JP4416673B2 - 誘電体共振器アンテナおよび配線基板ならびに電子装置 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロ波やミリ波を用いた通信やレーダーに使用されるアンテナに関するもので、単素子で指向性利得が大きく薄型化が可能な誘電体共振器アンテナおよび配線基板ならびに電子装置に関するものである。
マイクロ波やミリ波等の電磁波を効率良く放射するアンテナとして導波管を用いたホーンアンテナが知られている。ホーンアンテナは導波管内を伝送してきた高周波信号を空間に放射するアンテナである。導波管内部は空間と同じ誘電率(一般的には空気の誘電率)であり、そのインピーダンスは空間のインピーダンスに近くなっている。また導波管内を伝送する高周波信号の電磁場モードは空間を伝送する高周波信号の電磁場モードに類似しており、導波管を伝送してきた高周波信号の電磁場モードはホーン近傍の空間で空間を伝送する高周波信号の電磁場モードに容易に変化できる。これらの理由よりホーンアンテナはインピーダンスや電磁場モードのミスマッチによる反射が小さく、高効率で比較的広帯域であることが知られている。またホーンの開口面積を大きくすることにより指向性利得を大きくできることが知られている。
一方一般にマイクロ波やミリ波を用いた通信やレーダーに用いられる回路はマイクロストリップ線路やコプレーナ線路を用いた平面回路である。この場合、回路とホーンアンテナを接続するには平面回路を導波管に変換する変換器が必要になり、変換器を使用することによるコストアップや反射等の性能劣化が生じる場合がある。平面回路から空間に直接電磁波を放射するアンテナの1つとしてパッチアンテナが知られている。パッチアンテナは比較的インピーダンスが小さい平面回路と、比較的インピーダンスが大きい空間とをパッチの共振を使って整合している。共振による整合では共振器のインピーダンスが帯域に影響する。帯域を広くするためにパッチのインピーダンスを大きくしようとするとパッチ幅を小さくする必要があり放射効率が下がる。放射効率を上げるためにパッチ幅を大きくするとパッチのインピーダンスが小さくなり帯域が狭くなる傾向がある。パッチアンテナの設計では高周波信号を効率良く空間に放射することが第1条件であり、そのため帯域を犠牲にして、帯域が狭くなっている場合が多い。
この問題を解決するために共振器としてインピーダンスが大きい誘電体共振器を用いた積層型開口面アンテナが提案されている。この積層型開口面アンテナでは平面回路を形成する誘電体基板内部に誘電体共振器を構成し、広帯域なアンテナを実現している。
特開2001−016027号公報
しかしながら、積層型開口面アンテナの誘電体共振器の開口面積は一般にパッチアンテナのパッチ面積より小さくなるため、単素子で見た場合の指向性利得も小さくなってしまう傾向がある。これは誘電体共振器中の実効誘電率がほぼ誘電体の誘電率であるのに対し、パッチ上の実効誘電率は空気と誘電体の中間的誘電率になり、誘電体の誘電率よりも小さくなるためである。これらは半波長共振を基本にした共振器であり、同じ半波長に対してより実効誘電率が大きい誘電体共振器の開口面積の方が、実効誘電率が小さいパッチアンテナのパッチ面積より小さくなる。開口面アンテナの指向性利得は開口面積が大きくなるほど大きくなる性質があり、損失を無視して考えると開口面積が2倍になると指向性利得も2倍に(3dBi)大きくなる。指向性利得を大きくする手段としてアンテナ素子を並べてアレイアンテナにすることが考えられるが、その場合、反射損が小さい給電線の分岐、位相差を波長の整数倍にするための給電線長さの調整、引き回しが必要となり、場合によっては設計できなくなるという問題があった。
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、広帯域な誘電体共振器アンテナにおいて、アレイ化せずに指向性利得を大きくできる誘電体共振器アンテナとその誘電体共振器アンテナを具備する配線基板ならびにその配線基板を用いた電子装置を提供することにある。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体板から成る誘電体共振器の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体共振器を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体共振器を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体共振器の内部あるいは下面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なるとともに前記誘電体共振器の側面と離間した仕切り導体を配したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体板から成る誘電体共振器の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体共振器を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体共振器を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体共振器の内部あるいは表面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なる空洞あるいは凹部を形成したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体基板の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