以下に、本発明の実施形態に係るノイズフィルタ及びこれを備えた電子装置について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るノイズフィルタ10a〜10nの外観斜視図である。図2は、ノイズフィルタ10aの積層体12aの分解図である。図3は、ノイズフィルタ10aの等価回路図である。以下では、ノイズフィルタ10aの形成時に、セラミックグリーンシートが積層される方向を積層方向と定義する。そして、この積層方向をz軸方向とし、ノイズフィルタ10aの長手方向をx軸方向とし、x軸とz軸とに直交する方向をy軸方向とする。x軸、y軸及びz軸は、ノイズフィルタ10aを構成する辺に対して平行である。
(ノイズフィルタの構成)
ノイズフィルタ10aは、図1に示すように、内部に複数のLCフィルタ及びコモンモードチョークコイルを含む直方体状の積層体12a、及び、積層体12aの表面に形成された外部電極E1〜E10を備えている。以下、積層体12aのx軸方向の両端に位置する面を端面と定義し、積層体12aのy軸方向の両端に位置する面を側面と定義し、積層体12aのz軸方向の上側の面を上面と定義し、積層体12aのz軸方向の下側の面を下面と定義する。
外部電極E1,E3,E5,E7はそれぞれ、y軸方向の正方向側の側面において、z軸方向に延びるように形成されている。外部電極E1,E3,E5,E7はそれぞれ、入力端子として機能する。外部電極E2,E4,E6,E8はそれぞれ、y軸方向の負方向側の側面において、z軸方向に延びるように形成されている。外部電極E2,E4,E6,E8はそれぞれ、出力端子として機能する。外部電極E9,E10はそれぞれ、両端面において、z軸方向に延びるように形成されている。外部電極E9,E10はそれぞれ、グランド電極として機能する。
積層体12aは、以下に説明するように、複数の内部電極層と複数の誘電体層とが共に積層されて構成され、内部にLCフィルタLC1〜LC4及びコモンモードチョークコイルL11,L12を内蔵している。より詳細には、積層体12aは、図2に示すように、複数の誘電体層14a〜14c,16a,16b,18a〜18f,20,22f〜22a,24b,24a,26c〜26aがこの順に積層されることにより構成される。複数の誘電体層14a〜14c,16a,16b,18a〜18f,20,22a〜22f,24a,24b,26a〜26cは、それぞれ略同じ面積及び形状を有する長方形の絶縁層である。
誘電体層16aの主面上には、y軸方向に長手方向を有する長方形状のコンデンサ電極層50,52,54,56が形成されている。コンデンサ電極層50,52,54,56はそれぞれ、y軸方向の負方向側の端部において、コンデンサ電極層50,52,54,56と外部電極E2,E4,E6,E8とを接続するための引き出し部51,53,55,57を有している。また、誘電体層16bの主面上には、x軸方向に長手方向を有する長方形状のコンデンサ電極層58が形成されている。コンデンサ電極層58は、x軸方向の両端部において、コンデンサ電極層58と外部電極E9,E10とを接続するための引き出し部71,72を有している。
コンデンサ電極層50とコンデンサ電極層58とが誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC1を構成している。コンデンサ電極層52とコンデンサ電極層58とが誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC2を構成している。コンデンサ電極層54とコンデンサ電極層58とが誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC3を構成している。コンデンサ電極層56とコンデンサ電極層58とが誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC4を構成している。
誘電体層18a〜18fの主面上にはそれぞれ、線状電極が折り曲げられた形状を有するコイル電極層30a〜30f,42a〜42fが形成されている。より詳細には、コイル電極層30a,42aはそれぞれ、「L」字形状を有し、その一端はそれぞれ、外部電極E2,E8に接続されている。コイル電極層30b〜30e,42b〜42eは、同じ誘電体層18上に形成されたもの同士で互いに反対方向に旋廻するように渦状に形成された電極層である。また、コイル電極層30f,42fはそれぞれ、「L」字形状を有し、その一端はそれぞれ、外部電極E1,E7に接続されている。更に、誘電体層18a〜18eにはそれぞれ、コイル電極層30a〜30e,42a〜42eの一端に接続されているビア導体32a〜32e,44a〜44eが形成されている。これにより、誘電体層18a〜18fが積層された場合には、ビア導体32a〜32e,44a〜44eは、隣接する誘電体層18a〜18fに形成されたコイル電極層30a〜30f,42a〜42f同士を接続する。その結果、コイル電極層30a〜30fは、コイルL1を構成し、コイル電極層42a〜42fは、コイルL4を構成する。
誘電体層24aの主面上には、y軸方向に長手方向を有する長方形状のコンデンサ電極層60,62,64,66が形成されている。コンデンサ電極層60,62,64,66はそれぞれ、y軸方向の負方向側の端部において、コンデンサ電極層60,62,64,66と外部電極E2,E4,E6,E8とを接続するための引き出し部61,63,65,67を有している。また、誘電体層24bの主面上には、x軸方向に長手方向を有する長方形状のコンデンサ電極層68が形成されている。コンデンサ電極層68は、x軸方向の両端部において、コンデンサ電極層68と外部電極E9,E10とを接続するための引き出し部73,74を有している。
コンデンサ電極層60とコンデンサ電極層68とが誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC1を構成している。コンデンサ電極層62とコンデンサ電極層68とが誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC2を構成している。コンデンサ電極層64とコンデンサ電極層68とが誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC3を構成している。コンデンサ電極層66とコンデンサ電極層68とが誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC4を構成している。
