JP4409750B2 - 内接噛合遊星歯車構造の増減速機 - Google Patents

内接噛合遊星歯車構造の増減速機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トロコイド曲線を含んだ歯形を有する外歯歯車、及び該外歯歯車と内接噛合する歯形を一体に有する内歯歯車を備えた揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機に関するものであり、特に、内歯及び外歯の歯形構造等の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機は、低増・減速比から高増・減速比に至るまでを少ない減速段数で実現できる機能を有するものとして広く知られている。この揺動内接噛合遊星歯車構造は、外歯歯車及び内歯歯車が相対的に偏心揺動運動することによって、その内接噛合状態の拘束から両歯車間に相対回転を生じさせ、前記偏心揺動運動と前記相対回転との回転数差に依存する増・減速比で動力を伝達するものである。
【0003】
図7に、この揺動内接噛合遊星歯車構造が減速機能を有するように組み込まれた従来の減速機20を示す。この減速機20は、第1軸(この場合は入力軸)1と、第1軸1の回転によって回転する偏心体3a、3bと、この偏心体3a、3bにベアリング4a、4bを介して取り付けられて偏心回転が可能とされた2枚の外歯歯車5a、5bと、外歯歯車5a、5bに内接噛合する内歯歯車10と、外歯歯車5a、5bの自転成分のみを取り出す部材を介して、該外歯歯車5a、5bに連結された第2軸(この場合は出力軸)2と、を備える。なお、この従来例では、2枚の外歯歯車5a、5bが組み付けられる複列式となっているが、勿論、1枚の外歯歯車からなる単列式であっても構わない。
【0004】
偏心体3a、3bは、入力軸1に対して所定位相差(この例では180°)をもって嵌合されている。図8に示されるように、この偏心体3a、3bは、それぞれ入力軸1(中心O1)に対して偏心量eだけ偏心している(中心O2)。
【0005】
外歯歯車5a、5bには、内ローラ孔6a、6bが複数設けられており、この内ローラ孔6a、6bに内ピン7及び内ローラ8が(遊びを有した状態で)嵌入されている。この内ピン7及び内ローラ8が、上記の「外歯歯車の自転成分のみを取り出す部材」に相当する。この内ピン7は、出力軸2のフランジ部に固着又は嵌入される。
【0006】
外歯歯車5a、5bの外周にはトロコイド歯形(この従来例では、具体的にエピトロコイド平行曲線歯形が採用されている)の外歯9が設けられている。この外歯9によってケーシング12に固定された内歯歯車10と内接噛合している。
【0007】
内歯歯車10は、筒状の内歯枠32と、この内歯枠32の内周側に設置される複数の外ピン34と、を備える。具体的には、内歯枠32の内周に軸方向のピン溝33が形成され、そのピン溝33に上記外ピン4が設置されている。この外ピン32の外周面(内側に露出している部分)によって内歯11の歯面が形成される。
【0008】
入力軸1が1回転すると偏心体3a、3bが1回転する。この偏心体3a,3bの1回転により、外歯歯車5a、5bは入力軸1の周りで回転しようとするが、内歯歯車10との噛合状態によって自身の自由な自転が拘束されるため、外歯歯車5a、5bは、中心01を基準とした偏心揺動運動と、(内歯11と外歯9との歯数差に起因する)多少の自転運動を行うことになる。
【0009】
今、例えば外歯歯車5a、5bの歯数をn(図示例では、n=35となっている)、内歯歯車10の歯数をn+1とした場合、その歯数差Nは1である。そのため、入力軸1の1回転毎に(つまり1偏心揺動運動毎に)外歯歯車5a、5bは内歯歯車10に対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。これは入力軸1の1回転が外歯歯車5a、5bの1/nの回転に減速されたことを意味する。なお、この外歯歯車5a、5bの回転方向は、入力側の回転と逆になる。
【0010】
外歯歯車5a、5bの回転は内ローラ孔6a、6b及び内ピン7(内ローラ8)の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが該内ピン7を介して出力軸2へと伝達されて結局減速比Iの減速が達成される。一般的に表現すると、外歯の歯数をz1、内歯の歯数をz2とした場合、この入力・出力関係においては、減速比I=(z1)/(z2−z1)となる。
【0011】
