JP4413466B2 - 感圧接着性樹脂組成物及びこれを用いた感圧接着シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェット用インクによる印刷が可能な感圧接着シート、及びこれに使用される感圧接着性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、圧着用紙を用いた2つ折りはがきや3つ折りはがきの用途が拡大している。これらの圧着用紙は、支持体に通常状態では粘着性、接着性のいずれも示さず、加圧時に接着性を示す感圧接着塗液を塗布して感圧接着層を形成させ、用紙を折り畳んで感圧接着層同士を対面させ、圧力をかけて接着させるものである。
【0003】
この加圧による接着は、加圧の程度により、接着後に剥離を可能とすることができ、また、剥離不能とすることもできる。この圧着用紙は、圧着させる前の感圧接着層に印字して圧着させることによって密封し、また、開封することによってその内容を確認できる。
【0004】
このような圧着用紙は、上記の通り、感圧接着層の上に印字して別の感圧接着層と加圧により貼合せ、かつ再度それぞれを剥離して内容を確認するため、印字した内容が反対面の感圧接着層に転写するという、いわゆる裏写り、インク写りの問題があった。このような裏写りの現象を避けるために、印字した後にインク(またはトナー)を熱で定着する印字方式(電子写真、レーザープリンターなど)がとられていた。
【0005】
しかしながら、このような熱定着の方式は印字面(感圧接着面)および紙自体に過度の熱を与え、その水分を奪うため、感圧接着面が乾燥し圧着性が低下したり、過度の加熱により感圧接着面を構成する接着成分の一部が熱分解し、異臭を発生して作業環境を悪化させるという問題を有していた。
【0006】
ところで、印字方式としては、最近、インクジェット印字方式が、漢字を含め各種図形およびカラー画像などの記録装置として種々の用途において急速に普及している。このインクジェット印字方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの印刷を行なうものであり、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要である等の特徴を有する。さらに、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷に比較して遜色のない印刷を得ることが可能である。また、作成部数が少なくて済む用途においては、安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0007】
このインクジェット印字方式で使用されるシートとしては、通常の印刷や筆記に使われる上質紙やコーテッド紙を使うべく、装置やインク組成の面から努力がなされてきた。しかし、装置の高速化・高精細化あるいはフルカラー化などインクジェット印刷装置の性能の向上や用途の拡大に伴い、シートに対してもより高度な特性が要求されるようになった。即ち、このシートとしては、印字ドットの濃度が高く色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、且つ周辺が滑らかでぼやけないこと等の高い画像再現性が要求される。また、インクが水溶性であるために印字後に水に濡れると印字がにじんで読めなくなるという問題があった。
【0008】
これに対し、インク受理性、皮膜強度を高めるためにエチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョンを含むインク受理層を有するインクジェット用記録用紙が検討されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のエチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョンを用いた場合、感圧接着性が不十分となる問題点を有する。
これに対し、感圧接着性を持たせるために、エチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョンとTgが0℃以下のアクリル共重合性エマルジョンをブレンドしてインク受理層に含むことが考えられる。しかし、エチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョンとアクリル共重合性エマルジョンの相溶性が悪いため貯蔵安定性が悪く、また吸着が均一でないため、インク受理性が十分に得られないという問題があった。
【0010】
そこで、この発明は、貯蔵安定性及びインク受理性が良く、皮膜強度が高く、感圧接着性が良好で、かつ、インクジェット用インクによる印刷が可能な感圧接着シートに使用される感圧接着性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンの存在下、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなる(メタ)アクリレート単量体を重合して得られる、ガラス転移温度が+10〜−70℃のアクリル系共重合体を含有してなる感圧接着性樹脂組成物を提供することにより上記の課題を解決したのである。
【0012】
エチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョン存在下で、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含有する重合性モノマーを乳化重合して得られた所定のエマルジョン組成物を使用するので、接着成分の親水性を向上させることができ、添加されるカチオン系化合物との相溶性を向上させることができる。また、感圧接着性が向上する。これらのため、インクジェット用インクの定着性が向上し、インク塗工性及び感圧接着性の良好な感圧接着性樹脂組成物が得られる。