誘電体層22a〜22fの主面上にはそれぞれ、線状電極が折り曲げられた形状を有するコイル電極層34a〜34f,38a〜38fが形成されている。より詳細には、コイル電極層34a,38aはそれぞれ、「L」字形状を有し、その一端はそれぞれ、外部電極E4,E6に接続されている。コイル電極層34b〜34e,38b〜38eは、同じ誘電体層22上に形成されたもの同士で互いに反対方向に旋廻するように渦状に形成された電極層である。また、コイル電極層34f,38fはそれぞれ、「L」字形状を有し、その一端はそれぞれ、外部電極E3,E5に接続されている。更に、誘電体層22b〜22fにはそれぞれ、コイル電極層34b〜34f,38b〜38fの一端に接続されているビア導体36b〜36f,40b〜40fが形成されている。これにより、誘電体層22a〜22fが積層された場合には、ビア導体36b〜36f,40b〜40fは、隣接する誘電体層22a〜22fに形成されたコイル電極層34a〜34f,38a〜38f同士を接続する。その結果、コイル電極層34a〜34fは、コイルL2を構成し、コイル電極層38a〜38fは、コイルL3を構成する。
積層体12aが以上のような構成を有することにより、図3に示すように、コイルL1及びコンデンサC1からなるLCフィルタLC1、コイルL2及びコンデンサC2からなるLCフィルタLC2、コイルL3及びコンデンサC3からなるLCフィルタLC3、及び、コイルL4及びコンデンサC4からなるLCフィルタLC4が形成されている。LCフィルタLC2,LC3は、LCフィルタLC1,LC2とは電気的に接続されていない。ここで、LCフィルタLC1を例にとると、コイルL1の一端が外部電極E1に接続されていると共に、コイルL1の他端が外部電極E2に接続されている。更に、コンデンサC1の一端は、コイルL1の他端に接続されていると共に、コンデンサC1の他端は、外部電極E9,E10に接続されている。LCフィルタLC2,LC3,LC4の構成については、LCフィルタLC1の構成と同様であるので説明を省略する。
ところで、外部電極E1,E3が入力端子と機能し、外部電極E2,E4が出力端子と機能するので、図2において、コイルL1には、例えば、z軸方向の下から上へと電流が流れ、コイルL2には、例えば、z軸方向の上から下へと電流が流れる。すなわち、コイルL1とコイルL2とには、z軸方向において逆方向に電流が流れる。更に、コイルL1を構成するコイル電極層30a〜30fは、z軸方向の下から上へと行くにしたがって時計回りに旋廻し、コイルL2を構成するコイル電極層34a〜34fは、z軸方向の下から上へと行くにしたがって反時計回りに旋廻している。すなわち、コイルL1とコイルL2とは、互いに逆向きに旋廻している。したがって、コイルL1とコイルL2とに電流が流れた場合には、共に同じ方向に電流が旋廻するようになる。更に、コイルL1及びコイルL2は、図2に示すように、コイルL1のコイル軸とコイルL2のコイル軸とが略一致するようにz軸方向に並べて配置されている。その結果、コイルL1とコイルL2とは、同じ方向に磁束を発生して磁気的に結合することで、LCフィルタLC1とLCフィルタLC2を構成するコイルと、コモンモードチョークコイルL11を構成する2つのコイルとを兼用するようになる。特に、コイルL1とコイルL2とは、コンデンサC1,C2が接続された端部に対する他方の端部近傍(図2のz軸方向の中央部分)において、磁気結合している。コイルL1とコイルL2との結合係数は、0.3以上0.7以下である。コイルL3とコイルL4も、磁気結合して、LCフィルタLC3とLCフィルタLC4を構成するコイルと、コモンモードチョークコイルL12を構成する2つのコイルとを兼用しているが、その詳細についてはコイルL1とコイルL2と同じであるので説明を省略する。
なお、コイルL1とコイルL2との結合係数の計測は、以下の手順にて行われる。コイルL1とコイルL2との結合係数の計測では、まず、図3の外部電極E1と外部電極E3とを短絡させ、外部電極E2,E4間のインダクタンス値Lddを測定する。次に、外部電極E1と外部電極E3とを短絡させ、外部電極E2と外部電極E4とを短絡させて、外部電極E1,E3と外部電極E2,E4との間のインダクタンス値Lccを測定する。そして、以下の式(1)にインダクタンス値Ldd,Lccを代入して、結合係数Kを得る。
K=(2Lcc−Ldd/2)/(2Lcc+Ldd/2)・・・(1)
コイルL3とコイルL4との結合係数の計測は、コイルL1とコイルL2との結合係数の計測と同じであるので説明を省略する。
更に、誘電体層18fと誘電体層22fとの間に配置された誘電体層20の主面上には、コイルL1とコイルL3,L4とを容量結合させる結合用電極層70が形成されている。該結合用電極層70は、コイルL2とコイルL3,L4とも容量結合させている。結合用電極層70は、コイルL3,L4についても同様にコイルL1,L2と容量結合させている。そのため、該結合用電極層70は、z軸方向から平面視したときに、LCフィルタLC1とLCフィルタLC3,LC4との間に渡って形成されている。同様に、結合用電極層70は、z軸方向から平面視したときに、LCフィルタLC2とLCフィルタLC3,LC4との間に渡って形成されている。
ここで、結合用電極層70は、2つの環状の線状電極が接続された形状を有している。これは、コイルL1〜L4に電流が流れた場合に、コイルL1〜L4において発生する磁束を結合用電極層70が妨げないようにするためである。
(効果)
以上のように、ノイズフィルタ10aによれば、LCフィルタLC1〜LC4が内蔵されていると共に、コイルL1〜L4がコモンモードチョークコイルL11,L12を構成するコイルを兼ねているので、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズの両方を除去することができる。
特に、ノイズフィルタ10aでは、以下に説明するように、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数を0.3以上0.7以下としているので、携帯電話のドライバとレシーバとの間を伝送する差動信号に発生するノーマルモードノイズを効果的に除去できる。
より詳細には、本願発明者は、ノイズフィルタ10aが奏する効果を確認するために、以下に説明するコンピュータシミュレーションを行った。図4ないし図7は、コンピュータシミュレーションの結果を示したグラフであり、ノイズフィルタ10aにおいて、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数を0.2,0.3,0.6,0.7としたときにおける、ノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失と周波数との関係を示したグラフである。縦軸は、ノイズに対するフィルタの挿入損失を示し、横軸は、周波数を示している。
携帯電話のドライバとレシーバとの間を伝送する差動信号の周波数は、100MHz程度である。このような差動信号では、3次の高調波である300MHz付近におけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失は、3dBよりも小さい必要がある。これは、300MHz付近におけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失が大きすぎると、差動信号そのものに悪影響が出るからである。
