JP4411213B2 - ネコ白血病ウィルスによるネコ感染症のようなオンコウィルス感染症に対するワクチン - Google Patents

ネコ白血病ウィルスによるネコ感染症のようなオンコウィルス感染症に対するワクチン Download PDF

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Description

本発明は、ネコ白血病ウィルスによる感染症に対してネコを保護することを可能にする、DNAに基づくワクチンに関する。
ネコ白血病ウィルス(FeLV)は、ネコ科集団において重篤な疾患を引き起こし、主要な死亡原因の一つとなる、ネコに特異的な世界中に蔓延するウィルスである。現在、感染率は、欧米のネコの12%から16%の間にある。
感染を克服できるネコもいるが、器官の中に生涯に渡ってウィルスが残存する可能性もある。このため潜在的に感染しているネコは、病原巣となると考えられる。
病気の根治をもたらすFeLV感染症の効果的治療は現在不可能である。現在実現し得る最善の成果は、病気の進行をしばらくの間押し留めることである。いくつかの化学療法剤をネコに投与することは可能であるが、それらはヒトの医療用なので副作用が大きな問題となる。現在インターフェロン治療は実験的段階である。
ウィルス成長抑止剤は不活性化することはできないので、治癒と定義できる成果をもたらすことはない。
FeLV感染の効果的管理は、ただワクチン接種によってのみ予防的に実行することが可能である。
現在利用が可能なワクチンは、不活性化されたFeLVウィルス、組み換え法によって生産されたタンパク質、所謂サブユニットワクチン、または、遺伝学的に修飾された生ワクチンの使用の内のいずれかに基づく。しかしながら、これらのクラスのワクチンは、ワクチン接種の効果が不十分であることの他に、いくつかの不利を呈している。
不活性化ウィルスから得られた調剤は、ワクチン接種された動物のほんの一部にしか所望の免疫をもたらさない。これらのワクチンは必ずタンパク混合物から成り、その混合物では、免疫原性の高い抗原が、免疫系による提示を求めて多数の他のタンパクと競合しなければならない。さらに、ワクチン接種後も、アレルギー反応や自己免疫疾患のような強い副作用の起こる可能性がある。
最近頻用されるワクチンは、生物工学的手法によって生産されたFeLVコートタンパクに、水酸化アルミニウムおよびサポニンをアジュバントとして加えたものから構成される組み換えワクチンである。このワクチンによるワクチン療法は、80%から95%のネコにおいて白血病に対する保護をもたらした(ルッツ等(Lutz et al.)1991、J.Am.Vet.Med.Assoc.199(10):1446−52)。
問題は、ワクチン接種部位に線維肉種の発生する危険性である。このワクチンのもう一つ不利な点は、惹起された免疫が主に、ウィルス中和性抗体の生産に基づくものであるということであるが、さらに新しい実験結果によれば(フリン等(Flynn et al.)2000、Immunology 101,120−125)、保護的免疫の形成には、細胞性免疫反応も大きな重要性を持つことが明らかにされている。
生ワクチンの使用は、実効的免疫という点では効果のあることが従来から示されてはいるものの、このワクチンは、使用されるウィルス株が、突然変異または組み換えによって新規の病原性ウィルス株に変換するという内在的危険を抱えている。さらに、全てのウィルス構造を含むこのようなワクチンを用いた場合、免疫化後、動物は感染したのか、ワクチン接種を受けたのか、を区別することができないということにも留意する必要がある。上記二つの理由から、このワクチンは実施には適切ではない。
感染可能または再製可能のウィルスから成るもう一つのワクチンの例は、FeLV表面タンパクを発現する、組み換えカナリアポックスルウィルスである。実験的な感染では、動物の83%が感染から保護された(ジャレット等(Jarrett et al.)1993、J.of Virology:2370−2375)。しかしながら、このワクチンには、組み換えが予測不可能であるという点で生ワクチンの上記欠点が含まれている。その上比較的難しく、そのため、生産し、その特徴を明らかにするのに費用がかかる。
前述の古典的および現代的組み換えワクチンのほかに、DNA発現構築体によってワクチン接種するという可能性が存在する。この場合、病原体の内の、ある免疫原部分の情報のみが、DNAという形でワクチン治療対象者に投与される。ワクチン接種後、FeLV抗原が、ワクチン接種を受けたネコの細胞によって発現され、このようにしてFeLウィルスにたいする免疫反応を刺激する。
このように、ある抗原に対して、その抗原をコードするDNA発現構築体を注入することによって免疫反応を実現する可能性については、最初に、タンおよびウルマー(Tang and Ulmer)がネズミについて報告し(タン等(Tang et al.)1992、Nature 365,152−154;ウルマー等(Ulmer et al.)1993、Science 259,1745−1749)、以来多数の動物種でその実効が証明されている。免疫原をコードする核酸によってワクチン治療を行うという一般的原理は、全ての高等動物に適用可能であると仮定してもよいと思われる。しかしながら、適当な抗原の選択、その抗原の核酸配列への符号化、および、適当なワクチン接種プログラムの選択に関しては、どのような用途の場合でもいくつかの問題を伴うものであり、その内のいくつかは当業者にとっても打ち勝ちがたいものである。このため、治験第2相または第3相試験の対象として許可されたDNAワクチンはこれまで無い。
遺伝子envおよびgagを発現する発現構築体によってネコにワクチン接種することが、仏国特許FR2751223号に記載されている。しかしながら、この中に概説される発明は、純粋に仮定的なもので、十分に開示的ではない。発現または免疫化実験も、あるいはその結果も示されていない。これは、純粋に思念に基づく出願である。
FeLV領域におけるDNA免疫化に関する実験は知られるが(ジャレット等(Jarrett et al.)2000 Immunology 101,120−125)、納得できる結果をもたらさなかった。この刊行論文では、ポリメラーゼ欠失を含む全ゲノムが発現構築体として接種された。このワクチン接種による臨床的成果は、ネコを感染またはウィルス血症から保護したところまでであった。前述のワクチン接種実験の実際上の不都合だけでなく、欠失変異体またはそのゲノムをワクチン接種に用いることは、欠失ウィルスと内在性または外来性ウィルス配列との組換えが起こり、新規の感染性病原体が生じる危険性が残存するという不利を有する。
