JP4410915B2 - 複写伝票 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常光源下でのメタメリズムを利用した複写伝票に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の複写伝票は、図2の斜視図に示すように、複写用紙1と被複写用紙2とから構成されている。
複写用紙1は、その基材1aの内側面の一部に、感圧複写層3が印刷されており、被複写用紙の基材2aの内側面には、感圧複写層3に対向して被複写部4が設けられている。
【0003】
複写用紙1は、その表面側に暗証番号等が書かれたときに、筆圧により感圧複写層3のインキの一部が、被複写部4上に転移される。被複写部4には、この転移による複写インキ付着部分を、通常環境では容易には見えにくくするための粉飾パターン(地紋パターン)が印刷されている。
【0004】
感圧複写層3の印刷に使用されるインキ(複写インキ)と、地紋パターンの印刷に使用されるインキ(地紋インキ)の関係については、特定の光源下では、分光分布の異なる2つの色が、通常光源下では、同じ色に見えるメタメリズムが利用されている。
このメタメリズムを利用した複写伝票は、実開昭58−84277号で提案されており、既に、銀行等の金融機関で「暗証番号」記入欄をもつ伝票に使用されている。
【0005】
実際には、複写インキ、地紋インキともに、通常光源下において緑色で、赤色フィルターを透過させて見たときに、前者と後者のコントラストが強くなるように調整されたインキの組み合わせにより各インキが選ばれ、暗証番号が記入された帳票を銀行の窓口等で見た場合には読み取れず、特定の読取機では容易に読み取れるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した複写インキと地紋インキは、通常光源下では、等色に見えることが望ましく、赤色光源下など特異な条件下での複写インキと地紋インキのコントラストは、強ければ強いほど良い。
ところが、例えば、複写インキと地紋インキが全くの等色であっても、複写インキが被複写部に転移した状態では、光沢は少なくなり、直接用紙上に形成される地紋インキとは、光沢感が異なるために、光の反射する角度によっては、読み取れてしまうという問題があった。
【0007】
特に、読取機で文字や記号などの部分が十分濃く見えるような読取濃度を確保するために、地紋インキのインキ濃度を所要の濃さに調整した場合に、インキ中に占める顔料比を、限度一杯に高くしても、通常の印刷濃度では、複写インキと等色にならない。
そのため、2回以上の重ね刷りを行う場合が多い。重ね刷りの場合には、UV硬化インキを使用することもあって、1回刷りに比べて光沢が増加する。その結果、複写された複写インキとの間に、光沢感の差がより大きく認められるという問題があった。
この光沢感の差を減らすために、マット化剤を地紋インキ中に加える手法も考えられるが、それでは、いっそう顔料濃度を落とすことになってしまい、実用にならない。
【0008】
図4は、従来の複写伝票の被複写部に複写インキの一部が転移された状態の一例を拡大して示した説明図(平面図)である。
図4の図中に示す3cは、被複写部上の複写による複写インキ付着部分(暗唱番号を現す線などの部分、以下、複写インキ転移部分という)である。5dは、複写インキ転移部分と紛らわしいよう地紋パターンを地紋インキで印刷した部分(以下、地紋部分という)である。
前述した重ね刷りやインキの塗布量を増やせば、図4に示すように、地紋に用いられる線の太りを引き起こし、通常のボールペンで複写される複写インキの太さに比べて大幅な差異を生じ、複写されたものが通常光源下において、より見えやすくなってしまうという欠点がある。
【0009】
本発明の課題は、地紋インキの選定と、地紋パターンの印刷方法に工夫を加えることにより、従来のメタメリズム利用の複写伝票に比べ、通常光源下ではインク転移部分の判別が困難で、かつ、読取機では読み取り易く、しかも、低コストで安定的した製品が得られる複写伝票を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、複写用インキにより形成される複写層(3)を設けた複写票(1)と、地紋インキにより地紋パターン(5)が形成された被複写部(4)を設けた被複写票(2)とを、前記複写層(3)と前記被複写部(4)が対向するように配置し、前記複写用インキ及び前記地紋インキが通常光源下でメタメリズムを有するように調整されており、前記地紋パターンは、異なるインキにより形成された2種類以上の部分からなること、を特徴とする複写伝票であって、前記地紋パターン(5)は、少なくとも前記複写用インキと近似した色相を有する第1のインキにより形成される第1の部分(15a)と、前記被複写部(4)に転移された複写用インキにより表される複写部分(13c)を読み取る読取機が特定波長域の光を照射するために使用する有色フィルターの色と近似の色相を有するインキを前記第1のインキに混合して形成され、前記第1のインキと色相が近似している第2のインキにより形成される第2の部分(15b)と、を含むことを特徴とする複写伝票である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の複写伝票において、前記第2の部分(15b)は、通常光源下において、前記第1の部分(15a)よりも濃く見えて、転移された前記複写用インキの色により近いこと、を特徴とする複写伝票である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の複写伝票において、前記第1の部分(15a)と前記第2の部分(15b)とは、互いに異なる線状のパターンからなり、前記地紋パターン(15)は、前記第1の部分と前記第2の部分とを組み合わせることにより、発色の異なる部分からなる斑状となっていること、を特徴とする複写伝票である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の複写伝票において、前記第1の部分(15a)及び前記第2の部分(15b)のパターンは、その線の太さが前記複写部分の線の太さと近似しており、それぞれの線が判別できる程度の密集度合いで印刷されていること、を特徴とする複写伝票である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態をあげて、さらに詳しく説明する。
本発明者等は、複写インキ転移部分を地紋部分の中に隠れて見えないようにするためには、複写インキ転移部分が地紋部分に比べて遙に少ない面積を占めるところから、地紋部分が全体均一の状態であるよりは、むしろ僅かに発色の異なる部分に細分化され斑状になっている方が、より地紋パターンからの判別を難しくすることを見いだした。
【0013】
本発明は、前記見地に基づいて、複写インキは、読取機での濃度確保のために従来どおりのインクを使用して印刷し、地紋インキの選択と印刷に工夫を加え、通常光源下(白色電球,蛍光灯,太陽光など)では、複写内容の判別がいっそう困難に、かつ、読取機では、読み取り易いようにしたものである。
【0014】
すなわち、本発明は、地紋パターンの一部を、従来の地紋インキと同一の第1のインキ(本実施形態では、緑色のインキ)を使用して、従来と同等以下の塗布量で活版印刷した後に、前記パターンとは異なる他のパターンで、読取機で使用するフィルターと同色のインキ(本実施形態では、赤色のインキ)を前記第1のインキに添加(本実施形態では、1%を添加)した第2のインキを使用して、先に印刷された前記パターンの上に重ねて活版印刷している。
【0015】
第1のインキ使用の地紋部分は、従来と同様のインクを使用しているので、通常光源下では、複写インキの色相に近似し、読取機では、従来と同様に薄く見える。
第2のインキ使用の地紋部分は、赤色インキを加えてあるので、その印刷面は、通常光源下では、第1のインキより僅かに濃く見えて、転移された複写インクの色により近く、読取機では、赤色光のもとで薄く見えて、転移された複写インクの色との区別がより明瞭になる。
【0016】
なお、前記地紋部分は、被複写部に複写されたインク転移部分(複写部分)に対して、発色、線の太さ、反射光の輝き具合などができるだけ近似していることが望ましい。
【0017】
次に、図面を参照して、さらに詳しく説明する。図1は、本発明の複写伝票の実施形態の被複写部を拡大して示した説明図(平面図)である。
図1に示すように、被複写部の地紋パターン15は、第1のインキにより印刷された地紋の第1の部分15aと、第2のインキにより印刷された地紋の第2の部分15bによって構成されている。図1では、地紋の第1の部分15aは、右肩上がりの斜線が施してある。地紋の第2の部分15bは、左肩上がりの斜線が施してある。
図1に示すように、前記組み合わせによる地紋インキ2種を使用して印刷した結果、両者の色相が近似しているものの、異なる濃淡の部分が斑状になって、全体が微妙にむらのある地紋パターンとなっている。
【0018】
図3は、本実施形態による複写伝票の複写後の被複写部を拡大して示した説明図(平面図)である。