そこで、図4に示したグラフを参照すると、結合係数が0.2の場合には、300MHzにおけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失は、5dB程度であることが分かる。一方、図5に示したグラフを参照すると、結合係数が0.3の場合には、300MHzにおけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失は、3dB程度となっている。故に、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数は、0.3以上であることが好ましい。
また、携帯電話で使用する下限周波数であるUHF帯470MHz付近におけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失は、10dBよりも大きい必要がある。これは、UHF帯の信号高調波がノーマルモードノイズとしてUHF帯の受信性能に影響を及ぼすことを防止するためである。
そこで、図7に示したグラフを参照すると、結合係数が0.7の場合には、550MHzにおけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失は、10dB程度である。また、図6に示したグラフを参照すると、結合係数が0.6の場合には、470MHzにおけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失は、10dB程度となっている。故に、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数は、0.7以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましい。
以上のように、ノイズフィルタ10aは、コモンモードチョークコイルL11,L12を有しているので、携帯電話のドライバとレシーバとの間に発生するコモンモードノイズを除去することができる。更に、ノイズフィルタ10aは、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数が、0.3以上0.7以下となっているので、差動信号波形の劣化を抑制しつつ、ノーマルモードノイズも除去できる。よって、ノイズフィルタ10aは、携帯電話のドライバとレシーバとの間におけるコモンモードノイズ対策及びノーマルモードノイズ対策に適している。
次に、本願発明者は、ノイズフィルタ10aが奏する効果を明確なものとするために、実験を行った。より詳細には、ノイズフィルタ10aに相当する第1の実験例を作製すると共に、特許文献1に記載の積層型アレイ部品に相当する第2の実験例を作製した。第2の実験例の結合係数は、0.05以下に設定した。そして、第1の実験として、これらの実験例に矩形波を入力させて、出力されてくる出力信号を測定した。また、第2の実験として、ノイズフィルタを挿入したときのノイズの強度分布を測定した。
図8は、第1の実験例において、第1の実験を行った際の結果を示したグラフである。図9は、第2の実験例において、第1の実験を行った際の結果を示したグラフである。図8及び図9では、縦軸は、信号レベルを示しており、横軸は、時間を示している。
図10は、第2の実験例において、第2の実験を行った際の結果を示したグラフである。図11は、第1の実験例において、第2の実験を行った際の結果を示したグラフである。図10及び図11では、縦軸は、ノイズレベルを示しており、横軸は、周波数を示している。
第1の実験において、第1の実験例及び第2の実験例に矩形波を入力したところ、高周波におけるノイズが除去されて、図8及び図9に示すように、第1の実験例及び第2の実験例共に正弦波状の信号が出力されてきた。図8と図9とを比較すると、図8の出力信号の方が、図9の出力信号よりも、入力信号に近い波形を有していることが分かる。したがって、矩形波を入力信号として用いた場合における出力信号の劣化の程度は、第1の実験例の方が第2の実験例よりも小さいことが理解できる。すなわち、ノイズフィルタ10aにおける出力信号の劣化は、特許文献1に記載の積層型アレイ部品における出力信号の劣化よりも小さいことが理解できる。
更に、第2の実験において、第1の実験例及び第2の実験例に同じ強度分布のノイズを入力した。その結果、図10及び図11に示すように、第1の実験例と第2の実験例とで略同じノイズ除去効果を得ることができていることが分かる。すなわち、ノイズフィルタ10aにおけるノイズ除去効果は、特許文献1に記載の積層アレイ部品におけるノイズ除去効果と同等であることが理解できる。
以上のように、第1の実験及び第2の実験によれば、ノイズフィルタ10aは、出力信号の波形の劣化を低減しつつ、良好なノイズ除去効果を得ることができていることが分かる。
また、ノイズフィルタ10aによれば、LCフィルタとコモンモードチョークコイルとが一つのノイズフィルタ10a内に内蔵されているので、LCフィルタとコモンモードチョークコイルとが別々の電子部品により構成されている場合に比べて、回路全体を小型化できる。特に、ノイズフィルタ10aでは、コイルL1,L2は、コモンモードチョークコイルL11を構成しているコイルとして機能すると共に、LCフィルタLC1,LC2の一部としても機能している。同様に、コイルL3,L4は、コモンモードチョークコイルL12を構成しているコイルとして機能すると共に、LCフィルタLC3,LC4の一部としても機能している。このように、ノイズフィルタ10aでは、コイルL1〜L4が、LCフィルタの一部及びコモンモードチョークコイルの一部に兼用されているので、ノイズフィルタ10aがより小型化される。
また、ノイズフィルタ10aでは、以下に説明するように、コモンモードノイズを効率よく除去することが可能となる。xz断面において、コイルL1が発生する磁束とコイルL2が発生する磁束、及び、コイルL3が発生する磁束とコイルL4が発生する磁束が等しくない場合には、ノーマルモードノイズがコモンモードノイズに変換されてしまい、新たなコモンモードノイズが発生して、コモンモードノイズが効率よく除去されない。そこで、ノイズフィルタ10aでは、xz断面において、コイルL1が発生する磁束の大きさとコイルL2が発生する磁束の大きさとが略等しくなるように、コイルL1,L2の電流経路を構成している。同様に、xz断面において、コイルL3が発生する磁束の大きさとコイルL4が発生する磁束の大きさとが略等しくなるように電流経路を構成している。これにより、コイルL1とコイルL2との間及びコイルL3とコイルL4との間の特性の差を小さくできる。故に、ノーマルモードノイズがコモンモードノイズに変換されて、新たなコモンモードノイズが発生することがない。そのため、ノイズフィルタ10aでは、コモンモードチョークコイルL11及びコモンモードチョークコイルL12にて、より効率よくコモンモードノイズを除去することが可能となる。
