JP4415200B2 - 遅発育性抗酸菌ポリペプチド - Google Patents

遅発育性抗酸菌ポリペプチド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遅発育性抗酸菌(マイコバクテリウム)の産生するポリペプチドおよびその誘導体、該ポリペプチドをコードするDNAに関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)などの病原性抗酸菌(マイコバクテリウム)は非常に増殖の緩慢な菌で、人類の3分の1に感染しているといわれる。遅発育性は、細胞内寄生を可能にし、また薬剤に対する抵抗性を付与する。
【0003】
本発明者は、病原性抗酸菌の遅発育メカニズムを解明し、結核等の病原性抗酸菌の新たな診断予防、ワクチン及び治療剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、BCG東京株からの配列番号1で表されるポリペプチド(以下、MDP1(MycobacteriumDNA BindingProtein1)と略す)を分離し、該ポリペプチドが遅発育性の原因であることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は以下の項1〜項4を提供するものである。
項1. 1又は複数個のアミノ酸が置換、付加又は欠失していてもよい配列番号1(205個のアミノ酸)で表される病原性抗酸菌に対する免疫原性を有するポリペプチド。
項2. 項1に記載のポリペプチドをコードしてなるDNA。
項3. 項2に記載のDNAを含むベクターまたは該ベクターを含む形質転換体。
項4. 項3に記載の形質転換体を培養することを特徴とする項1に記載のポリペプチドの製造法。
【0006】
該ポリペプチド、特にリン酸化されたMDP1は、結核の診断およびワクチンの製造に有用である。該ポリペプチドは、糖鎖により修飾されていてもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のポリペプチドは、例えばBCG東京株から得ることができるが、該株に限定されず、他のBCG株、或いは結核菌、らい菌等のマイコバクテリウム属の菌から得られる蛋白質であっても本発明に包含される。
【0008】
本発明の205個のアミノ酸からなるポリペプチドは、病原性抗酸菌に対する免疫原性を有する限り1又は複数個、好ましくは1〜数個のアミノ酸が特定の位置又はランダムに置換、付加又は欠失していても良い。また、本発明のポリペプチドはリン酸化されたものであるのが好ましい。なお、病原性抗酸菌に対する免疫原性を有するとは、該ポリペプチドを必要に応じて他のタンパク質などと組み合わせて哺乳動物に投与したときに病原性抗酸菌に対する抗体産生を誘導する能力を有することを意味する。
【0009】
前記アミノ酸をコードするDNAは、該DNAがコードするポリペプチドが病原性抗酸菌に対する免疫原性を有する限り1又は複数個、好ましくは1〜数個の核酸塩基が特定の位置又はランダムに置換、付加又は欠失していても良い。本発明のDNAには、配列番号2のDNAとストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNAを包含する。
【0010】
特定のアミノ酸を置換、付加又は欠失する方法としては、ポイントミューテーション法、PCRを利用したdeletion/insertion法などの従来公知の方法が広く用いられる。
【0011】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、通常ハイブリダイズ法で用いられる条件を意味し、このような条件は、当業者であれば容易に理解できる。
【0012】
本発明のポリペプチドは、例えば、該ポリペプチドをコードするDNAを組み込んだベクターを細胞に導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地中で培養することを特徴とする前記項1で表されるポリペプチドの製造法により製造される。
【0013】
上記のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだベクターで形質転換される細胞としては、特に限定されず、従来公知の形質転換用の細胞が広く用いられるが、例えば大腸菌、BCG菌等の細菌類、酵母などの真核微生物、マウス、ラット、ハムスター、ヒト、等の各種哺乳動物の培養細胞が挙げられ、好ましくは細菌又は酵母が例示される。
【0014】
大腸菌等へのベクターの導入も、公知の方法に従い行うことができる。
【0015】
本発明のポリペプチドの製造に用いられるベクターとしては、本発明のポリペプチドをコードするDNAの翻訳に必要なプロモーター等を備えている限り特に限定されないが、例えば、pBluescript、pGEX等が挙げられる。
【0016】
本発明は、該ポリペプチドをコードするDNAを組み込んだベクターが前記細胞に組み込まれた形質転換体にも関する。
【0017】
該形質転換体が培養される培地は、形質転換される細胞の種類にもよるが、例えば大腸菌などの微生物の場合には、炭素源(グルコース等)、窒素源(硫酸アンモニウムなど)、無機物(リン酸ナトリウム、硫酸鉄、硫酸マンガンなど)を含む培地が挙げられる。温度、pH、時間などの培養条件は、各種細胞の通常の培養条件がそのまま用いられる。
【0018】
本発明のポリペプチドを結核または抗酸菌の診断に用いる場合、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド中に含まれる数個から数十個のペプチドを抗原として用い、該抗原を、抗体を含む生物試料(血清など)とをin vitroで接触させ、次いで、得られた抗原抗体複合体を検出することにより結核または抗酸菌の診断を行うことができる。
