JP4415135B2 - 熱線遮断ガラスの着色方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱線遮断ガラスにレーザ光を照射することで着色し、描画する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
板ガラス表面に、酸化錫膜または酸化亜鉛膜などの金属酸化物膜と銀膜(Ag膜)とを積層させてなる赤外線を反射させる作用のある熱線遮断膜(Low−E膜)が被覆された熱線遮断ガラスは、Low−Eガラスと通称されている。
【0003】
以後、酸化錫膜または酸化亜鉛膜などの金属酸化物薄膜と、Ag膜とを積層させてなる熱線遮断膜をLow−E膜と称し、Low−E膜を被覆させてなる熱線遮断ガラスをLow−Eガラスと称する。
【0004】
通常、Low−E膜は、Ag膜の酸化およびマイグレーションなどによる劣化を防ぐため、Ag膜を、酸化亜鉛または酸化錫などの金属酸化物薄膜で挟み込んだ3層以上の構成となっており、板ガラスを基体としスパッタリング法またはCVD法によって作成される。Low−E膜のAg膜層は膜厚10〜20nm程度であり、極めて薄いので透明があり、酸化亜鉛、酸化錫などの酸化金属は、100nm程度の薄膜であれば、透明ある。よって、Low−E膜は、可視光線を透過するので、クリアガラスにLow−E膜を被覆したLow−Eガラスは目視では無色透明である。
【0005】
一方、板ガラスなどの透明な対象物にレーザ光を照射してレーザマーキングする方法について、特開平3−124486号公報、特開平4−71792号公報および特開平11−156568号公報にて開示されている。
【0006】
特開平3−124486号公報にて、対象物の内部にレーザ光を集束させて表面に損傷を与えることなく内部にマークするレーザマーキング方法が開示されている。しかしながら、係る公報に記載のレーザマーキング方法においては、対象物がガラスの場合、レーザ光を内部に集光させるとクラックが発生し表面まで到達することがあり、対象物が脆くなるという問題があった。
【0007】
また、特開平4−71792号公報にて、透明基板内部に焦点を結ぶようにレーザ光を照射して透明基板内部を選択的に不透明化することによりマーキングする方法が開示されている。しかしながら、かかる公報に記載のマーキング方法においては、レーザ照射によってガラス内部にマーキングすることが可能であるが、レーザ光の集光位置を材料の深さ方向に厳密に制御できないため、薄い透明材料のマーキングに適さないという問題があった。
【0008】
また、特開平11−156568号公報にて、マーキング対象物を透過する波長域のレーザ光を、fθレンズを用いて対象物の内部に集光させてマーキングする方法が開示されている。しかしながら、係る公報に記載のマーキング方法においては、マーキングがレーザ光を照射したことによる内部のクラックによるので、マーキング対象は透明材料に制限されるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特開平2−242220号公報、特開平3−124486号公報、特開平4−71792号公報、または特開平11−156568号公報に記載の方法は、ガラスなどの透明材料に文字、図柄などをレーザマーキングする方法であるが、レーザ光を透明材料内部で集光させて、ガラス内部に発生したクラックによる不透明化によってマーキングする方法なので、ミクロン(μm)単位の極微細な書き込みが難しく、また、有彩色の着色ができないという問題があった。
【0010】
本発明の課題は、熱性遮断ガラスをレーザ光により着色させることで、微細な描画が行える熱線遮断ガラスの着色方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガラス基体に被覆された熱線遮断膜、いわゆるLow−E膜にレーザ光を照射させる際にレーザー光の照射位置を移動させる、すなわち、レーザ光を走査することで、Low−E膜を凝集させて微粒子とすることで可視光が散乱してLow−Eガラスを着色できる、または該微粒子によって形成された回折格子によって、可視光を回折させてLow−E膜付きガラスを着色できることがわかった。Low−E膜にレーザ光を照射すると、例えば、酸化金属薄膜である酸化亜鉛薄膜およびAg膜が溶融する。レーザ光走査後に、レーザ光走査部である描画ラインをレーザ顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛および銀が凝集した不定形の微粒子が描画ライン上に生成していた。酸化亜鉛および銀が凝集した不定形の微粒子は、凝集した銀により可視光を散乱していると推察される。
