JP4421692B2 - ピラン環と環縮合した1,2−ジオキセタン誘導体、該誘導体を用いる測定試薬及び測定方法 - Google Patents

ピラン環と環縮合した1,2−ジオキセタン誘導体、該誘導体を用いる測定試薬及び測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般式(I)
【化13】
Figure 0004421692
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 及びR7 はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。また、R2 とR3 、R4 とR5 及びR6 とR7 は一体となり、それぞれ独立に環状アルキル基を形成することもできる。Arは式(A)
【化14】
Figure 0004421692
(式中、R8 はヒドロキシル基、アルコキシル基、アラルキルオキシ基、−OSi(R101112)(ただし、R10、R11及びR12は互いに独立にアルキル基である。)で表される基又はリン酸塩基であり、R9 は水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基であり、Vは酸素原子又は硫黄原子である。)で表される基、式(B)
【化15】
Figure 0004421692
(式中、R8 は前記式(A)のR8 と同じである。Wは窒素原子又はC−R13(ただし、R13は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基又はアラルキルオキシ基である。)で表される基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子である。)で表される基、又は式(C)
【化16】
Figure 0004421692
(式中、R8 は前記式(A)のR8 と同じである。R14は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基又は
【化17】
Figure 0004421692
(式中、Yは酸素原子、硫黄原子又はN−R15で表される基であり、Zは水素原子、アルキル基、アリール基、−OR16、−SR17又は
【化18】
Figure 0004421692
で表される基である。ここで、R15は水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基又はアルコキシル基であり、R16、R17、R18及びR19は水素原子、アルキル基又はアリール基である。また、R15とR16、R15とR17、R15とR18、R18とR19は一体となり環を形成することもでき、この環は2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基である。)で表される1,2−ジオキセタン誘導体に関する。本発明の1,2−ジオキセタン誘導体は化学発光を誘導することができる化合物であり、例えば免疫測定等の基質として使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、1,2−ジオキセタン誘導体は種々合成されており、特に3位にスピロアダマンチル基が結合した化合物は化学発光基質として有用であることが知られている(例えば、特公平5−21918号公報明細書及び特公平5−45590号公報明細書参照)。
また、化合物の熱的安定性が前記化合物と比べて極めて高い化合物も同様の用途に有用であることが知られている(特開平9−216887号公報明細書参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
1,2−ジオキセタン誘導体に関しては前記のように様々な検討がなされ、種々の化合物が創出されている。しかしながら、臨床検査等の分野で応用するためには化合物自体が安定で取扱いが容易であり、かつ高い効率で発光を行うことができる等の性質が要求され、従来の化合物よりもさらに優れた化合物の創出が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、このような課題を踏まえ、従来化合物よりもさらに優れた化合物を創出するために鋭意検討した結果、前記一般式(I)で表される1,2−ジオキセタン誘導体を見出し本発明を完成したものである。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明するにあたって、本発明で「アルキル基」とは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基をいい、そのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコサニルの直鎖の基及び前記のアルキル基が適宜分枝状に結合した基をいう。前記置換していてもよい基とは、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基等である。そのアルコキシル基としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、メトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシエトキシ、エトキシプロポキシ、メトキシエトキシエトキシ基等であり、またそのアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等であり、その複素環基としては、フリル、チエニル、ピリジル基等を挙げることができる。
【0006】
また、本発明で「アルコキシル基」とは、前記したアルキル基に置換してもよいアルコキシル基と同じであり、「アリール基」とは、これも前記したアルキル基に置換してもよいアリール基である。さらに、「アラルキルオキシ基」とはベンジルオキシ、フェネチルオキシ基等である。また「ハロゲン原子」とはフッ素、塩素、臭素等である。
【0007】
本発明においては、上記一般式(I)において。Arが式(a)
【化19】
Figure 0004421692
(式中、R8 、R9 及びVは前記式(A)のR8 、R9 及びVと同じである。)で表される基、式(b)
【化20】
Figure 0004421692
(式中、R8 、W及びXは前記式(B)のR8 、W及びXと同じである。)で表される基、又は式(c)
【化21】
Figure 0004421692
(式中、R8 及びR14は前記式(c)のR8 及びR14と同じである。)でで表される基であるものが好ましい。
【0008】
上記一般式(I)において、R1 、R2 及びR3 はアルキル基である場合が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。また、上記R4 、R5 、R6 及びR7 は水素原子である場合が好ましい。
【0009】
上記一般式(I)において。Arが上記式(C)である場合、Yが酸素原子であり、Zが式
【化22】
Figure 0004421692
で表される基であり、式中R18及びR19が一体となり、3〜7員環を形成するものであることが好ましい。より好ましくは、Zが
【化23】