本発明をもたらした数々の努力は、ジャレット(Jarrett)による前述の研究とは逆に、単離されたFeLV抗原のみを発現することを目標としていた。しかしながら、予備実験において、FeLVの“env”および“gag”遺伝子をコードする、相同の野生型配列を、サイトメガロウィルス(CMV)の早期直近プロモーターの制御下に発現する発現構築体を接種したところ、それは、ネコにおいて、抗体反応を引き起こさないことが示された。その後の実験でも、ヒトおよびネコの細胞系統において、“env”および“gag”それぞれの配列は発現されないこと、または、ごく僅かな程度にしか発現されないことが示された。この現象は、HIウィルスやその他のレンチウィルスの配列についても知られている(ワグナー等(Wagner et al.)2000、Hum. Gene Ther.11(17)、2403−2413)。感染細胞における野生型配列の発現は、ウィルスによってコードされたrevタンパクの先行発現に依存する。
このような発現制御は、レンチウィルスクラスに所属しないFeLウィルスについては知られておらず、“rev”制御と同様の機構は、文献において全く証明も予想もされていなかった。
哺乳類において好んで使用されるコドンにたいして発現構築体のコドンの使用を最適化することによって、タンパク発現の大幅な増大が可能であることが知られている(グランサム等(Grantham et al.)Nucleic Acids Res.1980,9:1893−912)。この方法は、HIV−1およびSIVの、各種ウィルス構造タンパクの発現レベルを上昇させるのに既に用いられ成功を収めている。この作用は、レンチウィルスの複製サイクルにおけるこれら後期タンパクの極端にAT豊富な転写物をもたらす“rev”依存性輸送機構を回避することに依存する。マウスにおいて、ヒトHIウィルスの“env”および“gag”タンパクのDNA配列のコドンを最適化することによって、野生型配列で見られるものよりも、その合成抗原に対し遥かに大きな抗体価が得られた(ハース等(Haas et al.)1998,J.Virol.72:1497−503;ワーグナー等(Wagner et al.)Hum.Gene Ther.2000,17:2403−13)。HIV−1に対するワクチン療法としてこのような最適化配列の合成法および用法が、WO00/029561およびWO97/48370から公知である。
もう一つの問題は、免疫原性抗原、またはその一部をコードするDNAの運用に関わる。DNA輸送(トランスフェクション)のために現在使用されるベクターの問題点は、ウィルス起源のベクターか−この場合は安全面に関する問題を生ずる(Lehrman,1999、Nature 401:517−518)、プラスミドのどちらかが用いられるという事実に基づく。プラスミドは細菌の醗酵によって生産されるものであるから、それは、所望の遺伝子の他に、その継代や選択にとって必要なDNA、および一般に使用される抗生物質に対する耐性遺伝子をも含む。この問題は、WO98/21322に詳細に論じられている。プラスミドDNAに基づいて遺伝子発現構築体を用いる場合には、抗生物質耐性遺伝子を伝播する内在的危険性が存在することであって、これは、大規模ワクチン接種事業では特に許されないことであることに触れておかなければならない。
さらに別のタイプのDNAベクターとして、EP0914318B1に開示されているもののような、共有的に閉鎖される最小局限DNA構築体がある。特に、これを、ペプチド結合DNA構築体の形で応用すると、未修飾のDNAと比べて驚くほど質的に改善された免疫反応をもたらす(DE10156679.4およびDE10156678.6をも参照)。
現在の遺伝子転送法によって引き起こされる不利な点は別として、FeLVに対する効果的で安全なワクチンはまだ開発されていない。今日まで、FeLV感染の治療は、動物の非特異的防衛の喚起と、二次的に付随する感染の治療に限られている。現在利用が可能なワクチンは前述の副作用を含む。
この従来技術の現状から脱け出し、FeLVによる感染に対するネコの保護を実現するワクチンの他に、好適な診断ツールを提供するのが本発明の目的である。
本発明によれば、上記目的は、コドン使用とスプライシングシグナルにおいて最適化され、構造タンパク“gag”および、FeLVのもっとも重要な膜タンパク“env”をコードする、合成的に作製されたDNA配列から成る混合物(カクテル)によって、ネコを免疫化することによって達成される。
コドンとシグナル使用に関する最適化の過程で、構造タンパク(“gag”)と、FeLVのもっとも重要な膜タンパク(“env”)において単一アミノ酸の置換をもたらす変異配列が得られた。驚くべきことに、変異アミノ酸配列を有するこれらのタンパクが本発明の利点をもたらした。この点で、本発明によるコドンとシグナル使用の最適化は、構造タンパク(“gag”)と、FeLVのもっとも重要な膜タンパク(“env”)のアミノ酸配列を変えるための戦略である。
本発明で使用される場合、下記の用語は次の意味を有するものとする:
“env”:ネコ白血病ウィルスの内側パッケージのコートタンパクをコードする遺伝子配列
“gag”:ネコ白血病ウィルスの内側パッケージの構造タンパクをコードする遺伝子配列
FeLV:ネコ白血病ウィルス
WT:野生型
WT“env”:NCBIデータベースアクセス番号M12500から抽出した、野生型の“env”DNA配列
WT“gag”:感染ネコの血液から得られた(実施例1参照)野生型“gag”DNA配列で、データベース配列ではないが、データベース配列と相同のもの
NLS:核局在シグナル配列
ODN:オリゴデオキシヌクレオチド
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
LeadFeLVenv(FeLVenv): シグナル配列を有するFeLV“env”配列
LeadFeLVenvgp85(FeLVenvgp85): シグナル配列を有するFeLV“env”配列
遺伝子配列“gag”は、ウィルスの内側パッケージの構造タンパクをコードし、遺伝子配列“env”は、コートタンパクをコードする。“env”配列によってコードされる全てのタンパク質の中でもっとも高い免疫原性を有するタンパクは、糖タンパクgp70である。ウィルス中和抗体は、gp70に対してネコの器官の中で生産され続ける。これらの抗体は、病原体の体内侵入後最初の免疫反応を構成する。この反応は、いくつかの状況では、感染を克服するのに十分である。
ウィルス中和抗体を誘発するのに、膜タンパクの方が好適であるか、分泌タンパクの方が好適であるかについては議論が今でも行われている。このために、“env”をコードする二つの異なる構築体が作製された。“env”遺伝子配列のp15配列は、抗体形成を抑制することによる免疫修飾性を有する少なくとも一つの配列長を含むことが知られている(Haraguchi et al.,1997、Journal of Leukocyte Biology,61,654−666)。このために、gp70とp15(gp85)をコードする構築体の他に、gp70のみを含み、膜貫通領域を持たない分泌型“env”タンパクの発現をもたらす別の構築体が作製された。
従って、gp70に対するウィルス中和抗体、および、T細胞仲介性免疫反応の両方を誘発可能とするワクチンは、これまでに利用されたワクチンに比較して際立った改善を呈することになるから、感染ネコの治療においても採用可能と考えられる。
