しかしながら、特許文献1〜3に開示してあるような非接触給電システムは、複数台の高周波電源装置を必要とする。このため、特に副軌道の本数が増大する場合、非接触給電システム全体が大型化し、また、コストも増大するという問題があった。
また、特許文献4に開示してあるような非接触給電システムにおいては、第1の給電線にのみ給電する場合と第1の給電線及び第2の給電線の両方に給電する場合とを切り換える際に、高周波電源装置を一旦停止させてから、第1のコンタクタの接続/遮断及び第2のコンタクタの遮断/接続を切り換えていた。この結果、第1の給電線に給電しつつ、第2の給電線に対する電力の供給/遮断を切り換えることができないという問題があった。
仮に、高周波電源装置の出力が交流定電流であり、高周波電源装置を一旦停止させずに各コンタクタの接続/遮断を切り換えた場合、第1のコンタクタ及び第2のコンタクタの両方が遮断されたとき、高周波電源装置の出力がオープンになるため、出力電圧が上昇し、非接触給電システムが破壊されることがあるという問題があった。また、第1のコンタクタ及び第2のコンタクタの両方が接続されたとき、高周波電源装置に接続されている給電線のインダクタンスが変化するため、非接触給電システムに異常が生じることがあるという問題があった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、高周波電源装置に接続される主給電線、定電圧回路、スイッチ、定電流回路、及び副給電線をこの順に接続することにより、1台の高周波電源装置を用いて、主給電線に対する給電と、副給電線に対する電力の供給/遮断の切り換えとを行なうことができる給電装置及び搬送システムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、定電圧回路及び定電流回路の夫々としてイミタンス変換回路を備えることにより、受動部品で簡単に構成することができ、しかも、主給電線に対する給電と、副給電線に対する電力の供給/遮断の切り換えとを、高周波電源装置を停止させることなしに行なうことができる給電装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、リレー接点であるスイッチを備えることにより、装置構成が簡単である給電装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、電流を制限するための抵抗部を備えることにより、装置各部に過負荷状態が生じることを防止することができる給電装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、抵抗部を所定時間遅らせて短絡する短絡用スイッチを備えることにより、抵抗部の容量を低減することができる給電装置を提供することにある。
第1発明に係る給電装置は、ピックアップコイルに誘導結合して非接触給電を行なう主給電線及び副給電線に関し、前記主給電線から供給される交流定電流の前記副給電線に対する供給/遮断を切り換える給電装置であって、前記主給電線にその入力側が接続してあり、入力された交流定電流を交流定電圧に変換して出力する定電圧回路と、前記副給電線にその出力側が接続してあり、前記定電圧回路が出力する交流定電圧を交流定電流に変換して出力する定電流回路と、前記定電圧回路の出力側及び前記定電流回路の入力側に接続してあるスイッチとを備えることを特徴とする。
第2発明に係る給電装置は、前記定電圧回路及び前記定電流回路はイミタンス変換回路であることを特徴とする。
第3発明に係る給電装置は、前記スイッチはリレー接点であることを特徴とする。
第4発明に係る給電装置は、前記スイッチの入力側又は出力側に、電流を制限するための抵抗部が接続してあることを特徴とする。
第5発明に係る給電装置は、前記スイッチが閉路された場合、所定時間経過後に閉路されて前記抵抗部を短絡する短絡用スイッチを更に備えることを特徴とする。
第6発明に係る搬送システムは、複数の軌道と、第1発明乃至第5発明の何れか一つの給電装置と、前記定電圧回路の入力側に接続してあり、高周波電源装置から交流定電流が供給される主給電線と、前記定電流回路の出力側に接続してあり、前記定電流回路から交流定電流が供給される副給電線と、前記主給電線又は前記副給電線に誘導結合するピックアップコイルを搭載してあり、該ピックアップコイルに誘起された電力によって、前記軌道に沿って移動する搬送車とを備え、一の軌道に沿って前記主給電線が配設してあり、他の軌道に沿って前記副給電線が配設してあることを特徴とする。
第1発明及び第6発明にあっては、複数の軌道上夫々、例えば主軌道上及び副軌道上夫々を搬送車が走行する場合、主給電線が主軌道に沿って、副給電線が副軌道に沿って、夫々配設される。また、高周波電源装置から主給電線に交流定電流が供給され、主給電線から給電装置に交流定電流が供給される。更に、スイッチは定電圧回路の出力側と定電流回路の入力側との間を接続/遮断する。
