JP4418086B2 - 水中で緩効的にリン酸イオンを溶出するガラスから成る水処理剤 - Google Patents

水中で緩効的にリン酸イオンを溶出するガラスから成る水処理剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中で緩効的にリン酸イオンを溶出するガラス材料、特に熱水中で形状を保ちつつリン酸イオンを放出するガラスからなる水処理剤に関する。より詳細には、加熱殺菌機器や他の水加熱機器等に対して用水浄化剤として使用され、加熱殺菌装置、特に食品殺菌用レトルト釜内に蓄積或いは浮遊する汚れ原因物質の発生を防止する用途に使用され、更にCaイオンやFeイオンなどを取り除く、いわゆる清罐剤作用を有する水処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱水による処理は種々の工業で広く行われているが、熱エネルギーコストの点から、熱水の反復使用が行われており、その浄化が必要となっている。
【0003】
例えば、食品包装の目的の内、微生物の繁殖と汚染とを防止することが最大のものであり、この目的のため、熱水を用いたレトルト(一種のオートクレーブ)による加熱殺菌が、缶詰、ビン詰めでは勿論のこと、またレトルト食品についても広く行われている。
【0004】
このレトルト殺菌に際して、レトルト内の熱水中にもやもやしたもの(浮遊物、以下油かす状物とも呼ぶ)が発生することは知られていたが、その発生原因等は一切不明であった。特に、加熱殺菌機器内で食品充填密封容器のレトルト殺菌を繰り返し行う場合、容器の底部やフランジ等に、直径が0.01乃至1mm程度の淡褐色乃至白色の粒状物が付着し、包装体の外観特性を低下させ、商品価値を損なうという問題が有った。また、上記粒状物は、当然のことながら、レトルト釜の器壁や底に付着、堆積し、レトルト釜内をかなり頻繁に強アルカリ、強酸を含む洗浄剤により清掃しなければならないという問題があった。
【0005】
また、食品殺菌加工以外の水加熱器でも、水中のCaやFeイオンによりスケールが生成し、定期的に除去したり、前処理によってそれらのイオン量を減少させる必要がある。
【0006】
従来、ボイラー清浄剤(清罐剤)としては、リン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸などを主成分とする薬剤が使用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来用水の浄化に用いられているエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート化剤では、環境などへの影響もあるため、これに置き換わる水処理剤が求められている。
【0008】
また、リン酸塩系の化合物も、ボイラー等において浄化作用のあることが知られているが、上記化合物は熱水中に直ちに溶解し、即効性には優れているものの、効果の持続性に欠けており、持続性のある熱水浄化剤の出現が望まれている。
【0009】
従って、本発明の目的は、水中で緩効的にリン酸イオンを溶出するガラス材料、特に熱水中で形状を保ちつつリン酸イオンを放出するガラスからなる水処理剤を提供するにある。
本発明の他の目的は、密封包装容器に何らかの害を与えることなしに、加熱殺菌機器内でのステアリン酸カルシウム系の浮遊物の発生を、簡単な手段で、有効にしかも長期間にわたって持続して抑制できる用水浄化剤を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、酸化物成分基準で、(A)アルカリ金属酸化物成分、(B)アルミナ成分及び(C)リン酸化物成分を必須成分として含有し、シリカ成分(D)の含有量が50モル%未満であり且つ熱水中で形状を保ちつつリン酸イオンを放出するガラスからなることを特徴とする水処理剤が提供される。
本発明の水処理剤では、
1.アルカリ金属酸化物成分(A)を5乃至60モル%、アルミナ成分(B)を5乃至45モル%、及びリン酸化物成分(C)を20乃至80モル%含有すること,
2.シリカ成分(D)が1乃至30モル%の量で含有されること,
3.任意成分として(E)酸化ホウ素成分を含有する,
4.酸化ホウ素成分(E)が4乃至40モル%含有されること,
5.任意成分として(F)マグネシア成分を含有すること,
6.マグネシア成分(F)が2乃至15モル%の量で含有されること、