MDP1のワクチンへの応用
さまざまな難病の防御抗原(マラリア等の原虫感染症、肺炎球菌、クラミジア等の細菌感染症、HIVやインフルエンザ等のウイルス感染症など)が同定され、動物実験レベルでは感染防御効果を得ているが、ヒトに応用する場合、安全で有効なアジュバントが開発されていないため、十分な感染防御効果が得られず、ワクチンとして使用するに至っていない。
【0019】
本発明者は、配列番号1のアミノ酸配列を有するMDP1は、DNAと結合させることで免疫原性が増強され、抗体価が上がることを証明した。上記の防御抗原をMDP1内に組み込み、融合タンパク質としてDNAとともに使用することで、感染性のない安全で有効なワクチンを製造できる。また、アジュバント活性が十分でない場合には、融合タンパク質を形質転換の宿主細胞としてのBCG菌内で発現させ、それをワクチンとして活用できる。BCGはアジュバント活性最大の生ワクチンであり、効果が持続し、また安全なワクチンとして現在も使用されている。
【0020】
MDP1のワクチンとしての使用の態様としては、
1.MDP1内に異種抗原を発現させた融合蛋白質をDNAとともにワクチンとして使用する;
2.上記融合タンパク質を,DNA、既存アジュバントとともにワクチンとして使用する;
3.上記融合タンパク質をBCG菌内で発現させ、生ワクチンとして使用する;などが例示される。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、マイコバクテリウム、大腸菌などの細菌に対し遅発育性を示す新規ポリペプチドを単離し、その構造を明らかにした。
【0022】
該ポリペプチドは、遺伝子工学の方法により容易に大量生産でき、結核、らい等の診断用の抗原、ワクチン開発等に応用可能である。
【0023】
本発明のポリペプチドは、DNA、RNAまたはリボソームに結合して増殖を遅延させるものであり、感染症ないし癌の治療にも使用できる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施態様を用いてより詳細に説明する。
製造例1
(1) バクテリア株、プラスミド、培養液
BCG東京株、M.tuberculosis H37Rv及びM. smegmatis ATCC606は、ソートン培地または10%ADC濃縮物及び0.05%ツイーン80を添加したミドルブルック7H9ブロス(ディフコ ラボラトリーズ、デトロイト、米国)中、37℃で増殖させた。M. leprae 53タイ株は、マツオカ・マサノリ博士から得た。M. smegmatisは、プラスミドpSO246及びその誘導体の宿主として使用した。
【0025】
組換えM. smegmatisクローンは、10%OADC濃縮物(ディフコ ラボラトリーズ)、0.5%グリセロール、ペニシリン400単位/ml、シクロヘキシミド100μg/ml7H10アガー)を添加したミドルブルック7H10アガー(ディフコ ラボラトリーズ)上で培養することにより選択した。大腸菌株XL1-Blueは、プラスミドpBluescript SK(+) (pBS SK+)(ストラタジーン・クローニング・システム、カリフォルニア、米国)またはpGEX4T−3(ファルマシア・バイオテック、東京、日本)及びその誘導体の宿主として使用した。大腸菌株BL21(DE3)pLysEは、pET22b(+)(Novagen Madison米国)、λMSOElox(アマシャム)及びその誘導体の宿主として使用した。すべての大腸菌株は、LBブロスで増殖させた。
(2) BCGからのMDP1の精製
酸可溶性蛋白質を既述(Jhon et al., 1967)のいくつかの改変方法で沈殿させた。バクテリアは、50mlTMNSH(10mMトリス−HCl pH=7.5、10mMMgCl2、60mMNH4Cl、及び6mM2−メルカプトエタノール)に再懸濁し、超音波により破砕した。30000gで2時間遠心分離して得たペレットを、0.25N HClに4℃で終夜攪拌することにより再懸濁し、20000gで20分間遠心分離した。上澄に0.1倍量の100%(w/v)TCAを激しく攪拌しながら加えた。4℃で4時間静置して形成した沈殿を遠心分離により回収し、アセトン(20ml)に0.01mlの濃塩酸を加えた酸性アセトンで1回洗浄し、アセトンで2回洗浄し、真空デシケーターで乾燥した。乾燥された沈殿を0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に再懸濁した。次に、酸可溶性蛋白質を0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中のグラニジン塩酸塩GdnClの直線グラジエントによりファーストフローカラム(ベッドボリューム5ml;ファルマシア)Hitrap CM Sepharose上を用い室温でクロマトグラフィーにかけて分画した。グラジエントは、15mlの0及び5%GdnCl溶液を充填したグラジエント装置で行った。1ml/minの流速に維持し、1mlの各フラクションを集めた。精製されたMDP1を含むフラクションを5%GdnClを含む0.2Mリン酸緩衝液に対して透析し、濃縮した。最後に、Hiload Seperdex 200 pgカラム(ファルマシア)上でのゲル濾過によりさらに精製した。蛋白質の純度は220nmの吸光度の測定又はSDS−PAGEによる分析でモニターした。
(3) アミノ酸配列の決定
