JP4412910B2 - 低りん脱酸銅の鋳造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低りん脱酸銅の鋳造方法及びその方法によって製作した低りん脱酸銅鋳塊、並びに低りん脱酸銅製品に関し、特に、低りん脱酸銅のりん濃度規格を満足し、品質の良い低りん脱酸銅鋳塊を提供することができる低りん脱酸銅の鋳造方法及びその方法によって製作した低りん脱酸銅鋳塊、並びに低りん脱酸銅製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅系製品はその組成により純銅系と銅合金系に大別されており、純銅系はJIS規格により酸素濃度が低い無酸素銅(酸素濃度10ppm以下)、溶湯に酸素を含有させて不純物を酸化させて除去したタフピッチ銅(酸素濃度100〜600ppm程度)、及び銅溶湯をりんにより脱酸した低りん及び高りんの2種類のりん脱酸銅(りん濃度0.004〜0.015%未満及び0.015〜0.04%)の3種に分類される。
【0003】
このうち無酸素銅は最も高純度であり、熱伝導度や電気伝導度において最良のものであるが、真空溶解や雰囲気溶解をする必要があり、製造にあたり特殊な設備が必要になるため製造コストが高くなる。りん脱酸銅はりんが残存するため、無酸素銅に比べて電気伝導率が低下するが依然高いレベルであり、製造には無酸素銅のような特別な設備が不要であることから比較的安価に生産でき、また機械的な性質は無酸素銅と同等であるため熱交換器や電気・電子部品用として管や板に加工されて広く使用されている。銅溶湯に添加されたりんは溶湯中の酸素と化合することにより溶湯を脱酸し、脱酸により消費されなかったりんは溶湯中に残存し、鋳塊となる。銅中に残存するりんは少量でも銅の電気及び熱の伝導率を低下させるため、電気伝導率が無酸素銅の80〜85%程度に低下する。なお、りんの濃度が多いと、応力腐食割れの感受性が高くなるため、特に応力腐食割れを起こしたくない用途には低りん脱酸銅が、それ以外には高りん脱酸銅が通常用いられる。低りん脱酸銅はりんの濃度が高りん脱酸銅より少ないため、酸化によりりんが失われやすく、溶解鋳造の難易度は高りん脱酸銅より高いといえる。
【0004】
公知技術として知られている低りん脱酸銅の鋳造方法として、シャフト炉で溶解した電気銅の溶湯を保持炉に移送した後、保持炉にてCu−Pなどの中間合金によりりんを添加して、低りん脱酸銅のりん濃度規格である0.004質量%以上0.015質量%未満にしてから鋳型へ連続的に鋳造する方法がある。この方法によれば、りん濃度の規格値を満足する低りん脱酸銅の製造は可能であるが、以下に示す問題点が挙げられる。
【0005】
先ず、製造時における安全性の観点から、保持炉の扉を開けてりんを添加して攪拌するので高温作業となり作業員への負担が大きく危険である。
【0006】
次に、品質上の観点から、保持炉の扉を開けたときに大気が侵入し、溶湯の酸化や水素吸収が発生するおそれがある。
【0007】
更に、製造効率の観点から、添加されたCu−P中間合金は、Cuより密度が小さく溶湯上部に留まりやすく、保持炉溶湯のりん濃度を均一にするためには時間がかかる等の問題があり、特にりん濃度の低い低りん脱酸胴をこの方法で安定して作製することは難しい。
【0008】
従って、以上のように、鋳造工程において保持炉の扉を開け閉めすることなく、また、溶湯に添加したりん濃度を、比較的短時間の内に攪拌して脱酸する鋳造方法として、以下の鋳造方法が挙げられる。電気銅地金のみ、もしくは前記電気銅地金と純銅系屑を原料として、これらをシャフト炉にて還元性雰囲気で溶解した後、一旦保持炉へ送り、前記保持炉から、移湯樋を通して連続的に鋳型へ供給する際に、前記移湯樋で、りん濃度を調整しながら、前記溶湯中に不活性ガスを吹込んで前記溶湯を攪拌しながら脱酸することにより、前記溶湯中の酸素量を10ppmレベル以下まで低減させるりん含有低酸素銅鋳塊の連続鋳造法がある。(例えば、特許文献1参照)
【0009】
このようなりん含有低酸素銅鋳塊の連続鋳造方法は、シャフト炉で得た溶湯を保持炉で酸化処理(精錬)し、水素をはじめとする酸化性不純元素を除去してから移湯樋へ送り、前記移湯樋にて、りん濃度の調整および脱酸処理を行うことで、一層高品質のりん含有低酸素銅を得ることができる。また前記においては、最終的に得られるりん含有低酸素銅中のりん濃度を調整することによって、りん含有による障害を殆ど生じることなくその添加効果(特に高強度化)を有効に発揮させることができる。
【0010】
次に、このようなりん含有低酸素銅鋳塊の製造装置101は、図2に示すように、不純物含量の少ない電気銅地金もしくはこれと純銅系屑を原料102とし、これをシャフト炉103により還元性雰囲気で溶解した後、この溶湯を一旦保持炉104へ送り、前記保持炉104から移湯樋105を通じて連続的に鋳造装置106へ供給して鋳造を行う際に、移湯樋105上でりん濃度を調整すると共に、無酸素銅の酸素量レベルまでの脱酸を連続的に行ってりん含有低酸素銅が得られる様にしたものである。これにより、製造装置101は、前記シャフト炉103を用いたりん脱酸銅製造設備をうまく活用してりん含有低酸素銅を効率良く製造することを可能にしたものであり、移湯樋105上で無酸素銅の酸素レベルまで脱酸を行うことを最大の特徴とするものである。
