JP4421632B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents

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本発明は、半導体装置及びその作製方法に関し、より具体的には薄膜トランジスタで代
表される半導体装置及びその作製方法に関する。また、本発明は、ガラス基板や石英基板
等の基板上に形成された結晶性を有する珪素薄膜を使用した半導体装置及びその作製方法
に関し、さらに本発明は、薄膜トランジスタ等の絶縁ゲイト型の半導体装置及びその作製
方法に関する。
従来、珪素膜を使用した薄膜トランジスタが知られている。これはガラス基板や石英基
板の上に形成された珪素膜を用いて薄膜トランジスタを構成する技術である。基板として
ガラス基板や石英基板が利用されるのはアクティブマトリクス型の液晶表示に上記薄膜ト
ランジスタを利用するためである。従来、非晶質珪素膜(aーSi)を用いて薄膜トラン
ジスタが形成されてきたが、より高性能を求めるために結晶性を有する珪素膜(本明細書
中、適宜「結晶性珪素膜」という)を利用して薄膜トランジスタを作製することが試みら
れている。
結晶性珪素膜を用いた薄膜トランジスタは、非晶質珪素膜を用いたものに比較して、2
桁以上の高速動作を行わせることができる。従って、これまで外付けのIC回路によって
構成されていたアクティブマトリクス型の液晶表示装置の周辺駆動回路を、結晶性珪素膜
により、ガラス基板又は石英基板上にアクティブマトリクス回路と同様に作り込むことが
できる。このような構成は、装置全体の小型化や作製工程の簡略化に非常に有利なものと
なり、また作製コストの低減にもつながる構成となる。
従来、結晶性珪素膜は、非晶質珪素膜をプラズマCVD法や減圧熱CVD法で成膜した
後、加熱処理又はレーザー光の照射を行うことで結晶化させることにより得られている。
しかし、このうち加熱処理による場合には、結晶化にむらができたりして、必要とする結
晶性を広い面積にわたって得ることはなかなか困難であるのが現状である。またレーザー
光の照射による場合には、部分的には高い結晶性を得ることができるが、広い面積にわた
り、良好なアニール効果を得ることが困難である。この場合、特に良好な結晶性を得るよ
うな条件でのレーザー光の照射は不安定になりやすい。
ところで、本発明者等は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素(例えばニ
ッケル)を導入し、従来よりもより低い温度の加熱処理で結晶性珪素膜を得る技術を先に
開発している(特開平6ー232059号、特開平7ー321339号)。これらの方法
によれば、結晶化の速度を上げ、短時間で結晶化できるだけでなく、従来の加熱のみによ
る結晶化の方法やレーザー光の照射のみによる非晶質膜の結晶化に比較すると、広い面積
にわたり、高い結晶性を均一に得ることができ、得られた結晶性珪素膜は実用に耐える結
晶性を有している。
しかし、上記の方法で得られた結晶性珪素膜の膜中や表面には珪素の結晶化を助長する
ために導入した当該金属元素が含有されているため、その導入量の制御が微妙であり、再
現性や安定性(得られたデバイスの電気的な安定性)に問題がある。特に、残留する当該
金属元素の影響によって、例えば得られる半導体装置の特性の経時変化や、薄膜トランジ
スタの場合であればOFF値が大きいといった問題が存在する。即ち、珪素の結晶化を助
長する金属元素は、結晶性珪素膜を得るためには貴重で有用な役割を果たすが、一端結晶
性珪素膜を得た後においては、その存在が数々の問題を引き起こすマイナス要因となって
しまう。
本発明者等は、上記のように非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素(例えば
ニッケル)を導入して加熱処理することにより、結晶性珪素膜を形成する場合における上
記諸問題点を解決すべく、各種多方面から数多くの実験、検討を重ねたところ、該結晶性
珪素膜に含まれ、残存している当該金属元素を、後述特定、特殊な手法により、極めて有
効に除去ないしは減少させ得ることを見い出し、本発明に到達するに至ったものである。
ところで、例えばアクティブマトリクス型の液晶表示装置は小型軽量であり、しかも微
細で高速動画を表示することができることから、今後のディスプレイの主力として期待さ
れている。しかし、液晶表示装置を構成する基板は透光性を必要とするという制約がある
ため、その種類は制限され、その例としてはプラスチック基板、ガラス基板、石英基板を
挙げることができる。
それらのうち、プラスチック基板は耐熱性に欠けており、また石英基板は、1000℃
程度、さらには約1100℃というような高温にも耐え得るが、極めて高価であり、特に
大面積化した場合、ガラス基板の10倍以上の価格となり、コストパフォーマンスに欠け
る。従って、耐熱性・経済性の理由から、一般的にはガラス基板が広く使用されている。
現在、液晶表示装置に求められる性能は益々高くなっており、液晶表示装置のスイチッ
ング素子として使用されている薄膜トランジスタ(以下、適宜TFTと指称する)に求め
られる性能・特性に対する要求も高まっている。そのため、ガラス基板上に結晶性を有す
る結晶性珪素膜を形成する研究が盛んに行われているが、現時点で、ガラス基板上に結晶
性珪素膜を形成するには、まず非晶質珪素膜を形成し、これを加熱して結晶化させる方法
やレーザー光を照射して結晶化させる方法が採られている。
すなわち、ガラス基板の耐熱温度は、その種類にもよるが、通常、600℃程度、或い
はそれより僅かに高い温度であるので、結晶性珪素膜を形成する工程には、そのようなガ
ラス基板の耐熱温度を越えるプロセスを採用することはできない。このため、従来、ガラ
ス基板上に結晶性珪素膜を形成するには、プラズマCVD法又は減圧CVD法により非晶
質珪素膜を形成し、上記耐熱温度以下の温度に加熱して結晶化させる方法が採用されてい
る。また、レーザー光を照射することにより珪素膜を結晶化させる方法によれば、ガラス
基板にも結晶性の優れた結晶性珪素膜を形成することが可能であり、レーザー光はガラス
基板に熱的なダメージを与えないという利点を有する。
ところが、上記レーザー光の照射により非晶質珪素膜を結晶化させた結晶性珪素膜には
、ダングリングボンド等に由来する多数の欠陥が存在する。これらの欠陥はTFTの特性
を低下させる要因であるため、このような結晶性珪素膜を利用してTFTを作製した場合
には、活性層とゲイト絶縁膜との界面の欠陥や活性層の珪素の結晶粒内や結晶粒界の欠陥
をパッシベーションする必要がある。特に結晶粒界の欠陥は電荷を散乱する最大の要因で
あるが、結晶粒界の欠陥をパッシベーションすることは非常に困難である。
他方、石英基板上にTFTを作製する場合には、例えば1000℃程度、或いは110
0℃程度というような高温の加熱処理が可能であるため、結晶性珪素膜の結晶粒界におけ
る欠陥を珪素で補償することが可能である。これに対して、ガラス基板にTFTを作製す
る場合には、高温での加熱処理が困難であり、一般に工程の最終段階において、温度30
0〜400℃程度の雰囲気で水素プラズマ処理をすることにより、結晶性珪素膜の結晶粒
界の欠陥を水素でパッシベーションしている。
また、Nチャネル型TFTは、水素プラズマ処理を実施することによって実用可能な電
界効果移動度を呈する。一方、Pチャネル型TFTでは水素プラズマ処理の効果はあまり
顕著ではない。これは結晶欠陥に起因する準位が伝導電子帯の下の比較的浅い領域に形成
されるためと解釈される。水素プラズマ処理により、結晶性珪素膜の粒界の欠陥を補償す
ることが可能であるが、欠陥を補償している水素は離脱し易いので、水素プラズマ処理さ
れたTFTの、特にNチャネル型TFTの経時的な信頼性は安定ではない。例えば、Nチ
ャネル型TFTを温度90℃の雰囲気で48時間通電すると、その移動度が半減してしま
う。
また、レーザー光を照射して得られる結晶性珪素膜の膜質は良好であるが、その膜厚が
1000オングストローム以下であると、結晶性珪素膜の表面にリッジ(凹凸)が形成さ
れてしまう。即ち、珪素膜にレーザー光を照射すると、珪素膜は瞬間的に溶解されて、局
所的に膨張し、この膨張によって生じる内部応力を緩和するために、得られる結晶性珪素
膜の表面にリッジ(凹凸)が形成される。このリッジの高低差は膜厚の1/2〜1倍程度
である。例えば膜厚が700オングストローム程度の非晶質珪素膜を加熱して結晶化した
後にレーザーアニールを実施すると、その表面には100〜300オングストローム程度
の高さを有するリッジが形成される。
絶縁ゲイト型の半導体装置において、結晶性珪素膜表面のリッジには、ダングリングボ
ンドや格子の歪み等に起因するポテンシャル障壁やトラップ準位が形成されるため、活性
層とゲイト絶縁膜との界面準位を高くしてしまう。また、リッジの頂上部は急峻であるた
めに電界が集中しやすく、このためリーク電流の発生源となり、最終的には絶縁破壊を生
じる慮れがある。また、結晶性珪素膜表面のリッジは、スパッタ法やCVD法により堆積
されるゲイト絶縁膜の被覆性を損なうものであり、絶縁不良等の信頼性を低下させる。
本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して結晶性珪素膜を
形成し、これで得られた結晶性珪素膜中における金属元素を除去するか又はその金属元素
濃度を減少させる新規で且つきわめて有用な手法を提供することを目的とする。
また本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して得られた結
晶性珪素膜から、金属元素を除去するか又はその金属元素濃度を減少させて得られた高い
結晶性を有する結晶性珪素膜を用いた高い特性を有する半導体装置及びその作製方法を提
供することを目的とする。さらに本発明は、こうして得られる半導体装置の特性や信頼性
を高くすることができる半導体装置及びその作製方法を提供することを目的とする。
また本発明は、前述の問題点を解消して、水素プラズマ処理を使用せずに、非晶質珪素
膜を結晶化された珪素膜の結晶粒界の欠陥をパッシベーションし得る半導体装置の作製方
法を提供することを目的とする。さらに本発明は、高信頼性、高移動度を有する半導体装
置の作製方法を提供することを目的とし、特に堆積膜から成るゲイト絶縁膜を有し、ガラ
ス基板の半導体装置の信頼性、特性を向上させた半導体装置及びその作製方法を提供する
ことを目的とする。以上のほか、本発明は、以下に記載する構成に対応する目的を有する
が、これらについては、以下の記載において適宜補足して説明する。
(1)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入して
第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、酸化性雰
囲気中で第2の加熱処理を行い、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減
少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した
領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有することを特徴とする
半導体装置の作製方法を提供する。
(2)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し第
1の加熱処理により前記非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得る工程と、酸化性
雰囲気中で第2の加熱酸化処理を行って該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成し、該熱
酸化膜に当該金属元素をゲッタリングさせることにより該結晶性珪素膜中に存在する当該
金属元素を除去または減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と
、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを
有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(3)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入して
第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、酸化性雰
囲気中で第2の加熱酸化処理を行って該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又
は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、パターニングを施
し薄膜トランジスタの活性層を形成する工程と、熱酸化によりゲイト絶縁膜の少なくとも
一部を構成する熱酸化膜を該活性層の表面に形成する工程とを有することを特徴とする半
導体装置の作製方法を提供する。
(4)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を選択的に導入する
工程と、第1の加熱処理により該金属元素が選択的に導入された領域から膜に平行な方向
に結晶成長を行なわす工程と、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い該結晶成長が行わ
れた領域の表面に熱酸化膜を形成する工程と、該熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜
を除去した領域を用いて半導体装置の活性層を形成する工程とを有することを特徴とする
半導体装置の作製方法を提供する。
(5)本発明は、第1及び第2の酸化膜に挟まれた結晶性珪素膜を有し、該結晶性珪素
膜は珪素の結晶化を助長する金属元素を含有しており、該結晶性珪素膜中において、該金
属元素は該第1及び/又は第2の酸化膜との界面近傍において高い濃度分布を有している
ことを特徴とする半導体装置を提供する。
(6)本発明は、酸化膜からなる下地膜と、該下地膜上に形成された結晶性珪素膜と、
該結晶性珪素膜上に形成された熱酸化膜とを有し、該結晶性珪素膜中には珪素の結晶化を
助長する金属元素が含まれ、該珪素の結晶化を助長する金属元素は下地及び/又は熱酸化
膜との界面近傍において高い濃度分布を有し、該熱酸化膜は薄膜トランジスタのゲイト絶
縁膜の少なくとも一部を構成することを特徴とする半導体装置を提供する。
(7)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入して
第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得る工程と、ハロゲ
ン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って、該結晶性珪素膜中に存在する
当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程
と、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(8)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入して
第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、ハロゲン
元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱酸化処理を行い、該結晶性珪素膜の表面に熱酸
化膜を形成し、該熱酸化膜に当該金属元素をゲッタリングさせることにより該結晶性珪素
膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜
を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を
形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(9)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し第
1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、ハロゲン元
素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱酸化処理を行い該結晶性珪素膜中に存在する当該
金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、
パターニングを施し薄膜トランジスタの活性層を形成する工程と、熱酸化によりゲイト絶
縁膜の少なくとも一部を構成する熱酸化膜を該活性層の表面に形成する工程とを有するこ
とを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(10)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を選択的に導入す
る工程と、第1の加熱処理により該金属元素が選択的に導入された領域から膜に平行な方
向に結晶成長を行わせる工程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理
を行って、該結晶成長が行われた領域の表面に熱酸化膜を形成する工程と、該熱酸化膜を
除去する工程と、該熱酸化膜を除去した領域を用いて半導体装置の活性層を形成する工程
とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(11)本発明は、第1及び第2の酸化膜に挟まれた結晶性珪素膜を有し、該結晶性珪
素膜は水素及びハロゲン元素を含み、かつ珪素の結晶化を助長する金属元素を含有してお
り、該結晶性珪素膜中において、該金属元素は該第1及び/又は第2の酸化膜との界面近
傍において高い濃度分布を有していることを特徴とする半導体装置を提供する。
(12)本発明は、酸化膜からなる下地膜と、該下地膜上に形成された結晶性珪素膜と
、該結晶性珪素膜上に形成された熱酸化膜とを有し、該結晶性珪素膜中には珪素の結晶化
を助長する金属元素及び水素及びハロゲン元素が含まれ、該珪素の結晶化を助長する金属
元素は下地及び/又は熱酸化膜との界面近傍において高い濃度分布を有し、該ハロゲン元
素は下地及び/又は熱酸化膜との界面近傍において高い濃度分布を有し、該熱酸化膜は薄
膜トランジスタのゲイト絶縁膜の少なくとも一部を構成することを特徴とする半導体装置
を提供する。
(13)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶
性珪素膜に対してレーザー光又は強光の照射を行う工程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性
雰囲気中で第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は
減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去し
た領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有することを特徴とす
る半導体装置の作製方法を提供する。
(14)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶性
珪素膜に対してレーザー光又は強光の照射を行って該結晶性珪素膜中に存在する当該金属
元素を該結晶性珪素膜中において拡散させる工程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気
中で第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を形成される熱酸
化膜中にゲッタリングする工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱
酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(15)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的且つ選択
的に導入する工程と、該非晶質珪素膜に対して第1の加熱処理を施し、該意図的かつ選択
的に金属元素が導入された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる工程と、レーザ
ー光又は強光の照射を行って該結晶成長した領域中に存在する当該金属元素を拡散させる
工程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該結晶成長した
領域に存在する当該金属元素を、形成される熱酸化膜中にゲッタリングする工程と、該工
程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の
熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法
を提供する。
(16)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶
性珪素膜をパターニングし半導体装置の活性層を形成する工程と、該活性層に対してレー
ザー光又は強光の照射を行う工程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱
処理を行って該活性層中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程で
形成された熱酸化膜を除去する工程と、該活性層の表面に再度の熱酸化により熱酸化膜を
形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(17)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得る工程と、該結
晶性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成する工程と、該活性層に対しレ
ーザー光又は強光の照射を行う工程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加
熱処理を行って該活性層中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程
で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該活性層の表面に再度の熱酸化により熱酸化膜
を形成する工程とを有し、該活性層は側面が下地面とのなす角が20°〜50°を有する
傾斜した形状を有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(18)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶
性珪素膜に対しレーザー光又は強光の照射を行う工程と、酸化性雰囲気中で第2の加熱処
理を行って該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工
程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の
熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法
を提供する。
(19)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶
性珪素膜に対しレーザー光又は強光の照射を行って該結晶性珪素膜中に存在する当該金属
元素を該結晶性珪素膜中において拡散させる工程と、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を
行い、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を、形成される熱酸化膜中にゲッタリン
グする工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した領
域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有することを特徴とする半
導体装置の作製方法を提供する。
(20)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的且つ選択
的に導入する工程と、該非晶質珪素膜に対して第1の加熱処理を施し、該意図的かつ選択
的に金属元素が導入された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる工程と、レーザ
ー光又は強光の照射を行って該結晶成長した領域中に存在する当該金属元素を拡散させる
工程と、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該結晶成長した領域に存在する当該金
属元素を、形成される熱酸化膜中にゲッタリングする工程と、該工程で形成された熱酸化
膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜
を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(21)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶
性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成する工程と、該活性層に対してレ
ーザー光又は強光の照射を行う工程と、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該活性
層中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜
を除去する工程と、該活性層の表面に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有
することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(22)本発明は、非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し
て第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、該結晶
性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成する工程と、該活性層に対してレ
ーザー光又は強光の照射を行う工程と、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該活性
層中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜
を除去する工程と、該活性層の表面に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有
し、該活性層は側面が下地面とのなす角が20°〜50°を有する傾斜した形状を有する
ことを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(23)本発明は絶縁表面を有する基板上に非晶質珪素膜を成膜する工程と、該非晶質
珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入する工程と、温度750℃〜1
100℃の第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得る工程
と、該結晶性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成する工程と、ハロゲン
元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該活性層中に存在する当該金属元
素を除去又は減少させる工程と、該工程で形成された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸
化膜を除去した後に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する工程とを有し、該第2の加熱
処理の温度は該第1の加熱処理の温度よりも高いことを特徴とする半導体装置の作製方法
を提供する。
(24)本発明は絶縁表面を有する基板上に非晶質珪素膜を成膜する工程と、該非晶質
珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入する工程と、温度750℃〜1
100℃の第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得る工程
と、該結晶性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成する工程と、ハロゲン
元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って、該活性層中に存在する当該金属
元素を、形成される熱酸化膜中にゲッタリングさせる工程と、該工程で形成された熱酸化
膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した後に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する
工程とを有し、該第2の加熱処理の温度は該第1の加熱処理の温度よりも高いことを特徴
とする半導体装置の作製方法を提供する。
(25)本発明は絶縁表面を有する基板上に非晶質珪素膜を成膜する工程と、該非晶質
珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的且つ選択的に導入する工程と、温度7
50℃〜1100℃の第1の加熱処理により該非晶質珪素膜の当該金属元素が意図的且つ
選択的に導入された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる工程と、パターニング
を行って該膜に平行な方向に結晶成長した領域を用いて半導体装置の活性層を形成する工
程と、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該活性層中に存在
する当該金属元素を、形成される熱酸化膜中にゲッタリングさせる工程と、該工程で形成
された熱酸化膜を除去する工程と、該熱酸化膜を除去した後に再度の熱酸化により熱酸化
膜を形成する工程とを有し、該第2の加熱処理の温度は該第1の加熱処理の温度よりも高
いことを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(26)本発明は、非晶質珪素膜を形成する工程と、該非晶質珪素膜の表面に珪素の結
晶化を助長する金属元素を接して保持させる工程と、第1の加熱処理を行って該非晶質珪
素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、酸素と水素とフッ素とを含む雰囲気中にお
いて温度500℃〜700℃での第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に熱酸化
膜を形成する工程と、該熱酸化膜を除去する工程とを有することを特徴とする半導体装置
の作製方法を提供する。
(27)本発明は、非晶質珪素膜を形成する工程と、該非晶質珪素膜の表面に珪素の結
晶化を助長する金属元素を接して保持させる工程と、第1の加熱処理を行って該非晶質珪
素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、酸素と水素とフッ素と塩素とを含む雰囲気
中において温度500℃〜700℃での第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に
熱酸化膜を形成する工程と、該熱酸化膜を除去する工程とを有することを特徴とする半導
体装置の作製方法を提供する。
(28)本発明は、非晶質珪素膜を形成する工程と、該非晶質珪素膜の表面に珪素の結
晶化を助長する金属元素を接して保持させる工程と、加熱処理を行って該非晶質珪素膜を
結晶化させ結晶性珪素膜を得る工程と、フッ素及び/又は塩素を含む雰囲気中においてウ
エット酸化膜を前記結晶性珪素膜の表面に形成する工程と、該酸化膜を除去する工程とを
有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(29)本発明は、結晶性を有する珪素膜を有する半導体装置であって、該珪素膜には
珪素の結晶化を助長する金属元素が1×1016cm-3〜5×1018cm-3の濃度で含まれ
、フッ素原子が1×1015cm-3〜1×1020cm-3の濃度で含まれ、水素原子が1×1
17cm-3〜1×1021cm-3の濃度で含まれていることを特徴とする半導体装置を提供
する。なお、濃度単位「・・・cm-3」は1立方センチメートル当たりの原子数(ato
ms/cm3) の意味であり、この点、本明細書中同じである。
(30)本発明は、非晶質珪素膜を形成する工程と、該非晶質珪素膜を結晶化して結晶
性珪素膜を形成する工程と、フッ素化合物気体が添加された酸化性雰囲気中で加熱して、
該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を成長させる工程と、該結晶性珪素膜表面の熱酸化膜を
除去する工程と、該結晶性珪素膜の表面に絶縁膜を堆積する工程とを有することを特徴と
する半導体装置の作製方法を提供する。
(31)本発明は、非晶質珪素膜を形成する工程と、レーザー光を照射して該非晶質珪
素膜を結晶化して結晶性珪素膜を形成する工程と、フッ素化合物気体が添加された酸化性
雰囲気中で加熱して該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を成長させる工程と、該結晶性珪素
膜表面の熱酸化膜を除去する工程と、該結晶性珪素膜の表面に絶縁膜を堆積する工程とを
有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(32)本発明は、絶縁表面を有する基板上に薄膜トランジスタを作製する方法におい
て、非晶質珪素膜を形成する工程と、該非晶質珪素膜を結晶化して結晶性珪素膜を形成す
る工程と、フッ素化合物気体が添加された酸化性雰囲気中で加熱して、該結晶性珪素膜の
表面に熱酸化膜を成長させる工程と、該結晶性珪素膜表面の熱酸化膜を除去する工程と、
該結晶性珪素膜を整形して薄膜トランジスタの活性層を形成する工程と、該活性層の表面
に絶縁膜を堆積して、少なくともチャネル領域の表面にゲイト絶縁膜を形成する工程と、
該ゲイト絶縁膜の表面にゲイト電極を形成する工程と、該ゲイト電極をマスクにして該活
性層に導電型を付与する不純物イオンを注入して、ソース、ドレインを自己整合的に形成
する工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法を提供する。
(33)本発明は、絶縁表面を有する基板上に薄膜トランジスタを作製する方法におい
て、非晶質珪素膜を形成する工程と、該非晶質珪素膜を結晶化し結晶性珪素膜を形成する
工程と、該結晶性珪素膜にレーザー光を照射する工程と、フッ素化合物気体が添加された
酸化性雰囲気中で加熱して該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を成長させる工程と、該結晶
性珪素膜表面の熱酸化膜を除去する工程と、該結晶性珪素膜を整形して、薄膜トランジス
タの活性層を形成する工程と、該活性層の表面に絶縁膜を堆積して少なくともチャネル領
域の表面にゲイト絶縁膜を形成する工程と、該ゲイト絶縁膜の表面にゲイト電極を形成す
る工程と、該ゲイト電極をマスクにして該活性層に導電型を付与する不純物イオンを注入
して、ソース、ドレインを自己整合的に形成する工程とを有することを特徴とする半導体
装置の作製方法を提供するものである。
以上のとおり、本発明によれば、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して得られた
結晶性珪素膜における当該金属を除去し、またその濃度を減少させることができ、酸素等
を含む酸化性雰囲気、特にハロゲンが添加された酸化性雰囲気で当該金属をケッタリング
することにより、優れた結晶性を有する珪素膜が得られる。また、これらの結晶性珪素膜
を用いて、より信頼性が高く、優れた性能を備えた薄膜半導体装置が得られる。
また、本発明に係る半導体装置の作製方法において、フッ素が添加された酸化性雰囲気
中で熱酸化膜を成長させるようにすることにより、ガラス基板の歪み点以下の温度で、数
時間〜10数時間加熱することで、数100オングストロームの膜厚に熱酸化膜を成長さ
せることが可能である。また、熱酸化膜を成長させることにより、余剰のSiが生成され
、結晶性珪素膜の結晶粒界の欠陥をSiでパッシベーションすることができるため、水素
プラズマ処理を不要にすることが可能になる。
さらに、熱酸化工程により、結晶性珪素膜の表面を平坦化することが可能であるため、
レーザー光を照射して結晶性珪素膜を得る工程を採用しても、堆積膜から成るゲイト絶縁
膜とを被覆性良く成膜することが可能である。このため、ゲイト絶縁膜と活性層との界面
準位を低くすることができる。またレーザー光を照射して得られた結晶性珪素膜は結晶性
に優れるため、半導体装置の移動度をより向上させることもできる。従って、ガラス基板
のように、例えば1000℃程度というような高温での処理が困難な基板上に、高移動度
、高信頼性のTFT等の絶縁ゲイト型の半導体装置を作製することができる。
本発明の典型的な一態様においては、まず、予め形成した非晶質珪素膜の表面に珪素の
結晶化を助長する金属元素を導入し、当該金属元素を利用して結晶性珪素膜を形成する。
次いでこの結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成することにより、当該金属元素を該熱酸
化膜中へ移行ないしはゲッタリングさせ、該結晶性珪素膜中における当該金属元素の濃度
を低下させ又は当該金属元素を除去する。
上記非晶質珪素膜の形成は、プラズマCVD法や減圧熱CVD法、その他適宜の手法に
より行うことができる。該非晶質珪素膜は適宜の固体の面上に形成するが、半導体装置と
して構成する場合には基板上に形成される。基板としては特に限定はなく、ガラス基板や
石英基板のほか、セラミックス基板その他の基板が使用される。また、該非晶質珪素膜は
、それらの基板の表面上に形成された、例えば酸化珪素膜等の膜上にも形成されるが、本
明細書中基板とは、これらの場合をも含めた意味である。
次いで、上記のように予め形成した非晶質珪素膜の表面に珪素の結晶化を助長する金属
元素を導入する。この珪素の結晶化を助長する金属元素としては鉄(Fe)、ニッケル(
Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd
)、オスニウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)及び金(Au
)から選ばれた一種又は複数種類の金属元素が用いられる。これら金属元素については、
本明細書に記載する何れの発明においても珪素の結晶化を助長する金属元素として使用さ
れる金属元素であり、本明細書中、これらを含めて、適宜「ニッケルで代表される珪素の
結晶化を助長する金属元素」と指称している。
これら金属元素を導入する箇所としては、(ア)非晶質珪素膜の全面、(イ)非晶質珪
素膜の膜面における適宜箇所のスリット状の面(この態様では、好ましくは非晶質珪素膜
の面上にスリット状の開口部が設けられる)、(ウ)非晶質珪素膜の面の端部(例えば非
晶質珪素膜の膜面が矩形の面であるとすれば、その一方の端部、二方の端部、三方の端部
又は四方の端部、また非晶質珪素膜の膜面が円形の面であれば、その周縁部分、等)、(
エ)非晶質珪素膜の膜面中央部、(オ)点状(すなわち、非晶質珪素膜の膜面に所定間隔
を置いた点状)等、特に限定はないが、好ましくは上記(ア)〜(イ)の態様で導入され
る。
上記(イ)の態様におけるスリット状の面に導入する態様における、スリット状の開口
部の寸法としては、特に限定はないが、例えばその導入の仕方として、下記のとおり金属
塩の溶液を塗布する態様では、該溶液の濡れ性や流動性等の如何にもよるが、その幅は例
えば20μm以上とすることができる。またその長手方向の長さは任意に決めればよく、
例えば数十μm〜30cm程度の範囲とすることができる。また、当該金属元素を非晶質
珪素膜の裏面に導入する態様も採られ、その表裏両面に導入することもできる。
また、非晶質珪素膜への、それら金属元素の導入の仕方としては、当該金属元素を非晶
質珪素膜の表面又はその内部に存在させ得る手法であれば特に限定はなく、例えばスパッ
タ法、CVD法、プラズマ処理法(含:プラズマCVD法)、吸着法、金属塩の溶液を塗
布する方法を使用することができる。このうち溶液を用いる方法は簡便であり、金属元素
の濃度調整が容易であるという点で有用である。金属塩としては各種塩を用いることがで
き、溶媒としては水のほか、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類その他の有機溶媒
、或いは水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができ、また、それら金属塩が完全に溶解
した溶液とは限らず、金属塩の一部又は全部が懸濁状態で存在する溶液であってもよい。
金属塩の種類については、上記のように溶液又は懸濁液として存在し得る塩であれば有
機塩や無機塩を問わず何れも使用できる。例えば、鉄塩としては臭化第1鉄、臭化第2鉄
、酢酸第2鉄、塩化第1鉄、塩化第1鉄、フッ化塩化第2鉄、硝酸第2鉄、リン酸第1鉄
、リン酸第2鉄等が挙げられ、コバルト塩としては、臭化コバルト、酢酸コバルト、塩化
コバルト、フッ化コバルト、硝酸コバルト等が挙げられる。
また、ニッケル塩としては、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、蓚酸ニッケル、炭酸ニッケ
ル、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、蟻酸ニッケル、酸化
ニッケル、水酸化ニッケル、ニッケルアセチルアセテート、4ーシクロヘキシル酪酸ニッ
ケル、2ーエチルヘキサン酸ニッケル等を挙げることができる。また、ルテニウム塩の例
としては塩化ルテニウム等が、ロジウム塩の例としては塩化ロジウム等が、パラジウム塩
の例としては塩化パラジウム等が、オスミウム塩の例としては塩化オスミウム等が、イリ
ジウム塩の例としては3塩化イリジウムや4塩化イリジウム等が、白金塩の例としては塩
化第2白金等が、銅塩の例としては酢酸第2銅、塩化第2銅、硝酸第2銅が、金塩の例と
しては3塩化金、塩化金等が挙げられる。
以上のようにして金属元素を非晶質珪素膜へ導入した後、当該金属元素を利用して結晶
性珪素膜を形成する。この結晶化は加熱処理(熱結晶化:Solid Phase Cr
ystalization)、レーザー光又は紫外線、赤外線等の強光の照射によって行
うが、好ましくは加熱処理が用いられる。また加熱処理で行う場合には、その後にレーザ
ー光の照射又は強光の照射を行ってもよい。この熱結晶化は加熱雰囲気として水素或いは
酸素を含む雰囲気でも進行するが、好ましくは窒素やアルゴン等の不活性雰囲気が用いら
れる。なお、この加熱処理又はこの加熱処理温度を、本明細書中、適宜「第1の加熱処理
」又は「第1の加熱処理温度」と指称している。
上記第1の加熱処理は、温度約450〜1100℃の範囲で行うことができ、好ましく
は約550〜1050℃の範囲で行うことができる。結晶化は温度400℃程度でも進行
するが、この場合には結晶化速度が遅く、長時間を要することから、その温度は、約45
0℃以上、好ましくは550℃程度以上である。基板として石英基板等の耐熱性基板を用
いる場合には、その温度は、好ましくは700℃以上、さらに好ましくは750℃以上で
ある。その加熱処理温度がより高ければ、より良質の結晶が得られ、また結晶化速度を上
げることができる。
基板として、例えば歪点667℃のガラス基板を用いる場合には、その歪点との関係で
第1の加熱温度は600〜650℃程度が限度であるが、耐熱性がより高いガラス基板で
あれば、その以上の温度でもよいことはもちろんである。石英基板の場合には約1100
℃まで適用することができるが、1050℃程度以下であるのが好ましい。約1050℃
を越えると、石英で形成された治具が歪んでしまったり、装置に負担がかかるからである
。この意味では980℃以下とすることが好ましいが、より耐熱性の治具を用いる場合等
では1100℃程度でも実施することができる。また、この加熱処理の後に、レーザー光
の照射又は赤外線や紫外線等の強光の照射を行うこともできる。
次いで、この結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成する。本発明においては、これによ
って、当該金属元素を該熱酸化膜中へ移行、或いはゲッタリングさせ、結晶性珪素膜中に
おける当該金属元素の濃度を低下させ又は当該金属元素を除去することができる。熱酸化
膜の形成には酸化性雰囲気を用いるが、その好ましい態様としては、(カ)酸素雰囲気、
(キ)酸素を含む雰囲気、(ク)熱酸化膜形成時の温度で酸素を放出する化合物を含む雰
囲気、(ケ)ハロゲンを含む雰囲気、(コ)、(カ)〜(ク)の酸素とハロゲンを含む雰
囲気等が用いられる。
この熱酸化膜の形成は、前記熱結晶化で適用した温度と同様の範囲、すなわち約450
〜1100℃の範囲で行うことができ、好ましくは約700〜1050℃の範囲、さらに
好ましくは約800〜1050℃の範囲で行うことができる。この温度は、熱結晶化で適
用した温度(第1の加熱処理温度)と同程度でも行えるが、熱結晶化で適用した温度より
も高い温度であるのがより好ましい。これによって熱酸化膜を形成するとともに、第1の
加熱処理温度と同程度の温度で行った場合に比べて、熱結晶化をさらに進めることができ
る。
こうして結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成するが、この時、酸化性雰囲気中の酸素
の作用、ハロゲンの作用又は酸素とハロゲンの作用により、熱酸化膜中に、当該金属元素
がゲッタリングされ、結晶性珪素膜中の当該金属元素の濃度が低下するか又は当該金属元
素が除去される。さらに熱酸化膜の形成に従い、結晶性珪素膜の結晶性の改善が行われる
。なお、この熱酸化膜の形成のための加熱処理又はその温度を、本明細書中、適宜「第2
の加熱処理」又は「第2の加熱処理温度」と指称している。
次いで、当該金属元素をゲッタリングした該熱酸化膜を除去する。この熱酸化膜を除去
する手法としては、該熱酸化膜を除去できる手法であれば特に限定はないが、例えばバッ
ファーフッ酸、その他フッ酸系のエッチャントを用いて行うことができる。こうして、高
い結晶性を有し、且つ、当該金属元素が除去され又は当該金属元素の濃度が低い結晶性珪
素膜が得られる。この結晶性珪素膜は、半導体装置における各種素子として優れた特性を
有し、特にその活性層として極めて優れた特性を有する。
図1〜図4は、本発明によって得られた結晶性珪素膜の数例についての顕微鏡写真であ
る。図1〜図2は光学顕微鏡による倍率450倍の拡大写真、図3は透過型電子顕微鏡(
TEM)による倍率50000倍(5万倍)の拡大写真、図4は、同じく透過型電子顕微
鏡による倍率250000倍(25万倍)の拡大写真である。
このうち図1は、ニッケル元素を長方形の非晶質珪素膜の一端部に導入、適用して結晶
化させて得た結晶性珪素膜であり、図2は、ニッケル元素を非晶質珪素膜の全面に導入、
適用して結晶化させて得た結晶性珪素膜である。図1の写真から明らかなとおり、結晶が
一端から他の端に向けて平行又はほぼ平行に成長していることが分かる。またニッケル元
素を非晶質珪素膜の全面に適用して成長させた場合である、図2の写真では、星状の濃淡
が見られ、結晶が多数の点を中心として放射状に成長していることが分かる。
次に、図3〜図4は透過型電子顕微鏡による拡大写真であるが、これら図3〜図4に示
す結晶性珪素膜は、概略、以下(A)〜(G)の工程で得たものである(なお、これらの
工程は後述実施例21の工程と類似の工程である)。これら(A)〜(G)の工程を模式
的に図5として示している。
(A)充分平滑な平面を有する石英基板を洗浄し、その表面に減圧熱CVD法(LPC
VD法)により、非晶質珪素膜を500オングストロームの厚さに成膜した。(B)次に
、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いたCVD法により酸化珪素膜を700オング
ストロームの厚さに成膜し、それをパターニングすることにより開口を形成した。ここで
はその開口の幅を30μm、長さを3cmとした。この開口の底部では非晶質珪素が露呈
した状態となる。
(C)ニッケルが100ppmの濃度(重量換算)のニッケル酢酸塩水溶液をスピンコ
ーターにより、図5中(C)として示すように塗布した。(D)ニッケル酢酸塩水溶液は
付着した状態で、窒素雰囲気中、温度600℃(第1の加熱処理温度に相当する)、8時
間の加熱処理を行った。(E)酸化珪素膜のマスクを除去し、横成長した領域を有する結
晶性珪素膜を得た。
(F)HClを3体積%含有した酸素雰囲気(常圧)中で、温度950℃(第2の加熱
処理温度に相当する)、20分の加熱処理を行った。この結果200オングストロームの
酸化膜が形成され、珪素膜の膜厚は400オングストロームとなった。なお、この熱酸化
膜の形成時における、結晶性珪素膜の膜厚の減少に従い、未結晶状態、或いは完全には結
晶化していない珪素が、熱酸化膜の形成に消費され、結晶性の改善、結晶粒界の不活性化
が進行すると推認される。次いで、(G)、(F)で形成された酸化膜をバッファーフッ
酸を用いて除去した。
図3〜図4から明らかなとおり、本発明に係る結晶性珪素膜中の結晶は、下記(サ)〜
(ス)の特徴を有していることが分かる。(サ)結晶格子の構造がほぼ特定方向に連続的
に連なっている。(シ)細い棒状結晶又は細い扁平棒状結晶に成長している。(ス)複数
の細い棒状結晶又は細い扁平棒状結晶に成長し、且つ、それらが間隔を置いて平行又はほ
ぼ平行に成長している。また、図4の写真を見ると、例えば左下から右上への斜め方向に
0.15μm程度の幅の細い棒状結晶が延びており、両幅端縁には明確な境界(結晶粒界
)があることが分かる。なお、図3〜図4の写真に線状等の濃淡が観られるのは、各棒状
結晶間の結晶面の向きの違いによるものである。
この点、後述各実施例で得られた結晶性珪素膜についても、光学顕微鏡及び透過型電子
顕微鏡により個々に観察したが、結晶径(幅)には相違が観られるが、何れも上記(サ)
〜(ス)のような特徴を有していた〔なお、各結晶棒の径(幅)には、0.1〜1μm程
度というように、ある程度の相違が観られた〕。
このように、本発明に係る結晶性珪素膜中の結晶は、巨視的に観ても、微視的に観ても
、平行又はほぼ平行に成長し、上記(サ)〜(ス)の特徴を有している。そしてその見方
を変えると、それら各結晶のそれぞれは単結晶であるが、それらの集合体としてみれば、
一種の多結晶(Polyーcrystal)状態であると云うこともできる。
図7(a)〜(b)は、本発明で得られた結晶性珪素膜について、上記図1〜図4で代
表される数多くの顕微鏡写真から観察された結果を基に想定される結晶成長の形態を模式
的に図示したものである。まず、図7(a)は、一例として非晶質珪素膜面の一端に珪素
の結晶化を助長する金属元素を存在させて成長させた場合である。この場合、珪素の結晶
は、金属の添加領域から結晶格子が連続的に連なり、線状に、しかも平行又はほぼ平行に
成長する。
次に、図7(b)は、珪素の結晶化を助長する金属元素を非晶質珪素膜面の全面に存在
させて成長させた場合である。この場合には、珪素の結晶は、非晶質珪素膜面の全面にお
いて無数の点中心から放射状に成長し、放射状の各結晶は結晶格子が連続的に連なって棒
状に成長している。また各点中心から延びる相隣る放射状結晶棒の位置関係をみると、各
結晶棒が相互に平行又はほぼ平行に成長する(全体として観れば放射状、即ち末広がりに
なっているが、結晶成長方向の一部分をカットして観ると、各結晶棒は相互に平行又はほ
ぼ平行になっている)。
ところで、例えばTFT(一般のMOS型トランジスタも同じであるが、ここではTF
Tを例にし、これを中心に記載する)の動作速度を高くするには、チャネル長を短かくす
ることが有効である。しかしチャネル長を1μm以下というように短かくすると、短チャ
ネル効果と呼ばれる不都合が生じる。具体的にはサブスレッシュルド特性の悪化、しきい
値の減少といった問題が発生する。
ここで、サブスレッショルド特性(S値とも指称される)とは、図8に模式的に示すよ
うに、TFTのスイッチをONとした時点における立ち上がり特性を意味する。具体的に
は立ち上がりが急峻ならば、サブスレッショルド特性は良く、そのTFTは高速動作をさ
せることができる。他方、サブスレッショルド特性が悪いTFTは立ち上がり曲線の傾き
が小さく(=曲線が寝ている)、高速動作には向かないものとなる。
短チャネル効果におけるサブスレッショルド特性の悪化は、現時点での技術的知識(現
時点での技術的知識ないしは従来の理論)からすると、以下のように説明することができ
る。まずチャネルが短かくなるということは、ソース領域とドレイン領域の距離が短かく
なることを意味する。一般にチャネルは真性(I型半導体)であり、ソース領域、ドレイ
ン領域はN型又はP型である。例えば真性半導体とN型半導体とが接すれば、N型半導体
の半導体としての性質が真性半導体の内部へ影響を及ぼすが、このことはPN接合モデル
の例からも理解される。
TFTの場合、上記の影響はチャネルの内部へと及ぼされることになる。すなわち、ソ
ース領域、ドレイン領域からチャネル内部へとN型又はP型の影響が及ぶことになる。こ
の影響の具合い、すなわち該影響が及ぶ距離はチャネルが短かくなっても変わらない。
チャネル長がどんどん短かくなってゆくと、チャネル長の寸法に対する上記ソース領域
、ドレイン領域からチャネルへ及ぼされる影響が無視できなくなる。極端な場合には、ソ
ース領域、ドレイン領域からチャネル内部へと及ぼされる影響の距離がチャネル長よりも
長くなる場合もあり得る。このような状態においてはゲイト電極からの電界の印加によっ
て、チャネルの導電型の変化が制御され、ソース領域、ドレイン間の導電率が変化すると
いうTFT(MOS型トランジスタについても同じ)の動作に障害が出てくる。そして、
この結果、サブスレッショルド特性の悪化という状態が生じる。
従って、以上のような技術認識(現時点での技術的知識ないしは従来の理論)からする
と、本発明により得られる結晶性珪素膜を使用したTFTにおいても、当然、短チャネル
効果が現われることが予想される。ところが、本発明により得られる結晶性珪素膜を使用
したTFTでは、1μm以下のチャネル長であっても短チャネル効果が現われず、そのよ
うな障害や悪化がないことが分かった。
本発明で得られる、前述(サ)〜(ス)の特徴を有する結晶性珪素膜の結晶、即ち、(
サ)結晶格子構造が概略特定方向において連続的に連なっている、(シ)細い棒状結晶又
は細い扁平棒状結晶に成長している、或いは(ス)複数の細い棒状結晶又は細い扁平棒状
結晶に成長し、且つ、それらが間隔を置いて平行又はほぼ平行に成長している、結晶にお
いては、短チャネル効果がみられないばかりか、従来の技術認識では説明の付かないきわ
めて良好なサブスレッショルド特性を示し、そしてこれに見合った高速動作をすることが
分かった。
表1〜表2及び図9はその一例を示すものである。ここで使用した半導体装置は、前述
図5に示す工程に続き、概略、以下の(H)〜(L)の工程で作製したものである。これ
らの工程を図6として図示している。なお、図6中(G)の工程については図5に示す工
程中の(G)工程に相当している。
(H)、(A)〜(F)までの工程で形成された結晶性珪素膜をパターニングし、薄膜
トランジスタの活性層を形成した。(I)次いで、GI膜(ゲイトインシュレイター膜)
として、酸化珪素膜を、成膜ガスとしてSiH4+N2Oの混合ガスを用いてプラズマCV
D法により成膜した。
(J)HClを3体積%含有した酸素雰囲気(常圧)中で、温度950℃、28分の加
熱処理を行った。この結果、300オングストロームの熱酸化膜が形成され、結晶性珪素
膜の膜厚は250オングストロームであった。なお、この熱酸化膜の形成時における、結
晶性珪素膜の膜厚の減少に従い、未結晶状態、或いは完全には結晶化していない珪素が、
熱酸化膜の形成に消費され、結晶性の改善、結晶粒界の不活性化が進行すると推認される
。また、ここで形成された熱酸化膜は、GI膜中に活性化された酸素分子が侵入する関係
から、活性層の表面に形成されている。
(K)スパッタ法により、4000オングストローム厚のアルミニウム膜を形成し、ま
た、このアルミニウムにはスカンジウムを0.18重量%含有させた。さらにアルミニウ
ム膜の表面に約100オングストロームの陽極酸化膜を形成した。(L)次いで、レジス
トマスクを配置し、アルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極の原型を作製した。
表1はNチャネル型のTFT、表2はPチャネル型のTFTとして構成したものについ
ての実測値である。表1〜表2中、測定点1〜20とは、上記のとおり作製した一バッチ
の結晶性珪素膜の膜面の各箇所を用いて作製したものという意味である。まず表1から明
らかなとおり、Nチャネル型TFTとして構成した場合、そのうち特にS値(Sーval
ue)についてみると、その値は非常に小さく、ほぼ80mV/decade前後、全体
としても70〜90mV/decadeの範囲におさまり、特に測定点13の場合には7
2.53mV/decadeという小さな値を示している。
S値(サブスレッショルド係数)は、図8に示すようなIDーVGカーブの立ち上がり部
分における最大傾きの逆数として定義され、換言すれば、ドレイン電流を1桁増加させる
のに必要なゲイト電圧の増加分と把握される。即ち、S値が小さいほど、立ち上がり部分
の傾きが急峻となり、スイッチング素子としての応答性が優れ、高速動作をさせることが
できる。
理論式から導かれるS値の理想値は60mV/decadeであり、これまで単結晶ウ
ェハーを用いたトランジスタではこれに近い値が得られているが、従来の一般的な低温ポ
リシリコンを用いたTFTでは300〜500mV/dacade程度が限界である。こ
のことからして、上記本発明に係る結晶性珪素膜を用いたTFTにおける80mV/de
cade前後というS値は、極めて優れた特性であり、驚異的な特性と云える。
また、表2は本発明に係る結晶性珪素膜を用いてPチャネル型のTFTとして構成した
場合についての実測値である。この場合のS値(Sーvalue)についてみると、Nチ
ャネル型TFTの場合と同じく、この場合にも、そのS値は非常に小さく、ほぼ80mV
/decade前後、全体としても70〜100mV/dcadeの範囲におさまり、特
に測定点4では72.41mV/decadeという小さな値を示している。これらの値
の意味は、プラス(+)、マイナス(−)を逆に見るだけで、上記Nチャネル型TFTの
場合と同じである。
以上のほか、表1〜表2中の各特性(符号)の意味は以下のとおりである。表1〜表2
から明らかなとおり、これら何れの特性についても実用上充分に耐え得る値を示している
。Ionとは、TFTがON状態にある時に流れるドレイン電流であり、VD=1V(1
ボルト)の時をIonー1(なお、Ionー1における横棒「ー」については、通常、表
1のとおり文字中心より下に記載されるが、ここでは文字中心に引いている。この点、横
棒「ー」を持つ以下の各符号についても同じである)、VD=5Vの時をIonー2とし
ている。Ionの大きいTFTほど、短時間に多くの電流を流すことができる。
Ioffとは、TFTがOFF状態にある時に流れるドレイン電流であり、VD=1V
(1ボルト)の時をIoffー1、VD=5Vの時をIoffー2としている。OFF状
態の時に電流が流れると、その分だけ電力を消費するので、Ioffを小さくすることは
極めて重要であり、またIoffが大きいと、例えば液晶に保持した電荷がIoffによ
って流出するといった問題も生じる。
Ion/Ioffー1、Ion/Ioffー2については、例えばIon/Ioffー
1とは、Ionー1とIoffー1との比をとったもので、ON電流とOFF電流がどれ
だけの桁数だけ異なるかを表わしている。Ion/Ioffの比が大きいほど、スイッチ
ング特性に優れており、パネルのコントラストを高める上でも重要である。
Vthとは、一般にしきい値電圧と呼ばれるパラメータであり、例えばTFTがON状
態に切り替わる電圧と定義される。表中の値は、VD=5の時を評価対象とし、ルートI
D外挿法で得た値である。Vthが大きいと、ゲイト電極に印加する電圧を高く設定しな
ければならないので、駆動電圧の増加、さらには消費電力の増加を招くことになる。
μFEとは、電界効果移動度であり、モビリティとも呼ばれる。μFEはキャリアの移
動し易さを示すパラメータであり、μFEが大きいTFTは高速動作に適していると云え
る。表1〜表2から明らかなとおり、これらの何れの特性についても実用上充分に耐え得
る値を示している。
図9(a)〜(b)は、以上の実測データから代表的な値のものを選んで、IDーVG
性を実測してグラフ化した図である。このうち図9(a)はNチャネル型TFTの場合、
図9(b)はPチャネル型TFTの場合であり、何れもVD=1V(1ボルト)の場合に
ついて示している。図9(a)〜(b)における横軸はゲイト電圧(V)、縦軸はドレイ
ン電流(A)を示し、縦軸の目盛は「1Eー13」〜「1Eー01」の範囲、即ち1×1
-13〜1×10-1 A(アンペア)の範囲である。
まず、図9(a)のNチャネル型TFTの場合につていみると、IDーVGカーブの立ち
上がり部分の傾き、即ち線形領域のカーブが極めて急峻に出ていることが分かる。これは
、前述S値が小さいことに対応した特性がそのまま現われたもので、完全にON状態とな
る時間が非常に短かく、スイッチング素子としての応答性に優れ、高速動作をさせ得るこ
とを示している。また図9(a)中、ゲイト電圧−6〜−0.5Vの範囲が前記表1中の
Ioffに対応する部分であるが、OFF状態にある時に流れるドレイン電流は極めて小
さく、この点でも優れた性質を有することが分かる。
次に、図9(b)についてみると、Pチャネル型TFTの場合にも、線形領域のカーブ
が極めて急峻であり、OFF状態にある時に流れるドレイン電流は極めて小さく、上記N
チャネル型TFTの場合と同様、優れた特性を示している。なお、これらの技術的意味に
ついては、Nチャネル型TFTの場合に比して、プラス(+)、マイナス(−)の符号が
逆になるだけである。
表3〜表4及び図10は、非晶質珪素膜へのニッケル酢酸塩溶液塗布後の結晶化に際し
て、以上に述べた場合に比べて、第2の加熱処理温度をより低温とし(700℃)、併わ
せてレーザー光の照射を行って作製した結晶性珪素膜の場合を示すものである。ここでの
結晶性珪素膜は、下記(1)〜(3)のとおり、後述実施例28における製造工程に準じ
て作製し、また、ここで使用した半導体装置は、前記(H)〜(L)と同様の工程で作製
したものである。
すなわち、(1)基板として石英基板を用い、その面への非晶質珪素膜の作製にプラズ
マCVD法を用い、(2)100ppm濃度のニッケル酢酸塩水溶液を非晶質珪素膜の全
面に塗布し(結晶成長の方向は膜面に垂直な方向、即ち縦方向の成長となっている)、(
3)これを窒素雰囲気中で温度600℃、4時間加熱処理し、第2の加熱温度を700℃
とした点以外は、レーザー光を照射した(該照射時に、基板は加熱せず)点その他の工程
については実施例28の場合と同様にして作製した。
表3〜表4から明らかなとおり、前記表1〜表2のデータに比べればある程度の差異は
あるが、この場合にも、S値を含めて優れた特性を示しており、また図10(a)〜(b
)から明らかなとおり、IDーVGカーブの立ち上がり部分の傾き、即ち線形領域のカーブ
は、図9(a)〜(b)に比べれば、ある程度寝てはいるが、それでも相当に急峻に出て
いることが分かる。
次に、図11(a)は、Nチャネル型TFTについて、図9(a)及び図10(a)に
示す曲線を纏めてグラフ化したものである。ここで図中11(a)中符号Kで示す曲線は
図9(a)の曲線に相当し、符号Tで示す曲線は図10(a)の曲線に相当している。図
11(a)から明らかなとおり、何れも線形領域の傾きは急峻であるが、K曲線の場合は
、T曲線に比べてより急峻であり、これは線形領域におけるS値がより小さいことに対応
している。
さらに、飽和領域におけるON電流〔図11(a)中、横軸におけるゲイト電圧値0.
