JP4420236B2 - 蛍光面の形成方法及び表示デバイス - Google Patents
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このフィルミング工程では、凹凸のある蛍光体層の表面にフィルミング組成物を塗布することによって、蛍光体層の表面に、平坦なフィルミング膜を形成する。かかるフィルミング膜は、メタルバック膜を形成した後、熱処理によって分解除去される。
このフィルミング工程で用いられるフィルミング組成物としては、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリビニルアルコール及び過酸化水素を含むアクリルエマルジョンがある(例えば、特許文献1参照)。また、メタルバック膜の火ぶくれを抑制するフィルミング膜を形成し得るフィルミング組成物として、相溶性の悪い水溶性ポリアクリル酸(塩)を含むアクリルエマルジョン(例えば、特許文献2参照)、ポリビニルアルコール、過酸化水素、並びにポリビニル無水マレイン酸及び/又はポリビニルピロリンを含むアクリルエマルジョン(例えば、特許文献3参照)がある。さらに、メタルバック膜の火ぶくれを抑制するフィルミング膜を形成すると共に、成膜性に優れたフィルミング剤として、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸ブチルの共重合物を含むアクリルエマルジョンがある(例えば、特許文献4参照)。
さらに、従来のフィルミング組成物の塗布法は、スピンコート法が主に用いられているために、1枚の基板の処理に多量のフィルミング組成物を用いなければならず、使用効率が悪く、非経済的であるという問題もあった。また、スピンコート法では、基板上に極微小異物があった場合に塗布ムラが起こり、蛍光面の輝度ムラが生じることもあった。
すなわち、本発明は、500〜100,000の重量平均分子量を有する水溶性ポリマー及び水を含むフィルミング組成物を蛍光体層の表面に噴霧することによってフィルミング膜を形成する工程と、前記フィルミング膜の表面にメタルバック膜を形成する工程と、熱処理によって前記フィルミング膜を分解除去する工程とを含むことを特徴とする蛍光面の形成方法である。
また、本発明は、上記蛍光面の形成方法により形成により形成された蛍光面を含むことを特徴とする表示デバイスである。
図1は、本発明の蛍光面の形成方法を説明するための蛍光面の断面図である。
本発明の蛍光面の形成方法は、ガラス等からなる基板1上に形成された蛍光体層2の表面に特定のフィルミング組成物を噴霧することによってフィルミング膜3を形成する工程と、前記フィルミング膜3の表面にメタルバック膜4を形成する工程と、熱処理によって前記フィルミング膜3を分解除去する工程とを含む。
ここで、凹凸形状を有する膜とは、平均膜厚に対して±5〜±50%の膜厚バラツキを有する膜のことを意味する。膜厚バラツキが、±5%未満であると、膜が平坦すぎてしまい、フィルミング膜3が焼失する際に発生するガスによってメタルバック膜4の浮きや剥離等が生じてしまう。また、膜厚バラツキが、±50%を超えると、膜の凹凸形状が粗すぎてしまい、膜にピンホールが生じてしまう。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、500〜100,000であり、好ましくは1,000〜30,000である。この範囲の重量平均分子量を有する水溶性ポリマーであれば、凹凸形状を有するフィルミング膜3を形成させることができると共に、熱処理によってフィルミング膜3を完全に焼失させることができる。重量平均分子量が、500未満であると、フィルミング膜3の形成が困難となるので好ましくない。また、重量平均分子量が、100,000を超えると、水溶性ポリマーの熱分解温度が高くなり、熱処理におけるフィルミング膜3の焼け残りが生じ、蛍光面の輝度特性が低下するので好ましくない。
また、フィルミング組成物における水溶性ポリマーの含有量は、1〜50重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがより好ましい。水溶性ポリマーの含有量が1重量%未満であると、固形分不足のために、フィルミング膜3にピンホールが生じることがある。また、水溶性ポリマーの含有量が50重量%を超えると、厚いフィルミング膜3が形成されるために、フィルミング膜3が蛍光体層2から剥がれたり、フィルミング膜3の熱処理時に発生する分解ガスが多くなり、メタルバック膜4の火ぶくれが生じることがあるので好ましくない。
また、フィルミング組成物における水の含有量は、10〜95重量%であることが好ましく、30〜70重量%であることがより好ましい。水の含有量が10重量%未満であると、フィルミング組成物が蛍光体層2の表面に付着する前に固体化するため、蛍光体層2とフィルミング膜3との所望の密着性が得られないことがあるので好ましくない。また、水の含有量が95重量%を超えると、フィルミング組成物を蛍光体層2の表面に噴霧しても揮発不足のために均一な凹凸を有するフィルミング膜3が得られず、ムラが発生することがあるので好ましくない。