【0013】
また、この感圧接着性組成物からなる感圧接着層の表面にインクジェット用インクで印刷すると、インクの濡れ定着性が向上するため、印字濃度が顕著に向上し、さらに、印刷面が水に濡れても印刷が滲まない耐水性が得られる。
さらにまた、感圧接着層同士を加圧して接着、すなわち圧着した後、剥離してもインクの対面への転写、いわゆる裏写りが抑制される。
また、(メタ)アクリレート単量体をエチレン−酢酸ビニル共重合体の存在下で重合するので、(メタ)アクリレート系重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体とがエマルジョン中で均一に存在するようになり、単なる混合物の場合と比べて、貯蔵中の両重合体の分離が起こりにくくなって、貯蔵安定性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる感圧接着性樹脂組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略する。)エマルジョンの存在下、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなる(メタ)アクリレート単量体を重合して得られるアクリル系共重合体を含有してなる樹脂組成物である。
【0015】
上記EVAエマルジョンは、エチレンと酢酸ビニルからなる重合体を含む共重合体のエマルジョンである。このEVAエマルジョンは、EVAを乳化剤の下で、水や水を主成分とし、これに水と相溶性のあるメタノール、エタノール等のアルコールを加えた混合溶媒等の水系媒体に乳化させたものである。
また、上記EVAには、エチレン、酢酸ビニル以外のアクリル酸エステル、バーサチック酸ビニル等)の第3成分を共重合されてもよい。
【0016】
上記EVA中のエチレン含有量は、2〜40重量%がよく、5〜30重量%が好ましい。エチレン含有量が2重量%より少ないと、タック性が現れたり、裏写りすることがある。一方、40重量%より多いと、接着性が不足しやすい。
【0017】
上記乳化剤は、ノニオン性又は弱アニオン性の乳化剤又は保護コロイド剤を用いれば、特に制約はない。特に、部分ケン化ポリ酢酸ビニル等の水溶性高分子等の保護コロイド剤を用いると、得られるEVAエマルジョンは皮膜強度が強く、接着性も優れているので好ましい。部分ケン化ポリ酢酸ビニルのケン化度は、85〜99%が好ましい。85%未満では、保護コロイド性が不十分となりやすく、99%を超えると、低温での安定性が不足しやすい。
【0018】
上記の炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上記感圧接着性樹脂組成物に含まれる接着成分の構成モノマーの一種であり、例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等があげられる。
【0019】
上記の炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、上記感圧接着性樹脂組成物に含まれる接着成分の構成モノマーの一種であり、例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等があげられる。
なお、上記の「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル」を意味する。
【0020】
上記の(メタ)アクリレート単量体中の炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとの混合比は、重量比で、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル/炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル=40〜98/2〜60がよく、80〜95/5〜20が好ましい。炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの混合割合が2重量%より少ないと、インク受理性に劣る場合があり、一方、60重量%より多いと、印字耐水性に劣る場合がある。
【0021】
上記(メタ)アクリレート単量体には、上記の炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル以外に、得られる感圧接着性樹脂組成物の特性に影響を与えない範囲で、その他の単量体を加えることができる。
【0022】
上記その他の単量体の添加量は、上記(メタ)アクリレート単量体に対して、30重量%以下がよく、10重量%以下が好ましい。30重量%を超えると、接着力が不十分となることがある。
【0023】
上記(メタ)アクリレート単量体の乳化重合方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法で行えばよい。すなわち、水性媒体中に上記エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンを加え、所定温度下、撹拌下で、上記(メタ)アクリレート単量体、乳化剤及び重合開始剤を一括で供給するか、又は連続的に供給することにより行うことができる。上記(メタ)アクリレート単量体は、そのままで供給するか、又は水と上記乳化剤によってモノマーエマルジョンの状態にして供給することができる。上記重合性単量体混合物の濃度は、仕込みの全量に対し、30〜70重量%がよく、35〜60重量%が好ましい。
【0024】