Figure 0004421692
で表される基である場合である。
【0010】
上記一般式(I)において、Arが上記式(C)である場合には、YがN−R15であり、Zが−OR16であり、R15とR16が一体となり、〜7員環を形成するものも好ましい。より好ましくは、R15とR16が一体となり
【化24】
Figure 0004421692
で表される基である場合である。
【0011】
本発明の前記一般式(I)で表される1,2−ジオキセタン誘導体は、一般式
【化25】
Figure 0004421692
(式中、R1 〜R7 は一般式(I)のR1 〜R7 と同じで基であり、R81はアルコキシル基又はアラルキルオキシ基である。また、(R81)Arは、式(A’)
【化26】
Figure 0004421692
(式中、R9 及びVは式(A)のR9 及びVと同じであり、R81は前記一般式(II)のR81と同じである。)で表される基、式(B’)
【化27】
Figure 0004421692
(式中、W及びXは式(B)のW及びXと同じであり、R81は前記一般式(II)のR81と同じである。)で表される基、又は式(C’)
【化28】
Figure 0004421692
(式中、R14は式(C)のR14と同じであり、R81は前記一般式(II)のR81と同じである。)で表される基である。)で表されるR81で置換されたアリール基を有するジヒドロフラン環誘導体から下記反応式に従って、本発明の一般式(I)で表される1,2−ジオキセタン誘導体を製造することができる。
【0012】
【化29】
Figure 0004421692
(式中、R1 〜R7 は前記一般式(I)のR1 〜R7 と同じであり、R81は前記一般式(II)で表される化合物のR81と同じである。またR82
【化30】
Figure 0004421692
(式中、R20及びR21は、アルキル基又はR20及びR21が一体となり環を形成してもよい基である。)で表されるリン酸基又は−OSi(R101112)(ただし、R10、R11及びR12は前記と同じである。)で表される基である。一般式(III)の(HO)Ar−で表される基は、一般式(II)の置換基R81の位置と同じ位置にOH基を有するものであり、一般式(IV)の(R82)Arで表される基は、一般式(II)の置換基R81の位置と同じ位置にR82を有するものである。)
【0013】
(第1工程)
本工程は、一般式(II)で表される化合物の脱保護反応を行い一般式(III)で表される化合物を製造するものである。
【0014】
脱保護反応に供する化合物としては、前記一般式(II)(ここでR1 〜R7 は前記と同じであり、R81はアルキル基又はアラルキルオキシ基(好ましくは、メトキシ基又はベンジルオキシ基である。)である。)で表される化合物で、本反応は当業者に熟知された方法、即ちアルキルチオールのアニオンを反応させ行うかあるいは水素添加反応に付すことにより行うことができるが、どちらの反応を選択するかは脱保護すべき基により適宜選択すればよい。
【0015】
(第2工程)
本工程は、前記一般式(III)で表される化合物に、シリルオキシ基あるいはリン酸基形成のため対応するハロゲン化トリアルキルシランあるいはハロゲン化ホスフェートを反応させ、一般式(IV)で表される化合物を製造するものである。
【0016】
本工程において、例えばリン酸基導入のためクロロエチレンホスフェートを反応させた場合には、シアン化ナトリウムでシアノエチルホスフェートのナトリウム塩に変換し、さらにシアノエチル基を脱離し、アンモニウム ナトリウム塩に変換することができる。このアンモニウム ナトリウム塩は、例えば炭酸水素ナトリウムと反応させることにより容易にジナトリウム塩に変換できる。
【0017】
(第3工程)
本工程は一般式(II)、(III)又は(IV)で表される化合物を一重項酸素と反させ、前記一般式(I)で表される1,2−ジオキセタン誘導体を製造するものである。
【0018】
一重項酸素との反応は、前記一般式(II)、(III)又は(IV)で表されるジヒドロフラン誘導体を、メチレンブルー、ローズベンガル、テトラフェニルポルフィン(TPP)等の光増感剤の共存下、酸素雰囲気の下で可視光照射を行うことにより達成される。
【0019】
このとき、溶媒はジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素又はメタノール、エタノール等のアルコール等を用いることができる。
【0020】
なお、反応は−80℃〜室温で行うことが好ましい。
【0021】
前記一般式(II)で表されるジヒドロフラン誘導体の製造方法は、例えば、下記の方法を挙げることができる。
【0022】
(1)(R81)Arが前記式(A’)で表される基の場合
前記一般式(II)で表される化合物において、(R81)Arが前記式(A’)で表される基である場合、以下反応式に従って、一般式(II)で表されるジヒドロフラン誘導体を製造することができる。
【0023】
【化31】
Figure 0004421692
(式中、R1 〜R7 及びR81は前記と同じであり、R83はハロゲン原子であり、R84はアルコキシル基又はアラルキルオキシ基である(R83及びR84は隣接する炭素原子に結合しているものである。)。Rはハロゲン原子、置換スルホニルオキシ基又はヒドロキシル基である。前記一般式(II)で表される化合物の(R81)Arは、前記式(A’)で表される基である。)
【0024】
(第1A工程)
本工程は、前記一般式(1A)で表される化合物を前記一般式(2A)で表される化合物と反応させることによって前記一般式(3A)で表される化合物を製造するものである。
【0025】
反応は当業者に熟知された、いわゆる、ウィリアムソン合成により達成することができる。
【0026】
ここで、一般式(1A)で表される化合物の置換基Rがハロゲン原子又は置換スルホニルオキシ基である場合は直接反応に付し、Xがヒドロキシル基である場合には、一旦反応系中でハロゲン化トシル等によりスルホニルオキシ基に変換してから反応に付すことで本工程を達成することができる。
【0027】
(第2A工程)
本工程は、前記一般式(3A)で表される化合物を酸化することによって、前記一般式(4A)で表される化合物を製造するものである。
【0028】
本工程における酸化は、クロム系酸化剤又は活性化剤を用いることにより行うことができる。
【0029】
前記、クロム系酸化剤としてはピリジニウムクロロクロメート(PCC)、ピリジニウムジクロロクロメート(PDC)等を用いることができ、この時、溶媒はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を用いることができる。
【0030】
また、前記活性化剤を用いる場合は、Py・SO3 /トリエチルアミン/DMSO、Ac2 O/DMSO系等のような溶媒との組み合わせで反応を行うことができる。
【0031】
(第3A工程)
本工程は、前記一般式(4A)で表される化合物を閉環させ、前記一般式(5A)で表される化合物を製造するものである。
【0032】
反応はリチウムジイソピロピルアミド等の2級アミンのリチウム塩又はt−ブトキシカリウム等の塩基を用いて行うものである。
【0033】