スイッチによって定電圧回路の出力側及び定電流回路の入力側の間が接続された場合、主給電線に供給された交流定電流は、定電圧回路によって一旦交流定電圧に変換され、更に定電流回路によって交流定電流に変換されて、副給電線に供給される。つまり、主軌道に沿って配設してある主給電線及び副軌道に沿って配設してある副給電線の両方に、高周波電源装置から直接的に、又は給電装置の定電流回路から、交流定電流が供給される。このとき、主軌道上の搬送車は、搬送車に搭載してあるピックアップコイルが主給電線と誘導結合することによって主給電線から非接触で給電され、副軌道上の搬送車は、同様にして副給電線から非接触で給電される。
スイッチによって定電圧回路の出力側及び定電流回路の入力側の間が遮断された場合、交流定電流は副給電線に供給されない。一方、スイッチと主給電線との間に定電圧回路が設けられており、主給電線には高周波電源装置から交流定電流が供給されるため、スイッチが定電圧回路−定電流回路間を遮断した場合でも、主給電線に流れる交流定電流は、スイッチによって遮断されない。つまり、主軌道に沿って配設してある主給電線に対して交流定電流は供給され、副軌道に沿って配設してある副給電線に対して交流定電流は遮断される。このとき、主軌道上の搬送車は主給電線から非接触で給電されるが、副軌道上の搬送車は副給電線から給電されない。
更にまた、主給電線に交流定電流を供給するために、又は主給電線及び副給電線の両方に交流定電流を供給するために、主給電線に接続されている高周波電源装置が用いられ、この高周波電源装置とは別の高周波電源装置を副給電線に接続する必要がない。
第2発明にあっては、定電圧回路及び定電流回路の夫々がイミタンス変換回路(インピーダンス変換回路)である。イミタンス変換回路はインダクタ及びキャパシタで構成される。定電流回路がT型(LCL)の定電流回路である場合、副給電線のインダクタンスの一部又は全部は、定電流回路のインダクタンスに含むことが可能であり、このため、副給電線のインダクタンスを増加させることが可能である。同様に、定電圧回路がT型(LCL)の定電流回路である場合、主給電線のインダクタンスの一部又は全部は、定電圧回路のインダクタンスに含むことが可能であり、このため、主給電線のインダクタンスを増加させることが可能である。
また、定電圧部にスイッチを設けてあるため、スイッチに流入する電流は小さい。
更にまた、定電圧回路及び定電流回路の夫々がイミタンス変換回路で構成されているため、主給電線側から見た給電装置以降のインピーダンスは、スイッチの接続/遮断によらず“0”である。つまり、主給電線側から給電装置以降を見ると、給電装置以降はイマジナリーショート状態(仮想的に短絡した状態)である。
この結果、スイッチが定電圧回路−定電流回路間を遮断した場合でも、主給電線のインダクタンスは変化しないため、主給電線の両端電圧が上昇することはなく、また、主給電線も遮断されない。
第3発明にあっては、リレーを用いてスイッチを構成し、リレー接点を定電圧回路の出力側及び定電流回路の入力側に接続し、リレーを作動させることによって定電圧回路−定電流回路間の接続/遮断を切り換える。
第4発明にあっては、リレーを用いて構成されたスイッチの入力側又は出力側に、抵抗器、リアクタ、サーミスタ等の抵抗部を接続し、スイッチが閉路された場合に発生する突入電流を制限する。
第5発明にあっては、スイッチの入力側又は出力側に接続された抵抗部を短絡する短絡用スイッチを設ける。まず、スイッチ及び短絡用スイッチ夫々を開放しておき、次にスイッチを閉路し、最後に、所定時間が経過してから短絡用スイッチを閉路するよう、手動又は自動で各スイッチを開閉する。このためスイッチを閉路してから所定時間経過後に短絡用スイッチが閉路されて、抵抗部には電流が流れなくなる。
第1発明の給電装置及び第6発明の搬送システムによれば、主給電線に接続されている高周波電源装置を用い、主軌道に沿って配設してある主給電線及び副軌道に沿って配設してある副給電線の両方に対する交流定電流の供給と、主給電線に対する交流定電流の供給及び副給電線に対する交流定電流の遮断とを、定電圧回路−定電流回路間に設けてあるスイッチによって切り換えることができる。
また、定電圧回路−定電流回路間を遮断している場合、つまり副軌道に沿って配設してある副給電線に対して交流定電流の供給を停止している場合でも、定電圧回路側、即ち主給電線が遮断されず、主軌道に沿って配設してある主給電線に対して交流定電流は供給される。このため、主軌道上の搬送車に給電することができ、搬送効率を向上させることができる。一方、交流定電流の供給が不要な副軌道の副給電線に交流定電流が供給されないため、消費電力を減少させることができ、更に副軌道上で保守を行なう場合は搬送車の保守を安全に行なうことができる。
また、副給電線に対する交流定電流の供給/遮断によらず、主給電線に供給されている交流定電流が、定電流−定電圧変換回路である定電圧回路で交流定電圧に変換されてスイッチへ出力されるため、スイッチの駆動電源として定電圧回路を用いることができる。
更に、主給電線に接続されている高周波電源装置が用いられ、副給電線に別の高周波電源装置を接続する必要がない。このため、複数台の高周波電源装置を用いる必要がなく、非接触給電システム全体を小型化することができ、コストも低減させることができる。