このような揮発性の水溶性有機溶剤としては、水よりも揮発性が高く、且つ水溶性であれば特に限定されることはなく、例えば、メチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール及びブタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル系、アセトン等のケトン系、酢酸等のカルボン酸系などの水と相溶性のある溶剤を単独又は組み合わせて用いることができる。これらの中でも、蛍光体層2の溶出を防止する観点から、メチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール又はこれらの組み合わせが好ましい。
揮発性の水溶性有機溶剤の配合量は、水100重量部に対して10〜900重量部であることが好ましい。かかる揮発性の水溶性有機溶剤の配合量が10重量部未満であると、フィルミング組成物を蛍光体層2の表面に噴霧しても揮発不足のために均一な凹凸を有するフィルミング膜3が得られず、ムラが発生することがあるので好ましくない。また、かかる揮発性の水溶性有機溶剤の配合量が900重量部を超えると、フィルミング組成物が蛍光体層2の表面に付着する前に固体化するため、蛍光体層2とフィルミング膜3との所望の密着性が得られないことがあるので好ましくない
二流体式のスプレーガンは、図2に示すように、エアキャップ9とノズルシート8との間にエアを流すことで、ベンチュリー効果によって、ノズルシート8とニードル7との僅かなスペースからフィルミング組成物を吸い出し、加速して霧化するものである。なお、図2中、矢印10はフィルミング組成物の流れ方向、矢印11はエアの流れ方向を示す。
二流体式のスプレーガンを用いる場合、蛍光体層2の表面のX方向又はY方向にスプレーガンをスキャンさせ、所望の膜厚が得られるまでスキャンを繰り返せばよい。また、スキャンを繰り返す場合には、X方向及びY方向を交互にスキャンすることにより良好な均一性のフィルミング膜3を得ることができる。さらに、スプレーガンと蛍光体層2の表面との距離は、10〜300mmであることが好ましい。かかる距離が10mm未満であると筋ムラが生じてしまうことがあるので好ましくない。また、かかる距離が300mmを超えると、ムラやピンホールが発生したり、フィルミング組成物が蛍光体層2の表面に付着する前に固体化するため、蛍光体層2とフィルミング膜3との所望の密着性が得られないことがあるので好ましくない。スプレーガンを用いる場合のその他の条件は、使用環境及び使用するフィルミング組成物の組成にあわせて適宜調整すればよい。
加熱温度としては、25℃(室温)〜80℃が好ましく、25℃〜60℃がより好ましい。加熱温度が25℃未満であると、フィルミング組成物を噴霧した後に、フィルミング組成物の流動が生じることがあり、所望の凹凸形状を有するフィルミング膜3が得られないことがある。一方、加熱温度が80℃を超えると、フィルミング組成物を噴霧すると同時に溶媒の揮発が生じるため、所望の凹凸形状を有するフィルミング膜3が得られなかったり、ピンホールが生じてしまうことがある。また、スプレーガンを用いた場合には、スキャンによる筋ムラが発生することもある。このようなフィルミング膜3では、フィルミング膜3の表面に形成されるメタルバック膜4が粗くなったり、連続膜とならないことがあり、蛍光面の輝度低下や輝度斑の発生等に至ることがある。
加熱手段としては、特に限定されることはなく、例えば、ホットプレート等を用いて蛍光体層2を加熱すればよい。
[実施例1]
(フィルミング組成物の調製)
実施例1では、水溶性ポリマーとして6,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールを用いた。
表1に示した配合比で、水溶性ポリマー及び水をフラスコに加え、水溶性ポリマーが水に溶解するまで室温において撹拌した。次に、得られた水溶液を0.1μmの親水性PTFEのメンブランフィルターを用いてろ過することによってフィルミング組成物を得た。
(蛍光面の作製)
300mm×400mmのガラス基板上に形成された、所望のパターンのブラックマトリックス及び蛍光体からなる蛍光体層の表面に、ノードソン(株)製のマイクロスプレーシステム装置を用いてフィルミング組成物を噴霧することによってフィルミング膜を形成させた。このとき、蛍光体層を、ホットプレートを用いて75℃に加熱した。また、噴霧条件は、霧化エア圧力:3.2kg/cm2、スプレーガンと蛍光体層との距離:90mm、スプレーガンのニードルとノズルシートとの間のギャップ:500μm、スキャンスピード:200mm/s、スキャンの方向及び回数:X方向に一回とした。
次に、蒸着法を用いて、フィルミング膜の表面にアルミニウムを蒸着させることによって0.7μmの膜厚を有するメタルバック膜を形成させた。
その後、空気中で430℃にて60分間焼成することによってフィルミング膜を分解除去し、蛍光面を作製した。
(評価)
フィルミング膜の平均膜厚及び膜厚バラツキ、フィルミング膜におけるピンホールの有無、メタルバック膜における火ぶくれ又は剥離の有無、フィルミング膜の焼け残りの有無、蛍光面の輝度について評価した。この結果を、表2に示す。