5V(V=0.5)近辺から右側の領域:Ion〕についてみると、K曲線の場合は、T
曲線に比べて、より大きい。さらにOFF領域〔図11(a)中、横軸におけるゲイト電
圧値−0.3V近辺から左側の領域:Ioff〕における電流については、K曲線の場合
は、T曲線に比べてより小さい。
また、図11(b)は、非晶質(アモルファス)珪素膜を用いたTFTの代表的な特性
であり、これは、現時点においては、恐らく非晶質珪素膜を用いたTFTにおける理想的
な特性と解される。これを図11(a)と対比すると、図11(b)の曲線に対して、曲
線Kの場合には、線形領域のカーブ(S値)についても、OFF領域の電流値についても
格段の差異があり、また曲線Tの場合には、図11(b)の曲線に対して、OFF領域の
電流値についてはほぼ同等又は僅かに下回るが、線形領域のカーブ(S値)については、
より急峻であり、より優れた特性を示している。
表1〜表2及び図9は、表3〜表4及び図10の場合の第2加熱温度(700℃)より
も、第2の加熱温度(950℃)を高くして作製した結晶性珪素膜の場合である。そして
、表1〜表2及び図9の場合が、表3〜表4及び図10の場合よりも、S値を含めて、よ
り優れた特性が得られることを示している。しかし、上記のとおり、表3〜表4及び図1
0の場合にも、従来の非晶質珪素膜のうちでも最も優れた非晶質珪素膜を用いたとみられ
るTFTに比べて、相当に優れており、有効な特性を示すことが明らかである。
さらに、図13(a)〜(b)は、上記図9に示す特性を有するNチャネル型TFTと
Pチャネル型TFTとを組合せた回路を組んで9段リングオシレータを作製し、これを作
動させて得たオシロスコープ(発振波形)である。この回路はNチャネル型TFTとPチ
ャネル型TFTとが同時に互いにその動作を補うように働き、一方のTFTが電荷を吐き
出す場合には、他方のTFTが電荷を吸い込むように作動する。
図12は、図13の説明用の模式図であるが、図12を全体として見た場合、発振波形
の+側の波形は主にNチャネル型の動作が関係し、−側の波形は主にPチャネル型の動作
が関係する。従って、例えば152.0MHzとか、252.9MHzとかという周波数
で発振を行っている場合に、その発振波形が+側と−側とにおいて対称性を保っていれば
、その周波数において、Nチャネル型のTFTとPチャネル型のTFTとが対称動作をし
、同様な特性で正常に動作していることになる。
そこで、図13(a)〜(b)のオシロスコープを見ると、発振波形は正に正弦波で、
しかも線形に歪みは見られず、上下、左右ともに対称である。このように、本発明に係る
結晶性珪素膜によれば、これをNチャネル型として適用した場合にも、Pチャネル型とし
て適用した場合にも優れた特性を示し、しかも両者間に、実質上、特性上の差異がないこ
とが分かる。
以上の現象、特性を説明し得るモデルとしては以下のように考えられる。まず図3〜図
4で代表される電子顕微鏡写真にも示されるように、本発明において得られた結晶性珪素
膜で構成したTFTを構成する珪素半導体薄膜は、前述のとおり、特定の方向に結晶の連
続性を有した構造となっており、数多くのサンプルについての電子顕微鏡による詳細な観
察により、特定方向へ結晶格子の構造が連続していることが確認された。
そして、同じく上記観察結果によれば、その状態は特定方向へ単結晶状態が所定の間隔
を置いて連続している状態と解される。これは、当然、この格子構造が連続している方向
へとキャリアが移動し易いものと理解される。すなわち、本発明により得られる結晶性珪
素膜を用いたTFTにおいては細長いチャネルが無数に集まってチャネル領域が構成され
ているものと考えられる。
ここで、微小なチャネルとチャネルとを仕切るのが、図3〜図4で代表される透過型電
子顕微鏡写真によって観察される、線状に見える結晶粒界(grain boundar
y)であるが、この結晶粒界には特に不純物が偏析している様子は観察されていない。
この結晶粒界は、電気的に活性度の低い不活性な粒界であり、深いギャップ内準位が存
在しないか、または殆んど存在しない構造を有している。しかし、不均一性や非連続性に
起因してエネルギー的には他の領域よりも高いものと考えられる。従って、キャリアの移
動を結晶構造が連続した方向へと規制する機能を有しているものと推認される。またこの
ように狭い微小なチャネルが形成されると、この微小なチャネルの内部へと及ぼされるソ
ース領域及びドレイン領域からの影響の浸透距離は、その狭さに対応して、それなりに小
さくなる考えられる。
上記のような電気的な影響は、例えば障害物のない場所での電磁波の広がり方から類推
されるように、理想的には2次元的或いは3次元的に等方性をもって広がることから類推
される。そう考えると、本発明で得られる結晶性珪素膜を用いたTFTでは、微小な幅の
狭いチャネルが多数形成されている状態が実現されているため、個々のチャネルにおいて
はソース領域及びドレイン領域からのチャネルへの影響が抑制され、それが全体として短
チャネル効果の抑制になっていると理解することができる。
さらに、図14及び図15に示す図は、本発明に至るまでに実施した数多くの研究、試
験の過程において、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して形成した結晶性珪素膜中
の該金属元素の濃度を低下させた結晶性珪素膜を用いて、本発明者らが試作したプレーナ
型の薄膜トランジスタのゲイト電流の値の計測値である。図14と図15との違いは、ゲ
イト絶縁膜の形成方法に熱酸化法を用いたのかプラズマCVD法を用いたのかの違いによ
る。
即ち、図14が熱酸化膜によってゲイト絶縁膜を形成した場合の計測値、図15がプラ
ズマCVD法によりゲイト絶縁膜を形成した場合の計測値である。図14及び図15にお
いて、横軸はゲイト電流を示し、縦軸は計測サンプル数を示している。ここでの基板とし
ては石英基板を用いた。また活性層の形成は、非晶質珪素膜の表面にニッケル元素を接触
して保持させ、温度640℃、4時間の加熱処理により結晶化させる方法を用いた。さら
に熱酸化膜の形成は温度950℃の酸素雰囲気中で実施した。
図14からは、サンプルによってゲイト電流値が大きくばらついていることが分かる。
これはゲイト絶縁膜の膜質にばらつきがあることを示している。一方、図15に示すゲイ
ト絶縁膜をプラズマCVD法で形成した薄膜トランジスタにおいては、ゲイト電流のばら
つきが少なく、またその値も極めて小さい。図14と図15に示される計測値の違いは以
下のような理由として説明される。
即ち、熱酸化膜でもってゲイト絶縁膜を形成したサンプルは、熱酸化膜の形成時にニッ
ケル元素が活性層中から熱酸化膜中に吸い上げられる。その結果、熱酸化膜中にその絶縁
性を阻害するニッケル元素が存在することになる。このニッケル元素の存在によって、ゲ
イト絶縁膜中をリークする電流値が増え、またその値がバラツクことになる。
このことは、SIMS(2次イオン分析方法)によって、図14及び図15の計測値が
得られたサンプルのゲイト絶縁膜中のニッケル元素の濃度を計測することによっても裏付
けられた。即ち、熱酸化法で形成されたゲイト絶縁膜中には、1017cm-3台以上のニッ
ケル元素が計測されるが、プラズマCVD法で形成されたゲイト絶縁膜中においては、ニ
ッケル元素の濃度は1016cm-3台以下であることが確認された。なお、本明細書に記載
している不純物濃度は、SIMS(2次イオン分析法)で計測された計測値の最小値とし
て定義される。
以上は、本発明に至るまでに実施し、またその特性、効果等を確認する上で実施した数
多くの実験、検討の過程において、本発明者らが得た知見のうちの数例であるが、本発明
はこのような知見にも基づくものである。そして、以上の事実は、本発明における各種態
様に共通するものである。
非晶質珪素膜であると、結晶性珪素膜であるとを問わず、珪素膜を使用した薄膜トラン
ジスタ(TFT等)からなる半導体装置においては、上記金属元素は、通常有害物質であ
り、このため当該金属元素は珪素膜から可及的に除去する必要がある。本発明によれば、
それら珪素の結晶化を助長する金属元素を、結晶性珪素膜の形成に使用した後に、極めて
有効に除去又は減少させることができる。
本発明においては、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して得られた結晶性珪素膜
の表面に熱酸化膜を形成することにより、この熱酸化膜中に当該金属元素をゲッタリング
させ、結果として結晶性珪素膜中における当該金属元素の濃度を低下させ又は当該金属元
素を除去する。そして、本発明は、これによって優れた特性を備えた半導体装置を得るこ
とができたものである。
前記(1)〜(6)の発明の主な態様については以下のとおりである。(1)〜(2)
の発明においては、まず非晶質珪素膜を成膜する。次いで、この非晶質珪素膜をニッケル
で代表される珪素の結晶化を助長する金属元素の作用により結晶化させて結晶性珪素膜を
得る。この結晶化は加熱処理によって行う。この加熱処理後の状態では結晶性珪素膜中に
は意図的に導入された当該金属元素がある程度高い濃度で含まれている。
上記状態の結晶性珪素膜に対して酸化性雰囲気中において加熱処理を行い、結晶性珪素
膜の表面に熱酸化膜を形成する。この時、酸化性雰囲気中の酸素の作用によって、熱酸化
膜中に、当該金属元素がゲッタリングされ、結晶性珪素膜中の当該金属元素の濃度が低下
するか又は当該金属元素が除去される。次いで当該金属元素をゲッタリングした熱酸化膜
を除去する。
これらの処理により高い結晶性を有し、且つ、当該金属元素が除去された結晶性珪素膜
又は当該金属元素の濃度が低い結晶性珪素膜が得られる。上記熱酸化膜の除去は、例えば
バッファーフッ酸、その他フッ酸系のエッチャントを用いて行うことができる。この熱酸
化膜の除去処理については、以下に述べる各発明における熱酸化膜の除去処理についても
同様である。
(3)の発明においては、以上の工程に続き、パターニングを施し薄膜トランジスタの
活性層を形成する。この活性層は、上記当該金属元素が除去された結晶性珪素膜又は当該
金属元素の濃度が低い結晶性珪素膜で構成される。次いで、熱酸化によりゲイト絶縁膜の
少なくとも一部を構成する熱酸化膜を該活性層の表面に形成することにより半導体装置を
構成する。
(4)の発明では、まず非晶質珪素膜を成膜した後、この非晶質珪素膜に珪素の結晶化
を助長する金属元素を選択的に導入する。この金属元素を選択的に導入する態様としては
、該非晶質珪素膜中で珪素を膜面に平行に結晶化させ得る態様であれば、(a)非晶質珪
素膜の一端部に導入する、(b)非晶質珪素膜の一端部に間隔を置いて導入する、(c)
非晶質珪素膜の全面に間隔を置いて点状に導入する等、特に限定はないが、好ましくは前
記(ア)〜(オ)の態様のうちの(イ)、即ち非晶質珪素膜の膜面における適宜箇所のス
リット状の面から導入する。この後、第1の加熱処理により、該金属元素が選択的に導入
された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる。
次いで、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該結晶成長が行われた領域の表面に
熱酸化膜を形成する。この時、酸化性雰囲気中の酸素の作用によって、熱酸化膜中に、当
該金属元素がゲッタリングされ、結晶性珪素膜中の当該金属元素の濃度が低下するか又は
当該金属元素が除去される。さらに該熱酸化膜を除去し、該熱酸化膜を除去した領域を用
いて半導体装置の活性層を形成する。
また、これらの何れの形態の場合においても、第1の加熱処理温度よりも第2の加熱処
理温度の方が高い方が好ましく、また熱酸化膜の除去後に酸素と水素とを含むプラズマ雰
囲気によるアニールを行うことが好ましい。さらに非晶質珪素膜中に含まれる酸素濃度が
5×1017cm-3〜2×1019cm-3の範囲であるのが好ましい。
さらに、(5)の発明では、まずガラス基板又は石英基板上に酸化珪素膜又は酸化窒化
珪素膜を形成する。次いで、以上と同様にして、第1及び第2の酸化膜に挟まれた結晶性
珪素膜を有し、該結晶性珪素膜は珪素の結晶化を助長する金属元素を含有しており、該結
晶性珪素膜中において、該金属元素は該第1及び/又は第2の酸化膜との界面近傍におい
て高い濃度分布を有した半導体装置が得られる。この半導体装置の態様としては、第1の
酸化膜はガラス基板又は石英基板上に形成された酸化珪素膜又は酸化窒化珪素膜であり、
結晶性珪素膜は薄膜トランジスタの活性層を構成し、第2の酸化膜は、ゲイト絶縁膜を構
成する酸化珪素膜又は酸化窒化珪素膜として構成することができる。
また、(6)の発明では、上記と同様にして、酸化膜でなる下地膜と、該下地膜上に形
成された結晶性珪素膜と、該結晶性珪素膜上に形成された熱酸化膜とを有し、該結晶性珪
素膜中には珪素の結晶化を助長する金属元素が含まれ、該珪素の結晶化を助長する金属元
素が下地及び/又は熱酸化膜との界面近傍において高い濃度分布を有し、該熱酸化膜が薄
膜トランジスタのゲイト絶縁膜の少なくとも一部を構成する半導体装置が得られる。
前記(7)〜(12)の発明の主な態様については以下のとおりである。(7)の発明
においては、まず非晶質珪素膜を形成する。これに珪素の結晶化を助長する金属元素を意
図的に導入して第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得る
。この結晶化は加熱処理によって行う。この加熱処理後の状態においては、結晶性珪素膜
中に当該金属元素が含まれている。次いでハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の
加熱処理を行い、熱酸化膜を形成する。
この時、酸素の作用、ハロゲンの作用、並びに、ハロゲン及び酸素の作用によって、当
該金属元素が該熱酸化膜中に移行ないしはゲッタリングされ、その際、同時に、塩素等の
ハロゲンの作用によりニッケル元素が外部に気化除去される。結晶性珪素膜中の当該金属
元素の濃度が低下し又は当該金属元素が除去される。次いで、そこで形成された熱酸化膜
を除去した後、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成
する。
(8)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。これに非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的に導入した後、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜
を結晶化させ結晶性珪素膜を得る。次いで、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2
の加熱酸化処理を行い、該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成し、該熱酸化膜に当該金
属元素を移行ないしはゲッタリングさせ、その際、同時に、塩素等のハロゲンの作用によ
りニッケル元素が外部に気化除去される。これにより該結晶性珪素膜中に存在する当該金
属元素を除去又は減少させる。その後、そこで形成された熱酸化膜を除去した後、該熱酸
化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。
(9)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。これに非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的に導入した後、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜
を結晶化させて結晶性珪素膜を得る。次いで、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第
2の加熱酸化処理を行い、この時形成される熱酸化膜に当該金属元素を移行ないしはゲッ
タリングさせ、その際、同時に、塩素等のハロゲンの作用によりニッケル元素が外部に気
化除去される。
これにより該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる。ここで形
成された熱酸化膜を除去した後、パターニングを施し、薄膜トランジスタの活性層を形成
し、さらに熱酸化によりゲイト絶縁膜の少なくとも一部を構成する熱酸化膜を該活性層の
表面に形成する。
(10)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。これに非晶質珪素膜に珪素
の結晶化を助長する金属元素を選択的に導入する。この金属元素を選択的に導入する態様
としては、該非晶質珪素膜中で珪素を膜面に平行に結晶化させ得る態様であれば、(a)
非晶質珪素膜の一端部に導入する、(b)非晶質珪素膜の一端部に間隔を置いて導入する
、(c)非晶質珪素膜の全面に間隔を置いて点状に導入する等特に限定はないが、好まし
くは前記(ア)〜(オ)の態様のうちの(イ)、即ち非晶質珪素膜の膜面における適宜箇
所のスリット状の面から導入する。この後、第1の加熱処理により、該金属元素が選択的
に導入された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる。
次いで、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該結晶成長が
行われた領域の表面に熱酸化膜を形成すし、該熱酸化膜に当該金属元素を移行ないしはゲ
ッタリングさせ、同時に、塩素等のハロゲンの作用によりニッケル元素が外部に気化除去
される。これにより該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させる。次
に、該熱酸化膜を除去した後、該熱酸化膜を除去した領域を用いて半導体装置の活性層を
形成する。この活性層は、上記当該金属元素が除去された結晶性珪素膜又は当該金属元素
の濃度が低い結晶性珪素膜結晶性珪素膜で構成される。
以上(7)〜(10)の半導体装置の作製方法でのハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気
としては、O2 雰囲気中に、HCl、HF、HBr、Cl2 、F2 、Br2 から選ばれた
一種又は複数種類のガスが添加された雰囲気を用いることができる。各加熱温度としては
、第1の加熱処理温度よりも第2の加熱処理温度の方が高いことが好ましく、また熱酸化
膜の除去後に酸素と水素とを含むプラズマ雰囲気でのアニールを行うことが好ましい。さ
らに、非晶質珪素膜中に含まれる酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm-3の範囲
であるのが好ましい。
(11)の発明では、まずガラス基板又は石英基板上に酸化珪素膜又は酸化窒化珪素膜
を形成する。次いで、以上と同様にして、第1及び第2の酸化膜に挟まれた結晶性珪素膜
を有し、該結晶性珪素膜は珪素の結晶化を助長する金属元素を含有しており、該結晶性珪
素膜中において、該金属元素は該第1及び/又は第2の酸化膜との界面近傍において高い
濃度分布を有した半導体装置が得られる。
この半導体装置においては、第1の酸化膜中及び/又は第1の酸化膜と結晶性珪素膜と
の界面近傍には高い濃度分布でハロゲン元素が含有されており、また結晶性珪素膜中にお
ける第2の酸化膜との界面近傍には、高い濃度分布でハロゲン元素が含有されている。そ
して、この場合には、第1の酸化膜はガラス基板又は石英基板上に形成された酸化珪素膜
又は酸化窒化珪素膜であって、結晶性珪素膜は薄膜トランジスタの活性層を構成し、第2
の酸化膜はゲイト絶縁膜を構成する酸化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で構成される。
(12)の発明では、上記と同様にして、酸化膜からなる下地膜と、該下地膜上に形成
された結晶性珪素膜と、該結晶性珪素膜上に形成された熱酸化膜とを有し、該結晶性珪素
膜中には珪素の結晶化を助長する金属元素及び水素及びハロゲン元素が含まれ、該珪素の
結晶化を助長する金属元素が下地及び/又は熱酸化膜との界面近傍において高い濃度分布
を有し、また該ハロゲン元素は下地及び/又は熱酸化膜との界面近傍において高い濃度分
布を有し、該熱酸化膜は薄膜トランジスタのゲイト絶縁膜の少なくとも一部を構成する半
導体装置が構成される。
前記(13)〜(17)の発明の主な態様については以下のとおりである。(13)の
発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。これに珪素の結晶化を助長する金属元素
を意図的に導入し、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得
る。その後、該結晶性珪素膜に対してレーザー光又は強光の照射を行う。次いで、ハロゲ
ン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜中に存在する当
該金属元素を除去又は減少させる。さらに、ここで形成された熱酸化膜を除去し、該熱酸
化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。
(14)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結
晶化させ結晶性珪素膜を得る。該結晶性珪素膜に対してレーザー光又は強光の照射を行っ
て該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を該結晶性珪素膜中において拡散させる。
次いで、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って、該結晶性珪
素膜中に存在する当該金属元素を形成される熱酸化膜中に移行ないしはゲッタリングする
。ここで形成された熱酸化膜を除去し、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸
化により熱酸化膜を形成する。
(15)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的かつ選択的に導入する。この金属元素を選択的に導入
する態様としては、該非晶質珪素膜中で珪素を膜面に平行に結晶化させ得る態様であれば
、(a)非晶質珪素膜の一端部に導入する、(b)非晶質珪素膜の一端部に間隔を置いて
導入する、(c)非晶質珪素膜の全面に間隔を置いて点状に導入する等、特に限定はない
が、好ましくは前記(ア)〜(オ)の態様のうちの(イ)、即ち非晶質珪素膜の膜面にお
ける適宜箇所のスリット状の面から導入する。
その後、該非晶質珪素膜に対して、第1の加熱処理を施し、該金属元素が選択的に導入
された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる。次いで、レーザー光又は強光の照
射を行って該結晶成長した領域中に存在する当該金属元素を拡散させる。さらに、ハロゲ
ン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該結晶成長した領域に存在する
当該金属元素を、当該第2の加熱処理により形成される熱酸化膜中に移行ないしはゲッタ
リングする。次に、ここで形成された熱酸化膜を除去した後、該熱酸化膜を除去した領域
の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。
上記(13)〜(15)の発明においては、第2の処理温度が600℃を超えて750
℃以下の温度で行われるのが好ましく、また再度の熱酸化膜を利用してゲイト絶縁膜を形
成するのが好ましい。また、これらの発明において、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気
は、O2 雰囲気中にHCl、HF、HBr、Cl2 、F2 、Br2 から選ばれた一種又は
複数種類のガスが添加された雰囲気が使用される。
さらに、これら(13)〜(15)の発明においては、第1の加熱処理温度よりも第2
の加熱処理温度の方が高いことが好ましく、また熱酸化膜を除去した後に酸素と水素とを
含むプラズマ雰囲気でのアニールを行うことができる。またこれら発明においては、非晶
質珪素膜中に含まれる酸素濃度は5×1017cm-3〜2×1019cm-3の範囲であるのが
好ましい。
前記(16)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪
素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入した後、第1の加熱処理により該非晶質珪
素膜を結晶化させ結晶性珪素膜を得る。次いで該結晶性珪素膜をパターニングして半導体
装置の活性層を形成し、該活性層に対してレーザー光又は強光の照射を行う。その後、ハ
ロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該活性層中に存在する当該
金属元素を除去又は減少させる。続いて、ここで形成された熱酸化膜を除去し、該活性層
の表面に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。
前記(17)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪
素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入し、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜
を結晶化させて結晶性珪素膜を得る。該結晶性珪素膜をパターニングして半導体装置の活
性層を形成し、該活性層に対してレーザー光又は強光の照射を行う。次いで、ハロゲン元
素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該活性層中に存在する当該金属元素
を除去又は減少させる。その後、ここで形成された熱酸化膜を除去し、該活性層の表面に
再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。この時、該活性層はその側面が下地面とのなす
角が20°〜50°を有する傾斜した形状を有するように構成する。
上記(16)〜(17)の発明においては、再度の熱酸化膜を利用してゲイト絶縁膜を
構成することができる。また、第1の加熱処理温度と第2の加熱処理温度の上限は750
℃以下であることが好ましく、またハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気としては、好まし
くはO2 雰囲気中にHCl、HF、HBr、Cl2 、F2 、Br2 から選ばれた一種又は
複数種類のガスが添加された雰囲気が使用される。
さらに、これらの発明においては、第1の加熱処理温度よりも第2の加熱処理温度の方
が高いことが好ましく、また熱酸化膜の除去後に酸素と水素とを含むプラズマ雰囲気での
アニールを行うことができる。また非晶質珪素膜中に含まれる酸素濃度は5×1017cm
-3〜2×1019cm-3の範囲であるのが好ましい。
前記(18)〜(22)の発明の主な態様については以下のとおりである。(18)の
発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長
する金属元素を意図的に導入し、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させ結晶
性珪素膜を得る。次いで、該結晶性珪素膜に対してレーザー光又は強光の照射を行い、酸
化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去
又は減少させる。その後、該工程で形成された熱酸化膜を除去し、該熱酸化膜を除去した
領域の表面上に再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。
(19)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的に導入した後、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜
を結晶化させ結晶性珪素膜を得る。次いで該結晶性珪素膜に対してレーザー光又は強光の
照射を行うことにより、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を該結晶性珪素膜中に
おいて拡散させる。その後、酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該結晶性珪素膜中
に存在する当該金属元素を、形成される熱酸化膜中に移行ないしはゲッタリングする。さ
らに、ここで形成された熱酸化膜を除去した後、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再
度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。
(20)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的且つ選択的に導入する。この金属元素を選択的に導入
する態様としては、該非晶質珪素膜中で珪素を膜面に平行に結晶化させ得る態様であれば
、(a)非晶質珪素膜の一端部に導入する、(b)非晶質珪素膜の一端部に間隔を置いて
導入する、(c)非晶質珪素膜の全面に間隔を置いて点状に導入する等、特に限定はない
が、好ましくは前記(ア)〜(オ)の態様のうちの(イ)、即ち非晶質珪素膜の膜面にお
ける適宜箇所のスリット状の面から導入する。
次に、該非晶質珪素膜に対して第1の加熱処理を施し、該意図的かつ選択的に金属元素
が導入された領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる。その後、レーザー光又は強
光の照射を行って該結晶成長した領域中に存在する当該金属元素を拡散させる。次いで、
酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該結晶成長した領域に存在する当該金属元素を
、当該第2の加熱処理で形成される熱酸化膜中に移行ないしはゲッタリングする。さらに
、ここで形成された熱酸化膜を除去し、該熱酸化膜を除去した領域の表面上に再度の熱酸
化により熱酸化膜を形成する。
上記(18)〜(20)の発明においては、第2の加熱処理温度は600℃を超えて7
50℃以下の温度で行われることが好ましく、また再度の熱酸化膜を利用してゲイト絶縁
膜が形成することができる。またこれら発明においては第1の加熱処理温度よりも第2の
加熱処理温度の方が高いことが好ましい。さらに、これら発明において、熱酸化膜の除去
後に酸素と水素とを含むプラズマ雰囲気でのアニールを行うことができる。また非晶質珪
素膜中に含まれる酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm-3の範囲であるのが好ま
しい。
(21)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的に導入して第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結
晶化させて結晶性珪素膜を得る。次いで該結晶性珪素膜をパターニングして半導体装置の
活性層を形成し、該活性層に対してレーザー光又は強光の照射を行う。その後、酸化性雰
囲気中で第2の加熱処理を行い、該活性層中に存在する当該金属元素を除去又は減少させ
る。次いでここで形成された熱酸化膜を除去し、該活性層の表面に再度の熱酸化により熱
酸化膜を形成する。
(22)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。この非晶質珪素膜に珪素の
結晶化を助長する金属元素を意図的に導入した後、第1の加熱処理により該非晶質珪素膜
を結晶化させ結晶性珪素膜を得る。次いで、該結晶性珪素膜をパターニングして半導体装
置の活性層を形成し、該活性層に対してレーザー光又は強光の照射を行う。その後、酸化
性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該活性層中に存在する当該金属元素を除去又は減少
させる。ここで形成された熱酸化膜を除去し、該活性層の表面に再度の熱酸化により熱酸
化膜を形成する。この時、該活性層における、その側面が下地面とのなす角を、好ましく
20°〜50°を有する傾斜した形状となるように構成する。
上記(21)〜(22)の発明においては、再度の熱酸化膜を利用してゲイト絶縁膜を
構成することができる。また第2の処理温度は600℃を超えて750℃以下の温度で行
うのが好ましく、また第1の加熱処理温度よりも第2の加熱処理温度の方が高いことが好
ましい。さらに、これらの発明においては、熱酸化膜の除去後に酸素と水素とを含むプラ
ズマ雰囲気でのアニールを行うことが好ましく、また非晶質珪素膜中に含まれる酸素濃度
が5×1017cm-3〜2×1019cm-3の範囲であることが好ましい。
前記(23)〜(25)の発明の主な態様については以下のとおりである。(23)の
発明においては、まず絶縁表面を有する基板上に非晶質珪素膜を成膜し、該非晶質珪素膜
に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入する。次いで温度750℃〜1100
℃の第1の加熱処理により該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪素膜を得た後、該結晶
性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成する。
その後、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行って該活性層中に
存在する当該金属元素を除去又は減少させる。ここで形成された熱酸化膜を除去し、該熱
酸化膜を除去した後に、再度の熱酸化により熱酸化膜を形成する。この時、好ましくは、
該第2の加熱処理の温度を該第1の加熱処理の温度よりも高い条件で実施する。
(24)の発明においては、まず絶縁表面を有する基板上に非晶質珪素膜を成膜した後
、該非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的に導入する。次いで、温度
750℃〜1100℃の第1の加熱処理により、該非晶質珪素膜を結晶化させて結晶性珪
素膜を得る。その後、該結晶性珪素膜をパターニングして半導体装置の活性層を形成した
後、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い、該活性層中に存在す
る当該金属元素を、当該第2の加熱処理で形成される熱酸化膜中に移行ないしはゲッタリ
ングさせる。次いで該工程で形成された熱酸化膜を除去した後、再度の熱酸化により熱酸
化膜を形成する。この時、好ましくは、該第2の加熱処理の温度を、該第1の加熱処理の
温度よりも高い条件とする。
(25)の発明においては、まず絶縁表面を有する基板上に非晶質珪素膜を成膜し、該
非晶質珪素膜に珪素の結晶化を助長する金属元素を意図的且つ選択的に導入する。この金
属元素を選択的に導入する態様としては、該非晶質珪素膜中で珪素を膜面に平行に結晶化
させ得る態様であれば、(a)非晶質珪素膜の一端部に導入する、(b)非晶質珪素膜の
一端部に間隔を置いて導入する、(c)非晶質珪素膜の全面に間隔を置いて点状に導入す
る等、特に限定はないが、好ましくは前記(ア)〜(オ)の態様のうちの(イ)、即ち非
晶質珪素膜の膜面における適宜箇所のスリット状の面から導入する。
次いで、温度750℃〜1100℃の第1の加熱処理により、該非晶質珪素膜の当該金
属元素が意図的且つ選択的に導入した領域から膜に平行な方向に結晶成長を行わせる。次
に、パターニングを行って該膜に平行な方向に結晶成長した領域を用いて半導体装置の活
性層を形成する。その後、ハロゲン元素を含んだ酸化性雰囲気中で第2の加熱処理を行い
、該活性層中に存在する当該金属元素を、当該第2の加熱処理で形成される熱酸化膜中に
移行ないしはゲッタリングさせる。さらに、該熱酸化膜を除去した後、再度の熱酸化によ
り熱酸化膜を形成する。この時、好ましくは、該第2の加熱処理の温度を該第1の加熱処
理の温度よりも高い条件とする。
以上、(23)〜(25)の発明においては、非晶質珪素膜を形成する基板として好ま
しくは石英基板が用いられ、また再度の熱酸化膜を利用してゲイト絶縁膜が形成される。
さらに、これら(23)〜(25)の発明においては、熱酸化膜の除去後に酸素と水素と
を含むプラズマ雰囲気においてアニールを行うことができ、また非晶質珪素膜中に含まれ
る酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm-3の範囲であることが好ましい。
前記(26)〜(29)の発明の主な態様については以下のとおりである。(26)の
発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。該非晶質珪素膜の表面に珪素の結晶化を
助長する金属元素を接して保持させた後、第1の加熱処理を行って該非晶質珪素膜を結晶
化させ結晶性珪素膜を得る。次いで、酸素と水素とフッ素とを含む雰囲気中において、温
度500℃〜700℃での第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形
成した後、該熱酸化膜を除去する。
(27)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。該非晶質珪素膜の表面に珪
素の結晶化を助長する金属元素を接して保持させた後、第1の加熱処理を行って該非晶質
珪素膜を結晶化させ、結晶性珪素膜を得る。次いで、酸素と水素とフッ素と塩素とを含む
雰囲気中において温度500℃〜700℃での第2の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の
表面に熱酸化膜を形成した後、該熱酸化膜を除去する。
(28)の発明においては、まず非晶質珪素膜を形成する。該非晶質珪素膜の表面に珪
素の結晶化を助長する金属元素を接して保持させた後、加熱処理を行って該非晶質珪素膜
を結晶化させ結晶性珪素膜を得る。次いで、フッ素及び/又は塩素を含む雰囲気中におい
て、ウエット酸化膜を前記結晶性珪素膜の表面に形成した後、該酸化膜を除去する。
以上、(26)〜(28)の発明においては、酸化膜中における当該金属元素の濃度は
、結晶性珪素膜中における当該金属元素の濃度よりも高いことが好ましい。また、第2の
加熱処理を行う雰囲気中には、水素が1容量%以上、爆発限界以下の濃度で含まれている
ことが好ましい。さらに、第1の加熱処理を還元雰囲気で行うことが好ましく、また第1
の加熱処理の後に結晶性珪素膜に対してレーザー光の照射を行うことができる。
(29)の発明は、結晶性を有する珪素膜を有する半導体装置であって、該珪素膜には
珪素の結晶化を助長する金属元素が1×1016cm-3〜5×1018cm-3の濃度で含まれ
、フッ素原子が1×1015cm-3〜1×1020cm-3の濃度で含まれ、水素原子が1×1
17cm-3〜1×1021cm-3の濃度で含まれていることを特徴とする半導体装置である
。この半導体装置は上記(26)〜(28)の作製方法により作製することができる。ま
た、半導体装置における珪素膜は、好ましくは絶縁膜上に形成され、該絶縁膜と該珪素膜
との界面近傍においてフッ素原子が高い濃度分布で存在していることが好ましい。
前記(30)〜(33)の発明の主な態様については以下のとおりである。(30)の
発明においては、まず非晶質珪素膜を形成し、この非晶質珪素膜を結晶化して結晶性珪素
膜を形成する。次いで、この結晶性珪素膜をフッ素化合物気体が添加された酸化性雰囲気
中で加熱して、結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を成長させた後、結晶性珪素膜表面の熱酸
化膜を除去する。その後、結晶性珪素膜の表面に絶縁膜を堆積することにより半導体装置
を作製する。
(31)の発明においては、非晶質珪素膜を形成し、これにレーザー光を照射して結晶
化して結晶性珪素膜を形成する。次いで、この結晶性珪素膜をフッ素化合物気体が添加さ
れた酸化性雰囲気中で加熱して、結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を成長させた後、結晶性
珪素膜表面の熱酸化膜を除去する。その後、結晶性珪素膜の表面に絶縁膜を堆積すること
により半導体装置を作製する。
(32)の発明は、絶縁表面を有する基板上に薄膜トランジスタを作製する方法である
。まず非晶質珪素膜を形成し、該非晶質珪素膜を結晶化して結晶性珪素膜を形成する。そ
の後、フッ素化合物気体が添加された酸化性雰囲気中で加熱して、該結晶性珪素膜の表面
に熱酸化膜を成長させた後、該結晶性珪素膜表面の熱酸化膜を除去する。
次いで、該結晶性珪素膜を整形して薄膜トランジスタの活性層を形成した後、該活性層
の表面に絶縁膜を堆積して、少なくともチャネル領域の表面にゲイト絶縁膜を形成する。
さらに、該ゲイト絶縁膜の表面にゲイト電極を形成し、該ゲイト電極をマスクにして該活
性層に導電型を付与する不純物イオンを注入し、ソース、ドレインを自己整合的に形成す
ることにより半導体装置を作製する。
(33)の発明は、絶縁表面を有する基板上に薄膜トランジスタを作製する方法であっ
て、まず非晶質珪素膜を形成し、非晶質珪素膜を結晶化して結晶性珪素膜を形成する。次
いで、結晶性珪素膜にレーザー光を照射した後、フッ素化合物気体が添加された酸化性雰
囲気中で加熱して、結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を成長させた後、結晶性珪素膜表面の
熱酸化膜を除去する。
次に、上記結晶性珪素膜を整形して薄膜トランジスタの活性層を形成し、該活性層の表
面に絶縁膜を堆積して少なくともチャネル領域の表面にゲイト絶縁膜を形成し、また該ゲ
イト絶縁膜の表面にゲイト電極を形成する。さらに、該ゲイト電極をマスクにして該活性
層に導電型を付与する不純物イオンを注入して、ソース、ドレインを自己整合的に形成す
ることにより半導体装置を作製する。
以上(30)〜(33)の発明においては、該熱酸化膜の膜厚は好ましくは200〜5
00オングストロームであり、また該非晶質珪素膜を形成する工程の後に非晶質珪素膜に
金属元素を1×1016〜5×1019原子(atoms)/cm3 の濃度で添加するのが好
ましい。また、結晶性珪素膜の形成に際して好ましくは金属元素を使用するが、金属元素
としては、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Cu、Auから選ばれた
少なくとも1種類以上の元素を用いることができる。そしてこの点は、前述発明の場合に
ついても同じである。
以下、実施例を基に本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定さ
れないことは勿論である。まず、実施例1〜実施例3として、当該金属元素を使用し、当
該金属元素の作用によって結晶化させた結晶性珪素膜中の当該金属元素の除去又は減少効
果やハロゲン濃度を示す実施例を示し、続いて上記(1)〜(33)の発明に対応する実
施例を順次記載している。
《実施例1》
図16は、非晶質珪素膜を当該金属元素としてニッケルを利用して結晶化した後、熱酸
化膜を形成した時点で、膜断面方向におけるニッケル元素の濃度分布を計測した結果であ
る。この計測はSIMS(2次イオン分析方法)によって行った。この計測値を得た試料
の作製工程は、その概略、以下のとおりである。
石英基板上に下地膜として酸化珪素膜を4000オングストロームの厚さに成膜した後
、減圧熱CVD法により非晶質珪素膜を500オングストロームの厚さに成膜した。次い
で、この非晶質珪素膜に対してニッケル酢酸塩の水溶液を用いてニッケル元素を導入した
。さらに温度650℃、4時間の加熱処理により結晶化させ、結晶性珪素膜を得た。その
後、温度950℃の酸素雰囲気中において加熱処理を行い、700オングストローム厚の
熱酸化膜を形成した。
図16から明らかなとおり、ニッケル元素は、結晶性珪素膜(PolyーSi膜)から
酸化珪素膜(熱酸化膜)へ移行して、熱酸化膜に含まれている。また、ニッケル元素は、
結晶性珪素膜中の方が熱酸化膜中より相対的に多いが、これは熱酸化膜中にSiO2 とし
てOが大量に取り込まれた結果と解される。なお、熱酸化膜の表面においてニッケル元素
の濃度が高くなっているのは、表面の凹凸や吸着物等による表面状態の影響を受けた計測
誤差と解されるものであるため、有意なものではない。また同様な理由で界面付近のデー
タについても多少の誤差が含まれている。
《実施例2》
次に、熱酸化膜の形成方法として、温度950℃、3容量%のHClを含んだ酸素雰囲
気中において加熱処理を行い、その他の工程は実施例1の工程と同様にして、500オン
グストローム厚の熱酸化膜を形成した。図17は、この場合のサンプルについての測定デ
ータである。図17から明らかなように、結晶性珪素膜中におけるニッケル濃度はさらに
低下し、代わりに熱酸化膜中におけるニッケル濃度が相対的に増加している。これは形成
した熱酸化膜中にニッケル元素がさらに吸い出された(即ち、ゲッタリングされた)こと
を意味している。
図16と図17の違いは、酸化膜の形成の際に雰囲気中にHClを含有させたか否かの
点のみである。従って、上記のゲッタリングの効果は、酸素のほか、HClが大幅に関与
しているものと結論することができる。また、HClの成分であるH(水素)によるゲッ
タリング効果は確認されていないから、より正確にはCl(塩素)の作用によって、図1
6と図17の違いに示されるようなゲッタリング効果が得られることが分かる。
このニッケル元素をゲッタリングした熱酸化膜を除去することにより、ニッケル濃度を
低くした結晶性珪素膜を得ることができる。さらに、図18は、図17のデータが得られ
た試料と同じ条件で作製した試料におけるCl元素の濃度分布を示すグラフである。図1
8から明らかなとおり、Cl元素は結晶性珪素膜と熱酸化膜の界面近傍に集中して存在し
ている。
《実施例3》
本実施例3は、実施例1〜実施例2に記載したデータが得られた結晶性珪素膜の出発膜
である非晶質珪素膜に代えて、プラズマCVD法で成膜した非晶質珪素膜を利用した場合
の例であり、他の作製条件は実施例1の場合と同じくしたものである。プラズマCVD法
で成膜された非晶質珪素膜は、減圧熱CVD法で成膜された非晶質珪素膜とはその膜質が
異なるので、結晶性珪素膜とした後のゲッタリングの作用も異なるものとなる。
まず、図19に示すのは、熱酸化膜を温度950℃の酸素雰囲気中で形成した場合のサ
ンプルの測定データである。図19から明らかなように、ニッケル元素は熱酸化膜へも移
行しているが、結晶性珪素膜中には比較的高濃度にニッケル元素が存在している。なお、
ニッケルの導入条件は同じであるのに、図16と比較すると結晶性珪素膜中におけるニッ
ケル濃度が高い。これは、プラズマCVD法で成膜された非晶質珪素膜の膜質が緻密でな
く、欠陥が多いために、ニッケル元素がより膜中に拡散し易いためであると推認される。
上記事実を別の観点から見ると、次のような別の見方をすることができる。即ち、ニッ
ケル酢酸水溶液を塗布する前に、濡れ性を改善するために、非晶質珪素膜の表面にUV(
紫外線)酸化法によって極めて薄い酸化膜を形成したが、この酸化膜の膜厚が下地の非晶
質珪素膜の膜質の違いの影響を受けて異なっている可能性がある。この場合、その膜厚の
違いによって、珪素膜中に拡散するニッケル元素の量が異なるので、その影響が図16と
図19の違いに現れたものと見ることもできる。
さらに、図20は、熱酸化膜の形成に際し、その雰囲気として酸素に対してHClを1
容量%含有させた場合のデータである。図20から明らかように、結晶性珪素膜中におけ
るニッケル濃度は、図19に示すデータに比較してさらに低下している。これに対応して
熱酸化膜中のニッケル濃度が高くなっている。
この事実は、ニッケル元素が、熱酸化膜中に塩素の作用によってゲッタリングされたこ
とを意味している。このように、塩素を含んだ酸化性雰囲気中において熱酸化膜を形成す
ることにより、その熱酸化膜中に結晶性珪素膜中に存在するニッケル元素をより効果的に
ゲッタリングさせることができる。そして、ニッケル元素をゲッタリングした該熱酸化膜
を除去することにより、ニッケル濃度を低くした結晶性珪素膜を得ることができる。
また、図21に示すグラフは、図20に示したデータが得られた試料と同じ作製条件に
よって得た試料における塩素濃度を調べた結果である。図21から明らかなとおり、塩素
は、下地膜と結晶性珪素膜との界面近傍及び結晶性珪素膜と熱酸化膜の界面近傍に高濃度
に存在している。図21は図18に対応するものであるが、塩素濃度の分布が図21のよ
うに形成されるのは、出発膜である非晶質珪素膜がプラズマCVD法によるものであり、
その膜質が緻密でないことによるものと推認される。
さらに、図20から明らかなとおり、この場合には、下地膜と結晶性珪素膜との界面近
傍においてもニッケル濃度が高くなっている傾向が認められる。これは下地膜との界面近
傍(または下地膜中)に存在する塩素の作用によって、下地膜に向かってニッケルのゲッ
タリングが行われた結果であると理解される。そしてこのような現象は、下地膜にハロゲ
ン元素を添加した場合にも得られるものと考えられる。
以上、実施例1〜実施例3で実証された効果については、本発明に係る金属元素の熱酸
化膜への移行、ゲッタリング条件等の如何により、さらに有効に行うことができるもので
ある。以下、前記(1)〜(33)の発明に対応する各実施例を、変形態様等を適宜含め
て、記載している。
《実施例4》
本実施例4は、ガラス基板上にニッケル元素を利用して結晶性珪素膜を得た実施例であ
る。まずニッケル元素の作用により高い結晶性を有する結晶性珪素膜を得た。次いで、熱
酸化法によってこの結晶性珪素膜上に形成した。この時、結晶性珪素膜中に残存したニッ
ケル元素が熱酸化膜中にゲッタリングされている。次いで、そのゲッタリングの結果、高
濃度にニッケル元素を含有した熱酸化膜を除去した。このようにすることにより、ガラス
基板上に高い結晶性を有するとともに、ニッケル元素の濃度の低い結晶性珪素膜が得られ
た。
図22は、本実施例4における作製工程を示す図である。まず、コーニング1737ガ
ラス基板(歪点:667℃)1上に下地膜として酸化窒化珪素膜2を3000オングスト
ロームの厚さに成膜した。酸化窒化珪素膜の成膜は、例えば原料ガスとしてシランとN2
O ガスと酸素とを用いたプラズマCVD法、或いはTEOSガスとN2O ガスとを用い
たプラズマCVD法等を用いて形成されるが、ここでは前者を使用した。
この酸化窒化珪素膜は、後の工程においてガラス基板からの不純物(ガラス基板中には
半導体の作製レベルで見て、多量の不純物が含まれている)の拡散を抑制する機能を有し
ている。また、下地膜としては、酸化窒化珪素膜に代えて、酸化珪素膜を用いることもで
きる。なお、該不純物の拡散を抑制する機能を最大限に得るためには窒化珪素膜が最適で
あるが、窒化珪素膜は応力の関係でガラス基板からはがれてしまうので、ガラス基板の場
合は実用的ではない。
また、この下地膜2は、可能な限りなるべく高い硬度とすることが重要なポイントとな
る。これは、最終的に得られた薄膜トランジスタの耐久試験において、下地膜の硬さが硬
い方が(即ち、そのエッチングレートが小さい方が)信頼性が高いことから結論される。
その理由については、詳細には不明であるが、恐らく薄膜トランジスタの作製工程中にお
けるガラス基板からの不純物の遮蔽効果によるものと推認される。
また、この下地膜2中に塩素で代表されるハロゲン元素を微量に含有させておくことは
有効である。このようにすると、後の工程において、半導体層中に存在する珪素の結晶化
を助長する金属元素をハロゲン元素によってゲッタリングすることができる。また下地膜
を成膜した後に水素プラズマ処理を加えることは有効であり、また酸素と水素とを混合し
た雰囲気でプラズマ処理を行うことは有効である。これらの処理は下地膜の表面に吸着し
ている炭素成分を除去し、後に形成される半導体膜との界面特性を向上させることに効果
がある。
次に、後に結晶性珪素膜となる非晶質珪素膜3を500オングストロームの厚さに減圧
熱CVD法で成膜した。ここで減圧熱CVD法を用いたのは、その方が後に得られる結晶
性珪素膜の膜質が優れているからであり、具体的には膜質が緻密であるからである。また
、上記減圧熱CVD法以外の方法としては、プラズマCVD法等を用いることができる。