第2発明の給電装置によれば、定電圧回路及び定電流回路の夫々が、インダクタ及びキャパシタで構成されるイミタンス変換回路であるため、定電圧回路及び定電流回路の夫々を、受動部品で簡単に構成することができる。更に、定電流回路(又は定電圧回路)がT型(LCL)のイミタンス変換回路である場合、イミタンス変換回路のLの分まで副給電線(又は主給電線)のインダクタンスを増加させることができるため、副給電線(又は主給電線)の長さを延長することができる。
また、定電圧部にスイッチを設けてあるため、スイッチに流入する電流は小さく、この結果、小型のスイッチを用いることができ、給電装置を小型化することができる。
更に、スイッチが定電圧回路−定電流回路間を遮断した場合でも交流定電圧が出力され(即ち出力電圧が一定であり)、スイッチが定電圧回路−定電流回路間を接続/遮断した場合に、高周波電源装置に接続されている主給電線のインダクタンスが変化しないため、スイッチの切り換えの際に高周波電源装置を一旦停止させる必要がなく、主給電線に対して連続的に給電することができる。この結果、搬送効率を更に向上させることができる。
第3発明の給電装置によれば、スイッチがリレー接点であるため、即ちリレーを用いてスイッチを構成することができるため、給電装置の装置構成が簡単である。更にまた、リレーの励磁電源として、スイッチが接続してある定電圧回路を用いることができるため、この場合は電源装置を別途準備する必要がない。この結果、給電装置を備える非接触給電システム、ひいては搬送システムを小型化することができ、コストも低減させることができる。
第4発明の給電装置によれば、突入電流を制限する抵抗部を備えるため、スイッチを閉路した場合に、副給電線から給電される搬送車の負荷形態によって発生することがある突入電流によって、主給電線電流の低下及び高周波電源装置の過負荷状態が過渡的に発生することを防止することができ、延いては主給電線から給電される搬送車の出力電圧低下、過負荷による装置の故障、非常停止等を防止することができる。
第5発明の給電装置によれば、スイッチを閉路した場合に、副給電線から給電される搬送車の負荷形態によって発生することがある突入電流を抵抗部によって制限した後で、搬送車運転による負荷電流が抵抗部に流入しないように、抵抗部を短絡することができるため、抵抗部の容量を低減することができる。
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態 1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る搬送システム5の構成を示す斜視図である。搬送システム5は、複数の軌道として、工場、倉庫等の天井にループ状に配設してある主軌道10と、主軌道10から分岐して退避してある副軌道20とを備え、更に、非接触給電システム61と、複数の搬送車7,7,…とを備える。また、非接触給電システム61は、主軌道10に沿って配設してある主給電線1と、副軌道20に沿って配設してある副給電線2と、高周波電源装置6とを備える。
搬送車7,7,…は、主軌道10及び副軌道20に懸架されている。各搬送車7は、非接触給電システム61を介して駆動用の電力を得る。また、主軌道10及び副軌道20に沿って、図示しない複数のステーションが設置してあり、搬送車7は主軌道10に係る一のステーションから他のステーションへ被搬送物を搬送し、副軌道20に係る保守用のステーションで点検、修理等の保守を受ける。
図2は、搬送システム5の構成を示すブロック図である。非接触給電システム61は、AC200V、60Hzの商用電源80から受電して、高周波(例えば10KHz)の交流定電流を出力する高周波電源装置6、搬送車7,7,…に対して非接触で給電する主給電線1及び副給電線2の他、給電装置3を備える。主給電線1は、高周波電源装置6に接続されて、高周波電源装置6から交流定電流が供給され、主給電線1に供給された交流定電流が、主給電線1から給電装置3へ供給される。給電装置3は、主給電線1から供給される交流定電流の副給電線2に対する供給/遮断を切り換える。
給電装置3は、交流定電流を交流定電圧に変換して出力する定電圧回路31と、交流定電圧を交流定電流に変換して出力する定電流回路32と、定電圧回路31−定電流回路32間の接続/遮断を切り換えるスイッチ33とを備える。
スイッチ33は、具体的には定電圧回路31の出力側と定電流回路32の入力側との間を接続/遮断するリレー接点であり、スイッチ33を備えるリレーの励磁を直流で行なう。このために、給電装置3は、定電圧回路31の出力を整流・平滑した出力をリレーの入力とするように図示しないDC−DCコンバータを備える。
定電圧回路31は、1個のインダクタ311と2個のキャパシタ312,313とをπ型に配置してあるイミタンス変換回路であり、インダクタ311のインダクタンスL及びキャパシタ312,313夫々のキャパシタンスCが共振状態になるよう構成されている。また、定電圧回路31は、入力側が主給電線1に接続してある。このため、定電圧回路31には主給電線1から交流定電流が供給される。また、定電圧回路31は、出力側がスイッチ33の一接点側に接続してある。