【0011】
前記シャフト炉103を用いたりん脱酸銅製造工程では、脱酸剤107としてりんを添加することにより溶湯中の酸素はP25として除去される。このとき溶湯中にはりんの一部が混入するので、りんは脱酸剤として作用するだけではなく、強度向上のためのりん源としても有効に活用されるが、このりん脱酸法で達成することのできる酸素濃度はせいぜい20〜40ppmまでであり、無酸素銅に求められる10ppm以下の酸素量を達成することはできない。
【0012】
そこで、銅溶湯中内に不活性ガス108を吹き込み、この不活性ガス108の気泡内に溶湯中のCO2を拡散移行させてから該ガス気泡と共に溶湯表面に浮上させる方法を採用すれば、銅溶湯が移湯樋を移送する比較的短時間の内に酸素量を10ppm以下に低減し得ることが可能であり、又、この不活性ガス108の吹込み時には、回転ノズル109を用いて行い、その回転によって溶湯を攪拌して不活性ガス108を鋳湯樋105内の銅溶湯全体に均一に行き渡らせると共に、その回転によってノズル先端部で吹込みガス気泡を剪断して該気泡を微細化することによって、不活性ガス気泡の表面積拡大によってCO2捕捉効果が高められ、脱酸を一層効率よく進められることが可能であることが知られている。
【0013】
以上が、りん濃度を調整しながら、銅溶湯中に不活性ガスを吹込んで溶湯を攪拌しながら脱酸するりん含有低酸素銅鋳塊の連続鋳造法であるが、鋳造工程において保持炉の扉を開け閉めすることなく、また、溶湯に添加したりん濃度を、比較的短時間の内に攪拌して脱酸するその他の鋳造方法として、ガス燃焼方法による脱酸銅の連続鋳造方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
このようなガス燃焼方法による脱酸銅の連続鋳造法は、シャフト炉又は保持炉から連続鋳造装置までの溶銅を移送し、移送中の溶銅中に脱酸剤を添加する工程において、溶銅移送過程の前半部の保温又は加熱をガス燃焼式とし、後半部の保温又は加熱を電気加熱式とし、前半部に溶銅中の酸素量を連続測定しうる酸素測定用プローブを溶銅移送方向に複数個設置し、これらの間で溶銅移送方向に対し、酸素量が増加又は無変化の傾向を有するようにガス燃焼を調整し、電気加熱式移送過程の溶銅中に連続して脱酸剤を添加することを特徴とするものである。
【0015】
次に、このような脱酸銅鋳塊の製造装置201としては、図3に示すように、電気銅地金を原料202とし、これをシャフト炉203でブタンガス燃焼により溶解し、得られた溶銅はブタンガス燃焼による前半部移湯樋204を通じて電気加熱式保持炉205に移送される。又、前記前半部移湯樋204には、空気調整弁207を有するバーナー206が設けられ、前記バーナー206は前記空気調整弁207の開度を調整することにより、前記シャフト炉203から出る溶銅の酸素量を常に増加又は無変化の傾向を有するように、溶銅移送方向に配置された複数個の酸素測定用プローブ208により制御している。
【0016】
前半部移湯樋204を通じて電気加熱式保持炉205に移送された前記溶銅は、前記保持炉205で溶銅の温度、成分組成の調整を行い、電気加熱式の後半部移湯樋209を通じて鋳造装置211の直前に設けた鋳造樋210に移送し、連続鋳造が行われる。又、電気加熱式の後半移湯樋209内の溶銅中に、脱酸剤又は/及び合金成分元素を連続的に添加することにより、酸化物の析出やガス気泡の発生の少ない比重の高い脱酸銅鋳塊が連続的に鋳造することが可能であることが知られている。
【0017】
【特許文献1】
特開平6−212300号公報(段落番号〔0010〕、〔0011〕、〔0014〕、〔0015〕、及び図1)
【特許文献2】
特開昭59−13546号公報(5頁左下欄の8〜20行目、右下欄の1〜20行目、6頁右上の1〜7行目、9頁右上欄の5〜29、右下欄の1〜6行目、及び図3)
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
先ず、特開平6−212300号公報に開示された、りん含有低酸素銅鋳塊の連続鋳造法によれば、酸素濃度の低い脱酸銅の製造は可能であるが、以下に示す問題点が挙げられる。
【0019】
製造効率の観点から、シャフト炉で溶解した溶湯を、保持炉から移湯樋を通じて鋳型へ供給し連続鋳造を行う際に、前記移湯樋でりん濃度を調整した後、銅溶湯中の酸素量を10ppmレベル以下まで低減させるために、前記銅溶湯への不活性ガス吹込み作業が必要になる。また、この際には、回転ノズルを用いて、ノズルの回転により前記銅溶湯を攪拌して不活性ガスを樋内の銅溶湯全体に行き渡らせることにより脱酸処理を行うため、前記攪拌により銅溶湯中が酸化することで酸素量が増加し、酸素濃度にばらつきが生じる。従って、りんをその都度その都度添加する作業が新たな工程として必要になる。
【0020】
製造時における安全性の観点から、生産設備の構成上、移湯樋を流れる溶湯の深さは必然的に浅くなるため、不活性ガスの吹き込み及び溶湯の攪拌によっては、銅溶湯が飛散することで、作業員が火傷をする等、作業環境が悪化する。
【0021】
