JP4413355B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッドの耐偏摩耗性能を向上した空気入りタイヤに係り、車両に用いられるタイヤであって特に重荷重用のタイヤに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤの接地部となるクラウン部は、タイヤサイド部の剛性の影響を受けてショルダ部の接地圧が高くなるのを緩和し接地形状や接地圧力分布を適正に保つ為に、複数の円弧より構成された凸状に形成されているのが通例である。
ところが、クラクン部が凸状になっていると、タイヤの中央部の外径がショルダ部の外径に比較して大きくなるのに伴って、タイヤの中央部の周長がショルダ部の周長より長くなる。そして、このタイヤの中央部の周長が長いことに起因し、タイヤ転動時において、車両の前後方向に向かう前後力が、タイヤの中央部で車両前方側である駆動側へ大きく生じると共に、ショルダ部で車両後方側である制動側へ大きく生じる形で、クラクン部の路面と接する接地面に発生する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上より、タイヤの中央部とショルダ部との間のこの前後力の変化によって、該タイヤを駆動輪に装着した時には駆動力が強くなる中央部で摩耗量が増え、従動輪に装着した時には制動力の影響を強く受けるショルダ部で摩耗量が増え、結果として、前後力の変化がタイヤの偏摩耗の発生原因となっていた。特に重荷重用タイヤでは、図8に示すように、接地圧力によってトレッドゴム22の変形が大きくなり陸部内におけるトレッド14の周方向のつぶれ変形DLが顕著に起こるので、偏摩耗が大きくなる傾向にあった。
【0004】
尚、クラウン部の凸状の形状を変更することにより、タイヤの偏摩耗の発生原因となる前後力の変化量を低減することは可能であるが、クラウン部の凸状は前記の接地形状や接地圧力分布を適正に保つ等の理由から大きく変更することは困難であった。
本発明は上記事実を考慮し、偏摩耗の発生を低減し得る空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、トレッドゴムにより形成されるトレッドの周方向に沿ってそれぞれ複数の周方向溝が延び、これら複数の周方向溝により区画されてトレッドの周方向に陸部が延びている空気入りタイヤであって、
トレッドの中央に最も近い周方向溝が、方形状の横断面とされたメイングルーブ及び、このメイングルーブの内周側に形成された凹部を備え、
メイングルーブが他の周方向溝の深さの平均値以上の深さを有し、凹部が他の周方向溝の溝底からのトレッドゴムの厚さの1/5〜1/2の深さを有したことを特徴とする。
【0006】
請求項1に係る空気入りタイヤの作用を以下に説明する。
本請求項に係る空気入りタイヤは、トレッドゴムによりトレッドが形成され、このトレッドの周方向に沿ってそれぞれ延びる複数の周方向溝により区画されて、陸部がトレッドの周方向に延びる構成とされている。
また、これら周方向溝の内のトレッドの中央に最も近い周方向溝が、方形状の横断面とされたメイングルーブ及び、このメイングルーブの内周側に形成された凹部を備えており、このメイングルーブが他の周方向溝の深さの平均値以上の深さを有し、この凹部が他の周方向溝の溝底からのトレッドゴムの厚さの1/5〜1/2の深さを有している。
【0007】
つまり、このタイヤの路面との接地時に接地圧力がタイヤに生じ、この接地圧力による陸部の変形として、トレッドの周方向のつぶれ変形及び、トレッドの軸方向のつぶれ変形が生じる。そして、タイヤの中央部におけるトレッドの周方向のつぶれ変形によるトレッドゴムの膨出は、駆動側への前後力の増加を生じさせ、駆動輪への装着時におけるタイヤの摩耗を増大させる。但し、膨出するトレッドゴムの体積は一定なので、トレッドの軸方向のつぶれ変形を大きくして軸方向の膨出を増大させれば、トレッドの周方向のつぶれ変形が小さくなって前後力が減少し、駆動輪に装着されたタイヤの摩耗量を減少できる。
【0008】