体基板を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体基板を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体基板の下面に、前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを取り囲む開口を有する下部グランド層を形成するとともに該下部グランド層の下面に前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを覆うように誘電体板から成る誘電体共振器を取着し、前記誘電体共振器の内部あるいは下面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なるとともに前記誘電体共振器の側面と離間した仕切り導体を配したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体基板の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体基板を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体基板を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体基板の下面に、前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを取り囲む開口を有する下部グランド層を形成するとともに該下部グランド層の下面に前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを覆うように誘電体板から成る誘電体共振器を取着し、前記誘電体共振器の内部あるいは表面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なる空洞あるいは凹部を形成したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体共振器の側面に導体層を形成したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体板の内部に、前記誘電体板を平面透視して前記スロットを取り囲むように複数のシールド導体を配列し、該シールド導体群の内側領域を前記誘電体共振器としたことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体板の内部に、前記誘電体板を平面透視して前記開口を取り囲むように複数のシールド導体を配列し、該シールド導体群の内側領域を前記誘電体共振器としたことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体共振器の比誘電率が3以上10以下であることを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記線路導体の上面に上部誘電体層および上部グランド層を順次積層したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記線路導体の一端が開放され、前記スロットと交差する部位の中心と前記線路導体の一端との距離を、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長の(2n−1)/4倍(nは自然数)にしたことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記線路導体の一端を前記グランド層と電気的に接続したこと特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、前記線路導体が前記スロットと交差する部位の中心と前記一端との距離を、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長のn/2倍(nは自然数)にしたことを特徴とする。
本発明の配線基板は、電子部品の搭載部を有する配線基板に、上記本発明の誘電体共振器アンテナを、前記搭載部と前記線路導体とが近接するように形成したことを特徴とする。
本発明の電子装置は、上記本発明の配線基板に電子部品を搭載するとともに、該電子部品の電極と前記線路導体とを電気的に接続したことを特徴とする。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体共振器の内部あるいは下面に、誘電体共振器を平面透視してスロットと重なるとともに誘電体共振器の側面と離間した仕切り導体を配したことから、仕切り導体をはさんで複数の共振現象が発生する。この複数の共振現象は位相が同じであり、スロットに結合している高周波信号を効率よく空間に放射することができ、結果として効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。そして仕切り導体がなく共振現象が1つのときよりアンテナとしての開口面積を実質的に大きくしたのと同じ効果が得られ、指向性利得が大きいアンテナを提供することができる。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体共振器の内部あるいは表面に、誘電体共振器を平面透視してスロットと重なる空洞あるいは凹部を形成したことから、空洞あるいは凹部をはさんで複数の共振現象が発生する。この複数の共振現象は位相が同じであり、スロットに結合している高周波信号を効率よく空間に放射することができ、結果として効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。