定電流回路32は、入力側がスイッチ33の他接点側に接続してある。更に、定電流回路32は、出力側が副給電線2に接続してある。このため、定電流回路32に交流定電圧が供給された場合、副給電線2には定電流回路32から出力された交流定電流が供給される。
定電流回路32は、2個のインダクタ321,322と1個のキャパシタ323とをT型に配置してあるイミタンス変換回路であり、インダクタ321のインダクタンスL、インダクタ322のインダクタンスL1 と副給電線2のインダクタンスL2 との和L、及びキャパシタ323のキャパシタンスCが共振状態になるよう構成されている。即ち、共振条件は、
1−ω2 LC=0 ・・・ (1)
L=L1 +L2 ・・・ (2)
である。
つまり、給電装置3は、定電流回路32の出力側インダクタンスの一部(又は全部)を副給電線2のインダクタンスで兼ねている。このため、副給電線2のインダクタンスを定電流回路32のインダクタンスに含めない場合の副給電線2の長さに比べて、副給電線2の長さはインダクタンスL2 に対応する長さ分だけ延長されている。
以上のような非接触給電システム61は、交流定電流が供給される主給電線1から主軌道10上の搬送車7へ給電するか、交流定電流が供給される主給電線1から主軌道10上の搬送車7へ、及び交流定電流が供給される副給電線2から副軌道20上の搬送車7へ給電する。
搬送車7は、走行用のモータ7mと、ピックアップコイル71及び受電部72で構成された受電装置とを搭載している。ピックアップコイル71は、交流定電流が供給されている主給電線1又は副給電線2に誘導結合し、受電部72は、誘導結合によってピックアップコイル71に発生した誘導起電力を受電してモータ7mに給電する。モータ7mは、受電部72から供給された電力で搬送車7の車輪を回転させ、この場合、搬送車7は主軌道10又は副軌道20に沿って走行する。
さて、搬送車7による被搬送物の搬送と搬送車7の保守とを同時的に行なう場合、搬送システム5のオペレータは、まず、リレーを励磁してスイッチ33を閉路して定電圧回路31−定電流回路32間を接続させることによって、主軌道10の主給電線1及び副軌道20の副給電線2に給電する。
スイッチ33が定電圧回路31−定電流回路32間を接続した場合、主給電線1に供給された交流定電流は、定電圧回路31によって一旦交流定電圧に変換され、更に定電流回路32によって交流定電流に変換されて、副給電線2に供給される。つまり、主軌道10に配設してある主給電線1及び副軌道20に配設してある副給電線2の両方に交流定電流が供給される。
このとき、主軌道10上の搬送車7は、ピックアップコイル71が主給電線1と誘導結合することによって、主給電線1から非接触で給電されて主軌道10上を走行する。また、保守されるべき搬送車7は、主軌道10と副軌道20との分岐部で主軌道10から副軌道20へ移動し、副軌道20上の搬送車7は、ピックアップコイル71が副給電線2と誘導結合することによって、副給電線2から非接触で給電されて副軌道20上を走行する。
ここで、定電圧回路31及び定電流回路32の作用について説明する。定電圧回路31に対する入力電圧をEin_1、入力電流をIin_1、出力電圧をEout1、出力電流をIout1とし、定電流回路32に対する入力電圧をEin_2、入力電流をIin_2、出力電圧をEout2、出力電流をIout2とすると、
となる。
更に、数式(1)、数式(3)及び数式(4)より、
となる。
このため、主給電線1に、図中の矢符方向に交流定電流が流れた場合、副給電線2には、主給電線1に流れる交流定電流の値に等しい値を有する交流定電流が白抜矢符方向に流れる。
次に、非接触給電システム61のオペレータは、副軌道20上の搬送車7が保守用のステーションに到達した場合に、リレーの励磁を終了してスイッチ33を開放して定電圧回路31−定電流回路32間を遮断させることによって、給電が必要な区間である主軌道10の主給電線1に対する給電を続行しつつ、給電が不要な区間である副軌道20の副給電線2に対する給電を停止する。
スイッチ33が定電圧回路31−定電流回路32間を遮断した場合、定電圧回路31の出力である交流定電圧が定電流回路32に供給されず、このため定電流回路32の出力である交流定電流が副給電線2に供給されない。
ところで、主給電線1とスイッチ33との間、及びスイッチ33と副給電線2との間に、インピーダンス変換回路である定電圧回路31及び定電流回路32が設けられているため、主給電線1側から見た給電装置3以降のインピーダンスは、スイッチ33の接続/遮断によらず“0”である。つまり、主給電線1側から給電装置3以降を見ると、給電装置3はイマジナリーショート状態である。この結果、スイッチ33が定電圧回路31−定電流回路32間を遮断した場合でも、主給電線1のインダクタンスは変化しないため、主給電線1の両端電圧(定電圧回路31の入力電圧)が上昇することはなく、また、主給電線1に流れる定電流は遮断されない。
つまり、主軌道10に配設してある主給電線1に対して交流定電流は供給され、副軌道20に配設してある副給電線2に対して交流定電流は遮断される。このとき、主軌道10上の搬送車7は主給電線1から給電されて主軌道10上を走行するが、副軌道20上の搬送車7は副給電線2から給電されない。副軌道20上の搬送車7は保守用のステーションで停止して保守される。