この際、周方向溝を深くすればするほどトレッドの軸方向へのトレッドゴムの膨出量が多くなり、これに伴ってトレッドの周方向のクラッシングであるつぶれ変形を抑制することができる。しかし、単に周方向溝を深くしただけではトレッドパターン剛性の低下を生じさせ、操縦安定性能が低下する原因ともなる。
【0009】
以上より、トレッドの中央に最も近い周方向溝を構成するメイングルーブの底部側となる内周側に凹部を設ければ、この凹部にトレッドゴムが押し出されて、トレッドの軸方向へのトータルのトレッドゴムの膨出量が増大することになる。この結果として、トレッドの周方向のつぶれ変形が減少してトレッドゴムの周方向の膨出が少なくなるのに伴って、偏摩耗の発生を改善することができる。
【0010】
特に重荷重用タイヤでは、接地圧力によってトレッドゴムの変形が大きくなって、陸部内におけるトレッドの周方向のつぶれ変形が顕著に起こり、これによる周方向の歪み及び、この周方向のつぶれ変形に伴い前後力が大きく発生するので、偏摩耗の発生を低減する効果が高くなる。
【0011】
尚、上記のようにメイングルーブの内周側に凹部を設けた形の断面構造とした場合でも、メイングルーブの深さを他の周方向溝の深さの平均値以上の深さにしないと、トレッドの軸方向へトレッドゴムを膨出させることが効率よくできない。さらに、凹部が浅すぎた場合には上記したトレッドゴムの膨出量が増大する効果が十分には望めなく、凹部が深すぎた場合には、周方向溝に沿ったトレッドゴムの割れであるグルーブクラック等が発生するおそれが有るので、凹部が、他の周方向溝の溝底からのトレッドゴムの厚さの1/5〜1/2の深さを有することとした。
【0012】
さらに、凹部の幅が、メイングルーブの幅の1/3以下とされているので、トレッドの軸方向へのトータルのトレッドゴムの膨出量が適切に増大することになる。
【0013】
請求項2に係る空気入りタイヤの作用を以下に説明する。本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、凹部がメイングルーブと平行に延びる溝状に形成されているので、メイングルーブ全体にわたってこの凹部にトレッドゴムが押し出され、結果として、メイングルーブ全体にわたってトレッドの軸方向へのトレッドゴムの膨出量が増大して、偏摩耗がタイヤ全周で少なくなる。
【0014】
請求項3に係る空気入りタイヤの作用を以下に説明する。本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、凹部がトレッドの周方向に不連続に配置されているので、メイングルーブの底部の剪断剛性の低下を防ぐことができ、結果として、グルーブクラック性能を低下させずにトレッドの軸方向へトレッドゴムを膨出させて、トレッドの周方向へのトレッドゴムの膨出を少なくできる。
【0015】
請求項4に係る空気入りタイヤの作用を以下に説明する。本請求項では請求項1又は3と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、凹部が角の無い円形の穴部とされているので、応力集中し難くなる。この為、上記と同様にグルーブクラック性能を低下させずに、トレッドの周方向へのトレッドゴムの膨出を少なくできる。
【0016】
請求項5に係る空気入りタイヤの作用を以下に説明する。本請求項では請求項1〜4と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、凹部が底側ほど狭いテーパ状に形成されているので、凹部がメイングルーブの底面に近づくほど断面積が大きくなる形状となって、メイングルーブの底面の剪断剛性を一層高めることができる。この為、上記と同様にグルーブクラック性能を低下させずに、トレッドの周方向へのトレッドゴムの膨出を少なくできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤを図1から図7に示し、これらの図に基づき説明する。
図1は、本実施の形態に係る実施例1となる空気入りタイヤ10のトレッドパターンの典型例を示す図である。ここで、空気入りタイヤ10の内部構造については、ラジアルカーカス(図示せず)と、このラジアルカーカスのクラウン部を覆うように配置された剛性の高いベルト12と、ゴム製のトレッドゴム22により形成されてこのベルト12の外周面に一周にわたって配置されるトレッド14と、を組み合わせたこの種の空気入りタイヤとしてごく一般的なものなので、以下の説明において記載を省略する。
