JP4417149B2 - 遠心鋳造製圧延用複合ロール - Google Patents

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Description

本発明は、外層に高硬度のハイス材を適用した遠心鋳造製の圧延用複合ロールに関するものである。
近年、鉄鋼の熱間圧延分野においては、鋼板の板厚精度向上や表面品質向上の要求が高まっている。当該圧延用ロールに対しても、高い耐摩耗性と耐肌荒れ性が求められている。これらの要求に対応するロールとして、外層をハイス系材、内層材をダクタイル鋳鉄とし、更に外層と内層の境界強度を向上させた遠心鋳造製の圧延用ロールが広く適用されてきている。また、前記外層がハイス系材料、内層材がダクタイル鋳鉄からなる圧延用複合ロールにおいて、該内層材を強靭化する目的で、内層材のダクタイル鋳鉄にBiを添加し、それにより黒鉛を微細晶出・均一分散化することが特開平8−117965号公報(特許文献1)に開示されている。
特開平8−117965号公報
しかしながら、前記特許文献1に開示されている従来技術では、以下の課題を有している。遠心鋳造製の圧延用複合ロールは、外層材と内層材を完全に溶着させるために、内層材の鋳造温度を高温に設定する必要があることと、圧延用ロールは大型鋳物の部類であることに起因して、内層材の凝固時間が多くかかる。例えば該複合ロール内層の上軸端部等は、特に凝固が遅くなっている。このため、前記特許文献1に開示されている従来技術、即ち、Biの添加のみでは、前記圧延用ロールの凝固時間が多くかかる部分において、添加したBiの効果が持続せず、その結果、当該部分において組織の粗大化や異常黒鉛(チャンキー黒鉛)化が生じ、内層材の強靭性確保という点において、未だに解決すべき大きな課題を有している。
例えば、遠心鋳造製圧延用複合ロールの耐摩耗性と耐肌荒れ性といった具備特性を高いレベルで維持することを目的に、外層のハイス系材料を圧延で使用する有効径の全域において、熱処理により、ショアーで80Hs以上という高硬度にすると、この結果、内層材に生ずる過大な残留応力と、前記内層材における強靭性不足が原因で、折損等のトラブルが、製造中や圧延使用中に発生する危険性が危惧されていた。かかる背景に鑑み、本発明の目的は、圧延用複合ロールに要求されている高い耐摩耗性と耐肌荒れ性等を高いレベルで保持させたまま、内層材の強靭性を向上させた遠心鋳造製の圧延用複合ロールを提供するものである。
本発明は上記の課題を解決するための圧延用ロールであって、その発明の要旨とするところは、
(1)ハイス材からなる外層の内側にダクタイル鋳鉄からなる内層材を形成してなる遠心鋳造製圧延用複合ロールにおいて、前記外層の有効径T(T=新製径−廃棄径)全域でのショア硬度を80Hs以上とするとともに、内層のダクタイル鋳鉄を、化学成分が質量比で、C:2.5〜4.0%、Si:1.5〜3.5%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.1%以下、S:0.1%以下、Ni:0.1〜3.0%、Mg:0.01〜0.1%、Bi:0.0005〜0.05%、Sn:0.01〜0.2%、残部がFeおよび可避的不純物元素から構成したことを特徴とする遠心鋳造製圧延用複合ロール。
(2)更に、内層の化学成分が質量比でCu:0.1〜2.0%を含有したことを特徴とする前記(1)記載の遠心鋳造製圧延用複合ロール。
(3)外層と内層の間に中間層を設けたことを特徴とする前記(1)または(2)記載の遠心鋳造製複合ロールにある。
以上述べたように、本発明は、ハイス系材料を外層に適用した遠心鋳造製の熱間圧延用複合ロ−ルにおいて、内層(軸芯部)の強靭性を大きく改善することに成功し、外層部全域をショアーで80以上の高硬度とする複合ロールを安定的に製造することが可能となった。この結果、耐摩耗性を高いレベルで維持するとともに、圧延使用時における折損トラブルの発生も抑制した遠心鋳造製の熱間圧延用複合ロールを提供することが可能となり、その工業的な効果は多大である。