なお、上記構造においては、内ピン7を介して出力を取り出すと共に、内歯歯車を固定するようにしていたが、内歯歯車から出力を取出すと共に、上記例で出力軸とされていた部材を固定することによっても、減速機を構成することが可能である。更に、これらの構造において、入・出力関係を逆転させることにより、「増速機」を構成することもできる。要は、外歯歯車5a、5bと内歯歯車10との相対回転を利用して、所定の増減速機能を得ようとするものである。又、この従来例では、歯数差Nが1の場合を示したが、1以上の歯数差に設定することもできる。1以上の歯数差については、本出願人によってなされた出願である特開平06−050394公報等に詳しいので、ここでの説明は省略する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
外歯歯車5a、5bの歯形に採用されているトロコイド平行曲線は、外歯9と内歯11との干渉を低減させる特徴を有するが、その一方で、内歯歯車10との相対回転を利用して増減速を行うものであることから、歯面における噛合点の相対滑り速度が増大する傾向にある。この「噛合点の高速な滑り」は、歯面を磨耗させて寿命を低下させる要因となっており、更に、動力の伝達効率を低下させ、騒音を増大させることにつながっていた。
【0013】
この問題を解消するために、内歯11として、自身が回転可能な状態で設置される外ピン34が採用されており、外ピン34が回転することで噛合点の滑り速度を吸収(低減)するようになっている。しかしながら、外ピン34による滑り速度低減効果にはある程度の限界があると共に、外ピン34が回転することによって振動・騒音等の問題が生じ、根本的に問題解決されていないのが実状である。
【0014】
この他にも、従来、滑り速度を低減させるための数々の努力がなされてきているが、そもそもトロコイド曲線を外歯9に適用することと、外歯9と内歯11との滑り速度との相関関係が明らかにされていなかった為、結局、歯形等の各諸元値を、数多くの実験を経て経験的に設定していたと考えられる。従って、それらの諸元値は(結果的には滑り速度がある程度低減させることができたとしても)理論上の根拠に乏しいものであり、又本発明者の知る限りでは、本発明の存在を前提とするような本当に最適な諸元値で設定されている揺動内接噛合遊星歯車構造は実在しない。
【0015】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、明らかな理論上の根拠の下、特に(いわゆるピンではなく)一体の歯形を有する内歯歯車と外歯歯車の噛合面の相対的な滑り速度を飛躍的に低減させ、伝達効率の増大、騒音の減少及び歯車の長寿命化を図り、更に伝達トルクの向上を達成しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トロコイド曲線を含んだ歯形を有する外歯歯車、及び該外歯歯車と内接噛合する歯形を一体に有する内歯歯車を備え、該外歯歯車及び内歯歯車が相対的に偏心揺動運動することによって両歯車間に歯数差分に相当する相対回転を生じさせ、前記偏心揺動運動と前記相対回転との回転数差に依存する増・減速比で動力を伝達する揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機において、前記揺動内接噛合遊星歯車構造が減速機構として用いられる場合の前記減速比をI、前記偏心揺動運動の偏心量をe、前記内歯歯車の歯先円半径をr1、歯元円半径をr2、とした場合に、r1<(I+1)*e<r2の関係を満たすように前記外歯歯車及び内歯歯車の形状を設定したことにより、上記目的を達成するものである。
【0017】
この揺動内接噛合遊星歯車においては、内歯歯車との干渉を出来るだけ低減させるために、外歯歯車の外歯にトロコイド曲線が採用されている。一般的に、外歯にトロコイド曲線が適用されると、噛合点における歯面の滑り速度が増大し、言い換えると、トロコイド曲線の外歯によって噛合点を高速で滑らすことで、干渉のない滑らかな伝達構造が得られると考えられている。
【0018】
しかしながら、本発明者は、外歯歯車及び内歯歯車の形状について更なる検討を加えたところ、本発明のような条件を満たせば、トロコイド曲線を含んだ歯形のメリットを失わせることなく、合理的な範囲で噛合点の滑り速度を極めて小さく抑えることが出来ることを見出した。なお、この具体的な作用については「発明の実施の形態」において詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る増減速機によれば、外歯歯車における歯面上で、滑り速度が零(或いはほぼ零)となる噛合点を存在させることが出来、更に、特定の領域において、滑り速度を極めて低くすることができる。