【0018】
図1(B)に示すように、クラウン部を構成する上記のトレッド14の外表面は円弧状であるクラウン形状に形成されて、このトレッド14が空気入りタイヤ10の路面Eと接する外皮となっている。また、このリング状のトレッド14の周方向Yにほぼ沿って延びる4本の幅広の溝部である周方向溝16A、16B、16C、16Dにより区画されて、このトレッド14の外表面が5本の陸部であるリブ18A、18B、18C、18D、18Eにより分割されるようなトレッドパターンをこの空気入りタイヤ10は有している。
【0019】
そして、トレッド14の周方向Yに沿って延びるようにトレッド14に形成されるこれら5本のリブ18A、18B、18C、18D、18Eの内のトレッド14の軸方向Xの中央(中央線CLで表す)に位置するリブが、センタリブ18Cとされている。
尚、本実施の形態におけるリブ18Bからセンタリブ18Cまでの間のクラウン形状の曲率半径は700mmであり、内圧が加わった時のセンタリブ18Cとショルダ部端となるリブ18Aとの間の高さの差Sは12.5mmとされている。
【0020】
この一方、図1から図3に示すように、4本の周方向溝16A、16B、16C、16Dの内のセンタリブ18Cを挟む形となる一対の周方向溝16B、16Cが、中央線CLに最も近くに配置されている。そして、これら周方向溝16B、16Cの主要部をそれぞれ方形状の横断面とされたメイングルーブ24が形成しており、他の周方向溝16A、16Dの深さ寸法H3の平均値以上の深さ寸法H1をこのメイングルーブ24が有している。
【0021】
さらに、トレッド14の内周側とされるこのメイングルーブ24の内周側の部分には、溝状に形成された凹部である溝状凹部26がメイングルーブ24と平行に延びるように配置されており、また、図2に示すように、この溝状凹部26は、他の周方向溝16A、16Dの溝底からのトレッドゴム22の厚さ寸法H4の1/5〜1/2の深さとされる深さ寸法H2及び、メイングルーブ24の幅寸法L0の1/3以下とされた幅寸法L1、L2を有している。
【0022】
ここで、例えば周方向溝16A、16Dの深さ寸法H3は15mmとされ、メイングルーブ24の深さ寸法H1も15mmとされている。また、周方向溝16A、16Dの溝底からのトレッドゴム22の厚さ寸法H4は6mmとされ、溝状凹部26の深さ寸法H2は3mmとされている。さらに、メイングルーブ24の幅寸法L0は12mmとされ、溝状凹部26の幅寸法L1、L2は共に3mmとされている。尚、幅寸法L1は溝状凹部26の上端部における寸法であり、幅寸法L2は溝状凹部26の上端部における寸法である。
【0023】
次に、本実施例に係る空気入りタイヤ10の作用を以下に説明する。
本実施例に係る空気入りタイヤ10は、トレッドゴム22によりトレッド14が形成され、このトレッド14の周方向Yに沿ってそれぞれ延びる複数の周方向溝16A、16B、16C、16Dにより区画されて、リブ18A、18B、18C、18D、18Eがトレッド14の周方向Yに延びる構成とされている。
また、これら4本の周方向溝16A、16B、16C、16Dの内のトレッド14の中央に最も近い周方向溝16B、16Cが、方形状の横断面とされたメイングルーブ24及び、このメイングルーブ24の内周側に形成された溝状凹部26を備えている。
【0024】
つまり、図7及び図8に示すように、路面Eとのタイヤの接地時に接地圧力がタイヤに生じ、この接地圧力によるセンタリブ18Cの変形として、トレッド14の周方向Yのつぶれ変形DL(図8に示す)及び、トレッド14の軸方向Xのつぶれ変形DW(図7に示す)が生じる。そして、タイヤの中央部における、トレッド14の周方向Yのつぶれ変形DLによるトレッドゴム22の膨出は、駆動側への前後力FLの増加を生じさせ、車両の駆動輪への装着時におけるタイヤの摩耗を増大させる。
【0025】
