JP4412773B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた遮音性能を有する合わせガラス用中間膜及びそれを用いてなる合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
合わせガラスは、ガラス板に中間膜が挟着されてなるものである。合わせガラスは、衝撃を受けて破損しても、ガラスの破片が飛び散らず安全であるので、車両、航空機、建築物等の窓ガラス等に広く使用されている。
【0003】
このような合わせガラスで使用される中間膜のうち、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜は、ガラスとの優れた接着性、強靭な引っ張り強度及び高い透明性を兼ね備えており、この中間膜を用いて得られる合わせガラスは、特に、車両の窓ガラスに好適に用いられている。
【0004】
一般に、遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示され、その透過損失量は、JIS A 4708では、図1中に実線で示すように、500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。ところで、ガラス板の遮音性は、図1中に波線で示すように、2000Hzを中心とする周波数領域ではコインシデンス効果により著しく低下する。
図1中の波線の谷部がコインシデンス効果による遮音性能の低下に相当し、所定の遮音性能を保持しないことを示す。
【0005】
ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射したとき、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス面上を横波が伝播して横波と入射音とが共鳴し、その結果音の透過が起こる現象をいう。
従来の合わせガラスは、破片の飛散防止の面では優れているものの、遮音性の面では、2000Hzを中心とする周波数領域において、やはりコインシデンス効果による遮音性能の低下が避けられず、この点の改善が求められている。
【0006】
一方、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では他の周波数領域に比べ非常に高い感度を示すことが知られており、コインシデンス効果による遮音性能の落ち込みを解消することが、防音性にとって極めて重要であることが判る。
合わせガラスの遮音性能を向上するには、上記の如きコインシデンス効果を緩和して、コインシデンス効果によって生じる透過損失の極小部(以下、この極小部の透過損失をTL値という。図1参照)の低下を防ぐ必要がある。
【0007】
従来TL値の低下を防ぐ手段として、合わせガラスの質量の増大、ガラスの複層化、ガラス面積の細分化、ガラス板支持手段の改善等、種々の方策が提案されている。しかし、これらはいずれも充分に満足できる効果をもたらさない上に、コスト的にも実用的に採用するには妥当な価格になっていない。
【0008】
遮音性能に対する要求は最近ますます高まり、例えば建築用窓ガラスでは常温付近で優れた遮音性が要求される。即ち、温度に対して透過損失(TL値)をプロットして求めた、遮音性能が最も優れている温度(遮音性能最大温度=TLmax温度)が常温付近であり、かつ、遮音性能の最大値(遮音性能最大値=TLmax値)自体が大きいという、優れた遮音性が要求されている。
【0009】
自動車においても同様に、高速走行時の風切り音及びエンジン部からの振動等、遮音性が要求されつつある箇所は多くなってきている。
また、実際に使用される場合を考慮すると、これら合わせガラスは低温域から高温域までの幅広い環境温度の変化にさらされるため、室温付近のみならず広い温度範囲での良好な遮音性能が要求される。
【0010】
従来は、遮音性能を広温度範囲にて良好にするため、複数層を積層させる方法が採られてきた。積層させることにより、1つの層の遮音性能の温度依存性と他の層の遮音性能の温度依存性とが重なり、積層膜が示す遮音性能は広温度範囲にて良好になる。
【0011】
特開平4−254444号公報には、アセタール基の炭素数が6〜10であるポリビニルアセタールと可塑剤とからなる膜と、アセタール基の炭素数が1〜4であるポリビニルアセタールと可塑剤とからなる膜を積層した中間膜が提案されている。この中間膜では、確かに遮音性能の改善効果は認められ、かつ、温度変化によって遮音性能が大きく変動しない。
【0012】
上述の方法では、より低温側の遮音性能を確保するためには、一つの単層の遮音性能を低温側にシフトさせる手段が採られている。具体的には可塑剤添加部数を増やす等により、層のガラス転移温度をより低温にしている。
【0013】
しかし、層のガラス転移温度が低温になると、層は非常に軟らかくなるため、この層を積層した中間膜は、機械的強度が低下する。即ち、合わせガラスにした場合、合わせガラスの耐貫通強度、耐衝撃性が低下する危険性がある。
【0014】
機械的強度を改善する方法として、炭酸カルシウム等の充填剤を添加する方法が考えられるが、これらの充填剤を添加すると膜の透明性が損なわれ、合わせガラス用中間膜として使用できない。また、積層膜間にポリエステルフィルムを挟む手段も採りうるが、この場合、透明性は損なわれないが、成形性が劣るうえに、弾性が大きく異なる膜同士を積層するため、界面での光学歪みが心配される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、透明性、耐光性、耐候性、耐衝撃性、接着性等の合わせガラスに必要な基本性能を損わず、合わせガラス用中間膜の成形性及び取扱性を損なうこともなく、広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮でき、かつ、低温側の遮音性能が向上しても、機械的強度が低下しない合わせガラス用中間膜及びそれを用いてなる合わせガラスを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂層(A)及び前記樹脂層(A)よりもガラス転移温度の低い樹脂層(B)の交互積層体からなる合わせガラス用中間膜であって、前記樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、いずれもポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなり、かつ、前記樹脂層(B)に、層状珪酸塩が微細に分散されてなり、前記層状珪酸塩は、透過型電子顕微鏡により、任意の位置で100μm×100μmの範囲を観察したときに観察される1μm以上の粒子数が100個以下であるように前記樹脂層(B)中に分散していることを特徴とする合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0017】