そして空洞あるいは凹部がなく共振現象が1つのときよりアンテナとしての開口面積を実質的に大きくしたのと同じ効果が得られ、指向性利得が大きいアンテナを提供することができる。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体基板の下面に、誘電体基板を平面透視してスロットを取り囲む開口を有する下部グランド層を形成するとともに下部グランド層の下面に誘電体基板を平面透視してスロットを覆うように誘電体板から成る誘電体共振器を取着し、誘電体共振器の内部あるいは下面に、誘電体共振器を平面透視してスロットと重なるとともに誘電体共振器の側面と離間した仕切り導体を配したことから、高周波線路と誘電体共振器との間を下部グランド層で電磁的にシールドできるので、高周波線路による誘電体共振器内での不要共振の発生を抑えることができ、かつ、仕切り導体によって誘電体共振器内の共振を複数に分割できるので、誘電体共振器の開口面積を実質的に大きくしたのと同じ効果が得られ、指向性利得が大きいアンテナを提供することができる。
本発明の誘電体共振器アンテナは、誘電体基板の下面に、誘電体基板を平面透視してスロットを取り囲む開口を有する下部グランド層を形成するとともに下部グランド層の下面に誘電体基板を平面透視してスロットを覆うように誘電体板から成る誘電体共振器を取着し、誘電体共振器の内部あるいは表面に、誘電体共振器を平面透視してスロットと重なる空洞あるいは凹部を形成したことから、高周波線路と誘電体共振器との間を下部グランド層で電磁的にシールドできるので、高周波線路による誘電体共振器内での不要共振の発生を抑えることができ、かつ、空洞あるいは凹部によって誘電体共振器内の共振を複数に分割できるので、誘電体共振器の開口面積を実質的に大きくしたのと同じ効果が得られ、指向性利得が大きいアンテナを提供することができる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、誘電体共振器の側面に導体層を形成したことから、アンテナ特性が誘電体共振器周辺の部材等の影響を受けにくく、安定した性能の誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、誘電体板の内部に、誘電体板を平面透視してスロットを取り囲むように複数のシールド導体を配列し、シールド導体群の内側領域を誘電体共振器としたことから、積層技術を用いることにより誘電体共振器を高周波線路と一体に構成することができ、誘電体共振器の高周波線路への接合ずれがなくなり、安定した性能の誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、誘電体板の内部に、誘電体板を平面透視して開口を取り囲むように複数のシールド導体を配列し、シールド導体群の内側領域を誘電体共振器としたことから、積層技術を用いることにより誘電体共振器を高周波線路と一体に構成することができ、誘電体共振器の高周波線路への接合ずれがなくなり、安定した性能の誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、誘電体共振器の比誘電率が3以上10以下であることから、誘電体共振器が空間と接する界面で比誘電率の比が3以上と大きくなり一部の電磁波が反射し、共振器としての機能を発現することができる。また誘電体共振器の比誘電率が10以下であることから誘電体共振器が小さくなり過ぎず、必要な指向性利得を得ることができ、高効率で指向性利得が高い誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、線路導体の上面に上部誘電体層および上部グランド層を順次積層したことから、高周波線路から誘電体共振器と反対の方向への信号の洩れを抑制することができ、高効率な誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、線路導体の一端が開放され、スロットと交差する部位の中心と線路導体の一端との距離を、線路導体を伝送する高周波信号の波長の(2n−1)/4倍(nは自然数)にしたことから、たとえばnが1の場合、線路導体の開放端とスロットの中心との間の距離は高周波信号の波長の1/4倍になる。開放端の電流は0であり、開放端から高周波信号の波長の1/4倍離れた位置すなわちスロット中心で線路導体の電流が最大になり、線路導体の電流による磁界で効率よくスロットを励振することができ、結果として効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。nが2の場合には開放端とスロットの中心との間の距離は高周波信号の波長の3/4倍になりnが1の場合と同様スロットの中心で線路導体の電流が最大になり、効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。nが3以上の自然数の場合も同様にスロットの中心で線路導体の電流が最大になり、効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、線路導体の一端をグランド導体と電気的に接続したことから、スロット縁部において線路導体に短絡による最大電流が流れ、線路導体の電流による磁界で効率よくスロットを励振することができ、結果として効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の誘電体共振器アンテナにおいて、好ましくは、線路導体がスロットと交差する部位の中心と短絡端との距離を、線路導体を伝送する高周波信号の波長のn/2倍(nは自然数)にしたことから、短絡端から高周波信号の波長の1/4倍だけ離れる毎に電流0、電流最大を繰り返す定在波が発生し、高周波信号の波長のn/2倍だけ離れた位置で電流最大になるのでこの電流による磁界でスロットを効率よく励振することができ、結果として効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。
