以下、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図13)に基づいて説明する。図1は走行型芝刈機の全体側面図、図2は全体平面図、図3は動力伝達系統を示す平面図、図4はモア装置と排出ダクトとの関係を示す平断面図、図5は図2のV−V視側断面図、図6は機体フレームと集草ボックスとの連結構造を示す平面図、図7は回動支軸、支持枠体、連係手段及び集草ボックスの関係を示す分離斜視図、図8はPTOクラッチレバーとPTOクラッチとの関係を示す概略側面図、図9は集草ボックスが放出姿勢に切替え回動する態様の第1説明図、図10は集草ボックスが放出姿勢に切替え回動する態様の第2説明図、図11は集草ボックスが放出姿勢に切替え回動する態様の第3説明図、図12は集草ボックスが放出姿勢に切替え回動する態様の第4説明図、図13は集草ボックスの分離斜視図である。
まず、主に図1及び図2を参照しながら、走行型芝刈機の概要について説明する。図1及び図2に示すように、実施形態の走行型芝刈機においては、走行機体1は平面視略門型の機体フレーム2を備えている。当該機体フレーム2は、その左右両側の前後に配置した前後四輪3,3,4,4で支持されている。実施形態の左右両後輪4,4は、機体フレーム2の左右両外側面に固着された一対の門型ブラケット14,14の下端外側に装着されている。
走行機体1の上面前部を覆うフロントカウル5には、動力源としてのエンジン6と、操向丸ハンドル7aを有する操縦コラム部7とが搭載されている。走行機体1の上面後部を覆うリヤカウル8内には、エンジン6からの出力を適宜変速して左右両後輪4,4に伝達するHST式(静油圧式無断変速機構)等のミッションケース9が配置されている(図3参照)。
リヤカウル8上には運転座席10が設けられている。この運転座席10に座ったオペレータが操向丸ハンドル7aを回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右両前輪3,3のかじ取り角(操向角度)が変わるように構成されている。
図2に示すように、運転座席10の左側には、後述するモア装置15を昇降操作するためのモア昇降レバー11が前後回動可能に設けられている。運転座席10の右側には、後述するPTO軸30からモア装置15への動力伝達を継断操作するPTOクラッチレバー12や、後述する集草ボックス23の姿勢を切り替える操作手段としての姿勢切替レバー13が前後回動可能に設けられている。
なお、操縦コラム部7の裏面(後面)側には、走行機体1の車速を適宜調節するための変速ペダルと、走行機体1を制動操作するためのブレーキペダルとが立設されている。
機体フレーム2の下面のうち左右両前輪3,3と左右両後輪4,4との間には、モア装置15が前後一対の連結杆16,17を介して昇降動可能に装着されている。モア装置15は、下向き開口椀状のモアケース18内に、水平回転可能な左右一対のロータリ刈刃19,19を備えている(図3参照)。
また、モアケース18の左右両側の前後には、下降時にモア装置15の高さを調節する4つのゲージ車輪20が取付けられている。モアケース18には、後向きに延びるダクト部21が設けられている。このダクト部21は、機体フレーム2の下面のうち左右両後輪4,4の間に配置された排出ダクト22を介して走行機体1の後部に配置された集草ボックス23に連通している。
次に、図3を参照しながら、走行型芝刈機の動力伝達系統について説明する。実施形態の走行型芝刈機では、エンジン5の回転動力の一部を左右両後輪4,4に配分する二輪駆動方式が採用されている。
すなわち、エンジン6の回転動力の一部は、当該エンジン6に前後外向きに突設された出力軸24の後端部から、前後両端に自在継手を備えた推進軸25、ミッションケース9の前方に配置された走行用ギヤボックス26及び無端ベルト27を介して、ミッションケース9に伝達される。そして、このミッションケース9に左右外向きに突設された横軸(図示せず)から無端チェーン(図示せず)を介して走行機体1の後ろ寄り部位に設けられた左右長手の後輪駆動軸28に伝達される。その結果、後輪駆動軸28の左右両端に取付けられた後輪4,4が回転駆動する。
他方、エンジン6の他の回転動力は、出力軸24の前端部から無端帯29を介して、機体フレーム2の前部に軸支されたPTO軸30に伝達される。次いで、このPTO軸30から、前後両端に自在継手を備えた中間軸31、モアケース18の上面のうち機体フレーム2よりも右側の部位に配置されたモア用ギヤボックス32及び無端ベルト33を介して、モアケース18のうち平面視で機体フレーム2を挟んだ両側に回転可能に軸支された縦長のロータリ軸34,34に動力伝達される。その結果、左ロータリ刈刃19は平面視で時計方向に回転駆動し、右ロータリ刈刃19は平面視で反時計方向に回転駆動する。