体内においてより多くの抗原を発現し、より強力な免疫反応を惹起し、結果的にFeLV感染に対して、効果的で長期的な保護をもたらすように、“gag”および“env”の野生型配列が最適化された。最適化は、コドンの適応化と、コドン使用の最適化の両方を含む。
各アミノ酸は、いくつかのコドンによってコードすることが可能である。ある特定のコドンが翻訳時に読み取られる頻度は、ウィルス類、細菌類および脊椎動物の間ではっきりと分かる大きさで変動する。従って、細胞中の対応tRNAの出現頻度もまた変動する。ウィルスゲノムは、部分的に宿主細胞と異なるコドン使用頻度を示すが、これが、ウィルスの発現制御の一要素を含むことは極めて確からしい。この配列を、宿主特異的コドン使用頻度に適応させることによって、このようなウィルス制御機構を抑えつけ、抗原発現を実質的に増大させることが可能になる。
このために、本実験の目的は、ウィルスの配列を、脊椎動物ゲノムにとって最適となるコドン使用を表す配列となるように編集することによって、抗原のさらに強力な発現を実現することである。この目的のために、オリゴヌクレオチドからそのような最適化DNA配列の合成を可能とするクローニング戦略が開発された。
合成配列はプラスミドに挿入され、大腸菌に伝播され、制御のために配列決定され、その後、コードされたタンパクの発現を調べるために、ネコ細胞系統にトランスフェクトされた。
抗原の発現の証明は、ウェスタンブロットで行った。
FeLV野生型配列(WT)の“env”と“gag”から得られたタンパクの発現の証明は、ウェスタンブロットで行った。
“env”と“gag”の両方とも、免疫沈降でアッセイすると極めて僅かなバンドとして示されるものでしかない。驚くべきことに、コドン最適化“env”配列でも同じであった。ただ“gag”の場合にのみ、図1に示すように、コドン最適化によって、発現に顕著な改善がもたらされた。合成“env”遺伝子の発現不調を説明するために、他にも沢山の仮定を試みた末に、この合成“env”配列について、生物情報科学法によって予測されるスプライス部位について分析を行った。採用されたプログラム(コンプライン・ピーピーシー・マック・モーリー・テトラ(Complign PPC,Mac Molly Tetra)バージョン3.10a(Softgene GmbH))によって予測されたいくつかのスプライスシグナルを、点突然変異により欠失させた。これは、上記のような構造の存在は、使用するプロモーター背景下での遺伝子発現を抑制するという仮設を証明するためであった。驚くべきことに、この方策によって、“env”を、ウェスタンブロットにおいて強力なタンパクバンドとして提示することが可能となった(図2参照)。本発明による合成抗原配列は、その強力なバンドにより、抗原発現が好適に改善されていることを示した。
多くの所見から、発現系の発現の強度と免疫反応強度の間には、直線関係も存在しないし、発現ベクターによる必ずしも全ての処置が所望の強度の免疫を付与するものでもないことが示唆されている(フェリー等(Wherry et al.)Journal of Immunology 2002,168,pp.4455−4461)けれども、一般に、発現系の発現の強度は、その結果生じる免疫反応強度と連関すると想定されている。このため、一旦インビトロでの発現結果が得られると、コドン最適化およびシグナル最適化“env”をコードする、ペプチド結合発現ベクターでマウスを免疫化した。免疫反応惹起におけるこのようなペプチド結合構築体の利点は、EP0941318B1およびDE10156678A1の開示に詳細に説明されている。免疫反応惹起における、“env”のp15タンパクの免疫原性重要度を調べるために、本発明に従って“env”をコードする両遺伝子を用いた(配列番号7,8,9および10)。免疫化マウスの血清について、FeLVタンパク“env”に対する特異的抗体に関してウェスタンブロットを用いてアッセイした。第2免疫化後4週目の抗体レベルから、合成構築体は、体内においても、抗体形成の強力な刺激をもたらすことがはっきりと示された。それと呼応して、第4群の6匹のマウスの内5匹は、発明の抗原配列に対して強力な免疫反応を示したが、一方、WT配列(第1群)は、6匹の動物の内2匹において弱い免疫反応をもたらしただけであった(図3参照)。
DNA発現構築体としてプラスミドを使用することが可能であるが、本発明によれば、免疫学的に最小限度に定義された発現構築体が好ましい。この構築体は、CMVプロモーター、イントロン、それぞれの遺伝子配列、および、ポリアデニル化配列のみから成る、直線的で、共有的に閉鎖される発現カセットである。この共有的に閉鎖される最小限DNA構築体は、下記ではMidgeベクター(MIDGE:INIMALISTIC MMUNOLOGICALLY EFINED ENE XPRESSION VECTOR)と呼ばれる。EP0941318B1を参照されたい。Midge構築体は、その医学的機能に必須ではない構造を回避することによって、通常の遺伝子転送システムの不利を回避できるという利点を有する。
トランスフェクションのためには、従来技術で既知の生物学的、化学的および/または物理学的方法を採用することが可能で、例えば、弾丸式導入によるトランスフェクションが可能である。本発明のある好ましい実施態様では、トランスフェクションは、注射器、または、注射針無しの注入装置による皮内注入によって実行される。
本発明は、哺乳類細胞においてFeLV抗原の発現をもたらす発現構築体に関わる。従って、本発明は、ネコにおいて、FeLVによる感染からの保護をもたらし、かつ安全面をも考慮するワクチンを提供する。本発明によれば、従来のアジュバントは使用されず、従って注入部位における線維肉腫形成の危険は排除される。
さらに別の有利な方法として、ペプチド仲介性遺伝子転送のような生物学的トランスフェクション法がある。一例を挙げるならば、本発明によって提供される、少なくとも“env”と“gag”配列とをコードするDNA発現構築体は、好ましくはシミアンウィルス40の核局在化シグナル(NLS)であるペプチドに共有的に付着される。
マウス実験で陽性の結果が得られた後、ネコを発現構築体で免疫化し、その抗体状態を定量した。
付属の配列プロトコールは、本出願および本開示の一部をなすものであるが、下記の配列を含む。
配列番号 配列名/特記事項
配列番号1 “env”遺伝子野生型のDNA配列
配列番号2 “gag”遺伝子野生型のDNA配列
配列番号3 “env”遺伝子野生型のタンパク配列
配列番号4 “gag”遺伝子野生型のタンパク配列
配列番号5 突然変異“gag”遺伝子のDNA配列
配列番号6 突然変異“gag”遺伝子のタンパク配列
配列番号7 突然変異“env”遺伝子(gp85)のDNA配列。gp70配列が、免疫原性p15タンパクをコードする配列分だけここでは延長されている。
配列番号8 突然変異“env”遺伝子(gp70)のDNA配列