上記乳化剤としては、得られる感圧接着性樹脂組成物にカチオン性化合物を混合するので、このカチオン性化合物との混和安定性を阻害しないものが好ましい。このような乳化剤としては、カチオン性乳化剤やノニオン性乳化剤等があげられる。このような乳化剤の具体例としては、花王(株)製:コータミン24P(カチオン性)、三洋化成(株)製:ノニポール200(ノニオン性)等があげられる。また、部分ケン化ポリ酢酸ビニル等の保護コロイド剤を単独で又は上記の乳化剤と併用して用いてもよい。
【0025】
上記重合開始剤としては、過酸化物系開始剤、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤等があげられる。このなかでも、過酸化物系開始剤及びアゾ系開始剤が好ましく、特にアゾ系開始剤が好ましい。アゾ系開始剤の例としては、アゾビスイソチロニトリル、アゾビスシアノバレリアン酸、アゾビスシアノペンタン酸、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩等があげられる。
【0026】
上記重合開始剤の使用量は、上記重合性単量体混合物全量に対し、0.05〜5重量%がよく、0.2〜3重量%が好ましい。0.05重量%より少ないと、重合反応性が不十分となり、一方、5重量%より多いと、低分子量成分が生成しやすくなり好ましくない。
【0027】
上記乳化重合における反応温度は、40〜90℃がよく、50〜75℃が好ましい。重合温度が高すぎると、低分子量成分が生成しやすくなり、一方、重合温度が低すぎると、重合時間が長くなりすぎる場合がある。また、上記乳化重合における反応時間は、1〜16時間がよく、2〜8時間が好ましい。
【0028】
この乳化反応によって得られるアクリル系共重合体の組成比は、EVA/(メタ)アクリレート単量体由来の共重合体の重量比として、2/8〜8/2の範囲内がよく、3/7〜7/3の範囲内が好ましい。EVAの組成が20重量%未満だと、印字濃度が不十分となる場合がある。一方、80重量%より多いと、接着力が不十分となる場合がある。
【0029】
得られるアクリル系重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と略する。)は、+10〜−70℃であることが必要で、−10〜−60℃が好ましい。+10℃より高いと、接着力が不十分となりやすく、−70℃より低いと、耐ブロッキング性が劣る傾向となる。
【0030】
なお、上記のアクリル系共重合体のTgは、各単量体成分により形成されるホモポリマーのガラス転移温度から次式により求めることができる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+……+Wn/Tgn
但し、Tg:アクリル系共重合体のガラス転移温度(絶対温度)、W1〜Wn:単量体成分1〜単量体成分nの重量分率、Tg1〜Tgn:単量体成分1〜単量体成分nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0031】
ホモポリマーのTgの例を挙げると、以下の通りである。アクリル酸メチル:+8℃、アクリル酸エチル:−19℃、アクリル酸ブチル:−52℃、アクリル酸2−エチルヘキシル:−74℃、アクリル酸2−メトキシエチル:−45℃、アクリル酸2−エトキシエチル:−50℃、メタクリル酸メチル:120℃、スチレン:105℃、酢酸ビニル:29℃、アクリロニトリル:104℃、アクリル酸:106℃、メタクリル酸:185℃。
【0032】
この発明にかかる感圧接着性樹脂組成物には、上記のアクリル系重合体以外の添加剤として、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、帯電防止剤、老化防止剤、などを適宜配合することもできる。
【0033】
上記の感圧接着性樹脂組成物は、通常状態では粘着性も接着性も示さないが、強い圧力により接着可能となるものであり、ラベルや粘着テープに用いている通常粘着性のある感圧接着剤とは異なる。したがって、この感圧接着性樹脂組成物には、通常状態では粘着性も接着性も示さないが、強い圧力により接着可能となるものである。この感圧接着性樹脂組成物は、これからなる層同士を重ね合わせて圧力を加えることで接着することが可能で、感圧接着層の接着性の制御、あるいは加える圧力の加減により、接着後に剥離可能に接着させることも、接着後に剥離不能なまでに強接着させることも可能である。
【0034】
この発明にかかる感圧接着性樹脂組成物はそのままで、又は必要に応じて他の添加物を混合することによりコールドシール用接着剤組成物が作製される。このコールドシール用接着剤組成物を紙等に積層すると、感圧接着層であるインクジェット受容層が形成され、感圧接着シートが得られる。
【0035】
上記のインクジェット用インクとは、特にインクジェット印字方式に用いられるインクで、下記の着色剤、液媒体、その他の添加剤からなる印字用液体である。
上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素などの水溶性染料があげられる。
【0036】
インクの溶媒としては、水および水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等があげられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコールなどの多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。その他の添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、および防錆剤などが挙げられる。
【0037】