図3において、複写インキ転移部分13c(図中では、右肩上がりの斜線と左肩上がりの斜線を重ねて斜め格子状の線を施してある。)は、周囲の地紋部分が、第1のインキによる地紋の第1の部分15a(右肩上がりの斜線が施してある。)と、第2のインキによる地紋の第2の部分15b(左肩上がりの斜線が施してある。)により微妙な斑模様を有する地紋となっているので、判別が難しい。また、重ね刷りの部分が少ないので、光沢感の差異も減少している。
そのため、複写インキ転移部分13cが表す文字、記号などの判読は、従来よりも困難となっている。
一方、第2のインキによる地紋の第2の部分15bは、従来よりも少ないので、読取機では、赤色光のもとで薄く見えて、転移された複写インクの色との区別がより明瞭になる。
【0019】
また、地紋の線が太らない範囲で印刷できるようになったので、インキの使用量は減り、地紋インキがUVインキの場合には、UV照射量を減らすことができる。
さらに、各種調整に要する時間の減少も図れ、地紋インキの濃度管理も容易になり、低コスト化され、安定して製造することが可能になる。
【0020】
(他の実施形態)
本発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、種々の変形又は変更が可能であって、これらの均等の範囲内である。
例えば、地紋パターンの図柄は、多種多様で無限に考えられ、第1のインキ及び第2インキの構成内容の変更、さらに、第3インキを使用したり、また、重ね印刷でなく、部分毎の2色印刷又は多色印刷であってもよい。
また、複写層は、感圧複写層の例で説明したが、感熱複写層であっても、本発明を同様に適用することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、地紋パターンが2種類以上の異なるインキにより形成される部分が混在するようにしたので、地紋パターンの各部分の色相が複写インキによる複写文字の部分と近似していながら濃淡が異なる斑状になり、それぞれの部分と複写文字の部分との境界の判定が難しく、従来より、複写文字の通常光源下での判読が困難になり、読取機では、薄く見えて、転移された複写インクの色との区別がより明瞭になる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複写伝票の実施形態の被複写部(複写前の状態)を拡大して示した説明図(平面図)である。
【図2】従来の複写伝票の複写用紙を開いた状態で示す斜視図である。
【図3】図1の複写伝票の被複写部(複写後の状態)を拡大して示した説明図(平面図)である。
【図4】従来の複写伝票の被複写部(複写後の状態)を拡大して示した説明図(平面図)である。
【符号の説明】
1 複写用紙
1a 複写用紙の基材
2 被複写用紙
2a 被複写用紙の基材
3 感圧複写層
3c、13c 複写インキ転移部分
4 被複写部
5、15 地紋パターン
15a 地紋の第1の部分
15b 地紋の第2の部分
Claims (4)
- 複写用インキにより形成される複写層を設けた複写票と、地紋インキにより地紋パターンが形成された被複写部を設けた被複写票とを、前記複写層と前記被複写部が対向するように配置し、前記複写用インキ及び前記地紋インキが通常光源下でメタメリズムを有するように調整されており、
前記地紋パターンは、異なるインキにより形成された2種類以上の部分からなること、
を特徴とする複写伝票であって、
前記地紋パターンは、少なくとも、
前記複写用インキと近似した色相を有する第1のインキにより形成される第1の部分と、
前記被複写部に転移された複写用インキにより表される複写部分を読み取る読取機が特定波長域の光を照射するために使用する有色フィルターの色と近似の色相を有するインキを前記第1のインキに混合して形成され、前記第1のインキと色相が近似している第2のインキにより形成される第2の部分と、
を含むこと、
を特徴とする複写伝票。 - 請求項1に記載の複写伝票において、
前記第2の部分は、通常光源下において、前記第1の部分よりも濃く見えて、転移された前記複写用インキの色により近いこと、
を特徴とする複写伝票。 - 請求項1又は請求項2に記載の複写伝票において、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、互いに異なる線状のパターンからなり、
前記地紋パターンは、前記第1の部分と前記第2の部分とを組み合わせることにより、発色の異なる部分からなる斑状となっていること、
を特徴とする複写伝票。 - 請求項3に記載の複写伝票において、
前記第1の部分及び前記第2の部分のパターンは、
その線の太さが前記複写部分の線の太さと近似しており、
それぞれの線が判別できる程度の密集度合いで印刷されていること、
を特徴とする複写伝票。
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