7.レトルト釜水浄化に用いること,
が好ましい。
【0011】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明の熱水処理用ガラス材料は、酸化物成分基準で、(A)アルカリ金属酸化物成分、(B)アルミナ成分及び(C)リン酸化物成分を必須成分として含有し、シリカ成分(D)の含有量が50モル%未満であることが化学組成上の特徴であり、熱水中で粒状物の形状を保ちつつ、リン酸イオンを徐々に放出することが特性上の特徴である。
【0012】
この熱水処理用ガラス材料において、アルカリ金属酸化物成分(A)及びリン酸化物成分(C)は、熱水中にリン酸イオンを徐々に溶出せしめるために必須不可欠の成分である。
このガラス材料では、リン成分がガラスの表面からリン酸イオン、リン酸アルカリとして徐々に溶出し、熱水中の有害成分を分解する。即ち、水中に溶出したリン成分は、例えばレトルト釜中で生成する高級脂肪酸カルシウムと複分解反応して、不溶性のリン酸カルシウムと水溶性の高級脂肪酸アルカリとを生成する。生成した高級脂肪酸アルカリはアニオン性界面活性剤として油脂汚れを除く作用がある。勿論、水中に存在するCaやFeイオンとも反応して、これらを不溶化し、スケールの付着や高級脂肪酸カルシウムの生成を防止する機能もある。
【0013】
上記アルカリ金属酸化物成分(A)及びリン酸化物成分(C)を含有するガラスは、化学組成的に一般にリン酸ガラスと呼ばれている。このリン酸ガラス(例えば溶性燐肥など)は、熱水中の有害成分を分解できるリン酸イオンを溶出しうるものではあるが、100℃以上の熱水中ではかなり短時間の内に水中に溶解し、リン酸イオンの徐放性、即ち熱水中で粒状の形状を維持しつつ緩効的にリン酸イオンを溶出する特性に欠けるという問題点を有している。
【0014】
本発明では、前述したアルカリ金属酸化物成分(A)及びリン酸化物成分(C)に加えて、アルミナ成分(B)を配合したことが特徴であり、これにより、ガラス粒状物の熱水中への溶解を抑制し、しかもリン酸イオンの徐放性、即ち熱水中で緩効的にリン酸イオンを溶出する特性を付与することができる。
【0015】
(A)アルカリ金属酸化物成分及び(C)リン酸化物成分に加えてアルミナ成分を必須成分として含有するガラスも、従来リン酸塩ガラスとして知られており、例えば耐フッ酸性ガラス、熱線吸収ガラス、放射線線量計用ガラス等の分野に用いられている。
これらのリン酸塩ガラスにアルミナ成分を配合する理由は、リン元素は5価でありながら、4配位をとる特殊な結合をするため、4配位の一つは2重結合の非架橋酸素となり、化学的耐久性が他のガラスに比べ低くなるが、これを改善し、構造を強化する目的で、アルミナ成分が配合されているものである。
【0016】
これに対して、本発明に用いるガラスでは、水処理剤としての用途に関連して、アルミナ成分が緩効的にリン酸イオンを溶出させるという新規な知見に基づくものであって、持続した用水浄化作用が得られるという新しい作用効果が奏されるものである。
【0017】
また、本発明の熱水処理用ガラス材料では、シリカ成分(D)の含有量が50モル%未満であることも、ガラス粒状物の熱水中への溶解を抑制し且つリン酸イオンの徐放性を高める上で重要である。更に、シリカ成分(D)を50モル%以上で含有するガラス材料では、ケイ酸イオンが熱水中に溶出する傾向が大であり、溶出物中のリン酸イオンの割合が少なくなると共に、溶出したケイ酸分がスケール付着の原因ともなるので、好ましくない。
【0018】
添付図面の図1を参照されたい。図1には、後述する実施例1乃至5及び比較例1の各ガラスを、130℃で155分間熱水処理した場合の溶解率が示されている。この結果によると、アルミナ成分(B)を配合したリン酸塩ガラスでは熱水中への溶解を抑制し、しかもアルミナ成分(B)の配合量によって熱水中への溶解量を調節できること、即ち、配合量の増大に伴って溶解量を減少できるという予想外の効果が明らかとなる。
一方、シリカ成分(D)の含有量が50モル%を越えるガラスでは、上記熱水処理による溶解量が大きくなっているという事実も明らかである。
【0019】
本発明の熱水処理用ガラス材料では、アルカリ金属酸化物成分(A)を5乃至60モル%、アルミナ成分(B)を5乃至45モル%及びリン酸化物成分(C)を20乃至80モル%含有することが好ましい。
【0020】