【0012】
本発明に使用するレーザ照射装置により、Low−E膜面でレーザ光のビーム径を60μmに絞り込みレーザ光を走査させたところ、幅30μmの筋状の照射部、すなわち、膜厚、100nmのLow−E膜が溶融した一本の描画ライン中に微粒子が生成した。また、レーザ光を走査することで、描画ラインの中に該微粒子が規則性を持って配列し回折格子が形成されて、着色することがわかった。
【0013】
本発明は、Low−EガラスのLow−E膜に、レーザ光を走査させて、Low−E膜を一旦溶融した後に、走査ライン上に凝集して生成した微粒子、または該微粒子で形成された回折格子が、可視光を散乱または回折することによって、文字および図柄を描画するLow−Eガラスの着色方法である。
【0014】
本発明は、板ガラス表面にAg膜と金属酸化物膜を積層させた薄膜を被覆させてなる熱線遮断ガラスに、レーザ光照射装置により、レーザ光を照射して、熱線遮断膜を溶融させた後、銀および金属酸化物が凝集して生成した微粒子によって、可視光線の散乱現象を現出させて着色させることを特徴とする熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0015】
更に、本発明は、板ガラス表面にAg膜と金属酸化物膜を積層させた薄膜を被覆させてなる熱線遮断ガラスに、レーザ光照射装置により、レーザ光を走査しつつ照射して、熱線遮断膜を溶融させた後、銀および金属酸化物が凝集して生成した微粒子によって回折格子を形成し、可視光線の回折現象を現出させて着色させることを特徴とする熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0016】
更に、本発明は、前記レーザ光照射装置がレーザ発振器、光変調器、ガルバノメータミラーおよびfθレンズからなるレーザ光照射装置であることを特徴とする上記の熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0017】
更に、本発明は、前記レーザ光照射装置がレーザ発振器、光変調器、リニアトランスレータに搭載された集光レンズ、対物レンズ、およびガルバノメータミラーからなるレーザ照射装置であることを特徴とする上記の熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0018】
更に、本発明は、レーザ発振器が連続レーザ発振器またはパルスレーザ発振器であり、用いるレーザ光の種類が赤外光、近赤外光または紫外光であることを特徴とする上記の熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0019】
更に、本発明は、光変調器が音響光学変調器または電気光学変調器であることを特徴とする上記の熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0020】
更に、本発明は、複数のガルバノメータミラーによって、熱線遮断ガラスへのレーザ光の照射位置を移動させることを特徴とする上記の熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0021】
更に、本発明は、水平方向または垂直方向に移動可能なステージによって、熱線遮断ガラスを移動させることを特徴とする上記のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法である。
【0022】
更に、本発明は、上記の熱線遮断ガラスの着色方法によって、文字、図柄が描画されていることを特徴とする熱線遮断ガラスである。
【0023】
更に、本発明は、上記の熱線遮断ガラスの着色方法によって、全体または一部が着色されている熱線遮断ガラスである。
【0024】
更に、本発明は、上記の熱線遮断ガラスの描画または着色された部位を、ガラスの軟化点以上に加熱することによって消色する方法である。
【0025】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法に使用するレーザ照射装置の構成物であるレーザ発振器には、連続的にレーザ光を発光する連続レーザ発振器、パルス状にレーザ光を発光するパルスレーザ発振器のどちらを用いても構わない。