鋳塊の品質面の観点から、前記攪拌作業に伴ない溶湯が酸化され、水素ガスの吸収が起こりやすく、鋳造後のりん含有低酸素銅鋳塊の内部にピンホール欠陥や表面にブローホール欠陥が生じ、品質的に安定したものが得られない。
【0022】
2番目に、特開昭59−13546号公報に開示された、脱酸銅鋳塊の連続鋳造法によれば、酸素濃度の低い脱酸銅の製造は可能であるが、以下に示す問題点が挙げられる。
【0023】
製造費の観点から、原料として酸素量濃度の低い電気銅地金を使用するため、原料費が上がると共に、前半移湯樋内の酸素量を連続測定するために設けられた酸素測定プローブが高価で、且つ寿命が短いため、製造コストが高くなる。
【0024】
鋳塊の品質上の観点から、溶解鋳造作業中に酸素測定プローブが破損した場合は、交換するまではプローブ無しで、装置を稼働させるため、前半移湯樋内の銅溶湯の酸素量が変化し所定量から外れた場合、鋳造した鋳塊中にガス気泡が多く発生することに伴ない鋳塊の比重が低下し、品質的に安定した脱酸銅鋳塊が得られない。
【0025】
本発明は、前記の問題点に鑑み創案されたものであり、回転ノズル等の器具を用いた不活性ガスの吹き込みや攪拌、また、酸素測定用プローブを用いて銅溶湯中の酸素量の連続測定を必要とせずに、従来よりも、品質の良い低りん脱酸銅を提供することができる低りん脱酸銅の鋳造方法及びその方法によって製作した低りん脱酸銅鋳塊、並びに低りん脱酸銅製品を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造方法は、りん濃度0.015質量%以上0.04質量%以下のりん脱酸銅のスクラップからなる第1原料に、電気銅地金、無酸素銅のスクラップ、及びりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満のりん脱酸銅スクラップからなる群より選択された少なくとも1種からなる第2原料を、前記第1原料の配合量が25〜80質量%になるように配合してなる配合原料を、シャフト炉で溶解し、その溶湯を吹き込み及び攪拌装置による攪拌を行わずに誘導電流により生じる電磁力により攪拌して鋳型に鋳造することにより、りん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊を製造することを特徴とする低りん脱酸銅の鋳造方法とした(請求項1)。
【0027】
前記の構成によれば、第1原料と第2原料とを用いることにより、溶湯を吹き込み及び攪拌装置による攪拌をせずに誘導電流により生じる電磁力により攪拌し、鋳型に鋳造して、0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊を製造することができる。
【0028】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造方法は、りん濃度0.015質量%以上0.04質量%以下のりん脱酸銅のスクラップからなる第1原料に、電気銅地金、無酸素銅のスクラップ、及びりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満のりん脱酸銅スクラップからなる群より選択された少なくとも1種からなる第2原料を、前記第1原料の配合量が25〜80質量%になるように配合してなる配合原料をシャフト炉で溶解し溶湯とする第1工程と、前記第1工程の溶湯を移湯樋により前記シャフト炉から保持炉に移す第2工程と、前記第2工程の溶湯を前記保持炉に溜める第3工程と、前記第3工程の溶湯を前記保持炉から鋳型に分配樋を通じて注湯し、前記鋳型でりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊とする第4工程とを含み、前記第1工程乃至第4工程を還元性または不活性雰囲気で行い、かつ、前記第2工程乃至前記第4工程において吹き込み及び攪拌装置による攪拌を行わずに誘導電流により生じる電磁力により攪拌することを特徴とする低りん脱酸銅の鋳造方法とした(請求項2)。
【0029】
前記の構成によれば、第1原料と第2原料とを用いることにより、溶湯を吹き込み及び攪拌装置による攪拌をせずに誘導電流により生じる電磁力により攪拌し、鋳型に鋳造して、0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊を製造することができる。さらに、シャフト炉、移湯樋、保持炉、及び保持炉より下流側の全てが、還元性または不活性雰囲気下であるため、銅溶湯は酸化されにくい。
【0030】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造方法は、前記第4工程において、前記鋳型に注湯する直前の溶湯温度が1100〜1200℃である鋳造方法とした(請求項3)。
【0031】
前記の構成によれば、銅溶湯の分配樋への注湯温度が、銅の融点である1083°C以上であるため、銅溶湯が分配樋からノズルを通じて鋳型に注湯される際に、銅溶湯が凝固せず前記ノズルがつまることはない。また、前記注湯温度が、1200℃以下であるため、溶湯の酸化あるいは水素ガス吸収が生じにくい。