ここで作製する非晶質珪素膜は、膜中の酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm-3
であることが望ましい。これは、後の工程である珪素の結晶化を助長する金属元素のゲッ
タリング工程において、酸素が重要な役割を果たすからである。
ただし、酸素濃度が上記濃度範囲より高い場合は、非晶質珪素膜の結晶化が阻害される
ので注意が必要である。また、他の不純物の濃度、例えば、窒素や炭素の不純物濃度は極
力低い方がよい。具体的には、2×1019cm-3以下の濃度とすることが必要である。こ
こでの非晶質珪素膜3の膜厚は1600オングストロームとした。この非晶質膜の膜厚は
、最終的に必要とするされる膜厚より厚くすることが必要である。
この非晶質珪素膜3を加熱のみよって結晶化させる場合は、この出発膜(非晶質珪素膜
)3の膜厚を800オングストローム〜5000μm、好ましく1500〜3000オン
グストロームとする。この膜厚範囲より厚い場合は、成膜時間が長くなるので生産コスト
の点から不経済となる。またこの膜厚範囲よりも薄い場合は、結晶化が不均一になったり
、工程の再現性が悪くなる。こうして図20(A)に示す状態が得られた。次に、非晶質
珪素膜3を結晶化させるためにニッケル元素を導入する。ここでは、10ppm(重量換
算)のニッケルを含んだニッケル酢酸塩水溶液を非晶質珪素膜3の表面に塗布することに
よってニッケル元素を導入した。
ニッケル元素の導入方法としては、上記のようにニッケル塩の溶液を用いる方法のほか
に、スパッタ法やCVD法、さらにプラズマ処理法や吸着法を用いることができる。これ
らのうち溶液を用いる方法は簡便であり、また金属元素の濃度調整が簡単であるという点
でも有用である。ニッケル塩としては各種ニッケル塩を用いることができ、溶媒としては
水のほか、アルコール類その他の有機溶媒、或いは水と有機溶媒の混合溶媒を用いること
ができる。
本実施例では、上記のようにニッケル酢酸塩溶液を塗布することにより、図22(B)
に示すように水膜4を形成した。この状態において、図示しないスピンコーターを用いて
余分な溶液を吹き飛ばした。このようにしてニッケル元素が非晶質珪素膜3の表面に接し
て保持された状態とする。なお、後の加熱工程における不純物の残留を考慮すると、酢酸
ニッケル塩溶液を用いる代わりに炭素を含まないニッケル塩を含む溶液、例えば硫酸ニッ
ケル溶液を用いることが好ましい。この理由は、酢酸ニッケル塩溶液は炭素を含んでおり
、これが後の加熱工程において炭化して膜中に残留することが懸念されるからである。ニ
ッケル元素の導入量の調整は、溶液中におけるニッケル塩の濃度を調整することにより行
うことができる。
次いで、図22(C)に示す状態において、450℃〜650℃の温度での加熱処理を
行い、非晶質珪素膜3を結晶化させ、結晶性珪素膜5を得た。この加熱処理は還元雰囲気
中で行う。ここでは水素を3容量%含んだ窒素雰囲気中で温度620℃、4時間の加熱処
理を行った。このようにして図22(C)に示すように結晶性珪素膜5を得た。この加熱
処理による結晶化の工程において雰囲気を還元雰囲気とするのは、加熱処理工程中におい
て酸化物が形成されてしまうことを防止するためであり、より具体的には、ニッケルと酸
素とが反応してNiOX が膜の表面や膜中に形成されてしまうことを抑制するためである
ところで、酸素は、後のゲッタリング工程において、ニッケルと結合してニッケルのゲ
ッタリングに多大な貢献をすることとなる。しかし、上記結晶化の段階で酸素とニッケル
とが結合することは、結晶化を阻害するものであることが判明している。従って、この加
熱による結晶化の工程においては、酸化物の形成を極力抑制することが重要である。この
結晶化のための加熱処理を行う雰囲気中の酸素濃度はppmオーダー、好ましくは1pp
m以下とすることが必要である。
また、上記の結晶化のための加熱処理を行う雰囲気の殆んどを占める気体としては、窒
素やアルゴン等の不活性ガス、それらの混合ガス等を利用することができるが、ここでは
窒素を用いた。また上記の結晶化のための加熱処理温度の下限は、その効果及び再現性か
ら見て、450℃以上とすることが好ましい。一方、その上限については使用するガラス
基板の歪点以下とすることが好ましく、本実施例では歪点が667℃のコーニング173
7ガラス基板を用いているので、多少の余裕をみてその上限は650℃程度とする。
この点、基板として石英基板を用いれば、さらに900℃程度、或いはそれ以上の温度
まで加熱温度を高くすることができる。この場合には、より高い結晶性を有する結晶性珪
素膜を得ることができ、しかも、より短時間で結晶性珪素膜を得ることができる。結晶性
珪素膜5を得た後、再度の加熱処理を行った。この加熱処理はニッケル元素を含有した熱
酸化膜を形成するために行われる。ここではこの加熱処理を酸素100%の雰囲気中で行
った。
図22(D)はこの加熱処理工程を説明する図である。この工程は、結晶化のために初
期の段階で意図的に混入させたニッケル元素(その他珪素の結晶化を助長する金属元素)
を結晶性珪素膜5中から除去するための工程である。この加熱処理は、前述の結晶化を行
うために行った加熱処理よりも高い温度で行う。これはニッケル元素のゲッタリングを効
果的に行うために重要な条件である。
この加熱処理は、上記の条件を満たした上で、550℃〜1050℃、好ましくは60
0℃〜980℃の温度で行う。これは600℃以下ではその効果が得られず、逆に105
0℃を越えると、石英で形成された治具が歪んでしまったり、装置に負担がかかるからで
ある(この意味では980℃以下とすることが好ましい)。また、この加熱処理温度の上
限は、使用するガラス基板の歪点によって制限される。使用するガラス基板の歪点以上の
温度で加熱処理を行うと、基板が変形するので注意が必要である。
本実施例では、歪点が667℃のコーニング1737ガラス基板を利用しているので、
加熱温度を640℃とした。このような条件で加熱処理を行うと、図22(D)に示され
るように熱酸化膜6が形成される。ここでは12時間の加熱処理を行い、200オングス
トロームの厚さの熱酸化膜6を成膜した。熱酸化膜6が形成されることで、結晶性珪素膜
3の膜厚は約1500オングストローム程度となる。この加熱処理においては加熱温度が
600℃〜750℃の場合は処理時間(加熱時間)を10時間〜48時間程度、代表的に
は24時間とする。なお、加熱温度が750℃〜900℃の場合は処理時間を5時間〜2
4時間程度、代表的には12時間とする。
また、加熱温度が900℃〜1050℃の範囲の場合は処理時間を1時間〜12時間程
度、代表的には6時間とする。勿論これらの処理時間は、得ようとする酸化膜の膜厚によ
って適宜設定される。この工程においては、形成される熱酸化膜6中にニッケル元素がゲ
ッタリングされる。このゲッタリングにおいては、酸素雰囲気のほか、結晶性珪素膜中に
存在する酸素が重要な役割を果たす。即ち、酸素とニッケルが結合することによって酸化
ニッケルが形成され、この形でニッケル元素が熱酸化膜6中にゲッタリングされる。
前述したように、酸素は、その濃度が多過ぎると、図22(C)に示す結晶化工程にお
いて、非晶質珪素膜3の結晶化を阻害する要素となる。しかし、上述のようにその存在は
ニッケルのゲッタリング過程においては重要な役割を果たす。従って、出発膜となる非晶
質珪素膜中に存在する酸素濃度の制御は重要なものとなる。この工程を経ることにより、
結晶性珪素膜5中におけるニッケル元素を除去し、或いはその濃度を初期濃度よりも低下
させることができる。
また、上記の工程においては、形成される酸化膜中にニッケル元素がゲッタリングされ
るので、酸化膜中におけるニッケル濃度が他の領域に比較して当然高くなる。また、珪素
膜5と酸化膜6の界面における珪素膜5側の近傍においてニッケル元素が高くなる傾向が
観察された。これは、ゲッタリングが主に行われる領域が、珪素膜と酸化膜との界面近傍
の酸化膜側であることが要因であると考えられる。界面近傍においてゲッタリングが進行
するのは、界面近傍の応力や欠陥の存在、さらには有機物が要因であると考えられる。
熱酸化膜6の形成が終了した後、当該ニッケルを高濃度に含んだ熱酸化膜6を除去した
。この熱酸化膜6の除去は、例えばバッファーフッ酸(その他フッ酸系のエッチャント)
を用いたウェットエッチングやドライエッチングを用いて行うが、ここでは前者を適用し
た。こうして、図22(E)に示すように、含有ニッケル濃度が低減した結晶性珪素膜7
が得られた。得られた結晶性珪素膜7の表面近傍には、比較的ニッケル元素が高濃度に含
まれているので、上記の熱酸化膜6のエッチングをさらに進めて、結晶性珪素膜7の表面
を少しオーバーエッチングすることが有効である。
《実施例5》
本実施例5は、実施例4に示す構成において、図22(C)に示す加熱処理により結晶
性珪素膜を得た後、さらにレーザー光の照射を行い、その結晶性を助長させた場合の例を
示す。図22(C)に示す加熱処理の温度が低かったり、処理時間が短い場合、即ち、作
製工程上の理由で、加熱温度が制限されたり、加熱時間が制限されてしまう場合等に、必
要とする結晶性が得られないことがある。このような場合には、レーザー光の照射による
アニールを施すことにより、必要とする高い結晶性を得ることができる。
この場合のレーザー光の照射は、非晶質珪素膜を直接結晶化させる場合に比較して、許
容されるレーザー照射条件の幅が広く、また、その再現性も高いものとすることができる
。レーザー光の照射は図22(C)に示す工程の後に行えばよい。また図22(A)にお
いて成膜される出発膜となる非晶質珪素膜3の膜厚を200オングストローム〜2000
オングストロームとすることが重要である。これは非晶質珪素膜の膜厚が薄い方がレーー
ザー光の照射によるアニール効果が高いものとなるからである。
また、使用するレーザー光としては特に限定はないが、好ましくは紫外領域のレーザー
光、例えば紫外領域のエキシマレーザーを使用する。具体的にはKrFエキシマレーザー
(波長248nm)やXeClエキシマレーザー(波長308nm)等を用いることがで
きるが、本実施例ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いた。またレーザ
ー光ではなく、紫外線ランプや赤外線ランプを用いた強光の照射を行ってアニールを行う
こともできる。
《実施例6》
本実施例6は、実施例5におけるレーザー光に代えて赤外線ランプを利用した場合の例
である。赤外線を用いた場合、ガラス基板をあまり加熱せずに珪素膜を選択的に加熱する
ことができる。従って、ガラス基板に対して熱的ダメージを与えずに効果的な加熱処理を
行うことができた。
《実施例7》
本実施例7は、実施例4に示す構成において、珪素の結晶化を助長する金属元素として
、Cuを用いた場合の例である。銅元素の場合、Cuを導入するための溶液としては、例
えば酢酸第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕や塩化第2銅(CuCl2 2H2 O)等の溶
液を用いればよいが、本実施例では酢酸第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕の水溶液を用
いた。
《実施例8》
本実施例8は、実施例4に示す構成において、基板1として石英基板を用いた例である
。本実施例においては、出発膜となる非晶質珪素膜3の膜厚を2000オングストローム
とした。また、図22(C)で示す加熱処理による熱酸化膜の形成時における加熱温度を
950℃とした。この場合、酸化膜の形成が速く、ゲッタリングの効果が充分に得られな
いので、雰囲気中の酸素濃度を低くする。具体的には、窒素雰囲気中における酸素濃度を
10容量%とした。
本実施例での上記処理時間は300分とした。このような条件とすると、約500オン
グストロームの膜厚を有する熱酸化膜を得ることができる。また、同時にゲッタリングに
必要な時間を稼ぐことができる。なお、酸素100%の雰囲気中で950℃の加熱処理を
行った場合、約30分で500オングストローム以上の厚さを有する熱酸化膜が得られて
しまう。
この場合には、ニッケルのゲッタリングを充分に行うことができないので、結晶性珪素
膜7内には、比較的高濃度にニッケル元素が残留してしまう。従って本実施例に示すよう
に酸素濃度を調整し、充分なゲッタリング効果が得れる時間を稼いで、熱酸化膜を形成す
ることが好ましい。この方法のように、熱酸化膜の厚さや形成温度を変化させた場合に、
雰囲気の酸素濃度を調整することにより、金属元素のゲッタリングに必要とされる時間を
設定することができる。
《実施例9》
本実施例9は、実施例4とは異なる形態の結晶成長を行わせる例である。本実施例は、
珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して、横成長と呼ばれる基板に平行な方向への結
晶成長を行わせる方法に関する。図23は本実施例9の作製工程を示す図である。まずコ
ーニング1737ガラス基板8上に下地膜9として、減圧熱CVD法により、酸化窒化珪
素膜を3000オングストロームの厚さに成膜した。該ガラス基板に代えて石英基板でも
よいことは勿論である。
次に、結晶性珪素膜の出発膜となる非晶質珪素膜10を減圧熱CVD法によって200
0オングストロームの厚さに成膜した。この非晶質珪素膜の厚さは、前述したように20
00オングストローム以下とすることが好ましい。なお、減圧熱CVD法の代わりにプラ
ズマCVD法等を用いてもよい。次いで、図示しない酸化珪素膜を1500オングストロ
ームの厚さに成膜し、それをパターニングすることにより、符号11で示されるマスクを
形成した。このマスクは12で示される領域で開口が形成されている。この開口12が形
成されている領域においては非晶質珪素膜10が露呈している。
開口12は、図面の奥行から手前方向への長手方向に細長い長方形を有している。この
開口12の幅は20μm以上とするのが適当であり、またその長手方向の長さは任意に決
めればよいが、ここではその幅を30μm、長さを5cmとした。そして実施例4で示し
たように、重量換算で10ppmのニッケル元素を含む酢酸ニッケル水溶液を塗布した後
、図示しないスピナーを用いてスピンドライを行って余分な溶液を除去した。こうしてニ
ッケル元素が、溶液として、図23(A)の点線13で示されるように、非晶質珪素膜1
0の露呈した表面に接して保持された状態が実現された。
次に、水素を3容量%含有した極力酸素を含まない窒素雰囲気中において、温度640
℃、4時間の加熱処理を行った。すると、図23(B)の14で示されるような、基板に
平行な方向への結晶成長が進行した。この結晶成長は、ニッケル元素が導入された開口1
2の領域から周囲に向かって進行する。この基板に平行な方向への結晶成長を本明細書中
横成長又はラテラル成長と指称している。
本実施例9のような条件においては、この横成長を100μm以上にわたって行わせる
ことができる。こうして横成長した領域を有する結晶性珪素膜15を得た。なお、開口1
2が形成されている領域においては、珪素膜の表面から下地界面に向かって、縦成長とよ
ばれる垂直方向への結晶成長が進行する。次いで、ニッケル元素を選択的に導入するため
の酸化珪素膜であるマスク11を除去した。こうして図23(C)に示す状態を得た。こ
の状態においては、珪素膜15中に縦成長領域、横成長領域、結晶成長が及ばなかった領
域(非晶質状態の領域)が存在している。
この状態で、酸素雰囲気中において、温度640℃の加熱処理を12時間行った。この
工程において、ニッケル元素を膜中に高濃度に含んだ酸化膜16が形成され、同時に珪素
膜15中のニッケル元素濃度を相対的に減少させることができる。ここでは、熱酸化膜1
6が200オングストロームの厚さに成膜された。この熱酸化膜中には、ゲッタリングさ
れたニッケル元素が高濃度に含まれている。また、熱酸化膜16が成膜されることにより
、結晶性珪素膜15は当初の2000オングストロームから1900オングストローム程
度の膜厚となった。
次に、前記実施例4の場合と同様にしてニッケル元素を高い濃度で含んだ熱酸化膜16
を除去した。この状態の結晶性珪素膜においては、ニッケル元素が結晶性珪素膜の表面に
向かって高濃度に存在するような濃度分布を有している。従って、熱酸化膜16を除去し
た後に、さらに結晶性珪素膜の表面をエッチングすることにより、ニッケル元素が高濃度
に存在している領域を除去することが有用である。即ち、高濃度にニッケル元素が存在し
ている結晶性珪素膜の表面をエッチングすることにより、ニッケル元素濃度がより低減し
た結晶性珪素膜を得ることができる。
次に、パターニングを行うことにより、図23(E)のように、横成長領域からなるパ
ターン17を形成した。ここで、パターン17には、縦成長領域と非晶質領域、さらに横
成長の先端領域が存在しないようにすることが重要である。これは、縦成長と横成長の先
端領域においては、ニッケル元素の濃度が相対的に高く、また結晶成長が及ばなかった非
晶質領域はその電気的な特性が劣るからである。こうして、パターン17中に残留するニ
ッケル元素の濃度を、実施例4で示した場合に比較してさらに低いものとすることができ
る。
これは、横成長領域中に含まれる金属元素の濃度がそもそも低いことにも起因している
。具体的には、横成長領域からなるパターン17中のニッケル元素の濃度を1017cm-3
以下のオーダーにすることが容易に可能である。また、横成長領域を利用して薄膜トラン
ジスタを形成した場合、実施例4に示したような縦成長(実施例4の場合は全面が縦成長
する)領域を利用した場合に比較して、より高移動度を有する半導体装置を得ることがで
きる。
なお、図23(E)に示すパターンを形成した後に、さらにエッチング処理を行い、パ
ターン表面に存在しているニッケル元素を除去することは有用である。また、パターン1
7を形成した後に、ゲッタリングのために熱酸化膜を形成することは有効ではない。この
場合には、熱酸化膜によるゲッタリング効果は確かに得られるが、熱酸化膜の除去時に下
地膜のエッチングも進行するので、島状に形成された結晶性珪素膜の下側までえぐられる
ようにエッチングが進行してしまうからである。
このような状態は、後に配線の断線や素子の動作不良の要因となる。本実施例では、パ
ターン17を形成した後に、熱酸化膜18を形成した。この熱酸化膜18は、薄膜トラン
ジスタを構成するのであれば、後にゲイト絶縁膜の一部となる部分であり、上記ゲッタリ
ング効果を伴うが、除去するためのものではない。
《実施例10》
本実施例10は、本発明に係る結晶性珪素膜を利用して、アクティブマトリクス型の液
晶表示装置やアクティブマトリクス型のEL表示装置の画素領域に配置される薄膜トラン
ジスタを作製する例である。図24は本実施例10の作製工程を示した図である。
まず、実施例4或いは実施例9に示した工程によりガラス基板上に結晶性珪素膜を形成
するが、本実施例では実施例4の工程を用いた。ここで得られた結晶性珪素膜をパターニ
ングすることにより、図24(A)に示す状態を得た。図24(A)において、符号20
はガラス基板、21は下地膜、22は結晶性珪素膜で構成された活性層である。図24(
A)に示す状態を得た後、酸素と水素を混合した減圧雰囲気でのプラズマ処理を施した。
このプラズマは高周波放電によって形成した。
上記プラズマ処理によって、活性層22の露呈した表面に存在している有機物が除去さ
れる。正確には、酸素プラズマによって活性層の表面に吸着している有機物が酸化され、
さらに水素プラズマにより、そこで酸化した有機物が還元、気化される。こうして活性層
22の露呈した表面に存在する有機物が除去される。この有機物の除去は、活性層22の
表面における固定電荷の存在を抑制する上で非常に効果がある。有機物の存在に起因する
固定電荷は、デバイスの動作を阻害したり、特性の不安定性の要因となるものであり、そ
の存在を少なくすることは非常に有用である。
上記有機物の除去後、温度640℃の酸素雰囲気中において熱酸化を行って、100オ
ングストロームの熱酸化膜19を形成した。この熱酸化膜は、半導体層との界面特性が高
く、後にゲイト絶縁膜の一部を構成することとなる。こうして図24(A)に示す状態を
得た。その後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜23を1000オングストローム
の厚さに成膜した。成膜方法としては、酸素とシランとN2O との混合ガスを用いたプラ
ズマCVD法、或いはTEOSとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法等が使用
し得るが、ここでは前者を用いた。この酸化窒化珪素膜23は熱酸化膜19と合わせてゲ
イト絶縁膜として機能する。
また、酸化窒化珪素膜23中にハロゲン元素を含有させることは有効である。即ち、ハ
ロゲン元素の作用によりニッケル元素を固定化することで、活性層22中に存在するニッ
ケル元素(その他珪素の結晶化を助長する金属元素の場合も同じ)の影響により、ゲイト
絶縁膜の絶縁膜としての機能が低下してしまうことを防ぐことができる。酸化窒化珪素膜
とすることは、その緻密な膜質から、ゲイト絶縁膜中に金属元素が進入し難くなるという
有意性がある。ゲイト絶縁膜中に金属元素が侵入すると、絶縁膜としての機能が低下し、
薄膜トランシスタの特性の不安定性やバラツキの原因となる。なお、ゲイト絶縁膜として
は、通常利用されている酸化珪素膜を用いることもできる。
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜23を成膜した後、後にゲイト電極として
機能するアルミニウム膜(図示せず)をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜中に
は、スカンジウムを0.2重量%含有させた。アルミニウム膜中にスカンジウムを含有さ
せたのは、後の工程において、ヒロックやウィスカーが発生することを抑制するためであ
る。ここで、ヒロックやウィスカーとは、加熱が行われることによって、アルミニウムの
異常成長が発生し、針状或いは刺状の突起部が形成されてしまうことを意味している。
アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化
膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として行った。この
電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行うことで、
アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。この図示しない緻
密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とする。この陽極酸化
膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有している。なお、
この陽極酸化膜の膜厚は陽極酸化時の印加電圧によって制御することができる。
次に、レジストマスク25を形成し、アルミニウム膜を24で示されるパターンにパタ
ーニングした。こうして図24(B)に示す状態を得た。ここで再度の陽極酸化を行う。
ここでは3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解溶液中において、
アルミニウムのパターン26を陽極とした陽極酸化を行うことにより、符号27で示され
る多孔質状の陽極酸化膜が形成される。この工程においては、上部に密着性の高いレジス
トマスク25が存在する関係で、アルミニウムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜27
が形成される。
この陽極酸化膜は、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここではその膜厚
を6000オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化時間によって制御
することができる。次いで、レジストマスク25を除去し、さらに再度の緻密な陽極酸化
膜の形成を行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含むエチレングルコール溶液を電
解溶液として用いた陽極酸化を再び行った。すると、多孔質状の陽極酸化膜27中に電解
溶液が進入する関係から、符号28で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形
成された。
この緻密な陽極酸化膜28の膜厚は1000オングストロームとした。この膜厚の制御
は印加電圧の調整によって行った。ここで露呈した酸化窒化珪素膜23と熱酸化膜19を
エッチングした。このエッチングにはドライエッチングを利用した。そして酢酸と硝酸と
リン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜27を除去した。こうして図24
(D)に示す状態を得た。
図24(D)に示す状態を得た後、不純物イオンの注入を行った。ここでは、Nチャネ
ル型の薄膜トランジスタを作製するためにP(リン)イオンの注入をプラズマドーピング
法によって行った。この工程においてはヘビードープがされる領域(30と34)とライ
トドープがされる領域(31と33)が形成される。これは残存した酸化珪素膜29の一
部が半透過なマスクとして機能し、注入されたイオンの一部がそこで遮蔽されるからであ
る。
次いで、レーザー光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性化
を行った。なおレーザー光に代えて強光の照射で行うこともできる。こうしてソース領域
30、チャネル形成領域32、ドレイン領域34、低濃度不純物領域31と33が自己整
合的に形成された。ここで、図24(D)中符号33で示されるのが、LDD(ライトド
ープドレイン)領域と称される領域である。なお、緻密な陽極酸化膜28の膜厚を200
0オングストローム以上というように厚くした場合、その膜厚によってチャネル形成領域
32の外側にオフセットゲイト領域を形成することができる。
本実施例においても、オフセットゲイト領域は形成されているが、その寸法が小さいの
で、その存在による寄与が小さく、また図面が煩雑になることから、図24(D)中には
記載していない。次に、層間絶縁膜35として酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはそ
の積層膜を形成する。ここでは酸化珪素膜を用いた。なお、層間絶縁膜としては、酸化珪
素膜又は窒化珪素膜上に樹脂材料でなる層を形成して構成してもよい。次いでコンタクト
ホールの形成を行い、ソース電極36とドレイン電極37の形成を行った。こうして図2
4(E)に示す薄膜トランジスタを完成した。
《実施例11》
本実施例11は、実施例10に示す構成において、ゲイト絶縁膜23の形成方法に関す
る実施例である。基板として石英基板や耐熱性の高いガラス基板等を用いた場合には、ゲ
イト絶縁膜の形成方法として、熱酸化法を適用することができる。熱酸化法は、その膜質
を緻密なものとすることができ、安定した特性を有する薄膜トランジスタを得る上で有用
なものとなる。即ち、熱酸化法で成膜された酸化膜は、絶縁膜として緻密で内部に存在す
る可動電荷を少なくすることができるので、ゲイト絶縁膜として最適なものの一つである
本実施例では、熱酸化膜の形成方法としては、950℃の温度の酸化性雰囲気中におい
て加熱処理を行った。この際、酸化性雰囲気中にHCl等を混合させることは有効である
。このようにすることで、熱酸化膜の形成と同時に活性層中に存在する金属元素を固定化
することができる。また、酸化性雰囲気中にN2O ガスを混合し、窒素成分を含有した熱
酸化膜を形成することも有効である。ここでN2O ガスの混合比を最適化すれば、熱酸化
法による酸化窒化珪素膜を得ることも可能である。なお、本実施例のような場合、特に熱
酸化膜19を形成する必要はなく、本実施例では熱酸化膜19は形成しなかった。
《実施例12》
本実施例12は、実施例10〜11に示す工程とは異なる工程で薄膜トランジスタを作
製した例である。図25は本実施例の作製工程を示す図である。まず、実施例4又は実施
例5に示した工程によりガラス基板上に結晶性珪素膜を形成するが、ここでは実施例4の
工程に従って形成した。次いで、それをパターニングすることにより、図25(A)に示
す状態を得た。
その後、酸素と水素の混合減圧雰囲気中においてプラズマ処理を行った。図25(A)
に示す状態において、39がガラス基板、40が下地膜、41が結晶性珪素膜で構成され
た活性層である。また、符号38はゲッタリングのための熱酸化膜を除去した後に再度形
成された熱酸化膜である。図25(A)に示す状態を得た後、ゲイト絶縁膜を構成する酸
化窒化珪素膜42を1000オングストロームの厚さに成膜した。
成膜方法は、酸素とシランとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法、或いはT
EOSとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法等を適用し得るが、ここではTE
OSとN2O との混合ガスを用いた。酸化窒化珪素膜42は熱酸化膜38とともにゲイト
絶縁膜を構成する。なお、酸化窒化珪素膜に代えて、酸化珪素膜を用いることもできる。
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜42を成膜した後、後にゲイト電極として機
能する図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜中には、
スカンジウムを0.2重量%含有させた。
アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化
膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として用いて形成し
た。即ち、この電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化
を行うことで、アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。こ
の緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とする。この陽極
酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有している。な
お、この陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧を調整することによって制御するこ
とができる。
次に、レジストマスク43を形成し、アルミニウム膜を44で示されるパターンにパタ
ーニングした。次いで、ここで再度の陽極酸化を行った。この陽極酸化には3重量%のシ
ュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解溶液中において、アルミニウムのパター
ン44を陽極とした陽極酸化を行うことにより、符号45で示される多孔質状の陽極酸化
膜が形成される。
この工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク43が存在する関係で、アル
ミニウムパターンの側面に選択的に該陽極酸化膜45が形成される。この陽極酸化膜は、
その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここでは、その膜厚を6000オングス
トロームとした。なお、その成長距離は陽極酸化時間の調整によって制御することができ
る。
次いで、レジストマスク43を除去した後、さらに再度の緻密な陽極酸化膜の形成を行
った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液とし
て用いた陽極酸化を再び実施した。すると、多孔質状の陽極酸化膜45中に電解溶液が進
入(侵入)する関係から、図25(C)中符号46で示されるように緻密な膜質を有する
陽極酸化膜が形成される。
ここで最初の不純物イオンの注入を行った。なおこの工程はレジストマスク43を除去
してから、その時点で行ってもよい。この不純物イオンの注入により、ソース領域47と
ドレイン領域49が形成される。また48の領域には不純物イオンは注入されない。次に
酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜45を除去した。こ
うして図25(D)に示す状態を得た。
図25(D)に示す状態を得た後、再度不純物イオンの注入を実施した。この不純物イ
オンは最初の不純物イオンの注入条件よりライトドーピングの条件で行う。この工程にお
いて、ライトドープされる領域(50と51)が形成され、そして図25(D)中、符号
52で示される領域がチャネル形成領域となる。次いで紫外線ランプによる強光の照射を
行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性化を行った。なお、強光に代えて
レーザー光を用いることもできる。こうしてソース領域47、チャネル形成領域52、ド
レイン領域49、低濃度不純物領域50、51が自己整合的に形成される。
ここで、図25(D)中符号51で示されるのが、LDD(ライトドープドレイン)領
域と称される領域である。次に、層間絶縁膜53として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜
、またはその積層膜を形成するが、ここでは窒化珪素膜を使用した。なお、層間絶縁膜と
しては、酸化珪素膜又は窒化珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。
その後、コンタクトホールの形成を行い、ソース電極54とドレイン電極55の形成を行
った。こうして図25(E)に示す薄膜トランジスタを完成した。
《実施例13》
本実施例13は、Nチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタ
とを相補型に構成した例である。本実施例に示す構成は、例えば絶縁表面上に集積化され
た各種薄膜集積回路に利用することができ、また、例えばアクティブマトリクス型の液晶
表示装置の周辺駆動回路に利用することができる。
図26は本実施例13の作製工程を示す図である。まず図26(A)に示すようにガラ
ス基板57上に下地膜58として酸化珪素膜又は酸化窒化珪素膜を成膜する。このうち好
ましくは酸化窒化珪素膜を用いるが、ここでは酸化窒化珪素膜を使用した。次いで、図示
しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法や減圧熱CVD法等によって成膜するが、ここで
は減圧熱CVD法で成膜した。
さらに、実施例4に示したのと同様の方法により、この非晶質珪素膜を結晶性珪素膜に
変成した後、熱酸化膜の形成によるニッケル元素のゲッタリングを行った。次いで酸素と
水素の混合雰囲気中においてプラズマ処理を実施した後、得られた結晶性珪素膜をパター
ニングして活性層(59と60)を得た。さらにゲイト絶縁膜を構成する熱酸化膜56を
成膜した。
こうして図26(A)に示す状態を得た後、酸化窒化珪素膜61を成膜した。なお、基
板として石英を使用する場合には、前述の熱酸化法を用いて熱酸化膜のみでもってゲイト
絶縁膜を構成することが望ましい。次いで、ゲイト電極を構成するための図示しないアル
ミニウム膜を4000オングストロームの厚さに成膜した。アルミニウム膜以外の膜とし
ては、陽極酸化が可能な金属、例えばタンタル等を利用することができる。アルミニウム
膜を形成した後、前述した方法により、その表面に極薄の緻密な陽極酸化膜を形成した。
次に、アルミニウム膜上に図示しないレジストマスクを配置し、アルミニウム膜のパタ
ーニングを行った後、得られたアルミニウムパターンを陽極として陽極酸化を行い、多孔
質状の陽極酸化膜(64と65)を形成した。この多孔質状の陽極酸化膜の膜厚は500
0オングストロームとした。さらに、再度緻密な陽極酸化膜を形成する条件で陽極酸化を
行い、緻密な陽極酸化膜(66と67)を形成した。ここで緻密な陽極酸化膜66と67
の膜厚は800オングストロームとした。こうして図26(B)に示す状態を得た。
さらに、露呈した酸化珪素膜61と熱酸化膜56をドライエッチングによって除去し、
図26(C)に示す状態を得た。その後、酢酸と硝酸とリン酸を混合した混酸を用いて、
多孔質状の陽極酸化膜64と65を除去した。こうして図26(D)に示す状態を得た。
ここで、交互にレジストマスクを配置して、左側の薄膜トランジスタにP(リン)イオン
を、右側の薄膜トランジスタにB(ホウ素)イオンを注入した。
これらの不純物イオンの注入によって、高濃度のN型を有するソース領域70とドレイ
ン領域73が自己整合的に形成された。また低濃度にPイオンがドープされた弱いN型を
有する領域71が同時に形成され、またチャネル形成領域72が同時に形成された。符号
71で示される弱いN型を有する領域が形成されるのは、残存したゲイト絶縁膜68が存
在するからである。即ち、ゲイト絶縁膜68を透過したPイオンがゲイト絶縁膜68によ
って一部遮蔽されるからである。
また、同様な原理、手法により、強いP型を有するソース領域77とドレイン領域74
が自己整合的に形成され、同時に低濃度不純物領域76が同時に形成され、またチャネル
形成領域75が同時に形成された。なお、緻密な陽極酸化膜66と67の膜厚が例えば2
000オングストロームというように厚い場合には、その厚さでチャネル形成領域に接し
てオフセットゲイト領域を形成することができる。
本実施例の場合は、緻密な陽極酸化膜66と67の膜厚が1000オングストローム以
下と薄いので、その存在は無視することができる。そして、レーザー光又は強光の照射を
行い、不純物イオンが注入された領域のアニールを行うが、ここでは赤外線ランプにより
照射した。次いで、図26(E)に示すように層間絶縁膜として窒化珪素膜78と酸化珪
素膜79を成膜し、それぞれの膜厚を1000オングストロームとした。なお、この場合
、酸化珪素膜79は成膜しなくてもよい。
ここで、窒化珪素膜によって薄膜トランジスタが覆われることになる。窒化珪素膜は緻
密であり、また界面特性がよいので、このような構成とすることで、薄膜トランジスタの
信頼性を高めることができる。さらに樹脂材料からなる層間絶縁膜80をスピンコート法
により形成したが、ここでは層間絶縁膜80の厚さを1μmとした。次いで、コンタクト
ホールの形成を行い、左側のNチャネル型の薄膜トランジスタのソース電極81とドレイ
ン電極82を形成した。また同時に右側の薄膜トランジスタのソース電極83とドレイン
電極82を形成した。ここでのドレイン電極82は共通に配置されたものとなる。こうし
て図26(F)に示す状態を得た。
以上のようにして、相補型に構成されたCMOS構造を有する薄膜トランジスタ回路を
構成することができる。本実施例に示す構成においては、薄膜トランジスタを窒化膜で覆
い、さらに樹脂材料によって覆った構成が得られた。この構成は、可動イオンや水分が侵
入しにくい耐久性の高いものとすることができる。さらには、多層配線を形成したような
場合に、薄膜トランジスタと配線との間に容量が形成されてしまうことを防ぐことができ
る。
《実施例14》
本実施例14は、実施例4又は実施例5で得た結晶性珪素膜に対して、さらにレーザー
光の照射を行うことにより、単結晶又は実質的に単結晶と見なせる領域を形成する構成に
関する例である。
まず、前記実施例4に示したようにニッケル元素の作用を利用して結晶性珪素膜を得た
。次いで、その膜に対してKrFエキシマレーザーを照射して、さらにその結晶性を助長
させた。この際、450℃以上の温度での加熱処理を併用し、さらにレーザー光の照射条
件を最適化することにより、単結晶又は実質的に単結晶と見なせる領域を形成した。
このような方法で結晶化を大きく助長させた膜は、ESRで計測した電子スピン密度が
3×1017個cm-3以下であり、またSIMSで計測した最低値として当該ニッケル元素
濃度を3×1017cm-3以下で有し、さらに単結晶と見なすことができる領域を有するも
のとなった。また、この領域には実質的に結晶粒界が存在しておらず、単結晶珪素ウエハ
ーに匹敵する高い電気的な特性を得ることができる。
また、この単結晶と見なせる領域は、水素を5原子%以下〜1×1015cm-3
度含んでいる。この
値は、SIMS(2次イオン分析方法)による計測より明 らかにされた。このような単
結晶又は単結晶と見なせる領域を利用して薄膜トランジスタを作製することにより、単結
晶ウエハーを利用して作製したMOS型トランジスタに匹敵する半導体装置を得ることが
できる。
《実施例15》
本実施例15は、前記実施例4に示す工程において、下地膜の表面に直接ニッケル元素
を導入した例を示す。この場合、ニッケル元素は非晶質珪素膜の下面に接して保持される
ことになる。本実施例では、下地膜の形成後にニッケル元素の導入を行い、まず下地膜の
表面にニッケル元素(当該金属元素)が接して保持された状態とした。なお、このニッケ
ル元素の導入方法としては、溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法やCVD法、さらに
は吸着法を用いることができる。
《実施例16》
本実施例16は、ガラス基板上にニッケル元素を利用して結晶性珪素膜を得た実施例で
ある。本実施例では、まずニッケル元素の作用により高い結晶性を有する結晶性珪素膜を
形成した。次いで、ハロゲン元素を含んだ酸化膜を、熱酸化法によって、その結晶性珪素
膜上に形成した。この時、得られた結晶性珪素膜中に残存したニッケル元素が酸素及びハ
ロゲン元素の作用により熱酸化膜中にゲッタリングされる。
次いで、上記ゲッタリングの結果、高濃度にニッケル元素を含有した熱酸化膜を除去し
た。このようにすることにより、ガラス基板上に高い結晶性を有していながら、かつニッ
ケル元素の濃度の低い結晶性珪素膜を得ることができる。図27は本実施例における作製
工程を示す図である。
まず、コーニング1737ガラス基板(歪点667℃)84上に下地膜として酸化窒化
珪素膜85を3000オングストロームの厚さに成膜した。酸化窒化珪素膜の成膜は、原
料ガスとしてシランとN2O ガスと酸素とを用いたプラズマCVD法を用いて行った。な
お、この成膜は、例えばTEOSガスとN2O ガスとを用いたプラズマCVD法を用いて
行ってもよい。
酸化窒化珪素膜は、後の工程においてガラス基板からの不純物(ガラス基板中には半導
体の作製レベルで見て、多量の不純物が含まれている)の拡散を抑制する機能を有してい
る。なお、この不純物の拡散を抑制する機能を最大限に得るためには、窒化珪素膜が最適
であるが、窒化珪素膜は応力の関係でガラス基板からはがれてしまうので、本実施例のよ
うな場合には実用的ではない。また下地膜としては酸化珪素膜を用いることもできる。
ここで、上記下地膜85は可能な限り、なるべく高い硬度とすることが重要なポイント
となる。これは、最終的に得られた薄膜トランジスタの耐久試験において、下地膜の硬さ
が硬い方が(即ち、そのエッチングレートが小さい方が)信頼性が高いことから結論され
る。なお、その理由は、薄膜トランジスタの作製工程中におけるガラス基板からの不純物
の遮蔽効果によるものと考えられる。
また、下地膜85中に塩素で代表されるハロゲン元素を微量に含有させておくことは有
効である。このようにすると、後の工程において、半導体層中に存在する珪素の結晶化を
助長する金属元素をハロゲン元素によってゲッタリングすることができる。また、下地膜
の成膜後に、水素プラズマ処理を加えることは有効である。また、酸素と水素とを混合し
た雰囲気でのプラズマ処理を行うことは有効である。これは、下地膜の表面に吸着してい
る炭素成分を除去し、後に形成される半導体膜との界面特性を向上させることに効果があ
る。
次に、後に結晶性珪素膜となる非晶質珪素膜86を500オングストロームの厚さに減
圧熱CVD法で成膜した。減圧熱CVD法を使用したのは、その方が後に得られる結晶性
珪素膜の膜質が優れているからで、具体的には、膜質が緻密であるからである。なお、減
圧熱CVD法以外の方法としては、プラズマCVD法等を用いることができる。
ここで作製する非晶質珪素膜は、膜中の酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm
-3であることが望ましい。これは、後に珪素の結晶化を助長する金属元素をゲッタリング
する工程において、酸素が重要な役割を果たすからである。ただし、酸素濃度が上記濃度
範囲より高い場合は、非晶質珪素膜の結晶化が阻害されるので注意が必要である。また他
の不純物濃度、例えば、窒素や炭素の不純物濃度は極力低い方がよい。具体的には、2×
1019cm-3以下の濃度とすることが必要である。
本実施例では、上記非晶質珪素膜86の膜厚を1600オングストロームとした。この
膜厚は、後述するように最終的に必要とするされる膜厚より厚くすることが必要である。
この非晶質珪素膜86を加熱のみよって結晶化させる場合は、この出発膜(非晶質珪素膜
)86の膜厚を800オングストローム〜5000μm、好ましくは1500〜3000
オングストロームとする。この膜厚範囲より厚い場合は、成膜時間が長くなるので生産コ
ストの点から不経済となる。またこの膜厚範囲より薄い場合は、結晶化が不均一になった
り、工程の再現性が悪くなる。こうして図27(A)に示す状態を得た。
次に、非晶質珪素膜86を結晶化させるためにニッケル元素を導入した。ここでは、1
0ppm(重量換算)のニッケルを含んだニッケル酢酸塩水溶液を非晶質珪素膜86の表
面に塗布することによってニッケル元素を導入した。ニッケル元素の導入方法としては、
上記の溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法やCVD法、さらにプラズマ処理や吸着法
を用いることができる。このうち上記の溶液を用いる方法は、簡便であり、また金属元素
の濃度調整が簡単であるという点でも有用である。
ニッケル酢酸塩水溶液を塗布することにより、図27(B)に示すように水膜(液膜)
87が形成される。この状態において、図示しないスピンコーターを用いて余分な溶液を
吹き飛ばした。こうして、ニッケル元素が非晶質珪素膜86の表面に接して保持された状
態とした。なお、後の加熱工程における不純物の残留を考慮すると、酢酸ニッケル塩を用
いる代わりに例えば硫酸ニッケルを用いることが好ましい。これは、酢酸ニッケル塩は炭
素を含んでおり、これが後の加熱工程において炭化して膜中に残留することが懸念される
からである。ニッケル元素の導入量の調整は、溶液中におけるニッケル塩の濃度を調整す
ることにより行うことができる。
次いで、図27(C)に示す状態において、450℃〜650℃の温度での加熱処理を
行って結晶化させる。この加熱処理は還元性雰囲気中で行うが、ここでは水素を3容量%
含んだ窒素雰囲気中で温度620℃、4時間の加熱処理を行った。こうして、非晶質珪素
膜86を結晶化させて結晶性珪素膜88を得た。
上記加熱処理による結晶化工程において、雰囲気を還元雰囲気とするのは、加熱処理工
程中において、酸化物が形成されてしまうことを防止するためである。具体的には、ニッ
ケルと酸素とが反応して、NiOX が膜の表面や膜中に形成されてしまうことを抑制する
ためである。
酸素は、後のゲッタリング工程においてニッケルと結合して、ニッケルのゲッタリング
に多大な貢献をすることとなる。しかし、上記結晶化の段階で酸素とニッケルとが結合す
ることは、結晶化を阻害するものであることが判明している。従って、この加熱による結
晶化工程においては、酸化物の形成を極力抑制することが重要となる。
ここで、上記結晶化のための加熱処理を行う雰囲気中の酸素濃度は、ppmオーダー、
好ましくは1ppm以下とすることが必要である。また上記の結晶化のための加熱処理を
行う雰囲気の殆んどを占める気体としては、窒素とは限らず、アルゴン等の不活性ガス、
或いはこれらの混合ガスを使用することができる。上記結晶化のための加熱処理温度の下
限は、その効果及び再現性から見て450℃以上とすることが好ましい。またその上限は
、使用するガラス基板の歪点以下とすることが好ましく、本実施例のように歪点が667
℃のコーニング1737ガラス基板を用いる場合には、多少の余裕をみてその上限は約6
50℃とする。
この点、基板として、より高温耐熱性を有する材料、例えば石英基板を用いる場合には
最高1100℃程度まで(好ましくは1050℃程度まで)の温度で行うことができる。
この場合には、より高い結晶性を有する結晶性珪素膜を得ることができ、また、より短時
間で結晶性珪素膜を得ることができる。こうして図27(C)に示すように、結晶性珪素
膜88を形成した。
上記結晶性珪素膜88を得た後、再度の加熱処理を行った。この加熱処理は、ハロゲン
元素を含有した熱酸化膜を形成するために行われる。ここではこの加熱処理をハロゲン元
素を含んだ雰囲気中で実施した。この工程は、結晶化のために初期の段階で意図的に混入
させたニッケル元素を結晶性珪素膜88中から除去するための工程である。
この加熱処理は、前述の結晶化を行うために行った加熱処理よりも高い温度で行うのが
好ましい。これは、ニッケル元素のゲッタリングを効果的に行うために重要な条件である
。なお、この加熱処理は、結晶化を行うために行った加熱処理と同程度の温度でもよいが
、より高い温度であるがより効果的であり、より高品質の結晶を得ることができる。
この加熱処理は、上記の条件を満たした上で550℃〜1100℃、好ましくは約70
0〜1050℃の範囲、さらに好ましくは800℃〜980℃の温度で行う。これは、6
00℃を下回るとその効果が小さく、1050℃を越えることは、石英で形成された治具
が歪んでしまったり、装置に負担がかかるからである(この意味では980℃以下とする
ことが好ましいが、より耐熱性の治具を用いる場合等では1100℃程度でも実施するこ
とができる)。また、この加熱処理温度の上限は、使用する基板の歪点によっても制限さ
れる。使用する基板の歪点以上の温度で加熱処理を行うと、基板が変形するので注意が必
要である。
ここでは、歪点が667℃のコーニング1737ガラス基板を使用しているので、上記
加熱温度を650℃とした。また、この2度目の加熱処理の雰囲気は酸素にHClを5容
量%含有させた雰囲気中で行った。HClは酸素に対して0.5〜10%(体積%)の割
合で混合することが好ましい。なお、この濃度以上に混合すると、膜の表面が膜厚と同程
度以上の凹凸に荒れてしまうので注意が必要である。
このような条件で加熱処理を行うことにより、図27(D)に示されるように塩素が含
まれた熱酸化膜89が形成される。本実施例では12時間の加熱処理を行い、200オン
グストローム厚の熱酸化膜89を成膜した。熱酸化膜89が形成されることにより、結晶
性珪素膜86の膜厚は約1500オングストローム程度となった。
この加熱処理においては、加熱温度が600℃〜750℃の場合は処理時間(加熱時間
)を10時間〜48時間、代表的には24時間とする。なお加熱温度が750℃〜900
℃の場合は処理時間を5時間〜24時間、代表的には12時間とする。また加熱温度が9
00℃〜1050℃の場合は処理時間を1時間〜12時間、代表的には6時間とする。勿
論これらの処理時間は、得ようとする酸化膜の膜厚によって適宜設定される。
この工程においては、酸素の作用及びハロゲン元素の作用、特にハロゲン元素の作用に
より、ニッケル元素が結晶性珪素膜の膜外にゲッタリングされる。ここでは特に塩素の作
用により、形成される自然酸化膜89中にニッケル元素がゲッタリングされている。この
ゲッタリングにおいては、結晶性珪素膜中に存在する酸素が重要な役割を果たす。即ち、
酸素とニッケルが結合することによって形成される酸化ニッケルに塩素によるゲッタリン
グ効果が作用して、効果的にニッケル元素のゲッタリングが進行する。
前述したように、酸素は、その濃度が多過ぎると、図27(C)に示す結晶化工程にお
いて、非晶質珪素膜86の結晶化を阻害する要素となる。しかし、上述のように、その存
在はニッケルのゲッタリング過程においては重要な役割を果たす。従って、出発膜となる
非晶質珪素膜中に存在する酸素濃度の制御は重要なものとなる。本実施例ではハロゲン元
素としてClを選択し、その導入方法としてHClを使用する例を示した。HCl以外の
ガスとしては、HF、HBr、Cl2 、F2 、Br2 から選ばれた一種又は複数種類の混
合ガスを用いることができる。これらのほか、一般に、ハロゲンの水素化物を用いること
ができる。
これらのガスは、雰囲気中での含有量(容量)を、HFであれば0.25〜5%、HB
rであれば1〜15%、Cl2 であれば0.25〜5%、F2 であれば0.125〜2.