アミノ酸分析用の標品を、PVDF膜(ミリポア、マサチューセッツ、米国)からの蛋白質バンドを切り出すことにより得た。12.5%ポリアクリルアミドゲル中の蛋白質は、0.05%SDSを含む3−[シクロヘキシルアミノ]−1−プロパンスルホン酸(CAPS;シグマ、セントルイスミズーリ)−NaOH緩衝液(pH11)を用いてPVDF膜上で電気泳動的にブロットした。CBBによる染色後、蛋白質のスポットをアプライドバイオシステム477Aガスフェーズシークエンサー(アプライドバイオシステムズ)での自動エドマン分解によるアミノ末端配列の決定に供した。
(4) 遺伝子クローニング、DNA配列決定及びコンピューター分析
BCGのゲノムDNAをDNAの主要部分が1〜5kbpになるまで注射針を繰り返し通すことにより断片化し、アマーシャム(Amersham)のcDNAラピッド・アダプター・ライゲーション・モジュールを用いてEcoRIアダプターにライゲートし、λMOSEloxのEcoRI部位に挿入した。コロニー・ハイブリダイゼーションを既述のように(マツオら、1988)、N末端アミノ酸配列と相同な2セットの[α−32P]標識化オリゴヌクレオチドプローブを用いて行った。プローブ1、2の配列は、5’−ATGAACAAGGC(C又はG)GAGCT(C又はG)ATCGACGT(Met-1〜Val-9に相当)及び5’−GACGT(C又はG)(T又はC)T(C又はG)AC(C又はG)CAGAAG(T又はC)T(C又はG)GG(Asp-8〜Gly-15に相当)であった。MDP1遺伝子を含む挿入されたDNAフラグメントは、タック・ダイ・プライマー・サイクル・シークエンシング・キット及び373Aシステム(アプライド・バイオシステムズ)を用いて配列決定した。配列相同性のサーチは、ファスタプログラム(fasta program;ピアソン及びリップマン、1988)を用いたDDBJ(静岡)データベースを通して行った。
(5) 大腸菌におけるGSTとの融合蛋白質としてのMDP1の発現
プライマーは、MDP1遺伝子の増幅のために合成した。プライマーAのDNA配列は、5'GGggatccGGGAGGGTTGGGATGAACAAAGCAG(センス鎖)であり、プライマーBのDNA配列は5'GGGggatccAGCACGTGGGTGTTGTCGTTG(アンチセンス鎖)であった。小文字は、加えた制限酵素部位を示す。プライマーA及びBにより増幅された生成物は、HindIII及びBamHIで消化され、pGEX4T−3の同じ部位に挿入された。最終構築物はpGEXMDP1と名付けられた。大腸菌はこのプラスミドにより形質転換された。GST−MDP1の発現は、製造元(ファルマシア)の説明書に従い行った。
(6) ゲル遅延試験
100ngのpBSKS+、HindIIIで消化されたpBSKS+、または240ngのMS2ファージRNAを、5%グリセロールを含むPBS6μl中に種々の量のMDP1(最終濃度;20,10,5,2.5,1.25,0,μM)と混合した。サンプルを37℃で10分間プレインキュベートし、0.8%(w/v)アガロースゲル中、TAE緩衝液を用いた電気泳動により分析し、エチジウムブロミド(EtBr)で染色した。核酸を紫外線下に可視化した。
(7) 免疫電子顕微鏡試験
免疫電子顕微鏡試験を既知のようにして行った(Ferreira等、1992)。
(8) BCGフラクションの調製
ソートン培地中37℃で培養したBCGをTMNSH緩衝液中で超音波により破砕した。破砕物を1000gで4℃、5分間の遠心分離を2回行い、壊れていない細胞を除去した。次いで、細胞壁、細胞膜、リボソーム、細胞質画分既知の方法により調製した(大原ら、1997)。分泌タンパク質は既述のように調製した(松本ら、1996b)。
(9) BCGの50Sリボソームサブユニット由来のリボソーム及びMDP1の精製
BCG由来のリボソームの調製及びリボソームサブユニットの分離は、既に記載されている(山田ら、1972)。リボソーム蛋白質は、既知のように(ヒンデンナッハら、1971)、0.1MMgCl2の存在下に66%酢酸を用いて50Sサブユニットから抽出した。次いで、抽出物を5%酢酸に対して透析し、凍結乾燥した。抽出された蛋白質は、C4カラムを用い日立L−6000HPLCシステムを用いた逆相−HPLCにより分離した。2mgの50S総蛋白質を、0.1%TFA中の30〜70%のアセトニトリルの直線グラジエントを用い、90分間0.6ml/minの流速でクロマトグラフを行った。溶離液は、220nmの吸光度の測定又はSDS−PAGEによる分析でモニターした。
(10)免疫手法
MDP1に対する抗血清を、フロイント不完全アジュバント中の20μgの精製MDP1を雌性BALB/cマウスに2回腹腔内免役して得た。ウエスタンブロット分析を既知のように行った(松本ら、1996b)。
(11)MDP1によるインビトロでのDNA合成の阻害。
【0026】
インビトロでのDNA合成を既述のように(サムブルックら、1989)クレノウフラグメント(タカラ)を用いて行った。一本鎖DNAをf1ファージの感染によりpBSKS+を有する大腸菌XL1−Blueから調製した。反応前に、一本鎖DNA(1μg)及び5pmolのM13ファージの1244プライマー(日本ジーン)を85℃で10分間インキュベートし、22℃までゆっくり冷却してアニーリングした。DNA合成の延長反応は、50mMトリス(pH7.5)、50mMNaCl、10mMMgCl2、1244プライマーのアニールされたDNA鋳型0.6μg、0.9mMのdATP,dGTP及びdTTP、50μCiの[α−32P]dCTP、8ユニットのクレノウフラグメント、10mMのDTT中、MDP1又はBSAの存在下又は不存在下に行った。最終容量は30μlであった。延長反応は、8分間22℃で行った。反応は0.5MEDTA(pH8.0)を30μl加えて停止させた。次いで、サンプルを68℃でインキュベートし、クレノウフラグメントを不活性化した。各サンプル5μlをグラスファイバーフィルター(Toyo濾紙)上にスポットした。濾紙は20mMピロリン酸ナトリウムを含む5%TCAで3回洗浄した。濾紙を乾燥後、各サンプル中のTCA不溶性[α−32P]dCTPをシンチレーションカウンターにより測定した。