また、xz断面においてコンデンサ電極が誘電体層20に対して線対称な構造でない場合には、磁束の大きさが等しくなりにくいため、ノーマルモードノイズがコモンモードノイズに変換されてしまい、新たなコモンモードノイズが発生して、コモンモードノイズが効率よく除去されない。一方、図2に示すように、コンデンサ電極層50,52,58,60,62,68は、xz断面において、LCフィルタLC1とLCフィルタLC2との境界線(図2では、誘電体層20)に対して、略線対称な構造を有している。同様に、図2に示すように、コンデンサ電極層54,56,58,64,66,68は、xz断面において、LCフィルタLC3とLCフィルタLC4の境界線(図2では、誘電体層20)に対して、略線対称な構造を有している。これにより、コンデンサ電極層50,52,58が、コイルL1による磁束に及ぼす影響と、コンデンサ電極層60,62,68が、コイルL2による磁束に及ぼす影響とを等しくできる。同様に、コンデンサ電極層54,56,58が、コイルL4による磁束に及ぼす影響と、コンデンサ電極層64,66,68が、コイルL3による磁束に及ぼす影響とを等しくできる。すなわち、コイルL1とコイルL2との間及びコイルL3とコイルL4との間の特性の差をより小さくできる。故に、ノーマルモードノイズがコモンモードノイズに変換されて、新たなコモンモードノイズが発生することがない。そのため、ノイズフィルタ10aでは、コモンモードチョークコイルL11及びコモンモードチョークコイルL12にて、より効率よくコモンモードノイズを除去することが可能となる。
また、一般的には、ノイズ抑制効果を高めるには挿入損失特性を高めればよいが、更に効果を高める場合には、ノイズの反射を抑制して、ノイズに対して低反射とすることが重要となる。ノイズフィルタ10aでは、コモンモードチョークコイルL11とコモンモードチョークコイルL12とを容量結合させることにより、コモンモードチョークコイルL11,L12間でノイズの循環が発生し、低反射にすることができる。図12は、コモンモードノイズの反射特性と周波数との関係を示したグラフである。縦軸は、反射特性を示し、横軸は、周波数を示す。グラフ中の縦軸において、0dbが全反射を示す。
図2に示すように、ノイズフィルタ10aでは、結合用電極層70が設けられている。該結合用電極層70は、コイルL1,L2からなる組とコイルL3,L4からなる組とを容量結合させている。これにより、図12のグラフに示すように、ノイズフィルタ10aは、結合用電極層70がないノイズフィルタよりも、コモンモードノイズの反射を抑制することが可能となる。因みに、結合用電極層70がない場合には、例えば、コイルL1とコイルL3との結合容量は、0.5pF程度であるが、結合用電極層70がある場合には、コイルL1とコイルL3との結合容量は、5pF程度になる。なお、コイルL1〜L4は、図2に示すように、全てのものが容量結合していてもよいし、コイルL1〜L4の内の3つ又は2つのコイルが容量結合していてもよい。ただし、2つのコイルが容量結合している場合には、コイルL1,L2の内のいずれか一方と、コイルL3,L4の内のいずれか一方とが容量結合している必要がある。
また、ノイズフィルタ10aでは、コイル電極層30a〜30f,34a〜34f、コンデンサ電極層50,52,58,60,62,68、及び、誘電体層16a,16b,18a〜18f,22a〜22f,24a,24bは、図2に示すように、コイルL1,L2が、z軸方向において、コンデンサC1,C2の間に位置するように積層されている。すなわち、コイルL1とコイルL2との間には、コンデンサが設けられていない。そのため、コイルL1及びコイルL2にて発生した磁束は、コンデンサC1,C2により妨げられにくい。これにより、コイルL1,L2内の磁束を強めることができ、LCフィルタLC1,LC2のノーマルモードノイズの除去特性を向上させることができると共に、LCフィルタLC1とLCフィルタLC2との磁気的結合を強めることができ、コモンモードチョークコイルL11のコモンモードノイズの除去特性を向上させることが可能となる。なお、同様のことが、LCフィルタLC3,LC4及びコイルL3,L4についても言える。
ところで、ノイズフィルタ10aでは、図3に示すように、浮遊容量CP1,CP2を発生させている。浮遊容量CP1は、コイル電極層30とコイル電極層34及びコイル電極38とコイル電極42をz軸方向に重ねることにより、コイルL1とコイルL2との間及びコイルL3とコイルL4との間に発生する浮遊容量である。浮遊容量CP1を発生させていることにより、以下に図13を参照しながら説明するように、ノイズフィルタ10aのノーマルモードノイズを効率よく除去できると共に、ノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失の変化を急峻にできる。
また、浮遊容量CP2は、コイル電極層30,34,38,42をz軸方向に重ねることにより、コイルL1〜L4の両端に発生する浮遊容量である。浮遊容量CP2を発生させていることにより、以下に図14を参照しながら説明するように、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズのカットオフ周波数を低くできると共に、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズに対するフィルタの挿入損失の変化を急峻にできる。図13及び図14は、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズに対するフィルタの挿入損失と周波数との関係を示したグラフである。縦軸は、挿入損失を示し、横軸は、周波数を示す。
まず、浮遊容量CP1が奏する効果について説明する。図13には、浮遊容量CP1があると仮定した場合におけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失と、浮遊容量CP1がないと仮定した場合におけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失とが示されている。コモンモードノイズが浮遊容量CP1の影響を受けないので、コモンモードの挿入損失については、図13に記載していない。
図3に示すように、浮遊容量CP1を発生させていると、コイルL1,L2と浮遊容量CP1とは、LCフィルタを構成する。そのため、浮遊容量CP1を発生させていると、浮遊容量CP1を発生させていない場合に比べて、図13に示すように、高周波側の共振点におけるノーマルモードノイズを効率よく除去できる。更に、浮遊容量CP1を発生させると、浮遊容量CP1を発生させない場合に比べて、図13に示すように、高周波側の共振点におけるノーマルモードノイズに対するフィルタの挿入損失が急峻に変化する。
次に、浮遊容量CP2が奏する効果について説明する。図14には、浮遊容量CP2があると仮定した場合におけるノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズに対するフィルタの挿入損失と、浮遊容量CP2がないと仮定した場合におけるノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズに対するフィルタの挿入損失とが示されている。