本発明の基本的な構成は、外層材にハイス系材料を適用した圧延用複合ロールにおいて、内層材のダクタイル鋳鉄材にBiとSnまたはBiとSnとCuを適量添加することで、内層の強靭性を向上させることに成功し、その結果、ハイス系材料を適用した圧延ロールの新製径から廃棄径に至るまでの有効径全域におけるショアー硬度を80Hs以上の高硬度とすることで、耐摩耗性および耐肌荒れ性等を高いレベルで維持したままでも、製造時や圧延使用時の割損等のトラブルを抑制することが可能となった。
以下に、本発明における内層の各化学成分について、その限定理由を説明する。
C:2.5〜4.0%
Cは、黒鉛を晶出させるために必要であり、2.5%未満では黒鉛量が少ない。一方、4.0%を越えると黒鉛量が過多となり、強靭性が劣化する。したがって、その範囲を2.5〜4.0%とする。
Si:1.5〜3.5%
Siは、黒鉛化促進元素である。ダクタイル鋳鉄は黒鉛の球状化のため、Mgが添加される。また、外層のハイス系材料からCr、Mo、V等の合金元素が溶け込んでくるが、いずれも強力な黒鉛化阻害元素であるため、1.5%未満であると黒鉛化が不十分であり、3.5%を超えると、基地を脆くするとともに、多量のフェライトを析出させ、強度も低下する。したがって、その範囲を1.5〜3.5%とする。
Mn:0.1〜1.0%
Mnは、基地の強化と脱酸、脱硫作用を目的として添加する。0.1%未満ではその効果が不十分であり、また、1%を超えると靱性を低下させるため、その範囲を0.1〜1.0%とする。
Ni:0.1〜3.0%
Niは、黒鉛化の促進と基地強化において有効である。0.1%未満ではその効果が不十分であり、また、3.0%を越えて含有させた場合、未変態組織が残留し易くなり好ましくない。したがって、その範囲を0.1〜3.0%とする。
Mg:0.01〜0.1%
Mgは、黒鉛球状化のために含有させるものであるが、0.01%未満ではその効果が少なく、0.1%を越えると黒鉛化を阻害するとともに、鋳造欠陥が発生しやすくなる。したがって、その範囲を0.01〜0.1%とする。
P:0.1%以下、S:0.1%以下
P、Sは、原材料より不可避的に混入するものであり、材質を脆くするので少ないほど好ましく、P:0.1%以下、S:0.1%以下にすると良い。
Bi:0.0005〜0.05%、Sn:0.01〜0.2%、更にCu:0.1〜2.0%
特許文献1に開示があるように微量のBiの添加は黒鉛を微細晶出させる効果があり、黒鉛粒数が増加する。しかしながら、発明者らが今回実施した試行錯誤による種々のテスト・検討結果によると、Bi添加の効果が著しく認められるのは、小物鋳物に限られ、圧延用ロールのような大型鋳物においては、黒鉛粒数の増加効果はほとんど認められなかった。この理由は、Bi添加のみでは、鋳造後の凝固まで、即ち、黒鉛が晶出するまでの間、Biの効果が持続する時間が極めて短く、大型鋳物おいては、鋳造後、凝固時間が多く要するためその効果を奏することができないものと予想される。
しかしながら、本発明では微量のBiと同時に、SnまたはSn+Cuを適量含有させることで、それらの相乗効果によって、圧延用ロールのような大物鋳物でも黒鉛の微細晶出効果が顕著に認められるようになると共に、前記凝固速度の特に遅い圧延用ロールの内層の上軸端部等に発生していた異常黒鉛(チャンキー黒鉛)の発生を防止でき、内層の強靭性を大幅に上昇させることが可能となった。Biの含有量としては、0.0005%未満ではその効果が少なく、0.05%を越えると黒鉛化を阻害するため、その範囲を0.0005〜0.05%とした。