溶媒としては、THF、DMSO等の有機溶媒を用いることができ、0℃〜室温で、1〜5時間反応を行うことが好ましい。
【0034】
(第4A工程)
本工程は、前記一般式(5A)で表される化合物を脱水することによって、前記一般式(6A)で表される化合物を製造するものである。
【0035】
反応はピリジン等の塩基の存在下、塩化チオニルを作用させるか又はリン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸を触媒として用いることができる。
【0036】
溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素又はトルエン等の芳香族炭化水素を用いることができ、作用させる試薬によって、適宜選択することができる。
【0037】
(第5A工程)
本工程は、前記一般式(6A)で表される化合物を還元し、一般式(7A)で表される化合物を製造するものである。
反応はブチルリチウム等のリチウム塩を作用させた後、p−トルエンスルホンアジド等のアジドを反応させ、トリフェニルホスフィン等で還元を行い、次いで、エタンチオール等のチオールを作用させることにより達成することができる。
【0038】
溶媒としてはTHF、DMF等の有機溶媒を用いることができ、反応は還流下で行うことが好ましい。
【0039】
(第6A工程)
本工程は前記一般式(7A)で表される化合物から前記一般式(II)で表される化合物を製造するものである。
【0040】
反応は前記一般式(7A)で表される化合物のR84をヒドロキシル基又はSH基に変換し、次いでオルトカルボン酸エステル又はカルボニルイミダゾール等を用いることにより縮合環を形成することができる。
【0041】
反応はオルトカルボン酸エステルを用いる場合は100〜200℃の加熱下において、またカルボニルイミダゾールを用いる場合は0℃〜室温において行うことが好ましい。
【0042】
(2)(R81)Arが前記式(C’)で表される基の場合
上記一般式(II)で表される化合物において、(R81)Arが前記式(C’)で表される基である場合、以下の反応式に従って、一般式(II)で表されるジヒドロフラン誘導体を得ることができる。
【0043】
【化32】
Figure 0004421692
(式中、R1 〜R7 、R81及びRは前記と同じである。前記一般式(II)で表される化合物の(R81)Arは、前記式(C’)で表される基である。)
【0044】
(第1C工程)
本反応は、一般式(1C)で表される化合物を一般式(2C)で表される化合物と反応させることによって一般式(3C)で表される化合物を製造するものである。
【0045】
前記一般式(2C)で表される化合物は、(R81)Arが式(A’)で表される基である場合に使用した一般式(2A)で表される化合物と同じであり、本第1C工程は前記第1A工程と同様にして、ウィリアムソン合成により達成することができる。
【0046】
(第2C工程及び第3C工程)
これらの工程によって一般式(5C)で表される化合物を製造する方法は、上記第2A工程及び第3A工程と同様にして達成することができる。
【0047】
(第4C工程)
本工程は、前記一般式(5C)で表される化合物を臭素化し、一般式(6C)で表される化合物を製造するものである。
【0048】
反応は、N−ブロモスクシンイミド等の臭素化剤を用いることにより達成される。溶媒としては、含水THF、ジオキサン、DMF等の有機溶媒を用いて行うことができる。
【0049】
(第5C工程)
本工程は、上記第4A工程と同様にして行うことができる。
【0050】
(第6C工程)
本工程は、前記一般式(7C)で表される化合物の臭素を置換することにより目的の置換基を導入した前記一般式(II)で表される化合物を製造するものである。
【0051】
置換アミノ基を導入するには、ブチルリチウム等のリチウム塩を用い、カルボキシル基を導入し、次いでカルボニルイミダゾールを縮合剤として用い、アミン又はアンモニアと反応させることによって行うことができる。
【0052】
さらに、上記反応によって製造されたアミドから、例えば、オキサゾリン環を有する化合物とするには、置換又は無置換のエタノールアミンを作用させることにより行うことができる。
【0053】
また、アシル基を導入するには、前記と同様にブチルリチウム等のリチウム塩を用い、N−メチルホルムアニリドと反応させるか又はアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒドと反応させた後、二酸化マンガン等の酸化剤により、ヒドロキシル基を酸化させることによって達成される。
【0054】
ここで、アシル基を導入した化合物は、第1工程に付した後、ヒドロキシルアミン又はアルコキシルアミンと反応させることによりオキシムとし、第3工程の出発物質とすることもできる。
【0055】
(3)(R81)Arが前記式(B’)で表される基の場合
前記一般式(II)で表される化合物において、(R81)Arが式(B’)で表される基である場合、以下の反応式に従って、一般式(II)で表されるジヒドロフラン誘導体を製造することができる。
【0056】
【化33】
Figure 0004421692
(式中、R1 〜R7 、W、X及びR81は前記と同じである。前記一般式(II)で表される化合物中の(R81)Arは、前記式(B’)で表される基である。)
【0057】
(第1B工程)
本工程は、一般式(1B)で表される化合物と一般式(2B)で表される化合物とを縮合させることによって、一般式(3B)で表される化合物を製造するものである。
【0058】
反応は縮合剤を存在させることにより行うことができ、その縮合剤としてはカルボジイミド、カルボニルイミダゾール等を挙げることができる。
【0059】
反応を行うにあたっては、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を溶媒として用いることができる。
【0060】
(第2B工程)
本工程は、前記第2A工程と同様にして行うことができる。
【0061】
(第3B工程)
本工程は、一般式(4B)で表される化合物をチタンの存在下、還元剤及び塩基を用いてアルコール誘導体を製造し、次いで酸触媒の存在下で脱水環化反応を行うことにより前記一般式(II)で表される化合物を製造するものである。
【0062】
前段階の反応はチタンの存在下に行うことを必須の要件とし、チタンとしては塩化チタン等のハロゲン化チタンを用いることが好ましい。還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム等、塩基としてはトリエチルアミン、ピリジン等を用いて還元状態を形成させ、反応に供することが望ましい。反応を行うにあたってはTHF等の有機エーテル中で行うことが望ましい。反応は0〜100℃で進行するが、THFの還流下に行うことが操作及び反応性の観点から好ましい。
【0063】
後段階の脱水環化反応においては、酸触媒としてPPTS、p−トルエンスルホン酸等を用いるとが好ましい。溶媒としてはハロゲン化炭化水素又はベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素を用い反応を行うことができる。
【0064】