【0036】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造方法は、前記還元性または不活性雰囲気を、不活性ガス、還元性ガス、赤熱木炭カバー、及びフラックスカバーの少なくとも1つにより形成されることを特徴とする低りん脱酸銅の鋳造方法とした(請求項4)。
【0037】
前記の構成によれば、低りん脱酸銅鋳塊の鋳造工程は、全て還元性または不活性雰囲気下となるため、銅溶湯は酸化されにくい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造工程を示す図である。本発明の低りん脱酸銅鋳塊は、シャフト炉3、移湯樋6、保持炉7、及び連続鋳造装置9から構成される鋳造設備1により鋳造される。先ず、配合原料2を構成要素とする低りん脱酸銅、及び鋳造設備1における各部位について説明する。
【0039】
一般に、低りん脱酸銅は、押広性、曲げ性、絞り加工性、溶接性、耐食性、耐候性、及び電気及び熱の伝導性がよいため、用途としては、熱交換器用、電気・電子部品用、化学工業用、ガス用等に使用可能である。また、りん濃度が、0.004質量%以上0.015質量%未満であり、組成としては、銅及びりんの濃度の合計値が99.95質量%以上であること、即ち、不純物の濃度が合計で0.05質量%以下であることが望ましい。なお、不純物とは、Fe、Al、Ni、Co、Ag、Pb、Si、Mg、Sn、Zn、Cr、Ti、Zr、As、Sb、Se、Te、S等の元素であり、電気銅地金、スクラップなどにより不可避的に混入される元素である。
【0040】
銅にりんが添加されると電気抵抗が大きくなる分、電気伝導度が下がり、又、応力腐食割れが発生しやすくなる。特に、管、板、棒等を用途とする材料には、応力腐食割れが発生しにくい材質であることが要求されるため、りん濃度は低いことが望ましい。
【0041】
高周波炉であるシャフト炉3は、炉大径上が円筒竪型の溶解炉で、炉の底部にガスバーナー4が放射状に取付けられ、原料装入口5から投入された配合原料2は、下方に進むにしたがって加熱され、炉の底部より溶銅(以下、溶湯と称する。)が取り出される。前記ガスバーナー4の燃料としては、天然ガス、ブタン、プロパンなどが用いられ、これらのガスと空気との混合比を特定の値に制御することにより、溶湯を酸化させないように、且つ、溶湯に水素が吸収されないように、生成する燃焼ガスを還元性に保っている。
【0042】
移湯樋6は、シャフト炉3で溶解された前記配合原料2の溶湯を保持炉7に移すための樋であり、前記シャフト炉3で溶解された溶湯が移送の際に、酸化されないように、前記シャフト炉3と同様な還元性の燃焼炎、不活性ガス(Ar、N2)等により被覆可能な構造を有するものである。また、前記構造による被覆にくわえ、あるいは代えて、移湯樋6を流れる溶湯を赤熱木炭や炭素粒子で覆った構造とすることも可能である。
【0043】
低周波炉である保持炉7は、前記シャフト炉3より供給された溶湯のりん濃度の均一化、及び溶湯の昇温を行うための炉である。前記シャフト炉3により前記移湯樋6を通じて保持炉7に供給される溶湯は、りん濃度が場所により異なるため、保時炉7で均一化することが必要である。また、保持炉7は、炉体の下部に設けられたインダクタ8の誘導電流により保持炉7内の溶湯を加熱し、また、前記誘導電流により生じる電磁力により保持炉7内の溶湯を攪拌して、溶湯中のりん濃度を均一にするための炉である。
【0044】
連続鋳造装置9は、鋳造用樋10、分配炉11、ノズル12、鋳型13から構成され、溶湯を、連続鋳造により鋳塊14に成形する装置である。鋳造用樋10は前記保持炉7内の溶湯を受けるための樋、分配炉11は前記鋳造樋10中の溶湯を分配するための樋、また、ノズル12は前記分配炉11で分配された溶湯を鋳型13に注湯するための黒鉛製のノズル、更にまた、鋳型13は前記ノズル12から注湯される溶湯を鋳塊に成形する型である。なお、鋳造用樋10、分配炉11には、前記保持炉7から移送される溶湯が酸化されないように前記移湯樋6と同様な酸化防止策が、また、溶湯が水素を吸収しないように加熱乾燥及び木炭の赤熱が、それぞれ施されている。
【0045】
次に、本発明の低りん脱酸銅鋳塊の鋳造方法について図1を用いて説明する。
本発明の低りん脱酸銅鋳塊は、りん濃度0.004質量%以上〜0.015質量%未満を有する低りん脱酸銅C1201の鋳塊であり、りん濃度0.015質量%以上〜0.04質量%以下を有する高りん脱酸銅C1220のりん濃度を、その他の原料で薄めることにより製造される。
【0046】
製造における第1工程として、先ず、りん濃度0.015質量%以上0.04質量%以下のりん脱酸銅スクラップからなる第1原料と、電気銅地金、無酸素銅のスクラップ、及びりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満のりん脱酸銅のスクラップから選択された少なくとも1種からなる第2原料を配合して、低りん脱酸銅鋳塊の配合原料2とした後、シャフト炉3で溶解し溶湯とする。
【0047】
また、原料の配合割合は、C1220のスクラップを25〜80質量%とし、残りを電気銅地金、無酸素銅スクラップ、及びC1201のスクラップの少なくとも1種または2種以上とし、目標配合りん濃度となるように配合比率を決定すれば良い。また、本発明の溶解鋳造法においても、前記原料を溶解後、若干のりんが酸化により失われるため、原料の配合時において目標とするりん濃度に対して、りんを最大で30質量%多めにしておくことが望ましい。