浮遊容量CP2を発生させていると、浮遊容量CP2を発生させない場合に比べて、図14に示すように、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズの共振点の周波数が低くなっている。すなわち、浮遊容量CP2を発生させると、浮遊容量CP2を発生させない場合に比べて、カットオフ周波数が低くなる。更に、浮遊容量CP2を発生させると、浮遊容量CP2を発生させない場合に比べて、図14に示すように、高周波側の共振点におけるノーマルモードノイズ及びコモンモードの挿入損失が急峻に変化する。
(変形例)
図2に示すノイズフィルタ10aでは、結合用電極層70は、2つの環状の線状電極が接続された形状を有しているが、該結合用電極層70の形状はこれに限らない。結合用電極層70は、コイルL1〜L4にて発生した磁束を妨げない形状を有していればよい。すなわち、結合用電極層70は、z軸方向から平面視したときに、コイルL1〜L4と重ならないように形成されていればよい。したがって、結合用電極層70は、図15(a)〜図15(f)に示す結合用電極層70の変形例のような形状であってもよい。また、結合用電極層70は、図15(g)に示すようなベタパターンの電極であってもよい。図15(g)に示す結合用電極層70は、接地されていないので、磁気結合には影響を及ぼさない。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係るノイズフィルタ10bの構成について図面を参照しながら説明する。図16は、第2の実施形態に係るノイズフィルタ10bの積層体12bの分解斜視図である。図17は、ノイズフィルタ10bの等価回路図である。図16及び図17において、図2及び図3と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12bは、図16に示すように、誘電体層16a,24aのそれぞれにコンデンサ電極層80,82,84,86,90,92,94,96が形成されている点において、積層体12aと相違する。以下、積層体12bと積層体12aとの相違点を中心に説明を行う。
誘電体層16aには、コンデンサ電極層50,52,54,56,80,82,84,86が形成されている。コンデンサ電極層80とコンデンサ電極層58とは、誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC5を構成している。コンデンサ電極層82とコンデンサ電極層58とは、誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC6を構成している。コンデンサ電極層84とコンデンサ電極層58とは、誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC7を構成している。コンデンサ電極層86とコンデンサ電極層58とは、誘電体層16aを挟んで対向することにより、コンデンサC8を構成している。
更に、コンデンサ電極層80のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部81が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC5は、外部電極E1と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。また、コンデンサ電極層82のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部83が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC6は、外部電極E3と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。また、コンデンサ電極層84のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部85が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC7は、外部電極E5と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。また、コンデンサ電極層86のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部87が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC8は、外部電極E7と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。
誘電体層24aには、コンデンサ電極層60,62,64,66,90,92,94,96が形成されている。コンデンサ電極層90とコンデンサ電極層68とは、誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC5を構成している。コンデンサ電極層92とコンデンサ電極層68とは、誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC6を構成している。コンデンサ電極層94とコンデンサ電極層68とは、誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC7を構成している。コンデンサ電極層96とコンデンサ電極層68とは、誘電体層24bを挟んで対向することにより、コンデンサC8を構成している。
更に、コンデンサ電極層90のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部91が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC5は、外部電極E1と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。また、コンデンサ電極層92のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部93が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC6は、外部電極E3と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。また、コンデンサ電極層94のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部95が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC7は、外部電極E5と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。また、コンデンサ電極層96のy軸方向の正方向側の端部には、引き出し部97が設けられている。これにより、図17に示すように、コンデンサC8は、外部電極E7と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。