本発明の一般式(I)で表される1,2−ジオキセタン誘導体は、アルカリ性条件下で化学発光を伴ってカルボニル化合物に分解するほか、アリールエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ等のエステラーゼ(カルボン酸エステルヒドロラーゼ)、酸性又はアルカリ性フォスファターゼ等の酵素によって、化学発光を伴って分解する。従って、試料中の検出物質の濃度を求めることを目的とする免疫測定法における免疫測定試薬として利用することができるほか、種々の測定における標識試薬として用いることができる。
【0065】
上記免疫測定法における検出物質としては、例えば、hCG、TSH、LH等のホルモン、AFP、CEA等の癌関連物質、HIV、HTLV−I等のウイルス抗原並びにその抗体及び核酸等を挙げることができる。
【0066】
上記免疫測定法としては、例えば、上記のような検出物質に対する特異的結合性を有する物質に上記酵素をあらかじめ結合させておき、これと検出物質を含む試料を混合し、一定時間反応させて、試料中の検出物質とそれに結合性を有する物質とを結合させる工程、及び、結合したか又は結合しなかった結合性を有する物質の量を求める工程は、酵素と本発明の1,2−ジオキセタン誘導体とを反応させ、酵素量に比例して1,2−ジオキセタン誘導体からの発光強度が増大するので、この発光強度を測定することによって該物質の濃度を求めることができる。
【0067】
本発明の1,2−ジオキセタン誘導体を含有する免疫測定試薬及びそれを用いた上記のような免疫測定も本発明の一つである。
【0068】
本発明の一般式(I)で表される1,2−ジオキセタン誘導体は熱的安定性が高く、かつ、発光量子収率が極めて高い化合物である。従って、化合物の保存にあっては、冷蔵保存によらなくとも長期間保存が可能であり、また発光の効率が良いため従来と比べ、少量で同程度の目的を達することができる。例えば、臨床検査の分野に用いた場合には、検査物質の存在を効率良く、簡便に検出することができる。
【0069】
以下、実施例及び参考例により本発明を詳細に説明する。
【0070】
【実施例】
(参考例1)
【化34】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下において、DMF10mLに60%水素化ナトリウム584mg(14.4mmol)を加えた。0℃にした後にDMF5mLに溶解した3,3,5,5−テトラメチル−1,4−ヘキサンジオール(化合物〔〕)2.09g(12.0mmol)を滴下し、30分撹拌した。次にDMF3mLに溶解した3−メトキシベンジルクロライド(化合物〔〕)1.75mL(12.1mmol)を滴下し、室温まで戻し一晩撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム溶液に投じ、酢酸エチルで抽出した。水層を酢酸エチルで抽出し、先の有機層と合わせて飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:5混合溶媒で流ししたところ、6−(3−メトキシ)ベンジルオキシ−2,2,4,4−テトラメチル−3−ヘキサノールを3.08g、収率 87.1%で無色油状物として得た。
【0071】
得られた6−(3−メトキシ)ベンジルオキシ2,2,4,4−テトラメチル−3−ヘキサノール2.63g(8.93mmol)を塩化メチレン10mLに溶解させ、窒素雰囲気下、室温において塩化メチレン30mL、PCC2.64g(12.2mmol)、セライト7.69gの混合溶液中に滴下し一晩撹拌した。反応溶液に2−プロパノール5mL、エーテル120mLを加え1時間撹拌した後、セライトろ過を行い、ろ液を濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:7の混合溶媒で流しただしたところ、6−(3−メトキシ)ベンジルオキシ−2,2,4,4−テトラメチル−3−ヘキサノン(化合物〔3〕)を2.46g、収率 94.3%で無色油状物として得た。
【0072】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ1.22(s,9H),1.27(s,6H),1.96(t,J=7.0Hz,2H),3.39(t,J=7.0Hz,2H),3.81(s,3H),4.42(s,2H),6.81(d with fine coupling,J=8.9Hz,1H),6.86−6.88(m,2H)ppm
【0073】
(参考例2)
【化35】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下、室温においてTHF15mLにジイソプロピルアミン2.10mL(15.0mmol)を加え、次いで1.60Mブチルリチウムを8.50mL(13.7mmol)加え、30分撹拌した。−78℃にした後にTHF5mLに溶解させた6−(3−メトキシ)ベンジルオキシ−2,2,4,4−テトラメチル−3−ヘキサノン(化合物〔3〕)2.27g(7.76mmol)を滴下した。反応溶液を徐々に室温に戻し3時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウムに投じ、酢酸エチルで抽出を行った。水層を酢酸エチルで抽出し、先の有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:7混合溶媒で流しだしたところ、3−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2−(3−メトキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピランを2.08g、収率 91.8%で無色油状物として得た。
【0074】
得られた3−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2−(3−メトキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピラン1.74g(5.96mmol)及びピリジン5.5mL(68.0mmol)を窒素雰囲気下、室温において塩化メチレン20mLに加えた。0℃にした後に塩化チオニル0.75mL(10.3mmol)を加え2時間撹拌した。反応溶液を飽和食塩水に投じ、酢酸エチルで抽出を行った。水層を酢酸エチルで抽出し、先の有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、塩化メチレンとヘキサンの2:1混合溶媒で流しだしたところ、5−t−ブチル−6−(3−メトキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロピラン(化合物〔4〕)を1.25g、収率76.7%で無色油状物として得た。
【0075】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ1.04(s,9H),1.39(s,6H),1.69(t,J=5.2Hz,2H),3.80(s,3H),4.01(t,J=5.2Hz,2H),6.83−6.87(m,3H),7.21(t,J=7.8Hz,1H)ppm
IR(liquid film);2924,2856,1585,1238,1047cm-1
