被印刷体に密着させながら印刷を行うことになり、マスクと被印刷体との界面において、孔内から孔周囲への印刷材の滲み出しを抑えることができる。そして、このことにより、滲み出しによる乱れのない綺麗なパターンを印刷することができる。
【0033】
以上のようにして複数の孔をエキシマレーザー加工しつつ、孔内壁や孔周囲領域を撥液性に改質せしめる本マスク製造方法においては、その撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチックマスクを製造することができる。また、紫外線レーザー光であるエキシマレーザー光Lの照射により、孔100aの加工と、孔内壁やおもて面の孔周囲領域の改質とを1度に行うことができるので、孔加工用の工程と、改質のための工程とを別々に行うことによる作業の煩雑化を回避することもできる。また、凍結フッ素化合物S’の凍結によって基体100をワーク保持台20上にしっかりと固定するので、レーザー加工時の基体100の微妙な動きによる孔加工精度の悪化を抑えることもできる。
【0034】
次に、本発明を適用したプラスチック基板製造方法の第2実施形態として、インクジェットノズル基板を製造するインクジェットノズル基板製造方法(以下、ノズル基板製造方法という)について説明する。
【0035】
本ノズル基板製造方法においても、図1に示したエキシマレーザー加工装置を用いる。これを用いてプラスチック層を有する基体100に複数のインク吐出孔を形成して、インクジェットノズル基板を得るのである。但し、レーザー加工の際、図示しない注入手段によってアシストガスを加工ヘッド11に注入し、ヘッド先端から基体100に向けてそのアシストガスを噴射させて基体100を加圧しながらレーザー加工を行う。この際、第1実施形態のマスク製造方法と同様に、基体100はワーク支持台20上に凍結固定されている。
【0036】
基体100としては、プラスチック層の裏面に複数のインクジェットヘッドに対応する電極パターンが形成されたものを用いる。かかる基体100に対してレーザー加工によって複数のインク吐出孔が形成された後、個々のインクジェットヘッドに対応する箇所で基体100が複数に分割されることで、複数のインクジェットノズル基板が得られる。
【0037】
図7は、本ノズル基板製造方法においてワーク保持台20上に凍結固定される基体100に対するレーザー加工を説明する模式図である。同図において、エキシマレーザー光Lが基体100をその裏面側から貫通してインク吐出孔100bを加工する際、インク吐出孔100b内に対して裏面側からアシストガスAgが進入する。そして、インク吐出孔100bの直下に位置する凍結フッ素化合物S’を孔内から押圧する。この押圧により、レーザー反射層20b上からインク吐出孔100b内への凍結フッ素化合物S’の飛び散りが阻止される。よって、第1実施形態のマスク製造方法のように孔内壁に撥液処理が施されることはない。
【0038】
一方、インク吐出孔100bを加工したエキシマレーザー光Lは、第1実施形態のマスク製造方法と同様にして、レーザー反射層20bで反射した後、基体100のおもて面の孔周囲領域を照射してそこを撥液性に改質せしめる。
【0039】
以上のようにして複数のインク吐出孔100bを加工しつつ、基体100のおもて面の孔周囲領域を撥液性に改質せしめるノズル基板製造方法においては、その撥液性を長期間安定して維持し得るインクジェットノズル基板を製造することができる。また、紫外線レーザー光であるエキシマレーザー光Lの照射により、インク吐出孔100bの加工と、おもて面の孔周囲領域の改質とを1度に行うことができるので、孔加工用の工程と、おもて面を撥液性に改質せしめるための工程とを別々に行うことによる作業の煩雑化を回避することもできる。また、先細りするエキシマレーザー光Lに合わせてインク吐出孔100bの形状をその望ましい形である先細りの形状で加工しつつ、同時に孔周囲領域に撥水処理を施すことができる。また、アシストガスによって凍結フッ素化合物S’を吐出孔100aのレーザー照射側から加圧することで、吐出孔100aを貫通させたときのフッ素化合物の孔内への飛び散りを阻止する。そして、このことにより、撥液性に改質してしまったインク吐出孔内壁による吐出インク滴形状の乱れを回避し得るインクジェットノズル基板を製造することができる。
【0040】
【発明の効果】
請求項1乃至4の発明によれば、表面や孔内壁における撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチック基板を製造することができるという優れた効果がある。