搬送車7の保守完了後、非接触給電システム61のオペレータは、リレーを励磁してスイッチ33を閉路して定電圧回路31−定電流回路32間を接続させることによって、主軌道10の主給電線1及び副軌道20の副給電線2に対して再び給電する。このとき、主軌道10上の搬送車7が主給電線1から非接触で給電されて主軌道10上を走行する。また、保守された搬送車7は、副給電線2から非接触で給電されて副軌道20上を走行し、副軌道20から主軌道10へ移動する。
以上のような非接触給電システム61は、主給電線1に接続されている高周波電源装置6を用い、主軌道10に配設してある主給電線1及び副軌道20に配設してある副給電線2の両方に対する交流定電流の供給と、主給電線1に対する交流定電流の供給及び副給電線2に対する交流定電流の遮断とを、スイッチ33によって切り換えることができる。
また、定電圧回路31−定電流回路32間を遮断している場合、つまり副軌道20に配設してある副給電線2に対して交流定電流の供給を停止している場合でも、主軌道10に配設してある主給電線1に対して交流定電流は供給される。このため、主軌道10上の搬送車7は主給電線1から給電されて走行することができ、搬送効率を向上させることができる。一方、交流定電流の供給が不要な副軌道20の副給電線2に交流定電流が供給されないため、消費電力を減少させて省エネを図ることができ、更に副軌道20上で保守を行なう搬送車7の保守を安全に行なうことができる。
更に、定電圧回路31を用いて交流定電流を交流定電圧に変換した後にスイッチ33を設けてあるため、スイッチ33に流入する電流が小さい(本実施の形態においては副軌道20を保守ラインとして用いているため、数[A]程度)。この結果、スイッチ33は小型のリレーを用いて構成することができる。
更にまた、定電圧回路31の出力側にてスイッチ33が回路を遮断するため、高周波電源装置6及び主給電線1を含む回路がオープンになって出力電圧が上昇することが防止され、しかも、高周波電源装置6側から見た主給電線1のインダクタンスは変化しない。この結果、主給電線1にのみ給電する場合と主給電線1及び副給電線2の両方に給電する場合とを切り換える際に、高周波電源装置6を一旦停止させる必要がない。以上のことから、搬送効率を更に向上させることができる。
つまり、非接触給電システム61は、交流定電圧が印加されている部分で遮断/接続し、交流定電流出力の高周波電源装置を備える場合の特許文献4に開示してあるような非接触給電システムは、交流定電流が流れている部分で遮断/接続する。この点が、本実施の形態の非接触給電システム61と、各給電線共用の1台の高周波電源装置を備える従来の非接触給電システムとの最大の差異である。
また、スイッチ33が定電圧回路31−定電流回路32間を遮断した場合でも、主給電線1に流れる交流定電流は遮断されないため、定電圧回路31の出力側には交流定電圧が印加され続ける。この結果、リレーの励磁電源として定電圧回路31を用いることができる。つまり、リレーの作動に必要な電力は、定電圧回路31から得られるため別途電源を準備する必要はない。この結果、給電装置3を小型化することができ、コストも低減させることができる。
更にまた、主給電線1に接続されている高周波電源装置6が用いられ、副給電線2に別の高周波電源装置を接続する必要がない。このため、複数台の高周波電源装置を用いる必要がなく、非接触給電システム61、ひいては搬送システム5全体を小型化することができ、コストも低減させることができる。
また、定電圧回路31及び定電流回路32の夫々は、受動部品で構成してあり、構造が簡易である。このため、給電装置3の装置構成が簡単である。更に、スイッチ33がリレー接点であるため、即ちリレーを用いてスイッチ33を構成することができるため、給電装置3の装置構成が簡単である。
なお、定電圧回路31の定数LCの値と定電流回路32の定数LCの値とを異なる値にしても良い。ただし、定電圧回路31及び定電流回路32の夫々は共振条件を満たす必要がある。この場合、副給電線2に流れる交流定電流の値を主給電線1に流れる交流定電流の値よりも大きく(又は小さく)することができる。
また、高い電力が必要な場所に副給電線2(又は主給電線1)を敷設し、副給電線2(又は主給電線1)に流れる交流定電流の値を、主給電線1(又は副給電線2)に流れる交流定電流の値よりも大きくすることで、必要な箇所だけ給電線電流を上げ、必要ない箇所は給電線電流が下げられるため、給電線損失を低減でき、省エネを図ることができる。
実施の形態 2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る搬送システム5の構成を示すブロック図である。本実施の形態の搬送システム5が備える非接触給電システム62は、主給電線1と、副給電線2と、給電装置3と、高周波電源装置6とを有し、実施の形態1の非接触給電システム61と同様に搬送車7,7,…に対して非接触で給電する。
