JP2009159203A - 誘電体レンズ付きアンテナ - Google Patents

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Abstract

【課題】ミリ波無線通信等の超高周波用アンテナにおいて、指向性の調整が容易で薄型化可能な誘電体レンズ付きアンテナを提供する。
【解決手段】誘電体レンズ付きアンテナは、表面に高周波線路4が形成された誘電体基板1と、誘電体基板1の裏面に、高周波線路4と励振スロット5を介して電磁結合するように配置された誘電体共振器7と、誘電体共振器7の出力側に配置された誘電体レンズ8とを具備している。高周波線路4と誘電体レンズ8とが誘電体共振器7を介して結合されるので、誘電体レンズ8を誘電体基板1に接近させて配置できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ミリ波無線通信等の超高周波用アンテナにおいて、基板に内蔵可能な誘電体共振器を用いた放射器と誘電体レンズとを組み合わせた誘電体レンズ付きアンテナに関するもので、超高周波装置の小型化、高性能化を実現する誘電体レンズ付きアンテナに関するものである。
近年、ミリ波等の超高周波通信用途に関する様々な検討が行なわれている。例えば、一般家庭の室内において、壁掛け高品位テレビやDVDレコーダ等に、無線で画像信号を伝送するミリ波無線PAN(Personal Area Network)システムが提案されている。このシステムにはアンテナの小型化が可能で、広い周波数帯域とすることが可能な60GHz帯のミリ波を用いることが検討されている。
このミリ波無線PANに用いられるミリ波送受信機部分の小型化、高性能化および製造容易化を実現する方法として、ミリ波回路とアンテナとを1つのパッケージに収納したミリ波フロントエンドモジュールが提案されている。この構成にすることによりミリ波回路部品の複雑かつ高精度な実装や調整を省略することができ、ミリ波送受信機部分の製造が容易になる。
このようなミリ波フロントエンドモジュールにおいては、アプリケーションの要求に合わせて誘電体レンズでアンテナの放射パターンをコントロールすることが考えられている。また、アンテナの具体例としてスロットアンテナやパッチアンテナが用いられたものが開示されている。
国際公開第00/48269号パンフレット 特開平11−4118号公報
スロットアンテナの場合、電波はスロットの上下両側に放射されるため、スロット上部に金属製の反射板が設置される。スロットと反射板の距離を高周波信号の波長の1/4倍に設定することにより、スロットから下側に放射した電波と、上側に放射し反射板で反射してきた反射波の位相を同位相にすることができ、アンテナとして機能する。また、スロットの下側には高周波信号の1/2波長の整数倍の距離に誘電体レンズが設置される。しかしながら、このスロットの上側の空間および金属製反射板ならびに誘電体レンズの設置距離の分、ミリ波フロントエンドモジュールの厚さが厚くなってしまうという問題がある。
パッチアンテナの場合、電波は基板表面から一方空間側に放射されるので、金属反射板を設置する必要はない。しかしながら、放射パターンコントロールのための誘電体レンズを接合する場合、パッチアンテナの性能を保つためにはやはりパッチアンテナと誘電体レンズとの距離をある程度確保する必要があり、ミリ波フロントエンドモジュールが厚くなってしまうという問題がある。
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、指向性の調整が容易で機器の薄型化を可能とする誘電体レンズ付きアンテナを提供することにある。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナは、表面に高周波線路が形成された誘電体基板と、該誘電体基板の裏面に、前記高周波線路と励振スロットを介して電磁結合するように配置された誘電体共振器と、該誘電体共振器の出力側に配置された誘電体レンズとを具備したことを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体共振器は、金属板に設けられた孔に誘電体が充填されて成ることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体共振器は、誘電体の表裏両面を導通するビアホール導体群に取り囲まれた領域で成ることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記誘電体共振器の出力側開口の周囲に、前記ビアホール導体群に導通している開口導体層が形成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記高周波線路はマイクロストリップ線路であり、前記誘電体基板は、表面に線路導体が、裏面に裏面グランド層が形成されており、該裏面グランド層の一領域に導体層の非形成領域から成る前記励振スロットが形成