本発明の合わせガラス用中間膜は、樹脂層(A)及び樹脂層(B)の交互積層体からなり、上記樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、いずれもポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなる。
上記樹脂層(A)及び樹脂層(B)に用いられるポリビニルアセタール樹脂を得る方法としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)を熱水に溶解し、得られた水溶液を10〜20℃に保持した後、アルデヒドと触媒を加えてアセタール化反応を進行させ、次いで上記反応液を70℃に昇温して保持した後、中和、水洗及び乾燥の諸工程を経てポリビニルアセタール樹脂粉末を得る方法が挙げられる。
【0018】
上記ポリビニルアセタール樹脂の原料であるPVAとしては特に限定されないが、平均重合度500〜5000のものが好ましい。500未満であると、得られる樹脂層及び合わせガラス用中間膜の強度が低下することにより、これを用いた合わせガラスの耐貫通強度や衝撃エネルギー吸収性が低下することがある。5000を超えると、樹脂層及び合わせガラス用中間膜の溶融粘度が高すぎて、製膜の段階で使用しにくくなることがあり、しかも樹脂層及び合わせガラス用中間膜の強度が高くなりすぎて、合わせガラスとした時の耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性が不充分となることがある。より好ましくは、1000〜3000である。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂の原料であるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられる。
【0020】
上記ポリビニルアセタール樹脂としては特に限定されず、例えば、PVAとホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(PVB)等が挙げられる。なかでも、PVBが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂として、PVBを用いることにより、得られる樹脂層及び合わせガラス用中間膜の透明性、耐候性、ガラスに対する接着性等がより優れたものとなる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0021】
本発明において、樹脂層(A)又は樹脂層(B)の少なくとも一方に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、アセチル基量が8〜30mol%であることが好ましい。8mol%未満であると、後述する可塑剤との相溶性が悪くなり、得られる樹脂層のガラス転移温度が充分に低下せず、低温側における遮音性能が充分に向上しないことがある。アセチル基量が30mol%を超えるポリビニルアセタール樹脂を得ようとすると、PVAとアルデヒドとの反応率が著しく低下するので好ましくない。より好ましくは10〜24mol%である。
【0022】
本発明で使用されるポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度が40mol%以上であることが好ましい。アセタール化度が40mol%未満であると、樹脂と可塑剤との相溶性が悪くなり、遮音性能を発揮したり、合わせガラスの耐貫通性確保に必要な量の可塑剤の添加が困難になる。より好ましくは、アセタール化度が50mol%以上である。
【0023】
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、一塩基酸エステル系、多塩基酸エステル系等の有機系可塑剤;有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられる。
【0024】
上記一塩基酸エステル系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール類と、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキシル酸等の有機酸との反応によって得られるグリコール系エステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)、トリエチレングリコール−ジ−カプリレート、トリエチレングリコール−ジ−n−オクトエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が好ましい。より好ましくは、3GH、3GO、3G7等である。
【0025】
上記多塩基酸エステル系可塑剤としては特に限定されず、例えば、炭素数4〜8の直鎖状又は分岐状アルコールと、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の有機酸との反応によって得られるエステル等が挙げられる。なかでも、ジヘキシルアジペート、ジベンジルフタレート等が好ましい。上記リン酸系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルフォスフェート、イソデシルフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0026】