【0048】
例えば、りん濃度が0.01質量%になるように配合した原料を溶解鋳造し、製作された鋳塊のりん濃度が0.0090質量%になる場合は、原料のりんが10質量%減少していることから、原料においては目標組成より10質量%程度大目にりんを配合する。なお、原料から鋳塊までのりんの減少率は溶解鋳造工程の雰囲気管理により影響を受け、溶湯が空気に触れる機会が少ないほどりんの減少率が小さくなることも考慮にいれる。
【0049】
なお、高りん脱酸銅C1220、低りん脱酸銅C1201、及び無酸素銅のそれぞれのスクラップとは、前記おのおのの鋳塊、熱間加工材、冷間加工材などより発生する製品にならなかった部分、鋳塊、熱間加工材、冷間加工材の製作工程で発生する切り落とし材や事故品(疵などによりその後の工程に進めないもの)などの材料である。
【0050】
前記スクラップの組成はJISに規定されている通りであるが、電気及び熱伝導性、加工性(曲げ加工など)、加工熱処理条件の安全性を確保するために、Fe、Ni、Pb、Zn、Al、Bi、Se、Te、Sn、S、Sb、及びAsなどの不純物元素は合計で0.05質量%以下であることが望ましい。なお、原料として用いる前にスクラップより採取した試料を何チャージか分析して不純物の濃度を確認しておけばい。また、スクラップの形状は、鋳塊切断材のような円柱状あるいは角柱状、または板状、棒、管状、線状など特に制限は無い。
【0051】
電気銅地金は、JISH2121に規定されている成分のものを用いると良い。電気銅はCuイオンの溶解した電解液よりCuを陰極に析出させることにより製作されるため、その形状は通常厚さ5〜20mmの矩形状(一辺1〜2m程度)であるが、シャフト炉に装入する場合は、そのままの形状あるいは切断して入れることも可能である。
【0052】
本発明において、シャフト炉内還元性に保持した場合には、溶湯は酸化されず、また、溶湯に水素が吸収されないため、品質に優れた低りん脱酸銅を提供することができる。
【0053】
配合原料2がシャフト炉3に装入されると、シャフト炉3の底部では溶湯となるが、この状態では溶銅中におけるりんの濃度は、濃い部分と薄い部分が存在し、りんの濃度は均一ではない。従って、前記溶湯を鋳造する前に、他の炉に一旦移送して、前記溶湯を攪拌することにより、溶湯中のりんの濃度を均一にすることが必要となる。
【0054】
そこで、前記シャフト炉3から出湯された配合原料2すなわち溶湯は、移湯樋6を通じて保持炉7へ移送される。前記シャフト炉3で溶解された溶湯が移湯樋6で酸化されないように、移湯樋6には前記シャフト炉3と同様にガスバーナー4を溶湯の流れ方向に沿って複数設け、還元性の燃焼保炎、不活性ガス(Ar、N2)などにより被覆可能な構造としておく。また、このようなガスによる被覆に加え、あるいは代替として、移湯樋6を流れる溶湯を赤熱木炭や炭素粒子で覆うことも可能である。以上のような被覆において、溶湯が水素を吸収しないように、還元炎の雰囲気管理、不活性ガスの露点管理、木炭の十分な赤熱、移湯樋6そのものの十分な加熱などの処置が施される。
【0055】
このように本発明において、移湯樋6を還元性雰囲気とすることで、溶湯は酸化されず、また、溶湯に水素が吸収されないため、品質に優れた低りん脱酸銅を提供することができる。
【0056】
次に、前記移湯樋6から移送された溶湯は、保持炉7に移送される。保持炉7内の溶湯は、低周波誘導加熱により攪拌され、前記溶湯中の脱酸及びりんの希釈が行われる。保持炉7内の溶湯は、保持炉7の下部に設けられたインダクタ8の誘導電流により、鋳造温度より20〜50°C程度高い温度に昇温され加熱される。また、インダクタ8の誘導電流により生じる電磁力により攪拌されて溶湯中のりん濃度が均一化される。なお、この時、必要に応じて保持炉7内の溶湯より試料を採取して、りん、酸素、及び水素などの濃度の調査を行うことも可能である。尚、保持炉7においても、溶湯の酸化、すなわちりん濃度の減少を防止する必要があることより、保持炉7中における溶湯の加熱及び攪拌は、溶湯表面が赤熱木炭のカバーで覆われた還元性雰囲気で行われるものとする。
【0057】
このように本発明において、保持炉7は誘導電流により加熱される誘導炉であることから、攪拌装置を使用せずに溶湯は攪拌されるため、低りん脱酸銅の製造コストが安くなる。また、攪拌は密閉された保持炉内にて行われるため、溶湯が外部に飛散することがなく、鋳造作業が安全であり環境改善につながる。更にまた、保持炉7は赤熱木炭を被覆しているため、溶湯からの熱放射が押さえられ、炉の操業効率の向上にもつながる。
【0058】
次に、保持炉7から出湯された溶湯は、最終的に連続鋳造装置9に供給される。なお、連続鋳造鋳造装置9は、鋳造用樋10、分配樋11、ノズル12、鋳型13から構成され、前記溶湯を、連続鋳造により鋳塊14に成形する装置である。鋳塊14の成形にあたっては、前記保持炉7から供給される溶湯は、長さ1〜3m程度の鋳造用樋10を介して分配樋11に移送され、前記分配樋10から黒鉛などのノズル12を介して、鋳造温度1100〜1200°Cの範囲で、鋳型13に注湯される。尚、本発明における鋳造温度とは、鋳型13上に設けられた分配樋11で測定した鋳造温度である。