配列番号9 突然変異“env”遺伝子(gp85)のタンパク配列
配列番号10 突然変異“env”遺伝子(gp70)のタンパク配列
配列番号11 “env”遺伝子(gp70)野生型のDNA配列、配列番号1から得られたもの(NCBIデータベース、アクセス番号M12500)
配列番号12から配列番号40まで 下記の実施例によって用いられたプライマーの配列。
本発明によれば、ネコの細胞においてネコ白血病ウィルス(FeLV)の遺伝子産物発現のためのDNA発現構築体が提供される。この構築体は、ネコ科において作動が可能なプロモーター配列と、FeLVの生得の構造タンパク(“gag”)および/または膜タンパク(“env”)をコードする野生型ヌクレオチド配列に関連する、少なくとも一つのヌクレオチド配列とから成り、FeLVの前記ヌクレオチド配列は変異体であり、開放または隠蔽ドナーおよび/またはアクセプター配列、あるいは、それと高度に相同な部分または同一の部分を含まない。FeLVの生得の膜タンパク(“env”)に対して高度に相同ではあるが、同一ではないタンパクは、対応する野生型に対し、少なくとも98%の相同性を示す。好ましいのは、配列番号5、7および/または8を含む発現構築体である。
構造または膜タンパクは、対応するヌクレオチド配列によって完全に、または部分的にコードされる。発現構築体は、プラスミドか、免疫化ポリヌクレオチド配列が発現構築体の形を取る発現構築体である。後者の構築体は、直線状2本鎖領域を含み、前記2本鎖領域を形成する1本鎖同士は、デオキシリボヌクレオチドから構成される短い1本鎖ループによって相互に結ばれ、また、前記2本鎖を形成する1本鎖同士は、ワクチン接種された動物の中で作動が可能なプロモーターによって制御されるコード配列と、ターミネーター配列のみから成る。
トランスフェクションを向上させるために、発現構築体を、一つ以上のペプチドに共有的に結合させることも可能である。3から30個のアミノ酸から成り、その少なくとも半分はアルギニンとリジンから成るグループから選択されたものであるペプチド、特に、アミノ酸配列PKKKRKV(プロリン−リジン−リジン−リジン−アルギニン−リジン−バリン)を有するペプチドが好ましい。
本発明によれば、ネコ白血病ウィルス(FeLV)の生得の構造タンパク(“gag”)に対して高度に相同なタンパク(配列番号6)、または、FeLVの生得の膜タンパクgp85(“env”)に対して高度に相同なタンパク(配列番号9)、または、FeLVの生得の膜タンパクgp70(“env”)に対して高度に相同なタンパク(配列番号10)であるタンパク質も提供される。これらのタンパク質は次に抗体産生(モノクロナールまたはポリクロナール抗体)に使用することが可能であり、これらの抗体は次に、ネコ白血病ウィルスによるネコの感染を診断するための診断キットの一部となることが可能である。
本発明による発現構築体は、製薬組成物の一部として、ネコ科、特にネコにおいて、予防的および/または治療的免疫を形成するための、特にワクチンの一部として提供される。
本発明の、さらに別の有利な実施態様が従属請求項および説明から得られる。FeLV治療用ワクチンとしての本発明による製薬組成物の驚くべき作用、および本発明の方法が、図と実施例によって説明される。この背景において、略号は下記の意味を持つ。
Midge−NLS−FeLVenvgp85(−)またはMidge−NLS−FeLVgp85(−) p15含有、コドンおよびシグナル最適化“env”配列(gp85)をコードする、NLS結合Midgeベクター
Midge−NLS−FeLVenvgp70(−)またはMidge−NLS−FeLVgp70(−) p15非含有、コドンおよびシグナル最適化“env”配列(gp70)をコードする、NLS結合Midgeベクター
Midge−NLS−WT “env”遺伝子のWTをコードするNLS結合Midgeベクター
mAK vs.gp70 gp70に対するモノクロナール抗体
陽性コントロール ロイコゲンワクチン
バッファー PBS、陰性コントロール
野生型(WT)配列
選択された抗原の野生型配列、特に“gag”遺伝子のものは、感染ネコの血液から得られた。“env”WTのDNA配列は配列番号1に示され(NCBIデータベース、アクセス番号M12500)、“gag”WTのDNA配列は配列番号2に示される。対応アミノ酸配列は、配列番号3(“env”)と配列番号4(“gag”)に示される。
“gag”WT用プライマー
2箇所のEco31I制限部位を取り除くために、下記の変異体プライマーによる3 PCRを行った:
gag−mut1−rneu(配列番号12)
AATTAAGAGCTCCACGTCTCCCCCCGCTAACAGCAACTGGCG
gag−mut2−l(配列番号13)
AATTAAGAGCTCCAGGTCTCCGGGGCTCCGCGGGGCTGCAAGACG
gag−mut3−r(配列番号14)
AATTAAGAGCTCCACGTCTCCTTCCCTTTTGTTGTATATCTTTTCTGC
gag−mut4−l(配列番号15)
AATTAAGAGCTCCAGGTCTCCGGAAACCCCAGAGGAAAGGGAAGAAAG
得られた3種の配列の連結後、下記のプライマーを用いてPCRを行った。
Felvgag−l(配列番号16):CGGATAAGGTACCATGGGCCAAACTATAACTACC
Felvgag−r(配列番号17):TTCTCAGAGCTCTTAGAGGAGAGTGGAGTTGGCGGGT
“env”WT用プライマー
envl(配列番号18):CGGATAAGGTACCATGGCCAATCCTAGTCCACC
envr(配列番号19):AGTTCTCAGAGCTCTTAGGCTGTTTCAAGGAGGGCTT
コドンの最適化
ネコ用コドン使用テーブルを、コドン使用データベース(http://wwww.kazusa.or.jp/codon/)から入手した。二つのWT配列の全てのアミノ酸について、もっとも高頻度に利用されるコドンを用いた。この規則にたいして下記の制限を用いた。
配列において、あるアミノ酸が3回以上出現する場合、4回目以降は、2番目に高頻度のコドンを用いた。これは、tRNAが突然極端に枯渇することを回避することによって、転写効率を確保するためである。
制御不能な免疫刺激作用を避けるため、Cがあってすぐその後にGの続く配列は避けた。Eco31I、KpnIおよびSacIの制限部位を避けるため、塩基配列GAGCTC、GGTACC、GGTCTCおよびGAGACCを、別の、同様に高頻度に利用されるコドンを選ぶことによって排除した。
FeLVenvのクローニング