【0026】
また、用いるレーザ光の種類は、赤外光、近赤外光、可視光または紫外光が挙げられ、波長100nm以上、1mm(106nm)以下の光を使用することができ、例えば、アルゴンイオンレーザ発振器またはUVパルスレーザ発振器を使用することができる。
【0027】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法に使用するレーザ照射装置の構成物である光変調器は、スイッチング素子としての役割を果たす。すなわち、レーザ光の進行方向を変えるか、遮断と透過を切り替えることで、加工物に対してレーザ光の照射のON/OFFを正確に制御するものである。ON/OFFを行うことで、文字、作画が非連続となり様々な描画に対応できる。光変調器には、音響光学変調器(以後、AOMと略する)または電気光学変調器(以後、EOMと略する)のいずれを用いても構わない。
【0028】
AOMは、レーザ光の光路を変える素子である。ONの状態では、無線周波数のRF信号が発信され、圧電素子、すなわち、トランスデューサに入力され、超音波に変換されて石英ガラス中に粗密波を発生させる。該粗密波によって、石英ガラス中に形成された回折格子は、レーザ光を回折させてその光路を変える。一方、OFFの状態では、RF波は発信されないので、粗密波による回折格子が形成されず、レーザ光は石英ガラス内を直進する。
【0029】
EOMは、電気光学素子に電圧を掛け偏光方向を変えることによって、レーザ光を通過または遮断させるスイッチング素子である。
【0030】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法に使用するレーザ照射装置の構成物であるガルバノメータミラーは、複数のミラー、通常、Xミラー、Yミラーからなり、ミラーの傾きを変えることによってレーザ光の光軸を振ることが可能である。Xミラー、Yミラーは、角度を制御しつつ向きを変え、レーザ光の光軸を振って対象物であるLow−EガラスのLow−E膜上にレーザ光を走査する。走査ライン上では、Low−E膜が溶融した後、銀および金属酸化物が凝集して生成した微粒子、または該微粒子によ微細な回折格子を形成することができる。該微粒子または回折格子は、Low−Eガラスへの入射光を散乱または回折させて、熱線遮断ガラスを着色させる。
【0031】
本発明に使用するレーザ照射装置は、レーザ光を絞り込み、ガルバノメータミラーによりレーザ光の光軸を振りつつ、Low−Eガラス上に走査して、Low−E膜における1mm間隔の間に数10本以上の線を書き込むことのできる分解能を有し、かつレーザ光を1mm/s以上の高速で走査することができるため、回折格子を書き込むことに好適である。
【0032】
本発明のLow−Eガラスの着色方法によれば、Low−E板ガラスに文字または図柄などが描画できる。例えば、熱線遮断ガラスに、虹色で製造番号、製造日、メーカー名などの文字情報を容易に書き込むことができる。
【0033】
また、レーザ光の照射を用いる本発明の熱線遮断ガラスの着色方法は、エネルギーロスが少なく実生産においてタクトタイムが短く経済生産に優れる。
【0034】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法に使用するレーザ照射装置の構成物として、fθレンズ、または、リニアトランスレータに搭載された集光レンズ(以後、Zレンズと略する)と対物レンズは、ガルバノメータミラーによって円弧状に走査されたレーザ光の焦点位置を補正する役割を果たす。
【0035】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法に使用するレーザ照射装置の構成物である水平方向または垂直方向に移動可能なステージ、例えば、照射面に対し水平方向に移動可能なX−Y軸ステージと垂直方向に移動可能なZ軸ステージは、高速でレーザ光を走査する際に熱線遮断ガラスを移動させることにより熱線遮断ガラスの着色を効率よく行うことができる。また、移動可能なステージに取り付けられた熱線遮断ガラスを一定間隔で移動させた後、静止させて、前述のガルバノメータミラーによりレーザ光を走査して描画を行うことで、回折格子をなど間隔で複数描画することができる。