【0020】
特に、外歯の歯面における、内歯歯車から受ける反力を効果的にトルクに変換できる最大効率噛合点(具体的には内歯歯面と外歯歯面の噛合点における共通法線が、内歯歯車の中心から最も離れることになる場合の該噛合点)を上記の「滑り速度が極めて低い領域」内に含めることが可能となるので、動力伝達に重要や役割を有する噛合点の滑り速度が低減され、従来よりも高い効率で且つ低い騒音で動力を伝達することが出来る。
【0021】
このように、噛合点の滑り速度を低く設定できた結果、外歯及び内歯の双方の磨耗量が減少されるので長寿命化が達成される
【0023】
【発明の実施の形態】
まず、本発明者によってなされた歯車の解析工程について具体的に説明する。
【0024】
図1に、一般的な揺動内接噛合遊星歯車構造の解析モデルを示す。
【0025】
この解析モデルにおいては、トロコイド曲線を含んだ歯形となる外歯歯車A(中心S)が内歯歯車B(中心O)と内接噛合している。外歯歯車Aと内歯歯車Bは偏心量eで偏心しており、内歯歯車Bの中心Oが外歯歯車Aの周囲の内側に位置している。これは、揺動内接噛合遊星歯車構造の特徴、つまり国際特許分類F16H 1/32に属する特徴である。
【0026】
今仮に、内歯歯車Bが固定され、外歯歯車A側に回転動力が入力されると、該外歯歯車Aが内歯歯車Bと噛合いながら偏心揺動運動(矢印L参照)する。この偏心揺動運動の回転半径は偏心量eである。その結果、外歯歯車Aに、内歯歯車Bとの歯数差に起因する回転の遅れ(相対回転:矢印U参照)が生じる。つまり、内歯歯車B側から視れば、その「相対回転」に相当する分だけ外歯歯車Aが(逆)回転する。この相対回転をキャリア(図示省略)によって取り出せば、入力回転に対して減速された出力回転を得ることができる。
【0027】
従って、入力側の偏心揺動運動Lと、出力側の相対回転Uとを比較すれば、その回転数の比に相当する減速比Iで動力が伝達されているといえる。なお、この入力・出力関係を反対にすれば増速機として機能し、増速比は1/Iとなる。
【0028】
減速比Iは、外歯歯車Aの歯数z1及び内歯歯車Bの歯数z2から、
I=(z1)/(z2−z1)
と表現できる。従って、矢印Lで表される入力回転動力の回転角速度をωiとすれば、矢印Uで表される出力回転動力の回転角速度ωuは
ωu=−ωi/I
となる。なお、マイナスは、逆回転であることを意味している。
【0029】
今、内歯歯車Bの中心Oが原点となるX−Y座標を考え、外歯歯車Aの中心Sの座標を(xs、ys)に設定する。時間tが経過すると点Sは原点Oを中心に偏心揺動運動して点S1(xs1、ys1)に移動する。これらの2点S、S1の関係は以下のように表現することが出来る。
【0030】
【数1】
Figure 0004409750
【0031】
つまり、A(ωi・t)は回転行列であり、原点を中心として位相(ωi・t)だけ回転したことを意味している。
【0032】
ここで同様に上記X−Y座標系における、外歯歯車Aの歯面上における内歯歯車Bとの任意噛合点C(x、y)について考えると、外歯歯車Aの偏心揺動運動を仮に無視した場合、その中心Sを基準にして点Cは回転しているので、時間tが経過すると点Cは仮想点Ca(xa、ya)に移動する。従って、外歯歯車Aを基準に考えると、これらの2点C、Caの関係は以下のように表現することが出来る。
【0033】
【数2】
Figure 0004409750
【0034】
しかし現実には、外歯歯車Aは偏心揺動運動している。従って、点Cは、実際には点Cb(xb、yb)に移動することになるが、上記の式(1)、(2)を合成すれば「原点Oを基準とした」噛合点Cと点Cbの関係が表現されることになる。
【0035】
【数3】
Figure 0004409750
【0036】
ここで、原点Oを基準とした、つまり内歯歯車Bを基準とした場合の点Cの瞬間的な「動き」を考えるために、式(3)を時間tで微分し、t=0を代入すると次のようになる。
【0037】
【数4】
Figure 0004409750
【0038】
これは、瞬間的な噛合点Cの移動速度を意味している。この式(4)からも明らかなように、噛合点Cは、瞬間中心P((I+1)xs、(I+1)ys )を中心に回転角速度ωi/Iで回転していことがわかる。この際、内歯歯車Bが固定されていると考えた場合は、この速度は噛合点Cの外歯歯車Aの内歯歯車Bに対する滑り速度となる。なお、この瞬間中心Pは、線分OSの延長上に存在し、その点Oからの絶対的な距離は(I+1)*eである。
【0039】