左右両ロータリ刈刃19,19の回転により、モアケース18から集草ボックス23に向けて後ろ向きに流れる搬送風が形成される。この搬送風が各ロータリ刈刃19で刈り取られた刈取芝を集草ボックス23にまでスムーズに搬送する。
次に、図4及び図5を参照しながら、モアケース18のダクト部21と集草ボックス23との連通構造について説明する。
モアケース18から後向きに延びるダクト部21は上方及び後方に向かって開口している。ダクト部21の上向き開口21aは断面下向きコ字状の上カバー体35で覆われている。実施形態では、上カバー体35における左右両側板の前端部がダクト部21に対して左右一対の枢着ピン36,36で上下回動可能に連結されている。上カバー体35の後端部は排出ダクト22の搬入口(前面開口)内に差し込まれている。各枢着ピン36にはねじりばね37が被嵌されている。上カバー体35は、各ねじりばね37の弾性復元力により、常時排出ダクト22の上部内面に当接するように上向き回動する方向に付勢されている。
モアケース18のダクト部21と上カバー体35とで囲まれた空間に連通する排出ダクト22は、機体フレーム2に固着された断面下向きコ字状の主ダクト体41と、主ダクト体41における左右両側板の前部内面に配置された一対の揺動側板42,42と、主ダクト体41の下向き開口41aを塞ぐ前後2枚の回動板43,44とを備えている。前後2枚の回動板43,44は、その下面側に両回動板43,44に跨って配置されたリンク機構としてのリンク杆53を介して、相互に連動して起伏(上下)回動するように構成されている。
各揺動側板42は、その後端部を主ダクト体41の左右側板に枢支ピン45で枢着することにより、主ダクト体41に対して上下回動可能に連結されている。各揺動側板42の前部(モア装置15寄りの自由端部)は、モア装置15の昇降動に連動して揺動側板42が枢支ピン45回りに上下回動するように、連杆46を介してモアケース18に連結されている(図1及び図5参照)。
左右両揺動側板42,42の中央下部の間には、水平状に延びる前枢軸47が装架されている。揺動側板42のうち前枢軸47よりも前方の箇所には、左右内向きに突出する支持ピン48が固着されている。左右両揺動側板42,42における前枢軸47よりも後方の箇所には、断面円形で細軸状の支持バー49が装架されている。
下向き開口41aの前半部を塞ぐ前回動板43は、その下面後部に設けられた筒状部材50を前枢軸47に回動可能に被嵌することにより、左右両揺動側板42,42に対して前枢軸47回りに起伏(上下)回動可能に取り付けられている。下向き開口41aの前半部を塞ぐように前回動板43を下向き回動させたときには、その前部は左右一対の支持ピン48,48に当接して支持される。換言すると、前回動板43の下向き回動は、その前部が両支持ピン48,48に当たる位置(図4及び図5参照)までに規制されている。
後回動板44は、下向き開口41aの後半部や排出ダクト22の搬出口(後面開口)に嵌る程度の面積を有する矩形薄板状のものである。後回動板44は、その下面後部に設けられた筒状部材52を左右両門型ブラケット14,14の後部間に装架された後枢軸51に回動可能に被嵌することにより、左右両門型ブラケット14,14に対して後枢軸51回りに起伏(上下)回動可能に取り付けられている。
下向き開口41aの後半部を塞ぐように後回動板44を下向き回動させたときには、その前部はリンク杆53を介して横長の支持バー49に当接して支持される。この支持バー49の存在により、後回動板44が図5及び図9〜図11に示す位置を超えてまで下向き回動することはない。
前後両回動板43,44の前後長さは、跳ね上げ回動時に先端(前端)が排出ダクト22の天井面に干渉しない程度の長さに設定されている。
前後両回動板43,44の下面側に配置されたリンク機構としてのリンク杆53は、その長手両端部に横向き筒状のボス部54が一体に形成された略I字棒状のものである。実施形態では、各回動板43(44)の下面後部に固着された左右一対のブラケット片55,55の間にリンク杆53のボス部54を介挿した状態で、連結ピン56が一方のブラケット片55からボス部54を経て他方のブラケット片55にまで抜き差し可能に挿入固定されている。
この場合、前回動板43の後端部には、平面視でリンク杆53の一端部(前端部)と重なる箇所に、前後に長い間隙部57が切り欠き形成されている。この間隙部57の存在により、前後長手のリンク杆53を両回動板43,44の下面側に両者43,44に跨るようにして配置していても、両回動板43,44の連動しての上下回動時に、前回動板43の後端部とリンク杆53との干渉が回避される。