18から28塩基長のオリゴヌクレオチドを購入した(TibMolbiol)。合計51本のオリゴヌクレオチドをアニーリングとライゲーションによって接合した。重複部は4塩基であった。どの重複部もただ一度きりであり、パリンドロームではないことが確認された。各単一オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖にたいしてハイブリダイズした鎖であり、これは、単一鎖(1本鎖およびアンチセンス1本鎖)をキナーゼバッファー中で約80℃に加熱し、それからゆっくりと室温に冷却して得た。その後、ATPとポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)およびオリゴヌクレオチドを1時間リン酸化した。次に、第1工程で、配列において互いに隣り合うオリゴヌクレオチドを接触させ、連結した(オリゴヌクレオチド1+2、オリゴヌクレオチド3+4)。1時間のライゲーション後、オリゴヌクレオチド1+2のライゲーション反応分液と、3+4のライゲーション反応分液を接触させた。この最後のライゲーション反応分液を取り、両側プライマーによるPCRを実行した。期待された長さのPCR産物が得られた場合には、そのPCR産物を、TAクローニングによってTOPOベクターpCR2.1に挿入し、配列を確認した。これを同様にして、完全遺伝子の他の全ての断片について実行した。4本の断片が得られた。個々の断片を、コントロール挿入プラスミドからEcoRIによって切り出し、Eco31Iによる消化後連結した。適正な長さを持つ完全ライゲーション産物を、BamHIおよびSacIによって消化し、ゲル抽出後の、同様に調製されたベクターpMCV1.4に挿入した。その後、配列を配列決定によって確認した。得られたプラスミドは、pMC1.4−FeLVenvと命名した。
4種の接合断片のためのプライマー配列は:
断片1
左側プライマー(配列番号20):ATATTGGATCCCATGGCCAACCCCTCCC
右側プライマー(配列番号21):ATTATGGTCTCCTGCTGCTTCTTCCTGTCTGTGG
断片2
左側プライマー(配列番号22):TAATAGGTCTCCAGCAGCAGACCTACCCCT
右側プライマー(配列番号23):TAATAGGTCTCTGTGAACAGGGCAATGGGGTCA
断片3
左側プライマー(配列番号24):TATTTGGTCTCTTCACAGTGTCCAGGCAGGTGTC
右側プライマー(配列番号25):TATTAGGTCTCAGCTTGTGCTGGGGGGTGG
断片4
左側プライマー(配列番号26):AATAAGGTCTCCAAGCTGACCATCTCTGAGGTGT
右側プライマー(配列番号27):ATTAAGAGCTCTCAGGCTGTTTCCAGC
全体配列
左側プライマー(配列番号20):ATATTGGATCCCATGGCCAACCCCTCCC
右側プライマー(配列番号27):ATTAAGAGCTCTCAGGCTGTTTCCAGC
LeadFeLVenvのためのクローニング戦略
“env”タンパクの加工を実現するために、シグナル配列(リーダー配列)を、コドン最適化された“env”配列の前に挿入した。このシグナル配列は、22から30bpの長さを持つ8本のODNをアニーリングとライゲーションによって接合して得た。最後のライゲーション工程後、リーダー配列の増幅のためにPCRを実行した。
完全シグナル配列のためのプライマー配列:
左側プライマー(配列番号28):ATTGCCGGTACCATGGAGTCCCCCACCACC
右側プライマー(配列番号29):ATCAGAGGTCTCCCATGCCAATGTCAATGGTGAAC
PCR産物の3’末端に、Eco31I認識配列を作製した。このために、消化後、下記のPCR産物の同様の消化によって形成されるオーバーハングの5’末端に対して逆相補的なオーバーハングが形成された。
FeLVenvのためのPCR:
配列の5’末端に、Eco31I認識配列を作製した。
使用プライマー配列:
左側プライマー(配列番号30):GATCTGGGTCTCCATGGCCAACCCCTC
右側プライマー(配列番号27):ATTAAGAGCTCTCAGGCTGTTTCCAGC
二つのPCR産物をEco31Iによって消化した後、これらを精製し、互いに連結させた。このライゲーション産物をさらにPCR処理した。その際、5’末端にはKpnIに対する、3’末端にはSacIに対する認識配列を作製した。
使用プライマー配列:
左側プライマー(配列番号28):ATTGCCGGTACCATGGAGTCCCCCACCACC
右側プライマー(配列番号27):ATTAAGAGCTCTCAGGCTGTTTCCAGC
このPCR産物をKpnIとSacIによって消化し、同様に消化されたベクターpMCV1.4に挿入した。得られたプラスミドはpMCV1.4−LeadFeLVenvと命名した。
LeadFeLVenvgp85のためのクローニング戦略
gp70およびp15から成る、完全な“env”ポリタンパクをクローンした。このために、プラスミドpMCV1.4−FeLVenvp15由来のp15WTをPCRにて増幅し、前述のように、pMCV1.4−LeadFeLVenvの後ろに挿入した。このp15の増幅の際に、Eco31I認識配列を5’末端に作製した。
1.PCR:
使用プライマー配列:
左側プライマー(配列番号31):AATTATGGTCTCGCAGTTCAGACAACTACAAATGGC
右側プライマー(配列番号32):AATTATGAGCTCTCAGGGCCTGTCAGGGTC
2.PCR:
LeadFeLVenvの配列を増幅した。その際、認識部位を3’末端に作製した。
使用プライマー配列
左側プライマー(配列番号33):AATTATGGTACCATGGAGTCCCCCACCC
右側プライマー(配列番号34):TATAATGGTCTCAACTGGGCTGTTTCCAGCAGGGC
二つのPCR産物をEco31Iにて消化した後、これらを互いに連結した。このライゲーション産物を、下記のプライマー配列を用いてPCRにて処理した。
左側プライマー(配列番号33):AATTATGGTACCATGGAGTCCCCCACCC
右側プライマー(配列番号32):AATTATGAGCTCTCAGGGCCTGTCAGGGTC
このようにして、5’末端にはKpnI認識部位が形成され、3’末端にはSacI認識部位が形成された。このPCR産物をKpnIとSacIによって消化した後、同様に消化されたpMCV1.4に連結し、クローンした。得られたプラスミドは、pMCV1.4−LeadFeLVenvgp85と命名された。
LeadFeLVenvgp85(−スプライス)のスプライス信号の最適化
LeadFeLVenvのDNA配列について、http://www.fruitfly.org/seq tools/.htmlに従って、予想されるスプライス信号配列(部位)に関して分析した。塩基100と140の間に、97%の確率を持つ部位が認識された。塩基119の交換後(AからGへ、GlnからArgへのアミノ酸交換)、もはや予想される部位は認識されなかった(下位閾値=40%確率)。変異配列の作製とクローニングは下記のように実行した。
変異配列作製のためのPCR:
先ず、LeadsynFeLVenvの塩基1−123から成る断片(1)をPCRによって増幅した。用いた前進プライマーは、PCR産物の5’末端に制限酵素KpnIの認識部位を形成する。