Mass(m/z,%);259(36),218(27),203(100),151(24),135(30),111(26),77(51)
【0076】
(実施例1)
【化36】
Figure 0004421692
酸素雰囲気下、0℃において重クロロホルム5mLに5−t−ブチル−6−(3−メトキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロピラン(化合物〔4〕)70.7mg(0.258mmol)、TPP1.3mgを加え、8時間、940Wナトリウムランプで外部照射を行った。反応溶液を濃縮した後シリカゲルカラムにかけ、エーテルとヘキサンの1:20混合溶媒で流しだしたところ、6−t−ブチル−1−(3−メトキシ)フェニル−5,5−ジメチル−2,7,8−トリオキサビシクロ[4.2.0]オクタン(化合物〔5〕)を45.7mg、収率 57.9%で無色固体として得た。
【0077】
融点;107−108℃
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.99(s,9H),1.17(s,3H),1.37−1.44(m,1H),1.54(s,3H),3.01(dt,J=13.2 and 9.7Hz,1H),3.81(s,3H),4.11(q,J=9.7Hz,1H),4.40−4.45(m,1H),6.80−7.29(m,4H)ppm
IR(KBr);2972,2898,1612,1291,1091cm-1
【0078】
(参考例3)
【化37】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下、0℃においてDMF2mLに60%水素化ナトリウム153mg(1.31mmol)、次いでエタンチオール0.12mL(1.55mmol)を加え、攪拌した。DMF2mLに溶解した5−t−ブチル−6−(3−メトキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロピラン(化合物〔4〕)171mg(0.62mmol)を滴下し、2時間還流した。反応溶液を飽和食塩水に投じ、酢酸エチルで抽出を行った。水層を酢酸エチルで抽出し、先の有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:5混合溶媒で流しだしたところ、5−t−ブチル−6−(3−ヒドロキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロピラン(化合物〔〕)を131mg、収率80.7%で無色固体として得た。
【0079】
融点;131−132℃
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ1.04(s,9H),1.39(s,6H),1.68(t,J=5.3Hz,2H),4.00(t,J=5.3Hz,2H),4.62(s,1H),6.74−6.76(m,2H),6.85(d,J=7.7Hz,1H),7.17(t,J=7.7Hz,1H)ppm
IR(KBr);3401,2963,2881,1588,1442,1112cm-1
Mass(m/z,%);245(23),204(25),189(100),175(3),121(22),93(6)
【0080】
(参考例4)
【化38】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下、室温においてDMF3mLに5−t−ブチル−6−(3−ヒドロキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロピラン(化合物〔〕)92.7mg(0.356mmol)、イミダゾール(60mg,0.881mmol)を加えた。次にt−ブチルジメチルクロロシラン102mg(0.679mmol)を加え2時間攪拌した。反応溶液を飽和食塩水に投じ、酢酸エチルで抽出を行った。水層を酢酸エチルで抽出し、先の有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:10混合溶媒で流しだしたところ、5−t−ブチル−6−(3−t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロヒドロピラン(化合物〔〕)を114mg、収率85.6%で無色油状物として得た。
【0081】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.17(s,6H),0.98(s,9H),1.03(s,9H),1.38(s,6H),1.68(t,J=5.3Hz,2H),4.00(t,J=5.3Hz,2H),6.74−6.76(m,2H),6.85(d,J=7.6Hz,1H),7.14(t,J=7.6Hz,1H)ppm
IR(liquid film);2956,2880,1582,1242,1043,850cm-1
Mass(m/z,%);375(M+ ,5),359(83),318(38),252(18),203(7),151(17)
【0082】
(実施例2)
【化39】
Figure 0004421692
酸素雰囲気下、0℃において重クロロホルム10mLに5−t−ブチル−6−(3−t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロピラン(化合物〔〕)95.1mg(0.234mmol)、TPP1.2mgを加え、9時間、940Wナトリウムランプで外部照射を行った。反応溶液を濃縮した後シリカゲルカラムにかけ、エーテルとヘキサンの1:30混合溶媒で流しだしたところ、6−t−ブチル−1−(3−t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−5,5−ジメチル−2,7,8−トリオキサビシクロ[4.2.0]オクタン(化合物〔〕)を93.0mg、収率73.8%で無色油状物として得た。
【0083】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.18(s,6H),0.98(s,9H),0.99(s,9H),1.37−1.43(m,1H),1.58(s,3H),3.00(dt,J=13.2 and 9.5Hz,1H),4.07−4.14(m,1H),4.39−4.45(m,1H),6.79−7.15(m,2H),7.21(t,J=8.1Hz,2H)ppm
IR(liquid film);2957,2860,1598,1125,1057cm-1
【0084】
(参考例5)
【化40】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下においてTHF30mLに60%水素化ナトリウム1.48g(36.90mmol)を加え、氷冷下でTHF10mLに溶解した3,3,5−トリメチル1,4−ヘキサンジオール(化合物〔〕)3.07g(30.75mmol)を加え、30分攪拌した後、m−メトキシベンジルクロライド(化合物〔〕)4.47mL(30.75mmol)を加え、さらに30分攪拌した。DMF10mLを加え、2時間後さらにDMF10mLを加えた。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮し、シリカゲルカラムにかけ、ヘキサンと酢酸エチルの7:1混合溶媒で流しだしたところ、6−(3−メトキシベンジルオキシ)−2,3,3−トリメチル−3−ヘキサノール(化合物〔10〕)を5.41g、収率62.7%で黄色油状物として得た。