5%、Br2 であれば0.5〜10%とすることが好ましい。上記の範囲以下の濃度とす
ると、有意な効果が得られるなくなる。また、上記範囲の上限を超える濃度とすると、結
晶性珪素膜の表面が荒れてしまう。
この工程を経ることにより、ニッケル元素の濃度を初期の1/10以下とすることがで
きる。これは、ハロゲン元素によるゲッタリングを何ら行わない場合に比較して、ハロゲ
ン元素によりニッケル元素を1/10以下にできることを意味する。この効果は、ニッケ
ル以外の他の、珪素の結晶化を助長する金属元素を用いた場合でも同様に得られる。また
、上記の工程においては、形成される酸化膜中にニッケル元素がゲッタリングされるので
、酸化膜中におけるニッケル濃度が他の領域に比較して当然高くなる。
また、結晶性珪素膜88と酸化膜89との界面近傍においてニッケル元素が高くなる傾
向が観察される。これは、ゲッタリングが主に行われる領域が、結晶性珪素膜と酸化膜と
の界面近傍の酸化膜側であることが要因であると考えられる。また、両膜の界面近傍にお
いてゲッタリングが進行するのは、界面近傍の応力や欠陥の存在が要因であると考えられ
る。
次いで、ニッケルを高濃度に含んだ酸化膜89を除去した。この酸化膜89の除去はバ
ッファーフッ酸、その他フッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングや、ドライ
エッチングを用いて行うことができるが、ここではバッファーフッ酸を用いて実施した。
こうして、図27(E)に示すように、含有ニッケル濃度を低減した結晶性珪素膜90
を得た。この場合、得られた結晶性珪素膜90の表面近傍には、比較的ニッケル元素が高
濃度で含まれているので、上記エッチングをさらに進めて、結晶性珪素膜90の表面を少
しオーバーエッチングすることは有効である。
《実施例17》
本実施例17は、実施例16に示す構成において、図27(C)に示す加熱処理工程に
より結晶性珪素膜を得た後、さらにKrFエキシマレーザー(波長248nm)によるレ
ーザー光の照射を行い、その結晶性を助長させた場合の例である。本実施例では、図27
(C)の加熱処理工程の後、レーザー光の照射を行ってアニールを施し、その他の工程は
実施例16と同様にして、図27(E)に示すように、含有ニッケル濃度を低減した結晶
性珪素膜90を得た。
図27(C)に示す加熱処理の温度が低かったり、処理時間が短かい場合、即ち、作製
工程上の理由で、加熱温度が制限されたり、加熱時間が制限されてしまう場合には、必要
とする結晶性が得られないことがある。このような場合は、レーザー光の照射によるアニ
ールを施すことにより、必要とする高い結晶性を得ることができる。この場合のレーザー
光の照射は、これにより非晶質珪素膜を直接結晶化させる場合に比較して、許容されるレ
ーザー照射条件の幅が広く、またその再現性も高いものとすることができる。
上記レーザー光の照射は、図27(C)に示す工程の後に行う。また、図27(A)に
おいて成膜される出発膜となる非晶質珪素膜86の膜厚を200〜2000オングストロ
ームとすることが重要である。これは、非晶質珪素膜の膜厚が薄い方がレーザー光の照射
によるアニール効果が高いものとなるからである。使用するレーザー光としては、特に限
定はないが、紫外領域のエキシマレーザーを使用することが好ましい。具体的には、例え
ばKrFエキシマレーザー(波長248nm)やXeClエキシマレーザー(波長308
nm)を用いることができる。またレーザー光ではなく、例えば紫外線ランプを用いた強
光の照射を行ってアニールを行うこともできる。
《実施例18》
本実施例18は、実施例17におけるレーザー光の代わりに赤外線ランプを利用した場
合の例である。本実施例では、図27(C)の加熱処理工程の後、赤外線ランプの照射を
行ってアニールを施し、その他の工程は実施例16と同様にして、図27(E)に示すよ
うに、含有ニッケル濃度を低減した結晶性珪素膜90を得た。赤外線を用いた場合、ガラ
ス基板をあまり加熱せずに珪素膜を選択的に加熱することができる。従って、ガラス基板
に対して熱ダメージを与えずに効果的な加熱処理を行うことができる。
《実施例19》
本実施例19は、実施例16に示す構成において、珪素の結晶化を助長する金属元素と
して、Cuを用いた場合の例である。この場合、Cuを導入するための溶液として酢酸第
2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕や塩化第2銅(CuCl2 2H2O)等を用いればよい
が、本実施例では酢酸第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕を用いた。その他の工程は実施
例16と同様にして、図27(E)に示すように、含有ニッケル濃度を低減した結晶性珪
素膜90を得た。
《実施例20》
本実施例20は、実施例16に示す構成において、基板84として石英基板を用いた例
である。本実施例においては、出発膜となる非晶質珪素膜86の膜厚を2000オングス
トロームとした。また、図27(C)で示す加熱処理による熱酸化膜の形成時における加
熱温度を950℃とした。この場合、酸化膜の形成が速く、ゲッタリングの効果が充分に
は得られないので、雰囲気中の酸素濃度を低くする。具体的には、窒素雰囲気中における
酸素濃度を10容量%とし、さらに酸素に対するHClの濃度を3容量%とした雰囲気で
加熱酸化を行った。
また、処理時間は300分とした。このような条件とすると、約500オングストロー
ムの膜厚を有する熱酸化膜を得ることができる。また、同時にゲッタリングに必要な時間
を稼ぐことができる。なお、酸素97容量%、HClを3容量%とした雰囲気中で950
℃の加熱処理を行った場合、約30分で500オングストロームの厚さを有する熱酸化膜
が得られてしまう。
上記の場合、ニッケルのゲッタリングを充分に行うことができないので、結晶性珪素膜
90内には、比較的高濃度にニッケル元素が残留してしまう。従って、本実施例のように
酸素濃度を調整し、充分なゲッタリング効果が得れる時間を稼いで、熱酸化膜を形成する
ことが好ましい。この方法を利用することにより、熱酸化膜の厚さや形成温度を変化させ
た場合に、雰囲気の酸素濃度を調整することにより、ゲッタリングに必要とされる時間を
設定することができる。
《実施例21》
本実施例21は、実施例16とは異なる形態の結晶成長を行わせた例である。本実施例
は、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して、横成長と呼ばれる、基板に平行な方向
への結晶成長を行わせる方法に関する。図28は本実施例21の作製工程を示す図である
まず、コーニング1737ガラス基板91上に下地膜92として酸化窒化珪素膜を30
00オングストロームの厚さに成膜した。なお、基板としては石英基板等の基板でもよい
。次に、結晶性珪素膜の出発膜となる非晶質珪素膜93を減圧熱CVD法により、200
0オングストロームの厚さに成膜した。この非晶質珪素膜の厚さは、前述したように20
00オングストローム以下とすることが好ましい。なお、減圧熱CVD法の代わりにプラ
ズマCVD法を用いてもよい。
次に、図示しない酸化珪素膜を1500オングストロームの厚さに成膜し、それをパタ
ーニングすることにより、符号94で示されるマスクを形成した。このマスクは符号95
で示される領域で開口が形成されている。この開口95が形成されている領域においては
、非晶質珪素膜93が露呈している。開口95は、図面の奥行から手前方向(長手方向)
に細長い長方形を有している。この開口95の幅は20μm以上とするのが適当であり、
その長手方向の長さは任意に決めればよいが、本実施例では開口95の幅を30μm、長
手方向の長さを200μmとした。
次いで、前述実施例16の場合と同様にして、重量換算で10ppmのニッケル元素を
含んだ酢酸ニッケル溶液を塗布した。さらに、図示しないスピナーを用いてスピンドライ
を行い、余分な溶液を除去した。こうして酢酸ニッケル溶液が図28(A)の点線96で
示されるように、非晶質珪素膜93が露呈した表面に接して保持された状態が実現された
次に、水素を3容量%含有した極力酸素を含まない窒素雰囲気中において、温度640
℃、4時間の加熱処理を行った。すると、図28(B)の97で示されるような基板に平
行な方向への結晶成長が進行した。この結晶成長は、ニッケル元素が導入された開口95
の領域から周囲に向かって進行する。この基板に平行な方向への結晶成長を、本明細書中
、横成長又はラテラル成長と指称する。
本実施例に示すような条件においては、この横成長を100μm以上にわたって行わせ
ることができる。こうして横成長した領域を有する珪素膜98を得た。なお、開口95が
形成されている領域においては、珪素膜の表面から下地界面に向かって縦成長とよばる垂
直方向への結晶成長が進行している。次いで、ニッケル元素を選択的に導入するための酸
化珪素膜からなるマスク94を除去した。こうして図28(C)に示す状態を得た。この
状態では、珪素膜98中には、縦成長領域、横成長領域、結晶成長が及ばなかった領域(
非晶質状態)が存在している。
上記の状態で、HClを3容量%含んだ酸素雰囲気中において、温度650℃の加熱処
理を12時間行った。この工程において、ニッケル元素を膜中に高濃度に含んだ酸化膜9
9が形成される。これと同時に、珪素膜98中のニッケル元素濃度を相対的に減少させる
ことができる。ここでは、符号99で示される熱酸化膜が200オングストロームの厚さ
に成膜された。この熱酸化膜中には、酸素の作用及び塩素の作用、特に塩素の作用により
ゲッタリングされたニッケル元素が高濃度に含まれている。また、熱酸化膜99が成膜さ
れることにより、結晶性珪素膜98は1900オングストローム程度の膜厚となった。
次に、ニッケル元素を高い濃度で含んだ熱酸化膜99を除去した。この状態における結
晶性珪素膜においては、ニッケル元素が結晶性珪素膜の表面に向かって高濃度に存在する
ような濃度分布を有している。従って、この熱酸化膜99を除去した後に、さらに結晶性
珪素膜の表面をエッチングし、このニッケル元素が高濃度に存在している領域を除去する
ことは有用である。即ち、高濃度にニッケル元素が存在している結晶性珪素膜の表面をエ
ッチングすることで、よりニッケル元素濃度を低減した結晶性珪素膜を得ることができる
次に、パターニングを行うことにより、横成長領域からなるパターン100を形成した
。ここで、パターン100には、縦成長領域と非晶質領域、さらに横成長の先端領域が存
在しないようにすることが重要である。これは、縦成長と横成長の先端領域においては、
ニッケル元素の濃度が相対的に高く、また非晶質領域はその電気的な特性が劣るからであ
る。
このようにして得られた横成長領域からなるパターン100中に残留するニッケル元素
の濃度は、実施例16で示した場合に比較してさらに低いものとすることができる。これ
は、横成長領域中に含まれる金属元素の濃度がそもそも低いことにも起因する。具体的に
は、横成長領域からなるパターン100中のニッケル元素の濃度を1017cm-3以下のオ
ーダーにすることが容易に可能である。
また、横成長領域を利用して薄膜トランジスタを形成した場合、実施例16に示したよ
うな縦成長(実施例16の場合は全面が縦成長する)領域を利用した場合に比較して、よ
り高移動度を有する半導体装置を得ることができる。なお、図28(E)に示すパターン
を形成した後に、さらにエッチング処理を行い、パターン表面に存在しているニッケル元
素を除去することは有用である。
他方、結晶性珪素膜を島状の形状にパターニングした後に、ハロゲン元素を含んだ酸化
性雰囲気中における熱酸化を行い、その後に熱酸化膜を除去することは有用ではない。こ
の構成においては、熱酸化膜によるゲッタリング効果は確かに得られるが、熱酸化膜の除
去時に下地膜のエッチングも進行するので、エッチングが、島状に形成された結晶性珪素
膜の下側までえぐられるように進行してしまうからである。
このような状態は、後に、半導体装置における配線の断線や素子の動作不良の要因とな
る。次いで、以上のようにして形成されたパターン100に対して、熱酸化膜101を形
成した。この熱酸化膜101は、薄膜トランジスタを構成する場合には、後にゲイト絶縁
膜の一部となる。
《実施例22》
本実施例22は、本発明による結晶性珪素膜を利用して、アクティブマトリクス型の液
晶表示装置やアクティブマトリクス型のEL表示装置の画素領域に配置される薄膜トラン
ジスタを作製した例である。図29は、本実施例の作製工程を示す図である。
まず、実施例16及び実施例21に示した工程により、それぞれガラス基板上に結晶性
珪素膜を形成した。そのそれぞれを基に、同様にして薄膜トランジスタを作製した。以下
、実施例16に示した構成による結晶性珪素膜を用いた場合について記載するが、実施例
21に示した構成による結晶性珪素膜を使用した場合についても同じである。該結晶性珪
素膜をパターニングすることにより、図27(A)に示す状態を得た。図29(A)に示
す状態において、103がガラス基板、104が下地膜、105が結晶性珪素膜で構成さ
れた活性層である。
次いで、酸素と水素を混合した減圧雰囲気でのプラズマ処理を施した。このプラズマは
高周波放電によって生成させた。このプラズマ処理によって、活性層105の露呈した表
面に存在している有機物が除去される。正確には、酸素プラズマによって、活性層の表面
に吸着している有機物が酸化され、さらに水素プラズマによって、該酸化した有機物が還
元、気化される。こうして活性層105の露呈した表面に存在する有機物が除去された。
この有機物の除去は、活性層105の表面における固定電荷の存在を抑制する上で非常に
効果がある。
上記有機物の存在に起因する固定電荷はデバイスの動作を阻害したり、特性の不安定性
の要因となるので、その存在を少なくすることは非常に有用である。次いで、有機物の除
去を行った後、温度640℃の酸素雰囲気中において熱酸化を行い、100オングストロ
ームの熱酸化膜102を形成した。この熱酸化膜は、半導体層(活性層)との界面特性が
高く、後にゲイト絶縁膜の一部を構成することとなる。こうして図29(A)に示す状態
を得た。
その後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜106を1000オングストロームの
厚さに成膜した。成膜方法としては、例えばシランとN2O との混合ガスを用いるプラズ
マCVD法又はTEOSとN2O との混合ガスを用いるプラズマCVD法等が使用される
が、ここではシランとN2O との混合ガス後者を用いた。この酸化窒化珪素膜106は熱
酸化膜102と合わせてゲイト絶縁膜として機能する。
また酸化窒化珪素膜中にハロゲン元素を含有させることは有効である。即ち、ハロゲン
元素の作用によりニッケル元素を固定化することで、活性層中に存在するニッケル元素(
その他、珪素の結晶化を助長する金属元素)の影響で、ゲイト絶縁膜の絶縁膜としての機
能が低下してしまうことを防ぐことができる。
そのように酸化窒化珪素膜とすることは、その緻密な膜質から、ゲイト絶縁膜中に金属
元素が進入しにくくなるという有意性がある。ゲイト絶縁膜中に金属元素が進入すると、
絶縁膜として機能が低下し、薄膜トランシスタの特性の不安定性やバラツキの原因となる
。なおゲイト絶縁膜としては、通常利用されている酸化珪素膜を用いることもできる。
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜106を成膜した後、後にゲイト電極とし
て機能するアルミニウム膜(図示せず、後述のパターニング後、パターン107となる)
をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜中には、スカンジウムを0.2重量%含有
させた。アルミニウム膜中にスカンジウムを含有させるのは、後の工程において、ヒロッ
クやウィスカーが発生することを抑制するためである。ここでヒロックやウィスカーとは
、加熱が行われることによって、アルミニウムの異常成長が発生し、針状或いは刺状の突
起部が形成されてしまうことを意味する。
アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化
膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として行った。即ち
、この電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行うこ
とで、アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。この図示し
ない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とした。この陽
極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有している。
なお、この陽極酸化膜の膜厚は陽極酸化時の印加電圧の調整によって制御することができ
る。
次に、レジストマスク108を形成し、アルミニウム膜を符号107で示されるパター
ンにパターニングした。こうして図29(B)に示す状態を得た。ここで再度の陽極酸化
を行った。ここでは、3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解溶液
中において、アルミニウムのパターン107を陽極とした陽極酸化を行うことにより、符
号110で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成される。
上記工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク108が存在する関係で、ア
ルミニウムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜110が形成される。この陽極酸化膜は
、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここではその膜厚を6000オングス
トロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化時間によって制御することができる。
次いでレジストマスク108を除去した。
さらに、再度の緻密な陽極酸化膜の形成を行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を
含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として用いた陽極酸化を再び実施した。すると
、多孔質状の陽極酸化膜110中に電解溶液が進入(侵入)する関係から、符号111で
示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。該緻密な陽極酸化膜111
の膜厚は1000オングストロームとした。この膜厚の制御は印加電圧の調整によって行
った。
ここで、露呈した酸化窒化珪素膜106と熱酸化膜102をエッチングした。このエッ
チングにはドライエッチングを利用した。次いで、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸
を用いて多孔質状の陽極酸化膜110を除去した。こうして図29(D)に示す状態を得
た。その後、不純物イオンの注入を行った。ここではNチャネル型の薄膜トランジスタを
作製するために、P(リン)イオンの注入をプラズマドーピング法によって実施した。
この工程においては、ヘビードープがされる113と117の領域とライトドープがさ
れる114と116の領域が形成される。これは、残存した酸化珪素膜112の一部が半
透過のマスクとして機能し、注入されたイオンの一部がそこで遮蔽されるからである。次
いでレーザー光又は強光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性
化を行うが、ここではレーザー光を用いた。こうしてソース領域113、チャネル形成領
域115、ドレイン領域117、低濃度不純物領域114と116が自己整合的に形成さ
れた。
ここで、符号116で示されるのがLDD(ライトドープドレイン)領域と称される領
域である。なお、緻密な陽極酸化膜111の膜厚を2000オングストローム以上という
ように厚くした場合、その膜厚でもってチャネル形成領域115の外側にオフセットゲイ
ト領域を形成することができる。本実施例においてもオフセットゲイト領域は形成されて
いるが、その寸法が小さいので、その存在による寄与が小さく、また図面が煩雑になるの
で図中には記載していない。
次に、層間絶縁膜118として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成するが、ここでは窒化珪素膜を用いた。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜又は窒化珪
素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。次いでコンタクトホールの形成
を行い、ソース電極119とドレイン電極120の形成を行った。こうして図29(E)
に示す薄膜トランジスタを完成させた。
《実施例23》
本実施例23は、実施例22に示す構成において、ゲイト絶縁膜106の形成方法に関
する。基板として石英基板や耐熱性の高いガラス基板を用いた場合、ゲイト絶縁膜の形成
方法として、熱酸化法を用いることができる。熱酸化法は、その膜質を緻密なものとする
ことができ、安定した特性を有する薄膜トランジスタを得る上では有用なものとなる。即
ち、熱酸化法で成膜された酸化膜は、絶縁膜として緻密で内部に存在する可動電荷を少な
くすることができるので、ゲイト絶縁膜として最適なものの一つである。
本実施例では、熱酸化膜の形成方法として、950℃の温度の酸化性雰囲気中において
加熱処理を実施した。この際、酸化性雰囲気中にHCl等を混合させることは有効である
。このようにすることで、熱酸化膜の形成と同時に活性層中に存在する金属元素を固定化
することができる。また、酸化性雰囲気中にN2O ガスを混合し、窒素成分を含有させた
熱酸化膜を形成することも有効である。ここでN2O ガスの混合比を最適化すれば、熱酸
化法による酸化窒化珪素膜を得ることも可能である。なお本実施例においては、特に熱酸
化膜102を形成する必要はない。
《実施例24》
本実施例24は、上記実施例22〜23に記載した工程とは異なる工程で薄膜トランジ
スタを作製する例である。図30に本実施例の作製工程を示す。まず、前記実施例16又
は実施例17に示した工程によりガラス基板上に結晶性珪素膜を形成した。そして、それ
をパターニングすることにより、図30(A)に示す状態を得た。
次いで、酸素と水素の混合減圧雰囲気中においてプラズマ処理を行った。図30(A)
に示す状態において、122がガラス基板、123が下地膜、124が結晶性珪素膜で構
成された活性層である。また符号121で示す部分はゲッタリングのための熱酸化膜の除
去後に再度形成された熱酸化膜である。
次に、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜125を1000オングストロームの厚
さに成膜した。成膜方法は、酸素とシランとN2O との混合ガス又はTEOSとN2O と
の混合ガスを用いたプラズマCVD法等を用いるが、ここでは前者を用いた。酸化窒化珪
素膜125は熱酸化膜121とともにゲイト絶縁膜を構成する。なお、酸化窒化珪素膜の
ほかに酸化珪素膜を用いることもできる。
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜125を成膜したのに続き、後にゲイト電
極として機能する図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム
膜中には、スカンジウムを0.2重量%含有させた。アルミニウム膜を成膜した後、図示
しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化膜は3重量%の酒石酸を含むエチレン
グルコール溶液を電解溶液として実施した。即ち、この電解溶液中において、アルミニウ
ム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行うことにより、アルミニウム膜の表面に緻密
な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。
上記図示しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度と
した。この陽極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を
有している。なお、この陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧によって制御するこ
とができる。次に、レジストマスク126を形成し、そしてアルミニウム膜を127で示
されるパターンにパターニングした。
ここで再度の陽極酸化を行った。ここでは、3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液とし
て用いた。この電解溶液中において、アルミニウムのパターン127を陽極とした陽極酸
化を行うことにより、符号128で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成される。この工
程においては、上部に密着性の高いレジストマスク126が存在する関係で、アルミニウ
ムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜128が形成される。
この陽極酸化膜はその膜厚を数μmまで成長させることができる。ここではその膜厚を
6000オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化時間の調整によって
制御することができる。次いで、レジストマスク126を除去した後、再度の緻密な陽極
酸化膜の形成を行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含むエチレングルコール溶液
を電解溶液として用いた陽極酸化を再び実施した。すると、多孔質状の陽極酸化膜128
中に電解溶液が進入(侵入)する関係から、符号129で示されるように緻密な膜質を有
する陽極酸化膜が形成される。
次に、最初の不純物イオンの注入を行った。この工程はレジストマスク126を除去し
てから行ってもよい。この不純物イオンの注入によって、ソース領域130とドレイン領
域132が形成される。なお、符号131で示す領域には不純物イオンが注入されない。
次に、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜128を除去
した。こうして図30(D)に示す状態を得た。
その後、再度不純物イオンの注入を行った。この不純物イオンは最初の不純物イオンの
注入条件よりもライトドーピングの条件で行った。この工程において、ライトドープ領域
133と134が形成され、そして符号135で示される領域がチャネル形成領域となる
。次いで、赤外線ランプを用いた強光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入され
た領域の活性化を行った。なお、該強光に代えてレーザー光を用いることもできる。こう
して、ソース領域130、チャネル形成領域135、ドレイン領域132、低濃度不純物
領域133と134が自己整合的に形成された。
ここで、符号134で示されるのが、LDD(ライトドープドレイン)領域と称される
領域である。次に、層間絶縁膜136として酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその
積層膜を形成するが、ここでは窒化珪素膜を形成した。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜
又は窒化珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。次いで、コンタクト
ホールの形成を行い、ソース電極137とドレイン電極138の形成を行った。こうして
図30(E)に示す薄膜トランジスタを完成した。
《実施例25》
本実施例25は、Nチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタ
とを相補型に構成した例である。図31に本実施例25の作製工程を示している。本実施
例に示す構成は、例えば絶縁表面上に集積化された各種薄膜集積回路に利用することがで
きる。また、例えばアクティブマトリクス型の液晶表示装置の周辺駆動回路に利用するこ
とができる。
まず、図31(A)に示すようにガラス基板140上に下地膜141として酸化珪素膜
又は酸化窒化珪素膜を成膜した。好ましくは酸化窒化珪素膜を用いることがよく、ここで
はこれを使用した。さらに図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法又は減圧熱CVD
法により成膜するが、ここでは減圧熱CVD法を用いた。さらに実施例16に示した方法
により、この非晶質珪素膜を結晶性珪素膜に変成した。
次いで、酸素と水素の混合雰囲気中においてプラズマ処理を行い、さらに得られた結晶
性珪素膜をパターニングして、活性層142と143を得た。こうして図31(A)に示
す状態を得た。なおここでは、活性層の側面を移動するキャリアの影響を抑制するために
、図31(A)に示した状態において、HClを3容量%含んだ窒素雰囲気中で、温度6
50℃、10時間の加熱処理を行った。
活性層の側面に金属元素の存在によるトラップ準位が存在すると、OFF電流特性の悪
化を招くので、上記のような処理を行い、活性層の側面における準位の密度を低下させて
おくことは有用である。さらにゲイト絶縁膜を構成する熱酸化膜139酸化窒化珪素膜1
44を成膜した。ここで、基板として石英を用いる場合には、前述の熱酸化法を用いた熱
酸化膜のみによってゲイト絶縁膜を構成することが望ましい。
次いで、後にゲイト電極を構成するための図示しないアルミニウム膜を4000オング
ストロームの厚さに成膜した。アルミニウム膜以外には、陽極酸化可能な金属(例えばタ
ンタル)を利用することができる。アルミニウム膜を形成した後、前述した方法により、
その表面に極薄い緻密な陽極酸化膜を形成した。次にアルミニウム膜上に図示しないレジ
ストマスクを配置し、アルミニウム膜のパターニングを行った。そして、得られたアルミ
ニウムパターンを陽極として陽極酸化を行い、多孔質状の陽極酸化膜147と148を形
成した。
上記多孔質状の陽極酸化膜の膜厚は5000オングストロームとした。さらに再度緻密
な陽極酸化膜を形成する条件で陽極酸化を行い、緻密な陽極酸化膜149と150を形成
した。ここで緻密な陽極酸化膜149と150の膜厚は800オングストロームとする。
こうして図31(B)に示す状態を得た。さらに露呈した酸化珪素膜144と熱酸化膜1
39をドライエッチングによって除去して、図31(C)に示す状態を得た。
図31(C)に示す状態を得た後、酢酸と硝酸とリン酸を混合した混酸を用いて多孔質
状の陽極酸化膜147と148を除去した。こうして図31(D)に示す状態を得た。こ
こで、交互にレジストマスクを配置して、左側の薄膜トランジスタにP(燐)イオンが、
右側の薄膜トランジスタにB(ホウ素)イオンが注入されるようにした。この不純物イオ
ンの注入によって、高濃度のN型を有するソース領域153とドレイン領域156が自己
整合的に形成される。
また、低濃度にPイオンがドープされた弱いN型を有する領域154が同時に形成され
、同時にチャネル形成領域155が形成される。符号154で示される弱いN型を有する
領域が形成されるのは、残存したゲイト絶縁膜151が存在するからである。即ち、ゲイ
ト絶縁膜151を透過したPイオンがゲイト絶縁膜151によって一部遮蔽されるからで
ある。
また同様な原理、手法により、強いP型を有するソース領域160とドレイン領域15
7が自己整合的に形成される。同時に、低濃度不純物領域159が形成され、またチャネ
ル形成領域158が同時に形成される。なお、緻密な陽極酸化膜149と150の膜厚が
例えば2000オングストロームというように厚い場合には、その厚さでチャネル形成領
域に接してオフセットゲイト領域を形成することができる。
本実施例の場合は、緻密な陽極酸化膜149と150の膜厚が1000オングストロー
ム以下と薄いので、その存在は無視することができる。次いでレーザー光の照射を行い、
不純物イオンが注入された領域のアニールを行った。なお、レーザー光に代えて強光を用
いることができる。続いて図31(E)に示すように層間絶縁膜として窒化珪素膜161
と酸化珪素膜162を成膜した。それぞれの膜厚は1000オングストロームとした。な
お、酸化珪素膜162は成膜しなくてもよい。
ここで、窒化珪素膜によって、薄膜トランジスタが覆われることになる。窒化珪素膜は
緻密であり、また界面特性がよいので、このような構成とすることにより、薄膜トランジ
スタの信頼性を高めることができる。さらに樹脂材料からなる層間絶縁膜163をスピン
コート法を用いて形成し、ここでの層間絶縁膜163の厚さは1μmとした。
次いで、コンタクトホールの形成を行い、左側のNチャネル型の薄膜トランジスタのソ
ース電極164とドレイン電極165を形成し、同時に右側の薄膜トランジスタのソース
電極166とドレイン電極165を形成し、図31(F)に示す構成を得た。ここで、ド
レイン電極165は共通に配置されたものとなる。こうして、相補型に構成されたCMO
S構造を有する薄膜トランジスタ回路を構成することができる。
本実施例に示す構成においては、薄膜トランジスタを窒化膜で覆い、さらに樹脂材料に
よって覆った構成が得られる。この構成により、可動イオンや水分の侵入しにくい耐久性
の高いものとすることができる。また、さらに多層配線を形成したような場合に、薄膜ト
ランジスタと配線との間に容量が形成されてしまうことを防ぐことができる。
《実施例26》
本実施例26は、実施例16又は実施例17で得た結晶性珪素膜に対して、さらにレー
ザー光の照射を行うことにより、単結晶又は実質的に単結晶と見なせる領域を形成する例
である。
まず、実施例16に示したようにニッケル元素の作用を利用して結晶性珪素膜を得た。
次いで、その膜に対してレーザー光を照射することにより、さらにその結晶性を助長させ
た。ここでのレーザー光としてはKrFエキシマレーザーを用いた。なおその際、450
℃以上の温度での加熱処理を併用し、さらにレーザー光の照射条件を最適化することによ
り単結晶又は実質的に単結晶と見なせる領域を形成することができる。
このような方法で結晶化を大きく助長させた膜は、ESRで計測した電子スピン密度が
3×1017個cm-3以下であり、またSIMSで計測した最低値として当該ニッケル元素
濃度を3×1017cm-3以下で有し、さらに単結晶と見なすことができる領域を有するも
のとなる。この領域には実質的に結晶粒界が存在しておらず、単結晶珪素ウエハーに匹敵
する高い電気的特性を得ることができる。
また、上記単結晶と見なせる領域は、水素を5原子%以下〜1×1015cm-3
度含んでいる。この
値は、SIMS(2次イオン分析方法)による計測より明 らかにされた。このような単
結晶又は単結晶とみなせる領域を利用して薄膜トランジスタを作製することにより、単結
晶ウエハーを利用して作製したMOS型トランジスタに匹敵する半導体装置を得ることが
できる。
《実施例27》
本実施例27は、実施例16に示す工程において、下地膜の表面に直接ニッケル元素を
導入した例である。この場合、ニッケル元素は非晶質珪素膜の下面に接して保持されるこ
とになる。本実施例では、下地膜の形成後にニッケル酢酸塩水溶液を塗布することにより
ニッケル元素の導入を行い、まず下地膜の表面にニッケル元素(当該金属元素)が接して
保持された状態とした。その他の工程は実施例16の場合と同様にして図27(E)に示
すのと同様の薄膜トランジスタを完成した。上記ニッケル元素の導入方法としては、溶液
を用いる方法の他に、スパッタ法やCVD法、さらに吸着法を用いることができる。
《実施例28》
本実施例28は、ガラス基板上にニッケル元素を利用して結晶性珪素膜を得る実施例で
ある。本実施例では、まずニッケル元素の作用により高い結晶性を有する結晶性珪素膜を
得た後、レーザー光の照射を行い、膜の結晶性を高めるとともに、局所的に集中して存在
しているニッケル元素を膜中に拡散させた。即ち、ニッケルの固まりを消滅させた。
次いで、ハロゲン元素を含んだ酸化膜を熱酸化法によって、上記結晶性珪素膜上に形成
した。この時、上記結晶性珪素膜中に残存したニッケル元素が酸素及びハロゲン元素の作
用により熱酸化膜中にゲッタリングされる。同時に、ニッケル元素が先のレーザー光の照
射によって分散して存在しているので、効果的にゲッタリングが進行する。次いで、ゲッ
タリングの結果、高濃度にニッケル元素を含有した熱酸化膜を除去した。このようにする
ことにより、ガラス基板上に高い結晶性を有していながら、ニッケル元素の濃度の低い結
晶性珪素膜が得られる。
図32は本実施例の作製工程を示す図である。まず、コーニング1737ガラス基板(
歪点667℃)167上に、下地膜としての酸化窒化珪素膜168を3000オングスト
ロームの厚さに成膜した。酸化窒化珪素膜の成膜は、原料ガスとしてシランとN2O ガス
と酸素との混合ガスを用いたプラズマCVD法で実施した。なお、その原料ガスとしては
TEOSガスとN2O ガスの混合ガスを用いもよい。
上記酸化窒化珪素膜は、後の工程においてガラス基板からの不純物(ガラス基板中には
半導体の作製レベルで見て、多量の不純物が含まれている)の拡散を抑制する機能を有し
ている。なお、この不純物の拡散を抑制する機能を最大限に得るためには、窒化珪素膜が
最適であるが、窒化珪素膜は応力の関係でガラス基板からはがれてしまうので実用的では
ない。なお、下地膜としては酸化珪素膜を用いることもできる。
また、この下地膜168は、可能な限り、なるべく高い硬度とすることが重要なポイン
トとなる。これは、最終的に得られた薄膜トランジスタの耐久試験において、下地膜の硬
さが硬い方が(即ち、そのエッチングレートが小さい方が)信頼性が高いことから結論さ
れる。なお、その理由は、薄膜トランジスタの作製工程中におけるガラス基板からの不純
物の遮蔽効果によるものと考えられる。
また、この下地膜168中に塩素で代表されるハロゲン元素を微量に含有させておくこ
とは有効である。このようにすると、後の工程において、半導体層中に存在する珪素の結
晶化を助長する金属元素をハロゲン元素によってゲッタリングすることができる。また、
下地膜を成膜した後に、水素プラズマ処理を加えることは有効である。また、酸素と水素
とを混合した雰囲気でのプラズマ処理を行うことは有効である。これは、下地膜の表面に
吸着している炭素成分を除去し、後に形成される半導体膜との界面特性を向上させること
に効果がある。
次に、後に結晶性珪素膜となる非晶質珪素膜169を500オングストロームの厚さに
減圧熱CVD法で成膜した。減圧熱CVD法を用いるのは、その方が後に得られる結晶性
珪素膜の膜質が優れているからであり、具体的には、膜質が緻密であるからである。なお
、減圧熱CVD法以外の方法としては、プラズマCVD法等を用いることができる。ここ
で作製する非晶質珪素膜は、膜中の酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm-3であ
ることが望ましい。これは、後の金属元素(珪素の結晶化を助長する金属元素)のゲッタ
リング工程において、酸素が重要な役割を果たすからである。ただし、酸素濃度が上記濃
度範囲より高い場合には、非晶質珪素膜の結晶化が阻害されるので注意が必要である。
また、他の不純物濃度、例えば窒素や炭素の不純物濃度は極力低い方がよい。具体的に
は2×1019cm-3以下の濃度とすることが必要である。この非晶質珪素膜の膜厚の上限
は2000オングストローム程度である。これは、後のレーザー光の照射による効果を得
るには、あまり厚い膜であことは不利であるからである。厚い膜が不利であるのは、珪素
膜に照射されるレーザー光の殆んどは膜の表面において吸収されてしまうことに原因があ
る。なお、非晶質珪素膜169の膜厚の下限は、成膜方法の如何にもよるが、実用的には
200オングストローム程度である。
次に、非晶質珪素膜169を結晶化させるためにニッケル元素を導入した。ここでは、
10ppm(重量換算)のニッケルを含んだニッケル酢酸塩の水溶液を非晶質珪素膜16
9の表面に塗布することによってニッケル元素を導入した。ニッケル元素の導入方法とし
ては、上記の溶液を用いる方法のほか、スパッタ法やCVD法、さらにプラズマ処理や吸
着法を用いることができる。
それらのうち、上記の溶液を用いる方法は簡便であり、また金属元素の濃度調整が簡単
であるという点で有用である。ニッケル酢酸塩水溶液を塗布することにより、図32(A
)の符号170で示されるように、ニッケル酢酸塩溶液の水膜が形成される。この状態を
得た後、図示しないスピナーを用いて余分な溶液を吹き飛ばした。このようにしてニッケ
ル元素が非晶質珪素膜169の表面に接して保持された状態とした。
なお、後の加熱工程における不純物の残留を考慮すると、酢酸ニッケル塩水溶液を用い
る代わりに、例えば硫酸ニッケルを用いることが好ましい。これは、酢酸ニッケル塩水溶
液は炭素を含んでおり、これが後の加熱工程において炭化して膜中に残留することが懸念
されるからである。ニッケル元素の導入量の調整は、溶液中におけるニッケル塩の濃度を
調整することにより行うことができる。
次に、図32(B)に示す状態において、550℃〜650℃の温度での加熱処理を行
い、非晶質珪素膜169を結晶化させて結晶性珪素膜171を形成するが、この加熱処理
の温度はガラス基板の歪点以下の温度で行うことが好ましい。ここで用いているコーニン
グ1737ガラス基板の歪点は667℃であるので、その上限は余裕を見て650℃程度
とすることが好ましい。またこの加熱処理は還元雰囲気中で行う。本実施例では、この加
熱処理の雰囲気を水素を3容量%含んだ窒素雰囲気とし、加熱の温度を620℃、加熱時
間を4時間とした。
上記の加熱処理による結晶化工程において、雰囲気を還元雰囲気とするのは加熱処理工
程中において、酸化物が形成されてしまうことを防止するためである。具体的には、ニッ
ケルと酸素とが反応してNiOX が膜の表面や膜中に形成されてしまうことを抑制するた
めである。酸素は、後のゲッタリング工程においてニッケルと結合してニッケルのゲッタ
リングに多大な貢献をすることとなる。
しかし、この結晶化の段階で酸素とニッケルとが結合することは、結晶化を阻害するも
のであることが判明している。従って、この加熱による結晶化の工程においては、酸化物
の形成を極力抑制することが重要となる。このため、上記結晶化のための加熱処理を行う
雰囲気中の酸素濃度は、ppmオーダー、好ましくは1ppm以下とすることが必要であ
る。
また、上記結晶化のための加熱処理を行う雰囲気の殆んどを占める気体としては、窒素
以外に、アルゴン等の不活性ガス、或いはそれらの混合ガスを利用することができる。上
記の加熱処理による結晶化工程の後においては、ニッケル元素がある程度の固まりで残存
している。このことは、TEM(透過型電子顕微鏡)による観察から確認された。ニッケ
ルがある程度の固まりで存在しているという事実についての原因は明らかではないが、何
らかの結晶化のメカニズムと関係しているものと考えられる。
次に、図32(C)に示すようにレーザー光の照射を行う。ここでは、KrFエキシマ
レーザー(波長248nm)を用い、レーザー光のビーム形状を線状としたものを走査し
ながら照射する方法を採用した。このレーザー光の照射を行うことで、前述の加熱処理に
よる結晶化の結果、局所的に集中していたニッケル元素が、ある程度、膜171中に分散
する。即ち、レーザー光の照射によりニッケル元素の固まりを消滅させ、ニッケル元素を
分散させることができる。
次に、図32(D)に示す工程において再度の加熱処理を行った。この加熱処理は、ニ
ッケル元素をゲッタリングするための熱酸化膜を形成するために行われる。ここでは、そ
の加熱処理をハロゲン元素を含んだ雰囲気中で行った。具体的には、HClを5容量%含
んだ酸素雰囲気中で加熱処理を行った。この工程は、結晶化のために初期の段階で意図的
に混入させたニッケル元素(他の珪素の結晶化を助長する金属元素の場合も同じ)を結晶
性珪素膜171中から除去するための工程である。
上記加熱処理は、前述の結晶化を行うために実施した加熱処理よりも高い温度で行う。
これは、ニッケル元素のゲッタリングを効果的に行うために重要な条件である。なお、結
晶化を行うために実施した加熱処理温度と同等又はそれ以下の温度でも行えるが、効果が
少ない。
この加熱処理は上記の条件を満たした上で600℃〜750℃の温度で行う。この工程
におけるニッケル元素のゲッタリング効果は、600℃より高い温度とした場合に顕著に
得ることができるが、本実施例では温度650℃で実施した。この工程において、前述の
レーザー光の照射によって分散されたニッケル元素が効果的に酸化膜中にゲッタリングさ
れて行く。また、この加熱処理温度の上限は使用するガラス基板の歪点によって制限され
る。なお、使用するガラス基板の歪点以上の温度で加熱処理を行うと、基板が変形するの
で注意が必要である。
また、HClは酸素に対して0.5〜10容積%の割合で混合することが好ましい。な
お、HClをこの濃度以上に混合すると、膜の表面が膜厚と同程度上の凹凸に荒れてしま
うので特に注意が必要である。このような条件で加熱処理を行うと、図32(D)に示さ
れるように、塩素が含まれる熱酸化膜172が形成される。本実施例では加熱処理時間を
12時間とし、熱酸化膜172の膜厚を100オングストロームとした。
熱酸化膜172が形成されることにより、結晶性珪素膜169の膜厚は約450オング
ストローム程度となる。この加熱処理においては、加熱温度が600℃〜750℃の場合
は処理時間(加熱時間)を10時間〜48時間、代表的には24時間とする。勿論この処
理時間は、得ようとする酸化膜の膜厚によって適時設定すればよい。この工程においては
、酸素の作用及びハロゲン元素の作用によりニッケル元素が珪素膜外にゲッタリングされ
る。ここでは、特に塩素の作用により、形成される熱酸化膜172中にニッケル元素がゲ
ッタリングされる。
上記ゲッタリングには、酸素も関与する。このゲッタリングにおいては、結晶性珪素膜
中に存在する酸素が重要な役割を果たす。即ち、酸素とニッケルが結合することによって
形成される酸化ニッケルに、塩素によるゲッタリング効果が作用して、効果的にニッケル
元素のゲッタリングが進行する。前述したように酸素は、その濃度が多過ぎると、図32
(B)に示す結晶化工程において、非晶質珪素膜169の結晶化を阻害する要素となる。
しかし、上述のようにその存在はニッケルのゲッタリング過程においては重要な役割を果
たす。従って、出発膜となる非晶質珪素膜中に存在する酸素濃度の制御は重要なものとな
る。
本実施例では、ハロゲン元素としてClを選択し、またその導入方法としてHClを用
いる例を示した。HCl以外のガスとしては、HF、HBr、Cl2 、F2 、Br2 から
選ばれた一種又は複数種類のガスを用いることができる。また一般にハロゲンの水素化物
を用いることができる。これらのガスは、雰囲気中での含有量(体積)をHFであれば0
.25〜5%、HBrであれば1〜15%、Cl2 であれば0.25〜5%、F2 であれ
ば0.125〜2.5%、Br2 であれば0.5〜10%とすることが好ましい。
上記の範囲を下回る濃度とすると、有意な効果が得られるなくなり、逆に、上記の範囲
を上回る濃度とすると、珪素膜の表面が荒れてしまう。この工程を経ることにより、ニッ
ケル元素の濃度を初期の1/10以下とすることができる。これはハロゲン元素によるゲ
ッタリングを何ら行わない場合に比較して、ニッケル元素を1/10以下にできることを
意味する。この効果は、他の金属元素を用いた場合でも同様に得られる。また上記の工程
においては、形成される酸化膜中にニッケル元素がゲッタリングされるので、酸化膜中に
おけるニッケル濃度が他の領域に比較して当然高くなっている。
また、結晶性珪素膜171と熱酸化膜172との界面近傍においてニッケル元素が高く
なる傾向が観察される。これは、ゲッタリングが主に行われる領域が、結晶性珪素膜と酸
化膜との界面近傍の酸化膜側であることが要因であると考えられる。また、両者の界面近
傍においてゲッタリングが進行するのは、界面近傍の応力や欠陥の存在が要因であると考
えられる。
次いで、ニッケルを高濃度に含んだ酸化膜172を除去した。この酸化膜172の除去
はバッファーフッ酸(その他フッ酸系のエッチャント)を用いたウェットエッチングや、
ドライエッチングを用いて行うが、本実施例ではバッファーフッ酸を用いたウェットエッ
チングで行った。
こうして、図32(E)に示すように、含有ニッケル濃度を低減した結晶性珪素膜17
3を得た。また、得られた結晶性珪素膜173の表面近傍には比較的ニッケル元素が高濃
度に含まれるので、上記の酸化膜172のエッチングをさらに進めて、結晶性珪素膜17
3の表面を少しオーバーエッチングすることは有効である。
熱酸化膜172を除去した後に、再びレーザー光を照射して、得られた結晶性珪素膜1
73の結晶性をさらに助長することは有効である。即ち、ニッケル元素のゲッタリングが
行われた後に、再度のレーザー光の照射を行うことは有効である。本実施例においては使
用するレーザー光としてKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いた例を示した
。しかし、XeClエキシマレーザー(波長308nm)やその他の種類のレーザーを用
いることもできる。またレーザー光ではなく、例えば紫外線や赤外線の照射を行う構成と
してもよい。
《実施例29》
本実施例29は、実施例28に示す構成において、珪素の結晶化を助長する金属元素と
して、Cuを用いた場合の例である。この場合、Cuを導入するための溶液として、酢酸
第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕や塩化第2銅(CuCl2 2H2O)等を用いればよ
いが、本実施例では塩化第2銅(CuCl2 2H2O)を用い、その他の工程は実施例2
8の場合と同様にして、図32(E)に示す状態を得た。
《実施例30》
本実施例30は、実施例28とは異なる形態の結晶成長を行わせる例である。本実施例
は、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して、横成長と呼ばれる基板に平行な方向へ
の結晶成長を行わせる方法に関する。図33は本実施例の作製工程を示す図である。
まず、コーニング1737ガラス基板174上に下地膜175として酸化窒化珪素膜を
3000オングストロームの厚さに成膜した。なお、ガラス基板の代えて石英基板を用い
てもよい。次いで、結晶性珪素膜の出発膜となる非晶質珪素膜176を減圧熱CVD法に
よって、600オングストロームの厚さに成膜した。この非晶質珪素膜の厚さは、前述し
たように2000オングストローム以下とすることが好ましい。なお、減圧熱CVD法の
代えてプラズマCVD法を用いてもよい。
次に、図示しない酸化珪素膜を1500オングストロームの厚さに成膜し、それをパタ
ーニングすることにより、符号177で示されるマスクを形成した。このマスクは178
で示される領域に開口が形成されている。開口178が形成されている領域においては、