(12)インビトロ転写分析
既述方法(ペダーソンら、1994)を改変してインビトロ転写分析を行った。各種の量(20,10,5,2.5,1.25及び0μM)のPBS中の精製MDP1及びBSAを0.11pmol(200ng)のpBSKS+と反応容量を20μlに調整して混合した。37℃で10分間インキュベート後、等容量の以下の溶液を加えた:0.02%(w/v)DEPC;80mMTris−HCl(pH8.0);16mMのMgCl2;4mMのスペルミジン;10mMのDTT;1.8mMのATP,CTP,GTP及びUTP;1.84U/mlのRNase阻害剤;1.42U/mlのT7RNAポリメラーゼ(タカラ)及び0.36mCi/mlの[α−32P]UTP。インビトロ転写は、37℃で30分間行った。次いで、5μlのサンプルをグラスファイバーフィルター上にスポットした。濾紙は20mMピロリン酸ナトリウムを含む5%TCAで3回洗浄した。グラスファイバーフィルターを乾燥後、各サンプル中のTCA不溶性[α−32P]UTPをシンチレーションカウンティングにより測定した。
(13)インビトロ翻訳分析
インビトロ翻訳分析を、大腸菌S30共役転写及び翻訳システム(プロメガ)を用いて行った。各量(最終濃度;20,10,5,2.5,1.25及び0μM)のMDP1又は卵白リゾチーム、7μlのS30抽出物、50nCi[35S]−メチオニン、メチオニンを含まない10μlのプレミックス(プロメガ)、4μg(3.33pmol)のMS2RNA(ベーリンガーマンハイム、東京、日本)を混合した。最終反応容量は34μlであった。翻訳は37℃で1時間行った。放射標識メチオニンの取り込みを評価するために、製造元の説明書に従い、5μlのサンプルを取り、245μlの1MNaOHに溶解し、最終20%のTCAで沈殿させた。TCA処理されたサンプルは、グラスファイバーフィルター上にトラップ後、5%TCAで3回洗浄した。膜を乾燥し、放射能を測定した。
(14)MDP1のリン酸化の検出
1μgの精製MDP1をバクテリアのアルカリホスファターゼ(BAP)を用い、50mMトリス−HCl(pH9.0)及び1mMMgCl2を含む溶液中、65℃で1時間処理した。製造元の使用説明書に記載されたように、BAPで処理された或いは処理されていないMDP1の蛋白イムノブロットホスホスレオニン、ホスホセリン、ホスホチロシンに対する抗体(トランスダクション・ラボラトリーズ、ケンタッキー、米国)を用いてウェスタンブロット法を行った。
(15)速育性細菌におけるMDP1の発現
M.smegmatis中でのMDP1(BCG)の発現のために、センス鎖用のプライマーCを合成した。該オリゴヌクレオチド配列は、5'GGGaagcttTTTGAGGGTGCGTGCGCGTACであった。プライマーB及びCにより増幅したMDP1構造遺伝子及びその上流領域をコードする遺伝子をHindIII及びBaMHIの両方で消化し、pBSKS+の同じ部位(pBMDP1と名付けられた)に挿入された。pBMDP1はHindIII及びBamHIで消化され、MDP1遺伝子を含む1kbpのDNAフラグメントをpSO246(松本ら、1996a)の同じ部位に挿入した。それは、pSOMDP1と名付けられた。M.smegmatisを既述のように(松本ら、1996b)エレクトロポレーションによりpSOMDP1でトランスフォームした。大腸菌中で非融合形態のMDP1を発現するために、以下のプライマーを新たに合成した。センス鎖用のプライマーDは、CcatatgAACAAAGCAGAGCTCATTGACであり、プライマーEは、CaagcttCTATTTGCGACCCCGCCGAGCGGであった。MDP1の構造遺伝子を含む増幅されたDNAは、NdeIとHindIIIの両方で切断され、pET22b(+)の同じ部位に挿入された。このプラスミドはpET22MDP1と名付けられた。大腸菌株BL21(DE3)pLysEを、pET22MDP1でトランスフォームした。トランスフォームされた細胞は、50μg/mlのカルベニシリン、34μg/mlのクロラムフェニコールを含み、並びに、0.5mMのIPTGを含むか又は含まないLBアガー上で増殖させた。
結果
(1) DNA結合能を有する最も豊富な蛋白質の分析
BCG中のDNA結合蛋白を同定するために、細胞ライゼートをSDS−PAGEに供しPVDF膜上にブロットした。該膜は次いで[α−32P]標識pBluescript KS+(pBSKS+)と反応させ、蛋白−DNA相互作用をオートラジオグラフで視覚化した。図1Aに示されるように、強い反応が28kDaで観察された。この28kDaDNA結合蛋白を、MDP1と名付けた。
SDS−PAGE分析は、MDP1が最も豊富にある蛋白質であることを示した(図1Dのレーン1の矢印により示される)。本発明者は、上記のようにMDP1の精製を行った。最初に、MDP1の豊富なサンプルは、BCGライゼートを0.25N−HCl(図1Dのレーン2)で処理し、次いでイオン交換カラムで精製して調製された。図1Bは、クロマトグラフのプロフィールを示し、主要ピークフラクションの蛋白質は図1Dのレーン3に視覚化された。このフラクションの蛋白質は、ゲル濾過カラムを通してさらに精製され(図1C)高度に精製されたMDP1が得られた(レーン4、図1D)。最終工程において、MDP1は、195kDa蛋白として溶出された(図1D)。これは、MDP1が多量体を形成していることを示すものである。MDP1の最終収率は100gのBCGの新鮮湿重量から約5mgであった。