非接触給電システム62の給電装置3は、実施の形態1の給電装置3とは異なり、定電流回路32が、インダクタ321,322及びキャパシタ323の他、キャパシタンスC1 を有するキャパシタ324を備え、副給電線2はインダクタンスL3を有する。その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
定電流回路32はキャパシタ324を出力側に備える。定電流回路32の出力側のインダクタンスは、インダクタ322のインダクタンスL1 、副給電線2のインダクタンスL3 、及びキャパシタ324のキャパシタンスC1によって決定される。即ち、共振条件は、
1−ω2 LC=0 ・・・ (6)
ωL=ωL1 +ωL3 −1/ωC1 ・・・ (7)
である。
つまり、実施の形態1の副給電線2の長さに比べて、副給電線2の長さはキャパシタ324のキャパシタンスC1 に対応する長さ分だけ延長されている。
以上のような搬送システム5は、給電装置3の定電流回路32にキャパシタ324を追加することによって、副給電線2の長さを延長することができる。
実施の形態 3.
図4は、本発明の実施の形態3に係る搬送システム5の構成を示すブロック図である。本実施の形態における搬送システム5は、2本の副軌道20,20を備え、搬送システム5が備える非接触給電システム63は、主給電線1と、主給電線1に対して備えられる2組の副給電線2及び給電装置3と、高周波電源装置6とを有する。また、副給電線2,2夫々が副軌道20,20夫々に沿って配設してある。このような非接触給電システム63は、主給電線1に対して1組の副給電線2及び給電装置3を備える実施の形態1の非接触給電システム61と同様に、搬送車7,7,…に対して非接触で給電する。その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
以上のような搬送システム5においては、主給電線1に接続されている高周波電源装置6が用いられ、高周波電源装置6とは別の高周波電源装置を副給電線2,2夫々に接続する必要がない。このため、複数台の高周波電源装置を用いる必要がなく、非接触給電システム63、ひいては搬送システム5全体を小型化することができ、コストも低減させることができる。
なお、主給電線1に対して備えられる給電装置3及び副給電線2の組は3組以上でも良い。
実施の形態 4.
図5は、本発明の実施の形態4に係る搬送システム5の構成を示すブロック図である。本実施の形態の搬送システム5が備える非接触給電システム64は、主給電線1と、副給電線2と、給電装置3と、高周波電源装置6とを有し、実施の形態1の非接触給電システム61と同様に搬送車7,7,…に対して非接触で給電する。
非接触給電システム64の給電装置3は、実施の形態1の給電装置3とは異なり、定電圧回路31として、2個のインダクタ314,315と1個のキャパシタ316とをT型に配置してあるイミタンス変換回路を備える。また、定電圧回路31とスイッチ33との間に、リレー用電源装置81が接続してある。リレー用電源装置81は、スイッチ33のリレー励磁電源として用いられる。このため、定電圧回路31をスイッチ33のリレー励磁電源として用いる必要がなく、定電圧回路31の出力電力を低減することができる。その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
定電圧回路31は、インダクタ314のインダクタンスL4 と主給電線1のインダクタンスL5 との和L、インダクタ315のインダクタンスL及びキャパシタ316のキャパシタンスCが共振状態になるよう構成されている。即ち、共振条件は、
1−ω2 LC=0 ・・・ (8)
L=L4 +L5 =L1 +L2 ・・・ (9)
である。
つまり、給電装置3は、定電圧回路31の入力側インダクタンスの一部(又は全部)を主給電線1のインダクタンスで兼ねている。このため、主給電線1のインダクタンスを定電圧回路31のインダクタンスに含めない場合の主給電線1の長さに比べて、主給電線1の長さはインダクタンスL5 に対応する長さ分だけ延長されている。
以上のような搬送システム5は、主給電線1のインダクタンスを給電装置3の定電圧回路31のインダクタンスに含めることによって、主給電線1の長さを延長することができる。なお、実施の形態2と同様に、定電流回路32にキャパシタ324を追加して、副給電線2の長さを更に延長しても良い。
また、主給電線1とスイッチ33との間、及びスイッチ33と副給電線2との間に、インピーダンス変換回路である定電圧回路31及び定電流回路32が設けられている。このため、実施の形態1と同様に、主給電線1のインダクタンスは変化しないため、主給電線1の両端電圧が上昇することはなく、また、主給電線1に流れる交流定電流は遮断されない。
以上のような実施の形態1〜4の給電装置3は、搬送システム5に備えられているが、これに限るものではない。また、搬送システム5は、主軌道10(一の軌道)と、主軌道10から分岐する副軌道20(他の軌道)とを備えるが、これに限らず、例えば1本の連続した線路の一部である主軌道10(一の軌道)と、残部である副軌道20(他の軌道)とを備えても良い。
実施の形態 5.