Snは、その添加により前記Biの作用・効果の持続時間を延長する働きをする。即ち、前記のとおり、Snの添加により内層材が鋳造後、凝固するまでに作用するBiの効果持続時間が大幅に延長される。含有量としては、0.01%未満ではBiとの相乗効果が少なく、0.2%を越えると黒鉛化を阻害するため、その範囲を0.01〜0.2%とした。
Cuは、前記Snの存在下において、Snと同様な作用・効果、即ち、Cuの添加により内層材が鋳造後、凝固するまでに作用するBiの効果持続時間が大幅に延長される。含有量としては、0.1%未満ではその効果が少なく、2.0%を越えると黒鉛化を阻害するため、その範囲を0.1〜2.0%とした。
本発明の外層材は、有効径全域における硬度が、ショアーで80以上のハイス系材料であるが、耐摩耗性、耐肌荒れ性といった鋼材圧延用ロールとしての特性を高いレベルで維持するためには、外層材の各元素を質量比で、C:1.5〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜8.0%、Mo:0.1〜8.0%、V:1.0〜8.0%、の範囲に限定することが好ましい。以下に、その限定理由を述べる。
C:1.5〜3.0%
Cは、主として、Fe、Cr、Mo、Nb、V、W等と結合して種々の炭化物を形成する。また、基地中に固溶され、ベイナイトやマルテンサイト相を生成する。1.5%未満であると生成する炭化物量が少なく、耐摩耗性を低下させるため好ましくない。また、3.0%を超えると、粗大な炭化物が形成され、靱性の低下や肌荒れの原因となる。したがって、その範囲を1.5〜3.0%とする。
Si:0.3〜2.0%
Siは、脱酸作用を目的として添加する。しかし、0.3%未満であるとその効果が不十分であり、逆に2.0%を超えると靱性を低下させるため、その範囲を0.3〜2.0%とする。
Mn:0.2〜2.0%
Mnは、脱酸、脱硫作用を目的として添加する。しかし、0.2%未満だとその効果が不十分であり、また、2%を超えると靱性を低下させるため、その範囲を0.2〜2.0%とする。
Cr:2.0〜8.0%
Crは、基地中に固溶されて焼入性を高めるとともに、前記Cと結合して炭化物を形成する。しかし、2%未満であると炭化物量が少なく、耐摩耗性が低下する。逆に、8%を越えると、粗大な炭化物が形成され、靱性が低下や肌荒れを招く。したがって、その範囲を2.0〜8.0%とする。
Mo:0.1〜8.0%
MoもCrと同様に、基地中に固溶されて基地を強化するとともに、前記Cと結合して炭化物を形成する。基地強化のためには、最低0.1%以上の含有が必要であるが、8.0%を超えると粗大炭化物が形成され靱性が低下する。また、遠心鋳造法では8%を越えた場合、層状偏析が発生する危険性が高くなる。したがって、その範囲を0.1〜8.0%とする。
V:1.0〜8.0%
Vは、前記Cと結合してMC炭化物を形成する重要な元素である。1.0%未満ではMC炭化物量が不十分で耐摩耗性が不十分となり、8.0%を超えるとMC炭化物が粗大化しすぎて靱性の低下に繋がるとともに、低密度のMC炭化物が初晶として単独で晶出する領域となり、遠心力鋳造法で製造する場合、MC炭化物の密度は、溶湯の密度に比べ小さいため、重力偏析が著しく発生するため8.0%が上限である。したがって、その範囲を1.0〜8.0%とする。
本発明における外層の基本成分としては前記のものであるが、更に、適用を対象とするロールのサイズ、当該圧延用ロールとして要求される使用・具備特性等により、その他の成分として以下に記載する化学成分を適宜選択し含有してもよい。
Ni:0.2〜3.0%
Niは、焼入れ性を向上させる効果を有する。直径の大きいロールなど硬化深度が得にくい場合に添加すると良い。しかし、多量に添加すると残留オーステナイトが過剰となり、逆に高硬度が得られなくなるため、3.0%を上限とする。
Nb:2.0%以下