上記の感圧接着シートは、上記インクジェット受容層上にインクジェット用インクで印刷され、この感圧接着シートを折り曲げるか、又は他の感圧接着シートのインクジェット受容層と重ね合わせて、面加圧では80〜100kg/cm2程度の圧力、線圧の場合は80〜100kg/cm程度の圧力を加えて接着、すなわち、圧着して、印刷内容を隠す。そして、その印刷内容を確認するときは、接着させた感圧接着シート同士を剥がすことにより、確認できる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、下記実施例及び比較例において、使用した原料、及びガラス転移温度の算出方法について説明する。
【0039】
<原料単量体>
・メチルメタクリレート:関東化学(株)製 試薬特級(以下、「MMA」と略する。)
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート:関東化学(株)製 試薬特級(以下、「HEMA」と略する。)
・アクリルアミド:和光純薬(株)製 試薬特級(以下、「AAm」と略する。)
・2−エチルへキシルアクリレート:和光純薬(株)製 試薬特級(以下、「2EHA」と略する。)
・メチルアクリレート:和光純薬(株)製 試薬特級(以下、「MA」と略する。)
・EVAエマルジョン:中央理化工業(株)製;BE−814、部分ケン化ポリ酢酸ビニル系乳化剤(ケン化度88%)使用、エチレン含量20重量%、Tg:0℃
【0040】
<ガラス転移温度(Tg)>
各単量体成分により形成されるホモポリマーのTgから次式により求めた。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+……+Wn/Tgn
但し、Tg:アクリル系共重合体のガラス転移温度(絶対温度)、W1〜Wn:単量体成分1〜単量体成分nの重量分率、Tg1〜Tgn:単量体成分1〜単量体成分nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
なお、計算に用いたホモポリマーのTgの例を挙げると、以下の通りである。MMA:120℃、HEMA:55℃、AAm:153℃、2EHA−74℃:、MA:8℃。
【0041】
(実施例1)
温度計、還流冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えた反応容器に、55%エチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョン930重量部を仕込み、70℃に昇温し、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩(和光純薬(株)製;V−50)0.3gを反応容器に加えた。次に、2EHA170重量部、HEMA10重量部、MMA10重量部、AAm10重量部、ノニオン系乳化剤(花王(株)製;エマルゲン920)2.0重量部、水86重量部を混合した調整液を、2時間かけて滴下した。その後、80℃で2時間熟成して、感圧接着性樹脂組成物となるアクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0042】
(実施例2〜7)
(メタ)アクリレート単量体及びその他の単量体の組成を表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0043】
(比較例1)
EVAエマルジョンを仕込まず、水64重量部を仕込み、(メタ)アクリレート単量体のみを用いた以外は、実施例1と同様にして乳化重合を行い、アクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0044】
(比較例2)
EVAエマルジョンのみを用いた以外は、実施例1と同様にして乳化重合を行い、アクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0045】
(比較例3)
比較例1で得たアクリル共重合系エマルジョンを不揮発分量30重量部とEVAエマルジョンを不揮発分量70重量部とをブレンドしてアクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0046】
(比較例4、5)
混合比を表1に記載の割合とした以外は、比較例3と同様のブレンドをしてアクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0047】
(比較例6)
(メタ)アクリレート単量体及びその他の単量体の組成を表1に記載の組成とした以外は、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
【0048】
[性能評価試験]
上記の各実施例及び比較例によって得られたアクリル系共重合体エマルジョン組成物のそれぞれに、不揮発分100重量部に対して小麦粉デンプン(平均粒径30μm)25重量部とシリカ粉末(平均粒径1.5μm)25重量部及びカチオン性化合物(住友化学(株)製;スミレーズ1001)5重量部を配合して、コールドシール用接着剤組成物を得た。
このコールドシール用接着剤組成物を上質紙に8g/cm2となるようにバーコーダーを用いて塗布し、熱風循環乾燥機を用いて105℃で2分間乾燥し、感圧接着シートを得た。得られた感圧接着シートを用いて、下記の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
<印字濃度>
市販のカラーインクジェットプリンター(MJ−700C、セイコーエプソン(株)製)を用いてコールドシール用接着剤組成物の塗工面に印刷を行い、印字の鮮明さを目視により以下の基準で判定した。
◎:鮮明な画像、印字濃度が得られる
◎〜○:鮮明な画像、印字が得られるが、印字部にやや滲みがある
○:やや鮮明さに欠けるが、画像や印字の解読に支障のないもの
×:画像・印字がぼやけて不鮮明なもの
【0050】
<接着性>
