JP4414714B2 - 脱酸素剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水中の溶存酸素を効率良く除去することができ、特にボイラ給水中の溶存酸素を除去することにより、ボイラシステム(給水配管系、ボイラ本体、蒸気ドレン水系を含む)の腐食防止に有効な脱酸素剤及び脱酸素方法に関する。
ボイラ給水に含まれている溶存酸素は、ボイラ本体、ボイラ本体の前段に配置される給水配管系、熱交換器やエコノマイザ、ボイラ本体の後段に配置される蒸気・復水系配管などボイラシステム全体の腐食の原因となる。したがって、これらのボイラシステムの腐食を防止する為には、ボイラ給水を脱酸素処理して、ボイラ給水中の溶存酸素を除去する必要がある。
このような機能を有する脱酸素剤としては、従来、ヒドラジン、亜硫酸塩、エリソルビン酸、ヒドロキシルアミン類が使用されてきた。
しかしながら、ヒドラジンは発がん性等、安全性への疑いがある。エリソルビン酸は、反応当量が酸素1gに対してナトリウム塩で14gと多く、高価であるため汎用品としての使用は難しく、また反応速度が遅いためボイラ給水配管では充分に脱酸素反応が進まず、給水配管、エコノマイザ等の腐食防止には充分な効果が得られなかった。
ヒドロキシルアミン類は、ボイラ内で分解してアンモニア等が発生するという問題がある。一方、亜流酸塩は安価であり管理も容易であるため、広く使用されているが、亜硫酸塩と酸素の反応生成物として硫酸イオンが生成するので、残留亜硫酸濃度が不足した場合、ボイラシステムの腐食やスケールの付着が起こりやすくなるという欠点がある。
また、ボイラ給水のpHはボイラ本体での蒸気発生による濃縮の際にpHが11付近になることを前提に規定されるため、必然的に低く設定されるが、脱酸素剤として没食子酸(米国特許第4968438号(特許文献1)参照)を用いた場合にはpH11以上では相応の脱酸素性能を示すものの、通常のボイラ給水ラインでの一般的なpHであるpH9.5以下では反応速度が遅く、充分な脱酸素性能が得られない。さらに、必要添加量が多いなどの問題があり、実使用上は充分とは言えなかった。
さらに、単独ではそれぞれ脱酸素剤として知られたタンニン酸と亜硫酸とを併用した高温水腐食抑制剤が特開平4−26782号公報(特許文献2)で提案されているが、このような高温水系腐食抑制剤は酸素との反応速度が遅く、給水ラインで充分な脱酸素性能が得られないため、給水配管系やエコノマイザに対する防食効果は期待できない。
また、特開平3−277790号公報(特許文献3)には、本発明者等による、没食子酸、オキシカルボン酸などをスズのイオンあるいはスズの錯イオンを生成する化合物と併用してボイラの防食を行う技術が記載されているが、この技術は、ボイラ缶内が加熱される際に形成される、スズを含む被覆によって防食を達成するものであって、水中からの脱酸素による防食ではないので、高温とはならない給水ラインやエコノマイザでの防食では充分な効果が期待できない。
米国特許第4968438号 特開平4−26782号公報 特開平3−277790号公報
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、ボイラ給水などに添加して、特に低温、低pHの給水ラインでの防食にも効果的な脱酸素剤と脱酸素方法とを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、没食子酸および/または没食子酸塩と水中で亜硫酸イオンを放出する物質とを有効成分として含有し、
前記没食子酸および/または没食子酸塩と、前記水中で亜硫酸イオンを放出する物質との配合比が、それぞれ没食子酸換算濃度と亜硫酸ナトリウム換算濃度として1:9.6〜4:1であることを特徴とする脱酸素剤である。
本発明の脱酸素剤によれば、上記特有の構成により、少ない薬品添加量でも充分な脱酸素能を発揮でき、特に低温、低pHの給水ラインでの防食にも充分な効果が得られる。
また本発明の脱酸素方法によれば上記特有の構成により、少ない薬品添加量でも充分な脱酸素能を発揮でき、特に低温、低pHの給水ラインでの防食にも充分な効果が得られる。
本発明の脱酸素剤において、没食子酸はそのまま、あるいは、全部ないし一部を塩として、用いてもよい。塩としては、例えば、一般的なナトリウム塩や、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、単独で、あるいは、複数を組み合わせて用いても良い。