【0059】
このように本発明において、鋳造温度を1100〜1200°Cとすることで、溶湯が凝固することがないため、鋳造中に溶湯がノズルにつまる等の不具合がなく鋳造後の低りん脱酸銅は品質の良いものが得られる。また、溶湯の酸化あるいは水素ガス吸収が生じ難いため、鋳塊の割れ、熱間加工割れ、水素脆性などの問題は生じ難くい品質的に優れた低りん脱酸銅鋳塊を提供することができる。
【0060】
また、前記保持炉7の溶湯を鋳型13に注湯する際には、鋳造用樋10及び分配樋11において、溶湯が酸化されないように、前記シャフト炉3と前記保持炉7を繋ぐ前記移湯樋6と同様な酸化防止対策を行った状態で注湯する。また同時に、前記鋳造用樋10及び前記分配樋11において、溶湯が水素を吸収しないように、前記鋳造用樋10及び前記分配樋11を、加熱乾燥、木炭の赤熱でカバーした状態で注湯する。さらにまた、溶湯の温度低下を押さえるために、耐火物のカバーを鋳造用樋10及び分配樋11にそれぞれ設けることも可能である。
【0061】
このように本発明において、鋳造用樋10及び分配樋11を還元性または不活性の状態にすることで、品質に優れた低りん脱酸銅を提供することができる。
【0062】
【実施例】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0063】
(第1の実施例)
C1220のスクラップ(りん濃度0.02質量%)からなる第1原料に、電気銅地金(りん濃度0質量%)、無酸素銅のスクラップ(りん濃度0質量%)、及びC1201のスクラップ(りん濃度0.01質量%)からなる第2原料を配合した配合原料をシャフト炉で溶解後、保持炉(誘導炉)に15tonの溶湯を受け、前記保持炉で昇温後溶解鋳造を行う本発明の特許請求範囲である鋳造法(実施例1〜7)と、これに対し、電気銅地金(りん濃度0質量%)のみを原料とし、シャフト炉で溶解後、保持炉で昇温後、鋳造用樋においてCu−15質量%P中間合金(粒状)を所定量添加しながら鋳造を行う本発明の請求範囲外である鋳造法(比較例1〜2)により鋳塊をそれぞれ鋳造した。そして、各鋳塊について、鋳塊上下部におけるりん濃度が所定値内にあるか否かの評価を行った結果を表1に示す。なお、表1において、りん濃度と記載されているのは、実施例1〜7については、配合原料のりん濃度より算出した原料全体におけるりん濃度であり、比較例1,2については、原料である電気銅地金の量と前記したCu−15質量%P中間合金の添加量から算出したりん濃度である。
【0064】
さらにまた、実施例1〜7と、比較例1〜2のそれぞれの鋳塊上下部における水素濃度と酸素濃度の確認、及び鋳造後の鋳塊における欠陥の有無の確認を行った結果を表2に示す。
【0065】
尚、りん濃度の目標値は、0.007〜0.012質量%とし、鋳塊の鋳造にあたっては、実施例及び比較例共に、溶湯の酸化防止策として、保持炉内の溶湯表面は溶湯表面が露出しない程度の厚さの赤熱木炭で被覆し、更に乾燥窒素ガスを流通させている。溶湯は、1140〜1180°Cの鋳造温度で鋳型に注湯され、直径300mm、長さ5000mmの寸法を有する鋳塊が、1回当たりの連続鋳造工程にて5本鋳造され、分析にあたっては、前記5本のうち中央の鋳塊を試料として使用した。
【0066】
表1における、鋳塊中のりん濃度分析値は、それぞれ左側が鋳塊の上部(鋳造後期に対応)、右側が鋳塊の下部(鋳造初期に対応)における分析結果である。また、りん濃度評価の欄における「○」とは、鋳塊上下部が共にりん濃度の目標値である0.007〜0.012質量%内であったことを示し、「×」とは、鋳造上下部のいずれか一方がりん濃度の目標値である0.007〜0.012質量%の範囲外であったことを示す。次に、表2における、水素及び酸素濃度の測定値は、それぞれ左側が鋳塊の上部、右側が鋳塊の下部における測定結果であり、また、評価の欄の「○」とは鋳塊に欠損無がなく良品であったことを示し、評価の欄の「×」とは鋳塊に欠損が有り不良品であったことを示す。
【0067】
【表1】
Figure 0004412910
【0068】
【表2】
Figure 0004412910
【0069】
表1の結果より、本発明の実施例1〜7のいずれもが、りん濃度の規定値である0.004質量%以上0.015質量%未満にあり、且つ、目標とするりん濃度0.008〜0.012質量%にほぼ近い組成の鋳塊が得られる結果となった。また、鋳塊上下部におけるりん濃度のばらつきが、最大でも0.002質量%程度であり、鋳塊においては、りん濃度に対する鋳造後の鋳塊中のりん濃度、すなわちりんの歩留まりは、実施例1が71〜86%、実施例2が80〜91%、実施例3が80〜90%、実施例4が80〜90%、実施例5が80〜90%、実施例6が78〜89%、実施例7が80〜90%と高い結果となった。なお、実施例1〜7のいずれの鋳塊においても、鋳塊の上部が下部よりりんの濃度が少ないが、これは鋳造時間(約1時間)の間に、保持炉内の溶湯がわずかに酸化されていくことによる影響と推察される。
【0070】