図6は、本発明の実施の形態5に係る搬送システム5の構成を示すブロック図である。本実施の形態の搬送システム5は、実施の形態1の搬送システム5とは異なり、スイッチ33の代わりに、定電圧回路31−定電流回路32間の接続/遮断を切り換える切換部330を備える。
各受電部72は、誘導結合によってピックアップコイル71に発生した誘導起電力を受電してモータ7mに給電すべく、共振コンデンサ、インピーダンス変換回路、整流回路、平滑コンデンサ、及びモータドライバを備える。
また、高周波電源装置6は、高周波電源装置6が過負荷状態となった場合に安全装置が作動して非常停止するよう構成してある。
その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
図7は、切換部330の構成を示すブロック図である。
定電圧回路31−定電流回路32間には、スイッチ911とスイッチ912とが並列になるよう接続してある。スイッチ911,912夫々は、具体的には定電圧回路31の出力側と定電流回路32の入力側との間を接続/遮断するリレー接点であり、スイッチ911,912を備えるリレーの励磁を直流で行なう。このために、切換部330は、定電圧回路31の出力を整流・平滑した出力をリレーの入力とするように図示しないDC−DCコンバータを備える。
スイッチ911の出力側には、抵抗器913が直列に接続してある。なお、抵抗器913はスイッチ911の入力側に直列に接続してもよい。また、抵抗器913の代わりにリアクタを用いてもよい。
スイッチ911,912には、スイッチ915を有する制御回路914が接続してある。制御回路914は、スイッチ915が開放されている場合にスイッチ911,912両方を開放し、スイッチ915が閉路された場合にリレーを励磁して、まずスイッチ911を閉路し、適宜の時間が経過したときに、スイッチ912を閉路し、スイッチ915が開放されるまでスイッチ911,912両方を閉路するよう構成されている。前記時間は、スイッチ912の閉路がスイッチ911の閉路時に発生する突入電流の発生終了後に実行されるよう設定される。
さて、図6に示す主軌道10の主給電線1のみに給電し、副軌道20の副給電線2に給電しない場合、搬送システム5のオペレータは、図7に示すスイッチ915を開放する。この場合、スイッチ911,912両方が開放されるため、実施の形態1のスイッチ33を開放した場合と同様に、主給電線1のみに給電され、副給電線2には給電されない。
一方、主軌道10の主給電線1及び副軌道20の副給電線2両方に給電する場合、搬送システム5のオペレータは、スイッチ915を閉路する。この場合、制御回路914に制御されて、まずスイッチ911が閉路されて定電圧回路31−定電流回路32間がスイッチ911及び抵抗器913を介して接続される。このとき、主給電線1に供給された交流定電流は、定電圧回路31によって一旦交流定電圧に変換され、更に定電流回路32によって交流定電流に変換されて、副給電線2に供給される。つまり、主軌道10に配設してある主給電線1及び副軌道20に配設してある副給電線2の両方に交流定電流が供給される。
ただし、負荷としての各搬送車7の受電部72はコンデンサ負荷であり、モータドライバも図示はしないがコンデンサ負荷である。このため、仮に抵抗器913が存在しない場合、スイッチ911の閉路によって、副給電線2上の搬送車7の受電部72のコンデンサに突入電流が流れる。この突入電流分は受電部72、副給電線2、及び定電流回路32を介し、定電圧回路31の出力にも突入電流として現れる。この影響により、主給電線1に流れる電流値の低下、高周波電源装置6の過負荷が現れる。この結果、主給電線1上の搬送車7の出力低下、及び高周波電源装置6の過負荷による故障又は非常停止が起こる可能性がある。
しかしながら、本実施の形態においては抵抗器913を、定電圧部の負荷に対し直列に入れることで、出力電流に応じて出力電圧が低下し、副給電線2の給電線電流が下がり、更に受電部72の出力電圧が低下し、受電部72のコンデンサへの突入電流が抑制され、結果的に定電圧回路31側の突入電流が制限されるため、過負荷状態を避けて、高周波電源装置6の非常停止を防止することができる。
更に、タイミングをずらしてスイッチ912が閉路され、スイッチ912がスイッチ911及び抵抗器913を短絡するため、抵抗器913の容量を小さくすることが出来る。
実施の形態 6.