本発明の脱酸素剤において、水中で亜硫酸イオンを放出する物質としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、あるいは、ピロ亜硫酸カリウムなどが挙げられ、単独で、あるいは、複数を組み合わせて用いても良い。
本発明において、没食子酸及び没食子酸塩はボイラ給水への適応の際にはその濃度が没食子酸の濃度に換算して0.1mg/L以上100mg/L以下となるように用いることが好ましい。一方、水中で亜硫酸イオンを放出する物質のボイラ給水への適応の際の濃度が、亜硫酸ナトリウム濃度換算(水中で亜硫酸イオンを放出する物質が水中で完全に解離と仮定したときに1分子からn個の亜硫酸イオンを放出する場合(例えば、亜硫酸塩では1分子から1個の亜硫酸イオンを放出するのでn=1、ピロ亜硫酸塩の場合には1分子から2個の亜硫酸イオンを放出するのでn=2)に、nモル濃度の亜硫酸ナトリウム濃度に換算する、以下同じ)で0.1mg/L以上100mg/L以下となるように用いることが好ましい。
なお、没食子酸あるいは没食子酸塩と、水中で亜硫酸イオンを放出する物質との配合比としては、没食子酸換算濃度と亜硫酸ナトリウム換算濃度として1:50〜100:1とすることが少量の薬品添加で高い脱酸素効果を得られるので好ましい
なお、上記添加濃度及び配合比はボイラ給水中の溶存酸素濃度、pH、温度等に応じて適宜設定することができる。
本発明の脱酸素剤をボイラ給水に添加する脱酸素剤として用いる場合には、添加したときのボイラ給水のpHが8.0以上となるようにすることが、給水系、予熱系などでの防食が効果的となるため好ましい。ここで、没食子酸塩や水中で亜硫酸イオンを放出する物質の塩の種類を選択してボイラ給水への添加時のpHが8.0以上となるようにしても良く、あるいは水に添加した際にアルカリ性となるアルカリ性化合物を配しても良い。
このようなアルカリ性化合物としては、ボイラシステム内に入ってもスケール、腐食などの問題を引き起こさないものであることが必要であり、このようなアルカリ性化合物としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
本発明の脱酸素剤には、上記没食子酸および/または没食子酸塩、及び、水中で亜硫酸イオンを放出する物質以外の成分、例えば、他の防食剤、スケール防止剤、復水処理剤等、具体的には、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマ又はその塩、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロピルスルホン酸とのコポリマ又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、スチレンスルホン酸とマレイン酸とのコポリマ又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸又はその塩、ホスホノブタントリカルボン酸又はその塩、ホスフィン酸又はその塩、亜硝酸塩、亜鉛塩、錫塩、モリブデン酸又はその塩、ヒドラジン、カルボヒドラジド、ジエチルヒドロキシルアミン、メチルエチルケトオキシム、タンニン、リグニン、リグニンスルホン酸、糖類、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩、オキシカルボン酸又はその塩、燐酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、アミノメチルプロパノール、オクタデシルアミン、モルホリンなどの一種又は二種以上を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。
なお、本発明において、特記すべきは反応当量より多くの酸素を除去することが可能なことである。すなわち、没食子酸は通常、水中溶存酸素の酸素原子とモル比で1:1に反応し、また、亜硫酸イオンも同様に酸素原子とモル比で1:1に反応するとされている。しかしながら、本発明の構成によれば、本来の反応当量よりも多い量の酸素を除去することが可能となる場合がある。