なお、前回動板43の両ブラケット片55,55に形成され且つ連結ピン56が貫通する穴は、両回動板43,44をスムーズに連動して上下回動させるために前後長手の長穴となっている。これにより、後回動板44の跳ね上げ回動にやや遅れて、前回動板43が跳ね上げ回動することになり、後回動板44は、その先端(前端)を前回動板43の後端に引っ掛けることなくスムーズに跳ね上げ回動することができる。リンク杆53の前端部には、前回動板を下向き回動させたときに間隙部57を塞ぐための閉塞板58が設けられている。
後枢軸51のうち門型ブラケット14の外側に突出した一端部には、この後枢軸51と交差する方向に延びるように伝動アーム59が固着されている。この伝動アーム59の先端部が後述する中継杆97の他端部に連結されている。
次に、図5〜図7を主に参照しながら、機体フレーム2と集草ボックス23との連結構造について説明する。
集草ボックス23は前面を開口した略箱型のものであり、アクチュエータとしての油圧シリンダ101(詳細は後述する)の駆動により、集草姿勢と放出姿勢とに切り替わるように回動支軸71回りに上下回動する構成となっている。集草ボックス23は、その骨組を構成する枠体61と、枠体61及び底板62の周囲を覆う網又は布製の袋体63とを備えている。枠体61の底面を形成する底板62の前端部は、枠体61に対して横長の水平軸64で回動可能に軸支されている。集草ボックス23の上面には、袋体63の網目を通り抜ける塵埃が走行機体1側へ回り込むのを防ぐための蓋カバー体65が着脱可能に設けられている。
枠体61の上部のうち前面開口寄りの部位には左右一対のプレート板66,66が固着されている。これら両プレート板66,66が機体フレーム2の後端部に装着された支持枠体72に対して水平筒状の回動支軸71で着脱可能に連結されている。回動支軸71のうち支持枠体72を挟んで両側には、当該回動支軸71と一体に回動する係合金具73,73が配置されている。これら両係合金具73,73は、回動支軸71回りに回動することにより、枠体61のうち回動支軸71の後方に位置する後梁フレーム114に係脱するように構成されている。
回動支軸71の自軸回りの回動で両係合金具73,73が上向き回動すると、両係合金具73,73は後梁フレーム114に下方から係合してこれを持ち上げる。その結果、集草ボックス23は回動支軸71を中心に上向き回動して、前面開口を地面に向けて刈取芝を放出する放出姿勢となる(図1の二点鎖線状態及び図12参照)。
逆に、両係合金具73,73が下向き回動すると、両係合金具73,73と後梁フレーム114との係合が解除され、集草ボックス23は回動支軸71に対して自由回動可能な状態となる。これにより、集草ボックス23は自重により回動支軸71を中心に下向き回動して、前面開口を排出ダクト22の搬出口に向けてモア装置15で刈り取られた刈取芝を受け入れる集草姿勢に戻る(図1の実線状態、図5及び図9参照)。
支持枠体72は、回動支軸71が回動可能に差し込まれる横長のパイプ部材74と、このパイプ部材74の左右両側に配置された側枠体75,75と、当該両側枠体75,75の前部間に固着された横梁部材76とを備えている。各側枠体75は、横長筒状の挿入管部77と、挿入管部77の後端に上向き突設された起立部78と、挿入管部77及び起立部78の一側面に固着された側板79とからなっている。実施形態では、支持枠体72の各挿入管部77が機体フレーム2の左右後端に各々後方から嵌め込み装着されている。
回動支軸71の左右端部は、枠体61の各プレート板66に形成された軸穴66aに回動可能に挿入されている。回動支軸71の一端部には、パイプ部材74とプレート板66との間に、前述の係合金具73に固着された筒部材80が被嵌されている。
実施形態では、一方のプレート板66の軸穴66aを貫通した回動支軸71の内径部に頭付きの第1連結軸81が挿入されている。そして、第1連結軸81の先端部に貫通形成された穴81aと、回動支軸71の一端部に貫通形成された穴71aと、筒部材80に貫通形成された穴80aとを合致させた状態で、当該穴71a,80a,81a群に第1係止ピン82が着脱可能に差し込まれている。これにより、第1連結軸81と回動支軸71と筒部材80との三者は、共に一体に回動し且つ回動支軸71が一方のプレート板66から抜け不能となるように連結されている。
回動支軸71の他端部には、パイプ部材74とプレート板66との間に、前述の係合金具73と一対の固定リンク83,84とが固着されている(固定リンクは少なくとも1つあればよい)。回動支軸71のうち第2固定リンク84とパイプ部材74との間には、略菱形状の回動リンク85が回動可能に被嵌されている。