非晶質珪素膜176が露呈している。開口178は、図面の奥行から手前方向(長手方向
)の細長い長方形を有している。この開口178の幅は20μm以上とするのが適当であ
り、その長手方向の長さは必要とする長さでよいが、本実施例ではその幅を30μm、長
さを4cmとした。
次いで、実施例28で示したと同様にして、重量換算で10ppmのニッケル元素を含
んだ酢酸ニッケル水溶液を塗布し、図示しないスピナーを用いてスピンドライを行い、余
分な溶液を除去した。こうして、ニッケル元素が図33(A)の点線179で示されるよ
うに、非晶質珪素膜176の露呈した表面に接して保持された状態が実現された。
次に、水素を3容量%含有した極力酸素を含まない窒素雰囲気中において、温度640
℃、4時間の加熱処理を行った。すると、図33(B)の180で示されるような基板1
74に平行な方向への結晶成長が進行した。この結晶成長は、ニッケル元素が導入された
開口178の領域から周囲に向かって進行する。この基板に平行な方向への結晶成長を、
本明細書中、横成長又はラテラル成長と指称する。
本実施例30に示すような条件においては、この横成長を100μm以上にわたって行
わせることができる。こうして横成長した領域を有する結晶性珪素膜181を得た。なお
、開口178が形成されている領域においては、珪素膜の表面から下地界面に向かって縦
成長と呼ばれる垂直方向への結晶成長が進行する。
次いで、ニッケル元素を選択的に導入するための酸化珪素膜からなるマスク177を除
去し、図33(C)に示す状態を得た。この状態では、珪素膜181中には、縦成長領域
、横成長領域、結晶成長が及ばなかった領域(非晶質状態)が存在しており、またこの状
態においては、ニッケル元素が膜中に偏在している。特に、開口178が形成されていた
領域と、符号180で示される結晶成長方向の先端部分においては、ニッケル元素が比較
的高濃度に存在している。
次に、レーザー光の照射を行う。ここでは実施例28と同様にKrFエキシマレーザー
の照射を行った。この工程で偏在したニッケル元素を拡散させ、後のゲッタリング工程に
おいてゲッタリングを行い易い状態が得られる。レーザー光の照射終了後、HClを3容
量%含んだ酸素雰囲気中において、温度650℃の加熱処理を12時間行った。この工程
において、ニッケル元素を膜中に高濃度に含んだ酸化膜182が形成され、同時に珪素膜
181中のニッケル元素濃度を相対的に減少させる。
ここでは、182で示される熱酸化膜が100オングストロームの厚さに成膜された。
この熱酸化膜中には、酸素の作用及び塩素の作用、特に塩素の作用によりゲッタリングさ
れたニッケル元素が高濃度に含まれている。また熱酸化膜182が成膜されることで、結
晶性珪素膜181は500オングストローム程度の膜厚となる。次にニッケル元素を高い
濃度で含んだ熱酸化膜182を除去した。
この状態における結晶性珪素膜においては、ニッケル元素が結晶性珪素膜の表面に向か
って高濃度に存在するような濃度分布を有している。この状態は、熱酸化膜182の形成
の際に、熱酸化膜にニッケル元素がゲッタリングされていったことに起因する。従って、
この熱酸化膜182を除去した後に、さらに結晶性珪素膜の表面をエッチングし、このニ
ッケル元素が高濃度に存在している領域を除去することは有用である。即ち、高濃度にニ
ッケル元素が存在している結晶性珪素膜の表面をエッチングすることで、よりニッケル元
素濃度を低減させた結晶性珪素膜を得ることができる。ただし、この場合には、最終的に
得られる珪素膜の膜厚を考慮することが必要となる。
次に、パターニングを行うことにより、横成長領域からなるパターン183を形成した
。このようにして得られた横成長領域からなるパターン183中に残留するニッケル元素
の濃度は、実施例28で示した場合に比較してさらに低いものとすることができる。これ
は、横成長領域中に含まれる金属元素の濃度がそもそも低いことにも起因する。具体的に
は、横成長領域からなるパターン183中のニッケル元素の濃度を1017cm-3以下のオ
ーダーにすることが容易に可能である。
また、横成長領域を利用して薄膜トランジスタを形成した場合、実施例28に示したよ
うな縦成長(実施例28の場合は全面が縦成長する)領域を利用した場合に比較して、よ
り高移動度を有する半導体装置を得ることができる。なお、図33(E)に示すパターン
を形成した後に、さらにエッチング処理を行い、パターン表面に存在しているニッケル元
素を除去することは有用である。
次いで、パターン183に熱酸化膜184を形成した。この熱酸化膜の形成は温度65
0℃の酸素雰囲気中での加熱処理を12時間行うことにより、200オングストロームの
厚さに成膜した。なお、この熱酸化膜は、薄膜トランジスタを構成する場合には、後にゲ
イト絶縁膜の一部となる。その後、薄膜トランジスタを作製するのであれば、熱酸化膜1
84を覆って、さらにプラズマCVD法等で酸化珪素膜を成膜し、ゲイト絶縁膜を形成す
る。
《実施例31》
本実施例31は、アクティブマトリクス型の液晶表示装置やアクティブマトリクス型の
EL表示装置の画素領域に配置される薄膜トランジスタを作製した例である。図34に本
実施例の作製工程を示す。まず本実施例では、実施例28及び実施例30に示した工程に
より、ガラス基板上に、それぞれ結晶性珪素膜を形成した。
以下においては、実施例28に示した工程による場合を中心に記載するが、実施例30
に示した工程によった場合も同じである。実施例28に示した構成で結晶性珪素膜を得た
後、それをパターニングすることにより、図34(A)に示す状態を得た。図34(A)
に示す状態において、符号186がガラス基板、187が下地膜、188が結晶性珪素膜
で構成された活性層である。図34(A)に示す状態を得た後、酸素と水素を混合した減
圧雰囲気においてプラズマ処理を実施した。このプラズマは高周波放電によって生成させ
た。
上記プラズマ処理によって、活性層188の露呈した表面に存在している有機物が除去
される。正確には、酸素プラズマによって活性層の表面に吸着している有機物が酸化され
、さらに水素プラズマによって該酸化した有機物が還元、気化される。こうして活性層1
88の露呈した表面に存在する有機物が除去される。この有機物の除去は、活性層188
の表面における固定電荷の存在を抑制する上で非常に効果がある。有機物の存在に起因す
る固定電荷は、デバイスの動作を阻害したり、特性の不安定性の要因となるものであり、
その存在を少なくすることは非常に有用である。
上記有機物の除去を行った後、温度640℃の酸素雰囲気中において熱酸化を行って1
00オングストロームの熱酸化膜185を形成した。この熱酸化膜は、半導体層との界面
特性が高く、後にゲイト絶縁膜の一部を構成することとなる。こうして図34(A)に示
す状態を得た。その後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜189を1000オング
ストロームの厚さに成膜した。成膜方法としては、酸素とシランとN2O との混合ガスを
用いたプラズマCVD法を用いた。なお、TEOSとN2O との混合ガスを用いたプラズ
マCVD法を用いることもできる。
この酸化窒化珪素膜189は熱酸化膜185と合わせてゲイト絶縁膜として機能する。
また酸化窒化珪素膜中にハロゲン元素を含有させることは有効である。即ち、ハロゲン元
素の作用によりニッケル元素を固定化することで、活性層中に存在するニッケル元素(他
の珪素の結晶化を助長する金属元素を用いた場合も同じ)の影響で、ゲイト絶縁膜の絶縁
膜としての機能が低下してしまうことを防ぐことができる。
上記のように酸化窒化珪素膜とすることは、その緻密な膜質から、ゲイト絶縁膜中に金
属元素が進入しにくくなるという有意性がある。ゲイト絶縁膜中に金属元素が進入すると
、絶縁膜として機能が低下し、薄膜トランシスタの特性の不安定性やバラツキの原因とな
る。なお、ゲイト絶縁膜としては、通常利用されている酸化珪素膜を用いることもできる
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜189を成膜した後、後にゲイト電極とし
て機能する図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜中に
は、スカンジウムを0.2重量%含有させた。アルミニウム膜中にスカンジウムを含有さ
せたのは、後の工程において、ヒロックやウィスカーが発生することを抑制するためであ
る。ここでヒロックやウィスカーとは、加熱が行われることによって、アルミニウムの異
常成長が発生し、針状或いは刺状の突起部が形成されてしまうことを意味する。
上記アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極
酸化膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として行った。
即ち、この電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行
うことで、アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。この図
示しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とする。こ
の陽極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有してい
る。なお、この陽極酸化膜の膜厚は陽極酸化時の印加電圧によって制御することができる
次に、レジストマスク191を形成した。そしてアルミニウム膜を符号190で示され
るパターンにパターニングを行い、こうして図34(B)に示す状態を得た。ここで再度
の陽極酸化を行ったが、ここでは3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。こ
の電解溶液中において、アルミニウムのパターン190を陽極とした陽極酸化を行うこと
により、符号193で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成される。
上記工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク191が存在する関係で、ア
ルミニウムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜193が形成される。この陽極酸化膜1
93は、その膜厚を数μmまで成長させることができるが、ここでは、その膜厚を600
0オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化時間によって制御すること
ができる。
次いで、レジストマスク191を除去した後、さらに再度の緻密な陽極酸化膜の形成を
行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液と
して用いた陽極酸化を再び行った。すると、多孔質状の陽極酸化膜193中に電解溶液が
進入(侵入)する関係から、符号194で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜
が形成される。この緻密な陽極酸化膜194の膜厚は1000オングストロームとした。
この膜厚の制御は印加電圧によって行った。
次いで、露呈した酸化窒化珪素膜189と熱酸化膜185をエッチングした。このエッ
チングにはドライエッチングを使用した。さらに酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸を
用いて多孔質状の陽極酸化膜193を除去した。こうして図34(D)に示す状態を得た
。その後、不純物イオンの注入を行った。
ここでは、Nチャネル型の薄膜トランジスタを作製するためにP(リン)イオンの注入
をプラズマドーピング法によって実施した。この工程においては、ヘビードープがされる
196と200の領域とライトドープがされる197と199の領域が形成される。これ
は、残存した酸化珪素膜195の一部が半透過のマスクとして機能し、注入されたイオン
の一部がそこで遮蔽されるからである。
次いで、レーザー光又は強光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域
の活性化を行った。ここでは紫外線ランプによる強光の照射により実施した。こうしてソ
ース領域196、チャネル形成領域198、ドレイン領域200、低濃度不純物領域19
7と199が自己整合的に形成された。ここで、符号199で示されるのがLDD(ライ
トドープドレイン)領域と称される領域である。
なお、緻密な陽極酸化膜194の膜厚を2000オングストローム以上というように厚
くした場合、その膜厚でもってチャネル形成領域198の外側にオフセットゲイト領域を
形成することができる。本実施例においてもオフットゲイト領域は形成されているが、そ
の寸法が小さいので、その存在による寄与が小さく、また図面が煩雑になるので図面中に
は記載していない。
次に、層間絶縁膜201として酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を形
成する。ここでは窒化珪素膜を用いた。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜又は窒化珪素膜
上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。さらにコンタクトホールの形成を行
い、ソース電極202とドレイン電極203の形成を行った。こうして図34(E)に示
す薄膜トランジスタを完成した。
《実施例32》
本実施例32は、実際例31(図34)に示す構成における、ゲイト絶縁膜189の形
成方法に関する例である。基板として石英基板や耐熱性の高いガラス基板を用いた場合、
ゲイト絶縁膜の形成方法として、熱酸化法を用いることができる。熱酸化法は、その膜質
を緻密なものとすることができ、安定した特性を有する薄膜トランジスタを得る上では有
用なものとなる。
即ち、熱酸化法で成膜されや酸化膜は、絶縁膜として緻密で内部に存在する可動電荷を
少なくすることができるので、ゲイト絶縁膜として最適なものの一つとなる。本実施例で
は、950℃の温度の酸化性雰囲気中において、加熱処理を行った。他の工程は実施例3
1と同様にして図34(E)に示すような薄膜トランジスタを完成した。この際、酸化性
雰囲気中にHCl等を混合させることが有効である。
このようにすることにより、熱酸化膜の形成と同時に活性層中に存在する金属元素を固
定化することができる。また酸化性雰囲気中にN2O ガスを混合し、窒素成分を含有した
熱酸化膜を形成することも有効である。ここでN2O ガスの混合比を最適化すれば、熱酸
化法による酸化窒化珪素膜を得ることも可能である。なお、本実施例においては、特に熱
酸化膜185を形成する必要はない。
《実施例33》
本実施例33は、実施例31(図34)の工程とは異なる工程で薄膜トランジスタを作
製した例である。図35に本実施例の作製工程を示す。まず、実施例28及び実施例30
に示した工程により、ガラス基板上に、それぞれ結晶性珪素膜を形成した。次いで、それ
らをパターニングすることにより、図35(A)に示す状態を得た。以下においては、実
施例30に示した工程による場合を中心に記載するが、実施例28に示した工程によった
場合も同じである。
図35(A)に示す状態を得た後、酸素と水素の混合減圧雰囲気中においてプラズマ処
理を行った。図35(A)に示す状態において、205がガラス基板、206が下地膜、
207が結晶性珪素膜で構成された活性層である。また符号204はゲッタリングのため
の熱酸化膜を除去した後に、再度形成された熱酸化膜である。その後、ゲイト絶縁膜を構
成する酸化窒化珪素膜208を1000オングストロームの厚さに成膜した。この成膜に
は酸素とシランとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法で実施した。なお、成膜
方法としては、TEOSとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法を用いてもよい
該酸化窒化珪素膜208は、熱酸化膜204とともに、ゲイト絶縁膜を構成する。なお
、該酸化窒化珪素膜に代えてに酸化珪素膜を用いることもできる。ゲイト絶縁膜として機
能する酸化窒化珪素膜208を成膜した後、後にゲイト電極として機能する、図示しない
アルミニウム膜をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜中にはスカンジウムを0.
2重量%含有させた。
次いで、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化膜は、3重量%の酒石
酸を含むエチレングルコール溶液を電解溶液として行った。即ち、この電解溶液中におい
て、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行うことで、アルミニウム膜の
表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。該図示しない緻密な膜質を有する陽
極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とする。この陽極酸化膜が、後に形成され
るレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有している。なお、この陽極酸化膜の膜
厚は陽極酸化時の印加電圧によって制御することができる。
次に、レジストマスク209を形成した。そしてアルミニウム膜を符号210で示され
るパターンにパターニングした。ここで再度の陽極酸化を行うが、ここでは、3重量%の
シュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解溶液中において、アルミニウムのパタ
ーン210を陽極とした陽極酸化を行うことにより、符号211で示される多孔質状の陽
極酸化膜が形成される。
この工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク209が存在する関係で、ア
ルミニウムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜211が形成される。この陽極酸化膜2
11は、その膜厚を数μmまで成長させることができるが、ここでは、その膜厚を600
0オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化の時間によって制御するこ
とができる。
次いで、レジストマスク209を除去した後、さらに再度の緻密な陽極酸化膜の形成を
行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含むエチレングルコール溶液を電解溶液とし
て用いた陽極酸化を再び行った。すると、多孔質状の陽極酸化膜211中に電解溶液が進
入(侵入)する関係から、符号212で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が
形成される。ここで最初の不純物イオンの注入を実施したが、この工程は、レジストマス
ク209を除去してから行ってもよい。この不純物イオンの注入によってソース領域21
3とドレイン領域215を形成した。なお、符号214で示す領域には不純物イオンは注
入されない。
次に、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜211を除
去した。こうして図35(D)に示す状態を得た。その後、再度不純物イオンの注入を行
った。この不純物イオンは、最初の不純物イオンの注入条件よりライトドーピングの条件
で実施した。この工程において、ライトドープ領域216と217が形成される。そして
符号218で示される領域がチャネル形成領域となる。
次いで、レーザー光又は強光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域
の活性化を行うが、ここではレーザー光により実施した。こうして、ソース領域213、
チャネル形成領域218、ドレイン領域215、低濃度不純物領域216と217が自己
整合的に形成された。ここで、符号217で示されるのが、LDD(ライトドープドレイ
ン)領域と称される領域である。
次に、層間絶縁膜219として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成するが、ここでは酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜を形成した。なお、層間絶縁膜
としては、酸化珪素膜又は窒化珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい
。そして、コンタクトホールの形成を行い、ソース電極220とドレイン電極221の形
成を行った。こうして図35(E)に示す薄膜トランジスタを完成した。
《実施例34》
本実施例34は、Nチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタ
とを相補型に構成した例である。本実施例に示す構成は、例えば絶縁表面上に集積化され
た各種薄膜集積回路に利用することができる。また、例えばアクティブマトリクス型の液
晶表示装置の周辺駆動回路に利用することができる。図36に本実施例の作製工程を示す
まず、図36(A)に示すように、ガラス基板223上に、下地膜224として酸化珪
素膜又は酸化窒化珪素膜を成膜する。このうち好ましくは酸化窒化珪素膜を使用するが、
ここではこれを用いた。次いで、図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法により成膜
した。なお、減圧熱CVD法により成膜してもよい。さらに実施例28に示した方法によ
り、この非晶質珪素膜を結晶性珪素膜に変成した。
次いで、酸素と水素の混合雰囲気中においてプラズマ処理を行い、さらに得られた結晶
性珪素膜をパターニングして、活性層225と226を得た。こうして図36(A)に示
す状態を得た。さらに、ここでは、活性層の側面を移動するキャリアの影響を抑制するた
めに、図36(A)に示した状態において、HClを3容量%含んだ窒素雰囲気中におい
て、温度650℃、10時間の加熱処理を行った。
活性層の側面に金属元素の存在によるトラップ準位が存在すると、OFF電流特性の悪
化を招くので、上記のような処理を行い、活性層の側面における準位の密度を低下させて
おくことは有用である。さらに、ゲイト絶縁膜を構成する熱酸化膜222と酸化窒化珪素
膜227を成膜した。なお、ここで基板として石英を用いる場合には、前述の熱酸化法を
用いた熱酸化膜のみによって、ゲイト絶縁膜を構成することが望ましい。
次いで、後にゲイト電極を構成するための図示しないアルミニウム膜を4000オング
ストロームの厚さに成膜した。アルミニウム以外の金属としては、陽極酸化可能な金属(
例えばタンタル)を利用することができる。アルミニウム膜を形成した後、前述した方法
により、その表面に極薄い緻密な陽極酸化膜を形成した。次に、アルミニウム膜上に図示
しないレジストマスクを配置し、アルミニウム膜のパターニングを行った。
続いて、上記で得られたアルミニウムパターンを陽極として陽極酸化を行い、多孔質状
の陽極酸化膜230と231を形成した。この多孔質状の陽極酸化膜の膜厚は5000オ
ングストロームとした。さらに再度緻密な陽極酸化膜を形成する条件で陽極酸化を行い、
緻密な陽極酸化膜232と233を形成した。ここで緻密な陽極酸化膜232と233の
膜厚は800オングストロームとした。こうして図36(B)に示す状態を得た。
さらに、露呈した酸化珪素膜227と熱酸化膜222をドライエッチングによって除去
し、図36(C)に示す状態を得た。その後、酢酸と硝酸とリン酸を混合した混酸を用い
て、多孔質状の陽極酸化膜230と231を除去した。こうして図36(D)に示す状態
を得た。ここで、交互にレジストマスクを配置して、左側の薄膜トランジスタにP(リン
)イオンが、右側の薄膜トランジスタにB(ホウ素)イオンが注入されるようにした。
上記不純物イオンの注入によって、高濃度のN型を有するソース領域236とドレイン
領域239が自己整合的に形成された。また、同時に、低濃度にPイオンがドープされた
弱いN型を有する領域237が形成され、さらにチャネル形成領域238が同時に形成さ
れた。符号237で示される弱いN型を有する領域が形成されるのは、残存したゲイト絶
縁膜234が存在するからである。即ち、ゲイト絶縁膜234を透過したPイオンがゲイ
ト絶縁膜234によって一部遮蔽されるからである。
上記と同様な原理、手法により、強いP型を有するソース領域243とドレイン領域2
40が自己整合的に形成される。同時に、低濃度不純物領域242が同時に形成され、さ
らにチャネル形成領域241が同時に形成される。なお、緻密な陽極酸化膜232と23
3の膜厚が2000オングストロームというように厚い場合には、その厚さでチャネル形
成領域に接してオフセットゲイト領域を形成することができる。
本実施例の場合は、緻密な陽極酸化膜232と233の膜厚が1000オングストロー
ム以下と薄いので、その存在は無視することができる。次いで、レーザー光の照射により
、不純物イオンが注入された領域のアニールを行った。なお、レーザー光に代えて、強光
の照射により行うこともできる。次いで図36(E)に示すように、層間絶縁膜として窒
化珪素膜244と酸化珪素膜245を成膜した。それぞれの膜厚は1000オングストロ
ームとした。なお、酸化珪素膜245は成膜しなくてもよい。
ここで、上記窒化珪素膜によって、薄膜トランジスタが覆われることになる。窒化珪素
膜は緻密であり、また界面特性がよいので、このような構成とすることにより、薄膜トラ
ンジスタの信頼性を高めることができる。さらに樹脂材料からなる層間絶縁膜246をス
ピンコート法を用いて形成したが、ここでは、層間絶縁膜246の厚さを1μmとした。
そして、コンタクトホールの形成を行い、左側のNチャネル型の薄膜トランジスタのソ
ース電極247とドレイン電極248を形成した。同時に右側の薄膜トランジスタのソー
ス電極249とドレイン電極248を形成し(なお、ドレイン電極248は共通に配置さ
れたものとなる)、図36(F)に示す薄膜トランジスタを完成させた。こうして、相補
型に構成されたCMOS構造を有する薄膜トランジスタ回路を構成することができる。
本実施例34に示す構成においては、薄膜トランジスタを窒化膜で覆い、さらに樹脂材
料によって覆った構成が得られる。この構成は、可動イオンや水分の侵入しにくい耐久性
の高いものとすることができる。また、さらに多層配線を形成したような場合に、薄膜ト
ランジスタと配線との間に容量が形成されてしまうことを防ぐことができる。
《実施例35》
本実施例35は、前記実施例28に示す工程において、下地膜の表面に直接ニッケル元
素を導入した例である。この場合、ニッケル元素は非晶質珪素膜の下面に接して保持され
ることになる。本実施例では、下地膜を形成した後に、ニッケル元素の導入を行い、まず
下地膜の表面にニッケル元素が接して保持された状態とした。
本実施例においては、10ppm(重量換算)のニッケルを含んだニッケル酢酸塩の水
溶液を下地膜の表面に塗布することによってニッケル元素を導入し、この面に非晶質珪素
膜を形成した。その他の工程については実施例28の場合と同様にして、図32(E)に
示すように、含有ニッケル濃度を低減した結晶性珪素膜173を得た。珪素の結晶化を助
長する金属元素の導入方法としては、上記の溶液を用いる方法の他に、スパッタ法やCV
D法、さらにプラズマ処理や吸着法を用いることができる。
《実施例36》
本実施例36は、図33(E)の状態、または図34(A)の状態、または図35(A
)の状態においてレーザー光の照射を行い、得られた結晶性珪素膜からなる島状のパター
ンの結晶性を向上させた例である。本実施例においては、図33(E)、図34(A)、
図35(A)の状態においてレーザー光を照射することにより、比較的低い照射エネルギ
ー密度でもって、所定のアニール効果を得ることができた。この効果は、小さい面積の箇
所にレーザーエネルギーが照射されることから、アニールに利用されるエネルギー効率が
高まるためであると考えられる。
《実施例37》
本実施例37は、レーザー光の照射によるアニール効果を高めるために、薄膜トランジ
スタの活性層のパターニングに工夫を凝らした例である。図37に本実施例における薄膜
トランジスタの作製工程を示す。
まず、コーニング1737ガラス基板250上に、下地膜として酸化珪素膜又は酸化窒
化珪素膜251を成膜した。次に、非晶質珪素膜を500オングストロームの厚さに成膜
した。この成膜には減圧熱CVD法を用いた。なお、この非晶質珪素膜は、下記の結晶化
工程を経て結晶性珪素膜252となる。
次に、実施例28(図32参照)及び実施例29(図33参照)に示した方法により、
それぞれ、非晶質珪素膜を結晶化させ、結晶性珪素膜を得た。こうして図37(A)に示
す状態を得た。その後、実施例28及び実施例29に示す工程に従って、それぞれガラス
基板上に結晶性珪素膜252を形成した。即ち、ニッケル元素を利用した加熱処理により
、非晶質珪素膜を結晶化させ、結晶性珪素膜252を得た。この処理は温度620℃、4
時間の加熱処理によって実施した。以降の工程は、実施例28及び実施例29の何れの工
程による結晶性珪素膜についても同じである。
結晶性珪素膜を得た後、薄膜トランジスタの活性層を構成するためのパターン253を
形成した。この場合、このパターンの断面形状を図37(B)の254で示すような形状
とした。パターン253をそのような形状254に形成するのは、後のレーザー光の照射
による処理工程において、パターンの形状が変形することを抑制するためである。
一般に、図38(A)に示すような基体257上に形成された通常の島状の珪素膜から
なるパターン258に対してレーザー光を照射した場合、図38(B)に示すように、レ
ーザー光の照射後のパターン259の縁の部分に凸部260が形成されてしまう。これは
、照射されたレーザー光のエネルギーが、熱の逃げ場がないパターンの縁の部分に集中す
るために起こるものと考えられる。
上記現象は、後に薄膜トランジスタを構成する配線の不良や薄膜トランジスタの動作不
良の要因となる。そこで、本実施例に示す構成においては、活性層のパターン253を図
37(B)に示すような断面形状とした。このような構成とすることで、レーザー光の照
射に際して、珪素膜のパターンが図38(B)に示すような形状になってしまうことを抑
制することができる。
ここで、符号254で示される部分の角度を、下地膜251の面に対して、20°〜5
0°にすることが好ましい。符号254で示される部分の角度を20°を下回るようにす
ることは、活性層の占有面積の増加や形成の困難性が大きくなるので好ましくない。また
、符号254で示される部分の角度を50°を超えるようにすると、図38(B)で示さ
れる形状が形成されてしまうことを抑制する効果が低下するので、やはり好ましくない。
符号253で示されるようなパターンは、パターニングの際に等方性のドライエッチン
グを利用し、このドライエッチング条件を制御することにより実現することができる。次
に、図37(B)の253で示される形状のパターン(これは後に活性層となる)を得た
後、図37(C)に示すようにレーザー光の照射を行った。この工程において、パターン
253中に局所的に固まって存在しているニッケル元素を拡散させることができる。また
その結晶性を助長させることができる。
上記レーザー光の照射後、HClを3容量%含有させた酸素雰囲気中で加熱処理を行い
、熱酸化膜255を形成した。ここでは、HClを3容量%含んだ温度650℃の酸素雰
囲気中において12時間の加熱処理を行うことにより、100オングストロームの熱酸化
膜を形成した。この熱酸化膜には、塩素の作用によって、パターン253中に含まれてい
るニッケル元素がゲッタリングされる。この際、前の工程であるレーザー光の照射によっ
て、ニッケル元素の固まりが破壊され、拡散されているので、ニッケル元素のゲッタリン
グが効果的に行われる。
また、本実施例に示す構成を採用した場合、パターン253の側面からのゲッタリング
も行われる。このことは、最終的に完成する薄膜トランシスタのOFF電流特性や信頼性
を高める上で有用なものとなる。これは、活性層の側面に存在するニッケル元素を代表と
する珪素の結晶化を助長する金属元素の存在が、OFF電流の増大や特性の不安定性に大
きく関係するからである。
図37(D)に示すゲッタリング用の熱酸化膜255を形成した後、この熱酸化膜25
5を除去した。こうして図37(E)に示す状態を得た。なお、下地膜251として酸化
珪素膜を採用した場合、この熱酸化膜255の除去工程において、酸化珪素膜251がエ
ッチングされてしまうことが懸念される。しかし、本実施例に示すように熱酸化膜255
の膜厚が100オングストローム程度と薄い場合は、そのことは大して問題とはならない
図37(E)に示す状態を得た後、新たな熱酸化膜256を形成した。この熱酸化膜は
、酸素100%の雰囲気中での加熱処理により形成した。ここでは、温度650℃の該酸
素雰囲気中での加熱処理によって熱酸化膜256を100オングストロームの厚さに形成
した。この熱酸化膜256は、後のレーザー光の照射の際にパターン253の表面が荒れ
てしまうことを抑制することに効果がある。また、この熱酸化膜256は、後にゲイト絶
縁膜の一部を構成する。
上記熱酸化膜256は、結晶性珪素膜253との間における界面特性が極めて良好であ
るので、ゲイト絶縁膜の一部として利用することは有用である。なお、熱酸化膜256を
形成した後、再度のレーザー光の照射を行ってもよい。こうしてニッケル元素の濃度が減
少され、また高い結晶性を有する結晶性珪素膜253が得られた。この後、図34又は図
35に示すような工程を経ることによって、薄膜トランジスタを作製する。
《実施例38》
本実施例38は、ガラス基板の歪点以上の温度で加熱処理を加える場合の工夫について
の例である。本発明における珪素の結晶化を助長する金属元素のゲッタリング工程は、な
るべく高い温度で行うことが好ましい。
例えば、コーニング1737ガラス基板(歪点667℃)を用いた場合において、熱酸
化膜の形成によるニッケル元素のゲッタリングを行う際の温度は、650℃より700℃
の方がより高いゲッタリング作用を得ることができる。しかしコーニング1737ガラス
基板を用いた場合に、熱酸化膜の形成のための加熱温度を700℃とすると、ガラス基板
に変形が生じてしまう。
本実施例は、この問題を解決した例である。即ち、本実施例に示す構成においては、ガ
ラス基板を平坦性の保証された石英で構成された定盤上に配置し、この状態で加熱処理を
行った。このようにすると、定盤の平坦性によって、軟化したガラス基板の平坦性もまた
維持された。なお、冷却も定盤上にガラス基板を配置した状態で行うことが重要である。
このような構成を採用することにより、ガラス基板の歪点以上の温度であっても加熱処理
を施すことができる。
《実施例39》
本実施例39は、ガラス基板上にニッケル元素を利用して結晶性珪素膜を得た例である
。本実施例では、まずニッケル元素の作用により高い結晶性を有する結晶性珪素膜を得た
後、レーザー光の照射を行った。このレーザー光の照射を行うことにより、膜の結晶性を
高めるとともに、膜中に局所的に集中して存在しているニッケル元素を膜中に拡散させる
。即ち、ニッケルの固まりを消滅させる。
そして、該結晶性珪素膜上に、酸化膜を熱酸化法によって形成した。この時、結晶性珪
素膜中に残存したニッケル元素が熱酸化膜中にゲッタリングされるが、ニッケル元素が上
記レーザー光の照射によって分散して存在しているので、効果的にゲッタリングが進行す
る。次いで、このゲッタリングの結果、高濃度にニッケル元素を含有した熱酸化膜を除去
した。このようにすることにより、ガラス基板上に高い結晶性を有していながら、かつニ
ッケル元素の濃度の低い結晶性珪素膜が得られた。
図39は、本実施例の作製工程を示す図である。まず、コーニング1737ガラス基板
(歪点667℃)261上に、下地膜としての酸化窒化珪素膜262を3000オングス
トロームの厚さに成膜した。酸化窒化珪素膜の成膜は、原料ガスとしてシランとN2O ガ
スと酸素とを用いたプラズマCVD法を使用して行った。なお、これに代えてTEOSガ
スとN2O ガスとを用いたプラズマCVD法を用いてもよい。
上記酸化窒化珪素膜は、後の工程においてガラス基板からの不純物(ガラス基板中には
半導体の作製レベルで見て、多量の不純物が含まれている)の拡散を抑制する機能を有し
ている。なお、この不純物の拡散を抑制する機能を最大限に得るためには、窒化珪素膜が
最適である。しかし、窒化珪素膜は応力の関係でガラス基板からはがれてしまうので実用
的ではない。また、下地膜として酸化珪素膜を用いることもできる。
また、下地膜262は、可能な限り、なるべく高い硬度とすることが重要なポイントと
なる。これは最終的に得られた薄膜トランジスタの耐久試験において、下地膜の硬さが硬
い方が(即ち、そのエッチングレートが小さい方が)信頼性が高いことから結論される。
その理由は、薄膜トランジスタの作製工程中におけるガラス基板からの不純物の遮蔽効果
によるものと考えられる。
また、この下地膜262中に塩素で代表されるハロゲン元素を微量に含有させておくこ
とは有効である。このようにすると、後の工程において、半導体層中に存在する珪素の結
晶化を助長する金属元素を、ハロゲン元素によってゲッタリングすることができる。また
、下地膜の成膜後に水素プラズマ処理を加えることは有効である。さらに、酸素と水素と
を混合した雰囲気でのプラズマ処理を行うことは有効である。これは、下地膜の表面に吸
着している炭素成分を除去し、後に形成される半導体膜との界面特性を向上させることに
効果がある。
次に、後に結晶性珪素膜となる非晶質珪素膜263を500オングストロームの厚さに
減圧熱CVD法で成膜した。減圧熱CVD法を用いたのは、その方が後に得られる結晶性
珪素膜の膜質が優れているからである。具体的には、膜質が緻密であるからである。なお
、減圧熱CVD法以外の方法としては、プラズマCVD法を用いることができる。
ここで作製する非晶質珪素膜は、膜中の酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm
-3であることが望ましい。これは後の珪素の結晶化を助長する金属元素のゲッタリング工
程において、酸素が重要な役割を果たすからである。ただし、酸素濃度が上記濃度範囲よ
り高い場合は、非晶質珪素膜の結晶化が阻害されるので注意が必要である。また、他の不
純物濃度、例えば、窒素や炭素の不純物濃度は極力低い方がよい。具体的には、2×10
19cm-3以下の濃度とすることが必要である。
非晶質珪素膜265の膜厚の上限は2000オングストローム程度である。これは、後
のレーザー光の照射による効果を得るには、あまり厚い膜であると、不利であるからであ
る。厚い膜が不利なのは、珪素膜に照射されるレーザー光の殆んどは、膜の表面において
吸収されてしまうことに原因がある。なお、非晶質珪素膜263の膜厚の下限は、成膜方
法の如何にもよるが、実用的には200オングストローム程度である。
次に、非晶質珪素膜263を結晶化させるためにニッケル元素を導入した。ここでは、
10ppm(重量換算)のニッケルを含んだニッケル酢酸塩水溶液を非晶質珪素膜263
の表面に塗布することによってニッケル元素を導入した。ニッケル元素の導入方法として
は、上記の溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法やCVD法、さらにはプラズマ処理や
吸着法を用いることができる。このうち上記の溶液を用いる方法は、簡便であり、また金
属元素の濃度調整が簡単であるという点で有用である。
上記のようにニッケル酢酸塩水溶液を塗布することにより、図39(A)の264で示
されるようにニッケル酢酸塩水溶液の水膜が形成された。この後、図示しないスピナーを
用いて余分な溶液を吹き飛ばした。このようにして、ニッケル元素が非晶質珪素膜263
の表面に接して保持された状態とした。なお、後の加熱工程における不純物の残留を考慮
すると、酢酸ニッケル塩溶液を用いる代わりに例えば硫酸ニッケルを用いることが好まし
い。これは酢酸ニッケル塩溶液は炭素を含んでおり、これが後の加熱工程において炭化し
て膜中に残留することが懸念されるからである。ニッケル元素の導入量の調整は、溶液中
におけるニッケル元素の濃度を調整することにより行うことができる。
そして、図39(B)に示す状態において、550℃〜650℃の温度での加熱処理を
行い、非晶質珪素膜263を結晶化させ、結晶性珪素膜265を得た。この加熱処理は、
還元雰囲気中で行った。この加熱処理の温度は、ガラス基板の歪点以下の温度で行うこと
が好ましい。コーニング1737ガラス基板の歪点は667℃であるので、この場合の加
熱温度の上限は、余裕を見て650℃程度とすることが好ましい。
本実施例では、上記還元雰囲気を水素を3容量%含んだ窒素雰囲気とし、また加熱の温
度を620℃とし、加熱時間を4時間とした。上記の加熱処理による結晶化工程において
、雰囲気を還元雰囲気とするのは加熱処理工程中において酸化物が形成されてしまうこと
を防止するためである。具体的には、ニッケルと酸素とが反応して、NiOX が膜の表面
や膜中に形成されてしまうことを抑制するためである。
なお、酸素は、後のゲッタリング工程において、ニッケルと結合し、ニッケルのゲッタ
リングに多大な貢献をすることとなる。しかし、上記結晶化の段階で酸素とニッケルとが
結合することは、結晶化を阻害するものであることが判明している。従って、この加熱に
よる結晶化の工程においては、酸化物の形成を極力抑制することが重要となる。
そこで、上記の結晶化のための加熱処理を行う雰囲気中の酸素濃度は、ppmオーダー
、好ましくは1ppm以下とすることが必要である。また、上記の結晶化のための加熱処
理を行う雰囲気の殆んどを占める気体としては、窒素以外にアルゴン等の不活性ガス、或
いはそれらの混合ガスを利用することができる。
上記の加熱処理による結晶化工程の後においては、ニッケル元素がある程度の固まりで
残存している。このことは、TEM(透過型電子顕微鏡)による観察から確認された。当
該ニッケルがある程度の固まりで存在しているという事実の原因は明らかではないが、何
らかの結晶化のメカニズムと関係しているものと考えられる。
次に、図39(C)に示すようにレーザー光の照射を行った。ここでは、KrFエキシ
マレーザー(波長248nm)を用い、レーザー光のビーム形状を線状としたものを走査
しながら照射する方法を採用した。このレーザー光の照射を行うことにより、前述の加熱
処理による結晶化の結果、膜265中に局所的に集中していたニッケル元素がある程度分
散する。即ち、ニッケル元素の固まりを消滅させ、ニッケル元素を膜265中に分散させ
ることができる。
次に、図39(D)に示すように、再度の加熱処理を行った。この加熱処理はニッケル
元素をゲッタリングするための熱酸化膜を形成するために行われる。ここでは100%の
酸素雰囲気中で温度640℃の加熱処理を12時間行った。この工程の結果、熱酸化膜が
100オングストロームの厚さに成膜された。
この工程は、結晶化のために初期の段階で意図的に混入させたニッケル元素(その他の
珪素の結晶化を助長する金属元素についても同じ)を結晶性珪素膜265中から除去する
ための工程である。この加熱処理は、前述の結晶化を行うために実施した加熱処理よりも
高い温度で行うが、これは、ニッケル元素のゲッタリングを効果的に行うために重要な条
件である。なお、結晶化を行うために実施した加熱処理温度と同等又はそれ以下の温度で
も行えるが、効果が少ない。
この加熱処理は、上記の条件を満たした上で、600℃〜750℃の温度で行う。この
工程におけるニッケル元素のゲッタリング効果は、600℃より高い温度とした場合に顕
著に得ることができる。この工程において、前述のレーザー光の照射によって分散された
ニッケル元素が効果的に酸化膜中にゲッタリングされていく。なお、この加熱処理温度の
上限は、使用するガラス基板の歪点によって制限される。
使用するガラス基板の歪点以上の温度で加熱処理を行うと、基板が変形するので注意が
必要である。なお、この点前記《実施例38》の箇所で述べたように、ガラス基板を、平
坦性が保証された、例えば石英で構成された定盤上に配置し、この状態で加熱処理を行う
ことにより、使用するガラス基板の歪点以上の温度で加熱処理することができる。
熱酸化膜266が形成されることで、結晶性珪素膜263の膜厚は約450オングスト
ローム程度となる。この加熱処理においては、加熱温度が600℃〜750℃の場合は、
処理時間(加熱時間)を10時間〜48時間、代表的には24時間とする。勿論この処理
時間は、得ようとする酸化膜の膜厚によって適時設定を行えばよい。またこのゲッタリン
グにおいては、結晶性珪素膜中に存在する酸素が重要な役割を果たす。即ち、酸素とニッ
ケルが結合することによって形成される酸化ニッケルの形でニッケル元素のゲッタリング
が進行する。
前述したように、酸素は、その濃度が多過ぎると、図39(B)に示す結晶化工程にお
いて、非晶質珪素膜263の結晶化を阻害する要素となる。しかし、上述のように、その
存在はニッケルのゲッタリング過程においては重要な役割を果たす。従って、出発膜とな
る非晶質珪素膜中に存在する酸素濃度の制御は重要なものとなる。また上記の工程におい
ては、形成される酸化膜中にニッケル元素がゲッタリングされるので、酸化膜中における
ニッケル濃度が他の領域に比較して当然高くなる。
また、珪素膜265と熱酸化膜266との熱酸化膜266側の界面近傍において、ニッ
ケル元素が高くなる傾向が観察された。これは、ゲッタリングが主に行われる領域が、珪
素膜と酸化膜との界面近傍の酸化膜側であることが要因であると考えられる。また、界面
近傍においてゲッタリングが進行するのは、界面近傍の応力や欠陥の存在が要因であると
考えられる。
次いで、ニッケルを高濃度に含んだ酸化膜266を除去した。この酸化膜266の除去
はバッファーフッ酸(その他フッ酸系のエッチャント)を用いたウェットエッチングやド
ライエッチングを用いて行うが、ここではバッファーフッ酸を用いたウェットエッチング
で実施した。こうして図39(E)に示すように、含有ニッケル濃度を低減させた結晶性
珪素膜267を得ることができた。
また、得られた結晶性珪素膜267の表面近傍には、比較的ニッケル元素が高濃度に含
まれるので、上記の酸化膜266のエッチングをさらに進めて、結晶性珪素膜267の表
面を少しオーバーエッチングすることは有効である。また、熱酸化膜266を除去した後
に、再びレーザー光を照射して、得られた結晶性珪素膜267の結晶性をさらに助長する
ことは有効である。
即ち、ニッケル元素のゲッタリングが行われた後に再度のレーザー光の照射を行うこと
は有効である。そこで本実施例においては、レーザー光としてKrFエキシマレーザー(
波長248nm)を用いて実施した。レーザー光としては、XeClエキシマレーザー(
波長308nm)やその他の種類のエキシマレーザーを用いるのでもよい。またレーザー
光ではなく、例えば紫外線や赤外線の照射を行う構成としてもよい。
《実施例40》
本実施例40は、実施例39に示す構成において、珪素の結晶化を助長する金属元素と
して、Cuを用いた場合の例である。この場合、Cuを導入するための溶液として、酢酸
第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕や塩化第2銅(CuCl2 2H2O) 等を用いればよ
い。本実施例では塩化第2銅(CuCl2 2H2O)を使用し、その他は実施例39と様
にして、図39(E)に示すように、含有銅濃度を低減させた結晶性珪素膜267を得る
ことができた。
《実施例41》
本実施例41は、実施例39とは異なる形態の結晶成長を行わせた例である。本実施例
は、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して、横成長と呼ばれる基板に平行な方向へ
の結晶成長を行わせる方法に関する。図40に本実施例の作製工程を示す。
まず、コーニング1737ガラス基板268上に、下地膜269として酸化窒化珪素膜
を3000オングストロームの厚さに成膜した。なお、該ガラス基板に代えて石英基板等
でもよい。次に、結晶性珪素膜の出発膜となる非晶質珪素膜270を減圧熱CVD法によ
り、600オングストロームの厚さに成膜した。この非晶質珪素膜の厚さは、前述したよ
うに2000オングストローム以下とすることが好ましい。なお、該減圧熱CVD法の代
わりにプラズマCVD法を用いてもよい。
次に、図示しない酸化珪素膜を1500オングストロームの厚さに成膜し、それをパタ
ーニングすることにより、符号271で示されるマスクを形成した。このマスクは符号2
72で示される領域に開口が形成されている。この開口272が形成されている領域にお
いては、非晶質珪素膜270が露呈している。開口272は、図面の奥行から手前方向に
長手方向の細長い長方形を有している。この開口272の幅は20μm以上とするのが適
当であり、その長手方向の長さは必要とする長さで形成すればよいが、本実施例ではその
幅は35μm、長さ2cmとした。
次いで、実施例40で示したと同様に、重量換算で10ppmのニッケル元素を含んだ
酢酸ニッケル水溶液を塗布した。そして、図示しないスピナーを用いてスピンドライを行
い、余分な溶液を除去した。こうしてニッケル元素が図40(A)の点線273で示され
るように、非晶質珪素膜270の露呈した表面に接して保持された状態が実現された。
次に、水素を3容量%含有した、極力酸素を含まない窒素雰囲気中において、温度64
0℃、4時間の加熱処理を行った。すると、図40(B)の274で示されるような基板
268に平行な方向への結晶成長が進行した。この結晶成長はニッケル元素が導入された
開口272の領域から周囲に向かって進行する。なおこの基板に平行な方向への結晶成長
を、本明細書中、横成長又はラテラル成長と指称する。
本実施例に示すような条件においては、この横成長を100μm以上にわたって行わせ
ることができる。こうして横成長した領域を有する珪素膜275が得られた。なお、開口
272が形成されている領域においては、珪素膜の表面から下地界面に向かって縦成長と
よばれる垂直方向への結晶成長が進行する。
次いで、ニッケル元素を選択的に導入するための酸化珪素膜からなるマスク271を除
去し、図40(C)に示す状態を得た。この状態では、珪素膜275中には、縦成長領域
、横成長領域、結晶成長が及ばなかった領域(非晶質状態)が存在している。またこの状
態においては、ニッケル元素が膜中に偏在している。特に、開口272が形成されていた
領域と、274で示される結晶成長の先端部分においては、ニッケル元素が比較的高濃度
に存在している。
次いで、レーザー光の照射を行った。ここでは実施例39の場合と同様に、KrFエキ
シマレーザーの照射を行い、偏在したニッケル元素を拡散させ、後のゲッタリング工程に
おいてゲッタリングを行い易い状態とした。レーザー光の照射を終了した後、酸素100
%の雰囲気中において、温度650℃の加熱処理を12時間実施した。
この工程において、ニッケル元素を膜中に高濃度に含んだ酸化膜276が形成され、そ
して、同時に結晶性珪素膜275中のニッケル元素濃度を相対的に減少させることができ
る。本実施例では、符号276で示される熱酸化膜を100オングストロームの厚さに成
膜した。この熱酸化膜中には、その成膜によってゲッタリングされたニッケル元素が高濃
度に含まれている。