【0085】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.90(s,3H),0.93(s,3H),0.93(d,J=7.1Hz,3H),1.00(d,J=7.1Hz,3H),1.67(qABt,J=14.7 and 5.4Hz,2H),1.81−1.94(m,1H),2.87(d,J=5.9Hz,1H),3.15(dd,J=5.9 and 2.0Hz,1H),3.81(s,3H),3.50−3.59(m,2H),4.50(qAB,J=12.1Hz,2H),6.83(dd,J=8.3 and 2.4Hz,1H),6.89(s,1H),6.90(d,J=11.2Hz,1H),7.25(t,J=7.8Hz,1H)ppm
IR(liquid film);3447,2958,2871,1467,1266,783,743cm-1
【0086】
(参考例6)
【化41】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下において塩化メチレン80mLにセライト24.28g、PCC12.14g(56.25mmol)、塩化メチレン5mLに溶解した6−(3−メトキシベンジルオキシ)−2,3,3−トリメチル−3−ヘキサノール(化合物〔10〕)10.53g(37.55mmol)を加え、一晩攪拌した後、イソプロパノール9.92mL(0.13mol)を加え、60分後にエーテルを加え、10分攪拌し、セライトろ過、濃縮を行なった。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、ヘキサンと酢酸エチルの5:1混合溶媒で流しだしたところ、6−(3−メトキシベンジルオキシ)−2,3,3−トリメチル−3−ヘキサノン(化合物〔11〕)を9.85g、収率90.6%で無色油状物として得た。
【0087】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ1.02(d,J=6.36Hz,6H),1.16(s,6H),1.89(t,J=7.1Hz,2H),3.11(hept,J=6.8Hz,1H),3.41(t,J=6.8Hz,2H),3.82(s,3H),4.43(s,2H),6.81(d with fine coupling,J=8.3Hz,1H),6.86−6.86(m,2H),7.24(t,J=8.5Hz,1H)ppm
IR(liquid film);2968,2871,1702,1490,1266,1050,743cm-1
【0088】
(参考例7)
【化42】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下においてTHF25mLにジイソプロピルアミン4.67mL(0.033mol)、ブチルリチウム20.01mL(0.032mol)を加え、30分攪拌した。−78℃に冷却し、THF10mLに溶解した6−(3−メトキシベンジルオキシ)−2,3,3−トリメチル−3−ヘキサノン(化合物〔11〕)3.00g(0.011mol)を滴下し、−78℃で3時間攪拌し、−25℃まで温度をあげ、さらに2時間半攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:5混合溶媒で流しだし、再度シリカゲルカラムにかけ、ヘキサンと塩化メチレンの2:3混合溶媒により流しだしたところ、3−ヒドロキシ−3−イソプロピル−2−(3−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−2,3,4,5−テトラヒドロピラン(化合物〔12〕)を1.09g、収率70.41%で無色結晶として得た。
【0089】
融点;56.0−56.9℃(柱状晶;ヘキサンで再結晶)
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ1.02(d,J=7.3Hz,3H),1.13(s,3H),1.15(s,1H),1.19(d,J=7.3Hz,6H),1.19−1.26(m,1H),1.27(s,3H),1.73(sept,J=7.16,1H),2.30(td,J=13.4 and 5.9Hz,1H),3.81(s,3H),3.89(ddd,J=13.4,11.7 and 2.9Hz,1H),3.99(dd,J=11.7 and 5.9Hz,1H),4.68(s,1H),6.81(d wiht fine coupling,J=8.3Hz,1H),7.01(d,J=7.8Hz,1H),7.02(s,1H),7.23(t,J=7.8Hz,1H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3 );δ19.9,20.5,25.1,27.7,34.7,39.1,39.3,55.2,64.8,75.8,83.6,112.9,119.9,128.7,141.2,159.3ppmIR(KBr);3514,2971,2861,1601,1491,1173,1019,707cm-1
【0090】
(参考例8)
【化43】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下において無水塩化メチレン10mLにピリジン2.91mL(35.92mmol)、3−ヒドロキシ−3−イソプロピル−2−(3−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−2,3,4,5−テトラヒドロピラン(化合物〔12〕)1.01g(3.59mmol)を加え、0℃においてチオニルクロライド0.34mL(4.67mmol)を加え、一晩攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:7混合溶媒で流しだしたところ、5−イソプロピル−6−(3−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔13〕)を0.71g、収率71.27%で無色油状物として得た。
【0091】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.90(d,J=7.32Hz,6H),1.19(s,6H),1.73(t,J=5.4Hz,2H),2.43(hept,J=7.3Hz,1H),3.81(s,3H),4.04(t,J=5.1Hz,2H),6.83−6.89(m,3H),7.23(t,J=7.8Hz,1H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3 );δ24.0,27.4,28.8,32.6,39.9,55.1,62.8,113.6,115.6,122.0,122.7,128.6,139.9,148.4,158.9ppm
IR(liquid film);2958,2932,2870,1464,1241,1048,789cm-1