【0027】
精製されたMDP1のアミノ酸配列のN末端は、アミノ酸シークエンサーによりMNKAELIDVLYQKLG-Dと同定された。MDP1をコードする遺伝子をクローン化するために、コロニーハイブリダイゼーションをN末端アミノ酸配列(実施例参照)に相当する2つの[α−32P]標識されたセットのオリゴヌクレオチドプローブを用いて行った。2つのプローブでハイブリダイズされたDNAフラグメントを得、配列決定した。図2Aは、核酸配列及び推定アミノ酸配列を示す。DNAフラグメントは、265位にATGで始まり882位のTAG終止コドンで終わるオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。MDP1のN末端アミノ酸配列(図2Aにおいて枠で囲まれた部分)はこのORFと完全に一致することが見出された。予期されたように、MDP1は、極度に塩基性(等電点(PI)が12.4)であり、アラニン、アルギニン、リシン、プロリン及びスレオニンを多量に含む。可能性のあるシャイン−ダルガルノ(SD)配列は、開始コドン(図2Aの下線部)の上流7ヌクレオチドの位置に観察された。バクテリアにおいて、いくつかの染色体結合蛋白に観察されたDNA結合モチーフは、46位〜65位みられた(図2Aの太い下線)。この領域は、MDP1のDNA結合部位と予測される。
【0028】
MDP1に相同ないくつかの蛋白質及びアミノ酸配列のアラインメントを示すコンピューター検索が、図2Bに示される。2つのORFでコードされる高い相同が、M.tuberculosis及びM.leprae由来のゲノムのコスミドライブラリーのDNA配列において観察された。MDP1は、M.tuberculosisと95%の相同性を有し、M.lepraeと83%の相同性を有する。コンピューター分析は、MDP1のN末端領域がバクテリア由来のHUに対し部分的な相同性を有し、C末端領域は真核細胞のヒストンH1クラスと部分的な相同性を有することを示した。代表例として、MDP1と大腸菌のHU2及びヒトのヒストンH1の比較を図2Bに示す。最初の90アミノ酸の最良のアラインメントは、MDP1とHU2の間で41%(Kanoら、1987)、MDP1とヒトヒストンH1の間で25%(Albigら、1991)であった。
(2) MDP1による核酸コンフォーメーションの認識
MDP1のDNA結合能は、以下のように確認された。MDP1はSchistosoma japonicum グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)(GST−MDP1)との融合蛋白質として発現された。大腸菌発現GST−MDP1の全蛋白質は、膜に転写された。膜は[α−32P]標識pBSKS+と反応し、そのオートラジオグラフが図3Aに示される。付加的なバンドがレーン4とレーン5に観察され(図3A上の矢印で示される)、抗MDP1抗体(データは示さない)により認識された(データは示されていない)。これは、該遺伝子によりコードされる産物のDNA結合能を確認する。分解産物が観察され、この融合蛋白が大腸菌中で安定でないことを示す。MDP1の核酸結合活性をより詳細に分析するために、ゲル遅延アッセイを次に行った。各種濃度の精製MDP1を環状プラスミド、直鎖プラスミド、又はRNAとともにインキュベーション後、複合体をアガロースゲル電気泳動で分析した(図3B、3C及び3D)。ヌクレオチドがMDP1の濃度に依存してスロット中で遅延するので、該データは、MDP1がDNA及びRNAの両方に結合することを示した。MDP1のニックを有するDNA(図3B)、直鎖形態のDNA(図3C)及びRNA(図3D)に対する結合能は、ほぼ同一であった。一方、他のものよりもスーパーコイルDNAのゲルへの移動に対する優先的な阻害は、10〜5μMMDP1において観察された(図3B、3C)。これらは、MDP1が核酸のコンフォーメーションを認識することを示す。
(3) 細胞中のMDP1の局在化
MDP1の局在化を知るために、最初は、免疫電子顕微鏡試験をBCGを標的として行った。結果は、MDP1同族体が細胞壁、細胞膜、リボソーム領域、染色体DNA領域に局在化することを示した(図4A,パネルa)。第2に、BCG由来の各細胞下画分が調製された。これらのサンプルは、膜上に転写され、抗MDP1抗体と反応された(図4B、パネルb)。強い反応が細胞壁、細胞膜、リボソーム画分の28kDa蛋白で観察されたが、分泌蛋白及び細胞質蛋白では観察されなかった。同時に、蛋白質をSDS−PAGE後にゲル染色により視覚化され、推定MDP1バンドが図4Bのパネルaにおいて矢印で示される。これらの生化学的観察は、BCGに関する免疫電子顕微鏡試験の結果と一致する。興味あることに、抗MDP1抗体のいくつかは免疫電子顕微鏡分析において直接にリボソーム粒子と反応しているらしく、それらはリボソーム画分と強力に反応する(図4B、パネルb)。これらは、MDP1がリボソームに結合する可能性を示す。この点を明らかにするために、リボソーム粒子(30S及び50Sサブユニット)をシュクロース密度勾配遠心により分離した。30S又は50Sサブユニットに由来する蛋白質が、SDS−PAGE後、転移した膜上で抗MDP1抗体と反応された。該反応は、図4Bのパネルbに示されるように、30Sサブユニットではなく50Sサブユニットの28kDa及び27kDa蛋白質において観察された。この結果を確認するために、50Sサブユニットの蛋白質をRP−HPLC(図4C、パネルa)により分離された。各画分の蛋白は、CBBにより染色されたSDS−PAGEにより視覚化され(図4C、パネルb)、或いはこれらは、膜上にブロッティングした後、抗MDP1抗体と反応させた。結果は、28kDa及び27kDa蛋白質は各々約47%(図4Cのパネルaの画分27)および40%(画分18、19)アセトニトリルの濃度で溶出した。アミノ酸シークエンサーによるN末端アミノ酸の配列決定は、28kDaの蛋白質がMDP1であることを示す。この結果は、50SリボソームサブユニットはMDP1を含むことを示す。しかしながら、27kDaのN末端アミノ酸は配列決定されていない。従って、27kDaの蛋白質がN末端での修飾アミノ酸なのか、異なる遺伝子をコードする遺伝子の同族体なのかは明らかでない。