Nbは、基地中にはほとんど固溶されず、そのほとんどが高硬度のMC炭化物を形成して、耐摩耗性を向上する。特に、Nbの添加で生ずるMC炭化物は、Vの添加で生ずるMC炭化物に比べ、溶湯密度との差が小さいため、遠心鋳造による重力偏析の発生が少ない。従って、Nbの添加有無の選択については、例えばMC炭化物の重力偏析を軽減したい場合に添加するとその効果がより大きい。添加量について、2%を越えて含有させた場合、MC炭化物が初晶として粗大なデンドライト状に晶出するため、偏析の発生や耐肌荒れ性の低下に繋がる。
W:0.1〜8.0%
Wは、Moと同様に基地中に固溶されて基地を強化するとともに、Cと結合してM2 CやM6 C等の共晶炭化物を形成して、耐摩耗性が向上する。基地強化のためには、最低0.1%以上の含有が必要であるが、8.0%を超えると粗大共晶炭化物が形成されて靱性が低下する。従って、Wの添加有無の選択については、例えば、共晶炭化物増量により耐摩耗性の向上を図る場合に添加するとその効果がより大きい。
Co:0.1〜8.0%
Coは、ほとんどが基地中に固溶され、基地を強化する。そのため、高温での硬度及び強度を向上させる作用を有している。0.1%未満ではその効果は不十分であり、8.0%を越えてはその効果が飽和するため、経済性の観点からも8.0%以下とする。従って、Coの添加有無の選択については、例えば、耐摩耗性の向上が要求され、共晶炭化物の増量が困難である場合に添加するとその効果が大きい。
B:0.01〜1.0%
Bは、0.01%以上で焼入性の増大効果を有する。しかし、過剰になると、靱性が低下するため1.0%以下に抑える必要がある。尚、Bの添加有無の選択については、例えば、焼入れ性の向上を図る必要が生じた場合に添加すると良い。
Al,Ti,Zr:0.005〜0.5%
Al,Ti,Zrは溶湯中で酸化物や窒化物を生成して、溶湯中のガス含有量を低下させ、製品の健全性を向上させるとともに、生成した酸化物や窒化物が結晶核として作用するために、凝固組織の微細化にも効果がある。0.005%未満ではこの効果は十分ではなく、一方、0.5%を越えて含有されると、介在物が残留するため好ましくない。
次に、外層の有効径T(T=新製径−廃棄径)全域でのショア硬度を80Hs以上とする基本的な熱処理方法を述べる。
従来は、熱処理炉内へ圧延用ロール全体を装入して、かつ、外層ハイス層と内層の全体を所定の焼入れ温度に均一加熱後、焼入れする手法が主流であった。この従来方法は、新製径でのロール表面では、所定の高硬度を得ることが比較的容易にできるが、ロール内部、つまり、廃棄径に近づくにつれて、硬度ドロップが大きく、廃棄径付近でショア硬度を80以上とすることが困難であった。外層の有効径全域で、つまり、廃棄径までショア硬度を80以上とするためには、外層ハイス層のみを所定の焼入れ温度まで均一に加熱するとともに、内層(軸芯部)の温度は極力上昇させない加熱方法を採用すると良い。この理由は、内層部の温度を極力低く抑えることで、廃棄径付近においても焼入れ時に十分な冷却速度が確保できるためである。外層ハイス層のみを所定の焼入れ温度まで均一に加熱する方法としては、ロールの胴部のみを急速に加熱できる電気ヒーター炉、ガス炉、誘導加熱炉等の設備を用いて加熱を行なう方法を採用すると良い。
前記の如く本発明の外層材には、化学成分でCr,Mo,V等の合金、すなわち、内層材にとっては、白銑化作用が強い成分を多量に含有させているため、これらの成分が実際の複合ロールの製造において、一部が内層材へ溶け込み、内層材の強靭性を低下させる一因となっている。これを防止するためには、らに、外層材の内層への溶け込み量を確実に抑制して、内層の強靭性を更に、向上させることを目的として、外層と内層の間に中間層を配設するとよい。代表的な化学成分としては、質量比で、C:1.5〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.1%以下、残部がFe、外層材の溶け込みによる元素および不可避的不純物で構成される鋳鋼、鋳鉄がCr,Mo,V等の合金が内層へ溶出する量を抑制する上で適している。