アルカリ金属酸化物成分(A)の含有量が上記範囲を下回ると、熱水中の有害成分を分解するという作用が、上記範囲内にある場合に比して、低下する傾向があり、一方この含有量が上記範囲を上回ると、上記範囲内にある場合に比して、熱水中への溶解量が増大し、効果の持続性が損なわれるので、何れも好ましくない。
【0021】
また、リン酸化物成分(C)の含有量が上記範囲を下回ると、やはり熱水中の有害成分を分解するという作用が、上記範囲内にある場合に比して、低下する傾向があり、一方この含有量が上記範囲を上回ると、上記範囲内にある場合に比して、熱水中への溶解量が増大し、効果の持続性が損なわれるので、何れも好ましくない。
【0022】
更に、アルミナ成分(B)の含有量が上記範囲を下回ると、熱水中への溶解量が増大し、効果の持続性が損なわれる傾向があり、一方この含有量が上記範囲を上回ると、上記範囲内にある場合に比して、熱水中へのリン酸イオンの溶出量が極端に低下して、有害成分の分解が有効に行われなくなる傾向があり、何れも好ましくない。
【0023】
本発明において、アルカリ金属酸化物成分(A)としては、酸化ナトリウムや酸化カリウムが適当であり、これらは単独でも或いは組合せで用いることも可能である。経済的見地からは酸化ナトリウムが好適である。
【0024】
本発明の熱水処理用ガラス材料は、上述した必須成分に加えて、それ自体公知の任意の他のガラス成分を含有していてもよい。
例えば、このガラス材料は、任意成分として(D)シリカ成分を含有することができる。シリカ成分(D)は、ガラス化の作業性を向上させるの役立つと信じられる。シリカ成分(D)は1乃至30モル%の量で含有されることが好ましい。
【0025】
また、このガラス材料は、任意成分として(E)酸化ホウ素成分を含有することができる。酸化ホウ素成分は4乃至40モル%の量で含有されていてもよい。
【0026】
更に、このガラス材料は、任意成分としてマグネシア成分(F)を含有することができる。マグネシア成分(F)を含有するガラス材料では、リン酸分をマグネシウム塩の形でも溶出するが、このものは系中の高級飽和脂肪酸カルシウム或いは系中の高級飽和脂肪酸及びカルシウム成分と反応し、リン酸カルシウム及び高級飽和脂肪酸マグネシウムを生成する。この複分解の結果生成するリン酸カルシウムは水不溶性であり、また高級飽和脂肪酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム)は、クラフト点がレトルト温度の近傍にあり、また常温では水不溶で非粘着性の粉末であるので、レトルト釜中で生成沈着する高級飽和脂肪酸カルシウムを分解して、非沈着性の不溶分として排出し、その蓄積を抑制し、殺菌器壁への付着或いは包装容器への付着を防止すると信じられる。
マグネシア成分(E)は2乃至15モル%の量で含有されることが好ましい。
【0027】
本発明の熱水処理用ガラス材料は、一般に任意のガラス材料、粒状物、シート状、ブロック状などの形で、種々の水の浄化の目的で使用される。
本発明のガラス材料を加熱殺菌機器用水浄化剤として使用すると、密封包装容器に何らかの害を与えることなしに、しかも長期間にわたって持続して、加熱殺菌機器内での高級脂肪酸カルシウム塩系の浮遊物の発生を、簡単な手段でしかも有効に抑制でき、また水中からCaやFeイオンを容易に取り除くことができる。
【0028】
加熱殺菌機器の用水浄化に使用する場合、本発明の熱水処理用ガラス材料を粒状物の形で、加熱殺菌機器内に熱水と接触するように設置して使用することもできるし、加熱殺菌機器外の熱水循環系に設置して使用することもでき、これら何れの場合にも、一度設置すれば、長期間にわたって、用水の浄化作用が有効且つ安定に奏される。
【0029】
[水処理用ガラス材料]
本発明の水処理用ガラス材料は、酸化物成分基準で、(A)アルカリ金属酸化物成分、(B)アルミナ成分及び(C)リン酸化物成分を必須成分として含有し且つシリカ成分(D)の含有量が50モル%未満であるが、これらの成分からなるガラス原料を調合して混合し、融解してガラス化した後、粒状物、シート、ブロック等に成形することにより得られる。
【0030】
ガラス原料としては、前記各成分の酸化物、水酸化物、及び融解条件下に酸化物を形成しうる化合物などが使用される。