逆行プライマーの配列は、PCR産物が変異(塩基119=G)を含むように選択された。さらに、PCRは、PCR産物の3’末端に制限酵素Eco31Iの認識部位を形成した。一般に、Eco31Iは、認識部位の塩基2−5下流に4塩基の5’オーバーハングを形成する。
PCR産物のEco31Iによる消化によって、断片1の末端に形成される、4塩基5’オーバーハングは、LeadFeLVenv配列の塩基120−123に対応する。次に、この配列は、LeadFeLVenvを制限酵素BgLIIで消化することによって形成されるオーバーハングに対応する。なぜなら、Lead−FeLVenvの塩基119−124は、BgLIIの認識部位を構成しているからである。
塩基1−123を、KpnIとBgLIIによって、構築体pMCV1.4−LeadFeLVenvから切り出す。
KpnIおよびEco31IによるPCR産物断片1(塩基119=Gの変異を有する)の消化の後、この消化物を連結し、あらかじめKpnIおよびBgLIIによって消化したベクターpMCV1.4−LeadFeLVenvにてクローンし、精製した。得られたプラスミドをpMCV1.4−FeLVenvgp70(−スプライス)と命名した。
使用プライマー配列
左側プライマー(配列番号28):5’−ATTGCCGGTACCATGGAGTCCCCCACCACC
右側プライマー(配列番号35):5’−ATATTAGGTCTCAGATCCGGGGGGGGGAGGG
同様に、このPCR断片1を連結し、あらかじめKpnIおよびBgLIIで消化したベクターpMCV1.4−LeadFeLVenvgp85(−スプライス)にてクローンし、精製した。得られたプラスミドをpMPC1.4−FeLVenvgp85(−スプライス)と命名した。
FeLVgagのためのクローニング戦略
FeLVgagのクローニングは、3に記述した過程と同様にして実行した。配列を、3種の単一断片に対してオリゴヌクレオチドをアニールし、連結することによって形成した。この配列は、合計2x31本のオリゴヌクレオチド(前進および逆行鎖)を組み合わせて得られたものである。この断片をPCRにおいて鋳型として用い、下記のプライマー配列によって増幅した。
断片1:
左側プライマー(配列番号36):ATATTGGTCTCAGGAGAGGGACAAGAAGAG
右側プライマー(配列番号37):AATATGGTCTCTCAGCCTGCTGGCGATGGGGC
断片2:
左側プライマー(配列番号38):ATTATGGTCTCTGCACCTGAGGCTGTACAGGC
右側プライマー(配列番号39):AATATGGTCTCGGTGCTCCCTGCCGGCGGGGGTGCA
断片3:
左側プライマー(配列番号38):ATTATGGTCTCTGCACCTGAGGCTGTACAGGC
右側プライマー(配列番号40):AATATGGTCTCTCTCCTCCTGCCTCTGC
全断片用プライマー:
左側プライマー(配列番号36):ATATTGGTCTCAGGAGAGGGACAAGAAGAG
右側プライマー(配列番号40):AATATGGTCTCTCTCCTCCTGCCTCTGC
断片1、2および3は、中間でTOPOベクターpCR2.1.にてクローンし、次いでEco31Iで消化し、抽出した。1,2および3から得られたライゲーション産物は、KpnIおよびSacIによって消化し、pCMV1.4にクローンした。得られたプラスミドはpCMV1.4−FeLVgagと命名した。
細胞のトランスフェクション、発現の証明
f3201細胞系統のネコ細胞を、プラスミドpMCV1.4−FeLVenvp85(−スプライス)、pMC1.4−FeLVenvgp70(−スプライス)、FeLVgag、および、“env”と“gag”に対するWT含有のプラスミドpMOKによって、250Vと1050μFの電気穿孔を通じてトランスフェクトした。
タンパクの発現は、ウェスタンブロット法によって証明した。アッセイではマウスモノクロナール抗体を用いた。陽性コントロール:f3201細胞系統のFeLV A感染細胞。
ペプチド結合Midgeの作製
プラスミドpMCV1.4−FeLVenvgp85(−スプライス)、pMCV1.4−FeLVenvgp70(−スプライス)、および、pMCV1.4−FeLVgagを、制限酵素Eco31Iによって37℃で一晩消化した。この制限消化によって2本の断片が生成された。一方は、カナマイシン耐性遺伝子と、他の、そのプラスミドを細菌中で継代するのに必要な配列から成っていた。他方の断片は、MIDGE−DNAの一部となるべき配列から成っていた。すなわち、強調されたCMVプロモーター、キメライントロン、対応遺伝子配列、および、SV40のポリアデニル化配列である。
5’リン酸化ヘアピンオリゴヌクレオチド(TIBMolBiol、ベルリン)、5’−PH−GGGAGTCCAGT xT TTCTGGAC−3’および5’PH−AGG GGT CCA GTT TTC TGG AC−3を、制限酵素Eco31Iの存在下に、酵素T4−DNAリガーゼにより37℃で一晩、MIDGE形成DNA断片に対して連結した。この反応を70℃に加熱して停止させた。得られた核酸混合物を酵素T7−DNAポリメラーゼによって処理した。MidgeDNAを、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製し、イソプロパノールによって沈殿させた(EP0941318B1参照)。
ペプチド結合ODNの生成
NLSペプチドPKKKRKVを2工程でODNに結合した。先ず、オリゴヌクレオチド修飾体5’−PH−d(GGGAGTCCAGT xT TTCTGGACであって、xTはC−アミノリンカーを有するアミノ修飾チミン塩基)(0.1mM)を、室温(RT)でPBSに溶解したsulfo−KMUS(5mM)で活性化した。120分後、50mMのトリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタンを加えて反応を停止させ、活性化ODNを、エタノール沈殿(300mM NaOAc、pH5.2、5.5mM MgCl、70%エタノール)、遠心、および70%エタノールによる1回の洗浄の後、得た。このようにして得られたODN(0.1mM)をPBSに溶解し、ペプチド(0.2mM)と室温で1時間反応させた。反応は、ゲル電気泳動(3%)と臭化エチジウム染色でチェックした。得られたNLS結合ODNをHPLCにて精製し、前述のMIDGE−NLS構築体の合成に用いた。
マウスにおける抗体アッセイ
各6匹のBALB/cマウスから成る五つのワクチン接種群を形成した(表1参照)。全群(コントロール群を除く)において、基本的抗原は、免疫修飾されたタンパクp15を含む、または、含まない、“env”タンパクの最適化配列である。コード配列、および、その配列に先行するサイトメガロウィルスプロモーター(CMV)を、実施例8に従って、直線状2本鎖分子として用いた。コントロールとして、バッファー、通例ワクチン(ロイコゲン)、および“env”タンパクのWTを用いた。最初の免疫化後(50μg DNA、1mg/ml、皮内)、2回目の免疫化(ブースト)を15日目に行った。血液を、14、28および42日目に採取した。この血液サンプルを、“env”に対する特異的抗体についてアッセイした。