以下、本発明の実施例を従来材および比較例とともに説明する。
(実施例1)
まず、本発明の複合ロールにおける内層の強靭性改善について、本発明のBiにSn、また、BiにSnとCuの両方を添加した場合の作用・効果を確性するために、以下の試験を実施した。鋳造用の鋳型は実際の圧延用ロールに近い凝固条件となるように、直径500mm、高さ1000mmのサイズとした。低周波誘導電気炉で溶製した表1に示す内層用ダクタイル鋳鉄溶湯を1400℃で前記鋳型に鋳込み、円柱型の試験材を製作した。その後、各試験材の上部、即ち、試験材において凝固が最終になる上部より試験片を採取した。画像解析装置を用いて該試験片における黒鉛粒数の測定および顕微鏡による異常黒鉛の有無を確認した。その結果を表1に示す。
Figure 0004417149
表1から明らかなように、従来技術相当である比較例の内層材であるNo.11〜No.15に示すものでは、何れも強靭性を劣化させるチャンキー黒鉛の発生が認められ、かつ黒鉛粒数が少ないものであった。一方、本発明材の内層材、No.1〜No.10においては、何れも黒鉛粒数の大幅な増加と顕著なチャンキー黒鉛はなく、チャンキー黒鉛晶出の抑制効果が認められた。つまり、従来の微量のBiに追加して、SnまたはSnとCuの適量を微量添加することにより、両者または、それらの相乗作用により、黒鉛粒数の増加とチャンキー黒鉛の晶出抑制効果が顕著に実現できることが判明し、内層材の強靭性を向上させることが可能であると確性できた。前記のラボ試験の結果、本発明材の作用・効果を十分に確性できたので、次に、実際の圧延用複合ロールを製作し、その後、実際の圧延に供した。以下に、その結果を実施例2、3により説明する。
(実施例2) 高周波誘導電気炉を用いて溶解した表2に示す化学成分のハイス系材料からなる外層溶湯を、内径810mm、長さ2200mmの遠心力鋳造金型に鋳造した。外層の凝固完了後、金型を起立させ、表2に示す本発明の内層材を鋳込み、溶着一体化させた。次に、電気ヒーター炉を用いて外層ハイス層を1100℃まで加熱、焼入れ後、550℃の焼き戻し処理を2回実施した後、機械加工を行なって圧延用複合ロールを製造した。各圧延用ロールにおいて、内層の上軸端部である余長部より引張試験片を採取し、軸部の材料強度を調査するとともに、引張試験後の試験片を用いて、ミクロ組織調査を実施した。ミクロ組織調査は、画像解析装置を用いた黒鉛数測定と顕微鏡を用いた異常黒鉛の有無調査を実施した。また、各圧延用ロールの胴部余長を利用して、外層の有効径全域におけるショア硬度を測定した。その後、各々の圧延用ロールを実際の圧延に供して、ロールの健全性および異常の有無を確認した。以上の品質調査および圧延適用結果を表2に示す。
Figure 0004417149
表2から明らかなように、従来技術相当である比較例の内層材、No.5〜No.7に示すもの、即ち、Biに加えてSnの添加、またはBiの添加に加えてSnとCuの両者の添加がないものでは、何れも強靭性を劣化させるチャンキー黒鉛の発生が認められ、かつ黒鉛粒数は少なく、そのため、内層強度は不十分なものであった。したがって、内層の強靭性が十分に確保できず、No.5においては、該複合ロールの製造途中である熱処理後に、胴部において折損するトラブルが発生した。また、No.6、No.7においては、製造時にトラブルは発生しなかったが、実機の圧延に供した結果、何れも胴部から折損するトラブルが発生した。