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記マイクロストリップ線路は終端が開放端あるいは短絡端とされており、前記マイクロストリップ線路の終端が開放端であるときは、前記励振スロット直上から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)より長く設定され、前記マイクロストリップ線路の終端が短絡端であるときは、前記励振スロット直上から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)、あるいは励振スロットの高周波素子から遠い側のエッジ位置までより長く設定されることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記高周波線路は、前記誘電体基板表面の線路導体と、該線路導体の両側に前記線路導体と一定間隔をもって配置された同一面グランド層とから成るコプレーナ線路であり、前記同一面グランド層の一領域に導体層の非形成領域から成る前記励振スロットが形成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、前記コプレーナ線路は終端が開放端あるいは短絡端とされており、前記コプレーナ線路の終端が短絡端であるときは、前記励振スロットの中心から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)、あるいは励振スロットの高周波素子から遠い側のエッジ位置までより長く設定され、前記コプレーナ線路の終端が開放端であるときは、前記励振スロットの中心から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)より長く設定されることを特徴とする。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナは、表面に高周波線路が形成された誘電体基板と、誘電体基板の裏面に、高周波線路と励振スロットを介して電磁結合するように配置された誘電体共振器と、誘電体共振器の出力側に配置された誘電体レンズとを具備したことから、誘電体レンズを誘電体共振器に近接して配置しても、誘電体共振器の作用によってアンテナ特性が大きく影響されることがない。したがって、ミリ波フロントエンドモジュールを薄型化することができる。また、誘電体共振器と誘電体レンズとを組み合わせることによりアンテナからの放射パターンを所望のものにコントロールすることができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、誘電体共振器は、金属板に設けられた孔に誘電体が充填されて成ることから、誘電体共振器に用いる誘電体の選択肢を広くすることができ、誘電体共振器の特性を所望のものとすることができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、誘電体共振器は、誘電体の表裏両面を導通するビアホール導体群に取り囲まれた領域で成ることから、誘電体基板と誘電体共振器を一体的に作製することができ、誘電体レンズ付きアンテナの製造性を良好にすることができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、誘電体共振器の出力側開口の周囲に、ビアホール導体群に導通している開口導体層が形成されていることから、各ビアホール導体の電位を一定電位に揃え易くなり、アンテナ特性を安定化することができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、高周波線路はマイクロストリップ線路であり、誘電体基板は、表面に線路導体が、裏面に裏面グランド層が形成されており、裏面グランド層の一領域に導体層の非形成領域から成る励振スロットが形成されていることから、マイクロストリップ線路を用いた高周波素子との接続を容易にすることができるとともに、マイクロストリップ線路と誘電体共振器との電磁結合を簡易に行なうことができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、マイクロストリップ線路は終端が開放端あるいは短絡端とされており、