(4) MDP1のインビトロにおける複製、転写及び翻訳の阻害
インビトロにおけるマクロ分子合成をMDP1の分子プロセスを解明するために研究した。第1に、DNAポリメラーゼIの機能に関するMDP1の効果を、DNA合成の伸長を見るために調べた(図5A)DNA合成は、MDP1により用量依存的に抑制された。1.25μMのMDP1で97%までの阻害が観察された。
【0029】
第2に、本発明者は、T7RNAポリメラーゼの転写に対するMDP1の効果を評価した(図5B)。転写は、2.5μMのMDP1でほぼ完全に阻害された。
【0030】
第3に、翻訳に関するMDP1の効果をインビトロで調べた。インビトロでの翻訳分析は、大腸菌S30抽出物を用いて行った(図5C)。30分のインキュベーション後、蛋白合成をMS2ファージRNAの鋳型なしでさえ観察された。これは、大腸菌S30抽出物の内因性天然mRNAのためであるかもしれない。MDP1による蛋白合成の阻害は、MDP1の濃度に依存して観察された。10μMにおいて、MDP1は翻訳をほぼ完全に阻害した。
(5) MDP1によるバクテリアの増殖遅延
上記の結果から、MDP1はDNA、RNA及びリボソームに対する結合に依存してマクロ分子生合成の阻害により増殖遅延を起こかもしれない。本発明者は、この仮説を速やかに増殖するバクテリア中においてMDP1を発現させることにより調べた。MDP1の非キメラ形態を発現するために、pSOMDP1及びpETMDP1を構築した(実施例参照)。M.smegmatis及び大腸菌を、各プラスミドを用いてトランスフォームし、プレート上で集めた。図6に示すように、両方のバクテリアの増殖速度はMDP1の発現により劇的に減少し、MDP1はバクテリアの増殖速度を減少することを示す。
(6) MDP1蛋白のスレオニンリン酸化
リン酸化及び脱リン酸化は、真核細胞における細胞増殖を制御する主要なメカニズムの1つである。本発明者はMDP1がリン酸化蛋白かそうでないかを調べた。精製されたMDP1は、ホスホセリン、ホスホチロシン又はホスホスレオニンに対するモノクローナル抗体と反応させた。抗ホスホスレオニン抗体のみがMDP1と反応し、予期したようにこの反応は、反応前にバクテリアのアルカリホスファターゼ(BAP)でMDP1を処理することにより消失した(データは示さない)。これらは、MDP1がスレオニンリン酸化蛋白質であることを示す。
(7) 迅速及び遅延増殖マイコバクテリウム間の対数及び定常増殖期におけるMDP1の発現の比較
様々なマイコバクテリウム種のMDP1の発現をSDS−PAGE(図7A)及びウエスタンブロット分析(図7B)により調べた。抗体は、BCGの28kDaの蛋白質(図7Bのレーン1及び2)、M.tuberculosisの30kDaの蛋白質(レーン3及び4)、M.lepraeの26kDaの蛋白質(レーン5)、M.smegmatisの31kDaの蛋白質(レーン6および7)と強く反応したが、大腸菌の蛋白質とは全く反応しなかった。対数及び定常増殖期におけるBCG及びM.tuberculosis由来のライゼートの豊富な蛋白バンドは、抗MDP1血清反応バンドと同一である。M.lepraeは、バクテリア中で最も増殖が遅く、インビトロでの培養が未だ成功していない。ヌードマウスのフットパッドで増殖するM.lepraeは、図7に示すように多量のMDP1を発現する。一方、M.smegmatisにおいて、抗MDP1血清を認識する蛋白は定常期においてのみ高度に発現される。本発明者は、これらMDP1同族体がDNAに結合する能力を有することをサウスウエスタンブロット分析により確認した(データは示さない)。これらの結果は、MDP1が広範囲のマイコバクテリウムにおいて保存されているが、MDP1の発現量は遅い増殖菌と速い増殖菌で異なっている。遅い増殖菌は増殖期と無関係に多量のMDP1を発現するが、速い増殖菌は定常状態で主に発現され、対数増殖期では発現されない。
実施例1
6〜10週齢の4種のマウス(C3H/He、C57BL/6、A/J、BALB/c)にMDP1をフレウントのインコンプリートアジュバントとともに5μgずつ2回(2回目は3週後)免疫し(1回目は皮下、2回目は腹腔内)、4週後に採血して血清を100倍に希釈し(希釈液:1%BSA in PBS)、一次抗体としてウェスタンブロットに用いた。抗原は、BCGのライゼートを用いた。MDP1に対する抗体の産生が認められたマウスはBALB/cのみであった。
【0031】
次に、BCG菌を投与した3種のマウス(C3H/He、C57BL/6、A/J;1回目血中、2回目腹腔内;BCG106CFU)の血清を同様に反応させた結果、いずれのマウスにおいてもMDP1に対する抗体産生が確認された。また、抗体はBCG抗原のうちMDP1に最も強く反応した。
【0032】
この実験結果から、菌体で免疫すると、MDP1に対する抗体が強く誘導されることが明らかになった。