実施形態では、他方のプレート板66よりも外側の箇所に、ロックアーム86に固着された筒部材87を配置し、この筒部材87と他方のプレート板66の軸穴66aを貫通した回動支軸71の内径部とに、略J字状に形成された第2連結軸88の長軸部89が挿入されている。そして、回動支軸71のうち第1固定リンク83と係合金具73との間の箇所に貫通形成された穴71bに、第2連結軸88の長軸部89先端に貫通形成された穴89bを介して、第2係止ピン91が着脱可能に差し込まれている。これにより、第2連結軸88と回動支軸71とは、回動支軸71が他方のプレート板66から抜け不能となるように連結されている。
ロックアーム86の略中央部には、第2連結軸88の短軸部90を嵌め込むための嵌合穴86aが形成されている。実施形態では、第2連結軸88と回動支軸71とを第2係止ピン91で連結すると共に、第2連結軸88の短軸部90をロックアーム86の嵌合穴86aに挿入することにより、ロックアーム86が回動支軸71と一体に回動するように構成されている。
ロックアーム86のうち筒部材87と反対側の端部は、略棒状の連杆100を介して、集草ボックス23の下端前部に位置する水平軸64の端部に固着された係合リンク92に連結されている。この係合リンク92は、水平軸64回りに回動することにより、排出ダクト22の後端下部に設けられた鉤状の係合片93(図9及び図10参照)に係脱するように構成されている。
左右一対の固定リンク83,84には、アクチュエータとしての油圧シリンダ101から突出するピストンロッド102の先端部が横長のガイドピン94で回動可能に枢着されている。油圧シリンダ101の基端部は、機体フレーム2の後端部に設けられたブラケット95に対してピン軸96で回動可能に連結されている(図5及び図6参照)。
第1固定リンク83の上下中途部に形成された挿入穴83aには、略棒状の接続ロッド103の一端に形成された鉤状部104が嵌挿されている。接続ロッド103の他端部は、PTOクラッチレバー12の回動中心であるレバー軸105に固着されたクラッチ操作板106に連結されている。
回動リンク85には、側面視で回動支軸71を中心とする略円弧状の案内溝穴85aが貫通形成されている。実施形態では、この案内溝穴85aに対して、両固定リンク83,84と油圧シリンダ101のピストンロッド102とをつなぐガイドピン94の先端部が摺動可能で且つ抜け不能に差し込まれている。
回動リンク85の下端部には、略長板状の中継杆97の一端部が枢着ピン98で回動可能に枢着されている。中継杆97の他端部は、後枢軸51の一端に固着された伝動アーム59に枢着ピン99で回動可能に枢着されている。この中継杆97の存在により、集草ボックス23側の回動リンク85と排出ダクト22側の伝動アーム59とは連動して互いに逆方向に回動するように構成されている。すなわち、例えば回動リンク85を時計方向に回動させると、伝動アーム59は反時計方向に回動するように構成されている。
なお、回動支軸71側の両固定リンク83,84及び回動リンク85と、排出ダクト22側の伝動アーム59と、回動リンク85と伝動アーム59とをつなぐ中継杆97とが、特許請求の範囲に記載された連係手段に相当する。
次に、図5及び図8等を参照しながら、PTOクラッチレバー12の入り切り状態に応じて、集草ボックス23の姿勢切替え回動を許容したり規制したりする機構について説明する。
PTOクラッチレバー12と共にレバー軸105回りに一体回動するクラッチ操作板106は、テンションクラッチ式のPTOクラッチ107に対してクラッチワイヤ108で連結されている。
PTOクラッチレバー12を図8の実線で示す入り位置まで後向き傾動させると、クラッチワイヤ108が引っ張られて、PTOクラッチ107が無端帯29(図3及び図8参照)を押圧する。これにより、無端帯29が緊張して、エンジン6からの動力がPTO軸30に伝達される。PTOクラッチレバー12を図8の一点鎖線で示す切り位置まで前向き傾動させると、クラッチワイヤ108が緩められて、PTOクラッチ107が無端帯29から離れる。これにより、無端帯29が緩んで、エンジン6からPTO軸30への動力伝達が遮断される。
クラッチ操作板106の下端部には、前後方向に貫通する摺動穴付きの連結ブロック109が回動可能に枢着されている。この連結ブロック109の摺動穴内に、接続ロッド103の他端部がその長手方向に沿ってスライド可能に挿入されている。接続ロッド103のうち連結ブロック109よりも前方の他端部には、抜け止め用の止めピン110が固着されている。
集草ボックス23が集草姿勢のときに、PTOクラッチレバー12を切り位置から入り位置までの回動ストロークθでレバー軸105回りに前後回動させると、連結ブロック109が接続ロッド103に対して、最前位置(図8の実線状態参照)から最後位置(図8の一点鎖線状態参照)までの摺動ストロークLで前後摺動(スライド)するように構成されている。