前記マイクロストリップ線路の終端が開放端であるときは、前記励振スロット直上から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)より長く設定され、前記マイクロストリップ線路の終端が短絡端であるときは、前記励振スロット直上から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)、あるいは励振スロットの高周波素子から遠い側のエッジ位置までより長く設定されることから、誘電体レンズを配置することによるアンテナインピーダンスの容量性への変動を補正することができ、誘電体レンズ付きアンテナの特性を最適化することができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、高周波線路は、誘電体基板表面の線路導体と、線路導体の両側に線路導体と一定間隔をもって配置された同一面グランド層とから成るコプレーナ線路であり、同一面グランド層の一領域に導体層の非形成領域から成る励振スロットが形成されていることから、コプレーナ線路を用いた高周波素子との接続を容易にすることができるとともに、コプレーナ線路と誘電体共振器との電磁結合を簡易に行なうことができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナにおいて、好ましくは、コプレーナ線路は終端が開放端あるいは短絡端とされており、前記コプレーナ線路の終端が短絡端であるときは、前記励振スロットの中心から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)、あるいは励振スロットの高周波素子から遠い側のエッジ位置までより長く設定され、前記コプレーナ線路の終端が開放端であるときは、前記励振スロットの中心から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)より長く設定されることから、誘電体レンズを配置することによるアンテナインピーダンスの容量性への変動を補正することができ、誘電体レンズ付きアンテナの特性を最適化することができる。
本発明の誘電体レンズ付きアンテナを図面に基づき詳述する。図1は、本発明の誘電体レンズ付きアンテナの一例を説明するための概略図であり(a)は表面図、(b)はA−AAにおける断面図である。
図1において、1は誘電体基板、2は誘電体基板1の表面(上面)に形成された線路導体、3は誘電体基板1の裏面(下面)に導体層を形成することによって成る裏面グランド層、5は裏面グランド層3の一領域に導体層が形成されない領域を設けることによって、裏面グランド層3に形成された開口で成る励振スロット、6は金属板、7は金属板6に設けられた孔内に誘電体が充填された誘電体共振器、8は誘電体レンズ、9は蓋、10は高周波素子、11は線路導体2の終端、Lは励振スロット5の中心から終端11までの平面視距離(スタブ長)を示す。
この本発明の誘電体レンズ付きアンテナの一実施形態例では、誘電体基板1表面に誘電体基板1と線路導体2と裏面グランド層3とから成るマイクロストリップ線路型の高周波線路4が形成され、裏面グランド層3の線路導体2と誘電体共振器7との間の一領域に、線路導体2と直交する方向に長辺を有する長方形状の励振スロット5が形成されている。励振スロット5は、通常、長辺側が高周波信号の波長の1/2倍、短辺側は励振スロット5のインピーダンスが高周波線路4のインピーダンスと誘電体共振器7のインピーダンスの積の平方根になる大きさとされる。そして誘電体基板1の裏面に、高周波線路4と励振スロットを介して電磁結合するように誘電体共振器7が配置され、さらに誘電体共振器7の出力側に誘電体レンズ8が配置されている。誘電体共振器7は金属板6に設けられた孔に誘電体を充填して構成されている。
なお、高周波線路4側から誘電体レンズ8側へ向けて高周波信号が放射されるものとして、誘電体共振器7の出力側に誘電体レンズ8が配置されると説明したが、高周波信号が空間側から誘電体レンズ8を通して、高周波線路4側へ入射するように動作させるようにすることもできる。
このようにミリ波回路が構成される誘電体基板1表面に高周波線路4を形成し、誘電体基板1の裏面に、高周波線路4と励振スロット5を介して電磁結合するように誘電体共振器7を配置することにより、電波は誘電体共振器7が配置された誘電体基板1の裏面側に放射されるようにすることができる。したがって、誘電体基板1表面の上部に電波を反射するための反射板を特定の距離を置いて配置する必要がないため、ミリ波フロントエンドモジュールを薄型化することができる。
また高周波信号は、高周波素子10等のミリ波部品が搭載される誘電体基板1の表面側から誘電体基板1を通して誘電体基板1の裏面側に放射されるので、誘電体基板1の表面側のみに蓋9を取り付ければミリ波部品を気密封止することができるので、ミリ波フロントエンドの製造が容易である。
また誘電体共振器7を用いて放射させるので、10%程度の広い比帯域を持たせることができ、誘電体共振器7の共振周波数を左右する誘電体の誘電率、寸法精度に対する許容度を大きくでき、ミリ波フロントエンドの製造性が良好になる。
また誘電体共振器7単体の放射パターンは、誘電体共振器7の出力側開口形状に依存し、この開口形状は高周波信号の周波数と誘電体共振器7の誘電率とでほぼ決定されるものであるので誘電体共振器7単体では所望の放射パターンを得ることができない場合がある。しかしながら、本発明においては誘電体共振器7と誘電体レンズ8とを組み合わせて用いることにより所望の放射パターンを得ることができる。