【0092】
(実施例3)
【化44】
Figure 0004421692
酸素雰囲気下、0℃において重クロロホルム5mLにTPP1.6mg、5−イソプロピル−6−(3−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔13〕)101.0mg(0.388mmol)を加え、1時間半940Wナトリウムランプで外部照射を行った。反応溶液を濃縮した後、濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、エーテルとヘキサンの1:20混合溶媒で流しだしたところ、6−イソプロピル−1−(3−メトキシフェニル)−5,5−ジメチル−2,7,8−トリオキサビシクロ[4.2.0]オクタン(化合物〔14〕)を67.9mg、収率59.9%で黄色油状物として得た。
【0093】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.72(d,J=7.2Hz,3H),0.81(d,J=7.2Hz,3H),1.05(s,3H),1.37(s,3H),1.37(ddd,J=13.4,7.8 and 1.7Hz,1H),2.41(sept,J=7.2Hz,1H),3.05(ddd,J=13.4,10.6 and 9.0Hz,1H),3.84(s,3H),4.23(dt,J=10.6 and 7.8Hz,1H),4.40(ddd,J=10.6,9.0 and 1.7Hz,1H),6.89−6.94(m,1H),7.29−7.32(m,3H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3 );δ18.2,18.7,24.0,25.1,33.4,35.1,36.6,55.4,61.0,96.6,108.9,113.4,114.6,120.2,128.7,139.6,159.2ppm
IR(liquid film);2967,1718,1586,1488,1458,1277,1049cm-1
【0094】
(参考例9)
【化45】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下、DMF2mLに60%水素化ナトリウム0.24g(2.30mmol)、0℃でエタンチオール0.21mL(2.88mmol)を加え、DMF2mLに溶解した5−イソプロピル−6−(3−メトキシフェニル)−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔13〕)0.30g(1.15mmol)を0℃で滴下した。滴下終了後、140℃で5時間加熱した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、酢酸エチルとヘキサンの1:5混合溶媒で流しだしたところ、6−(3−ヒドロキシフェニル)−5−イソプロピル−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔15〕)を0.25g、収率87.0%で無色結晶として得た。
【0095】
融点;140.7−141.0℃(柱状晶;塩化メチレンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶)
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.90(d,J=7.3Hz,6H),1.18(s,6H),1.17−1.74(m,2H),2.43(sept,J=7.2Hz,1H),4.02−4.05(m,2H),4.95(s,1H),6.72−6.75(m,2H),6.85(d with fine coupling,J=7.32Hz,1H),7.15−7.19(m,1H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3 );δ24.0,27.4,28.7,32.6,39.9,62.9,115.0,117.4,122.6,122.7,128.9,139.8,148.0,155.0ppm
IR(KBr);3410,2962,2922,2872,1655,1597,1016,711cm-1
【0096】
(参考例10)
【化46】
Figure 0004421692
窒素雰囲気下、DMF2mLに6−(3−ヒドロキシフェニル)−5−イソプロピル−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔15〕)0.23g(0.94mmol)、イミダゾール0.13g(1.89mmol)、t−ブチルジメチルクロロシラン0.26g(1.70mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、ヘキサンと酢酸エチルの1:6混合溶媒で流しだしたところ、6−(3−t−ブチルジメチルシロキシロキシフェニル)−5−イソプロピル−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔16〕)を0.33g、収率97.1%で無色固体として得た。
【0097】
融点;35.4−35.9℃(針状晶)
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.18(s,6H),0.89(d,J=6.8Hz,6H),0.98(s,9H),1.18(s,6H),1.71−1.74(m,2H),2.43(sept,J=7.2Hz,1H),4.01−4.04(m,2H),6.75−6.78(m,2H),6.87(d with fine coupling,J=7.5Hz,1H),7.16(t,J=7.5Hz,1H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3 );δ−4.4,18.1,24.1,25.7,27.4,28.8,32.6,40.0,62.8,119.4,121.9,122.0,123.4,128.5,140.0,148.4,155.0ppm
IR(liquid film);2957,2930,2861,1480,1306,1252,953cm-1
【0098】
(実施例4)
【化47】
Figure 0004421692
酸素雰囲気下、0℃において重クロロホルム3mLにTPP1.5mg、6−(3−t−ブチルジメチルシロキシフェニル)−5−イソプロピル−4,4−ジメチル−2,3−ジヒドロピラン(化合物〔16〕)45.7mg(0.127mmol)を加え、1時間可視光照射を行なった。反応溶液を濃縮した後、濃縮物をシリカゲルカラムにかけ、エーテルとヘキサンの1:30混合溶媒で流しだしたところ、1−(3−t−ブチルジメチルシロキシフェニル)−6−イソプロピル−5,5−ジメチル−2,7,8−トリオキサビシクロ[4.2.0]オクタン(化合物〔17〕)を42.4mg、収率85.3%で黄色油状物として得た。
【0099】