ノイズフィルタ10bは、コンデンサC5〜C8が追加されて、Π型構造をとることによって、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズに対するフィルタの挿入損失を急峻かつ大きくすることができる。
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係るノイズフィルタ10cの構成について図面を参照しながら説明する。図18は、第3の実施形態に係るノイズフィルタ10cの積層体12cの分解斜視図である。図19は、ノイズフィルタ10cの等価回路図である。図18及び図19において、図2及び図3と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12cは、図18に示すように、誘電体層16a,16b,24a,24bの代わりに、誘電体層16c,24cが設けられている点において、図2に示す積層体12aと相違する。以下、積層体12cと積層体12aとの相違点を中心に説明を行う。
ノイズフィルタ10cでは、図18に示すように、コイルL1,L2,L3,L4の途中に、コンデンサ電極層100,103が形成された誘電体層16c,24cが挿入される。より詳細には、誘電体層16cは、誘電体層18cと誘電体層18dとの間に配置される。また、誘電体層24cは、誘電体層22cと誘電体層22dとの間に配置される。コンデンサ電極層100,103(接地用電極)は、z軸方向から平面視した場合に、コイルL1〜L4のコイル軸と重ならないように、電極層が形成されていない空白部を有している。ビア導体32c,36d,40d,44cは、コンデンサ電極層100,103と接触しないように、空白部を貫通している。これにより、コンデンサ電極層100は、誘電体層16c,18を挟んでコイル電極層30,42と対向して、コンデンサC9,C12を形成している。また、コンデンサ電極層103は、誘電体層22,24cを挟んでコイル電極層34,38と対向して、コンデンサC10,C11を形成している。
更に、コンデンサ電極層100は、x軸方向の両端において引き出し部101,102を有している。引き出し部101,102はそれぞれ、外部電極E9,E10に接続されている。その結果、コンデンサC9は、図19に示すように、コイルL1と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。同様に、コンデンサC12は、図19に示すように、コイルL4と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。
また、コンデンサ電極層103は、x軸方向の両端において引き出し部104,105を有している。引き出し部104,105はそれぞれ、外部電極E9,E10に接続されている。その結果、コンデンサC10は、図19に示すように、コイルL2と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。同様に、コンデンサC11は、図19に示すように、コイルL3と外部電極E9,E10との間に接続されるようになる。
ノイズフィルタ10cによれば、以下に説明するように、コモンモードノイズを効率よく除去することができる。より詳細には、コイルが発生した磁束が電極層を貫通する際には、渦電流損が電極層において発生し、ノイズフィルタのコモンモードノイズの除去特性が低下する。そこで、ノイズフィルタ10cでは、コンデンサ電極層100,103に空白部が設けられている。これにより、コイルL1〜L4にて発生した磁束は、コンデンサ電極層100,103の空白部を貫通するようになり、コンデンサ電極層100,103にて渦電流損が発生せず、コイルL1〜L4にて発生する磁束が強くなる。その結果、コイルL1〜L4の磁気的な結合が強くなり、ノイズフィルタ10cにおいて、コモンモードノイズの除去特性が向上する。また、コイルL1〜L4にて発生する磁束が強くなるので、LCフィルタLC1〜LC4によるノーマルモードノイズの除去特性も向上する。
また、ノイズフィルタ10cでは、コイル電極層30,34,38,42が、コイル電極層とコンデンサ電極層の一方とを兼ねている。故に、ノイズフィルタ10cでは、ノイズフィルタ10aに比べて、誘電体層の枚数を減らすことが可能となる。
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態に係るノイズフィルタ10dの構成について図面を参照しながら説明する。図20は、第4の実施形態に係るノイズフィルタ10dの積層体12dの分解斜視図である。図21は、ノイズフィルタ10dの等価回路図である。図20及び図21において、図2、図3、図18及び図19と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12dは、図20に示すように、誘電体層16a,16b、24a,24bが更に追加されている点において、図18に示す積層体12cと相違する。誘電体層16a,16b,24a,24bは、図2に示す積層体12aに含まれているものと同じである。
以上のような積層体12dによれば、図21に示すように、外部電極E2と外部電極E9,E10との間にコンデンサC1が設けられ、外部電極E4と外部電極E9,E10との間にコンデンサC2が設けられ、外部電極E6と外部電極E9,E10との間にコンデンサC3が設けられ、外部電極E8と外部電極E9,E10との間にコンデンサC4が設けられるようになる。これにより、ノイズフィルタ10dは、Π型構造をとることによって、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズに対するフィルタの挿入損失を急峻かつ大きくすることができる。
(第5の実施形態)
以下に、第5の実施形態に係るノイズフィルタ10eの構成について図面を参照しながら説明する。図22は、第5の実施形態に係るノイズフィルタ10eの積層体12eの分解斜視図である。図22において、図2と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12eは、図22に示すように、誘電体層16a,16b、24a,24bの代わりに誘電体層16d,16e,24d,24eが設けられている点において、図2に示す積層体12aと相違する。以下に、積層体12eと積層体12aの相違点について説明する。
誘電体層16dには、コンデンサ電極層150,152,154,156が形成されている。コンデンサ電極層150,152,154,156は、図2に示すコンデンサ電極層50,52,54,56に比べてx軸方向の幅が狭く形成されている。これにより、コンデンサ電極層150,152,154,156(信号用電極)は、z軸方向から平面視したときに、コイルL1,L4のコイル軸と重ならないようになっている。更に、コンデンサ電極層150,152,154,156のy軸方向の負方向側の端部にはそれぞれ、外部電極E2,E4,E6,E8と接続される引き出し部151,153,155,157が設けられている。