上記可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、樹脂層(A)に用いられる可塑剤と、樹脂層(B)に用いられる可塑剤とは、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0027】
上記可塑剤の添加量としては特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対し、30〜70重量部であることが好ましい。30重量部未満では、ポリビニルアセタール樹脂の可塑化が不充分となることがあり、70重量部を超えると、樹脂層及び合わせガラス用中間膜の機械的強度が低減するので耐衝撃性が劣り、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力が低下することがある。
【0028】
本発明において用いる上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤との組み合わせとしては、ポリビニルアセタール樹脂としてPVB樹脂を用い、可塑剤として3GH、3GO及び3G7からなる群より選択される少なくとも1種を用いる組み合わせが好ましい。
【0029】
本発明の合わせガラス用中間膜に使用される樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、少なくとも一方の樹脂層に、層状珪酸塩が微細に分散されている。
本発明において使用される層状珪酸塩とは、厚さが約1nmの微細な薄片状結晶がイオン結合により凝集してなる無機鉱物であり、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物である。層状珪酸塩の凝集構造を化学的又は物理的な手段により離砕し、有機高分子中に薄片を微細に分散させることにより、高分子材料の機械的性質、熱特性、ガスバリヤー性等の性質を改善することができる。
【0030】
上記層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;バーミキュライト、ハロイサイト、膨張性マイカ等が挙げられる。本発明においては、天然のものでも合成されたものでもいずれも好ましく用いることができる。
【0031】
本発明において使用される層状珪酸塩の形状としては、平均長さが0.01〜3μm、厚さが0.001〜1μm、アスペクト比が20〜500のものが好ましく、なかでも、平均長さが0.05〜2μm、厚さが0.01〜0.5μm、アスペクト比が50〜200のものがより好ましい。
【0032】
本発明において使用される層状珪酸塩には、前もって有機処理された有機化層状珪酸塩も含まれ、本発明において、層状珪酸塩としては有機化層状珪酸塩を使用するのが好ましい。
本明細書において、有機化層状珪酸塩とは、カチオン系界面活性剤にて有機処理されてなる層状珪酸塩であり、有機化されていない層状珪酸塩よりも樹脂中に細分散されやすい。
【0033】
上記カチオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられるが、炭素数8以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩が好ましい。炭素数8以上のアルキル鎖を有しない場合には、アルキルアンモニウムイオンの親水性が強く、層状珪酸塩の層間を充分に非極性化することが困難である。
【0034】
炭素数8以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0035】
本発明において使用される層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200mmol/100gであることが好ましい。50mmol/100g未満では、結晶間にイオン交換によりインターカレートされる可塑剤、カチオン系界面活性剤の量が少なくなりやすく、結果的に層状珪酸塩が樹脂中に微細に分散されない場合がある。200mmol/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が不充分になり、層状珪酸塩を樹脂中に微細に分散することが困難な場合がある。
【0036】
本発明において、上記層状珪酸塩の添加量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましい。0.1重量部未満では、添加量が少なく所望の物性を充分に発揮できない。100重量部を超えると、複合材料中に占める樹脂の割合が少なくなり、耐衝撃性等の物性が低下することがある。より好ましくは、1〜20重量部である。
【0037】
本発明において、上記層状珪酸塩は、上記樹脂層に微細に分散されていることが必要である。目視や、透過型電子顕微鏡(TEM)レベルで確認できる1μm以上の大きさの層状珪酸塩が多く存在することは、機械的強度、特に透明性において好ましくない。1μm以上の層状珪酸塩の量は、本発明の合わせガラス用中間膜100μm×100μmあたり100個以下であることが好ましく、より好ましくは50個以下である。
【0038】
本発明の合わせガラス用中間膜は、樹脂層(A)及び樹脂層(B)の交互積層体からなる。本発明の合わせガラス用中間膜における樹脂層の積層形態としては、例えば、層(A)/層(B)/層(A)、層(A)/層(B)/層(A)/層(B)/層(A)等が挙げられる。層(A)/層(B)/層(B)/層(A)は4層であっても、異種界面の数は、3層である層(A)/層(B)/層(A)と同様であるので、遮音性能の一層の向上を図ることはできない。
【0039】
本発明において合わせガラス用中間膜全体の厚みは、通常、0.3〜1.6mmであることが好ましい。
合わせガラス用中間膜は、厚みが大きい方が遮音性能に優れるが、合わせガラスとして必要な耐貫通性の点を考慮して厚みを決めるのが好ましく、実用上は上記した厚みの範囲が好適である。