【0036】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法により、Low−Eガラスの全面あるいは部分を着色したLow−Eガラスは、本発明に用いたレーザ装置を複数用いることによって得ることが可能である。なお、Low−E膜にレーザ光を走査してLow−E膜を溶融させて凝集させ、微粒子を生成したとしても、微粒子はレーザ光照射部に散在しており、微粒子内において銀が凝集しているので、Low−E膜の熱線反射機能は低下する懸念はあるが、失われることはない。
【0037】
この様にして得られた着色されたLow−Eガラスは、軟化点以上に加熱し溶融すると着色部において、凝集している銀が、ガラスの内部に拡散し、無色透明に戻るので、リサイクルが容易である。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1は、レーザ光の焦点位置の制御にfθレンズを用いた本発明に使用するレーザ照射装置の一例の説明図である。fθレンズ5は、ガルバノメータミラーによって走査されるレーザ光をターゲット6に集光する。
【0039】
連続レーザ発振器1であるアルゴンイオンレーザ発振器1により発光したレーザ光は、スイッチング素子であるAOM2を通過した後、ガルバノメータミラーであるXミラー3およびYミラー4により反射し、fθレンズ5を透過した後、ターゲット6であるLow−Eガラス6に照射する。Xミラー3、Yミラー4を制御しつつ動かして光軸を往復運動させることで、Low−Eガラス6のLow−E膜を溶解した後に凝集して生成した微粒子、または該微粒子によって回折格子が形成される。該微粒子または回折格子は入射光を散乱または回折させて熱線遮断ガラスを着色する。
【0040】
該Low−Eガラス6を着色する際に、照射面に対し水平方向に移動可能なX−Y軸ステージと垂直方向に移動可能なZ軸ステージからなるXYZ−ステージ7に熱線遮断膜付きガラス基板を搭載し、ステージ7を移動させることで、着色する部位を移動させる。
【0041】
コンピュータ10に入力されたデジタルコマンドデータは、デジタル・アナログ・コンバータ11(以後、DACと略する)によってアナログ信号に変換される。AOMドライバ8は、コンピュータ10から送信されDAC11によってアナログ信号に変換されたレーザ変調信号を無線周波数の信号、すなわち、RF信号に変換し、図示しない圧電素子、すなわち、トランスデューサを介して、AOM2の中に超音波を発生させる。AOM2に入射したレーザ光は、超音波が形成する回折格子によって回折され、その光路が変化する。その結果、レーザ光はON/OFFする。一方、コンピュータ10にデジタルコマンドデータとして入力され、DAC11によってアナログ信号に変換されたコントロール信号は、サーボドライバ9に受信されて、サ−ボドライバ9が、ガルバノメータミラーであるXミラー3およびYミラー4の動作を制御し、Low−Eガラス6のLow−E膜上でレーザ光を走査してLow−E膜を溶解させた後、凝集して生成した微粒子、または該微粒子で形成された回折格子を生成する。なお、レーザ光で熱線遮断ガラス6に書き込むパターンは、前記デジタルコマンドデータを変更することで、容易に変えられる。
【0042】
図2は、レーザ光の焦点位置の制御にZレンズおよび対物レンズを用いた本発明で使用するレーザ照射装置の一例の説明図である。Zレンズ12および対物レンズ13のうち、リニアトランスレータに搭載されたZレンズ12をリニアトランスレータにより光軸上を動かすことによって、熱線遮断ガラス6の照射面におけるレーザビーム径を制御する。
【0043】
パルスレーザ発振器1であるUVパルスレーザ発振器1には、通常、AOMまたはEOMからなる光変調器が通称Qスイッチとして既に組み込まれている。UVパルスレーザ発振器1より発光されたレーザ光は、Zレンズ12、次いで対物レンズ13を通過した後、ガルバノメータミラーであるXミラー3およびYミラー4により反射し、その後、ターゲット6であるLow−Eガラス6に照射する。XミラーとYミラーは、制御しつつ動かして光軸を往復運動させることで、Low−Eガラス6のLow−E膜に微粒子、または該微粒子で形成された回折格子を形成する。該微粒子または回折格子は、入射光を散乱または回折させて熱線遮断ガラスを着色する。
【0044】
該熱線遮断ガラス6を着色する際に、照射面に対し水平方向に移動可能なX−Y軸ステージと垂直方向に移動可能なZ軸ステージからなるXYZ−ステージ7に熱線遮断膜付きガラス基板を搭載し、ステージ7を移動させることで、着色する部位を移動させる。
【0045】