しかし、タイヤの接地面10A内における路面Eから離れる部分である蹴り出し部10Bで、路面Eと滑りを伴いながら路面Eを蹴り出すことにより、主に摩耗は生じるので、特にこの蹴り出し部10Bにおける前後力FLの大きさを図8に示す一点鎖線Aの特性から実線Bの特性に変更するように、低減すれば摩耗量は減少する。そして、膨出するトレッドゴム22の体積は一定なので、この蹴り出し部10Bにおけるトレッド14の軸方向Xの図7に示すつぶれ変形DWを大きくして、トレッド14の軸方向Xのトレッドゴム22の膨出量を増大させれば、横力FWが大きくなると共に、トレッド14の周方向Yのつぶれ変形DLが小さくなって前後力FLが減少し、駆動輪に装着されたタイヤの摩耗量を減少できる。尚、図7及び図8における二点鎖線Cは接地圧力が加わる前のトレッドゴム22の状態を示す線であり、実線Dは接地圧力が加わったトレッドゴム22の状態を示す線である。
【0026】
この際、周方向溝16B、16Cを深くすればするほどトレッド14の軸方向Xへのトレッドゴム22の膨出量が多くなり、これに伴ってトレッド14の周方向のクラッシングを抑制することができる。しかし、単に周方向溝16B、16Cを深くしただけではトレッドパターン剛性の低下を生じさせ、操縦安定性能が低下する原因ともなる。
【0027】
以上より、トレッド14の中央に最も近い周方向溝16B、16Cをメイングルーブ24がそれぞれ構成し、このメイングルーブ24の底部となる内周側に、小型の溝部である溝状凹部26を設ければ、この溝状凹部26にトレッドゴム22が押し出されて、トレッド14の軸方向Xへのトータルのトレッドゴム22の膨出量が増大することになる。この結果として、トレッド14の周方向Yのつぶれ変形DLを減少でき、周方向Yの膨出を少なくしてトレッド14の耐偏摩耗性能を向上できるので、タイヤ性能を長期間維持して、空気入りタイヤ10の耐久性を高めることができる。
【0028】
特に重荷重用タイヤでは、接地圧力によってトレッドゴム22の変形が大きくなって、センタリブ18C内におけるトレッド14の周方向Yのつぶれ変形DLが顕著に起こり、これによる周方向Yの歪み及び、この周方向Yのつぶれ変形DLに伴い前後力FLが大きく発生するので、本実施例に係る空気入りタイヤ10は偏摩耗の発生を低減する効果が高くなる。
また、タイヤの接地面10A内の前後力FLの分布はタイヤの接地面10A全体の前後力FLのバランスで決まるので、タイヤの中央部に位置するセンタリブ18Cにおける駆動側への前後力FLの増加量を低減すれば、ショルダ部に位置するリブ18A、18Eにおける制動側への前後力FLの増加量も低減できる。
【0029】
尚、上記のようにメイングルーブ24の内周側に溝状凹部26を設けた形の断面構造とした場合でも、メイングルーブ24の深さ寸法H1を他の周方向溝16A、16Dの深さ寸法H3の平均値以上の深さにしないと、トレッド14の軸方向Xへトレッドゴム22を効率よく膨出させることができない。また、溝状凹部26が浅すぎた場合には上記したトレッドゴム22の膨出量が増大する効果が十分には望めなく、溝状凹部26が深すぎた場合にはグルーブクラック等が発生するおそれが有るので、溝状凹部26が、他の周方向溝16A、16Dの溝底からのトレッドゴム22の厚さ寸法H4の1/5〜1/2の深さ寸法H2を有するようにした。
【0030】
さらに、本実施例では、溝状凹部26がメイングルーブ24と平行に延びる溝状に形成されてトレッド14の周方向Yの全体にわたって配置されているので、トレッドゴム22のセンタリブ18C内からのトレッド14の軸方向Xへの膨出を空気入りタイヤ10の全周にわたって確実に増加させることができ、これによって偏摩耗がタイヤ全周で少なくなり空気入りタイヤ10の耐久性を一層高めることができる。
一方、本実施例では、溝状凹部26が小型の溝部となるように、溝状凹部26の幅寸法L1、L2が、メイングルーブ24の幅寸法L0の1/3以下とされているので、適切にトレッド14の軸方向Xへのトータルのトレッドゴム22の膨出量が増大することになる。
【0031】
次に、本実施の形態の実施例2に係る空気入りタイヤの要部を図4に示し、この図に基づき説明する。尚、実施例1で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図4に示すように、本実施例も実施例1と同様の構造を有し、実施例1と同様の作用を奏するが、本実施例では溝状凹部26の替わりに、凹部が不連続となるような円形の穴状凹部32とされていて、この穴状凹部32がトレッド14の周方向Yに沿って等間隔で複数配置される構造になっている。尚、この穴状凹部32の穴径となる幅寸法L1、L2は共に3mmとされている。