また、熱酸化膜276が成膜されることで、結晶性珪素膜275は500オングストロ
ーム程度の膜厚となる。次いで、ニッケル元素を高い濃度で含んだ熱酸化膜276を除去
した。この状態の結晶性珪素膜においては、ニッケル元素が結晶性珪素膜の表面に向かっ
て高濃度に存在するような濃度分布を有している。この状態は、熱酸化膜276の形成の
際に、熱酸化膜にニッケル元素がゲッタリングされて行ったことに起因している。
従って、この熱酸化膜276を除去した後に、さらに結晶性珪素膜の表面をエッチング
し、このニッケル元素が高濃度に存在している領域を除去することは有用である。即ち、
高濃度にニッケル元素が存在している結晶性珪素膜の表面をエッチングすることで、より
ニッケル元素濃度を低減させた結晶性珪素膜を得ることができる。ただし、この場合、最
終的に得られる結晶性珪素膜の膜厚を考慮することが必要である。
次に、パターニングを行うことにより、横成長領域からなるパターン277を形成した
。このようにして、横成長領域からなるパターン277中に残留するニッケル元素の濃度
を、実施例39で示した場合に比較して、さらに低いものとすることができる。これは横
成長領域中に含まれる金属元素の濃度がそもそも低いことにも起因する。具体的には、横
成長領域からなるパターン277中のニッケル元素の濃度を1017cm-3以下のオーダー
にすることが容易に可能である。
また、横成長領域を利用して薄膜トランジスタを形成した場合、実施例39に示したよ
うな縦成長(実施例39の場合は全面が縦成長する)領域を利用した場合に比較して、よ
り高移動度を有する半導体装置を得ることができる。なお、図40(E)に示すパターン
を形成した後に、さらにエッチング処理を行い、パターン表面に存在しているニッケル元
素を除去することは有用である。
上記のようにしてパターン277を形成した後、熱酸化膜278を形成した。この熱酸
化膜278の形成は、温度650℃の酸素雰囲気中での加熱処理を12時間行うことによ
り、100オングストロームの厚さに成膜した。この熱酸化膜は、薄膜トランジスタを構
成するのであれば、後にゲイト絶縁膜の一部となる。また、その後、薄膜トランジスタを
作製するのであれば、熱酸化膜278を覆って、さらにプラズマCVD法等で酸化珪素膜
を成膜し、熱酸化膜278と合わせてゲイト絶縁膜を形成する。
《実施例42》
本実施例42は、アクティブマトリクス型の液晶表示装置やアクティブマトリクス型の
EL表示装置の画素領域に配置される薄膜トランジスタを作製する例である。図41は本
実施例の作製工程を示す図である。
まず、実施例39及び実施例41に示した工程により、ガラス基板上に結晶性珪素膜を
形成した。それ以降の工程は両者ともに同じであるので、以下実施例39に示した構成で
結晶性珪素膜を得た場合について記載する。該結晶性珪素膜をパターニングすることによ
り、図41(A)に示す状態を得た。この状態において、280がガラス基板、281が
下地膜、282が結晶性珪素膜で構成された活性層である。図41(A)に示す状態を得
た後、酸素と水素を混合した減圧雰囲気でのプラズマ処理を施した。このプラズマは、高
周波放電によって生成させた。
このプラズマ処理によって、活性層282の露呈した表面に存在している有機物が除去
される。正確には酸素プラズマによって活性層の表面に吸着している有機物が酸化され、
さらに水素プラズマによって、該酸化した有機物が還元、気化される。こうして活性層2
82の露呈した表面に存在する有機物が除去される。この有機物の除去は、活性層282
の表面における固定電荷の存在を抑制する上で非常に効果がある。有機物の存在に起因す
る固定電荷は、デバイスの動作を阻害したり、特性の不安定性の要因となるものであり、
その存在を少なくすることは非常に有用である。
上記有機物の除去を行った後、温度640℃の酸素雰囲気中において熱酸化を行って1
00オングストロームの熱酸化膜279を形成した。この熱酸化膜は、半導体層との界面
特性が高く、後にゲイト絶縁膜の一部を構成することとなる。こうして図41(A)に示
す状態を得た。その後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜283を1000オング
ストロームの厚さに成膜した。成膜方法としては、酸素とシランとN2O との混合ガスを
用いたプラズマCVD法やTEOSとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法等を
用いるが、本実施例では酸素とシランとN2O との混合ガスを用いた。
この酸化窒化珪素膜283は、熱酸化膜279と合わせてゲイト絶縁膜として機能する
。また、酸化窒化珪素膜中にハロゲン元素を含有させることは有効である。即ち、ハロゲ
ン元素の作用によりニッケル元素を固定化することで、活性層中に存在するニッケル元素
(他の珪素の結晶化を助長する金属元素についても同じ)の影響で、ゲイト絶縁膜の絶縁
膜としての機能が低下してしまうことを防ぐことができる。
上記膜を酸化窒化珪素膜とすることは、その緻密な膜質から、ゲイト絶縁膜中に金属元
素が進入しにくくなるという有意性がある。ゲイト絶縁膜中に金属元素が進入(侵入)す
ると、絶縁膜としての機能が低下し、薄膜トランシスタの特性の不安定性やバラツキの原
因となる。なお、ゲイト絶縁膜としては、通常利用されている酸化珪素膜を用いることも
できる。
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜283を成膜した後、後にゲイト電極とし
て機能するアルミニウム膜をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜(図示せず、後
述パターニング後、パターン284となる)中には、スカンジウムを0.2重量%含有さ
せた。アルミニウム膜中にスカンジウムを含有させるのは、後の工程において、ヒロック
やウィスカーが発生することを抑制するためである。ここでヒロックやウィスカーとは、
加熱が行われることによって、アルミニウムの異常成長が発生し、針状或いは刺状の突起
部が形成されてしまうことを意味する。
上記アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極
酸化膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として行った。
即ち、この電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行
うことで、アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。この図
示しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とした。こ
の陽極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有してい
る。なお、この陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧によって制御することができ
る。
次いでレジストマスク285を形成した後、アルミニウム膜を284で示されるパター
ンにパターニングした。こうして図41(B)に示す状態を得た。ここで再度の陽極酸化
を行った。本実施例では、3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解
溶液中において、アルミニウムのパターン284を陽極とした陽極酸化を行うことにより
、符号287で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成される。
この工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク285が存在する関係で、ア
ルミニウムパターン284の側面に選択的に陽極酸化膜287が形成される。この陽極酸
化膜は、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここでは、その膜厚を6000
オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化の時間によって制御すること
ができる。
次いで、レジストマスク285を除去した後、再度の緻密な陽極酸化膜の形成を行った
。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として用
いた陽極酸化を再び行った。すると、多孔質状の陽極酸化膜287中に電解溶液が進入す
る関係から、符号288で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。
この緻密な陽極酸化膜288の膜厚は1000オングストロームとした。この膜厚の制御
は印加電圧を調整して行った。
ここで、露呈した酸化窒化珪素膜283と熱酸化膜279をエッチングした。このエッ
チングにはドライエッチングを利用した。次いで、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸
液を用いて多孔質状の陽極酸化膜287を除去した。こうして図41(D)に示す状態を
得た後、不純物イオンの注入を行った。ここでは、Nチャネル型の薄膜トランジスタを作
製するために、P(リン)イオンの注入をプラズマドーピング法で行った。この工程にお
いては、ヘビードープがされる290及び294の領域とライトドープがされる291及
び293の領域が形成される。このように形成されるのは、残存した酸化珪素膜289の
一部が半透過なマスクとして機能し、注入されたイオンの一部がそこで遮蔽されるからで
ある。
次に、レーザー光又は強光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の
活性化を行うが、ここでは赤外線ランプで実施した。こうしてソース領域290、チャネ
ル形成領域292、ドレイン領域294、低濃度不純物領域291と293が自己整合的
に形成された。ここで、符号293で示されるのがLDD(ライトドープドレイン)領域
と称される領域である。
なお、緻密な陽極酸化膜288の膜厚を2000オングストローム以上というように厚
くした場合、その膜厚でもってチャネル形成領域292の外側にオフセットゲイト領域を
形成することができる。本実施例においてもオフセットゲイト領域は形成されているが、
その寸法が小さいのでその存在による寄与が小さく、また図面が煩雑になるので、図中に
は記載していない。
次に、層間絶縁膜295として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成する。ここでは窒化珪素膜を形成した。層間絶縁膜295は、酸化珪素膜又は窒化珪
素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。さらにコンタクトホールの形成
を行い、ソース電極296とドレイン電極297を形成した。こうして図39(E)に示
す薄膜トランジスタを完成させた。
《実施例43》
本実施例43は、実際例42に示す構成において、ゲイト絶縁膜283の形成方法に関
する。基板として石英基板や耐熱性の高いガラス基板を用いた場合、ゲイト絶縁膜の形成
方法として、熱酸化法を用いることができる。本実施例では、ゲイト絶縁膜283の形成
に熱酸化法を用い、他の工程は実施例42と同様にして、図41(E)に示す構造の薄膜
トランジスタを得た。
熱酸化法は、その膜質を緻密なものとすることができ、安定した特性を有する薄膜トラ
ンジスタを得る上では有用なものとなる。即ち、熱酸化法で成膜された酸化膜は、絶縁膜
として緻密で内部に存在する可動電荷を少なくすることができるので、ゲイト絶縁膜とし
て最適なものの一つである。
《実施例44》
本実施例44は、図41に示すのとは異なる工程で薄膜トランジスタを作製した例であ
る。図42は本実施例の作製工程を示す図である。まず、実施例39(図38)及び実施
例41(図40)に記載した工程により、それぞれ、ガラス基板上に結晶性珪素膜を形成
した。以下の工程は両者ともに同じである。次いで、それをパターニングすることにより
、図42(A)に示す状態を得た。
図42(A)に示す状態を得た後、酸素と水素の混合減圧雰囲気中においてプラズマ処
理を行った。図42(A)に示す状態において、299がガラス基板、300が下地膜、
301が結晶性珪素膜で構成された活性層である。また符号298はゲッタリングのため
の熱酸化膜の除去後に、再度形成された熱酸化膜である。図42(A)に示す状態を得た
後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜302を1000オングストロームの厚さに
成膜した。成膜には、酸素とシランとN2 Oとの混合ガスを用いたプラズマCVD法、或
いはTEOSとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法等を用いるが、ここでは酸
素とシランとN2 Oとの混合ガスを用いた。
上記酸化窒化珪素膜302は、熱酸化膜298とともにゲイト絶縁膜を構成する。なお
、酸化窒化珪素膜の他に酸化珪素膜を用いることもできる。ゲイト絶縁膜として機能する
酸化窒化珪素膜302を成膜した後、後にゲイト電極として機能する、アルミニウム膜(
図示せず、後述パターニング後、パターン304となる)をスパッタ法で成膜した。この
アルミニウム膜中にはスカンジウムを0.2重量%含有させた。
アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化
膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として実施した。即
ち、この電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行う
ことで、アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。この図示
しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とする。この
陽極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有している
。なお、この陽極酸化膜の膜厚は陽極酸化時の印加電圧の調整によって制御することがで
きる。
次いで、レジストマスク303を形成した。そしてアルミニウム膜を304で示される
パターンにパターニングした後、再度の陽極酸化を行った。ここでは3重量%のシュウ酸
水溶液を電解溶液として用いた。この電解溶液中において、アルミニウムのパターン30
4を陽極とした陽極酸化を行うことにより、符号305で示される多孔質状の陽極酸化膜
が形成される。
この工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク303が存在する関係で、ア
ルミニウムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜305が形成される。この陽極酸化膜3
05は、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここでは、その膜厚を6000
オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化の時間によって制御すること
ができる。
次いで、レジストマスク303を除去した後、さらに再度の緻密な陽極酸化膜の形成を
行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液と
して用いた陽極酸化を再び行った。すると、多孔質状の陽極酸化膜305中に電解溶液が
進入する関係から、符号306で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成さ
れる。ここで最初の不純物イオンの注入を行った。なお、この工程はレジストマスク30
3を除去してから実施してもよい。この不純物イオンの注入によって、ソース領域307
とドレイン領域309が形成される。この時、符号308の領域には不純物イオンは注入
されない。
次に、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜305を除
去した。こうして図42(D)に示す状態を得た。その後、再度不純物イオンの注入を行
うが、この不純物イオンは最初の不純物イオンの注入条件よりライトドーピングの条件で
行った。この工程においてライトドープ領域310と311が形成され、そして312で
示される領域がチャネル形成領域となる。
次いで、レーザー光又は強光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域
の活性化を行うが、ここではレーザー光を用いた。こうして、ソース領域307、チャネ
ル形成領域312、ドレイン領域309、低濃度不純物領域310と311が自己整合的
に形成された。ここで、符号311で示されるのが、LDD(ライトドープドレイン)領
域と称される領域である。
次に、層間絶縁膜313として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成する。ここでは両者の積層膜を形成した。該層間絶縁膜としては、酸化珪素膜又は窒
化珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。そして、コンタクトホール
の形成を行い、ソース電極314とドレイン電極315を形成した。こうして図42(E
)に示す薄膜トランジスタを完成させた。
《実施例45》
本実施例45は、Nチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタ
とを相補型に構成した例である。図43は本実施例の工程を示す図である。本実施例に示
す構成は、例えば絶縁表面上に集積化された各種薄膜集積回路に利用することができる。
また、例えばアクティブマトリクス型の液晶表示装置の周辺駆動回路に利用することがで
きる。
まず、図43(A)に示すように、ガラス基板317上に下地膜318として酸化珪素
膜又は酸化窒化珪素膜を成膜すした。このうち好ましくは酸化窒化珪素膜を用いられるが
、本実施例ではこれを用いた。次いで、図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法又は
減圧熱CVD法によって成膜するが、ここでは減圧熱CVD法を用いた。さらに前記実施
例39に示した方法により、この非晶質珪素膜を結晶性珪素膜に変成した。
次いで、酸素と水素の混合雰囲気中においてプラズマ処理を行い、さらに得られた結晶
性珪素膜をパターニングして、活性層319と320を得た。こうして図43(A)に示
す状態を得た。ここでは、活性層の側面を移動するキャリアの影響を抑制するために、図
43(A)に示した状態において、HClを3容量%含んだ窒素雰囲気中で、温度650
℃、10時間の加熱処理を行った。
活性層の側面に金属元素の存在によるトラップ準位が存在すると、OFF電流特性の悪
化を招くので、ここで示すような処理を行い、活性層の側面における準位の密度を低下さ
せておくことは有用である。次に、ゲイト絶縁膜を構成する熱酸化膜316と酸化窒化珪
素膜321を成膜した。なお、ここで、基板として石英を用いる場合には、前述の熱酸化
法を用いて熱酸化膜のみでもってゲイト絶縁膜を構成することが望ましい。
次いで、後にゲイト電極を構成するための図示しないアルミニウム膜(図示せず、後述
パターニング後にパターンとなる)を4000オングストロームの厚さに成膜した。アル
ミニウム膜のほか、陽極酸化可能な金属(例えばタンタル)を利用することができる。ア
ルミニウム膜を形成した後、前述した方法により、その表面に極薄の緻密な陽極酸化膜を
形成した。
次いで、該アルミニウム膜上に、レジストマスク(図示せず)を配置し、アルミニウム
膜のパターニングを行った。さらに、得られたアルミニウムパターンを陽極として陽極酸
化を行い、多孔質状の陽極酸化膜324と325を形成した。この多孔質状の陽極酸化膜
の膜厚は5000オングストロームとした。
ここで、再度緻密な陽極酸化膜を形成する条件で陽極酸化を行い、緻密な陽極酸化膜3
26と327を形成した。ここで緻密な陽極酸化膜326と327の膜厚は800オング
ストロームとした。こうして図43(B)に示す状態を得た。次いで、露呈した酸化珪素
膜321と熱酸化膜316をドライエッチングによって除去し、図43(C)に示す状態
を得た。
その後、酢酸と硝酸とリン酸を混合した混酸液を用いて多孔質状の陽極酸化膜324と
325を除去した。こうして図43(D)に示す状態を得た。次いで、交互にレジストマ
スクを配置して、左側の薄膜トランジスタにP(リン)イオンを、右側の薄膜トランジス
タにB(ホウ素)イオンを注入した。この不純物イオンの注入によって、高濃度のN型を
有するソース領域330とドレイン領域333が自己整合的に形成された。
同時に、低濃度にPイオンがドープされた弱いN型を有する領域331が同時に形成さ
れ、さらにチャネル形成領域332が同時に形成される。符号331で示される弱いN型
を有する領域が形成されるのは、残存したゲイト絶縁膜328が存在するからである。即
ち、ゲイト絶縁膜328を透過したPイオンがゲイト絶縁膜328によって一部遮蔽され
るからである。
また、上記と同様な原理、手法により、強いP型を有するソース領域337とドレイン
領域334が自己整合的に形成され、同時に低濃度不純物領域336が形成され、さらに
チャネル形成領域335が同時に形成される。なお、緻密な陽極酸化膜326と327の
膜厚が2000オングストロームというように厚い場合には、その厚さでチャネル形成領
域に接してオフセットゲイト領域を形成することができる。
本実施例の場合は、緻密な陽極酸化膜326と327の膜厚が1000オングストロー
ム以下と薄いので、その存在は無視することができる。次いで、レーザー光の照射を行い
、不純物イオンが注入された領域のアニールを行った。なお、レーザー光に代えて強光の
照射を行ってもよい。そして図43(E)に示すように、層間絶縁膜として窒化珪素膜3
38と酸化珪素膜339を成膜し、それぞれの膜厚は1000オングストロームとした。
なお、この場合、酸化珪素膜339は成膜しなくてもよい。
ここで、該窒化珪素膜によって、薄膜トランジスタが覆われることになる。窒化珪素膜
は緻密であり、また界面特性がよいので、このような構成とすることにより、薄膜トラン
ジスタの信頼性を高めることができる。さらに樹脂材料からなる層間絶縁膜340をスピ
ンコート法を用いて形成した。ここでは、層間絶縁膜340の厚さを1μmとした。
そして、コンタクトホールの形成を行い、左側のNチャネル型の薄膜トランジスタのソ
ース電極341とドレイン電極342を形成し、同時に右側の薄膜トランジスタのソース
電極343とドレイン電極342を形成した。ここで、ドレイン電極342は両者に共通
に配置されたものとなる。こうして、相補型に構成されたCMOS構造を有する薄膜トラ
ンジスタ回路を構成した。
本実施例に示す構成においては、薄膜トランジスタを窒化珪素膜で覆い、さらに樹脂材
料によって覆った構成が得られる。この構成は、可動イオンや水分の侵入しにくい耐久性
の高いものとすることができる。また、さらに多層配線を形成したような場合に、薄膜ト
ランジスタと配線との間に容量が形成されてしまうことを防ぐことができる。
《実施例46》
本実施例46は、前記実施例39に示す工程において、下地膜の表面に直接ニッケル元
素を導入した例である。この場合、ニッケル元素は非晶質珪素膜の下面に接して保持され
ることになる。本実施例では、下地膜を形成した後に酢酸ニッケル水溶液を用いてニッケ
ル元素の導入を行い、まず下地膜の表面にニッケル元素が接して保持された状態とした。
その他の工程については、実施例39の場合と同様にして、図39(E)に示すように
、含有ニッケル濃度を低減させた結晶性珪素膜267を得た。ニッケル元素を導入する方
法としては、本実施例のように溶液を使用する方法のほかに、スパッタ法やCVD法、さ
らに吸着法を用いることができる。また、ニッケル以外の、珪素の結晶化を助長する金属
元素を用いる場合にも、同様にして当該金属の濃度を低減させた結晶性珪素膜を得ること
ができる。
《実施例47》
本実施例47は、図40(E)の状態、または図41(A)の状態、または図42(A
)の状態において、レーザー光の照射を行い、得られた結晶性珪素膜からなる島状のパタ
ーンの結晶性を向上させた例である。図40(E)、図41(A)又は図42(A)の状
態においてレーザー光を照射する場合、比較的低い照射エネルギー密度でもって、所定の
アニール効果を得ることができる。これは、小さい面積の所にレーザーエネルギーが照射
されるので、アニールに利用されるエネルギー効率が高まるためであると考えられる。
《実施例48》
本実施例48は、レーザー光の照射によるアニール効果を高めるために、薄膜トランジ
スタの活性層のパターニングに工夫を凝らした例である。図44は本実施例における薄膜
トランジスタの作製工程を示す図である。まず、コーニング1737ガラス基板344上
に、下地膜として酸化珪素膜345成膜した。この下地膜としては酸化窒化珪素膜を用い
ることもできる。
次に、図示しない非晶質珪素膜を500オングストロームの厚さに成膜した。成膜には
減圧熱CVD法を用いた。この非晶質珪素膜は、後に結晶化工程を経て結晶性珪素膜34
6となる。次に実施例39(図39参照)及び実施例41(図40参照)に示した方法に
より、それぞれ、図示しない非晶質珪素膜を結晶化させ、結晶性珪素膜を得た。
こうして図44(A)に示す状態を得た。以下、実施例39による場合を中心に記載す
るが、実施例41による場合についても同様である。図44(A)に示す状態を得た後、
実施例39(図39)の作製工程に従って、ガラス基板上に結晶性珪素膜346を形成し
た。即ち、ニッケル元素を利用した加熱処理により、非晶質珪素膜を結晶化させ、結晶性
珪素膜346を得た。ここでの加熱処理条件は、温度620℃、4時間の加熱とした。
上記結晶性珪素膜を得た後、薄膜トランジスタの活性層を構成するためのパターンを形
成した。この場合、このパターンの断面形状を図44(B)の347で示すような形状と
する。このように、図44(B)に示すようなパターン347を形成するのは、後のレー
ザー光の照射による処理工程において、パターンの形状が変形することを抑制するためで
ある。
前述のとおり、図38(A)に示すような基体257上に形成された通常の島状の珪素
膜からなるパターン258に対し、レーザー光を照射した場合、図38(B)に示すよう
に、レーザー光の照射後のパターン259の縁の部分に凸部260が形成されてしまう。
これは、照射されたレーザー光のエネルギーが、熱の逃げ場がないパターンの縁の部分に
集中するために起るものと考えられる。
この現象により形成される凸部260は、後に薄膜トランジスタを構成する配線の不良
や薄膜トランジスタの動作不良の要因となる。そこで、本実施例に示す構成においては、
活性層のパターン347を図44(B)に示すような断面形状とした。このような構成と
することにより、レーザー光の照射に際して、珪素膜のパターンが図38(B)に示すよ
うな形状になってしまうことを抑制することができる。符号347で示されるようなパタ
ーンは、パターニングの際に等方性のドライエッチングを利用し、このドライエッチング
条件を制御することにより実現することができる。
ここで、下地膜345の面に対して、符号348で示される部分の角度を20°〜50
°にすることが好ましい。符号348で示される部分の角度を20°を下回る角度とする
ことは、活性層の占有面積の増加や活性層形成の困難性が大きくなるので好ましくない。
また、符号348で示される角度を50°を超える角度とすることは、図38(B)に示
されような凸部260が形成されてしまうことを抑制する効果が低下するので、やはり好
ましくない。
図44(B)の符号347で示される形状のパターン(後に活性層となる)を得た後、
図44(C)に示すようにレーザー光の照射を行った。この工程によって、パターン34
7中に局所的に固まって存在しているニッケル元素を拡散させることができ、またその結
晶性を助長させることができる。次いで、レーザー光の照射が終了した後、酸素雰囲気中
で加熱処理を行い、熱酸化膜349を形成した。ここでは酸素100%の雰囲気中におい
て温度650℃、12時間の加熱処理を行うことにより、100オングストロームの熱酸
化膜349を形成した。
この熱酸化膜349には、酸素の作用によって、パターン347中に含まれているニッ
ケル元素がゲッタリングされる。この際、前の工程においてレーザー光の照射によって、
ニッケル元素の固まりが破壊されているので、ニッケル元素のゲッタリングが効果的に行
われる。なお、加熱処理の雰囲気としてハロゲンを含有させると、さらに有効にニッケル
元素のゲッタリングを行うことができる。
また、本実施例に示す構成を採用した場合、パターン347の側面からのゲッタリング
も行われる。このことは、最終的に完成する薄膜トランシスタのOFF電流特性や信頼性
を高める上で有用なものとなる。これは、活性層の側面に存在するニッケル元素(他の珪
素の結晶化を助長する金属元素の場合も同じ)の存在が、OFF電流の増大や特性の不安
定性に大きく関係するからである。
図44(D)に示すゲッタリング用の熱酸化膜349を形成した後、この熱酸化膜34
9を除去した。こうして図44(E)に示す状態を得た。なお、本実施例のように下地膜
345として酸化珪素膜を採用した場合には、この熱酸化膜349の除去工程において、
酸化珪素膜345がエッチングされてしまうことが懸念される。しかし、本実施例に示す
ように、熱酸化膜349の膜厚が100オングストローム程度と薄い場合は、このことは
大して問題とはならない。
図44(E)に示す状態を得た後、新たな熱酸化膜350を形成した。この熱酸化膜3
50は、酸素100%の雰囲気中での加熱処理により形成した。ここでは、温度650℃
、4時間の酸素雰囲気中での加熱処理によって、熱酸化膜350を100オングストロー
ムの厚さに形成した。この熱酸化膜350は、後にレーザー光の照射を行う際に、パター
ン347の表面が荒れてしまうことを抑制するのに効果があり、また、後にゲイト絶縁膜
の一部を構成する。
上記熱酸化膜350は、結晶性珪素膜との間における界面特性が極めて良好であるので
、ゲイト絶縁膜の一部として利用することは有用である。なお、熱酸化膜350を形成し
た後、再度のレーザー光の照射を行ってもよい。こうしてニッケル元素の濃度が減少され
、また高い結晶性を有する結晶性珪素膜347が得られた。この後、図41〜図43に示
すような工程を経ることによって、薄膜トランジスタが作製される。
《実施例49》
本実施例49は、ガラス基板の歪点以上の温度で加熱処理を加える場合の工夫について
の例である。本発明においては、珪素の結晶化を助長する金属元素を用いて非晶質珪素を
結晶化した後、当該金属元素をゲッタリングするが、このゲッタリング工程は、なるべく
高い温度で行うことが好ましい。
例えば、基板としてコーニング1737ガラス(歪点667℃)を使用した場合におい
ても、熱酸化膜の形成によるニッケル元素のゲッタリングを行う際の温度としては、例え
ば650℃よりも、700℃である方がより高いゲッタリング作用を得ることができる。
しかし、この場合に熱酸化膜の形成のための加熱温度を700℃とすると、該ガラス基板
の変形が生じてしまう。
本実施例は、この問題を解決した例である。即ち、本実施例に示す構成においては、上
記ガラス基板を平坦性の保証された石英で構成された定盤上に配置し、この状態で加熱処
理を行った。このようにすると、定盤の平坦性によって、軟化したガラス基板の平坦性も
また維持される。この場合、冷却についても、定盤上にガラス基板を配置した状態で行う
ことが重要となる。このような構成を採用することにより、ガラス基板の歪点以上の温度
であっても加熱処理を施すことができる。
《実施例50》
本実施例50は、石英基板上にニッケル元素を利用して結晶性珪素膜を得た例である。
本実施例では、まず石英基板上に成膜された非晶質珪素膜をニッケル元素の作用により高
い結晶性を有する結晶性珪素膜に変成した。
次いで、HClを添加した酸化性の雰囲気中において加熱処理を行い、熱酸化膜を形成
した。この時、得られた結晶性珪素膜中に塩素(Cl)の作用により結晶性珪素膜中に残
存したニッケル元素がゲッタリングされる。そして、該ゲッタリングの後、高濃度にニッ
ケル元素を含有した熱酸化膜を除去した。このようにすることにより、石英基板上に高い
結晶性を有していながら、ニッケル元素の濃度の低い結晶性珪素膜を得た。
図45は本実施例の作製工程を示す図である。まず、石英ガラス基板351上に、下地
膜として酸化窒化珪素膜352を5000オングストロームの厚さに成膜した。この下地
膜352は、石英ガラス基板351と後に成膜される珪素膜との熱膨張率の違いを緩和さ
せる機能を有せしめるために、5000オングストローム程度以上とすることが好ましい
酸化窒化珪素膜352の成膜は、原料ガスとしてシランとN2O ガスと酸素とを用いた
プラズマCVD法を用いて実施した。なお、これに代えて、TEOSガスとN2O ガスと
を用いたプラズマCVD法を用いてもよい。この下地膜352中に塩素で代表されるハロ
ゲン元素を微量に含有させておくことは有効である。このようにすると、後の工程におい
て、半導体層中に存在する珪素の結晶化を助長する金属元素を該ハロゲン元素によってゲ
ッタリングすることができる。
また、下地膜の成膜後に水素プラズマ処理を加えることは有効である。また、酸素と水
素とを混合した雰囲気でのプラズマ処理を行うことは有効である。これは、下地膜の表面
に吸着している炭素成分を除去し、後に形成される半導体膜との界面特性を向上させるこ
とに効果がある。次に、後に結晶性珪素膜となる非晶質珪素膜353を1500オングス
トロームの厚さに減圧熱CVD法により成膜した。減圧熱CVD法を用いるのは、その方
が後に得られる結晶性珪素膜の膜質が優れているからであり、具体的には膜質が緻密であ
るからである。なお、減圧熱CVD法以外の方法としては、プラズマCVD法を用いるこ
とができる。
ここで作製する非晶質珪素膜は、膜中の酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm
-3であることが望ましい。これは、後の金属元素(珪素の結晶化を助長する金属元素)の
ゲッタリング工程において、酸素が重要な役割を果たすからである。ただし、酸素濃度が
上記濃度範囲より高い場合は、非晶質珪素膜の結晶化が阻害されるので注意が必要である
。また他の不純物濃度、例えば、窒素や炭素の不純物濃度は極力低い方がよい。具体的に
は、それらを2×1019cm-3以下の濃度とすることが必要である。
この非晶質珪素膜の膜厚は、約1000〜5000オングストロームの範囲から選択す
ることができる。次に、非晶質珪素膜353を結晶化させるためにニッケル元素を導入し
た。ここでは、10ppm(重量換算)のニッケルを含んだニッケル酢酸塩水溶液を非晶
質珪素膜353の表面に塗布することによってニッケル元素を導入した。ニッケル元素の
導入方法としては、上記の溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法やCVD法、またプラ
ズマ処理や吸着法を使用することができる。このうち上記の溶液を用いる方法は、簡便で
あり、また金属元素の濃度調整が簡単であるという点で有用である。
ニッケル酢酸塩溶液を塗布することにより、図45(A)の354で示されるように、
ニッケル酢酸塩水溶液の水膜が形成される。この状態を得た後、図示しないスピナーを用
いて余分な溶液を吹き飛ばした。このようにして、ニッケル元素が非晶質珪素膜353の
表面に接して保持された状態とした。
なお、後の加熱工程における不純物の残留を考慮すると、酢酸ニッケル塩溶液を用いる
代わりに、例えば硫酸ニッケルを用いることが好ましい。これは酢酸ニッケル塩溶液は炭
素を含んでおり、これが後の加熱工程において炭化して膜中に残留することが懸念される
からである。ニッケル元素の導入量の調整は、溶液中におけるニッケル元素の濃度を調整
することにより行うことができる。
次に、図45(B)に示す状態において、750℃〜1100℃の温度での加熱処理を
行い、非晶質珪素膜353を結晶化させ、結晶性珪素膜355を得た。ここでは、温度9
00℃、4時間の加熱処理を水素を2容量%混合した窒素雰囲気中(還元雰囲気中)で行
った。この加熱処理による結晶化工程において、雰囲気を還元雰囲気とするのは、加熱処
理工程中において、酸化物が形成されてしまうことを防止するためである。具体的には、
ニッケルと酸素とが反応してNiOX が膜の表面や膜中に形成されてしまうことを抑制す
るためである。
酸素については、後のゲッタリング工程において、ニッケルと結合して、ニッケルのゲ
ッタリングに多大な貢献をすることとなる。しかし、この結晶化の段階で酸素とニッケル
とが結合することは、結晶化を阻害するものであることが判明している。従って、この加
熱による結晶化の工程においては、酸化物の形成を極力抑制することが重要となる。
上記結晶化のための加熱処理を行う雰囲気中の酸素濃度は、ppmオーダー、好ましく
は1ppm以下とすることが必要である。また、上記結晶化のための加熱処理を行う雰囲
気の殆んどを占める気体としては、窒素以外に、アルゴン等の不活性ガス、或いは窒素を
含めたそれらの混合ガスを使用することができる。結晶性珪素膜355を得た後、パター
ニングを行い、後に薄膜トランジスタの活性層となる島状の領域356を形成した。
次に、図45(D)に示す工程において、再度の加熱処理を行った。この加熱処理は、
ニッケル元素をゲッタリングするための熱酸化膜を形成するために行われる。ここでは5
容量%の酸素、さらにこの酸素に対し3容量%のHClを含んだ窒素囲気中で、温度95
0℃の加熱処理を1時間30分実施した。この工程の結果、熱酸化膜357が200オン
グストロームの厚さに成膜された。
この工程は、前記のとおり、珪素の結晶化のために初期の段階で意図的に導入したニッ
ケル元素を島状のパターンに形成された結晶性珪素膜356中から除去するための工程で
ある。この加熱処理は、前述の結晶化を行うために行った加熱処理よりも高い温度で行う
。これは、ニッケル元素のゲッタリングを効果的に行うために重要な条件である。なお、
結晶化を行うために実施した加熱処理温度と同等又はそれ以下の温度でも行えるが、効果
が少ない。そしてこれらの点は、その他の珪素の結晶化を助長する金属元素を用いた場合
についても同じである。
熱酸化膜357が形成されることで、島状のパターンに形成された結晶性珪素膜356
の膜厚は約100オングストローム程薄くなる。このゲッタリングにおいては、結晶性珪
素膜中に存在する酸素が重要な役割を果たす。即ち、酸素とニッケルが結合することによ
って形成される酸化ニッケルに、塩素元素が作用する形でニッケル元素のゲッタリングが
進行する。
前述したように、酸素は、その濃度が多過ぎると、図45(B)に示す結晶化工程にお
いて、非晶質珪素膜353の結晶化を阻害する要素となる。しかし、上述のように、その
存在はニッケルのゲッタリング過程においては重要な役割を果たす。従って、出発膜とな
る非晶質珪素膜中に存在する酸素濃度の制御は重要である。また、上記の工程においては
、形成される酸化膜中にニッケル元素がゲッタリングされるので、酸化膜中におけるニッ
ケル濃度が、他の領域に比較して、当然高くなっている。
また、結晶性珪素膜356と熱酸化膜357との界面の熱酸化膜357側近傍において
、ニッケル元素が高くなる傾向が観察された。これは、ゲッタリングが主に行われる領域
が、結晶性珪素膜と酸化膜との界面近傍の酸化膜側であることが要因であると考えられる
。また、両者の界面近傍においてゲッタリングが進行するのは、界面近傍の応力や結晶欠
陥の存在が要因であると考えられる。
本実施例においては、ハロゲン元素として塩素(Cl)を用いた例を示し、またその導
入方法としてHClを用いた例を示した。しかし、HCl以外のガスとしては、HF、H
Br、Cl2 、F2 、Br2 から選ばれた一種又はそれらの複数種類の混合ガスを用いる
ことができる。また一般にハロゲンの水素化物を用いることができる。これらのガスは、
雰囲気中での含有量(体積含有量)をHFであれば0.25〜5%、HBrであれば1〜
15%、Cl2 であれば0.25〜5%、F2であれば0.125〜2.5%、Br2であ
れば0.5〜10%とすることが好ましい。
上記の範囲を下回る濃度とすると、有意な効果が得られなくなり、また上記の範囲を超
える濃度とすると、珪素膜の表面が荒れてしまう。次いで、上記のようにハロゲン元素を
含んだ酸化性雰囲気中での加熱処理によって熱酸化膜を形成した後、このニッケルを高濃
度に含んだ熱酸化膜357を除去した。この熱酸化膜357の除去はバッファーフッ酸(
その他フッ酸系のエッチャント)を用いたウェットエッチングやドライエッチングを用い
て行うが、本実施例ではバッファーフッ酸によるウェットエッチングを用いた。
こうして、図45(E)に示すように、含有ニッケル濃度を低減させた結晶性珪素膜か
らなる島状のパターン356を得ることができた。ここで、得られた結晶性珪素膜356
の表面近傍にはニッケル元素が比較的高濃度に含まれるので、上記の酸化膜357のエッ
チングをさらに進めて、結晶性珪素膜356の表面を少しオーバーエッチングすることは
有効である。
また、熱酸化膜357を除去した後に、レーザー光又は強光を照射して、結晶性珪素膜
356の結晶性をさらに助長することは有効である。即ち、ニッケル元素のゲッタリング
が行われた後に、レーザー光の照射や強光の照射を行うことは有効である。使用するレー
ザー光としてはKrFエキシマレーザー(波長248nm)、XeClエキシマレーザー
(波長308nm)、或いはその他の種類のエキシマレーザーを用いることができる。ま
た、強光としては、例えば紫外線や赤外線の照射で行える。
また、図45(E)に示す状態を得た後、再度の加熱処理により、図示しない熱酸化膜
を形成することは有効である。この熱酸化膜は、後に薄膜トランジスタを構成する際に、
ゲイト絶縁膜の一部又はゲイト絶縁膜として機能する。熱酸化膜は、結晶性珪素からなる
活性層との界面特性を良好にできるので、ゲイト絶縁膜を構成するものとしては最適なも
のとなる。
《実施例51》
本実施例51は、実施例50に示す構成において、珪素の結晶化を助長する金属元素と
して、Cuを用いた場合の例である。この場合、Cuを導入するための溶液として、酢酸
第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕や塩化第2銅(CuCl2 2H2O) 等を用いればよ
い。本実施例において酢酸第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕を用い、その他の工程は実
施例50と同様にして図45(E)に示す状態を得た。
《実施例52》
本実施例52は、実施例50とは異なる形態の結晶成長を行わせた例である。本実施例
は、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して、横成長と呼ばれる基板に平行な方向へ
の結晶成長を行わせる方法に関する。
図46に本実施例の作製工程を示す。まず、石英基板358上に、下地膜359として
酸化窒化珪素膜を3000オングストロームの厚さに成膜した。次に結晶性珪素膜の出発
膜となる非晶質珪素膜360を減圧熱CVD法によって、2000オングストロームの厚
さに成膜した。なお、減圧熱CVD法の代わりにプラズマCVD法を用いてもよい。
次に、図示しない酸化珪素膜を1500オングストロームの厚さに成膜し、それをパタ
ーニングすることにより、符号361で示されるマスクを形成した。該マスクには符号3
62で示される領域に開口が形成されている。この開口362が形成されている領域にお
いては、非晶質珪素膜360が露呈している。開口362は、図面の奥行から手前側方向
への長手方向に細長い長方形を有している。この開口362の幅は20μm以上とするの
が適当であり、またその長手方向の長さは必要とする長さでもって形成すればよい。ここ
では幅を20μm、長さを1cmとした。
次いで、マスク361及び開口362に、重量換算で10ppmのニッケル元素を含ん
だ酢酸ニッケル水溶液を塗布した後、図示しないスピナーを用いてスピンドライを実施し
て余分な溶液を除去した。こうして、図46(A)中の点線363で示されるように、ニ
ッケル元素が非晶質珪素膜360の露呈した表面に接して保持された状態が実現される。
次に、水素を2容量%含有した極力酸素を含まない窒素雰囲気中において、温度800
℃、4時間の加熱処理を行った。すると、図46(B)の364で示されるように、基板
358に平行な方向への結晶成長が進行した。この結晶成長はニッケル元素が導入された
開口362の領域から周囲に向かって進行している。このような基板に平行な方向への結
晶成長を、本明細書中、横成長又はラテラル成長と指称する。
本実施例に示すような条件においては、この横成長を100μm以上にわたって行わせ
ることができる。こうして横成長した領域を有する珪素膜を得た。なお開口362が形成
されている領域においては、珪素膜の表面から下地界面に向かって縦成長とよばれる垂直
方向への結晶成長が進行している。
次いで、マスク361を除去した後、さらにパターニングを施すことにより、図46(
C)に示したように、基板に平行な方向に結晶成長した(即ち、横成長した)結晶性珪素
膜からなる島状のパターン366を形成した。その後、酸素を10容量%、さらに酸素に
対して3容量%のHClを含んだ窒素雰囲気中において、温度950℃、1時間30分の
加熱処理を実施した。
この結果、符号367で示される熱酸化膜が200オングストロームの厚さに成膜され
た。図46(D)はこの状態を示している。この工程において、ニッケル元素を膜中に高
濃度に含んだ(即ち、ニッケル元素をゲッタリングした)酸化膜367が形成され、これ
により、珪素膜367中のニッケル元素の濃度が相対的に減少した。
従って、この熱酸化膜367中には、その成膜に従ってゲッタリングされたニッケル元
素が高濃度に含まれる。また熱酸化膜367が成膜されることにより、結晶性珪素膜36
6は500オングストローム程度の膜厚となる。次に、ニッケル元素を高い濃度で含んだ
熱酸化膜367を除去した。こうして、図46(E)に示す状態を得た。
この状態においては、活性層(島状に形成された結晶性珪素膜)366中において、ニ
ッケル元素が結晶性珪素膜の表面に向かって濃度が高くなっている濃度分布を有している
が、この状態は、熱酸化膜367の形成の際に、この熱酸化膜367中にニッケル元素が
ゲッタリングされて行ったことに起因している。従って、この熱酸化膜367を除去した
後に、さらに結晶性珪素膜の表面をエッチングし、ニッケル元素の濃度が高い領域を除去
することは有用である。
このようにして得られた、横成長領域からなるパターン366中に残留するニッケル元
素の濃度は、実施例50で示した場合に比較して、さらに低いものとすることができる。
これは、横成長領域中に含まれる金属元素の濃度がそもそも低いことにも起因する。こう
して、横成長領域からなるパターン366中のニッケル元素の濃度を1017cm-3以下の
オーダーにすることが容易に可能である。
また、本実施例のように横成長領域を利用して薄膜トランジスタを形成した場合には、
実施例50に示したような縦成長(実施例50の場合には、全面が縦成長する)領域を利
用した場合に比較して、より高移動度を有する半導体装置を得ることができる。図46(
E)に示す状態を得た後、さらに活性層366の表面に熱酸化膜(図示せず)を成膜した
。この熱酸化膜の成膜は、950℃の酸素雰囲気中で30分の加熱処理を行うことによっ
て、500オングストロームの厚さに成膜することができた。
勿論、上記熱酸化膜の膜厚は、加熱時間や加熱温度、さらに雰囲気中の酸素濃度を制御
することによって、所望、所定の値とすることができる。この後、例えば薄膜トランジス
タを作製する場合には、この熱酸化膜を覆って、さらにプラズマCVD法等で酸化珪素膜
を成膜し、上記熱酸化膜と合わせてゲイト絶縁膜を形成することができる。また、熱酸化
膜を所望、所定の膜厚とし、そのままゲイト絶縁膜としてもよい。
《実施例53》
本実施例53は、本発明に係る結晶性珪素膜を利用して、アクティブマトリクス型の液
晶表示装置やアクティブマトリクス型のEL表示装置の画素領域に配置される薄膜トラン
ジスタを作製した例である。図47は、本実施例における作製工程を示す図である。
まず、実施例50及び実施例52に示した工程により、それぞれ、ガラス基板上に活性
層の形状にパターニングされた島状の半導体層(結晶性珪素膜からなる層)を形成した。
以下の工程は、両者共同じである。図47(A)に示す状態において、369がガラス基
板、370が下地膜、371が結晶性珪素膜で構成された活性層である。
次に、熱酸化膜368を形成する前に、酸素と水素を混合した減圧雰囲気でのプラズマ
処理を施した。このプラズマは高周波放電によって生成させた。このプラズマ処理によっ
て、活性層371の露呈した表面に存在している有機物を除去した。正確には、酸素プラ
ズマによって活性層の表面に吸着している有機物が酸化され、さらに水素プラズマによっ
てこの酸化した有機物が還元気化される。
こうして活性層371の露呈した表面に存在する有機物が除去される。この有機物の除
去は、活性層371の表面における固定電荷の存在を抑制する上で非常に効果がある。有
機物の存在に起因する固定電荷は、デバイスの動作を阻害したり、特性の不安定性の要因
となるものであり、その存在を少なくすることは非常に有用である。次いで、熱酸化法に
より、その表面に200オングストロームの熱酸化膜368を形成し、図47(A)に示
す状態を得た。
その後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜372を1000オングストロームの
厚さに成膜した。成膜方法としては、酸素とシランとN2O との混合ガスを用いたプラズ
マCVD法やTEOSとN2O との混合ガスを用いたプラズマCVD法などが用い得るが
、ここではTEOSとN2O との混合ガスを用いた。この酸化窒化珪素膜372は熱酸化
膜368と合わせてゲイト絶縁膜として機能する。
ゲイト絶縁膜中に金属元素が進入(侵入)すると、絶縁膜としての機能が低下し、薄膜
トランシスタの特性の不安定性やバラツキの原因となるが、それらを防ぐ上で、該酸化窒
化珪素膜中にハロゲン元素を含有させることは有効である。即ち、ハロゲン元素の作用に
よりニッケル元素を固定化することで、活性層中に存在するニッケル元素の影響で、ゲイ
ト絶縁膜の絶縁膜としての機能が低下してしまうことを防ぐことができる。また、酸化窒
化珪素膜とすることは、その緻密な膜質から、ゲイト絶縁膜中に金属元素が進入しにくく
なるという有意性がある。なお、ゲイト絶縁膜としては、通常利用されている酸化珪素膜
を用いることもできる。
ゲイト絶縁膜として機能する酸化窒化珪素膜372を成膜した後、後にゲイト電極とし
て機能する、図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜した。このアルミニウム膜中
には、スカンジウムを0.2重量%含有させた。アルミニウム膜中にスカンジウムを含有
させるのは、後の工程において、ヒロックやウィスカーが発生することを抑制するためで
ある。ここでヒロックやウィスカーとは、加熱が行われることによって、アルミニウムの
異常成長が発生し、針状或いは刺状の突起部が形成されてしまうことを意味する。