特に、請求項1の発明によれば、孔内壁の撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチック基板を製造することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項2又は3の発明によれば、おもて面の孔周囲の撥液性を長期間安定して維持し得るプラスチック基板を製造することができるという優れた効果がある。更には、孔加工用の工程と、基体のおもて面の孔周囲を撥液性に改質せしめるための工程とを別々に行うことによる作業の煩雑化を回避することができるという優れた効果もある。
また特に、請求項3の発明によれば、孔内壁に撥液処理を施さず、且つおもて面の孔周囲に撥液処理を施したプラスチック基板を製造することができるという優れた効果がある。
また特に、請求項4の発明によれば、レーザー加工時の基体の微妙な動きによる孔加工精度の悪化を抑えることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るマスク製造方法に用いられるエキシマレーザー加工装置を示す概略構成図。
【図2】同エキシマレーザー加工装置のXYテーブルの要部を示す側面図。
【図3】同XYテーブルのワーク保持台を示す拡大断面図。
【図4】フッ素化合物溶液が注がれた状態の同ワーク保持台を示す拡大断面図。
【図5】基体が載置された状態の同ワーク保持台を示す拡大断面図。
【図6】同ワーク保持台上に凍結固定される同基体に対するレーザー加工を説明する模式図。
【図7】第2実施形態に係るノズル基板製造方法においてワーク保持台上に凍結固定される同基体に対するレーザー加工を説明する模式図。
【符号の説明】
20 ワーク保持台(支持台)
20b レーザー反射層(紫外線レーザー反射性を発揮する支持台表面)
100 基体
100a 孔
100b インク吐出孔
L エキシマレーザー光(紫外線レーザー光)
S フッ素化合物溶液
S’ 凍結フッ素化合物

Claims (4)

  1. 少なくともプラスチック層を有する基体に紫外線レーザー加工による複数の孔が形成され、且つ該孔内壁に撥液処理が施されたプラスチック基板を製造するプラスチック基板製造方法において、
    上記紫外線レーザー加工の際に上記基体を支持するための支持台と、おもて面を下にして該支持台上に支持される上記基体との間にフッ素化合物溶液を介在させて、該おもて面を該フッ素化合物溶液で覆う覆液工程と、該フッ素化合物溶液を凍結させて該基体を該支持台上に凍結固定する工程と、該支持台上に凍結固定される該基体に対してその裏面側から紫外線レーザー光を照射して孔を加工し、且つ、該孔が加工された際の衝撃によって該支持台上から飛び散った凍結済みのフッ素化合物溶液を付着させた該孔内壁に対して紫外線レーザーを引き続き照射して撥液処理を施す紫外線レーザー照射工程とを実施することを特徴とするプラスチック基板製造方法。
  2. 少なくともプラスチック層を有する基体に紫外線レーザー加工による複数の孔が形成され、且つ該基体の表面に撥液処理が施されたプラスチック基板を製造するプラスチック基板製造方法において、
    上記紫外線レーザー加工の際に上記基体を支持するための支持台として、紫外線レーザー反射性を発揮する表面を有するものを用い、該支持台と、おもて面を下にして該支持台上に支持される上記基体との間にフッ素化合物溶液を介在させて、該おもて面を該フッ素化合物溶液で覆う覆液工程と、該支持台上に支持される該基体に対してその裏面側から紫外線レーザー光を照射して孔を加工し、且つ、該基体を透過した後に該支持台で反射した反射レーザー光を該おもて面の孔周囲に照射して該孔周囲に撥液処理を施す紫外線レーザー照射工程とを実施することを特徴とするプラスチック基板製造方法。
  3. 請求項2のプラスチック基板製造方法において、
    上記紫外線レーザー照射工程に先立って、上記支持台上に支持される上記基体をその裏面側から気体によって加圧する加圧工程を実施することを特徴とするプラスチック基板製造方法。
  4. 請求項2又は3のプラスチック基板製造方法において、
    上記支持台と上記基体との間に介在させたフッ素化合物溶液を凍結させて、該基体を該支持台上に凍結固定することを特徴とするプラスチック基板製造方法。
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