Figure 0004411213
結果を図3に示す。
ネコの免疫化
合成配列が、ネコにおいて体液性並びに細胞性免疫反応を惹起するかどうか調べるために、下記のワクチン接種プログラムを処方した(表2)。
Figure 0004411213
最初の2群のネコは、PBSバッファーに溶解したそれぞれ合計600μgのDNAによって二度免疫化した。ペプチド結合発現構築体を、頚部皮内注射によって投与した。免疫反応を12週間に渡って追跡した。2回目の免疫化を4週目に実行した。週毎に採取された血液サンプルのサイトカイン状態から、免疫反応の方向性(Th1、Th2)に関する手がかりが得られるものとする。IL−4はTH2反応の指示薬と想定され、IL−2およびインターフェロン−ガンマは、主にTH1免疫反応の指示薬と想定された。ロイコゲンワクチンは組み換え“env”タンパクを含んでおり、陽性コントロールとして使用された。
用いた抗原に対する抗体は、ウェスタンブロットとELISAによって定量した。
サイトカインIL−2、IL−4およびインターフェロン・ガンマをコードするmRNAの量は、リアルタイムPCRによって定量した。
表2に挙げたワクチン接種プログラムによるネコの免疫化後の体内結果
“env”タンパクに対する抗体の半定量的アッセイをウェスタンブロットによって実行した。実験0週目および12週目にネコから得た血漿サンプルを試験した。0週目では、予想通り“env”に対する抗体は認められなかった。表3に(+)として挙げられている弱いバンドは非特異的なものである。12週目では、1、2および4群の全ての動物が、1匹のネコを例外として、明白な抗体反応を示した。動物患者に見られたこの結果は、マウスにおける予備実験の結果を裏付けるものである(実施例10参照)。
この表における記号の意味: +++ 極めて強いバンド
++ 強いバンド
+ 明瞭なバンド
(+) 弱いバンド
バンドの強度は、免疫化されたネコの血漿における抗体濃度を表す。
Figure 0004411213
ワクチン接種によって付与される保護の評価としての感染
達成された高度の抗体生産が、本当にFeLウィルスによる感染にたいして保護を付与するものであるのかどうかを評価し、従って、本発明によるワクチン接種の効力を確認するために、次に感染による実験を行った。各10匹のネコから成る4群に対して、それぞれの構築体を、注射針無しの注入装置を用い皮内に二度(0日目および21日目)ワクチン接種した(表4)。発現構築体として、NLSペプチド結合Midgeベクターを用いた。最後のワクチン接種後21、22および23日目に、ネコを生のウィルスによる試験感染で感染させた(Rickard株、>10e6フォーカス形成単位/ml)。ワクチンの効力は、ネコが、この試験感染後に保護されたかどうかに従って判定した。ネコは、その血液の中にウィルス粒子を持っておらず(血清陰性ネコ)、かつ、その血球の中にウィルスDNAを持っていない場合を保護されているとした。ウィルス粒子をアッセイするために、ネコの血清についてELISAによって抗原p27の有無を調べた。組み込まれたウィルスDNA、所謂プロウィルスDNAの量は、Taqman PCRによって定量した。下記のようなワクチン接種プログラムを処方した。
Figure 0004411213
陰性コントロールとしてPBSバッファーを用いた。
結果は下記のように要約される。表4は、ウィルスタンパクp27の存在に関するネコの血清アッセイの結果を示す。このテストは、FeLVウィルス血症の診断用として一般に受容されているアッセイである。平行的に、同じネコの白血球についても、プロウィルスDNAの有無について分析した(データ図示せず)。ウィルスタンパク不在のネコは全てプロウィルスDNAについても不在であった。
上記二つの試験システムは、生体におけるウィルス発生の別々の工程を定めるものであるから、二重の否定的結果は、ウィルスはこの動物の体内では増殖できないこと、すなわち、保護と等価的であることを示す。
2群および3群では、ネコの内の数匹において、FeLVによる感染に対する保護が可能であった。
2群では、10匹のネコの内の2匹が、ウィルスタンパクに対しても、プロウィルスDNAに対しても無縁であった。このワクチン保護は、本発明のワクチン(配列番号5)の投与に基づくものであった。
3群では、FeLウィルスによる感染に対して、動物の40%を本発明のワクチン(配列番号8)で保護することが可能であった。これは、1群と比較して感染ネコの有意な低下である。
これらの動物では、その血清と血液サンプルにおいてウィルスタンパクも、プロウィルスDNAも検出されなかった。第3群の4匹のネコにおいて保護を実現するために、1回の注射当たり50μgというごく僅かの用量がそのネコの保護のために十分であったことは注目に値する。これは有利である。なぜなら、投与されるDNA濃度が低いので、ワクチンの生産コストは急速に低減されるからである。
1群(コントロール群)の動物は全てその血液の中にウィルス粒子を示した。すなわち、その動物は保護されず、試験感染にたいして完全に受容的であった。
免疫化実験全体を通じて、注入部位における局所的刺激作用としての副作用も、実験動物の健康の一般状態を乱す干渉も観察されなかった。
WT“gag”タンパクとコドン最適化“gag”タンパクのインビトロ比較である。負荷したのは、下記の構築体によってあらかじめトランスフェクトさせたネコ細胞から得られた分解液である。“gag”前駆体は55kDのサイズを有する。
レーン1+2:“gag”WTをコードする発現構築体
レーン3:コドン最適化“gag”をコードする発現ベクター
レーン4:非感染ネコの細胞、陰性コントロール
レーン5:ブランク
レーン6:ウィルス感染ネコの細胞、陽性コントロール
レーン7:Boaタンパクマーカー
WTによる発現は極めて弱いタンパクバンドを示すが(1および2)、一方、本発明の配列によって強力な発現が達成された(3)。感染ネコの細胞を比較基準として用いた(6)。“gag”は、感染細胞においてタンパク分解酵素によって分断されてFeLVの構造タンパクとなる前駆体タンパクを意味する。最強の免疫原は構造タンパクp27であり、これは、全体ウィルスに対する抗血清によってよく認識される。レーン6において、55kDaの全体“gag”を表すバンドと、27kDaの両方が認識される理由がこのことによって説明される。この状況とは対照的に、レーン3は、ウィルス粒子は含まないが、“gag”遺伝子によってトランスフェクトされた細胞を含む。見かけ上は、これによって、“gag”遺伝子産物がタンパク分解酵素によってウィルスタンパクに変性されることはなく、全前駆体タンパクが、細胞タンパク分解酵素によって非特異的変性を受けるだけである。