コールドシール用接着剤組成物の塗工面同士を100kg/cmの線圧で圧着し、幅25mmの測定試料を得た。これらの試料について、T字剥離で剥離し、剥離の状態および剥離した面の状態を評価した。綺麗に剥離したものを◎、接着力がやや弱いが、実用上問題のないレベルを○、紙質破壊が起こる又は接着力が低く剥がれ実用上問題となるレベルのものを×とした。
【0051】
<印字耐水性>
上記の市販のカラーインクジェットプリンターを用いて、コールドシール用接着剤組成物の塗工面に印刷を行った。その後、印刷部分に水をたらして5分後の状態を観察した。画像、印字に全くニジミがなく鮮明なままであるものを◎、ややニジミが生じるが記録内容の解読に支障のないものを○、記録内容がにじんでほとんど判読できないものを×とした。
【0052】
<印字裏写り>
上記の市販のカラーインクジェットプリンターを用いて、コールドシール用接着剤組成物の塗工面に印刷を行った。その後、感圧接着層を内側にして2つ折りにし、圧着ローラーにより100kg/cmの線圧にて圧着を行った。そして、これを剥がして、印刷部分の接する対面へのインクの移行程度(裏写り)を目視で判定した。裏写りが全く無く、対面がきれいなままのものを◎、裏写りするが対面の記録の判読にさしつかえないものを○、インクの半分程度が移行し、対面の記録の判読が全くできないレベルを×とした。
【0053】
【表1】
【0054】
[結果]
実施例1〜7から明らかなように、EVAエマルジョンの存在下、所定の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを用いて乳化重合して得られるガラス転移温度0〜−70℃のエマルジョン組成物は、適切な配合を行うことで、コールドシール用接着剤組成物が得られ、また、優れたインクジェット印刷適性、印字耐水性、及びコールドシール接着性を有した感圧接着シートが得られる。
【0055】
これに対し、比較例1、2のようにアクリル組成物単独だと接着性はあるが印字濃度が不十分で、EVA組成物単独だとインク受理性などがあるが、接着性が不十分である。
【0056】
また、比較例3〜5のようにアクリル重合体とEVAのブレンドしたものは相溶性の関係から吸着が均一でなく印字濃度、接着性ともに不十分である。
【0057】
さらに、比較例6において、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを用いずに重合した組成物は、接着性はよいが親水性が不十分なために印字濃度が不十分である。
【0058】
【発明の効果】
この発明にかかる感圧接着性組成物として、エチレン−酢酸ビニル共重合系エマルジョン存在下で、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する重合性モノマーを乳化重合して得られた所定のエマルジョン組成物を使用するので、接着成分の親水性を向上させることができ、添加されるカチオン系化合物との相溶性を向上させることができる。このためインクジェット用インクの定着性が向上し、インク塗工性が良好な感圧接着性樹脂組成物が得られる。
【0059】
また、この感圧接着性組成物からなる感圧接着層の表面にインクジェット用インクで印刷すると、インクの濡れ定着性が向上するため、鮮明な画像・印字が得られると共に、印字濃度が顕著に向上し、さらに、印刷面が水に濡れても印刷が滲まない耐水性が得られる。
【0060】
さらにまた、感圧接着性同士を加圧して接着、すなわち圧着した後、剥離してもインクの反対面への転写、いわゆる裏写りが抑制される。
Claims (7)
- 保護コロイド剤としてケン化度85〜99%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンの存在下、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなる(メタ)アクリレート単量体を重合して得られる、ガラス転移温度が+10〜−70℃のアクリル系共重合体を含有してなる感圧接着性樹脂組成物を含有するインクジェット受容層を有する感圧接着シート。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量が2〜40重量%である請求項1に記載のインクジェット受容層を有する感圧接着シート。
- 上記アクリル系共重合体の組成比が、エチレン−酢酸ビニル共重合体/(メタ)アクリレート単量体由来の共重合体の重量比として、2/8〜8/2の範囲内である請求項1又は2に記載のインクジェット受容層を有する感圧接着シート。
- 上記(メタ)アクリレート単量体の組成比が、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが40〜98重量%、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル2〜60重量%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット受容層を有する感圧接着シート。
- 上記アクリル系共重合体は、上記(メタ)アクリレート単量体に加えて、その他の単量体を、上記(メタ)アクリレート単量体の30重量%以下用いて重合して得られたものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット受容層を有する感圧接着シート。
- 上記感圧接着性樹脂組成物は、さらに小麦粉デンプン、シリカ粉末、及びカチオン性化合物を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット受容層を有する感圧接着シート。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット受容層を有する感圧接着シートからなるインクジェット記録用紙。
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