アルカリ金属酸化物成分(A)は、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、硝石、ソーダ硝石、芒硝などの形で配合しうるし、リンのオキシ酸のアルカリ塩、アルミン酸アルカリ塩或いは硼砂の形でも配合しうる。
アルミナ成分(B)は、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミン酸アルカリの形で配合しうる。
リン酸化物成分(C)は、リン酸、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、五酸化リン、リン酸3ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウムなどの形で使用しうる。
シリカ成分(D)としては、ケイ石、ケイ砂、長石、カオリン等が使用される。
また、酸化ホウ素成分(E)は、ホウ酸、硼砂の形で配合することができる。また、マグネシア成分(F)としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が使用される。
上述したガラス原料は、説明のためのものであり、勿論これに限定されるものではない。
【0031】
これらのガラス原料成分を秤量し、混合して得られるバッチ(調合物)を、坩堝或いはタンク窯等の融解炉に投入し、融解してガラス化する。融解温度は、かなり低温でよく、一般に1200乃至1350℃の温度が適当である。また、坩堝を用いる場合には、融解時間は1乃至2時間等の比較的短時間で十分である。
【0032】
形成されたガラス状の融解物を所定の粒状物、シート、ブロック等に成形する。
粒状物の形状は、ガラスビーズ乃至ビー玉状、おはじき玉状、サイコロ状、円柱状、角柱状、中空円筒状、ドーナツ状、涙滴状、板状などの定形型のものや、カレット等の不定形状などの任意の形態にあってよい。これらの粒状物への成形自体は公知であり、公知の手法によることができる。例えば、涙滴状の粒状物は、溶融ガラスを水中に滴下することによりうることができるし、カレット状の粒状物は、板状に成形されたガラスを破砕することによりうることができる。
【0033】
粒状物の粒径は、任意の範囲にあることができ、一般に1乃至20mm、特に5乃至9mmの範囲にあるのが、熱水処理用ガラス材料の取り扱いと浄化作用の持続性との兼ね合いで好ましい。
粒状物の粒径及び粒子形状は、ガラス材料の溶解性を考慮して決定されることも了解されるべきであり、例えば溶解傾向の比較的大きいガラス材料に対しては、粒径の大きいものや粒子形状が球状に近いものなどを用いることができる。
【0034】
[水浄化剤としての使用]
本発明の用水浄化剤を適用する加熱殺菌機器としては、熱水を用いて食品充填密封包装体を加熱殺菌する機器一般が挙げられ、例えば(1)加圧熱水循環式レトルトシステム、(2)加圧熱水圧平衡型レトルトシステム、(3)空気混合系加圧レトルトシステム、(4)連続式加圧レトルトシステム等が挙げられるが、この例に限定されない。
【0035】
前記(1)のシステムの場合、レトルトとは別に、熱交換機において水を加熱し、これをレトルト内に循環させ、同時にレトルトを空気加圧して加圧加熱殺菌を行うものであるが、熱水循環による包装への影響があるのが欠点とされていた。
本発明においては、レトルト内に水浄化剤を存在させることにより、油かす状物の発生を防止し、包装への影響を回避することができる。
【0036】
前記(2)のシステムは、原理的にはシステム(1)と同様であるが、平衡加圧が、特に冷却初期においても十分に得れるように、加熱水蒸気による加熱装置を有する密閉型の圧力平衡器を備えている。この圧力平衡器では、加熱による熱媒体としての水の体積膨張があり、加熱温度に対応した水蒸気圧の発生があり、更に加圧空気の導入があるため、殺菌工程中のレトルト内圧を包装内圧よりも常に大に維持されるという利点がある。勿論、この場合にも、システム(1)と同様な利点が達成される。
【0037】
前記(3)の空気混合系加圧レトルトシステムでは、水蒸気と空気とを別個にレトルト中に供給するのではなく、水蒸気に対する空気の混合率を20〜25%以下として、同時に供給するシステムであり、装置としてコストも低く、昇温、殺菌温度、時間、圧力調節、加圧冷却、排水等の単位操作の制御も、全てプログラムに沿って自動化できるという利点を与えるが、本発明では、この場合でも、熱水中の油かす状物の発生を有効に防止できるものである。
【0038】