1HNMR(400MHz,CDCl3 );δ0.19(s,6H),0.70(d,J=7.2Hz,3H),0.82(d,J=7.2Hz,3H),0.99(s,9H),1.04(s,3H),1.35(s,3H),1.37(ddd,J=13.2,7.8 and 1.9Hz,1H),2.44(sept,J=7.2Hz,1H),3.03(ddd,J=13.2,10.7 and 7.8Hz,1H),4.23(dt,J=10.7 and 7.8Hz,1H),4.41(ddd,J=10.7,8.9 and 1.9Hz,1H),6.84(ddd,J=7.8,2.4 and 1.5Hz,1H),7.30−7.31(m,3H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3 );δ−4.4,18.1,18.3,24.0,25.1,25.7,33.4,35.2,36.6,60.9,96.5,108.8,119.8,120.7,120.8,128.7,139.6,155.3ppm
IR(liquid film);2929,1859,1721,1602,1585,1485,1436,1293,1211cm-1
【0100】
(試験例1)
実施例2で得られた6−t−ブチル−1−(3−t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−5,5−ジメチル−2,7,8−トリオキサビシクロ[4.2.0]オクタン(化合物〔〕)の1.00×10-5M DMSO溶液1mlを、テトラブチルアンモニウムフルオライドの1.00×10-2M DMSO溶液2mlに25℃で加え、そのときの発光を蛍光分析計で測定した。このときの発光量子収率は0.40と見積もられ、発光の半減期は13.2秒、λmax は466nmであった。
【0101】
(試験例2)
実施例2で得られた6−t−ブチル−1−(3−t−ブチルジメチルシロキシ)フェニル−5,5−ジメチル−2,7,8−トリオキサビシクロ[4.2.0]オクタン(化合物〔〕)10mgをトルエン−d8 (0.35mL)に溶解後、80℃、90℃及び100℃における恒温槽でそれぞれ加熱して経時的に 1HNMRを測定し、各温度での反応速度定数を算出した。その結果、25℃における半減期は49.2年と見積もられた。
【0102】
【発明の効果】
本発明の1,2−ジオキセタン誘導体(I)は、熱的安定性が高いため冷蔵保存等することなく保存が可能な化合物であり、かつ量子収率が極めて高い安定な発光を行うことができる化合物である。よって、保存に特別の気をつかうことなく、取り扱いが容易で、発光の発生効率が極めて高いため、発光の測定を効率良く行うことができる。例えば、臨床検査の免疫測定の分野において高感度測定を行うために有用である。

Claims (10)

  1. 一般式
    Figure 0004421692
    で表される1,2−ジオキセタン誘導体(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 及びR7 はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基又はピリジル基である。また、R2 とR3 、R4 とR5 及びR6 とR7 は一体となり、それぞれ独立に環状アルキル基を形成することもできる。Arは式(C)
    Figure 0004421692
    (式中、R8ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシエトキシ基、エトキシプロポキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、−OSi(R 10 11 12 )(ただし、R 10 、R 11 及びR 12 は互いに独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。)で表される基又はリン酸塩基である。R14は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシエトキシ基、エトキシプロポキシ基、メトキシエトキシエトキシ基又は
    Figure 0004421692
    (式中、Yは酸素原子、硫黄原子又はN−R15で表される基であり、Zは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、−OR16、−SR17又は
    Figure 0004421692
    で表される基である。ここで、R15は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシエトキシ基、エトキシプロポキシ基又はメトキシエトキシエトキシ基であり、R16、R17、R18及びR19は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基又はピリジル基である。また、R15とR16、R15とR17、R15とR18、R18とR19は一体となり環を形成することもでき、この環は2つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。)で表される基である。)。
  2. Arが、式(c)
    Figure 0004421692
    (式中、R8 及びR14は前記式(C)のR8 及びR14と同じである。)で表される基である請求項1に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  3. 1 、R2 及びR3置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、R4 、R5 、R6 及びR7 が水素原子である請求項1又は2に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  4. 1 、R2 及びR3 が炭素数1〜4のアルキル基である請求項3に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  5. Yが酸素原子であり、Zが式
    Figure 0004421692
    (式中、R18とR19とは一体となり、3〜7員環を形成する。)で表される基である請求項1乃至4のいづれか1項に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  6. 18とR19は一体となり、Zが式
    Figure 0004421692
    で表される基である請求項5に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  7. YがN−R15であり、Zが−OR16であり、R15とR16とが一体となり、〜7員環を形成するものである請求項1乃至4のいづれか1項に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  8. 15とR16とが一体となり、
    Figure 0004421692
    で表される基である請求項7に記載の1,2−ジオキセタン誘導体。
  9. 請求項1乃至8のいづれか1項に記載の1,2−ジオキセタン誘導体を含有してなることを特徴とする免疫測定試薬。
  10. 請求項9に記載の免疫測定試薬を使用することを特徴とする免疫測定方法。
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