WT“env”遺伝子と、コドン最適化“env”配列(gp85)発現のインビトロ比較である。負荷したのは、下記の構築体によってあらかじめトランスフェクトさせたネコ細胞から得られた分解液である。
レーン1:Boaタンパクマーカー
レーン2:非感染ネコ細胞、陰性コントロール
レーン3:ウィルス感染ネコ細胞、陽性コントロール
レーン4:ブランク
レーン5:ウィルス感染ネコ細胞、沈殿、陽性コントロール
レーン6:非感染ネコ細胞、沈殿、陰性コントロール
レーン7:“env”の特異的証明のための追加の陰性コントロール
レーン8:ブランク
レーン9:コドンおよびシグナル最適化FeLVenvgp85(−)をコードする発現ベクター
レーン10:ブランク
レーン11:コドン最適化FeLVenvgp70(−)をコードする発現ベクター
レーン5のコントロールは、envgp85発現の陽性コントロールとして使用が可能な明瞭なタンパクバンドを与える。レーン9は、本発明の配列FeLVenvgp85(−)が、gp85タンパクの発現を誘発することを示す。レーン11は、本発明のFeLVenvgp70(−)を示す。70kDaバンドが見られないことは、gp85とは対照的に、envgp70は分泌タンパクであることから説明される。従って仮に、細胞分解液中にあったとしても、検出が困難である。
“env”をコードする発現構築体によってマウスを免疫化した後におけるインビボ結果。略語は下記の意味を持つ。
A:陽性コントロール
B:バッファー
抗体測定は、第2回免疫化の4週間後に行った。第3群では、6個のマウス血清の内3個が抗体陽性であり(矢印下のレーン:Midge−NLS−FeLVgp85(−))、第4群では、5個の血清が強い陽性であり、1個が弱い陽性であった(矢印下のゲルレーン:Midge−NLS−FeLVgp70(−))。一方、第5群の、WTで免疫化した動物では、僅か2例において極めて弱い陽性信号が示されただけであった(矢印下のゲルレーン:Midge−NLS−WT)。本実験では、WT配列に比べて、最適化配列は、インビボにおいても遥かに改善された抗体形成をもたらすことが示され、インビトロの実験結果が確認された。
コドン最適化“gag”遺伝子(配列番号5)に対する、野生型“gag”遺伝子(配列番号2)のDNA配列比較。類似性:74.51%。 コドンおよびシグナル最適化“env”遺伝子(gp70、配列番号8)に対する、野生型“env”(配列番号1のgp70領域)のDNA配列比較。類似性:75.75% コドンおよびシグナル最適化“env”遺伝子(gp85)(配列番号7)に対する、野生型“env”遺伝子(配列番号1)のDNA配列比較。類似性:80.25% コドン最適化“gag”タンパクのタンパク配列(配列番号6)に対する、野生型“gag”タンパク(配列番号4)のタンパク配列比較。類似性:98.62% コドンおよびシグナル最適化“env”タンパク(gp70)のタンパク配列(配列番号10)に対する、野生型“env”タンパク(配列番号3)のタンパク配列比較。類似性:98.75%。 コドンおよびシグナル最適化“env”タンパク(gp85)のタンパク配列(配列番号9)に対する、野生型“env”タンパク(配列番号3)のタンパク配列比較。類似性:98.60%。
結果から、FeLVの“env”と“gag”両遺伝子のコドンおよびシグナル最適化DNA配列は、対応する野生型に対して少なくとも74%の相同性を示すことが明らかになった。このことから、少なくとも約98%の相同性を持つ、“env”および“gag”タンパクから成るタンパク配列が得られる。他にも、同様の結果をもたらし、かつ元の野生型と、最適化によって得られるタンパク配列の間に高度の相同性が存在する、上記のような、FeLVの“env”および“gag”に関するDNA配列の最適化が考えられる。このような最適化も、本発明の範囲内にあるものと理解されなければならない。
配列表
Figure 0004411213
Figure 0004411213
Figure 0004411213
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Claims (14)

  1. ネコの細胞においてネコ白血病ウィルス(FeLV)の遺伝子産物を発現させるためのDNA発現構築体であって、ネコ科において作動が可能なプロモーター配列、並びに、配列番号6で示されるFeLVの構造タンパク(“gag”)及び/又は配列番号9あるいは配列番号10で示されるFeLVの膜タンパク(“env”)をコードしている1つ以上の核酸配列を含む、構築体。
  2. “gag”構造タンパクをコードしている配列番号5の突然変異核酸配列を含むことを特徴とする、請求項1のDNA発現構築体。
  3. env−gp85膜タンパクをコードしている配列番号7の突然変異核酸配列を含むことを特徴とする、請求項1のDNA発現構築体。
  4. env−gp70膜タンパクをコードしている配列番号8の突然変異核酸配列を含む特徴とする、請求項1のDNA発現構築体。
  5. 前記の核酸配列がコードしている構造及び/又は膜タンパクに完全に含まれることを特徴とする、請求項1乃至4の少なくとも1の請求項に記載のDNA発現構築体。
  6. 前記発現構築体がプラスミドであることを特徴とする、請求項1乃至5の少なくとも1の請求項に記載のDNA発現構築体。
  7. 免疫化ポリヌクレオチド配列が直線状2本鎖領域を含む共有的に閉鎖された直線状デオキシリボヌクレオチド分子から成る発現構築体の形を取り、前記2本鎖を形成する各1本鎖はデオキシリボヌクレオチドから成る短い1本鎖ループによって結合され、及び前記2本鎖を形成する1本鎖は、ワクチン接種の対象となる動物において作動が可能なプロモーターの制御下にあるコード配列とターミネーター配列のみから成ることを特徴とする、請求項1から5の少なくとも1項によるDNA発現構築体。
  8. 前記発現構築体が一つ以上のペプチドに対して共有的に結合することを特徴とする請求項1乃至7の少なくとも1請求項に記載のDNA発現構築体。
  9. 前記ペプチドが3から30個のアミノ酸から成り、その少なくとも半分がアルギニンとリジンから成るグループのメンバーであることを特徴とする、請求項8に記載のDNA発現構築体。
  10. 前記ペプチドが配列PKKKRKV(プロリン−リジン−リジン−リジン−アルギニン−リジン−バリン)を含むことを特徴とする、請求項9のDNA発現構築体。
  11. ネコを含むネコ科の動物において予防的および/または治療的免疫を産生するための製薬組成物、特にワクチンであって、請求項1から10の少なくとも1請求項に記載のDNA発現構築体を含む、ワクチンを含む製薬組成物。
  12. 配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質。
  13. 配列番号9のアミノ酸配列を有するタンパク質。
  14. 配列番号10のアミノ酸配列を有するタンパク質。
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