本発明の配線基板は、電子部品の搭載部を有する配線基板に、上記本発明の誘電体共振器アンテナを、搭載部と線路導体とが近接するように形成したことから、誘電体共振器の内部あるいは表面に仕切り導体や空洞、凹部を配して誘電体共振器内に複数の共振現象を発生させるので、誘電体共振器の開口面積を大きくすることができ、指向性利得が大きいアンテナを具備する配線基板を提供することができる。
本発明の電子装置は、上記本発明の配線基板に電子部品を搭載するとともに、電子部品の電極と線路導体とを電気的に接続したことから、指向性利得が大きいアンテナを具備する電子装置を提供することができる。
本発明の誘電体共振器アンテナを図面に基づき詳述する。図1は、本発明の誘電体共振器アンテナの一例を説明するための概略図であり(a)は上面図、(b)はA−AA断面図、(c)はB−BB断面図である。
図1において、1は誘電体板から成る誘電体共振器、2は線路導体、3はグランド導体、4は高周波線路、5は線路導体の一端、6はスロット、7は仕切り導体、H1はスロットに結合した高周波信号の磁界、H2は誘電体共振器中の共振現象の磁界である。
この本発明の誘電体共振器アンテナの例では、誘電体板により誘電体共振器1が形成されている。誘電体共振器1の上面に形成された線路導体2とグランド導体3とからコプレーナ線路型の高周波線路4が構成されている。線路導体2の一端5は開放端になっている。グランド導体3にはスロット6が形成されており、このスロット6と高周波線路4とが電磁的に結合(電磁結合)してH1で示す磁界が発生する。
スロット6には誘電体板から成る誘電体共振器1が装荷されて、スロット6に結合した高周波信号を空間に効率よく放射できるようになっている。このとき誘電体共振器1には仕切り導体7が形成されているので、誘電体共振器1内部には仕切り導体7をはさむよう2つ以上の磁界H2が発生する。この2つ以上の磁界は位相が同じであり、共振現象が生じることによって磁界が強まり、スロット6に結合している高周波信号H1を効率よく空間に放射することができ、結果として効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。よって、仕切り導体7がなく共振現象が1つのときより実質的に誘電体共振器を大きくしたのと同じ効果、すなわち、アンテナとしての開口面積を実質的に大きくしたのと同じ効果が得られ、結果として指向性利得が大きい誘電体共振器アンテナを提供できる。
このとき一端5とスロット6の中心との距離Loを高周波線路4を伝送する高周波信号の波長の(2n−1)/4倍(nは自然数)にすることにより、高周波線路4とスロット6との結合効率を高めることができる。たとえばnが1の場合、線路導体2の一端5とスロット6の中心との間の距離Loは高周波信号の波長の1/4倍になる。高周波信号は一端5で全反射し高周波線路4上に定在波を発生させる。この定在波の電流は一端5で0であり、一端5から高周波信号の波長の1/4倍離れた位置すなわちスロット6中心で最大になり、線路導体2の電流による磁界で効率よくスロット6を励振することができる。nが2の場合にはLoは高周波信号の波長の3/4倍になる。定在波の電流は一端5で0、一端5から高周波信号の波長の1/4倍離れた位置で最大、2/4倍離れた位置で0、3/4倍離れた位置すなわちスロット6中心で再び最大になり、線路導体2の電流による磁界で効率よくスロット6を励振することができる。nが3以上の場合も同様に定在波の電流はスロット6中心で最大になり、線路導体2の電流による磁界で効率よくスロット6を励振することができる。
図2は、本発明の誘電体共振器アンテナの別の一例を説明するための概略図であり(a)は上面図、(b)はC−CC断面図、(c)はD−DD断面図である。
図2において、図1と同じ部位には図1と同じ記号を付けており、8は誘電体基板、9は凹部、10はシールド導体、11は開口、12は下部グランド層、Lsは短絡端長さである。
この本発明の誘電体共振器アンテナの例は図1の例と比較すると、図1の例では線路導体2とグランド導体3が誘電体板から成る誘電体共振器1の上面に形成されているのに対し、この例では線路導体2とグランド導体3は誘電体基板8の上面に形成され、この誘電体基板8の下面に誘電体板から成る誘電体共振器1が取着されている。なお、誘電体基板8は誘電体共振器の一部としての機能を有するように適宜厚みが調整されているのがよい。
このように誘電体共振器1を誘電体基板8に取着すると、誘電体共振器1は誘電体基板8の一部と一体となって共振器として作用することができる。またこのとき誘電体基板8と誘電体共振器1との間に開口11を有する下部グランド層12が存在するので、高周波線路4と誘電体共振器1を電磁的にシールドできるので、高周波線路4が誘電体共振器1内に不要共振を発生させるのを抑制することができる。
また図1の例では線路導体2の一端5が開放されているのに対しこの例では線路導体2の一端がグランド導体3に電気的に接続されている。線路導体2とスロット6との電磁結合は線路導体2の一端が開放の場合であっても、短絡の場合であっても一端5とスロット6の中心との距離を調整することによって同様に良好な結合を実現することができる。
さらに図1の例では誘電体共振器1内の共振が仕切り導体7で2つに分割されているのに対しこの例では誘電体共振器1内の共振が凹部9で2つに分割されている。