上記アルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極
酸化膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として行った。
即ち、この電解溶液中において、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行
うことで、アルミニウム膜の表面に緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。この図
示しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度とした。こ
の陽極酸化膜は、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有してい
る。なお、この陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧によって制御することができ
る。
次に、レジストマスク374を形成し、そしてアルミニウム膜を373で示されるパタ
ーンにパターニングした。こうして図47(B)に示す状態を得た。次いで再度の陽極酸
化を行った。ここでは、3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解溶
液中において、アルミニウムのパターン373を陽極とした陽極酸化を行うことにより、
符号376で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成される。
この工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク374が存在する関係で、ア
ルミニウムパターンの側面に選択的に陽極酸化膜376が形成される。この陽極酸化膜は
、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここでは、その膜厚を6000オング
ストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化の時間によって制御することができ
る。
次いでレジストマスク306を除去した後、さらに、再度の緻密な陽極酸化膜の形成を
行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液と
して用いた陽極酸化を再び実施した。すると、多孔質状の陽極酸化膜376中に電解溶液
が進入する関係から、符号377で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成
される。
この緻密な陽極酸化膜377の膜厚は1000オングストロームとした。この膜厚の制
御は印加電圧によって行った。ここで、露呈した酸化窒化珪素膜372と熱酸化膜368
をエッチングした。このエッチングはドライエッチングを利用した。次いで、酢酸と硝酸
とリン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜376を除去した。こうして図
47(D)に示す状態を得た。
その後、不純物イオンの注入を行ったが、ここではNチャネル型の薄膜トランジスタを
作製するためにP(リン)イオンの注入をプラズマドーピング法によって実施した。この
工程においては、ヘビードープがされる379と383の領域と、ライトドープがされる
380と382の領域が形成される。これは、残存した酸化珪素膜378の一部が半透過
なマスクとして機能し、注入されたイオンの一部がそこで遮蔽されるからである。
次いで、紫外線の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性化を行
った。紫外線に代えて赤外線又はレーザー光を用いることもできる。こうしてソース領域
379、チャネル形成領域381、ドレイン領域383、低濃度不純物領域380と38
2が自己整合的に形成された。ここで、符号382で示されるのが、LDD(ライトドー
プドレイン)領域と称される領域である。
なお、緻密な陽極酸化膜377の膜厚を2000オングストローム以上というように厚
くした場合、その膜厚でもってチャネル形成領域381の外側にオフセットゲイト領域を
形成することができる。本実施例においてもオフセットゲイト領域は形成されているが、
その寸法が小さいのでその存在による寄与が小さく、また図面が煩雑になるので図中には
記載していない。
次に、層間絶縁膜384として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成するが、ここでは酸化珪素膜を形成した。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜又は窒化
珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。そしてコンタクトホールの形
成を行い、ソース電極385とドレイン電極386の形成を行った。こうして図47(E
)に示す薄膜トランジスタを完成させた。
《実施例54》
本実施例54は、実施例53(図47)に示すのとは異なる工程で薄膜トランジスタを
作製した例である。図48に本実施例の作製工程を示す。まず、実施例50又は実施例5
2に示した工程により、それぞれ、ガラス基板上に結晶性珪素膜を形成した。次に、それ
らをパターニングし、さらに酸素と水素の混合減圧雰囲気中においてプラズマ処理を行っ
た。以下の工程は、両者共同じである。
次いで、熱酸化膜387を200オングストロームの厚さに成膜し、図48(A)に示
す状態を得た。この熱酸化膜387の成膜は、温度950℃の酸素雰囲気中において30
分の加熱処理を施すことによって実施した。図48(A)に示す状態において、符号38
8で示す部分がガラス基板、389が下地膜、390が結晶性珪素膜で構成された活性層
である。なお、熱酸化膜387はゲッタリングのための熱酸化膜の除去後に、再度形成さ
れた熱酸化膜である。
図48(A)に示す状態を得た後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化窒化珪素膜391を1
000オングストロームの厚さに成膜した。この成膜は酸素とシランとN2O との混合ガ
スを用いたプラズマCVD法により実施した。これに代えてTEOSとN2O との混合ガ
スを用いたプラズマCVD法を用いることもできる。酸化窒化珪素膜391は、熱酸化膜
387とともにゲイト絶縁膜を構成する。なお、酸化窒化珪素膜のほかに、酸化珪素膜を
用いることもできる。
次いで、後にゲイト電極として機能する図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜
した。このアルミニウム膜中には、スカンジウムを0.2重量%含有させた。その後、図
示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化膜は、3重量%の酒石酸を含んだエ
チレングルコール溶液を電解溶液として実施した。即ち、この電解溶液中において、アル
ミニウム膜を陽極、白金を陰極として陽極酸化を行うことにより、アルミニウム膜の表面
に緻密な膜質を有する陽極酸化膜を形成させた。
上記図示しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度と
した。この陽極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を
有している。なお、この陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧によって制御するこ
とができる。次に、レジストマスク392を形成し、そしてアルミニウム膜を符号393
で示されるパターンにパターニングした。
次いで、再度の陽極酸化を行ったが、ここでは3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液と
して用いた。この電解溶液中において、アルミニウムのパターン393を陽極とした陽極
酸化を行うことにより、符号394で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成される。この
工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク392が存在する関係で、アルミニ
ウムパターン393の側面に選択的に陽極酸化膜394が形成される。
上記陽極酸化膜は、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここではその膜厚
を6000オングストロームとした。なお、その成長距離は陽極酸化時間によって制御す
ることができる。次いでレジストマスク392を除去した後、さらに再度の緻密な陽極酸
化膜の形成を行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液
を電解溶液として用いた陽極酸化を再び実施した。すると、多孔質状の陽極酸化膜394
中に電解溶液が進入する関係から、符号395で示されるように緻密な膜質を有する陽極
酸化膜が形成された。
次に、最初の不純物イオンの注入を行った。この不純物イオンの注入によってソース領
域396とドレイン領域398が形成される。なお、符号397の領域には不純物イオン
は注入されない。次に、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸液を用いて多孔質状の陽極
酸化膜394を除去した。こうして図48(D)に示す状態を得た。その後、再度不純物
イオンの注入を行った。この不純物イオンは最初の不純物イオンの注入条件よりライトド
ーピングの条件で実施した。
上記の工程によって、符号399及び400で示すライトドープ領域が形成された。そ
して、符号401で示される領域がチャネル形成領域となる。次いで、レーザー光又は強
光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性化を行うが、ここでは
レーザー光を照射して実施した。こうしてソース領域396、チャネル形成領域401、
ドレイン領域398、低濃度不純物領域399と400が自己整合的に形成された。ここ
で、符号400で示されるのが、LDD(ライトドープドレイン)領域と称される領域で
ある。
次に、層間絶縁膜402として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成するが、ここでは窒化珪素膜を形成した。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜又は窒化
珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成して構成してもよい。次いでコンタクトホールの形
成を行い、ソース電極403とドレイン電極404の形成を行った。こうして図48(E
)に示す薄膜トランジスタを完成させた。
《実施例55》
本実施例55は、Nチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタ
とを相補型に構成した例である。本実施例に示す構成は、例えば絶縁表面上に集積化され
た各種薄膜集積回路に利用することができる。また、例えばアクティブマトリクス型の液
晶表示装置の周辺駆動回路に利用することができる。図49は本実施例の作製工程を示す
図である。
まず、図49(A)に示すように、ガラス基板406上に、下地膜407として酸化珪
素膜、或いは酸化窒化珪素膜を成膜する。好ましくは酸化窒化珪素膜を使用するが、ここ
では酸化窒化珪素膜を成膜した。次いで、図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法に
より成膜した。これに代えて減圧熱CVD法を用いてもよい。さらに、実施例50に示し
た方法により、この非晶質珪素膜を結晶性珪素膜に変成した。
次いで、酸素と水素の混合雰囲気中においてプラズマ処理を行った後、得られた結晶性
珪素膜をパターニングして、活性層408と409を形成した。こうして図49(A)に
示す状態を得た。なお、ここでは、活性層の側面を移動するキャリアの影響を抑制するた
めに、図49(A)に示した状態において、HClを3容量%含んだ窒素雰囲気中で温度
650℃、10時間の加熱処理を行った。
活性層408、409の側面に金属元素の存在によるトラップ準位が存在すると、OF
F電流特性の悪化を招くので、上記のような処理を行い、活性層の側面における準位の密
度を低下させておくことは有用である。次に、ゲイト絶縁膜を構成する熱酸化膜405と
酸化窒化珪素膜410を成膜した。ここで、基板として石英を用いる場合には、前述の熱
酸化法による熱酸化膜のみによってゲイト絶縁膜を構成することが望ましい。
次いで、後にゲイト電極を構成するための図示しないアルミニウム膜を4000オング
ストロームの厚さに成膜した。アルミニウム膜以外の金属としては、陽極酸化可能な金属
(例えばタンタル)を利用することができる。アルミニウム膜を形成した後、前述した方
法により、その表面に極薄い緻密な陽極酸化膜を形成した。次に、アルミニウム膜上に図
示しないレジストマスクを配置し、アルミニウム膜のパターニングを行った。そして、得
られたアルミニウムパターンを陽極として陽極酸化を行い、多孔質状の陽極酸化膜413
と414を形成した。この多孔質状の陽極酸化膜の膜厚は5000オングストロームとし
た。
さらに、再度緻密な陽極酸化膜を形成する条件で陽極酸化を行い、緻密な陽極酸化膜4
15と416を形成した。ここで緻密な陽極酸化膜415と416の膜厚は800オング
ストロームとした。こうして図49(B)に示す状態を得た。さらに露呈した酸化珪素膜
410と熱酸化膜405をドライエッチングによって除去し、図49(C)に示す状態を
得た。その後、酢酸と硝酸とリン酸を混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜413
と414を除去した。こうして図49(D)に示す状態を得た。
ここで、交互にレジストマスクを配置して、左側の薄膜トランジスタにP(リン)イオ
ンが、右側の薄膜トランジスタにB(ホウ素)イオンが注入されるようにした。この不純
物イオン(Pイオン)の注入によって、高濃度のN型を有するソース領域419とドレイ
ン領域422が自己整合的に形成された。また、低濃度にPイオンがドープされた弱いN
型を有する領域420が同時に形成され、同時に、チャネル形成領域421が形成された
符号420で示される弱いN型を有する領域が形成されるのは、残存したゲイト絶縁膜
417が存在するからである。即ち、ゲイト絶縁膜417を透過したPイオンがゲイト絶
縁膜417によって一部遮蔽されるからである。また同様な原理、手法により、強いP型
を有するソース領域426とドレイン領域423が自己整合的に形成される。また、低濃
度不純物領域425が同時に形成され、同時にチャネル形成領域424が形成される。
なお、緻密な陽極酸化膜415と416の膜厚が2000オングストロームというよう
に厚い場合には、その厚さでチャネル形成領域に接してオフセットゲイト領域を形成する
ことができる。本実施例の場合は、緻密な陽極酸化膜415と416の膜厚が1000オ
ングストローム以下と薄いので、その存在は無視することができる。次いで、レーザー光
の照射を行い、不純物イオンが注入された領域のアニールを行った。なおレーザー光に代
えて強光を用ることもできる。
次いで、図49(E)に示すように、層間絶縁膜として窒化珪素膜427と酸化珪素膜
428を成膜した。膜の厚さはそれぞれ1000オングストロームとした。なお、酸化珪
素膜428は成膜しなくてもよい。こうして窒化珪素膜によって、薄膜トランジスタが覆
われることになる。窒化珪素膜は緻密であり、また界面特性がよいので、このような構成
とすることにより、薄膜トランジスタの信頼性を高めることができる。
さらに、樹脂材料からなる層間絶縁膜429をスピンコート法を用いて形成した。層間
絶縁膜429の厚さは、ここでは1μmとした。そしてコンタクトホールの形成を行い、
左側のNチャネル型の薄膜トランジスタのソース電極430とドレイン電極431を形成
すると同時に、右側の薄膜トランジスタのソース電極432とドレイン電極431を形成
した。ここで、ドレイン電極431は共通に配置されたものとなる。こうして図49(F
)に示すNチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタとを相補型
に構成した薄膜トランジスタを完成させた。
以上のようにして、相補型に構成されたCMOS構造を有する薄膜トランジスタ回路を
構成することができる。本実施例に示す構成においては、薄膜トランジスタを窒化珪素膜
で覆い、さらに樹脂材料によって覆った構成が得られる。この構成により可動イオンや水
分が侵入しにくい耐久性の高いものとすることができる。また、さらに多層配線を形成し
たような場合に、薄膜トランジスタと配線との間に容量が形成されてしまうことを防ぐこ
とができる。
《実施例56》
本実施例56は、実施例50に示す工程において、下地膜の表面に直接ニッケル元素を
導入した例である。この場合には、ニッケル元素は非晶質珪素膜の下面に接して保持され
ることになる。この場合は、下地膜の形成後にニッケル元素の導入を行い、まず下地膜の
表面にニッケル元素(当該金属元素)が接して保持された状態とする。
本実施例では、下地膜の表面に、酢酸ニッケル塩の水溶液を塗布することで、直接ニッ
ケル元素を導入し、その他の工程については実施例50と同様にして、図45(E)に示
すように、含有ニッケル濃度を低減した結晶性珪素膜からなる島状のパターン356を得
た。ニッケル元素の導入方法としては、溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法やCVD
法、また吸着法等を用いることができる。
《実施例57》
本実施例57は、前記各実施例に対応する図45(E)の状態、図46(E)の状態、
図47(A)の状態及び図48(A)の状態において、レーザー光の照射を行うことによ
り、得られた結晶性珪素膜からなる島状のパターンの結晶性を向上させた例である。本実
施例では、それらそれぞれの状態でレーザー光の照射を行い、結晶性珪素膜からなる島状
のパターンの結晶性を向上させた。
上記各図45(E)、図46(E)、図47(A)、図48(A)の状態において、レ
ーザー光を照射する場合には、パターニング前の膜全体に対してアニールを施す場合に比
較して、比較的低い照射エネルギー密度でもって、所定のアニール効果を得ることができ
る。これは、小さい面積の箇所にレーザーエネルギーが照射されるので、アニールに利用
されるエネルギー効率が高まるためであると考えられる。
《実施例58》
本実施例58は、ガラス基板上にニッケル元素を利用して結晶性珪素膜を得た例である
。本実施例では、まずニッケル元素の作用により高い結晶性を有する結晶性珪素膜を得た
。そしてレーザー光の照射を行った。このレーザー光の照射を行うことで、膜の結晶性を
高めるとともに、局所的に集中して存在しているニッケル元素を膜中に拡散させる。即ち
ニッケルの固まりを減少又は消滅させた。
次いで、F(フッ素)を含んだ酸化膜を熱酸化法によって、この結晶性珪素膜上に形成
した。この時、得られた結晶性珪素膜中に残存したニッケル元素がF元素の作用により熱
酸化膜中にゲッタリングされる。この場合、ニッケル元素が先のレーザー光の照射によっ
て分散して存在しているので、効果的にゲッタリングが進行する。さらに上記のようにゲ
ッタリングして高濃度にニッケル元素を含有した熱酸化膜を除去した。このようにするこ
とにより、ガラス基板上に高い結晶性を有していながら、かつニッケル元素濃度の低い結
晶性珪素膜を得た。
図50は本実施例の作製工程を示す図である。まずコーニング1737ガラス基板(歪
点667℃)433上に、下地膜として酸化珪素膜434を3000オングストロームの
厚さに成膜した。この成膜にはスパッタ法を使用した。酸化珪素膜434は、後の工程に
おいて、ガラス基板中からの不純物の拡散を防ぐ機能を有する。またガラス基板と後に成
膜される珪素膜との間に働く応力を緩和する機能を有する。
下地膜434中にハロゲン元素を微量に含有させておくことは有効である。このように
すると、後の工程において、半導体層中に存在する珪素の結晶化を助長する金属元素を、
ハロゲン元素によって、下地膜中にゲッタリングすることができる。また、下地膜の成膜
後に水素プラズマ処理を加えることは有効である。これは、下地膜の表面に存在する炭化
物を除去し、後に形成される珪素膜との界面に固定電荷の準位が存在することを抑制する
効果があるからである。水素プラズマ処理に代わる方法として、酸素と水素とを混合した
雰囲気でのプラズマ処理を行うことも有効である。
次に、後に結晶性珪素膜となる非晶質珪素膜435を500オングストロームの厚さに
減圧熱CVD法で成膜した。減圧熱CVD法を用いたのは、その方が後に得られる結晶性
珪素膜の膜質が優れているからであり、具体的には、膜質が緻密であるからである。なお
、減圧熱CVD法以外の方法としては、プラズマCVD法を用いることができる。ここで
作製する非晶質珪素膜は、膜中の酸素濃度が5×1017cm-3〜2×1019cm-3である
ことが望ましい。
これは、後の金属元素(珪素の結晶化を助長する金属元素)をゲッタリングする工程(
本実施例の場合はニッケルのゲッタリング工程)において、酸素が重要な役割を果たすか
らである。ただし、酸素濃度が上記濃度範囲より高い場合は、非晶質珪素膜の結晶化が阻
害されるので注意が必要である。また、酸素濃度が上記濃度範囲より低い場合には、金属
元素のゲッタリング作用への寄与が小さくなる。また他の不純物濃度、例えば窒素や炭素
の不純物濃度は極力低い方がよい。これらは、具体的には2×1019cm-3以下の濃度と
することが好ましい。
この非晶質珪素膜の膜厚の上限は2000オングストローム程度である。これは、後の
レーザー光の照射による効果を得るには、あまり厚い膜であることが不利であるからであ
る。厚い膜が不利であるのは、珪素膜に照射されるレーザー光の殆んどは膜の表面におい
て吸収されてしまうことに原因がある。なお、非晶質珪素膜435の膜厚の下限は、成膜
方法の如何にもよるが、実用的には200オングストローム程度である。それ以下の膜厚
の場合、その膜厚の均一性に問題が出る。
次に、非晶質珪素膜435を結晶化させるための金属元素を導入した。ここでは、珪素
の結晶化を助長する金属元素としてニッケル元素を利用し、ニッケル元素の導入方法とし
て、溶液を用いる方法を利用した。ここでは、10ppm(重量)のニッケルを含んだニ
ッケル酢酸塩水溶液を非晶質珪素膜435の表面に塗布することでニッケル元素を導入し
た。ニッケル元素の導入方法としては、上記の溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法や
CVD法、さらにはプラズマ処理や吸着法を用いることができる。このうち溶液を用いる
方法は、簡便であり、また金属元素の濃度調整が簡単であるという点で有用である。
ニッケル酢酸塩水溶液を塗布することにより、図50(A)の436で示されるニッケ
ル酢酸塩水溶液の水膜が形成された。この状態を得た後、図示しないスピナーを用いて余
分な溶液を吹き飛ばした。このようにして、ニッケル元素が非晶質珪素膜435の表面に
接して保持された状態とした。非晶質珪素膜435に導入されるニッケル元素の量は、水
膜436の保持時間や、スピナーを用いたその除去条件によっても調整することができる
なお、後の加熱工程における不純物の残留を考慮すると、酢酸ニッケル塩水溶液を用い
る代わりに、例えば硫酸ニッケル等を用いることが好ましい。これは、酢酸ニッケル塩溶
液は炭素を含んでおり、これが後の加熱工程において炭化して膜中、あるいは膜の表面に
炭素成分が残留することが懸念されるからである。
次いで、図50(B)に示す状態において、加熱処理を行い、非晶質珪素膜435を結
晶化させ、結晶性珪素膜437を得た。ここでは水素を3容量%含んだ640℃の窒素雰
囲気中において加熱処理を行い、加熱時間は4時間とした。加熱処理の温度は500〜7
00℃の範囲の温度で行えるが、ガラス基板の歪点以下の温度で行うことが好ましい。本
実施例で用いているコーニング1737ガラス基板の歪点は667℃であることから、そ
の上限は余裕を見て650℃程度とすることが好ましい。
上記の加熱処理による結晶化工程において、雰囲気を還元雰囲気とするのは加熱処理工
程中において、酸化物が形成されてしまうことを防止するためである。具体的には、ニッ
ケルと酸素とが反応して、NiOX が膜の表面や膜中に形成されてしまうことを抑制する
ためである。酸素は、後のゲッタリング工程においてニッケルと結合して、ニッケルのゲ
ッタリングに多大な貢献をすることとなる。しかし、この結晶化の段階で酸素とニッケル
とが結合することは、結晶化を阻害するものであることが判明している。従って、この加
熱による結晶化の工程においては、酸化物の形成を極力抑制することが重要となる。
また、上記の結晶化のための加熱処理を行う雰囲気中の酸素濃度は、ppmオーダー、
好ましくは1ppm以下とすることが必要である。上記の結晶化のための加熱処理を行う
雰囲気の殆んどを占める気体としては、窒素以外にアルゴン等の不活性ガス、或いはこれ
らの混合ガスを利用することができる。上記の加熱処理による結晶化工程の後においては
、ニッケル元素がある程度の固まりとして残存している。このことは、TEM(透過型電
子顕微鏡)による観察から確認された。このニッケルがある程度の固まりで存在している
という事実の原因は明らかではないが、何らかの結晶化のメカニズムと関係しているもの
と考えられる。
次に、図50C)に示すようにレーザー光の照射を行った。ここではKrFエキシマレ
ーザー(波長248nm)を用い、レーザー光のビーム形状を線状としたものを走査しな
がら照射する方法を採用した。このレーザー光の照射を行うことで、前述の加熱処理によ
る結晶化の結果、局所的に集中していたニッケル元素がある程度膜437中に分散する。
即ち、ニッケル元素の固まりを消滅又は減少させ、ニッケル元素を分散させることができ
る。上記レーザー光としては、XeClエキシマレーザー(波長308nm)やその他の
種類のエキシマレーザーを用いることもできる。またレーザー光ではなく、例えば紫外線
や赤外線の照射を行う構成としてもよい。
次に、図50(D)に示す工程において再度の加熱処理を行った。この加熱処理はニッ
ケル元素をゲッタリングするための熱酸化膜を形成するための処理であり、ここでは雰囲
気を水素を3容量%、ClF3 を100ppm(容量)含んだ酸素雰囲気とし、この雰囲
気中で温度640℃の加熱処理を行った。この工程においては、200オングストローム
の厚さに熱酸化膜を形成した。
この工程は、結晶化のために初期の段階で意図的に混入させたニッケル元素を結晶性珪
素膜437中から除去するための工程である。この加熱処理は、基板が普通のガラス基板
の場合には、500〜700℃程度の温度範囲で行われる。この加熱処理温度の上限は、
使用するガラス基板の歪点によって制限され、使用するガラス基板の歪点以上の温度で加
熱処理を行うと、基板が変形するので注意が必要である。
この工程において、前述のレーザー光の照射によって分散されたニッケル元素が、形成
される酸化膜438中にゲッタリングされて行く。このため酸化膜438中におけるニッ
ケル濃度が他の領域に比較して当然高くなる。また、結晶性珪素膜437の熱酸化膜43
8との界面近傍においてニッケル元素が高くなる傾向が観察された。これは、ゲッタリン
グが主に行われる領域が、珪素膜と酸化膜との界面近傍の酸化膜側であることが要因であ
ると考えられる。
また、界面近傍においてゲッタリングが進行するのは、界面近傍の応力や欠陥の存在が
要因であると考えられる。また、珪素膜437と熱酸化膜438との界面近傍においてフ
ッ素及び塩素の濃度が高くなる傾向が観察された。このようにして得られた結晶性珪素膜
は、珪素の結晶化を助長する金属元素が1×1016cm-3〜5×1018cm-3の濃度で含
まれ、フッ素原子が1×1015cm-3〜1×1020cm-3の濃度で含まれ、水素原子が1
×1017cm-3〜1×1021cm-3
濃度で含まれたものとなる。
図50(D)に示す熱酸化膜438の形成が終了した後、ニッケルを高濃度に含んだ該
酸化膜438を除去した。この酸化膜438の除去はバッファーフッ酸(その他フッ酸系
のエッチャント)を用いたウェットエッチングやドライエッチングを用いて行えるが、こ
こではバッファーフッ酸によるウェットエッチングを行った。こうして、図50(E)に
示すように、含有ニッケル濃度が低減した結晶性珪素膜439が得られた。
得られた結晶性珪素膜439の表面近傍には、比較的ニッケル元素が高濃度に含まれる
ので、上記の酸化膜438のエッチングをさらに進めて、結晶性珪素膜439の表面を少
しオーバーエッチングすることは有効である。また、熱酸化膜438を除去した後に、再
びレーザー光を照射して、得られた結晶性珪素膜439の結晶性をさらに助長することは
有効である。
《実施例59》
本実施例59は、実施例58に示す構成において、珪素の結晶化を助長する金属元素と
して、Cuを用いた場合の例である。この場合、Cuを導入するための溶液として、酢酸
第2銅〔Cu(CH3 COO)2 〕や塩化第2銅(CuCl2 2H2O)等が用いられる
が、ここでは塩化第2銅(CuCl2 2H2O)水溶液を用いた。他の工程は、実施例5
8に示す工程と同じとし、図50(E)の状態を得た。
《実施例60》
本実施例60は、実施例58とは異なる形態の結晶成長を行わせた例である。本実施例
は、珪素の結晶化を助長する金属元素を利用して、横成長と呼ばれる基板に平行な方向へ
の結晶成長を行わせる方法に関する。図51に本実施例の作製工程を示す。
まず、コーニング1737ガラス基板440上に、下地膜441として酸化珪素膜を3
000オングストロームの厚さに成膜した。次に結晶性珪素膜の出発膜となる非晶質珪素
膜442を減圧熱CVD法によって600オングストロームの厚さに成膜した。この非晶
質珪素膜の厚さは、前述したように2000オングストローム以下とすることが好ましい
。上記基板としては石英基板等の他の基板を用いてもよい。
次に、図示しない酸化珪素膜を1500オングストロームの厚さに成膜し、それをパタ
ーニングすることにより、符号443で示されるマスクを形成した。このマスクは符号4
44で示される領域に開口が形成されている。この開口444が形成されている領域にお
いては、非晶質珪素膜442が露呈している。開口444は、図面の奥行から手前方向に
長手方向の細長い長方形を有している。この開口444の幅は20μm以上とするのが適
当であり、その長手方向の長さは必要とする長さでもって形成すればよい。本実施例では
、その幅を50μm、長さを8cmとした。
そして、実施例58で示したと同じく、重量換算で10ppmのニッケル元素を含んだ
酢酸ニッケル水溶液を塗布した後、スピナーを用いてスピンドライを行い、余分な溶液を
除去した。こうして、ニッケル元素が、図51(A)の点線445で示されるように、非
晶質珪素膜442の露呈した表面に接して保持された状態が実現された。
次に、水素を3容量%含有した極力酸素を含まない窒素雰囲気中において、温度640
℃、4時間の加熱処理を行った。すると、図51(B)の446で示されるような、基板
440に平行な方向への結晶成長が進行した。この結晶成長はニッケル元素が導入された
開口444の領域から周囲に向かって進行する。このような、基板に平行な方向への結晶
成長を、本明細書中、横成長又はラテラル成長と指称している。
本実施例に示すような条件においては、この横成長を100μm以上にわたって行わせ
ることができる。こうして横成長した領域を有する珪素膜447が得られた。なお、開口
444が形成されている領域においては、珪素膜の表面から下地界面に向かって縦成長と
よばれる垂直方向への結晶成長が進行している。次いで、ニッケル元素を選択的に導入す
るための酸化珪素膜からなるマスク443を除去した。こうして、図51(C)に示す状
態を得た。この状態では、結晶性珪素膜447中に、縦成長領域、横成長領域、結晶成長
が及ばなかった領域(非晶質状態)が存在している。
この状態においては、ニッケル元素が膜中に偏在している。特に、開口444が形成さ
れていた領域と符号446で示される結晶成長の先端部分においては、ニッケル元素が比
較的高濃度で存在している。次に、レーザー光の照射を行ったが、ここでは実施例58と
同様にKrFエキシマレーザーを用いた。この工程により、偏在したニッケル元素を拡散
させ、後のゲッタリング工程においてゲッタリングを行い易い状態が得られる。
レーザー光の照射が終了した後、水素を3容量%、NF3 を100ppm(容量)含ん
だ雰囲気中において、温度650℃での加熱処理を行った。この工程において、ニッケル
元素を膜中に高濃度に含んだ酸化膜448を200オングストロームの厚さに形成し、同
時に珪素膜447中のニッケル元素濃度が相対的に減少させた。上記加熱処理による熱酸
化膜の形成が終了した後、ニッケル元素を高い濃度で含んだ熱酸化膜448を除去した。
上記熱酸化膜448を除去した後、さらに結晶性珪素膜の表面をエッチングすることは
有効である。次いで、パターニングを行うことにより、横成長領域からなるパターン44
9を形成した。このようにして得られた横成長領域からなるパターン449中に残留する
ニッケル元素の濃度は、実施例58で示した場合に比較して、さらに低いものとすること
ができる。
これは、横成長領域中に含まれる金属元素の濃度が、そもそも低いことにも起因する。
具体的には、横成長領域からなるパターン448中のニッケル元素の濃度を1017cm-3
以下のオーダーにすることが容易に可能である。なお、図51(E)に示すパターンを形
成した後に、さらにエッチング処理を行い、パターン表面に存在しているニッケル元素を
除去することは有用である。
次いで、形成されたパターン449に、熱酸化膜450を形成した。この熱酸化膜の形
成は、温度650℃の酸素雰囲気中での加熱処理を12時間行うことにより、200オン
グストロームの厚さに成膜した。また、この熱酸化膜450を形成する際に、雰囲気中に
フッ素を含有させることは有効である。この熱酸化膜450の形成の際に、雰囲気中にフ
ッ素を含有させると、フッ素の作用によりニッケル元素の固定化と珪素膜表面の不対結合
手の中和とを行うことができる。即ち、活性層とゲイト絶縁膜との界面特性を向上させる
ことができる。
また、フッ素の代わりに塩素を利用するのでもよい。なお、この熱酸化膜は、薄膜トラ
ンジスタを構成するのであれば、後にゲイト絶縁膜の一部となる。またこの後、薄膜トラ
ンジスタを作製する場合には、熱酸化膜450を覆って、さらにプラズマCVD法等で酸
化珪素膜を成膜し、ゲイト絶縁膜を形成する。
《実施例61》
本実施例61は、本発明により得られた結晶性珪素膜を利用して、アクティブマトリク
ス型の液晶表示装置やアクティブマトリクス型のEL表示装置の画素領域に配置される薄
膜トランジスタを作製した例である。
図52に本実施例の作製工程を示す。まず、実施例58及び実施例60に示した工程に
より、それぞれ、ガラス基板上に結晶性珪素膜を形成した。以下の工程は、両者とも同じ
である。実施例58に示した構成で結晶性珪素膜を得た場合には、それをパターニングす
ることにより、図50(A)〜(E)に示す工程を経た後、図52(A)に示す状態を得
た。
図52(A)に示す状態において、452がガラス基板、453が下地膜、454が結
晶性珪素膜で構成された活性層である。図52(A)に示す状態を得た後、酸素と水素を
混合した減圧雰囲気でのプラズマ処理を実施した。このプラズマは、高周波放電によって
生成させた。このプラズマ処理によって、活性層454の露呈した表面に存在している有
機物が除去された。正確には、酸素プラズマによって活性層の表面に吸着している有機物
が酸化され、さらに水素プラズマによってこの酸化した有機物が還元、気化される。こう
して活性層454の露呈した表面に存在する有機物が除去された。
上記有機物の除去は、活性層454の表面における固定電荷の存在を減少させる上で非
常に効果がある。有機物の存在に起因する固定電荷は、デバイスの動作を阻害したり、特
性の不安定性の要因となるものであり、その存在を少なくすることは非常に有用である。
そのように有機物の除去を行った後、温度640℃の酸素雰囲気中において熱酸化を行い
、100オングストロームの熱酸化膜451を形成させた。この熱酸化膜は、半導体層と
の界面特性が高く、後にゲイト絶縁膜の一部を構成することとなる。こうして図52(A
)に示す状態を得た。
その後、ゲイト絶縁膜を構成する酸化珪素膜455を1000オングストロームの厚さ
に成膜した。酸化珪素膜455の成膜は、プラズマCVD法により実施した。この酸化珪
素膜455は熱酸化膜451と一体となってゲイト絶縁膜として機能する。なお、酸化珪
素膜455中にハロゲン元素を含有させることは有効である。この場合、ハロゲン元素の
作用によりニッケル元素を固定化することができる。そして、活性層中に存在するニッケ
ル元素(その他珪素の結晶化を助長する金属元素の場合も同じ)の影響で、ゲイト絶縁膜
の絶縁膜としての機能が低下してしまうことを抑制することができる。
次に、後にゲイト電極として機能する、図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜
した。このアルミニウム膜中には、スカンジウムを0.2重量%含有させた。アルミニウ
ム膜中にスカンジウムを含有させるのは、後の工程において、ヒロックやウィスカーが発
生することを抑制するためである。ここでヒロックやウィスカーとは、加熱の際のアルミ
ニウムの異常成長に起因する針状或いは刺状の突起部のことを意味する。
上記のようにアルミニウム膜を成膜した後、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。
この陽極酸化膜は、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液を用い
、アルミニウム膜を陽極、白金を陰極として実施した。この工程においては、アルミニウ
ム膜上に緻密な膜質を有する陽極酸化膜を100オングストロームの厚さに成膜した。こ
の陽極酸化膜は、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を有してい
る。またこの陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧によって制御した。
次いで、レジストマスク457を形成し、そしてアルミニウム膜を456で示されるパ
ターンにパターニングした。こうして図52(B)に示す状態を得た。ここで再度の陽極
酸化を行った。ここでは、3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液として用いた。この電解
溶液中において、アルミニウムのパターン456を陽極とした陽極酸化を行うことにより
、符号459で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成された。
この工程においては、上部に密着性の高いレジストマスク457が存在する関係で、ア
ルミニウムパターン456の側面に選択的に陽極酸化膜459が形成される。この陽極酸
化膜459はその膜厚を数μmまで成長させることができる。ここでは、その膜厚を60
00オングストロームとした。なお、その成長距離は陽極酸化時間によって制御すること
ができる。
次いで、レジストマスク457を除去した後、さらに再度の緻密な陽極酸化膜の形成を
行った。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液と
した陽極酸化を再び実施した。この工程においては、多孔質状の陽極酸化膜459中に電
解溶液が進入(侵入)する関係から、符号460で示されるように緻密な膜質を有する陽
極酸化膜が形成された。
この緻密な陽極酸化膜460の膜厚は1000オングストロームとしたが、この膜厚の
制御は印加電圧によって行った。次いで、露呈した酸化珪素膜455をエッチングすると
同時に、熱酸化膜451をエッチングした。このエッチングにはドライエッチングを利用
した。そして酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜459
を除去した。こうして図52(D)に示す状態を得た。
この後、不純物イオンの注入を行ったが、ここではNチャネル型の薄膜トランジスタを
作製するために、P(リン)イオンの注入をプラズマドーピング法によって行った。この
工程においては、ヘビードープがされる462と466の領域とライトドープがされる4
63と465の領域が形成される。これは、残存した酸化珪素膜461が半透過なマスク
として機能し、注入されたイオンの一部がそこで遮蔽されるからである。
次いで、レーザー光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性化
を実施した。このレーザー光に代えて強光を適用することもできる。こうしてソース領域
462、チャネル形成領域464、ドレイン領域466、低濃度不純物領域463と46
5が自己整合的に形成された。ここで、符号465で示されるのが、LDD(ライトドー
プドレイン)領域と称される領域である。
なお、緻密な陽極酸化膜460の膜厚を2000オングストローム以上というように厚
くした場合、その膜厚でもってチャネル形成領域464の外側にオフセットゲイト領域を
形成することができる。本実施例においてもオフセットゲイト領域は形成されているが、
その寸法が小さいのでその存在による寄与が小さく、また図面が煩雑になるので図中には
記載していない。なお、緻密な膜質を有する陽極酸化膜を2000オングストローム以上
というように厚く形成するのは、200V以上の印加電圧が必要とされるので注意が必要
である。
次に、層間絶縁膜467として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜を
形成するが、ここではその積層膜を形成した。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜又は窒化
珪素膜上に樹脂材料からなる層を用いてもよい。そしてコンタクトホールの形成を行い、
ソース電極468とドレイン電極469の形成を行った。こうして図52(E)に示す薄
膜トランジスタを得た。
《実施例62》
本実施例62は、実施例61(図52)に示す工程とは異なる工程で薄膜トランジスタ
を作製した例である。図53に本実施例の作製工程を示す。まず、実施例58及び実施例
60に示した工程により、それぞれ、ガラス基板上に結晶性珪素膜を形成した。そしてそ
れをパターニングすることにより、図53(A)に示す状態を得た。以下の工程は、両者
共に同じである。
図53(A)に示す状態を得た後、酸素と水素の混合減圧雰囲気中においてプラズマ処
理を行った。図53(A)に示す状態において、471がガラス基板、472が酸化珪素
膜からなる下地膜、符号473で示すのが結晶性珪素膜で構成された活性層である。また
符号470はゲッタリングのための熱酸化膜を除去した後に、再度形成された熱酸化膜で
ある。次いで、図53(B)に示すように、ゲイト絶縁膜を構成する酸化珪素膜474を
プラズマCVD法によって1000オングストロームの厚さに成膜した。
酸化珪素膜474は、熱酸化膜470とともに、ゲイト絶縁膜を構成することになる。
次に、後にゲイト電極として機能する図示しないアルミニウム膜をスパッタ法で成膜した
。このアルミニウム膜中には、スカンジウムを0.2重量%含有させた。アルミニウム膜
を成膜した後、その表面に、図示しない緻密な陽極酸化膜を形成した。この陽極酸化膜は
、3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液を電解溶液として実施した。
上記図示しない緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚は100オングストローム程度と
した。この陽極酸化膜が、後に形成されるレジストマスクとの密着性を向上させる役割を
有している。なお、この陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時の印加電圧によって制御するこ
とができる。次にレジストマスク475を形成した。そしてアルミニウム膜を符号476
で示されるパターンにパターニングした。
次いで再度の陽極酸化を行った。ここでは、3重量%のシュウ酸水溶液を電解溶液とし
て用いた。この電解溶液中において、アルミニウムのパターン476を陽極とした陽極酸
化を行うことにより、符号477で示される多孔質状の陽極酸化膜が形成された。この工
程においては、上部に密着性の高いレジストマスク475が存在する関係で、アルミニウ
ムパターン476の側面に選択的に陽極酸化膜477が形成される。
上記陽極酸化膜は、その膜厚を数μmまで成長させることができる。ここではその膜厚
を6000オングストロームとした。なお、その成長距離は、陽極酸化時間によって制御
することができる。次いで、レジストマスク475を除去した後、さらに再度の緻密な陽
極酸化膜の形成を実施した。即ち、前述した3重量%の酒石酸を含んだエチレングルコー
ル溶液を電解溶液として用いた陽極酸化を再び実施した。すると、多孔質状の陽極酸化膜
477中に電解溶液が進入(侵入)する関係から、符号478で示されるように緻密な膜
質を有する陽極酸化膜が形成される。
次いで、最初の不純物イオンの注入を行った。ここではNチャネル型の薄膜トランジス
タを作製するために、P(リン)イオンに注入を行った。なお、Pチャネル型の薄膜トラ
ンジスタを作製するのであれば、B(ホウ素)イオンの注入を行う。この不純物イオンの
注入によって、ソース領域479とドレイン領域481が形成される。この時、符号48
0の領域には不純物イオンが注入されない。次に、酢酸と硝酸とリン酸とを混合した混酸
を用いて多孔質状の陽極酸化膜477を除去した。こうして図53(D)に示す状態を得
た。
その後、再度不純物イオン(リンイオン)の注入を行った。この不純物イオンは、最初
の不純物イオンの注入条件よりライトドーピングの条件(低ドーズ量)で実施した。この
工程において、ライトドープ領域482と483が形成され、そして符号484で示され
る領域がチャネル形成領域となる。
次いで、レーザー光の照射を行うことにより、不純物イオンが注入された領域の活性化
を行った。なお、レーザー光に代えて赤外線や紫外線等の強光を照射してもよい。こうし
てソース領域479、チャネル形成領域484、ドレイン領域481、低濃度不純物領域
482と483が自己整合的に形成された。ここで、符号483で示されるのが、LDD
(ライトドープドレイン)領域と称される領域となる。
次いで、層間絶縁膜485として、酸化珪素膜、または窒化珪素膜、またはその積層膜
を形成するが、ここでは窒化珪素膜を用いて形成した。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜
又は窒化珪素膜上に樹脂材料からなる層を形成したものを用いてもよい。そしてコンタク
トホールの形成を行い、ソース電極486とドレイン電極487の形成を行い、さらに温
度350℃の水素雰囲気中において1時間の加熱処理(水素化加熱処理)を行った。この
工程において活性層中の欠陥や不対結合手が中和される。こうして図53(E)に示す薄
膜トランジスタを得た。
《実施例63》
本実施例63は、Nチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタ
とを相補型に構成した例である。本実施例に示す構成は、例えば絶縁表面上に集積化され
た各種薄膜集積回路に利用することができる。また、例えばアクティブマトリクス型の液
晶表示装置の周辺駆動回路に利用することができる。図54は本実施例の工程を示す図で
ある。
まず、図54(A)に示すようにガラス基板489上に下地膜490として酸化珪素膜
を成膜した。なお、酸化珪素膜に代えて窒化珪素膜を用いてもよい。次いで、図示しない
非晶質珪素膜をプラズマCVD法又は減圧熱CVD法によって成膜するが、ここでは前者
を用いた。さらに実施例58に示した方法により、この非晶質珪素膜を結晶性珪素膜に変
成した。そして酸素と水素の混合雰囲気中においてプラズマ処理をした後、該結晶性珪素
膜をパターニングして、活性層491と492を得た。その後、符号488で示される熱
酸化膜を形成した。熱酸化膜488の膜厚は100オングストローム程度とした。こうし
て図54(A)に示す状態を得た。
次に、ゲイト絶縁膜493としての酸化珪素膜を成膜した。そして、後にゲイト電極を
構成するための、図示しないアルミニウム膜を4000オングストロームの厚さにスパッ
タ法により成膜した。アルミニウム膜以外の金属としては、陽極酸化可能な金属(例えば
タンタル)を利用することができる。アルミニウム膜を形成した後、前述した方法により
、その表面に図示しない極薄い緻密な陽極酸化膜を形成した。
次に、アルミニウム膜上に、図示しないレジストマスクを配置し、アルミニウム膜のパ
ターニングを行った。そして、得られたアルミニウムパターンを陽極として陽極酸化を行
い、多孔質状の陽極酸化膜496と497を形成した。この多孔質状の陽極酸化膜の膜厚
は5000オングストロームとした。次いで、図示しないレジストマスクを除去し、さら
に再度緻密な陽極酸化膜を形成する条件で陽極酸化を実施した。この工程で緻密な陽極酸
化膜498と499を形成した。
ここで緻密な陽極酸化膜498と499の膜厚は800オングストロームとした。こう
して図54(B)に示す状態を得た。さらに露呈した酸化珪素膜493と熱酸化膜488
をドライエッチングによって除去し、図54(C)に示す状態を得た。その後、酢酸と硝
酸とリン酸を混合した混酸を用いて、多孔質状の陽極酸化膜496と497を除去した。
こうして図54(D)に示す状態を得た。
ここで、交互にレジストマスクを配置して、左側の薄膜トランジスタにP(リン)イオ
ンが、右側の薄膜トランジスタにB(ホウ素)イオンが注入されるようにし、それらをプ
ラズマドーピング法によって注入した。この不純物イオンの注入によって、高濃度のN型
を有するソース領域502とドレイン領域505が自己整合的に形成された。同時に、低
濃度にPイオンがドープされた弱いN型を有する領域503が形成され、チャネル形成領
域504が同時に形成された。
ここで、符号503で示される弱いN型を有する領域が形成されるのは、残存したゲイ
ト絶縁膜500が存在するからである。即ち、ゲイト絶縁膜500を透過したPイオンが
ゲイト絶縁膜500によって一部遮蔽されるからである。また同様な原理、手法により、
強いP型を有するソース領域509とドレイン領域506が自己整合的に形成された。同
時に、低濃度不純物領域508が形成され、またチャネル形成領域507が同時に形成さ
れた。
なお、緻密な陽極酸化膜498と499の膜厚が2000オングストロームというよう
に厚い場合には、その厚さでチャネル形成領域に接してオフセットゲイト領域を形成する
ことができる。本実施例の場合は、緻密な陽極酸化膜498と499の膜厚が1000オ
ングストローム以下と薄いので、その存在は無視することができる。
次いで、レーザー光の照射を行い、不純物イオンが注入された領域のアニールを行った
。なお、レーザー光に代えて紫外線等の強光を照射してもよい。そして図54(E)に示