上記(1)乃至(3)のバッチ式レトルトでは、包装体をレトルト内に配置するとき、包装体相互の密着を防止して均一な殺菌温度を達成するようにするため、一定の配列状態で殺菌が行えるように、配列棚を用いており、その配列形式に応じて、縦型殺菌棚と横型殺菌棚とがある。
【0039】
本発明においては、レトルト内の殺菌棚の一部に、或いはレトルト内の殺菌棚以外の専用の収納スペースに、水処理用ガラス材料を熱水と接触し得るように位置せしめることにより、前記油かす状物の発生を防止することができる。
【0040】
また、これらのバッチ式レトルトの熱水循環系に、熱水処理用ガラス材料からなる水浄化剤を充填して成る浄水用吸着器或いは浄水用濾過器を設置するか、或いはレトルトに専用の熱水循環系を設けると共に、この循環系に、熱水処理用ガラス材料の水浄化剤を充填して成る浄水用吸着器或いは浄水用濾過器を設置することにより、油かす状物の発生並びにその付着を防止することができる。
【0041】
前記(4)の連続式加圧レトルトシステムには、水圧ロック式連続式加圧レトルトシステムや、静水圧加圧型連続式レトルトシステムが知られている。前者の方式では、特殊な水圧シール方式により、レトルト内に連続的に包装体を挿入し、且つ搬出するものであり、一方、後者の方式では、10乃至15mの水圧塔を使用し、連続的に加熱加圧と冷却とを行うものであり、殺菌室では空気による加圧を行うものもある。
この連続式加圧レトルトシステムにおいても、バッチ式の場合と同様にして、熱水処理用ガラス材料からなる水浄化剤、浄水用吸着器或いは浄水用濾過器を設置することにより、油かす状物の発生並びにその付着を防止することができる。
【0042】
本発明は、種々の食品充填密封包装体、例えば、缶詰、ビン詰め、レトルトパウチ、レトルトカップ、チューブ等の加熱殺菌に適用することができる。特に、絞り成形或いは絞り−しごき加工等による缶や、絞り成形で形成したカップ等の容器では、脂肪酸や油脂系の潤滑剤が用いられているので、本発明の水浄化剤等の使用が有効である。また、レトルトパウチの場合も、破袋等による内容物の漏れがあるので、有効である。加熱殺菌条件としては、80乃至135℃の温度で、10乃至120分間の加熱が一般的である。
【0043】
本発明の水浄化剤、浄水用吸着器或いは浄水用濾過器の使用量は、包装容器の種類、内容物の種類、加熱殺菌の温度や時間等によっても相違し、一概に規定することは困難であるが、一般に熱水処理用ガラス材料として、用水1トン当たり、100g乃至10kg、特に500g乃至5kgの量で用いるのがよい。一般には、過剰の量の熱水処理用ガラス材料を使用して、繰り返し加熱殺菌操作を行い、浄化能力が低下したとき、新しい水浄化剤、浄水用吸着器或いは浄水用濾過器と交換するようにするのがよい。
【0044】
本発明を既存の設備に適用する場合、設備に既に付着しているステアリン酸カルシウム等の付着物を除去するため、リン酸3ナトリウム/非イオン系乃至アニオン系界面活性剤処方分解剤により、ステアリン酸カルシウム等を水溶性のステアリン酸ナトリウム及び水不溶性無害のリン酸カルシウム等に分解し、その後、容器壁面を洗浄した後、本発明を適用するのが有利である。
【0045】
本発明を、加熱殺菌用の熱水の処理について説明したが、本発明の前述した利点は、各種ボイラーや、その他の熱水を使用する各種用途用途に用いても、同様に達成されることが明白であろう。
【0046】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。
[実施例1乃至5及び比較例1]
実施例としてP−Al−NaO系のガラスを、比較例としてSiO−P−NaO−B系のガラスを用い、“単位溶解率あたりのリン溶出量”が多い点を優位点とした。
【0047】
リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)、酸化ホウ素(B)を出発原料とし、各々表1に示すガラス組成になるように秤量し、これを充分混合した。この混合物をルツボに入れ、予め1200〜1400℃に予熱しておいた電気炉に入れて1時間溶融し、その後溶融物を鉄板上に流しだしてガラスを得た。
【0048】
【表1】
Figure 0004418086
【0049】
[試験1]
表1中の実施例1〜5及び比較例1のガラス材料を粉砕して、粒度を300〜850μmにそろえた。この粒子状試料を2.5g採り、50mlの蒸留水に浸漬して130℃−155分の熱水処理を施した。処理後、粒子状試料の乾燥重量を測定して、元の重量との差異から溶解率を算出した。