さらに図1の例では誘電体共振器1の側面が空気に囲まれているのに対し、この例では複数のシールド導体10で囲まれている。誘電体共振器1と空気との界面はそれぞれの誘電率が異なるために電磁波を反射するが、側面導体やシールド導体10を設けることにより、より効率よく電磁波を反射できる。なお、複数のシールド導体10の配列は相互の隙間を信号波長より十分狭くすれば信号にとっては実質的に金属壁となり、誘電体共振器内の電磁波を反射する。
以上のことより図2の例は図1の例と同様、効率が良く指向性利得が大きい誘電体共振器アンテナを提供できる。この例の線路導体2の一端5とスロット6との関係は、線路導体2がスロット6を交差した後スロット6の縁部に短絡すると、一端5で電流が最大になり、スロット6内にこの最大電流による最大磁界が発生してスロット6に効率よく結合することがでる。また一端5とスロット6中心との距離Lsが高周波信号の波長のn/2倍(nは自然数)の場合は、Lsはそれぞれ高周波信号の波長の1/2倍(n=1)、1倍(n=2)になる。高周波線路の先端が短絡されている場合、高周波信号は短絡端で全反射し高周波線路に定在波が発生する。この定在波の電流は短絡端で最大で、短絡端から高周波信号の波長の1/4倍だけ離れる毎に電流0、電流最大を繰り返す。したがって短絡端から高周波信号の波長の2/4倍の整数倍だけ離れた位置にスロットを形成すれば高周波線路とスロットとを効率よく結合させることができ、結果として放射効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。また凹部9で誘電体共振器1を分割し1つ1つの誘電体共振器を大きくすれば誘電体共振器1全体が大きくなり、アンテナとしての開口面積が大きくなって、結果として指向性利得が大きな誘電体共振器アンテナを提供できる。
またこの例の構成のように誘電体基板8と誘電体共振器1との間にスロット6よりも大きい開口11を有する下部グランド層12を介在させることにより、高周波線路4の一部を誘電体共振器1から電磁気的にシールドすることができ、高周波線路の電磁界が誘電体共振器中に不要な共振を発生させることを抑制することができる。
図3は、本発明の電子装置の一例を説明するための概略図であり(a)は上面図、(b)はE−EE断面図である。
図3において、図2と同じ部位には図2と同じ記号を付けており、13は上部誘電体層、14は上部グランド層、15は接続導体、16は高周波素子、17はワイヤーボンディング、18は蓋体である。
この本発明の例では、誘電体基板8の上面に線路導体2、グランド導体3、スロット6が形成され、線路導体2の一端5はグランド導体3に短絡している。誘電体基板8の下部にはスロット6より大きい開口11を有する下部グランド層12が形成され、下部グランド層12の下部に誘電体板からなる誘電体共振器1が取着され、この誘電体共振器1の内部に仕切り導体7が形成されている。
また、誘電体共振器1の側面は開口11を取り囲むように配されたシールド導体10で囲まれている。線路導体2の上部には上部誘電体層13と上部グランド層14が順次積層され、上部グランド層14は接続導体15でグランド導体3と電気的に接続されている。線路導体2の一端はスロット6と電磁結合するために短絡になっており他方の一端は、誘電体基板8の上面に設けた高周波素子16などの電子部品の搭載部と近接して配置されている。これにより、本発明の配線基板が構成される。そして、この搭載部に搭載した高周波素子16と線路導体2の他方の一端とをワイヤーボンディング17によって接続し、上部グランド層14に接合された蓋体18によって高周波素子17を気密に封止することにより、本発明の電子装置となる。
このような構成にすることによって、誘電体共振器1を誘電体基板8と一体的に構成することができ、誘電体共振器アンテナの作製を容易にすることができるとともに、配線基板のアンテナ放射面と反対の面に高周波素子16を実装することができるので装置の小型化を実現できる。またこの例においては、線路導体2の上部に上部誘電体層13を配し、上部誘電体層13の上面に上部グランド層14を配するので、スロット6から上側への電磁波の漏れを抑制し、放射効率が良い誘電体共振器アンテナを提供できる。
なお、本発明は、以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。
本発明の誘電体共振器アンテナの一例を説明するための概略図であり(a)は上面図、(b)はA−AA断面図、(c)はB−BB断面図である。 本発明の誘電体共振器アンテナの別の一例を説明するための概略図であり(a)は上面図、(b)はC−CC断面図、(c)はD−DD断面図である。 本発明の配線基板の一例を説明するための概略図であり(a)は上面図、(b)はE−EE断面図である。
符号の説明
1:誘電体共振器
2:線路導体
3:グランド導体
4:高周波線路
5:線路導体の一端
6:スロット
7:仕切り導体
8:誘電体基板
9:凹部
10:シールド導体
11:開口
12:下部グランド層
13:上部誘電体層
14:上部グランド層
16:高周波素子(電子部品)
18:蓋体
H1:スロットにおける磁界
H2:誘電体共振器における磁界
Lo:開放端からスロット中心までの距離
Ls:短絡端からスロット中心までの距離

Claims (14)

  1. 誘電体板から成る誘電体共振器の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体共振器を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体共振器を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体共振器の内部あるいは下面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なるとともに前記誘電体共振器の側面と離間した仕切り導体を配したことを特徴とする誘電体共振器アンテナ。