【0040】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法としては特に限定されないが、可塑剤と混合して層状珪酸塩の層間隔を充分に膨張させたものを、ポリビニルアセタール樹脂に添加して混練することが好ましい。
層状珪酸塩と可塑剤とを混合することで、層状珪酸塩は可塑剤により膨潤され、樹脂へ混合する際に樹脂中に微細に分散されやすくなる。
上記層状珪酸塩と上記可塑剤との混合方法としては、例えば、上記可塑剤の一部と上記層状珪酸塩の全量を一旦混合し、その後更に可塑剤の残量を加えて混合する方法等が挙げられる。
【0041】
上記可塑剤と上記層状珪酸塩を混合する装置としては特に限定されず、例えば、遊星式攪拌装置、湿式メカノケミカル装置、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、超音波照射機等が挙げられる。
【0042】
上記ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び層状珪酸塩の混練に用いられる装置としては特に限定されず、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー、カレンダーロール等が挙げられる。連続的に生産するという観点から、押出機を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の合わせガラス用中間膜の製膜方法としては特に限定されず、例えば、上記樹脂層(A)及び樹脂層(B)を別々に成形した後これらをガラス板の間に積層する方法、各層を多層成形機を用いて一体成形する方法等の成形方法が挙げられる。
【0044】
本発明2は、本発明1の合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスである。
本発明2の合わせガラスは、本発明1の合わせガラス用中間膜を二枚のガラスにて挟着したものである。
【0045】
本発明2の合わせガラスは、従来一般に行われている方法により製造することができる。例えば、本発明の合わせガラス用中間膜をフロート板ガラスにて挟着し、この挟着体を真空バックに入れて、真空にしたまま約70〜110℃のオーブン内で30分保持することにより予備接着し、真空バックから取り出した挟着体を、120〜150℃のオートクレーブ内において、約10〜15kg/cm2 の圧力で熱圧プレスすることにより、透明な合わせガラスを得ることができる。本発明2の合わせガラスは、建築用、車両用として好適に使用することができる。
【0046】
本発明の合わせガラス用中間膜は、ガラス以外の剛性の高い透明体で挟着してもよい。上記透明体としては、例えば、ポリカーボネート樹脂よりなるもの等が挙げられる。このような構成体も本発明の一つである。
【0047】
本発明の合わせガラス用中間膜及び合わせガラスは上述のような構成を有することにより、合わせガラスに必要な基本性能を損わず、合わせガラス用中間膜の成形性及び取扱性を損なうこともなく、広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮でき、かつ、低温側の遮音性能が向上しても、機械的強度が低下しない。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
樹脂層(A)の作製
ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度=65.9mol%、アセチル基量=0.9mol%)100重量部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)を40重量部添加した。得られた混合物をミキシングロールで充分に混練し、混練物の所定量をプレス成形機で150℃で30分間プレス成形し、厚み0.2mmの樹脂層(A)を作製した。
【0050】
樹脂層(B)の作製
可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)を60重量部と、有機化スメクタイト(コープケミカル社製、SAN)7.5重量部とを遊星式攪拌装置で1分間混合して、ペースト状の混合物を得た。得られたペースト状混合物67.5重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度=57.3mol%、アセチル基量=13.0mol%)樹脂100重量部をミキシングロールで充分に混練し、混練物の所定量をプレス成形機で150℃で30分間プレス成形し、厚み0.4mmの樹脂層(B)を作製した。
これら樹脂と可塑剤の曇り点を測定した結果、20℃以下であった。
【0051】
積層膜及びそれを用いた合わせガラスの作製
上記のように得られた樹脂層(A)と樹脂層(B)とを、積層構成が層(A)/層(B)/層(A)になるように重ねて、3層合わせガラス用中間膜を得た。
上記合わせガラス用中間膜をそれぞれ1辺300mmの正方形の厚み3mmの2枚のフロートガラスで両側から挟着し、この未圧着挟着体をゴムバッグへ入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気状態のまま90℃のオーブンに移し、この温度を30分間保持した。こうして真空プレスにより仮接着した挟着体を、次いでオートクレーブ中で圧力12kg/cm2 、温度135℃にて熱圧プレスし、透明な合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0052】
実施例2
樹脂層(A)の作製に、樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度=68.9mol%、アセチル基量=0.9mol%)を用い、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を上記樹脂100重量部に対して40重量部添加した。
樹脂層(B)の作製に、樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度=64.5mol%、アセチル基量=13.0mol%)を用い、可塑剤として3GOを50重量部添加した。