また、誘電体層16eには、コンデンサ電極層158が形成されている。該コンデンサ電極層158は、z軸方向から平面視したときに、コンデンサ電極層150,152,154,156と重なると共に、コイルL1,L4のコイル軸と重ならないように、電極層が形成されていない空白部を有するように形成されている。
また、誘電体層24dには、コンデンサ電極層160,162,164,166が形成されている。コンデンサ電極層160,162,164,166は、図2に示すコンデンサ電極層60,62,64,66に比べてx軸方向の幅が狭く形成されている。これにより、コンデンサ電極層160,162,164,166は、積層方向から平面視したときに、コイルL2,L3のコイル軸と重ならないようになっている。更に、コンデンサ電極層160,162,164,166のy軸方向の負方向側の端部にはそれぞれ、外部電極E2,E4,E6,E8と接続される引き出し部161,163,165,167が設けられている。
また、誘電体層24eには、コンデンサ電極層168が形成されている。該コンデンサ電極層168は、z軸方向から平面視したときに、コンデンサ電極層160,162,164,166と重なると共に、コイルL2,L3のコイル軸と重ならないように、電極層が形成されていない空白部を有するように形成されている。
以上のような構成を有するノイズフィルタ10eは、ノイズフィルタ10aと同じように、図3に示す回路構成を有する。
ノイズフィルタ10eによれば、コンデンサ電極層150,152,154,156,158,160,162,164,166,168が、z軸方向から平面視したときに、コイルL1〜L4と重ならないように形成されている。そのため、ノイズフィルタ10eでは、コンデンサ電極層150,152,154,156,158,160,162,164,166,168における渦電流損の発生が抑制され、コイルL1〜L4にて発生する磁束が強くなる。その結果、コイルL1とコイルL2との磁気的な結合及びコイルL3とコイルL4との磁気的な結合が強くなり、ノイズフィルタ10eのコモンモードノイズ除去特性がノイズフィルタ10aに比べて向上する。
(第6の実施形態)
以下に、第6の実施形態に係るノイズフィルタ10fの構成について図面を参照しながら説明する。図23は、第6の実施形態に係るノイズフィルタ10fの積層体12fの分解斜視図である。図23において、図2、図16及び図22と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12fは、図23に示すように、誘電体層16a,16b,24a,24bの代わりに、誘電体層16d,16e,16f,24d,24e,24fが設けられている点において、図16に示す積層体12bと相違する。以下に、積層体12fと積層体12bの相違点について説明する。
積層体12fは、図23に示すように、誘電体層14cと誘電体層16dとの間に、誘電体層16fが設けられている。該誘電体層16fには、コンデンサ電極層250,252,254,256が形成されている。コンデンサ電極層250,252,254,256は、z軸方向から平面視したときに、コンデンサ電極層158と重なるように形成されている。これにより、コンデンサ電極層250とコンデンサ電極層150とは、コンデンサC5を構成する。コンデンサ電極層252とコンデンサ電極層152とは、コンデンサC6を構成する。コンデンサ電極層254とコンデンサ電極層154とは、コンデンサC7を構成する。コンデンサ電極層256とコンデンサ電極層156とは、コンデンサC8を構成する。更に、コンデンサ電極層250,252,254,256のy軸方向の正方向側の端部にはそれぞれ、外部電極E1,E3,E5,E7と接続される引き出し部251,253,255,257が設けられている。
また、誘電体層24fには、コンデンサ電極層260,262,264,266が形成されている。コンデンサ電極層260,262,264,266は、z軸方向から平面視したときに、コンデンサ電極層168と重なるように形成されている。これにより、コンデンサ電極層260とコンデンサ電極層160とは、コンデンサC5を構成する。コンデンサ電極層262とコンデンサ電極層162とは、コンデンサC6を構成する。コンデンサ電極層264とコンデンサ電極層164とは、コンデンサC7を構成する。コンデンサ電極層266とコンデンサ電極層166とは、コンデンサC8を構成する。更に、コンデンサ電極層260,262,264,266のy軸方向の正方向側の端部にはそれぞれ、外部電極E1,E3,E5,E7と接続される引き出し部261,263,265,267が設けられている。
以上のような構成を有するノイズフィルタ10fは、ノイズフィルタ10bと同じように、図17に示す回路構成を有する。
ノイズフィルタ10fによれば、コンデンサ電極層158,168,250,252,254,256,260,262,264,266が、z軸方向から平面視したときに、コイルL1〜L4と重ならないように形成されている。そのため、ノイズフィルタ10fでは、コンデンサ電極層158,168,250,252,254,256,260,262,264,266における渦電流損の発生が抑制され、コイルL1〜L4にて発生する磁束が強くなる。その結果、コイルL1とコイルL2との磁気的な結合及びコイルL3とコイルL4との磁気的な結合が強くなり、ノイズフィルタ10fのコモンモードノイズ除去特性がノイズフィルタ10bに比べて向上する。
(第7の実施形態)
以下に、第7の実施形態に係るノイズフィルタ10gの構成について図面を参照しながら説明する。図24は、第7の実施形態に係るノイズフィルタ10gの積層体12gの分解斜視図である。図24において、図2及び図20と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12gは、図24に示すように、誘電体層16a,16b,24a,24bの代わりに、誘電体層16d,16e,24d,24eが設けられている点において、図20に示す積層体12dと相違する。誘電体層16d,16e,24d,24eは、図20に示したものと同じであるので詳細な説明を省略する。
以上のような構成を有するノイズフィルタ10gは、ノイズフィルタ10dと同じように、図21に示す回路構成を有する。
ノイズフィルタ10gによれば、コンデンサ電極層150,152,154,156,158,160,162,164,166,168が、z軸方向から平面視したときに、コイルL1〜L4と重ならないように形成されている。そのため、ノイズフィルタ10gでは、コンデンサ電極層150,152,154,156,158,160,162,164,166,168における渦電流損の発生が抑制され、コイルL1〜L4にて発生する磁束が強くなる。その結果、コイルL1とコイルL2との磁気的な結合及びコイルL3とコイルL4との磁気的な結合が強くなり、ノイズフィルタ10gのコモンモードノイズ除去特性がノイズフィルタ10dに比べて向上する。
(第8の実施形態)