集草ボックス23が集草姿勢で且つPTOクラッチレバー12が切り位置のときは、接続ロッド103の他端部は、連結ブロック109から摺動ストロークLだけ前方に突出している。これにより、集草ボックス23を放出姿勢に切替え回動させる際に、第1固定リンク83が接続ロッド103を後方へ引き寄せると、接続ロッド103は摺動ストロークLの分だけ後方へスライドすることになるから、クラッチ操作板106と接続ロッド103との連結が集草ボックス23の放出姿勢への切替え回動を妨げることはない。換言すると、PTOクラッチレバー12が切り位置のときは、集草ボックス23を集草姿勢と放出姿勢とに切替え回動させることができる。
PTOクラッチレバー12が入り位置のときは、接続ロッド103の他端部に設けられた止めピン110が連結ブロック109の近傍に位置しているので、集草ボックス23を放出姿勢に切替え回動させようとしても、止めピン110が連結ブロック109に突き当たって、接続ロッド103はそれ以上後方にスライドすることができない。これにより、集草ボックス23の放出姿勢への切替え回動が規制されている。
すなわち、PTOクラッチレバー12が切り位置にあるときは、姿勢切替レバー13の操作で、集草ボックス23を集草姿勢と放出姿勢とに切替え回動させることができるが、PTOクラッチレバー12が入り位置にあるときは、姿勢切替レバー13の操作に拘らず、集草ボックス23は集草姿勢で維持され、放出姿勢となるように切替え回動することはない。
このように構成すると、PTOクラッチレバー12を入り操作してモア装置15を駆動させたままで、集草ボックス23が放出姿勢となるように姿勢切替レバー13を操作したとしても、接続ロッド103の後方へのスライドが規制されるので、集草ボックス23を放出姿勢に切り替えることはできない。従って、モア装置15を駆動させた状態では、刈取芝はモア装置15から排出ダクト22を経て集草ボックス23内に搬送されることになり、刈取芝が走行機体1の周囲に撒き散らされるのを確実に防止することができる。
集草ボックス23が放出姿勢のときは、接続ロッド103の他端部に設けられた止めピン110が連結ブロック109の近傍に位置することになるので、PTOクラッチレバー12を入り操作しようとしても、止めピン110が連結ブロック109に突き当たって、クラッチ操作板106が図8の時計方向にレバー軸105回りに回動することができない。これにより、集草ボックス23が放出姿勢のときに作業者がPTOクラッチレバー12に不用意に当たって入り操作しようとしても、PTOクラッチレバー12は入り位置に後向き傾動することができないので、結果的にモア装置15は駆動しない(左右両ロータリ刈刃19,19が回転駆動しない)。
従って、集草ボックス23が放出姿勢のときに、作業者が気づかないうちにモア装置15が駆動して刈取芝を排出ダクトの搬出口(後面開口)から後方に撒き散らしてしまうことを未然に防止することができるのである。
次に、図9〜図12を参照しながら、排出ダクト22側の前後両回動板43,44と集草ボックス23とが上下回動する態様について説明する。ここで、PTOクラッチレバー12は予め切り位置にまで前向き傾動させているものとする。
姿勢切替レバー13を前向きに傾動操作すると、油圧シリンダ101のピストンロッド102が伸長して、一対の固定リンク83,84が回動支軸71回りに図9の反時計方向に上向き回動することにより、両固定リンク83,84が固着された回動支軸71と共に、一対の係合金具73,73とロックアーム86とが図9の反時計方向に一体に上向き回動する。
そうすると、両係合金具73,73は枠体61を構成する後梁フレーム114に下方から係合する。ロックアーム86はその上向き回動により連杆100を引き上げるので、係合リンク92が排出ダクト22の係合片93から外れて係合解除される(図10参照)。
図10に示す作動初期の段階では、両係合金具73,73が枠体61を構成する後梁フレーム114に下方から係合するまで、集草ボックス23が回動支軸71に対して自由回動可能な状態にあるので、集草ボックス23は集草姿勢を維持する。
また、ピストンロッド102に枢着されたガイドピン94の先端部は回動リンク85の案内溝穴85a内をその後端縁に向かってスライドするので、回動支軸71に対して自由回動可能な状態にある回動リンク85自体は回動せずに静止している。その結果、中継杆97を介して回動リンク85に連結された伝動アーム59及び後枢軸51、ひいては前後両回動板43,44も回動しない。従って、この段階では係合リンク92と係合片93との係合解除動作だけが行われる。
次いで、ガイドピン94の先端部が案内溝穴85aの後端縁に突き当たるまで油圧シリンダ101のピストンロッド102が伸長して、両係合金具73,73が後梁フレーム114を持ち上げるように回動支軸71回りに上向き回動すると、集草ボックス23は、前面開口が前方斜め下向きとなるように適宜角度δ(例えば30°〜60°程度)だけ回動支軸71回りに上向き回動して、前方斜め下向きの放出姿勢となる(図11の実線状態参照)。一般には、この時点で集草ボックス23内の刈取芝が地上に滑り落ち始める。