これに対し、本発明材の内層材、No.1〜No.4においては、何れも黒鉛粒数の大幅な増加が認められるとともに、チャンキー黒鉛の発生はなく、良好なミクロ組織が得られた。この結果、内層強度は前記比較例No.5〜No.7と比較して、大幅な向上が確認できた。また、製造時および実機の圧延に供した結果、何れもトラブルの発生は無く、健全であった。更に、内層の更なる強靭性の確保を目的として、外層と内層材との間に中間層を配設した実際の圧延用複合ロール(3層)を製作し、その後、実際の圧延に供した。以下にその結果を説明する。
(実施例3) 高周波誘導電気炉を用いて溶解した表3に示す化学成分のハイス系材料からなる外層溶湯を、内径810mm、長さ2200mmの遠心力鋳造金型に鋳造した。その後、表3に示す中間層用の溶湯を鋳造し、凝固完了後、金型を起立させ、表3に示す本発明の内層材を鋳込み、溶着一体化させた。次に、電気ヒーター炉を用いて外層ハイス層を1100℃まで加熱、焼入れ後、550℃の焼き戻し処理を2回実施した後、機械加工を行なって圧延用複合ロールを製造した。各圧延用ロールにおいて、内層の上軸端部である余長部より引張試験片を採取し、軸部の材料強度を調査するとともに、引張試験後の試験片を用いて、ミクロ組織調査を実施した。ミクロ組織調査は、画像解析装置を用いた黒鉛粒数測定と顕微鏡を用いた異常黒鉛の有無調査を実施した。また、各圧延用ロールの胴部余長を利用して、外層の有効径全域におけるショア硬度を測定した。その後、各々の圧延用ロールを実際の圧延に供して、ロールの健全性および異常の有無を確認した。以上の品質調査および圧延適用結果を表3に示す。
Figure 0004417149
表3から明らかなように、従来技術相当である比較例の内層材、No.5〜No.7に示すもの、即ち、Biに加えてSnの添加、またはBiの添加に加えてSnとCuの両者の添加がないものでは、何れも強靭性を劣化させるチャンキー黒鉛の発生が認められ、かつ黒鉛粒数は少なく、そのため、内層強度は不十分なものであった。したがって、内層の強靭性が十分に確保できず、該複合ロールの製造途中である熱処理後に、胴部において折損するトラブルが発生した。また、No.6、No.7においては、製造時にトラブルは発生しなかったが、実機の圧延に供した結果、何れも胴部から折損するトラブルが発生した。
これに対し、本発明材の内層材、No.1〜No.4においては、何れも黒鉛粒数の大幅な増加が認められ、チャンキー黒鉛の発生も認められず、その晶出抑制効果が認められるとともに、内層強度の大幅な向上が確認できた。また、製造時および実機の圧延に供した結果、何れもトラブルの発生は無く、健全であった。一方、前記の実施例2と比較すると、さらなる内層強度向上が認められ、中間層を設けた効果も確認できた。


特許出願人 新日本製鐵株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (3)

  1. ハイス材からなる外層の内側にダクタイル鋳鉄からなる内層材を形成してなる遠心鋳造製圧延用複合ロールにおいて、前記外層の有効径T(T=新製径−廃棄径)全域でのショア硬度を80Hs以上とするとともに、内層のダクタイル鋳鉄を、化学成分が質量比で、
    C :2.5〜4.0%、
    Si:1.5〜3.5%、
    Mn:0.1〜1.0%、
    P :0.1%以下、
    S :0.1%以下、
    Ni:0.1〜3.0%、
    Mg:0.01〜0.1%、
    Bi:0.0005〜0.05%、
    Sn:0.01〜0.2%、
    残部がFeおよび可避的不純物元素から構成したことを特徴とする遠心鋳造製圧延用複合ロール。
  2. 更に、内層の化学成分が質量比でCu:0.1〜2.0%を含有したことを特徴とする請求項1記載の遠心鋳造製圧延用複合ロール。
  3. 外層と内層の間に中間層を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の遠心鋳造製複合ロール。
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