以下に、第8の実施形態に係るノイズフィルタ10hの構成について図面を参照しながら説明する。図25は、第8の実施形態に係るノイズフィルタ10hの積層体12hの分解斜視図である。図26は、ノイズフィルタ10hの等価回路図である。図25及び図26において、図2及び図3と同じ構成については、同じ参照符号が付してある。
積層体12hは、図25に示すように、誘電体層24aと誘電体層26cとの間に、誘電体層24gが設けられている点において、図2に示す積層体12aと相違する。以下に、積層体12hと積層体12aの相違点について説明する。
積層体12hは、図25に示すように、誘電体層24aと誘電体層26cとの間に、誘電体層24gが設けられている。該誘電体層24gには、コンデンサ電極層360,362,364,366が形成されている。コンデンサ電極層360,362,364,366はそれぞれ、z軸方向から平面視したときに、コンデンサ電極層60,62,64,66と重なるように形成されている。これにより、コンデンサ電極層60とコンデンサ電極層360とは、コンデンサC13を構成する。コンデンサ電極層62とコンデンサ電極層362とは、コンデンサC14を構成する。コンデンサ電極層64とコンデンサ電極層364とは、コンデンサC15を構成する。コンデンサ電極層66とコンデンサ電極層366とは、コンデンサC16を構成する。更に、コンデンサ電極層360,362,364,366のy軸方向の正方向側の端部にはそれぞれ、外部電極E1,E3,E5,E7と接続される引き出し部361,363,365,367が設けられている。
以上のような構成を有するノイズフィルタ10hは、図26に示す回路構成を有する。より詳細には、コイルL1,L2,L3,L4のそれぞれの両端間に、コンデンサC13,C14,C15,C16が形成される。そして、コンデンサ電極層360,362,364,366の形状や面積等を調整することにより、コンデンサC13,C14,C15,C16の容量を調整でき、ノイズフィルタ10hのコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズの除去特性を調整できる。
(その他の実施形態)
以下に、その他の実施形態に係るノイズフィルタ10i〜10nについて図面を参照しながら説明する。図27〜図29はそれぞれ、その他の実施形態に係るノイズフィルタ10i〜10kの積層体12i〜12kの分解斜視図である。図30は、図29のノイズフィルタ10kの等価回路図である。図31〜図33は、その他の実施形態に係るノイズフィルタ10l〜10nの積層体12l〜12nの分解斜視図である。
ノイズフィルタ10iは、図27に示すような積層体12iを備えていてもよい。ノイズフィルタ10iは、図18に示すノイズフィルタ12cと同じ図19に示す等価回路を有している。
また、ノイズフィルタ10jは、図28に示すような積層体12jを備えていてもよい。ノイズフィルタ10jは、図20に示すノイズフィルタ10dと同じ図21に示す等価回路を有している。
また、ノイズフィルタ10kは、図29に示すような積層体12kを備えていてもよい。ノイズフィルタ10kは、図30に示す等価回路を有している。ノイズフィルタ10kによれば、ベタ信号パターンを挿入して、磁気結合を調整することにより、ノーマルモード、コモンモード減衰において複数の共振点を得ることができる。
また、ノイズフィルタ10l〜10nは、図31〜図33に示すような積層体12l〜12nを備えていてもよい。
なお、第2の実施形態、第8の実施形態及びその他の実施形態では詳しく説明しなかったが、ノイズフィルタ10b〜10nにおいても、ノイズフィルタ10aと同じく、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数は、0.3以上0.7以下である。これにより、ノイズフィルタ10b〜10nにおいても、ノイズフィルタ10aと同様に、携帯電話のドライバとレシーバとの間におけるコモンモードノイズ対策及びノーマルモードノイズ対策を行うことができる。
なお、ノイズフィルタ10b〜10nについても、誘電体層24gが設けられてもよい。
なお、ノイズフィルタ10a〜10nにおいて、コモンモードチョークコイルを1つ又は3つ以上備えていてもよい。
(電子装置)
以下に、ノイズフィルタ10a〜10nを備えている電子装置について図面を参照する。図34は、ノイズフィルタ10a〜10nを備えた電子装置600の構成図である。以下の説明では、電子装置600は、ノイズフィルタ10aを備えているものとする。なお電子装置600は、例えば、携帯電話などであり、図34では、携帯電話等の一部を抽出して記載してある。
電子装置600は、図34に示すように、ノイズフィルタ10a、ドライバ602a,602b、レシーバ604a,604b及び信号線S1〜S8を備えている。
ドライバ602aは、互いに逆相の波形を有する2つの信号を生成し、信号線S1,S3に出力する。信号線S1,S3はそれぞれ、外部電極E1,E3に接続され、差動伝送路を構成している。信号線S2,S4はそれぞれ、外部電極E2,E4に接続され、差動伝送路を構成している。これにより、LCフィルタLC1は、信号線S1と信号線S2との間に接続され、LCフィルタLC2は、信号線S3と信号線S4との間に接続されている。レシーバ604aは、差動伝送路を構成している信号線S2,S4に接続されており、信号線S2,S4を伝送する2つの信号の差分信号を検出する。
ドライバ602bは、互いに逆相の波形を有する2つの信号を生成し、信号線S5,S7に出力する。信号線S5,S7はそれぞれ、外部電極E5,E7に接続され、差動伝送路を構成している。信号線S6,S8はそれぞれ、外部電極E6,E8に接続され、差動伝送路を構成している。これにより、LCフィルタLC3は、信号線S5と信号線S6との間に接続され、LCフィルタLC4は、信号線S7と信号線S8との間に接続されている。レシーバ604bは、差動伝送路を構成している信号線S6,S8に接続されており、信号線S6,S8を伝送する2つの信号の差分信号を検出する。
電子装置600によれば、コモンモードノイズが、ノイズフィルタ10a〜10nにより除去されるようになる。より詳細には、理想的な差動伝送路を流れる2つの信号の電流の和は一定である。よって、通常、コモンモードノイズは、差動伝送路を流れる2つの信号には生じない。しかしながら、差動伝送路では、ドライバ602a,602bのインピーダンスのばらつき等により、点D+,D−における信号の振幅及び位相が崩れてコモンモードノイズが発生する場合がある。そこで、ドライバ602a,602bとレシーバ604a,604bとの間に、ノイズフィルタ10a〜10nを挿入することにより、コモンモードノイズが除去されるようになる。
また、電子装置600によれば、ノーマルモードノイズが、ノイズフィルタ10a〜10nにより除去されるようになる。より詳細には、ノイズフィルタ10aでは、コイルL1とコイルL2との結合係数及びコイルL3とコイルL4との結合係数を0.3以上0.7以下としているので、携帯電話のドライバとレシーバとの間を伝送する差動信号に発生するノーマルモードノイズを効果的に除去できる。