【0032】
従って、不連続とされると共に角の無い円形の穴状凹部32が、トレッド14の周方向Yに複数配置されているので、凹部に応力集中し難くなるだけでなくメイングルーブ24の底部の剪断剛性の低下を防げ、結果としてグルーブクラック性能を低下させずにトレッド14の軸方向Xへトレッドゴム22を膨出させて、トレッド14の周方向Yへのトレッドゴム22の膨出を少なくできるようになる。
【0033】
次に、本実施の形態の実施例3に係る空気入りタイヤの要部を図5に示し、この図に基づき説明する。尚、実施例1で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図5に示すように、本実施例も実施例1と同様の構造を有し、実施例1と同様の作用を奏するが、本実施例では溝状凹部26の替わりに、凹部が底側ほど狭いテーパ状に形成されるテーパ溝状凹部34とされる構造になっている。尚、この溝状凹部26の幅寸法L1は3mmとされ、幅寸法L2は1mmとされている。
【0034】
従って、メイングルーブ24の底面に近づくほどテーパ溝状凹部34の断面積が大きくなる形状となって、メイングルーブ24の底面の剪断剛性を一層高めることができる。この為、グルーブクラック性能を低下させずに、トレッド14の周方向Yへのトレッドゴム22の膨出を少なくできるようになる。
【0035】
次に、本実施の形態の実施例4に係る空気入りタイヤの要部を図6に示し、この図に基づき説明する。尚、実施例1で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図6に示すように、本実施例も実施例1と同様の構造を有し、実施例1と同様の作用を奏するが、本実施例では溝状凹部26の替わりに、凹部が不連続な円形であって底側ほど狭いテーパ状のテーパ穴状凹部36とされていて、このテーパ穴状凹部36がトレッド14の周方向Yに複数等間隔で配置される構造になっている。尚、このテーパ穴状凹部36の穴径となる幅寸法L1は3mmとされ、幅寸法L2は1mmとされている。従って、本実施例によれば実施例2及び実施例3の作用を組み合わせたような作用をも奏することになる。
【0036】
次に、大型トラックで実路(高速道)を10000Km走行(定積、速度80Km/h)した後におけるタイヤの中央部とショルダ部との間の摩耗量の差をそれぞれ測定した結果を以下に説明する。まず、サンプルとして、上記の実施例1から実施例4までを作成した。また、比較例としては、凹部の無い従来例を用いるだけでなく、メイングルーブが浅すぎる構造の比較例1、凹部が浅すぎる構造の比較例2、凹部が深すぎる構造の比較例3及び、凹部が広すぎる構造の比較例4を作成した。この際、これら実施例、従来例及び比較例における寸法も表1の示した。尚、深さ寸法H2の欄の括弧内の数値は溝底からのトレッドゴムの厚さ寸法H4に対する深さ寸法H2の割合を示す。
【0037】
そして、この表1に示されたタイヤの中央部とショルダ部との間の摩耗量の差の値を表す「駆動輪における摩耗量の差」の値が小さいほど良好な性能を示すことになる。また、この欄における括弧内の数値は、従来例を100とすると共に、従来例の摩耗量の差をAとし実施例の摩耗量の差をBとして、A/B×100の式より算出した値である。
【0038】
【表1】
【0039】
つまり、摩耗量の差の値が小さくなるほど偏摩耗が少なくなり、良好な性能を示すことになるので、表1より、実施例1から実施例4までが10000Km走行時において0.6mmから0.68mmまでの値となって、従来例の0.8mmに対して性能が向上しているだけでなく、比較例1から比較例4までの0.64mmから0.8mmまでの値に対しても性能が全体的に向上していることが、理解できる。また、クラック長さの項目でも実施例1から実施例4までが3.5mmから6mmまでの値となって、比較例1から比較例4までの3mmから11mmまでの値に対して、ばらつきが少なく全体的に安定した値となっている。さらに、操縦安定性の項目でも全て7点と評価が高かった。尚、操縦安定性は人間による感応評価であり、点数が高い方が良い評価となる。