また、誘電体共振器7の共振周波数は、ほぼその誘電率と寸法から決定されるので、誘電体レンズ8を誘電体共振器7に近接または密着して配置してもアンテナ特性が大きく影響されない。したがって、ミリ波フロントエンドモジュールを薄型化することができる。
また、誘電体レンズ8を誘電体共振器7に近接または密着して配置することにより、誘電体共振器7から放射された電波の大部分を誘電体レンズ8に入射させてコントロールできるのでアンテナとしての指向性ゲインを大きくすることができる。
この本発明の一実施形態例においては、高周波線路4は、高周波素子10が接続される側と反対側の終端11が開放端とされている。しかし、終端11が短絡端とされる場合もある。短絡端は、線路導体2の終端と裏面グランド層3とが導体によって接続することによって実現される。
一般に、励振スロット5の長辺長さとマイクロストリップ線路の終端位置とは、マイクロストリップ線路の終端が開放端である場合、(励振スロット5の長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍とされ、マイクロストリップ線路の終端が短絡端である場合、(励振スロット5の長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍とされる。ここで、εsは前記励振スロットの実効誘電率を表し、高周波信号がスロットを伝送する際の波長短縮効果を意味する。また、εtは前記高周波線路の実効誘電率を表し、前記励振スロットの実効誘電率と同様、高周波信号が前記高周波線路を伝送する際の波長短縮効果を意味する。
例えば、高周波線路4と励振スロット5との電磁結合において励振スロット5の長辺長さを高周波線路4を伝送する信号波長の1/2としたときは、励振スロット5の直上から終端11までの距離、すなわち長方形状の励振スロット5の短辺側中心位置から終端11までの平面視距離は、終端11を開放端とする場合、高周波線路4を伝送する信号波長の1/4の奇数倍とされ、終端11を短絡端とする場合、高周波線路4を伝送する信号波長の1/2の自然数倍、あるいは励振スロット5の高周波素子10から遠い側のエッジ位置までとされてその位置で短絡される。
本発明において、放射器に誘電体共振器7を用いているのでアンテナ特性に及ぼす誘電体レンズ8の影響は小さいが、両者の距離、誘電体レンズ8の誘電率、厚さ等によって全体としてのインピーダンスが若干変動する。そこで、本発明においては、誘電体レンズ8を設置することに伴って生じるこのインピーダンス変動を、誘電体レンズ8が設置されない場合の上記距離より長いスタブ長Lに設定することによってキャンセルさせる。
このインピーダンスの変動を、誘電体レンズ8の比誘電率を2.2(ポリエチレンを想定)として、誘電体レンズ8と誘電体共振器7との間の距離をパラメータとして変化させて電磁界シミュレーションで調べた。例えば、誘電体レンズ8がない状態で高周波線路4の励振スロット5の直上位置から見た反射が0の状態から、誘電体レンズ8を誘電体共振器7から比較的距離を置いて設置して反射係数の変化量の絶対値が容量側へ0〜0.18の範囲であれば、反射の大きさは約−15dB以下であり特に調整の必要はないが、さらに誘電体レンズ8との距離を短くし、反射係数の変化量の絶対値が0.18以上となる場合はスタブ長Lを長く調整した方が望ましい。スタブ長Lを伸ばすことにより全体の反射係数を誘導側へシフトさせることができ、0.25sin(4π△L/λ)=「誘電体レンズ8を設置することに伴って生じる反射係数の変化量の絶対値」(但し、△Lは誘電体レンズ8を設置しない場合に対して長くしたスタブ長Lの差分長、λは高周波線路4上における高周波信号の1波長の長さ)の関係を満たすようにすればよいことを見出した。
ΔLを信号波長λの6%〜13%の範囲で変化させると、全体の反射係数を誘導側へ0.18〜0.25シフトさせることができる。誘電体レンズ8による反射係数の変化量の絶対値は最大で0.35であるが、この場合でもスタブ長Lを、誘電体レンズ8がない場合の最適値より信号波長の13%伸ばせば反射係数の変化量の絶対値は0.1に抑制され、反射の大きさは−20dB以下に抑えることができる。また誘電体レンズ8による反射係数の変化量の絶対値が0〜0.35なので、その中心値の0.18を調整の対象とすれば、どんな場合でも最終的な反射係数は0.18以下になるので反射としては−15dB以下に抑制することができる。
なお、図1の実施形態においては、放射器部分が樹脂基板またはセラミックス基板等から成る誘電体基板1を金属板6に接合することによって構成されている。誘電体共振器7は金属板6の表裏両面を貫通する孔に誘電体を充填して形成されるので、充填する誘電体は誘電体基板1に用いる誘電体と異なる適宜なものを用いることができる。したがって、ミリ波フロントヘッドの小型化や低損失化に対する要求に応じて、誘電率または誘電損失の観点から誘電体共振器7の特性が所望のものとなる誘電体の選択肢を広いものとすることができる。