上記以外は、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0053】
実施例3
樹脂層(B)の作製に、可塑剤として3GOを60重量部添加し、有機化モンモリロナイト(サザンクレイ社製、クロイサイト20A)を7.5重量部添加したこと以外は、実施例2と同様にして合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0054】
実施例4
樹脂層(A)の作製に、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)を樹脂100重量部に対して40重量部添加した。
樹脂層(B)の作製に、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)を樹脂100重量部に対して60重量部添加し、有機化膨潤性マイカ(コープケミカル社製、商品名MAE)を15.0重量部添加した。
上記以外は、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0055】
実施例5
樹脂層(A)は実施例2と同様のものを、樹脂層(B)は実施例4と同様のものを作製した。ただし、樹脂層(A)の膜厚=0.1mm、樹脂層(B)の膜厚=0.2mmに製膜し、層(A)/層(B)/層(A)/層(B)/層(A)の5層に積層した。
上記以外は、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0056】
比較例1
樹脂層(B)に有機化スメクタイトを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0057】
比較例2
樹脂層(B)に有機化スメクタイトを添加しないこと以外は、実施例2と同様にして合わせガラスを作製した。積層膜の構成を表1に示した。
【0058】
【表1】
Figure 0004412773
【0059】
表1中の記載については、下記のとおりである。
I型:ブチラール化度=65.9mol%、アセチル基量=0.9mol%
II型:ブチラール化度=68.9mol%、アセチル基量=0.9mol%
【0060】
評価
実施例1〜5及び比較例1〜2で作製した合わせガラスを用いて、下記試験を行った。
遮音性測定
合わせガラスを所定温度において、ダンピング試験用の振動発生機(振研社製、G21−005D)により加振し、そこから得られる振動特性を、機械インピーダンスアンプ(リオン社製、XG−81)にて増幅し、振動スペクトルをFFTアナライザー(横河ヒューレットパッカード社製、FFTスペクトラムアナライザー HP−3582AA)にて解析した。こうして得られた損失係数と、ガラスとの共振周波数の比とから、透過損失を算出した。この結果に基づき、周波数2000Hz近辺における極小の透過損失をもってTL値とした。
測定は、0〜+30℃の間、10℃間隔にて行った。
【0061】
(2)層状珪酸塩の膜中での分散性透過型電子顕微鏡(TEM)により、膜の任意の位置で、100μm×100μmの範囲を観察した。結果は次のように表した。
◎:1μm以上の粒子数≦50
○:50<1μm以上の粒子数≦100
×:100<1μm以上の粒子数
【0062】
(3)透明性JIS R 3212に従い、そのヘイズを測定した。
(4)耐貫通強度試験
JIS R 3212に準拠した手法にて評価を行ったが、鋼球を落下させる高さを0.25m単位で変化させ、合わせガラスの数の50%において鋼球の貫通が妨げられる高さを求め、このときの鋼球とガラス板面との距離をもって「平均落球高さ」とした。従って、平均落球高さの数値が大きいほど、耐貫通性は優れていることを示している。
上記項目の試験結果を表2に示した。
【0063】
【表2】
Figure 0004412773
【0064】
【発明の効果】
本発明の合わせガラス用中間膜及び合わせガラスは、上述のような構成を有することにより、透明性、耐光性、耐候性、耐衝撃性、接着性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、合わせガラス用中間膜の成形性及び取扱性も損なうこともなく、広い温度領域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮でき、かつ、低温側の遮音性能が向上しても、力学強度が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】合わせガラスの遮音性能を、周波数に対する透過損失量として示す図である。

Claims (3)

  1. 樹脂層(A)及び前記樹脂層(A)よりもガラス転移温度の低い樹脂層(B)の交互積層体からなる合わせガラス用中間膜であって、前記樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、いずれもポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなり、かつ、前記樹脂層(B)に、層状珪酸塩が微細に分散されてなり、前記層状珪酸塩は、透過型電子顕微鏡により、任意の位置で100μm×100μmの範囲を観察したときに観察される1μm以上の粒子数が100個以下であるように前記樹脂層(B)中に分散していることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
  2. ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であり、可塑剤は、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、及び、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
  3. 請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜を用いてなることを特徴とする合わせガラス。
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