図11に示す作動中期の段階でも、ガイドピン94の先端部が案内溝穴85aの後端縁に突き当たるまでは、回動リンク85は回動せずに静止しているので、中継杆97を介して回動リンク85に連結された伝動アーム59及び後枢軸51、ひいては前後両回動板43,44は回動せずに、排出ダクト22(主ダクト体41)の下向き開口41aを塞ぐ姿勢を維持する。
次いで、油圧シリンダ101のピストンロッド102が更に伸長して、両係合金具73,73が回動支軸71回りに上向き回動することにより、集草ボックス23は、回動支軸71回りに上向き回動して、前面開口が下を向いた放出姿勢となる(図12参照)。そうすると、集草ボックス23内の刈取芝は地上に向けて一気に排出される。
この場合、ガイドピン94の先端部は案内溝穴85aの後端縁に当たっているので、両係合金具73,73と共に回動リンク85も回動支軸71回りに上向き回動する。そうすると、中継杆97を介して回動リンク85に連結された伝動アーム59及び後枢軸51は、図12の時計方向(回動支軸71と逆方向)に後枢軸51回りに回動するので、後回動板44が排出ダクト22の搬出口を塞ぐように後枢軸51回りに跳ね上げ回動する。この後回動板44はリンク杆53を介して前回動板43に連結されているので、前回動板43は後回動板44の跳ね上げ回動と連動して前枢軸47回りに跳ね上げ回動する。これにより、排出ダクト22(主ダクト体41)の下向き開口41aが開放される。
一方、姿勢切替レバー13を後向きに傾動操作すると、油圧シリンダ101のピストンロッド102が短縮して、一対の固定リンク83,84が回動支軸71回りに図12の反時計方向に下向き回動することにより、両固定リンク83,84が固着された回動支軸71と共に、一対の係合金具73,73とロックアーム86とが図12の時計方向に一体に下向き回動する。
そうすると、両係合金具73,73と後梁フレーム114との係合が解除され、集草ボックス23は回動支軸71に対して自由回動可能な状態となるので、集草ボックス23は自重により回動支軸71を中心に下向き回動して集草姿勢に戻る。そして、ロックアーム86はその下向き回動により連杆100を押し下げるので、係合リンク92が排出ダクト22の係合片93に蹴り込み係合し、集草ボックス23が回動不能にロックされる。
また、ピストンロッド102の短縮動により、ピストンロッド102に枢着されたガイドピン94の先端部が回動リンク85の案内溝穴85aの前端縁までスライドして突き当たるので、両係合金具73,73と共に回動リンク85も回動支軸71回りに下向き回動する。そうすると、中継杆97を介して回動リンク85に連結された伝動アーム59及び後枢軸51は、図9の反時計方向(回動支軸71と逆方向)に後枢軸51回りに回動するので、後回動板44が排出ダクト22の搬出口を開放するように後枢軸51回りに下向き回動すると共に、これに連動して前回動板43が前枢軸47回りに下向き回動する。これにより、排出ダクト22(主ダクト体41)の下向き開口41aが塞がれる。
以上のことから、実施形態の走行型芝刈機によると、作業者が姿勢切替レバー13を前向きに傾動操作するだけで、集草ボックス23が放出姿勢に姿勢変更回動すると共に前後両回動板43,44が跳ね上げ回動するので、放出姿勢に姿勢変更回動した集草ボックス23から刈取芝を放出するたびに、前後両回動板43,44上に溜まった刈取芝を、前後両回動板43,44の跳ね上げ回動で地上に滑り落とすことができる。
しかも、前後両回動板43,44の前後長さを、跳ね上げ回動時に先端(前端)が排出ダクト22の天井面に干渉しない程度の長さに設定しているので、前後両回動板43,44の両方を、跳ね上げ回動時に地面に対して大きく傾斜させることができ、その結果、前後両回動板43,44上に溜まった刈取芝をスムーズに地上に放出することができる。従って、刈取芝の堆積による排出ダクト22の詰りを確実に抑制することができる。
また、集草ボックス23が放出姿勢に姿勢変更回動するのに遅れて、前後両回動板43,44が跳ね上げ回動するというように、集草ボックス23の放出姿勢への回動と後回動板44の跳ね上げ回動との作動タイミングをずらすことにより、集草ボックス23から先に刈取芝が放出されるので、後回動板43上を滑り落ちる刈取芝と集草ボックス23から放出される刈取芝とが排出ダクト22の搬出口の近傍箇所で干渉し合う(衝突する)ことはなくなる。これにより、集草ボックス23から放出された刈取芝の堆積山は、その最も高い位置が排出ダクト22の搬出口から十分後方に離れることになり、排出ダクト22の搬出口の近傍箇所に刈取芝の堆積山が形成されることはなくなる。