比較例1より、配合原料が本発明の請求範囲と異なる場合は、鋳造後の鋳塊上部におけるりん濃度は0.003質量%となり、りん濃度の規定値である0.004質量%以上0.015質量%未満を満足しない。また、鋳塊上下部におけるりん濃度の差は0.007質量%(上部0.003質量%、下部0.010質量%)であり、部位に応じてりん濃度の差が大きな鋳塊となることから、所定のりん濃度を有する鋳塊を、目的の寸法で得ることは難しい。更にまた、鋳塊におけるりん濃度の歩留まりは、20〜67%となり、実施例1〜7に比べて小さい鋳塊となる。
【0071】
比較例2より、配合原料が本発明の請求範囲と異なる場合は、鋳造後の鋳塊下部におけるりん濃度は0.017質量%となり、りん濃度の規定値である0.004質量%以上0.015質量%を満足しない。また、鋳塊上下部におけるりん濃度の差は0.009質量%(上部0.008質量%、下部0.017質量%)であり、部位に応じてりん濃度の差が大きな鋳塊となることから、所定のりん濃度を有する鋳塊を、目的の寸法で得ることは難しい。更にまた、鋳塊におけるりん濃度の歩留まりは、40〜85%となり、実施例1〜7に比べて小さい鋳塊となる。
【0072】
表2の結果より、本発明の実施例1〜7のいずれもが、鋳塊上部と下部では、水素濃度及び酸素濃度が安定しており、また、鋳塊にはピンホールやブローホール等の欠陥は見られない。
【0073】
比較例1より、鋳塊上下部における水素濃度及び酸素濃度の差は、それぞれ0.6質量ppm(上部0.6質量ppm、下部1.2質量ppm)、106質量ppm(上部156質量ppm、下部50質量ppm)でありばらつきが大きい。比較例2より、鋳塊上下部における水素及び酸素濃度の差は、それぞれ1.6質量ppm(上部1.0質量ppm、下部2.6質量ppm)、55質量ppm(上部64質量ppm、下部9質量ppm)でありばらつきが大きい。また、鋳塊底部において水素によるブローホールが発生し鋳塊欠陥となる。
【0074】
鋳造方法が、本発明の請求範囲と異なる場合は、鋳造後の鋳塊中のりん濃度がが規定値である0.004〜0.015質量%を満足せず、鋳造後の鋳塊上下部におけるりん濃度、水素濃度、及び酸素濃度に大きな差が生じ、また、鋳塊底部に水素によるブローホールが発生し鋳塊欠陥となる。
【0075】
(第2の実施例)
次に、第1の実施例における実施例1〜7、及び比較例1、2の鋳塊より長さ500mmのビレットを切断し、これらのビレットの、熱管押出による割れの有無、焼鈍による膨れの有無、水素脆性化の有無を確認した。なお、比較例1の鋳塊については、りん濃度の規格値を外れた上側を除く鋳塊下側を、比較例2の鋳塊については、ブローホール発生部を除く鋳塊上側を、それぞれ使用した。
【0076】
切断後のビレットを、850℃に加熱後熱間押出した。押出し後、圧延、抽伸し、誘導過熱により連続焼鈍し、その後、更に抽伸して外径9mm、肉厚0.5mmの平滑管レベルワウンドコイルとした。このレベルワウンドコイルをローラーハース炉で連続的に焼鈍した。焼鈍されたレベルワウンドコイルより100m毎に長さ0.3mの管を10本採取して膨れの有無を目視観察した。さらに、膨れの無いものは水素気流中で0.5時間加熱した後冷却し、断面を光学顕微鏡により観察し、水素脆化の有無を確認した。確認結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
Figure 0004412910
【0078】
表3の結果より、本発明の実施例1〜7のいずれもが、水素濃度及び酸素濃度が規定値内を満足するため、熱間押出による割れの問題は発生せず、また、押出材より製作した平滑管においても焼鈍による膨れ及び水素脆性とも発生しなかった。
【0079】
比較例1の鋳塊より製作した平滑管は酸素の濃度が多いため、水素気流中で加熱すると、粒界に水素と酸素との化合により連続したポアが形成され、水素脆性が発生した。比較例2の鋳塊は、水素濃度が多いため、熱管押出により一部に割れが発生した。また、熱管押出材の割れのない部分を選んでレベルワウンドコイルを製作し、焼鈍を行ったところ膨れが発生した。膨れ部をはがして観察したところ、酸化されていないことからこの膨れは水素が析出してできた膨れと推測される。
【0080】
【発明の効果】
本発明に係る低りん脱酸銅の鋳造方法は、りん濃度0.015質量%以上0.04質量%以下のりん脱酸銅のスクラップからなる第1原料に、電気銅地金、無酸素銅のスクラップ、及びりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満のりん脱酸銅のスクラップからなる少なくとも1種からなる第2原料を配合するため、鋳造後の低りん脱酸銅鋳塊のりん濃度は、規定値である0.004質量%以上0.015質量%未満になり、りん濃度の規定値を満足する低りん脱酸銅鋳塊を得ることができた。
【0081】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造方法は、前記配合原料をシャフト炉で溶解し溶湯とする第1工程と、前記第1工程の溶湯を移湯樋により前記シャフト炉から保持炉に移す第2工程と、前記第2工程の溶湯を前記保持炉に溜める第3工程と、前記第3工程の溶湯を前記保持炉から鋳型に分配樋を通じて注湯し、前記鋳型でりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊とする第4工程とを含み、前記第1工程乃至第4工程を還元性または不活性雰囲気で行うため、シャフト炉、移湯樋、保持炉、及び保持炉より下流側の全てが、還元性または不活性雰囲気下となり、銅溶湯は酸化されず、また、溶湯に水素が吸収されないため、品質に優れた低りん脱酸銅を提供することができた。