【0040】
ここで表1に於ける試験条件は以下の通りである。
試験用タイヤ:サイズが275/70R22.5とされる重荷重用空気入りタイヤ、ベルト12は3.5B構造でリムは7.50×22.5
車両:2−D・4軸形式の大型トラック
試験用タイヤ装着位置:駆動輪
最終評価時の走行距離:約10000Km
走行路線の特徴:高速道
【0041】
尚、上記実施の形態において、トレッド14の周方向Yにほぼ沿って延びる周方向溝を4本とし、リブを5本としたが、周方向溝の数及びリブの数はこれらの値に限定されるものでなく、他の本数としても良い。
また、上記実施の形態において、リブ18B、18Dに斜めに延びる溝部が形成されているが、センタリブ18Cにも同様の溝部を形成してセンタリブ18Cがトレッド14の周方向に断続されている構造であっても良い。
さらに、上記実施の形態では、溝状凹部26及びテーパ溝状凹部34がトレッド14の周方向Yの全体にわたって形成されているが、断続的に形成されていても良く、また、上記実施の形態では、穴状凹部32及びテーパ穴状凹部36が等間隔で配置されているが、必ずしも等間隔で配置しなくとも良い。
【0042】
【発明の効果】
本発明の空気入りタイヤは上記構成としたので、トレッドの耐偏摩耗性能が向上するという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤを示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は(A)の1B−1B矢視における横断面図である。
【図2】本実施の形態に係る空気入りタイヤの実施例1の要部を示す拡大断面図である。
【図3】本実施の形態に係る空気入りタイヤの実施例1の要部を示す拡大斜視断面図である。
【図4】本実施の形態に係る空気入りタイヤの実施例2の要部を示す拡大斜視断面図である。
【図5】本実施の形態に係る空気入りタイヤの実施例3の要部を示す拡大斜視断面図である。
【図6】本実施の形態に係る空気入りタイヤの実施例4の要部を示す拡大斜視断面図である。
【図7】本実施の形態に係る空気入りタイヤの実施例1が路面に接地された状態を示す拡大断面図である。
【図8】空気入りタイヤの接地状態と前後力の関係を示す図であって、(A)は空気入りタイヤの中央部における接地状態を示す断面図あり、(B)は(A)の各部における前後力の大きさを表すグラフである。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
14 トレッド
16B 周方向溝
16C 周方向溝
22 トレッドゴム
24 メイングルーブ
26 溝状凹部
32 穴状凹部
34 テーパ溝状凹部
36 テーパ穴状凹部
Claims (5)
- トレッドゴムにより形成されるトレッドの周方向に沿ってそれぞれ複数の周方向溝が延び、これら複数の周方向溝により区画されてトレッドの周方向に陸部が延びている空気入りタイヤであって、
トレッドの中央に最も近い周方向溝が、方形状の横断面とされたメイングルーブ及び、このメイングルーブの内周側に形成された凹部を備え、
メイングルーブが他の周方向溝の深さの平均値以上の深さを有し、凹部が他の周方向溝の溝底からのトレッドゴムの厚さの1/5〜1/2の深さを有し、凹部の幅がメイングルーブの幅の1/3以下とされたことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 凹部がメイングルーブと平行に延びる溝状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 凹部がトレッドの周方向に不連続に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 凹部が円形の穴部とされたことを特徴とする請求項1又は3に記載の空気入りタイヤ。
- 凹部が底側ほど狭いテーパ状に形成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空気入りタイヤ。
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