従って、排出ダクト22の搬出口の近傍箇所に、後回動板44上の刈取芝が溜まるのに十分なスペースを確保することができ、後回動板44上の刈取芝を確実に地上に放出することができる。
なお、集草ボックスが放出姿勢に姿勢変更回動するのに遅れて後回動板44を上向き回動させる主要な構成としては、略円弧状の案内溝穴85aが形成された回動リンク85を使用するに過ぎないので、構造が簡単で部品点数も少なくて済み、製造コストの低減に寄与することもできる。
また、排出ダクト22の底面を構成する前後両回動板43,44が、その下面側に跨って配置されたリンク機構としてのリンク杆53を介して、互いに連動して起伏(上下)回動する構成であるので、通常の刈取作業時には排出ダクト22の底面を前後両回動板43,44で十分に塞ぐことができる。これにより、排出ダクト22の底面からの刈取芝の漏れ出しを効果的に防止することができる。
そして、後回動板44だけでなく前回動板43も跳ね上げ回動可能であるから、排出ダクト22の底面のうちどの箇所に刈取芝が溜まったとしても、この刈取芝を前後両回動板43,44の跳ね上げ回動で地上に滑り落とすことができる。これにより、作業者が排出ダクト22内に溜まった刈取芝を手作業で取り除く必要がなくなり、作業者の負担を軽減することができるのである。
さらに、前後両回動板43,44を互いに連動して起伏回動させるためのリンク機構として、長手両端部に横向き筒状のボス部54が一体に形成された略I字棒状のリンク杆53を採用しているから、構造が簡単で部品点数も少なくて済み、製造コストの低減に寄与することができる。しかも、リンク杆53は両回動板43,44の下面側に跨って配置されているので、前後両回動板43,44を下向き回動させた状態では、リンク杆53は刈取芝が搬送される排出ダクト22の外に位置することになる。これにより、リンク杆53の存在が刈取芝の集草ボックス23への搬送を妨げることはない。
実施形態では、後回動板44を、後枢軸51回りに跳ね上げ回動した状態で排出ダクト22の後面開口を塞ぐ大きさに設定しているので、放出姿勢に切替え回動した集草ボックス23から刈取芝を放出するに際して、排出ダクト22の搬出口(後面開口)は、後枢軸51回りに跳ね上げ回動した後回動板44で塞がれることになる。これにより、集草ボックス23から排出ダクト22内に刈取芝が逆流するのを確実に防止することができる。
次に、走行機体1から集草ボックス23を取り外す態様の一例について説明する。ここで、集草ボックス23の上面に設けられた蓋カバー体26は予め取り外されているものとする。
まず、回動支軸71と係合金具73に固着された筒部材80と第1連結軸81との三者を連結する第1係止ピン82を抜き取って、回動支軸71と筒部材80と第1連結軸81との三者の連結を解除してから、第1連結軸81を左右外向きに引き抜く。また、回動支軸71と第2連結軸88とを連結する第2係止ピン91を抜き取って、回動支軸71と第2連結軸88との連結を解除してから、第2連結軸88を左右外向きに引き抜く。
次いで、ロックアーム86に固着された筒部材87を取り外してから、集草ボックス23を左右方向にずれ動かしたり回動支軸71を長手方向にずれ動かしたりすることにより、左右両プレート板66の軸穴66aから回動支軸71の端部をそれぞれ引き抜いて、走行機体1の後部から集草ボックス23のみを取り外すのである。
従って、走行機体1側に支持枠体72及び回動支軸71を残したままで、集草ボックス23のみを走行機体1の後部から簡単に取り外すことができる。これにより、支持枠体72及び回動支軸71のない分だけ集草ボックス23の重量は軽くなるから、取り外しの手間を軽減することができ、マルチング作業をする際やメンテナンス時の作業効率を向上させることができる。
実施形態では、連結軸81,88と係止ピン82,91とを利用して、回動支軸71の各端部をプレート板66に着脱可能に連結しているので、各係止ピン82(91)を抜き取ったのち各連結軸81(88)を引き抜くという簡単な作業で、集草ボックス23のみを走行機体1の後部からスムーズに取り外すことができる。もちろん、前記と逆の手順を踏めば、走行機体1の後部に集草ボックス23を簡単に取り付けられる。
以上のことから、集草ボックス23の走行機体1に対する着脱作業を手軽に行うことができるのである。
また、実施形態では、連結軸81,88と係止ピン82,91とを利用して、回動支軸71を支持枠体72と集草ボックス23の各プレート板66とに対して着脱可能に装着する構成を採用しているので、回動支軸71自体も走行機体1と集草ボックス23とを連結させる役割を兼ねている。従って、集草ボックス23を走行機体1に対して姿勢変更回動可能に連結するための機構が部品点数の少ない簡単な構造となり、コストの抑制にも寄与することができるのである。