すように、層間絶縁膜として、窒化珪素膜510と酸化珪素膜511を成膜し、それぞれ
の膜厚を1000オングストロームとした。なお、酸化珪素膜511は必ずしも成膜しな
くてもよい。ここで、窒化珪素膜によって、薄膜トランジスタが覆われることになる。窒
化珪素膜は緻密であり、また界面特性がよいので、このような構成とすることで、薄膜ト
ランジスタの信頼性を高めることができる。
さらに、樹脂材料からなる層間絶縁膜512をスピンコート法を用いて形成した。ここ
では、層間絶縁膜512の厚さを1μmとした。そしてコンタクトホールの形成を行い、
左側のNチャネル型の薄膜トランジスタのソース電極513とドレイン電極514を形成
した。同時に右側の薄膜トランジスタのソース電極515とドレイン電極514を形成し
た。ここで、ドレイン電極514は両者共通に配置されたものとなる。
こうして、図54(F)に示す、相補型に構成されたCMOS構造を有する薄膜トラン
ジスタ回路が構成された。本実施例に示す構成においては、薄膜トランジスタを窒化珪素
膜で覆い、さらに樹脂材料によって覆った構成が得られる。この構成により、可動イオン
や水分が侵入しにくい耐久性の高いものとすることができる。また、さらに多層配線を形
成したような場合に、薄膜トランジスタと配線との間に容量が形成されてしまうことを防
ぐことができる。
《実施例64》
本実施例64は、実施例58に示す工程において、下地膜の表面に直接ニッケル元素を
導入した例である。この場合、ニッケル元素は非晶質珪素膜の下面に接して保持されるこ
とになる。この方法による場合には、下地膜を形成した後に、ニッケル元素の導入を行い
、まず下地膜の表面にニッケル元素(当該金属元素)が接して保持された状態とする。
本実施例では、酢酸ニッケル塩の水溶液を下地膜の表面に塗布し、その他の工程は実施
例58の場合と同様にして図50(E)に示す状態を得た。このニッケル元素の導入方法
としては、そのように溶液を用いる方法のほかに、スパッタ法やCVD法、さらに吸着法
を用いることができる。
《実施例65》
本実施例65は、図51(E)の状態、または図52(A)の状態、または図53(A
)の状態においてレーザー光の照射を行い、それ以前の工程で得られた結晶性珪素膜から
なる島状のパターンの結晶性をさらに向上させた例である。図51(E)、図52(A)
、図53(A)の状態においてレーザー光を照射する場合、比較的低い照射エネルギー密
度でもって、所定のアニール効果を得ることができる。これは、小さい面積の箇所にレー
ザーエネルギーが照射されるので、アニールに利用されるエネルギー効率が高まるためで
あると考えられる。
《実施例66》
本実施例66は、ボトムゲイト型の薄膜トランジスタの作製例に関する。図55に本実
施例の薄膜トランジスタの作製工程を示す。まず、ガラス基板516上に下地膜として酸
化珪素膜517を成膜した。
次に、適当な金属材料又は金属シリサイド材料等を用いてゲイト電極518を形成する
が、ここではアルミニウムを用いた。ゲイト電極518を形成した後、ゲイト絶縁膜とし
て機能する酸化珪素膜519を成膜した。さらに、プラズマCVD法により非晶質珪素膜
520を成膜した。次いで、図55(B)に示すように、ニッケル酢酸塩水溶液を塗布し
、ニッケル元素が、ニッケル酢酸塩水溶液の液膜として符号521で示されるように、非
晶質珪素膜520の表面に接して保持された状態とした。
次に、水素を3容量%含有させた窒素雰囲気中において温度650℃の加熱処理を行い
、非晶質珪素膜520を結晶化させた。こうして結晶性珪素膜522を得た。この結晶性
珪素膜に対して、HClを5容量%、NF3 を100ppm(容量)含んだ酸素雰囲気中
において、温度650℃の加熱処理を行った。この加熱処理によって熱酸化膜523を形
成して、図55(C)の状態とした後、この熱酸化膜523を除去した。
次いで、結晶性珪素膜522と酸化珪素膜519をパターニングし、ゲイト絶縁膜52
5と薄膜トランジスタの活性層526を形成した。さらに図55(D)に示すように、レ
ジストマスク524を配置した。図55(D)の状態で、ソース及びドレイン領域を形成
するために不純物イオンの注入を行った。ここでは、Nチャネル型の薄膜トランジスタを
作製するためにP(リン)イオンの注入を行った。この工程でソース領域527、ドレイ
ン領域528が形成される。
その後、等方性のアッシングを行い、レジストマスク524を全体的に後退させた。即
ち、図55(E)中符号529として示すように、レジストマスク524を全体に小さく
する。こうして後退させられたレジストマスク529を得た。次いで、図55(E)の状
態において、再度のPイオンの注入を実施した。
この工程は、図55(D)に示す工程におけるPイオンのドーズ量よりも少ないドーズ
量でもって行った。こうして、符号530と531で示される低濃度不純物領域を形成し
た。次に、金属電極532と533を形成した。ここで電極532はソース電極となり、
電極533はドレイン電極となる。こうしてボトムゲイト型の薄膜トランジスタが完成し
た。
《実施例67の前提となる態様》
図56〜図57は、薄膜トランジスタ(TFT)の作製工程の説明図であり、後述実施
例67におけるTFT作製工程の説明図でもある。そこで、まず図56〜図57に基づき
、実施例67の前提である発明の具体的態様例を説明する。
図56(A)には、ガラス基板534上に、下地膜535、非晶質珪素膜536が順次
に積層され、非晶質珪素膜536の表面にはニッケル(Ni)層537が形成されている
。この状態で、加熱処理することにより、図56(B)に示すように非晶質珪素膜536
が結晶化されて、結晶性珪素膜538が形成される。本態様ではニッケル層537を形成
する工程は必須の工程ではないが、ニッケルは結晶化に必要な熱エネルギを下げる触媒と
して機能するため、結晶化処理の加熱温度を下げ、かつ処理時間を短縮することが可能に
なる。
このような触媒元素としては、ニッケル(Ni)の他に、Fe、Co、Ru、Rh、P
d、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた少なくともの1種の元素を使用できるが
、ニッケルがその触媒効果が最も顕著である。なお、ニッケル元素を使用せずに、公知の
技術等を使用して結晶性珪素膜を形成することも可能である。また、結晶化工程としては
、加熱処理の代わりに、レーザー光を照射するようにしてもよい。さらに、結晶性珪素膜
を形成した後に、レーザー光や赤外光等による光アニールや、熱アニールを実施してもよ
い。
図56(C)には熱酸化工程が図示されている。結晶性珪素膜538の表面に熱酸化膜
539が成長するに従って、即ちSiーO結合が形成されるに従って、未結合状態のSi
が生成される。この余剰のSiは、熱酸化膜539と結晶性珪素膜538との界面から、
結晶性珪素膜538内部に拡散し、結晶粒界に存在するSiのダングリングボンドと結合
して、結晶性珪素膜538の結晶粒界の欠陥がパッシベーションされる。これにより結晶
性珪素膜538によって構成されるTFTの移動度を向上させることができる。
また、以降の加熱を伴う作製工程において、欠陥をパッシベーションしているSiは、
Hのように容易に結晶性珪素膜538から離脱することがないため、水素プラズマ処理を
不要にすることができる。例えば、本発明に係る半導体装置の作製方法に従って作製され
たNチャネルTFTに関して、水素プラズマ処理した後の移動度は、水素プラズマ処理前
の移動度よりも10〜20%のみ増加する。これは、熱酸化工程において結晶性珪素膜5
38の欠陥が十分にパッシベーションされていることを示唆しており、また作製工程間に
、欠陥をパッシベーションしているSiが離脱しないことも示唆している。
本発明における熱酸化工程の目的は、結晶性珪素膜の粒界の欠陥をパッシベーションす
るためのSiを供給するためであり、結晶性珪素膜538がTFTの活性層を構成するこ
とを考慮すると、熱酸化膜539は耐圧性等の膜質を考慮せずに、200〜500オング
ストローム程度の膜に成長させれば良い。また、本発明では、ガラス基板等にTFTを作
製することを意図しているため、熱酸化工程は、加熱によって生ずる基板の歪みや、変形
等が許容可能な条件下で実施する必要がある。例えば、加熱温度の上限はガラス基板の歪
点を目安にすればよい。
本態様においては、熱酸化工程はフッ素化合物が添加された酸化性雰囲気中で実施され
る。具体的には、酸素ガスにNF3 ガス等を添加した雰囲気中で熱酸化する。NF3 ガス
の濃度を適宜に調節することにより、ガラス基板の歪み点以下の温度で、数時間〜10数
時間加熱することで、数100オングストロームの膜厚に熱酸化膜を成長させることが可
能である。
NF3 ガスのようにフッ素ラジカルを供給するガスの他に、HClのようにClラジカ
ルを供給するガスを酸化性雰囲気に添加することにより、熱酸化膜の成長が促進されるが
、ガラス基板の歪点以下の温度、例えば500〜600℃程度の加熱で、数100オング
ストロームの膜厚に熱酸化膜を形成するには時間を要するため適当でない。酸素ガスにN
3 ガスが450ppm添加された酸化性雰囲気中では、温度600℃で4時間加熱する
ことにより、200オングストローム程度の熱酸化膜を形成することが可能である。
また、熱酸化工程おいて、フッ素ラジカルは結晶性珪素膜538の表面の凸部に集中し
て供給されるため、該凸部が熱酸化が最も進行して、凹部の熱酸化は抑制される。また、
熱酸化膜539は高濃度にフッ素を含有するため、応力が緩和されるので、結晶性珪素膜
538の表面には、凸部が丸められた状態で熱酸化膜539が均一の厚さで形成される。
熱酸化工程は、基板の歪みや変形等が許容範囲となるにように、加熱温度、加熱時間を
決定する必要があるため、熱酸化雰囲気中のフッ素化合物の濃度が増大してしまう場合も
ある。この結果、熱酸化膜538に多量のフッ素が含まれて、SiーF結合が形成されて
しまう慮れがある。しかし、熱酸化膜539は結晶性珪素膜の粒界の欠陥をパッシベーシ
ョンするSiを供給するために成長された膜であり、しかも、後で除去されるべき膜とし
て形成されているため、その特性はゲイト絶縁膜のような高機能・高信頼性は要求されず
、熱酸化膜539に存在するSiーF結合等の不安定性や耐圧性は問われない。
図56(D)は、熱酸化膜539を除去した後に、結晶性珪素膜538をパターニング
して形成された活性層540とゲイト絶縁膜541を示した図である。ゲイト絶縁膜54
1を形成するには熱酸化法を採用することも可能であるが、ガラス基板について、その変
形が許容できる程度の低温度で熱酸化して得られる熱酸化膜は膜質が優れていない。この
ため、本態様においては、所定の特性を有するゲイト絶縁膜を安定的に得るために、プラ
ズマCVD法やスパッタリング法等の堆積法でゲイト絶縁膜を成膜する。
本態様では、熱酸化工程を経ることによって、活性層540(結晶性珪素膜538)の
表面は平坦化されているため、ゲイト絶縁膜は、これを堆積法で成膜しても、被覆性を良
好にして形成することができる。このため、ゲイト絶縁膜と活性層との界面準位を低下さ
せることが可能になる。
また、レーザー光を照射して得られた結晶性珪素膜は結晶性に優れているが、その表面
には急峻な凸部を有するリッジが形成され、例えば、膜厚が700オングストローム程度
の非晶質珪素膜を加熱して珪素化した後に、レーザーアニールを実施すると、その表面に
は100〜300オングストローム程度の高さを有するリッジが形成される。
例えば、酸素ガスにNF3 ガスを450ppm程度添加した雰囲気中で、12時間熱酸
化して、膜厚500オングストローム程度の熱酸化膜を形成することによって、結晶性珪
素膜表面の高低差を数10オングストローム程度にすることも可能である。従って、レー
ザー光により結晶化された結晶性珪素膜の表面にも、CVD法により絶縁膜を被覆性良好
に堆積することができる。
図57(A)は、不純物イオンをドーピングする工程を図示したものである。ゲイト電
極542はマスクとして機能して、ソース領域544、ドレイン領域545、チャネル領
域546が自己整合的に形成される。さらに、図57(B)に示すように、層間絶縁膜5
47、電極548、549が形成されて、TFTが完成される。
《実施例67》
本実施例67は、珪素の結晶化を助長する金属元素の触媒作用を利用して結晶化した珪
素膜を使用してTFTを作製した例である。図56及び図57は、本実施例におけるTF
Tの作製工程の説明図であり、各工程毎の断面図である。本実施例においては、当該金属
元素としてニッケルを使用した。
図56(A)に示すように、ガラス基板534(コーニング1737、歪点667℃)
上に、下地膜535として酸化珪素膜を3000オングストロームの厚さにプラズマCV
D法又は減圧熱CVD法で成膜する。次にプラズマCVD法又は減圧熱CVD法により、
実質的に真性(I型)な非晶質珪素膜536を700〜1000オングストロームの厚さ
に成膜する。ここでは上記両成膜に減圧熱CVD法を用い、非晶質珪素膜536の膜厚を
700オングストロームとした。
酸化性雰囲気中において、UV(紫外線)光を非晶質珪素膜536の表面に照射して、
その表面に図示しない酸化膜を数20オングストロームの厚さに形成した後に、その酸化
膜の表面にニッケル元素を含有する溶液を塗布した。該酸化膜は非晶質珪素膜538表面
の濡れ性を改善して、溶液が弾かれるのを抑制するためのものである。本実施例では、ニ
ッケル元素を含有する溶液として、ニッケルの含有量(重量)が55ppmのニッケル酢
酸塩水溶液を用いた。
本実施例では、スピナーによって、ニッケル酢酸塩溶液を塗布して、乾燥し、ニッケル
層537を形成した。ニッケル層537は完全な膜を成しているとは限らないが、この状
態で、上記図示しない酸化膜を介して、ニッケル元素が非晶質珪素膜536の表面に接し
て保持されている。なお、該溶液としてはニッケル塩の希薄溶液を用いるのがよいが、好
ましくはニッケルの含有量が1〜100ppm程度の濃度の溶液として用いることができ
る。
ここで、非晶質珪素膜中におけるニッケル濃度が1×1016原子/cm-3以下であると
、結晶化を助長する効果を得ることが困難である。他方、ニッケル濃度が5×1019原子
/cm3 以上であると、得られた珪素膜の半導体としての特性が損なわれて、金属として
の特性が表われてしまう。このため最終的に得られる珪素膜中における平均ニッケル濃度
が1×1016〜5×1019原子/cm3 となるように、予めニッケル酢酸溶液中のニッケ
ルの濃度や、塗布回数、塗布量等の工程条件を設定する。なお、ニッケルの濃度はSIM
S(2次イオン質量分析方法)で計測すればよい。
図56(A)のように非晶質珪素膜536の表面にニッケル元素が保持された状態にお
いて、図56(B)に示すように、窒素雰囲気中で加熱処理して、非晶質珪素膜536を
結晶化させて、結晶性珪素膜538を形成した。珪素を結晶化させるには、450℃以上
の温度で加熱する必要があるが、450℃〜500℃程度の温度では、非晶質珪素膜を結
晶化させるのに数10時間以上要するので、550℃以上の温度で加熱することが望まし
い。なお、図56(B)に示す結晶化工程に限らず、加熱温度は加熱によって生ずるガラ
ス基板の変形や縮みが許容できる範囲とする必要がある。
加熱温度の上限の基準は、例えば、基板の歪み点とすればよい。本実施例では歪点が6
67℃のガラス基板534を使用しているため、加熱温度を620℃として、4時間加熱
した。この加熱により、ニッケルが非晶質珪素膜536の表面から、下地膜535との界
面へ向かって、ガラス基板534の面にほぼ直交する方向に拡散するのに伴って、珪素の
結晶成長が進行して、結晶性珪素膜538が形成される。この結晶成長はガラス基板53
4に垂直な方向に進行する。このような結晶過程を縦成長と指称する。
なお、必要であれば、結晶化工程後に、レーザー光や赤外光、或いは紫外光による光ア
ニールや、熱アニールを実施して、結晶性珪素膜538の結晶性をより向上させてもよい
。また光アニールと熱アニールとを併用してもよい。ただし、レーザーアニールを実施す
る場合には、レーザー光によって、熱エネルギを結晶性珪素膜538に効果的に供与する
ために、結晶性珪素膜538の出発膜である非晶質珪素膜536の膜厚は1000オング
ストローム以下、好ましくは700〜800オングストローム程度とする。
次に、フッ素原子を含有する酸化雰囲気中で加熱することにより、結晶性珪素膜538
の表面に熱酸化膜539を200〜500オングストロームの膜厚に形成する。本実施例
では、酸素ガス中にNF3 を400ppm(容量)添加した雰囲気中で600℃の温度で
4時間加熱し、熱酸化膜539を200オングストローム程度の膜厚に形成した。
この結果、結晶性珪素膜538の膜厚は、熱酸化膜539形成前に700オングストロ
ーム程度であったものが、600オングストローム程度となった。結晶性珪素膜538は
、最終的にTFTの活性層を構成することとなるため、必要な厚さの活性層を得ることが
できるように、酸化膜539の膜厚をも考慮して、非晶質珪素膜536の膜厚を決定して
おく必要がある。
結晶性珪素膜538の表面に熱酸化膜539が形成されるに従って、未結合状態のSi
が生成される。この余剰のSiは熱酸化膜539と結晶性珪素膜538との界面から、結
晶性珪素膜538の内部に拡散して、結晶粒界に存在するSiのダングリングボンドと結
合して、結晶性珪素膜538の結晶粒界の欠陥密度が減少される。また、以降の加熱を伴
う作製工程において、欠陥をパッシベーションしているSiは、Hのように容易に結晶性
珪素膜538から離脱することがないため、結晶性珪素膜538はTFT等の半導体装置
の材料に好適である。
また、結晶性珪素膜538の表面は、凸部と凹部の酸化速度の違いのために、凸部が丸
められ、平坦化される。なお、前記のように、結晶性珪素膜538にレーザー光を照射し
た場合には、その表面にリッジが形成されているため、そのリッジが可能な限り平坦化さ
れ、除去できるように、熱酸化工程後の結晶性珪素膜538の膜厚を考慮して、熱酸化膜
539の膜厚やNF3 ガス濃度等の熱酸化の工程条件を設定すればよい。
次いで、図56(D)に示すように、エッチングによって熱酸化膜539を除去する。
このエッチングに際しては、酸化珪素と珪素とのエッチングレートの高いエッチング液又
はエッチングガスを使用する。エッチャントとしては好ましくはバッファーフッ酸、その
他のフッ酸系のエッチャントが使用されるが、本実施例では、バッファーフッ酸によるウ
ェットエッチングにより熱酸化膜539を除去した。
次いで、結晶性珪素膜538を島状にパターニングしてTFTの活性層540を形成し
た後、ゲイト絶縁膜541として酸化珪素膜を1000オングストロームの厚さにプラズ
マCVD法で成膜した。活性層540の表面は熱酸化工程において、平坦化されているた
め、ゲイト絶縁膜541を被覆性良好に堆積することできる。その後、ゲイト絶縁膜54
1の表面に、図示しないスカンジウムを微量に含有したアルミニウム膜を6000オング
ストロームの厚さに電子ビーム蒸着法で成膜して、図56(E)に示すようにパターニン
グしてゲイト電極542を形成した。
そして、電解溶液中において、ゲイト電極542を陽極として陽極酸化を行うことによ
り、酸化物層543を形成した。この場合には、3重量%の酒石酸を含有するエチレング
リコール溶液中で、ゲイト電極542を陽極とし、白金を陰極として、電圧を印加するこ
とにより、緻密な構造を有する陽極酸化物層543を2000オングストロームの厚さに
形成した。なお、陽極酸化物543の膜厚は電圧の印加時間で制御可能であり、本実施例
でも、これにより制御した。
次に、図57(A)に示すように、ソース領域544、ドレイン領域545を形成する
ために、イオン注入法或いはプラズマイオン注入法等により、活性層540に一導電型を
付与する不純物イオンを注入する。Nチャネル型のTFTを形成する場合には、H2 ガス
により1〜10%(容量)に希釈されたフォスフィンを使用して、P(リン)イオンを活
性層540に注入する。他方、Pチャネル型TFTを作製する場合には、同じく1〜10
%(容量)に希釈されたジボランを使用してB(ホウ素)イオンを注入する。本実施例で
はイオン注入法により、それぞれPイオン及びBイオンを注入し、それぞれNチャネル型
及びPチャネル型のTFTを作製した。
不純物イオンが活性層540に注入されると、ゲイト電極542とその周囲の陽極酸化
物543がマスクとして機能して、不純物イオンが注入された領域がソース領域544及
びドレイン領域545として画定され、不純物イオンが注入されない領域がチャネル54
6として画定される。なお、ソース領域544、ドレイン545の不純物イオンの濃度が
3×1019〜1×1021原子/cm3 となるように、ドーズ量、加速電圧等のドーピング
条件を制御する。また、ドーピング後にレーザー光を照射して、ソース領域544、ドレ
イン領域545に注入された不純物イオンを活性化させる。
次に、図57(B)中、層間絶縁膜547として示すように、酸化珪素膜を7000オ
ングストロームの厚さにプラズマCVD法により成膜した。次いで、コンタクトホールを
形成し、アルミニウムを主成分とする材料により、それぞれソース領域544及びドレイ
ン領域545と接続される電極548、549を形成した。
最後に、温度300℃で水素プラズマ処理を行うことにより、図57(B)に示す薄膜
トランジスタを完成させた。なお、この水素プラズマ処理は活性層540の欠陥をパッシ
ベーションするのではなく、活性層540とアルミニウムから成る電極548、549と
の界面のパッシベーションを主な目的とする。
本実施例の作製工程に従って作製されたPチャネル型のTFTの電界効果移動度は、水
素プラズマ処理を実施する前と、水素プラズマ処理を実施した後とで大きなきな変化はな
かった。これは、図56(C)に示す熱酸化工程にパッシベーションの効果がないのでは
なく、上述したように、水素プラズマ処理のみのパッシベーションでは、Pチャネル型T
FTの電界効果移動度が顕著に改善されないことから予想されるように、Pチャネル型T
FTにおいては、活性層540の結晶粒界の欠陥をパッシベーションすることは、電界効
果移動度を改善する最良の手段ではないためであると考えられる。
他方、本実施例の作製工程に従って作製されたNチャネル型のTFTは、水素プラズマ
処理を実施する前では、電界効果移動度は200cm2 ・V-1・s-1であったが、水素プ
ラズマ処理を実施した後では、電界効果移動度は10〜20%程度の増加のみであった。
この事実は、従来、Nチャネル型TFTは水素プラズマ処理をしないと実用にならなかっ
たが、本実施例のように、NF3 を添加して熱酸化処理をするのみで、実用可能なNチャ
ネル型TFTを作製することが可能である、ことを示唆している。
即ち、水素プラズマ処理において、水素によってパッシベーションされた活性層540
の結晶粒界の欠陥はあまり多くなく、結晶粒界の欠陥の多くは図56(C)に示す熱酸化
工程においてパッシベーションされていることを示している。従って、本実施例の水素プ
ラズマ処理によりパッシベーションされる欠陥の殆んどは熱酸化工程以降に生ずる欠陥で
あり、主に、電極548、549を形成した際に生じた欠陥である。また、本実施例では
、活性層540の結晶粒界の欠陥はSiでパッシベーションされている。Siは、Hのよ
うに熱的な影響によって容易に活性層から離脱しないので、本発明によって耐熱性に優れ
た高信頼性のTFTを形成することができる。
《実施例68》
本実施例68は、珪素の結晶化を助長する金属元素の触媒作用を利用して結晶化した珪
素膜を使用してTFTを作製した例である。図58及び図59は、本実施例のTFTの作
製工程の説明図であり、工程毎の断面図である。本実施例では金属元素としてニッケルを
使用した。
図58(A)に示すように、ガラス基板550(コーニング1737、歪点667℃)
上に、下地膜551として酸化珪素膜を3000オングストロームの厚さにプラズマCV
D法又は減圧熱CVD法で成膜する。ここではプラズマCVD法を用いた。次に、プラズ
マCVD法又は減圧熱CVD法により、実質的に真性な非晶質珪素膜552を700〜1
000オングストロームの厚さに成膜した。ここでは、プラズマCVD法により、非晶質
珪素膜552の膜厚を1000オングストロームに形成した。
酸化性雰囲気中において、UV(紫外線)光を非晶質珪素膜552の表面に照射して、
その表面に、図示しない酸化膜を数20オングストロームの厚さに形成した。この酸化膜
は非晶質珪素膜552の表面の濡れ性を改善して、溶液が弾かれるのを抑制するためのも
のである。次いで、上記図示しない酸化膜の表面に、1500オングストロームの膜厚の
酸化珪素膜から成る開孔部(開口部)554を有するマスク膜553を形成した。
上記開孔部554は紙面に垂直な方向(手前から奥行方向)に長手方向のスリット状の
形状を有する。開孔部554の幅は20μm以上とするのが適当で、他方、長手方向の寸
法は基板寸法等に合わせて適宜に決定する。ここではその幅を50μm、長手方向の長さ
を3cmとした。
次に、スピナーによって、ニッケル元素を55ppm(重量)含有するニッケル酢酸塩
溶液を塗布して、乾燥し、ニッケル層555を形成した。ニッケル層555は完全な膜を
成しているとは限らないが、この状態では、マスク膜553の開孔部554において、図
示しない酸化膜を介して、ニッケル元素が非晶質珪素膜552の表面に接して保持されて
いる。なお、該溶液としてはニッケル塩の希薄溶液を用いるのがよいが、好ましくはニッ
ケルの含有量が1〜100ppm(重量)程度の範囲の濃度の溶液として用いることがで
きる。
次いで、温度620℃で4時間加熱して、非晶質珪素膜552を結晶化し、結晶性珪素
膜556を形成した。この加熱によって、非晶質珪素膜552においてマスク膜553の
開孔部554において露出された領域557の表面から下地膜551に向かって、結晶が
縦成長するため、領域557は縦成長領域となる。
一方、領域558においては、縦成長領557を起点にして、図58(B)中矢印で指
示するように、基板550の面と平行に結晶成長が進行する。このように一方向に結晶成
長する結晶化過程を横成長と指称する。従って、結晶珪素膜556中の領域558は横成
長領域である。
その後、酸化珪素膜から成るマスク膜553を除去した。次に、図58(C)に示すよ
うに、フッ素原子を含有する酸化雰囲気中で加熱することにより、結晶性珪素膜556の
表面に熱酸化膜559を200〜500オングストロームの膜厚に形成する。なお、必要
であれば、該熱酸化工程前に、レーザー光や赤外光による光アニールや、熱アニールを実
施して、結晶性珪素膜556の結晶性をより向上させてもよい。また光アニールと熱アニ
ールとを併用してもよい。
本実施例における上記熱酸化工程は、酸素雰囲気中にNF3 ガスを450ppm(容量
)添加した雰囲気中で、600℃の温度で12時間加熱して、熱酸化膜559を500オ
ングストローム程度の膜厚に形成した。この結果、結晶性珪素膜556の膜厚は、熱酸化
工程前に1000オングストローム程度であったものが、750オングストローム程度と
なった。
結晶性珪素膜556の表面に熱酸化膜559が形成されるに従って、未結合状態のSi
が生成される。このSi原子は結晶性珪素膜556の結晶粒界においてSiのダングリン
グボンドと結合して、結晶性珪素膜556の欠陥がパッシベーションされる。1000オ
ングストロームの膜厚の結晶性珪素膜556に対して酸化珪素膜559を500オングス
トローム程度形成することで、結晶性珪素膜556の結晶粒界の欠陥密度を十分に減少さ
せることができる。
次に、図58(D)に示すように、エッチングによって熱酸化膜559を除去した。こ
のエッチング工程においては、酸化珪素と珪素とのエッチングレートの高いエッチング液
、或いはエッチングガスを使用する。本実施例では、バッファーフッ酸を使用したウェッ
トエッチングにより熱酸化膜559を除去した。
次いで、図58(E)に示すように、結晶性珪素膜556を島状にエッチングしてTF
Tの活性層560を形成した。この場合、活性層560は横成長領域558のみで構成さ
れるようにすると良い。次に、活性層560の表面にゲイト絶縁膜を構成する酸化珪素膜
561をプラズマCVD法又は減圧CVD法によって成膜するが、ここでは減圧CVD法
を用いた。
さらに、酸化珪素膜561の表面に、ゲイト電極562を構成するアルミニウム膜を、
スパッタ法により5000オングストロームの厚さに堆積させた。アルミニウムには、予
めスカンジウムを少量含有させておくと、後の加熱工程等においてヒロックやウィスカー
が発生するのを抑制することがてきるが、ここではスカンジウムを0.2重量%含有させ
た。
次いで、アルミニウム膜の表面を陽極酸化して、図示しない緻密な陽極酸化物を極薄く
形成した後、アルミニウム膜の表面にレジストのマスク563を形成した。この場合、ア
ルミニウム膜の表面に、該図示しない緻密な陽極酸化物が形成されているため、マスク5
63を密着させて形成することができる。次に、レジストのマスク563を用いて、アル
ミニウム膜をエッチングして、図58(E)に示すようにゲイト電極562を形成した。
さらに、図59(A)に示すように、レジストのマスク563を残したまま、ゲイト電
極562を陽極酸化して、多孔質の陽極酸化物564を4000オングストロームの厚さ
に形成した。この場合、ゲイト電極562の表面にレジストのマスク563が密着してい
るため、多孔質の陽極酸化物564はゲイト電極562の側面のみに形成される。
次に、図59(B)に示すように、レジストのマスク563を剥離した後に、ゲイト電
極562を電解溶液中で再び陽極酸化して、緻密な陽極酸化物565を1000オングス
トロームの厚さに形成した。上記陽極酸化物564及び565の作り分けには、使用する
電解溶液を変えればよい。このうち、多孔質の陽極酸化物564を形成する場合には、例
えばクエン酸、シュウ酸、クロム酸又は硫酸を3〜20重量%程度含有した酸性溶液を使
用すればよく、ここではシュウ酸5重量%の酸性水溶液を用いた。
他方、緻密な陽極酸化物565を形成する場合には、例えば酒石酸、ほう酸又は硝酸を
3〜10重量%程度含有するエチレングリコール溶液をPHを7程度に調整した電解溶液
を使用すればよい。ここでは酒石酸5重量%のエチレングリコール溶液をPH=7に調整
して用いた。
次に、図59(C)に示すように、ゲイト電極562及びその周囲の多孔質の陽極酸化
物564、緻密な陽極酸化物565をマスクにして、酸化珪素膜561をエッチングして
、ゲイト絶縁膜566を形成した。次いで、図59(D)に示すように、多孔質の陽極酸
化物564を除去した後に、イオンドーピング法により、ゲイト電極562、緻密な陽極
酸化物565及びゲイト絶縁膜566をマスクにして、活性層560に導電型を付与する
不純物を注入した。
本実施例では、Nチャネル型TFTを形成するために、ドーピングガスにフォスフィン
を使用して、P(リン)イオンをドーピングした。なお、ドーピングの際に、ゲイト絶縁
膜564は半透過なマスクとして機能するように、ドーズ量、加速電圧等の条件を制御す
る。上記ドーピングの結果、ゲイト絶縁膜564に覆われていない領域は高濃度に燐(P
)イオンが注入されて、ソース領域567、ドレイン領域568を形成した。
一方、ゲイト絶縁膜566のみに覆われている領域には、低濃度にPイオンが注入され
て、低濃度不純物領域569、570が形成された。またゲイト電極562の直下の領域
には不純物が注入されないため、チャネル領域571が形成された。ドーピイング工程の
後に、熱アニール、レーザアニール等を実施して、ドーピイングされたPイオンを活性化
するが、ここでは熱アニールを適用した。
低濃度不純物領域569、570は高抵抗領域として機能するため、オフ電流の低減に
寄与する。特に、ドレイン568側の低濃度不純物領域570はLDDと呼ばれている。
また、緻密な陽極酸化物564を十分に厚くすることにより、ゲイト電極562の端面か
ら不純物領域がずれているオフセット構造とすることができため、オフ電流をより低減さ
せることができる。
次いで、図59(E)に示すように、プラズマCVD法により、層間絶縁物572とし
て酸化珪素膜を5000オングストロームの厚さに成膜した。なお、層間絶縁物572と
して、酸化珪素膜の単層膜の代わりに、窒化珪素膜の単層膜、または酸化珪素膜と窒化珪
素膜の積層膜を形成してもよい。
次に、エッチング法によって酸化珪素膜から成る層間絶縁物572をエッチングして、
ソース領域567及びドレイン領域568のそれぞれにコンタクトホールを形成した後、
アルミニウム膜を4000オングストロームの厚さにスパッタリング法により成膜した。
これをパターニングして、ソース領域567及びドレイン領域568のコンタクトホール
に電極573、574を形成した。
最後に、水素雰囲気中で300℃の温度で加熱処理した。なお、この水素プラズマ処理
は活性層560の欠陥をパッシベーションするのではなく、活性層560とアルミニウム
から成る電極573、574との界面のパッシベーションを主な目的とする。以上の工程
を経て、図59(E)に示ように、世LDD構造を有するTFTを作製した。
本実施例の作製工程に従って作製したNチャネル型のTFTにおいては、水素プラズマ
処理を実施した後の電界効果移動度は、水素プラズマ処理を実施する前の10〜20%程
度の増加のみであった。これは、従来、Nチャネル型TFTは水素プラズマ処理をしない
と実用にならないが、前記図58(C)の工程のように、NF3 を添加する熱酸化処理の
みで、活性層560の結晶粒界の欠陥が効果的にパッシベーションされていることを示唆
している。
《実施例69》
本実施例69は、Nチャネル型TFTとPチャネル型TFTとを相補的に組み合わせた
CMOS型のTFTを作製した例である。図60〜図61は本実施例のTFTの作製工程
の説明図である。
まず、図60(A)に示すように、ガラス基板(コーニング1737)575上に、2
000オングストロームの膜厚の酸化珪素膜から成る下地膜576を形成した。次いで、
プラズマCVD法又は減圧熱CVD法により真性(I型)の非晶質珪素膜を700オング
ストロームの厚さに形成した。そして、実施例67に示す方法によって結晶性珪素膜57
7を形成した。なお、実施例68の方法や、加熱処理、レーザー照射等の適当な結晶化方
法によって非晶質珪素膜を結晶化してもよく、これらの場合にも、以下の工程は同じであ
る。
図60(B)に示すように、NF3 の濃度が400ppmである酸素雰囲気中で600
℃の温度で2時間熱酸化して、熱酸化膜578を200オングストロームの膜厚に形成し
て、結晶性珪素膜577の結晶粒界の欠陥をSiでパッシベーションした。この結果、結
晶性珪素膜577はTFT等の半導体材料として好適なものとなる。
次に、バッファーフッ酸からなるエッチャントを使用して、熱酸化膜578を除去した
後に、結晶性珪素膜577を島状にパターニングして、それぞれ活性層579、活性層5
80を形成した。さらに、プラズマCVD法により、ゲイト絶縁膜を構成する酸化珪素膜
581を厚さ1500オングストロームに堆積した。なお、活性層579はNチャネル型
TFTを構成するものであり、活性層580はPチャネル型TFTを構成するものである
次に、スパッタ法により、ゲイト電極582、583を構成するアルミニウム膜を40
00オングストロームの厚さに堆積した。アルミニウム膜には、予めスカンジウムを0.
2重量wt%含有させて、ヒロックやウィスカーが発生するのを抑制した。次に、アルミ
ニウム膜を電解液中で陽極酸化して、表面に100オングストローム程度の緻密な陽極酸
化膜584を形成した。次いで、その陽極酸化膜表面にフォトレジストのマスク585を
形成して、アルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極582、583をそれぞれ形
成した。
さらに、フォトレジストのマスク585を着けたままで、ゲイト電極582、583を
再度陽極酸化して、陽極酸化物586、587を形成した。電解溶液には例えばクエン酸
、シュウ酸、クロム酸又は硫酸を3〜20重量%含有した酸性溶液を使用すればよい。本
実施例では4重量%シュウ酸水溶液を使用した。
ゲイト電極582、583の表面には、フォトレジストのマスク585と陽極酸化膜5
84が存在する状態では、ゲイト電極582、583の側面のみに多孔質の陽極酸化物5
86、587が形成される。この多孔質の陽極酸化物586、587の成長距離は、陽極
酸化の処理時間で制御することができ、この成長距離は低濃度不純物領域(LDD領域)
の長さを決定する。本実施例では多孔質の陽極酸化物586、587を7000オングス
トロームの長さに成長させた。
次に、フォトレジストのマスク585を除去した後、再びゲイト電極582、583を
陽極酸化して、図61(E)に示すように、緻密で強固な陽極酸化膜588、589を形
成した。本実施例では、その電解溶液として3重量%酒石酸のエチレングリコール溶液を
アンモニア水でPH6.9に中和して使用した。
次に、ゲイト電極582、583及び多孔質の陽極酸化物586、587をマスクにし
て、イオンドーピング法により、島状の活性層579、580にP(リン)イオンを注入
した。ドーピングガスとして、水素で1〜10容量%に希釈したフォスフィンを用いた。
ドーピングは、加速電圧を60〜90kVとし、ドーズ量を1×1014〜8×1015原子
/cm2 となるようにするが、本実施例では加速電圧を80kV、ドーズ量を1×1015
原子/cm2とした。
この際には、燐(P)イオンはゲイト電極582、583、多孔質の陽極酸化物586
、587を透過しないが、ゲイト絶縁膜581を透過して、島状シリコン589、580
に注入される。この結果、図61(E)に示すようにN型の不純物領域590〜593が
それぞれ形成される。
次いで、図61(E)〜(F)に示すように、緻密な陽極酸化膜584をバッファーフ
ッ酸で除去した後に、燐酸、酢酸及び硝酸を混合した混酸で、多孔質の陽極酸化物586
、587を除去した。多孔質の陽極酸化物586、587は容易に除去できるため、緻密
で強固な陽極酸化物588、589がエッチングされることはない。
次に、再び燐イオンをドーピングした。加速電圧は60〜90kVとし、ドーズ量は1
×1012〜1×1014原子/cm2 とするが、本実施例では、加速電圧を80kV、ドー
ズ量を1×1014原子/cm2 とした。この場合、燐イオンはゲイト電極582、583
を透過しないが、ゲイト絶縁膜581を透過して活性層579、580に注入される。従
って、燐イオンが2度注入される領域はN型の高濃度不純物領域594〜597となり、
燐イオンが1度注入される領域は、N型の低濃度不純物領域598〜601となる。
図61(G)に示すように、ポリイミド又は耐熱性レジスト602でNチャネルTFT
となる領域を被覆するが、ここではポリイミドを用いた。その後、活性層580の導電型
をN型からP型に反転させるために、硼素イオンをイオンドーピングした。ドーピングガ
スには水素により1〜10容量%程度に希釈されたジボランを使用し、加速電圧を80k
Vとし、硼素のドーズ量は2×1015原子/cm2 とした。
ポリイミド602で被覆された領域は、硼素が注入されないためN型のまま残存してい
る。従って、活性層579において、高濃度不純物領域594、595はそれぞれNチャ
ネル型TFTのソース領域、ドレイン領域に相当し、またゲイト電極582の直下の領域
603は燐イオン及び硼素イオンが注入されず、真性のままであり、TFTのチャネルに
相当する。
硼素イオンのドーピングでは、硼素の注入量が多いため、低濃度不純物領域(LDD領
域)は形成されず、P型の高濃度不純物領域604、605のみが形成される。高濃度不
純物領域604、605は、それぞれ、Pチャネル型TFTのソース領域、ドレイン領域
に相当する。また、ゲイト電極583の直下の領域606は、燐イオン及び硼素イオンが
注入されないために、真性のままであり、TFTのチャネルとなる。
続いて、レジスト602を除去して、図61(H)に示すように、厚さ1μmの酸化珪
素膜を層間絶縁膜607としてプラズマCVD法により形成し、これにコンタクトホール
を形成した。このコンタクトホールに、チタンとアルミニウムの多層膜により、ソース領
域及びドレイン領域の電極、配線608〜610を形成した。最後に、温度350℃の水
素雰囲気中において、2時間の加熱処理を行った。以上の工程を経て、CMOS薄膜トラ
ンジスタが完成された。
本実施例では、N型TFTとP型トランジスタを相補的に組み合わせたCMOS構造を
形成するため、TFTを駆動する際に、低電力化が図れる。また、Nチャネル型TFTの
チャネル603とドレイン領域595の間に低濃度不純物領域599を配置する構成とし
たため、チャネル603とドレイン595の間に高電界が発生することを防止することが
できる。
なお、NF3 を添加した熱酸化工程の条件は、以上実施例67〜69の記載に限定され
るものではなく、熱酸化工程で生ずるTFTが形成される基板の歪みや変形等が許容範囲
となるようにするため、ガラス基板の歪み点以下の温度で、数時間加熱して、数100オ
ングストロームの膜厚に熱酸化膜が成長するように、酸素雰囲気中のNF3 の濃度等を決
定すればよい。また、石英基板等の高耐熱性の基板を用いる場合には、より高温の条件で
も実施される。
また、実施例67〜69においてガラス基板には、歪み点が667℃であるコーニング
1737ガラスを使用したため、熱酸化工程での加熱温度を600℃としたが、例えば、
その歪み点が593℃のガラスを用いる場合には、熱酸化工程での加熱温度は好ましくは
500〜550℃程度にすればよい。
《応用例》
本発明の半導体装置は、各種多様の電気機器の表示装置や各種集積回路、或いは従来の
IC回路に代わる回路用等に応用される。図62〜図63はそのうちの幾つかを例示した
ものである。図62(A)は携帯情報端末機であり、図62(B)は内視鏡からの画像を
見たり、自動車の教習やクレーンの模擬訓練等に利用されるHMD(ヘッドマウントディ
スプレイ)であり、図62(C)はカーナビである。また、図61(D)は携帯電話であ
り、図63(E)はビデオカメラであり、図61(F)はプロゼクションである。本発明
の半導体装置は、これらとは限らず、各種多様の電気機器の表示装置用、従来のIC回路
に代わる回路用、各種集積回路用等に使用される。
本発明によって得られた結晶性珪素膜の微細構造を示す図(光学顕微鏡写真:450倍)。 本発明によって得られた結晶性珪素膜の微細構造を示す図(光学顕微鏡写真:450倍)。 本発明によって得られた結晶性珪素膜の微細構造を示す図(TEM:50000倍)。 本発明によって得られた結晶性珪素膜の微細構造を示す図(TEM:250000倍)。 本発明に係る結晶性珪素膜の製作工程の典型的態様のうちの一例を示す図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いた半導体装置の製作工程の典型的態様のうちの一例を示す図。 本発明に係る結晶性珪素膜につていの数多くの顕微鏡写真から観察された結果を基に想定される結晶成長の形態を模式的に示した図。 半導体装置のサブスレッショルド特性(S値)等を説明するための模式図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いた半導体装置のサブスレッショルド特性(S値)等の諸特性を示す図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いた半導体装置のサブスレッショルド特性(S値)等の諸特性を示す図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いた半導体装置のサブスレッショルド特性(S値)等の諸特性を示す図。 Nチャネル型TFTとPチャネル型TFTとを組み合わせた回路を組んだリングオシレータの特性を説明するための模式図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いてNチャネル型TFTとPチャネル型TFTとを組み合わせた回路を組んだリングオシレータによるオシロスコープ(発振波形)を示す図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いたプレーナ型の薄膜トランジスタのゲイト電流の値の計測値を示す図。 本発明に係る結晶性珪素膜を用いたプレーナ型の薄膜トランジスタのゲイト電流の値の計測値を示す図。 非晶質珪素膜をNiを用いて結晶化した後、熱酸化膜を形成した時点での膜断面方向におけるNi元素の濃度分布を計測した結果を示す図。 非晶質珪素膜をNiを用いて結晶化した後、熱酸化膜を形成した時点での膜断面方向におけるNi元素の濃度分布を計測した結果を示す図。 非晶質珪素膜をNiを用いて結晶化した後、熱酸化膜を形成した時点での膜断面方向におけるClの濃度分布を計測した結果を示す図。 非晶質珪素膜をNiを用いて結晶化した後、熱酸化膜を形成した時点での膜断面方向におけるNi元素の濃度分布を計測した結果を示す図。 非晶質珪素膜をNiを用いて結晶化した後、熱酸化膜を形成した時点での膜断面方向におけるNi元素の濃度分布を計測した結果を示す図。 非晶質珪素膜をNiを用いて結晶化した後、熱酸化膜を形成した時点での膜断面方向におけるClの濃度分布を計測した結果を示す図。 実施例4における作製工程を示す図。 実施例9における作製工程を示す図。 実施例10における作製工程を示す図。 実施例12における作製工程を示す図。 実施例13における作製工程を示す図。 実施例16における作製工程を示す図。 実施例21における作製工程を示す図。 実施例22における作製工程を示す図。 実施例24における作製工程を示す図。 実施例25における作製工程を示す図。 実施例28における作製工程を示す図。 実施例30における作製工程を示す図。 実施例31における作製工程を示す図。 実施例33における作製工程を示す図。 実施例34における作製工程を示す図。 実施例37における作製工程を示す図。 結晶性珪素膜面へのレーザー光照射時の現象を説明する模式図。 実施例39における作製工程を示す図。 実施例41における作製工程を示す図。 実施例42における作製工程を示す図。 実施例44における作製工程を示す図。 実施例45における作製工程を示す図。 実施例48における作製工程を示す図。 実施例50における作製工程を示す図。 実施例52における作製工程を示す図。 実施例53における作製工程を示す図。 実施例54における作製工程を示す図。 実施例55における作製工程を示す図。 実施例58における作製工程を示す図。 実施例60における作製工程を示す図。 実施例61における作製工程を示す図。 実施例62における作製工程を示す図。 実施例63における作製工程を示す図。 実施例66における作製工程を示す図。 実施例67における作製工程を示す図。 実施例67における作製工程を示す図。 実施例68における作製工程を示す図。 実施例68における作製工程を示す図。 実施例69における作製工程を示す図。 実施例69における作製工程を示す図。 本発明の半導体装置の各種応用例のうちの幾つかの例を示す図。 本発明の半導体装置の各種応用例のうちの幾つかの例を示す図。
符号の説明
1、8、20、39、57・・・ガラス基板、石英基板等
2、9、21、40、58・・・下地膜(酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜等)
3、10、86、93、104・・・非晶質珪素膜
4、13、87、96、170・・・ニッケル塩等を含んだ溶液の水膜
5、15、88、98、171・・・結晶性珪素膜
6、16、89、99、172・・・熱酸化膜(金属元素を膜中に高濃度に含んだ)
7、15、90、98、173・・・金属元素の濃度が低減又は除去された結晶性珪素

17、22、41、59、60・・・金属元素の濃度が低減又は除去され、パターニン
グされた結晶性珪素膜
11、94、177、271・・・マスク
12、95、178、272・・・開口
17、26・・・パターン
27 陽極酸化膜
29 酸化珪素膜
28 陽極酸化膜
30 ソース領域
31 チャネル形成領域
32 チャネル領域
33 LDD領域
34 ドレイン領域
35、201 層間絶縁膜
36 ソース電極
37 ドレイン電極

Claims (5)

  1. 結晶化を助長する金属元素を利用して結晶性珪素膜を形成し、
    酸化性雰囲気中で加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成し、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させ、
    該結晶性珪素膜の表面を意図的にオーバーエッチングする条件で該熱酸化膜をエッチングすることにより該熱酸化膜を除去することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  2. ハロゲン元素を含有する下地膜上に結晶化を助長する金属元素を利用して結晶性珪素膜を形成し、
    酸化性雰囲気中で加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に熱酸化膜を形成し、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させ、
    該結晶性珪素膜の表面を意図的にオーバーエッチングする条件で該熱酸化膜をエッチングすることにより該熱酸化膜を除去することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  3. 結晶化を助長する金属元素を利用して結晶性珪素膜を形成し、
    酸化性雰囲気中で第1の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に第1の熱酸化膜を形成し、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させ、
    該結晶性珪素膜の表面を意図的にオーバーエッチングする条件で該第1の熱酸化膜をエッチングすることにより該第1の熱酸化膜を除去し、
    該第1の熱酸化膜を除去した領域の表面上に第2の熱酸化により第2の熱酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  4. ハロゲン元素を含有する下地膜上に結晶化を助長する金属元素を利用して結晶性珪素膜を形成し、
    酸化性雰囲気中で第1の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に第1の熱酸化膜を形成し、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させ、
    該結晶性珪素膜の表面を意図的にオーバーエッチングする条件で該第1の熱酸化膜をエッチングすることにより該第1の熱酸化膜を除去し、
    該第1の熱酸化膜を除去した領域の表面上に第2の熱酸化により第2の熱酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  5. ハロゲン元素を含有する下地膜上に結晶化を助長する金属元素を利用して結晶性珪素膜を形成し、
    酸化性雰囲気中で第1の加熱処理を行って該結晶性珪素膜の表面に第1の熱酸化膜を形成し、該結晶性珪素膜中に存在する当該金属元素を除去又は減少させ、
    該結晶性珪素膜の表面を意図的にオーバーエッチングする条件で該第1の熱酸化膜をエッチングすることにより該第1の熱酸化膜を除去し、
    該第1の熱酸化膜を除去した領域の表面上に第2の熱酸化により第2の熱酸化膜を形成し、該第2の熱酸化膜上にハロゲン元素を含有した絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
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