実施例2:患者血清との反応
ハンセン氏病患者3名、結核患者4名及び健常人血清を100倍に希釈した。精製したMDP1をメンブレンに転写し、希釈抗体と反応させた。その結果、すべての抗酸菌症患者の血清中に、MDP1を認識する抗体の存在が明らかになった。一方、健常人のサンプルには該抗体の存在は認められなかった。同じウェスタンブロットの系で、分泌蛋白質(85コンプレックスを含む)に対して反応させると、ハンセン氏病患者の血清には反応するが、結核患者の血清とは反応しなかった。この結果は、MDP1はAg85よりも抗酸菌症において抗原性が高いことを示している。
実験1
BCG東京株を、ソートン培地で培養後、0.45μm(Millipore)のフィルターに通し、菌体と分泌蛋白質を分離した。菌体はSDS−サンプルバッファーに溶解し、超音波で破砕し、100℃で5分間煮沸した。分泌蛋白質は、培養濾過物に終濃度80%になるように硫酸アンモニウムを加えてタンパク質を析出させ、それをPBS(pH7.2)に透析した。得られた分泌タンパク質にSDS−サンプルバッファーを加え、100℃で5分間煮沸した。それぞれのサンプルを遠心し、その上清(タンパク質量20μg)を、SDS−PAGE(21.5%)にて電気泳動した後、タンパク質を電気的にポリビニリデンジフルオライド膜(PVDF膜;Millipore)上に転写した。PVDF膜を3%BSAを含むPBS中で30分間浸し、ブロッキングを行った。抗体の調製は、BCG東京株107CFUをC3H/He静脈に投与し、1ヶ月後同量の菌体を腹腔内に投与し、その1ヶ月後に血清を採取し、PBS+1%BSAで100倍希釈した。調製した抗体を、BSAでブロッキングしたPVDF膜と4℃で終夜反応させ、0.05%のNonidet P40 を含むPBSで洗浄し、PBSで1000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識した抗マウス抗体と反応させ、上記洗浄液で洗浄後、25mgの3,3-ジアミノベンジジン・テトラヒドロクロライドを20mMTris(pH7.5)100ml中に溶解し、29μlのH22を加えた溶液にPVDF膜を浸し、抗体検出を行った。結果を図8に示す。図8に示されるように、菌体タンパク質ではMDP1に相当する分子量のタンパク質および45〜47kDaのタンパク質に対する抗体が検出された。一方、分泌タンパク質に対する抗体は、この条件では検出されなかったことから、MDP1は最も強い抗原性を有するといわれているAg85を上回る抗原性を有していると考えられた。
実験2
BCG東京株(107CFU)を、A/j、BALB/c、C3H/He、C57BL/6に腹腔内投与し、1ヶ月後血清を採取し、PBS+1%BSAで100倍希釈した。精製MDP1を1μg/レーンでSDS−PAGE後、PVDF膜上に転写し、希釈血清と上記と同様の方法で反応させ、MDP1に対する抗体の検出を行った。その結果、4種全てのマウスの血清中に抗MDP1抗体が産生されていることが分かった。
実験3
BCG菌(108CFU)を、マウス(C3H/He:slc)に尾静脈より投与し、MDP1(5μg)/RAS(リビアジュバントシステム)、DNA(M. tuberculosis DNA 0.5μg)/RAS、MDP1(5μg)+DNA(0.5μg)/RASをマウス(C3H/He:slc)に皮下投与し、3週間後に同用量を腹腔内投与した後、4週間後に血清を採取し、採取した血清をPBS+1%BSAで100倍希釈した。精製MDP1を1μg/レーンでSDS−PAGE後、PVDF膜上に転写し、希釈血清と反応させた。その結果(図9)、BCG及びMDP1+DNAで免疫したマウスにのみ抗体が産生されており、MDP1単独、DNA単独では抗体産生が認められず、MDP1はDNAと結合させることで免疫原性が増強され、抗体価が上がることが確認された。
実験4
MDP1、ヒストンH1、H2、H3(ベーリンガーマンハイム、牛由来)をそれぞれ5μgずつ、単独または結核菌由来DNA(0.5μg)と混合して、リビアジュバント(RIBI immunochen Research, Inc. Hamilton, MT)を用い、C3H/Heマウス(初回免疫時、7週齢)に免疫した。サンプルは、PBSで希釈し、1匹のマウスに100μlとなるように調整した。免疫方法は、初回免疫を皮下投与で、3週間後の追加免疫を腹腔内投与により行った。追加免疫の1週間後のマウスより採血を行い、遠心分離により血清成分を得た。それぞれに抗原に対する抗体の検出は、ELISA法により行った。即ち、ELISA用96穴プレートH(住友ベークライト株式会社)に、それぞれの抗原を2μg/mlになるように0.05M炭酸バッファー(pH9.6)で溶解し、100μlずつ各ウェルに分注し、室温で2時間放置し、抗原を個層化した。ブロッキングは、BBS(pH8.0;ホウ酸10.33g/L、NaCl7.83g/L)でウェルを1回洗浄後、3%BSAを含むBBSを300μlずつウェルに分注し、室温で2時間放置し、BBSで1回洗浄することで行った。それぞれの血清サンプルは、50〜102400倍まで、1%BSAを含むBBS溶液で希釈し、それぞれのウェルに100μlずつ加え、30分間37℃で反応させた。反応プレートをHBBS(pH8.0;ホウ酸10.33g/L、NaCl29.22g/L)を調製し、各ウェルを300μlずつ7回洗浄した。その後、ペルオキシダーゼ抗マウス抗体を、1%BSAを含むBBS溶液で2000倍に希釈し、100μlずつ各ウェルに分注し、30分間37℃で培養した。その後、上記洗浄液で同様の洗浄を行い、オルト−フェニレンジアミン二塩酸塩を0.4mg/mlとなるように、80mMクエン酸−リン酸緩衝液に加え、その溶液10mlにつきH22を4μl加えた検出液を用い、発色を行った。3−5分間反応後、1Nの硫酸を等量加えて反応を停止し、492nmの吸光度で測定した。その結果、図10〜13に示されるように、MDP1とDNAを混合して免疫し、得られたサンプルのみ吸光度の上昇が観察され、同じDNA結合タンパク質であるヒストンH1、H2、H3のいずれの場合にも吸光度の上昇は観察されなかった。このことから抗原性に関してはMDP1特異的であることが明らかになった。