【0082】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の製造方法は、溶湯の注湯温度を1100〜1200℃とすることにより、溶湯の凝固により前記ノズルがつまることがなく、また、溶湯の酸化あるいは水素ガス吸収が生じ難いため、鋳塊の割れ、熱間加工割れ、水素脆性などの問題は生じ難くい品質的に優れた低りん脱酸銅鋳塊を提供することができた。
【0083】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の水素濃度は2質量ppm以下であるため、ブローホール、ボアなどの表面欠陥や、ピンホールなどの内部欠陥が生じ難い品質的に優れた低りん脱酸銅鋳塊を提供することができた。また、酸素濃度が60ppm以下であるため、熱間加工においても加工性が低下することなく、ろう付け時の水素脆性が発生しにくい品質的に優れた低りん脱酸銅鋳塊を提供することができた。
【0084】
本発明に係る低りん脱酸銅製品の水素濃度は、2質量ppm以下であるため、熱間加工時における粒界割れ、熱処理工程の焼鈍時の膨れなどが発生しにくい品質的に優れた低りん脱酸銅製品を提供することができた。また、酸素濃度が60ppm以下であるため、熱間加工性が低下することなく、ろう付け時の水素脆性が発生しにくい品質的に優れた低りん脱酸銅製品を提供することができた。
【0085】
本発明に係る低りん脱酸銅鋳塊の製造方法は、前記還元性または不活性雰囲気が、不活性ガス、還元性ガス、赤熱木炭カバー、及びフラックスカバーの少なくとも1つにより形成されるため、溶湯は酸化されず、また、溶湯に水素が吸収されないため、品質に優れた低りん脱酸銅を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る低りん脱酸銅鋳塊の鋳造工程を示す図面である。
【図2】従来の低りん脱酸銅鋳塊の鋳造工程を示す図面である。
【図3】従来の低りん脱酸銅鋳塊の鋳造工程を示す図面である。
【符号の説明】
1.鋳造設備
2.配合原料
3.シャフト炉
4.ガスバーナー
5.原料装入口
6.移湯樋
7.保持炉
8.インダクタ
9.連続鋳造装置
10.鋳造用樋
11.分配樋
12.ノズル
13.鋳型
14.鋳塊

Claims (4)

  1. りん濃度0.015質量%以上0.04質量%以下のりん脱酸銅のスクラップからなる第1原料に、電気銅地金、無酸素銅のスクラップ、及びりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満のりん脱酸銅スクラップからなる群より選択された少なくとも1種からなる第2原料を、前記第1原料の配合量が25〜80質量%になるように配合してなる配合原料を、シャフト炉で溶解し、その溶湯を吹き込み及び攪拌装置による攪拌を行わずに誘導電流により生じる電磁力により攪拌して鋳型に鋳造することにより、りん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊を製造することを特徴とする低りん脱酸銅の鋳造方法。
  2. りん濃度0.015質量%以上0.04質量%以下のりん脱酸銅のスクラップからなる第1原料に、電気銅地金、無酸素銅のスクラップ、及びりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満のりん脱酸銅スクラップからなる群より選択された少なくとも1種からなる第2原料を、前記第1原料の配合量が25〜80質量%になるように配合してなる配合原料をシャフト炉で溶解し溶湯とする第1工程と、
    前記第1工程の溶湯を移湯樋により前記シャフト炉から保持炉に移す第2工程と、
    前記第2工程の溶湯を前記保持炉に溜める第3工程と、
    前記第3工程の溶湯を前記保持炉から鋳型に分配樋を通じて注湯し、前記鋳型でりん濃度0.004質量%以上0.015質量%未満の鋳塊とする第4工程とを含み、
    前記第1工程乃至第4工程を還元性または不活性雰囲気で行い、かつ、前記第2工程乃至前記第4工程において吹き込み及び攪拌装置による攪拌を行わずに誘導電流により生じる電磁力により攪拌することを特徴とする低りん脱酸銅の鋳造方法。
  3. 前記第4工程において、前記鋳型に注湯する直前の溶湯温度が1100〜1200℃であることを特徴とする請求項2に記載の低りん脱酸銅の鋳造方法。
  4. 前記還元性または不活性雰囲気は、還元性ガス、不活性ガス、赤熱木炭カバー、及びフラックスカバーの少なくとも1つにより形成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の低りん脱酸銅の鋳造方法。
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