【0050】
結果を図1に示す。
実施例に示すガラス材料では比較例に比べ溶解率が低く、Al添加によるガラス構造の強化が観察できる。
【0051】
[試験2]
表1中の実施例1,2及び比較例1のガラス材料を粉砕して、粒度を5mm角にそろえた。この粒子状試料を5g採り、1リットルの蒸留水に浸漬して115℃−8時間の熱水処理を施した。
8時間経過後、溶出液は採取して定量分析を、粒状試料は新たに用意した1リットルの蒸留水に浸漬して再度115℃−8時間の熱水処理を施した。この操作を5回繰り返し、最後に残った粒状試料の乾燥重量を測定して、元の重量との差異から溶解率を算出した。
尚、定量分析は、溶出液中のリン分、アルミニウム分、ナトリウム分、ホウ素分、珪素分について、誘導結合型プラズマ発光分析(ICP)を使用して行った。
【0052】
結果を表2に示す。
比較例では溶解率が16%と高くなっているが実施例は7%以下であり、熱水による耐久性に優れている。また、Pの溶出量は実施例1が最も高くなっている。このことはPの溶出量が高いと熱水浄化作用が強まり、効率よく油かす状物を浄化していることを示すものである。これは化学反応の通念からも妥当である。実使用を想定すると、使用量が少なくてもP溶出量が多い材料が使い勝手の点で優れていると予想されるが、実施例1はまさにその通りであり、熱水中で効果的にPを放出する材料である。
【0053】
【表2】
Figure 0004418086
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、酸化物成分基準で、(A)アルカリ金属酸化物成分、(B)アルミナ成分及び(C)リン酸化物成分を必須成分として含有し、シリカ成分(D)の含有量が50モル%未満であり且つ熱水中で形状を保ちつつリン酸イオンを放出するガラスを水処理剤として用いることにより、熱水中で緩効的にリン酸イオンを溶出させ、用水中の有害成分を有効に、しかも持続的に分解除去することができる。
更に、上記ガラスからなる水処理剤を加熱殺菌の用途に用いることにより、密封包装容器に何らかの害を与えることなしに、加熱殺菌機器内でのステアリン酸カルシウム系の浮遊物の発生を、簡単な手段で、有効にしかも長期間にわたって持続して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1乃至5及び比較例1の各ガラスを、130℃で155分間熱水処理した場合の溶解率を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 酸化物成分基準で、(A)アルカリ金属酸化物成分、(B)アルミナ成分及び(C)リン酸化物成分を必須成分として含有し、シリカ成分(D)の含有量が50モル%未満であり且つ熱水中で形状を保ちつつリン酸イオンを放出するガラスからなることを特徴とする水処理剤。
  2. アルカリ金属酸化物成分(A)を5乃至60モル%、アルミナ成分(B)を5乃至45モル%、及びリン酸化物成分(C)を20乃至80モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の水処理剤。
  3. シリカ成分(D)が1乃至30モル%の量で含有されることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理剤。
  4. 任意成分として(E)酸化ホウ素成分を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水処理剤。
  5. 酸化ホウ素成分(E)を4乃至40モル%含有されることを特徴とする請求項4に記載の水処理剤。
  6. 任意成分として(F)マグネシア成分を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の水処理剤。
  7. マグネシア成分(F)が2乃至15モル%の量で含有される請求項6に記載の水処理剤。
  8. レトルト釜水浄化に用いることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のレトルト釜熱水浄化剤。
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