実験5
精製したMDP1を1μg/レーンでSDS−PAGE後、PVDF膜上に転写し、らい患者(L1、L2、L3)、結核患者(T1、T2、T3、T4)の血清希釈液と上記と同様にして反応させ、MDP1に対する抗体の検出を行った。その結果(図14)、試験した全ての患者血清中にMDP1に対する抗体が検出された。この結果から、MDP1は結核、らい患者等の診断薬としての応用が考えられる。
MDP1の診断薬への応用
MDP1は抗酸菌に特異的なタンパク質であり、強い抗原性を有していることが上記実験より確認できた。特に実験1の結果より現在抗原性が最も強く、診断薬として検討されている抗酸菌特異的な抗原Ag85complexよりも強い抗原性を有することが明らかになった。従って、MDP1に対する抗体を同定することで、結核による感染の有無を診断できる(実験5)。また、抗酸菌の種が異なればMDP1の配列も異なることから、種特異的な抗原またはペプチドを用いることで感染菌の同定の可能性もある。従って、結核菌を含む各種抗酸菌のMDP1およびそのMDP1中に含まれるペプチドは、診断薬の抗原として利用できる。
【0033】
【配列表】
Figure 0004415200
Figure 0004415200
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Figure 0004415200
Figure 0004415200

【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは蛋白−DNA相互作用をオートラジオグラフを示す。図1Bは、クロマトグラフのプロフィールを示す。図1Cはゲル濾過カラムの結果を示す。図1DはSDS−PAGE分析の結果を示す。
【図2】図2Aは、核酸配列及び推定アミノ酸配列を示す。図2Bは、MDP1に相同ないくつかの蛋白質及びアミノ酸配列のアラインメントを示すコンピューター検索結果を示す。
【図3】図3Aは、オートラジオグラフ結果を示す。図3B、図3C及び図3Dは、アガロースゲル電気泳動の分析結果を示す。
【図4】図4Aは免疫電子顕微鏡試験結果を示す。図4Bはサンプルと抗MDP1抗体との反応結果を示す。図4CはRP−HPLCの結果(パネルa)、SDS−PAGEによる視覚化(パネルb)を示す。
【図5】図5Aは、DNAポリメラーゼIの機能に関するMDP1の効果を示す。図5Bは、T7RNAポリメラーゼの転写に対するMDP1の効果を示す。図5Cは、翻訳に関するMDP1の効果を示す。
【図6】M.smegmatis及び大腸菌を、各プラスミドを用いてトランスフォームし、プレート上で集めた結果を示す。
【図7】図7AはSDS−PAGE結果を示す。図7Bはウエスタンブロット分析結果を示す。
【図8】抗体検出結果を示す。
【図9】精製MDP1と希釈血清の反応結果を示す。
【図10】抗MDP1血清を用いた結果を示す。
【図11】抗ヒストンH1血清を用いた結果を示す。
【図12】抗ヒストンH2血清を用いた結果を示す。
【図13】抗ヒストンH3血清を用いた結果を示す。
【図14】MDP1に対する抗体の検出結果を示す。

Claims (11)

  1. 下記の(a)または(b)のポリペプチド:
    (a)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b)上記(a)のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、付加又は欠失してなるアミノ酸配列からなり、且つ、DNA結合能及び増殖遅延能を有するポリペプチド。
  2. リン酸化された請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 請求項1に記載のポリペプチドをコードしているDNA。
  4. 下記の(c)または(d)のDNA:
    (c)配列番号2に示す核酸配列からなるDNA
    (b)上記(c)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、DNA結合能及び増殖遅延能を有するポリペプチドをコードするDNA。
  5. 請求項3又は4に記載するDNAを含むベクター。
  6. 請求項5に記載するベクターを含む形質転換体。
  7. 請求項6に記載の形質転換体を培養することを特徴とする請求項1に記載のポリペプチドの製造法。
  8. 請求項1又は2に記載するポリペプチドに結合する抗体。
  9. 請求項1又は2に記載するポリペプチド、または、当該ポリペプチド中に含まれる数十個のアミノ酸からなるペプチドであって請求項8に記載する抗体と抗原抗体複合体を形成するペプチドを含む、抗酸菌症の診断剤。
  10. 抗酸菌症が結核およびハンセン氏病からなる群から選ばれる請求項9に記載する診断剤。
  11. 生物試料に含まれる請求項8に記載する抗体を、ウエスタンブロット分析またはELISA法によって検出するための、請求項9または10に記載する診断剤。
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