  2. 誘電体板から成る誘電体共振器の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体共振器を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体共振器を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体共振器の内部あるいは表面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なる空洞あるいは凹部を形成したことを特徴とする誘電体共振器アンテナ。
  3. 誘電体基板の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体基板を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体基板を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体基板の下面に、前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを取り囲む開口を有する下部グランド層を形成するとともに該下部グランド層の下面に前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを覆うように誘電体板から成る誘電体共振器を取着し、前記誘電体共振器の内部あるいは下面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なるとともに前記誘電体共振器の側面と離間した仕切り導体を配したことを特徴とする誘電体共振器アンテナ。
  4. 誘電体基板の上面に、線路導体と、該線路導体と同一面に前記線路導体と間隔をあけて形成されたグランド導体とからなる高周波線路を形成し、前記グランド導体に前記誘電体基板を平面視して前記線路導体に直交するとともに前記高周波線路と電磁的に結合するスロットを形成し、前記高周波線路を伝送する信号を前記スロットおよび前記誘電体基板を介して空間に放射するアンテナであって、前記誘電体基板の下面に、前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを取り囲む開口を有する下部グランド層を形成するとともに該下部グランド層の下面に前記誘電体基板を平面透視して前記スロットを覆うように誘電体板から成る誘電体共振器を取着し、前記誘電体共振器の内部あるいは表面に、前記誘電体共振器を平面透視して前記スロットと重なる空洞あるいは凹部を形成したことを特徴とする誘電体共振器アンテナ。
  5. 前記誘電体共振器の側面に導体層を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の誘電体共振器アンテナ。
  6. 前記誘電体板の内部に、前記誘電体板を平面透視して前記スロットを取り囲むように複数のシールド導体を配列し、該シールド導体群の内側領域を前記誘電体共振器としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体共振器アンテナ。
  7. 前記誘電体板の内部に、前記誘電体板を平面透視して前記開口を取り囲むように複数のシールド導体を配列し、該シールド導体群の内側領域を前記誘電体共振器としたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の誘電体共振器アンテナ。
  8. 前記誘電体共振器の比誘電率が3以上10以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の誘電体共振器アンテナ。
  9. 前記線路導体の上面に上部誘電体層および上部グランド層を順次積層したことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の誘電体共振器アンテナ。
  10. 前記線路導体の一端が開放され、前記スロットと交差する部位の中心と前記線路導体の一端との距離を、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長の(2n−1)/4倍(nは自然数)にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の誘電体共振器アンテナ。
  11. 前記線路導体の一端を前記グランド層と電気的に接続したこと特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の誘電体共振器アンテナ。
  12. 前記線路導体が前記スロットと交差する部位の中心と前記一端との距離を、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長のn/2倍(nは自然数)にしたことを特徴とする請求項11記載の誘電体共振器アンテナ。
  13. 電子部品の搭載部を有する配線基板に、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の誘電体共振器アンテナを、前記搭載部と前記線路導体とが近接するように形成したことを特徴とする配線基板。
  14. 請求項13記載の配線基板に電子部品を搭載するとともに、該電子部品の電極と前記線路導体とを電気的に接続したことを特徴とする電子装置。
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