そこで本発明者は、上記の解析を更に応用させて、従来の(一般的な)揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機における噛合点Cの運動状態を具体的に解析した。その結果を図9示す。なお、各点の記号(A、C、S、P)ついては、上記各点の同じ意義で用いてある。
【0040】
この増減速機は、外歯歯車Aの複数の外歯が、内歯歯車と同時に噛み合う構造となっている。各外歯の各噛合点Cn(n=1、2、3、・・・)は、総て瞬間中心Pを中心として回転角速度ωi/Iで回転している。従って、各噛合点Cnと瞬間中心Pとを結んだ各仮想アームEnの長さが長いほど、その滑り速度も大きくなる。
【0041】
図9からも明らかなように、従来の増減速機においては、総ての噛合点Cnがある程度の長さの仮想アームEnを備えているので、動力を伝達する場合、噛合点Cnは「常に」ある程度の滑り速度を有していることがわかる。その結果、各噛合点Cnでは常に歯面が磨耗し、更に騒音が発生することになる。
【0042】
次に、この増減速機が減速機構として用いられる場合、特にここでは外歯歯車Aが出力要素となった場合の伝達トルクについて考察する。
【0043】
外歯歯車Aの各外歯は、各噛合点Cnにおいて内歯からの反力Fnを受けている。この反力Fnの方向は歯面に対する共通法線方向であり、つまり、仮想アームEnと同一方向となる。この各反力Fnの合力によって、出力側の相手側機械等からの反力トルクに抵抗していることになるから、その伝達トルクKは、中心O〜各仮想アームEnの距離に相当する仮想トルクアームTnと、その仮想トルクアームTnに対応する反力Fnとの積(Tn・Fn)の総和である。従って、増減速機の伝達トルクKは、K=Σ(Tn・Fn)と表現でき、伝達トルクを高めるためには、仮想トルクアームTnの長さを出来るだけ長く設定することが重要となる。
【0044】
なお、外歯の歯面における、内歯歯車Bとの噛み合い反力Fnを効果的にトルクに変換できる噛合点Cnは、その仮想トルクアームTnの長さがもっとも長くなる場合であり、つまり、直線O−Pに対して仮想トルクアームTnが直角となる場合の噛合点Cnである。この点は、動力伝達に最も重要な役割を果たしており、これを、最大効率噛合点M(ここでは噛合点C3)と呼ぶことにする。この最大効率噛合点Mにおいても、従来は、高い滑り速度を有していることになるので、摩擦抵抗等によって伝達効率を低下させる要因になっていたと考えられる
ここで、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0045】
図2に、本実施形態にかかる揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機120における外歯歯車105及び内歯歯車110の歯形構造を示す。なお、揺動内接噛合遊星歯車構造は、図7、8で示した従来の増減速機20とほぼ同様であるので、同一又は類似する部材・部品等については該増減速機20に付されている符号と下二桁を一致させ、全体図示及び構造・作用等の詳細な説明は省略する。
【0046】
増減速機120における外歯歯車105は、トロコイド曲線(詳細にはエピトロコイド平行曲線)を含んだ歯形となる外歯130を備えている。この外歯歯車105には、内歯歯車110が内接噛合しており、これらの外歯歯車105及び内歯歯車110が相対的に偏心揺動運動(角速度ωi)することによって両歯車間に相対回転(角速度ωu)が生じるようになっている。従って、偏心揺動運動と相対回転との回転数の比に相当する増・減速比Iで動力を伝達することができる。
【0047】
内歯歯車110における内歯111の歯形は、図3に拡大して示されるように、外歯130との噛合領域となる両端の円弧歯形部分R、Rと、中間の歯形部分Q(この部分は外歯130との干渉を防止するための逃げとなる)とから構成されている。
【0048】
従って、歯形の基本となる円弧歯形部分Pにおける噛合点Cによって動力が伝達されている。
【0049】
この揺動内接噛合遊星歯車構造が減速機構として用いられる場合の減速比Iは、内歯歯車110の内歯111の歯数をz2、外歯歯車105の外歯130の歯数をz1とすれば、下記のように表現できる。
【0050】
I=z1/(z2−z1)
【0051】
ここで、本実施形態における揺動内接噛合遊星歯車構造では、外歯歯車105の中心Sと、内歯歯車110の中心O間の距離である偏心揺動運動の偏心量をe、内歯歯車110の歯先円Hの半径をr1、歯元円Wの半径をr2、とした場合に、r1<(I+1)*e<r2 の関係が満たした状態で、各内歯歯車110と外歯歯車105の歯形が設定されている。
【0052】