本実施の形態の搬送システム5は、実施の形態5の搬送システム5とは異なり、切換部330の代わりに、切換部331を備える。その他、実施の形態5に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
図8は、切換部331の構成を示すブロック図である。
定電圧回路31−定電流回路32間には、スイッチ921と抵抗器923が直列に接続してあり、更に、抵抗器923を短絡するスイッチ922が接続してある。スイッチ921,922夫々はリレーを用いてなり、スイッチ925を有する制御回路924によって、スイッチ925が開放されている場合にスイッチ921,922共に開放され、スイッチ925が閉路された場合にスイッチ921,922の順に閉路される。
以上のような構成によって、実施の形態5の搬送システム5と同様に、搬送システム5のオペレータがスイッチ925を切り換えた場合に、突入電流の発生による高周波電源装置6の非常停止を抵抗器923によって防止しつつ、主給電線1及び副給電線2両方に給電する状態と、主給電線1のみに給電され、副給電線2には給電されない状態とを切り換えることができる。なお、図8中の抵抗器923はスイッチ921の出力側に接続してあるが、入力側に接続してもよい。また、抵抗器923の代わりにリアクタを用いてもよい。
実施の形態 7.
本実施の形態の搬送システム5は、実施の形態5,6の搬送システム5とは異なり、切換部330,331の代わりに、切換部332を備える。その他、実施の形態5,6に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
図9は、切換部332の構成を示すブロック図である。
定電圧回路31−定電流回路32間には、スイッチ931と、温度上昇によって抵抗値が低下するサーミスタ932が直列に接続してある。
さて、主軌道10の主給電線1のみに給電し、副軌道20の副給電線2に給電しない場合、搬送システム5のオペレータは、スイッチ931を開放する。この場合、実施の形態1のスイッチ33を開放した場合と同様に、主給電線1のみに給電され、副給電線2には給電されない。
一方、主軌道10の主給電線1及び副軌道20の副給電線2両方に給電する場合、搬送システム5のオペレータは、スイッチ931を閉路する。この場合、定電圧回路31−定電流回路32間がスイッチ931及びサーミスタ932を介して接続される。このとき、主給電線1に供給された交流定電流は、定電圧回路31によって一旦交流定電圧に変換され、更に定電流回路32によって交流定電流に変換されて、副給電線2に供給される。つまり、主軌道10に配設してある主給電線1及び副軌道20に配設してある副給電線2の両方に交流定電流が供給される。
ただし、負荷としての各搬送車7の受電部72はコンデンサ負荷となる。このため、仮にサーミスタ932が存在しない場合、スイッチ931の閉路によって大きな突入電流が生じ、また、高周波電源装置6側もスイッチ931の閉路時に過負荷状態となる。この結果、高周波電源装置6の安全装置が作動して非常停止する可能性がある。
しかしながら、本実施の形態においてはサーミスタ932が突入電流を制限するため、過負荷状態を避けて、高周波電源装置6の非常停止を防止することができる。
更に、電流の流入によってサーミスタ932の温度が上昇し抵抗値が低下するため、実施の形態5,6にて2個のスイッチを時差を設けて閉路した場合のように、サーミスタ932の容量を小さくすることが出来る。なお、図9中のサーミスタ932はスイッチ931の出力側に接続してあるが、入力側に接続してもよい。
また、実施の形態5,6のように、スイッチ931の他にもう1つのスイッチを備え、このスイッチが閉路された場合にサーミスタ932が短絡されるようにしてもよい(図7及び図8参照)。
一般にサーミスタは大電流を流せる物は少ないため、副給電線2で大容量の負荷を取る場合、サーミスタ932では対応できないことがある。このため、スイッチ931がオン状態にされた際の軽負荷のときはサーミスタ932で突入電流を抑制し、その後、前記もう1つのスイッチをオン状態にして大負荷に対応する。