また、高周波線路4を形成する誘電体基板1も、樹脂やセラミックス等の幅広い選択肢から必要に応じて選択することができる。さらに、金属板に銅やアルミニウム等熱伝導が良好な材料を選択すれば、高周波素子10が発生する熱を効率よく放散することができ、回路動作を安定化することができる。
他の実施形態として、金属板6部分を誘電体で形成し、誘電体共振器7部分を表裏両面を導通する複数のビアホール導体で取り囲んだ領域で形成してもよい。例えば、金属板6部分をセラミックス誘電体とし、セラミックスから成る誘電体基板1と積層することによって形成してもよい。
次に、図2は本発明の誘電体レンズ付きアンテナのさらに他の実施形態の例を説明するための概略図である。図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のB−BB断面における断面図である。図2において図1と対応する部位には同じ符号を付けている。
この実施形態例では、線路導体2と、線路導体2の両側に一定間隔をもって配置された導体層で成る同一面グランド層21とから成るコプレーナ線路型の高周波線路4が誘電体基板1の表面に形成される。コプレーナ線路の終端11近くの同一面グランド層21には、導体層が形成されない領域を設けることによって同一面グランド層21に形成された開口で成る励振スロット5が配置される。そして、誘電体基板1の裏面側に励振スロット5と対向する位置に、高周波線路4と励振スロット5を介して電磁結合するように誘電体共振器7が配置され、さらに誘電体共振器7の出力側に誘電体レンズ8が配置される。
励振スロット5は、線路導体2と直交する方向に長辺側を有する長方形状に設けられ、通常、長辺側が高周波信号の波長の1/2倍、短辺側は励振スロット5のインピーダンスが高周波線路4のインピーダンスと誘電体共振器7のインピーダンスの積の平方根になる大きさとされる。このように高周波線路4をコプレーナ線路型とすることにより、誘電体基板1表面に搭載されるコプレーナ線路を用いた高周波素子10との接続を容易とすることができる。
また誘電体共振器7を、誘電体23および誘電体基板1の表裏両面を導通するビアホール導体群24で取り囲んで構成している。この場合、誘電体基板1と誘電体23を一体的に積層して作製することができ、誘電体レンズ付きアンテナの製造性を良好にすることができる。ビアホール導体群24を構成するビアホール導体24は、誘電体23の裏面から誘電体基板1表面にかけて形成され、誘電体基板1表面で同一面グランド層21に接続される。
また、誘電体23の裏面の誘電体共振器7の出力側開口の周囲に、開口導体層25がビアホール導体群24のそれぞれのビアホール導体に導通するように形成される。これによって、ビアホール導体群24の電位を一定電位に保持することができ、アンテナ特性を安定化することができる。
この実施形態においては、高周波線路4の終端11は短絡端とされて、線路導体2の終端11が同一面グランド層21に接続されているが、図3(a),(b)に示すように、線路導体2の終端11が開放端とされてもよい。
そして、本実施形態においても、図1に示す高周波線路4がマイクロストリップ線路の場合と同じように、終端11部の、励振スロット5の短辺中央から終端11までの平面視長さLのスタブを調整することによって、誘電体レンズ8を設置することによる反射係数の変化をキャンセルさせることができる。スタブ長Lは図1に示す実施形態の場合と同じ手順で決定することができる。
すなわち、一般に励振スロット5の長辺長さとコプレーナ線路の終端位置とは、コプレーナ線路の終端が短絡端である場合、(励振スロット5の長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍とされ、コプレーナ線路の終端が開放端である場合、(励振スロット5の長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍とされる。ここで、εsおよびεtは、マイクロストリップ線路にて説明したものと同じ実効誘電率を示す。
例えば、励振スロットの長辺流さがλ/2であり、誘電体レンズ8が設置されない場合、通常、終端11が短絡端の場合、スタブ長Lは、高周波線路4を伝送する高周波信号波長の1/2の自然数倍、あるいは励振スロット5の高周波素子10から遠い側のエッジ位置までとされる。終端11が開放端の場合、スタブ長Lは、高周波信号波長の1/4の奇数倍とされる。これに対して、誘電体レンズ8が設置される場合は、0.25sin(4π△L/λ)=「誘電体レンズ8を設置することに伴って生じる反射係数の変化量の絶対値」の関係を満たすようにスタブ長Lを△Lだけ長くすればよい。
また、図2の実施形態において、誘電体23の表面(上面)に誘電体基板1を一体形成した例を示したが、図1の実施形態のように金属板6の表面に誘電体基板1を接合したもので形成してもよい。この場合、金属板6と同一面グランド層21とを接続するようにビアホール群24が配置される。