コンピュータ10にデジタルコマンドデータとして入力され、DAC11によってアナログ信号に変換されたコントロール信号は、サーボドライバ9に受信されて、サ−ボドライバ9が、Zレンズ12、ガルバノメータミラーであるXミラー3およびYミラー4の動作を制御しつつ駆動させ、Low−Eガラス6のLow−E膜上でレーザ光の照射位置を往復運動させつつ走査させて回折格子を形成する。なお、熱線遮断ガラス6へのレーザ光による書き込み内容は、前記デジタルコマンドデータを変更することで、容易に変えられる。
【0046】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法は、従来の板ガラスのマーキング方法であるレーザの光の集光部にクラックを生じさせることに比べ、熱線遮断ガラスにダメージを与えることなく耐久性に優れる。
【0047】
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって、限定されるものではない。
【0048】
また、レーザ光を薄膜付きガラス上に光軸を往復運動させて走査して周期構造、すなわち、回折格子を描画する本発明の方法は、Low−E膜に限らず、レーザ光を照射することで微細構造が形成できる膜付きガラスであれば、回折格子により可視光を散乱または回折させて、板ガラスを着色させることができる。
【0049】
また本発明に用いるLow−Eガラスは、Ag膜および金属酸化物薄膜からなるLow−E膜が被覆されたガラスであり、膜の耐久性および熱線反射性能向上のために膜構成に窒化金属薄膜などを加えても構わない。
【0050】
【実施例】
図1に示すように、連続レーザ発振器であるアルゴンイオンレーザ発振器1およびAOM2、ガルバノメータミラーであるXミラー3、Yミラー4、fθレンズ5、および照射面に対し水平方向に移動可能なX−Y軸ステージと垂直方向に移動可能なZ軸ステージからなるXYZ−ステージ7に付設されたホルダからなり、ホルダにターゲット6であるLow−Eガラス6が取り付けられる。
【0051】
図3は、実施例で使用したレーザ照射装置の説明図である。
【0052】
アルゴンイオンレーザ発振器1より発振されたレーザ光、すなわち、レーザビーム14は、AOM2を通過した後、Xミラー3とYミラー4とで反射し、次いでfθレンズ5を通過し、ホルダに取り付けられたターゲット6であるLow−Eガラス6の熱線遮断膜面に照射した。
【0053】
該Low−Eガラス6は、板厚5mm、サイズ、100mm×100mmの、ソーダライムシリケートガラス基板にスパッタリング法によってlow−E膜を被覆し、該膜構成が、酸化亜鉛40nm/銀20nm/酸化亜鉛40nmの、計100nmの膜厚の三層構造からなるLow−Eガラスを用意した。
【0054】
レーザ光は、出力2.2Wとし、Low−E膜上にレーザビーム14を集光させた。AOM2によるレーザ光のON/OFFと、Xミラー3およびYミラー4の角度制御によって、レーザビーム14の光軸を振り、100mm/secの走査速度で、Low−E膜上に走査した。このようにして、10mm×80mmの範囲に10本/mmの回折格子を描画した。次いで、XYZ−ステージ7を操作してなど間隔に水平移動させ、その後、静止させることで、10mm×80mmの回折格子を等間隔で複数、描画することができた。レーザビーム14を照射した部位は、反射色が見る角度のよって赤から紫に着色された。
【0055】
図4は、Low−E膜にレーザ光を走査した描画ライン先端部のレーザ顕微鏡写真である。
【0056】
更に、図5は、Low−E膜にレーザ光を走査した描画ライン中央部のレーザ顕微鏡写真である。
【0057】
Low−E膜にレーザ光を照射した際の描画ライン15をレーザ顕微鏡にて観察したところ、図4および図5に示すように、幅30μmの1本の描画ラインの中に、Low−E膜が溶融した後に凝集したことによる、平均のサイズが600nm程度の微粒子16が生成し、また描画ラインの周縁部にはサイズ3000nm×1000nm程度の微粒子16’が規則性をもって配列した微細な周期構造が観察できた。微粒子部は、明るく観察され、銀が多く含まれ可視光を散乱している。
【0058】
【発明の効果】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法によって、板ガラス表面にAg膜と金属酸化物膜を積層させた薄膜を被覆させてなる熱線遮断ガラス、すなわち、Low−EガラスのLow−E膜の表面にレーザ光のビーム径を絞り、光軸を往復運動させつつレーザ光を走査して、Low−E膜が溶融した後、凝集析出した微粒子、または該微粒子からなる回折格子を形成し、可視光を散乱または回折させた際の干渉によって、レーザ光走査部を着色させて、Low−Eガラスに文字および図柄を描画することができる。