(フィルミング組成物の調製)
実施例2では、水溶性ポリマーとして15,000の重量平均分子量を有するポリメタクリル酸メチル、揮発性の水溶性有機溶剤としてエタノールを用いた。
実施例3では、水溶性ポリマーとして6,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール、揮発性の水溶性有機溶剤としてイソプロピルアルコールを用いた。
実施例4では、水溶性ポリマーとして10,000の重量平均分子量を有するポリウレタン、揮発性の水溶性有機溶剤としてメタノールを用いた。
実施例5では、水溶性ポリマーとして18,000の重量平均分子量を有するイソブチレン−マレイン酸共重合体、揮発性の水溶性有機溶剤としてイソプロピルアルコールを用いた。
実施例6では、水溶性ポリマーとして30,000の重量平均分子量を有するn−ブチルメタクリレート、揮発性の水溶性有機溶剤としてエタノールを用いた。
比較例1では、水溶性ポリマーとして996,000の重量平均分子量を有するポリメタクリル酸メチル、揮発性の水溶性有機溶剤としてイソプロピルアルコールを用いた。
表1に示した配合比で、上記の水溶性ポリマー、水及び揮発性の水溶性有機溶剤をフラスコに加え、水溶性ポリマーが水及び揮発性の水溶性有機溶剤に溶解するまで室温において撹拌した。次に、得られた水溶液を0.1μmの親水性PTFEのメンブランフィルターを用いてろ過することによってフィルミング組成物を得た。
実施例2では、フィルミング組成物を噴霧する際に蛍光体層の表面を30℃に加熱して行ったこと以外は、実施例1と同様にして蛍光面を作製した。
実施例3では、フィルミング組成物を噴霧する際に蛍光体層の表面を50℃に加熱して行ったこと以外は、実施例1と同様にして蛍光面を作製した。
実施例4では、フィルミング組成物を噴霧する際に蛍光体層の表面を40℃に加熱して行い、マイクロスプレーシステム装置におけるスキャンの方向及び回数を、X及びY方向にそれぞれ一回としたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光面を作製した。
実施例5では、フィルミング組成物を噴霧する際に蛍光体層の表面を60℃に加熱して行い、マイクロスプレーシステム装置におけるスキャンの方向及び回数を、X及びY方向にそれぞれ一回としたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光面を作製した。
実施例6では、フィルミング組成物を噴霧する際に蛍光体層の表面を室温(25℃)のままで行い、マイクロスプレーシステム装置におけるスキャンの方向及び回数を、X及びY方向にそれぞれ一回としたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光面を作製した。
比較例1では、フィルミング組成物を噴霧する際に蛍光体層の表面を50℃に加熱して行ったこと以外は、実施例1と同様にして蛍光面を作製した。
(評価)
実施例1と同様の評価を行った。その結果を、表2に示す。
一方、比較例1では、ピンホールの発生がなく、良好な凹凸形状(平均膜厚及び膜厚バラツキ)を有するフィルミング膜が得られたものの、フィルミング膜の焼け残りが生じてしまい、蛍光面の輝度が低下した。これは、水溶性ポリマーの重量平均分子量が高いために、フィルミング膜の熱分解特性が低下したことによるものと考えられる。
Claims (6)
- 500〜100,000の重量平均分子量を有する水溶性ポリマー及び水を含むフィルミング組成物を蛍光体層の表面に噴霧することによってフィルミング膜を形成する工程と、
前記フィルミング膜の表面にメタルバック膜を形成する工程と、
熱処理によって前記フィルミング膜を分解除去する工程と
を含むことを特徴とする蛍光面の形成方法。 - 前記フィルミング組成物が、揮発性の水溶性有機溶剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の蛍光面の形成方法。
- 前記揮発性の水溶性有機溶剤が、メチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の蛍光面の形成方法。
- 前記水溶性ポリマーが、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン及びそれらの誘導体又は共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体、並びにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光面の形成方法。
- 前記フィルミング膜を形成する工程において、前記蛍光体層を25℃〜80℃に加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光面の形成方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により形成された蛍光面を含むことを特徴とする表示デバイス。
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