なお、本発明は、以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、上記の実施形態例として、高周波線路4がマイクロストリップ線路の場合とコプレーナ線路の場合の例を示したが、コプレーナ線路であって信号線に対向する裏面グランド層3も有するグランド付きコプレーナ線路の他、スロット線路、中空導波管、誘電体導波管等を用いても良い。ミリ波回路の構成に応じて適宜高周波線路4を選択し、励振スロット5を介した誘電体共振器7、誘電体レンズ8を組み合わせれば、製造性に優れ、小型高性能な誘電体レンズ付きアンテナを実現することができる
本発明の誘電体レンズ付きアンテナの実施の形態の一例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−AA断面図である。 本発明の誘電体レンズ付きアンテナの実施の形態の他の例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−BB断面図である。 本発明の誘電体レンズ付きアンテナの実施の形態のさらに他の例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−CC断面図である。
符号の説明
1:誘電体基板
2:線路導体
3:裏面グランド層
4:高周波線路
5:励振スロット
6:金属板
7:誘電体共振器
8:誘電体レンズ
9:蓋
10:高周波素子
11:終端
21:同一面グランド層
23:誘電体
24:ビアホール導体群
25:開口導体層
L:スタブ長

Claims (8)

  1. 表面に高周波線路が形成された誘電体基板と、該誘電体基板の裏面に、前記高周波線路と励振スロットを介して電磁結合するように配置された誘電体共振器と、該誘電体共振器の出力側に配置された誘電体レンズとを具備した誘電体レンズ付きアンテナ。
  2. 前記誘電体共振器は、金属板に設けられた孔に誘電体が充填されて成ることを特徴とする請求項1記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
  3. 前記誘電体共振器は、誘電体の表裏両面を導通するビアホール導体群に取り囲まれた領域で成ることを特徴とする請求項1記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
  4. 前記誘電体共振器の出力側開口の周囲に、前記ビアホール導体群に導通している開口導体層が形成されていることを特徴とする請求項3記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
  5. 前記高周波線路はマイクロストリップ線路であり、前記誘電体基板は、表面に線路導体が、裏面に裏面グランド層が形成されており、該裏面グランド層の一領域に導体層の非形成領域から成る前記励振スロットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
  6. 前記マイクロストリップ線路は終端が開放端あるいは短絡端とされており、前記マイクロストリップ線路の終端が開放端であるときは、前記励振スロット直上から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)より長く設定され、前記マイクロストリップ線路の終端が短絡端であるときは、前記励振スロット直上から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)、あるいは励振スロットの高周波素子から遠い側のエッジ位置までより長く設定されることを特徴とする請求項5記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
  7. 前記高周波線路は、前記誘電体基板表面の線路導体と、該線路導体の両側に前記線路導体と一定間隔をもって配置された同一面グランド層とから成るコプレーナ線路であり、前記同一面グランド層の一領域に導体層の非形成領域から成る前記励振スロットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
  8. 前記コプレーナ線路は終端が開放端あるいは短絡端とされており、前記コプレーナ線路の終端が短絡端であるときは、前記励振スロットの中心から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ)×(εs/εt)1/2の整数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)、あるいは励振スロットの高周波素子から遠い側のエッジ位置までより長く設定され、前記コプレーナ線路の終端が開放端であるときは、前記励振スロットの中心から前記終端までの距離が、(前記励振スロットの長辺長さ/2)×(εs/εt)1/2の奇数倍(但し、εsは前記励振スロットの実効誘電率、εtは前記高周波線路の実効誘電率)より長く設定されることを特徴とする請求項7記載の誘電体レンズ付きアンテナ。
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