次に、図13等を参照しながら、集草ボックス23の詳細な構造について説明する。
図13に示すように、集草ボックス23の枠体61は、縦アーム部116とこれの上端部から後ろ向きに延びる横アーム部115とで側面視逆L字状に形成された左右一対のサイドフレーム111,111と、当該両サイドフレーム111,111の横アーム部115,115の後端同士を着脱可能に連結する後ろ連結フレームとしての略コ字状のリヤフレーム112と、両サイドフレーム111,111の縦アーム部116,116の下端同士を着脱可能で且つ回動可能に連結する底板62と、当該底板62の後部とリヤフレーム112とを着脱可能に連結する弾性体としての一対の板ばね122,122と、両サイドフレーム111,111のコーナ部同士を連結する前後2本の梁フレーム113,114とを備えている。
実施形態では、左右各サイドフレーム111のコーナ部に固着されたプレート板66に対して、前後の梁フレーム113,114の各端部がそれぞれねじ止めされている。各サイドフレーム111の縦アーム部116の下端部には、貫通穴117aを有するブラケット片117が後向きに突出するように溶接等で固着されている。底板62の下面前部に固着された水平軸64の左右内径部に、各ブラケット片117の貫通穴117aを介して取り付けねじ118を左右外側からねじ込むことにより、底板62は左右両サイドフレーム111,111で上下(起伏)回動可能に支持されている。
リヤフレーム112の両水平アーム部120,120は、先端部に行くに従って互いの並び間隔が広がるように(略ハ字状に並ぶように)形成されている一方、各サイドフレーム111の横アーム部115は、前述した水平アーム部120に対応して平面視で互いに内向き傾斜状(実施形態では平面視略く字状)に形成されている。
両サイドフレーム111,111の横アーム部115,115に対しては、リヤフレーム112の両水平アーム部120,120がそれぞれ着脱可能に嵌め合わされている。実施形態では、リヤフレーム112の各水平アーム部120に、これに対応するサイドフレーム111の横アーム部115を被嵌した状態で、サイドフレーム111の横アーム部115に貫通形成された穴115aに、リヤフレーム112の水平アーム部120に貫通形成された穴120aを介してピン121を着脱可能に挿入することにより、両サイドフレーム111,111とリヤフレーム112とが抜け不能に連結されている。なお、リヤフレーム112の各水平アーム部120に、各サイドフレーム111の横アーム部115を嵌挿する構成でも構わない。
リヤフレーム112の本体部119と底板62の後端部との間に取り付けられた一対の板ばね122,122は、底板62の水平軸64回りの回動に際して弾性的な抵抗を付与するためのものである。これにより、芝刈作業時や通常走行時に底板62を例えば縁石や地面に突き当てたとしても、底板62は各板ばね122の弾性に抗して衝撃力の向きに合わせるように上向きに逃げ回動するので、底板62に衝撃力が作用するのを緩和又は防止することができる。なお、板ばね等の弾性体は、両サイドフレーム111,111の横アーム部115,115と底板62とを着脱可能に連結する構成でも構わない。
以上のように構成すると、集草ボックス23を、左右一対のサイドフレーム111,111とリヤフレーム112と底板62と一対の板ばね122,122と梁フレーム113,114とに簡単に分割することができるので、集草ボックス23の構成物品群を、嵩張らないように平面的にまとめてコンパクトに梱包することが可能になる。これにより、保管時や運搬時等の取り扱いが容易になると共に、保管に必要な空間や運搬費等のコストを抑制することができるのである。
また、サイドフレーム111の横アーム部115とリヤフレーム112の水平アーム部120とを嵌め合わせた部分は、平面視で互いにリヤフレーム112に向かうにつれて並び間隔が狭まるように延びていて平行状ではないので、リヤフレーム112を引っ張ったりしても両サイドフレーム111,111から簡単に抜けることはなく、両サイドフレーム111,111とリヤフレーム112とは、嵌合するだけでガタ付きなく強固に連結することができる。
従って、実施形態の集草ボックス23を採用すると、簡単な構造で軽量化を図れるものでありながら、保管や運搬等に際しての分割及び梱包の容易性と、取り付け強度の向上とを同時に達成することができる。
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化することができる。例えば集草ボックス及び前後両回動板は、油圧シリンダの駆動により連係手段を介して回動する構成に限らず、ばね等の付勢手段により連係手段を介して回動する構成であってもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。