【0059】
本発明の用いるレーザ照射装置によって、文字および図柄などが、精緻に描画できる。また、ステージを等間隔に移動させることにより、文字、図柄などを等間隔に複数描画することができる。有彩色で着色された着色部は装飾性が高い。
【0060】
本発明の熱線遮断ガラスの着色方法によって着色された熱線遮断ガラス(Low−Eガラス)は、軟化点以上に加熱し溶融すると着色部の銀がガラス内部に拡散することで無色透明に戻るので、リサイクルが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】レーザ光の焦点位置の制御にfθレンズを用いた本発明で使用するレーザ照射装置の一例の説明図である。
【図2】レーザビーム光の焦点位置の制御にZレンズおよび対物レンズを用いた本発明で使用するレーザ照射装置の一例の説明図である。
【図3】実施例で使用したレーザ照射装置の説明図である。
【図4】Low−E膜にレーザ光を走査した描画ライン先端部のレーザ顕微鏡写真である。
【図5】Low−E膜にレーザ光を走査した描画ライン中央部のレーザ顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1.レーザ発振器
2.音響光学変調器(AOM)
3.Xミラー
4.Yミラー
5.fθレンズ
6.ターゲット(Low−Eガラス)
7.XYZ−ステージ
Claims (11)
- 板ガラス表面にAg膜と金属酸化物膜を積層させた薄膜を被覆させてなる熱線遮断ガラスに、レーザ光照射装置により、レーザ光を照射して、熱線遮断膜を溶融させた後、銀および金属酸化物が凝集して生成した微粒子によって、可視光線の散乱現象を現出させて着色させることを特徴とする熱線遮断ガラスの着色方法。
- 板ガラス表面にAg膜と金属酸化物膜を積層させた薄膜を被覆させてなる熱線遮断ガラスに、レーザ光照射装置により、レーザ光を走査しつつ照射して、熱線遮断膜を溶融させた後、銀および金属酸化物が凝集して生成した微粒子によって回折格子を形成し、可視光線の回折現象を現出させて着色させることを特徴とする熱線遮断ガラスの着色方法。
- 前記レーザ光照射装置がレーザ発振器、光変調器、ガルバノメータミラーおよびfθレンズからなるレーザ光照射装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱線遮断ガラスの着色方法。
- 前記レーザ光照射装置がレーザ発振器、光変調器、リニアトランスレータに搭載された集光レンズ、対物レンズ、およびガルバノメータミラーからなるレーザ照射装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱線遮断ガラスの着色方法。
- レーザ発振器が連続レーザ発振器またはパルスレーザ発振器であり、用いるレーザ光の種類が赤外光、近赤外光または紫外光であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法。
- 光変調器が音響光学変調器または電気光学変調器であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法。
- 複数のガルバノメータミラーによって、熱線遮断ガラスへのレーザ光の照射位置を移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法。
- 水平方向または垂直方向に移動可能なステージによって、熱線遮断ガラスを移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法によって、文字、図柄が描画されていることを特徴とする熱線遮断ガラス。
- 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の熱線遮断ガラスの着色方法によって、全体または一部が着色されている熱線遮断ガラス。
- 請求項9または請求項10に記載の熱線遮断ガラスの描画または着色された部位を、ガラスの軟化点以上に加熱することによって消色する方法。
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