本発明によれば必要とする薬品添加量が少なくても充分に酸素を除去することができるため、従来の薬品では必要添加量が多いために低く抑える必要があった、ボイラ本体における濃縮比を高くすることが可能となり、その結果、ブロー水を減少させることで節水が可能となるとともに、熱効率の向上が可能となる。あるいは必要薬品濃度が低いため、濃縮比を高く設定した場合でもキャリーオーバーによる蒸気純度の低下を抑制することができるなどの数多い効果が得られる。
以下に本発明の脱酸素剤の実施例について具体的に説明する。
[実施例1:脱酸素能の評価]
曝気により酸素を飽和溶存させた、水酸化カリウムを用いてpHを適宜調整した、つくば市水道水をカチオン交換樹脂によりカチオンをナトリウムイオンとした軟化水(「つくば市軟化水」と云う。初期溶存酸素濃度は8.0〜8.5mg/L)を密閉容器に気泡が入らないように入れ、添加薬品が所定濃度になるようにシリンジで注入した。
その後、25℃の恒温槽内でマグネチックスターラーを用いて300rpmで撹拌しながら溶存酸素濃度(mg/L)を経時的に測定し、脱酸素性能を調べた。
このときの薬品種類、添加量、このときの薬品の反応当量(添加薬品の全量が溶存酸素と反応したときに除去されるはずの酸素量)、調整したpH、及び、次式(I)から算出した実際の脱酸素率を表1に示す
[数1]
脱酸素率=(1−測定溶存酸素濃度/初期溶存酸素濃度)×100……(I)
Figure 0004414714
表1より上記軟化水で、25℃と云う低温での場合であっても、没食子酸と亜硫酸塩とを併用した本発明に係る脱酸素剤を添加した系で、添加量が少ない場合であっても、酸素除去率が高く、同時に酸素除去速度が速く、特にpHが8.0以上でその効果が大きいことが判る。特に実験例1及び実験例6では、添加薬品の反応当量が酸素ガス換算でそれぞれ6.2mg/L及び5.0mg/Lであるにもかかわらず、8.0〜8.5mg/Lの初期溶存酸素全量を除去すると云う驚くべき酸素除去能が発揮されていることは特筆すべき事項である。
一方、没食子酸や水中で亜硫酸イオンを放出する物質の単独使用、あるいはタンニン酸と亜硫酸塩とを併用した場合でもこのような効果が得られず、酸素除去能も低く、そのときの除去速度も遅いので、このような脱酸素剤を添加したボイラ給水の場合、温度の低いボイラ給水配管内での溶存酸素濃度が高く、その結果、配管・機器の腐食が発生する可能性が高いことが判る。
[実施例2:防食能の評価]
実際のボイラシステムでの使用に近い条件でのテストを行った。
保有水量4.5Lのオートクレーブを170℃、ブロー率10%、蒸発量1.5kg/h、1日8時間運転−16時間停止の条件で4日間運転した。
このとき、補給水にはつくば市軟化水に下記表2に示した所定濃度の薬品を投入したものを用い、試験期間中、ブロー水およびドレン水の溶存酸素濃度(DO)を測定して評価するとともに、試験終了後、オートクレーブ内に設置したテストピース(普通鋼冷延鋼板:SPCC−SB(初期寸法:40mm×15mm×2mm))を取り出してその減肉量から腐食速度を算出した。このときの結果を表2に示す。
Figure 0004414714
表2による本発明に係る脱酸素剤を用いた実施例aでは比較例b〜dに比して、ブロー水及びドレン水中の溶存酸素量が極めて少なく、かつ、テストピースの腐食が極めて低レベルに抑えられていることが判る。
本発明の脱酸素剤は、少ない添加量でありながら高い酸素除去能を有しているため、ボイラ給水に添加したときに、ボイラでの高濃縮が可能となり、節水や熱効率の向上が可能となる。また、低温で比較的低いpHでも充分な脱酸素能を有するため、ボイラ系配管の、比較的温度の低い部位、例えば給水ラインやエコノマイザなどでも高い脱酸素能が得られるので、そこでの防食効果が高い。このため、ボイラ給水添加用等の脱酸素剤として好適に使用できる。

Claims (2)

  1. 没食子酸および/または没食子酸塩と水中で亜硫酸イオンを放出する物質とを有効成分として含有し、
    前記没食子酸および/または没食子酸塩と、前記水中で亜硫酸イオンを放出する物質との配合比が、それぞれ没食子酸換算濃度と亜硫酸ナトリウム換算濃度として1:9.6〜4:1であることを特徴とする脱酸素剤。
  2. アルカリ性化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の脱酸素剤。
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