具体的に説明すると、既に詳細に解析したように、揺動内接噛合遊星歯車構造においては、(I+1)*eは、各噛合点Cnの滑り移動の瞬間中心Pである。図4に拡大して示されるように、この瞬間中心Pが、内歯歯車110の歯先円H〜歯元円Wの範囲内に設定されることになる。
【0053】
そこで、内歯111と外歯130との噛合点Cnを考えると、当然のことだが、外歯130上の総ての噛合点Cnは歯先円H〜歯元円Wの範囲内となっている。これらの各噛合点Cnは、その瞬間において、瞬間中心Pを中心として各速度ωi/Iで回転運動している。従って、総ての噛合点Cnと上記瞬間中心Pを結んだ仮想アームEnが長いほど、噛合点Cnの滑り速度が大きいことになる。
【0054】
図4からも明らかなように、この増減速機120では、瞬間中心Pに接近した範囲で、仮想アームEn長さが極めて短い噛合点Cnが複数存在している。つまり、これらの噛合点Cnの滑り速度は極めて小さくなる。
【0055】
外歯歯車105が回転すれば、外歯歯車105の中心Sも(内歯歯車110の中心Oに対して)移動するので、点Oと点Sの延長上に位置する瞬間中心Pも移動することになる。従って、点Pの設定位置をr1〜r2の範囲内で適宜調整すれば瞬間中心Pが内歯111の歯面上に位置する際に、その瞬間中心Pと噛合点Cnを一致させることも可能である(これは必ずしもそのように設定しなければならないものではない)。この瞬間における瞬間中心Pと一致している噛合点Cn(これを零噛合点P1と定義する)は、仮想アームEnの長さが「零」となるので、滑り速度も「零」となる。つまり、各外歯130における零噛合点P1の近傍領域は、「零」を含めて極めて低い滑り速度にすることができる。
【0056】
ところで、図2を参照して外歯歯車105と内歯歯車110の全体の噛合点Cnを考えてみると、従来と同様に、仮想アームEnが所定の長さを有し、所定の滑り速度となっている噛合点Cnも存在する。しかしながら、動力の伝達に大きく貢献している最大効率噛合点M(具体的には、線分OPと、仮想アームEnが直交している場合の該噛合点Cn、ここではC2:図4参照)は、自ずと瞬間中心P側に接近することから、仮想アームEnの長さが極めて短くなる。その結果、最大効率噛合点Mにおける滑り速度が大幅に低くなるので、伝達効率が向上し、伝達騒音も低減できる。つまり、歯面における動力を伝達するのに重要な役割を有する領域の磨耗等を、極めて効果的(合理的)に抑制できることになる。
【0057】
又、伝達トルクKは、各外歯130が、各噛合点Cnで内歯111から受ける反力Fnと、中心O〜各仮想アームEnの距離に相当する仮想トルクアームTnとの積(Tn・Fn)の総和(K=Σ(Tn・Fn))に相当するが、瞬間中心Pが点Oから離れた位置に設定されるため、仮想トルクアームTnの長さも大幅に長く設定することが可能となり、これは、最大効率噛合点Mで最も顕著となる。その結果、従来と同等な歯面強度であっても伝達トルクを増大させることが出来る。
【0058】
図5に、本実施形態の増減速機120の外歯130滑り速度(実線A)と、従来の増減速機20の外歯の滑り速度(点線B)とを比較した結果をに示す。従来では、外歯の全ての領域で常に所定の滑り速度を有していたが、今回の増減速機120では、谷部側の滑り速度が激減しており、零噛合点P1で一旦滑り速度が「零」となり、その後急激に滑り速度が増大する。しかし、動力伝達に重量な役割りを果たしている最大効率噛合点M(あるいはその近傍)は、滑り速度が増大する直前の極めて低速度の領域90に位置している。従って、従来の増減速機20における最大効率噛合点Mよりも滑り速度が大幅に低くなることがわかる。
【0059】
以上の結果から、本実施形態に係る増減速機120では、あまり動力伝達に重要な意義を有さない外歯130の「歯先」側の噛合点Cnの滑り速度は度外視し、重要な噛合点の滑り速度を激減させるという合理的な構成になっていることがわかる。
【0060】
なお、本実施形態においては、内歯歯車110の内歯111が一体的に形成されてる場合を示した。これは、動力伝達に重要な役割を果たす歯面における相対的な滑り速度が低減された結果、内歯111側で滑り速度を吸収する必要性が低減された為である。従って、内歯歯車110の製造・組立コストも低減される。
【0061】
なお、本発明からは外れるが、本発明の技術思想は、外ピン構造の内歯歯車に採用することもできる。その場合には、図6に部分的に拡大して示されるように、内歯歯車110が、円筒状の内歯枠132と、内歯枠132の内周側に設置されて自身の外表面によって内歯の歯面を構成する複数の外ピン134と、を備えて構成すればよい。この場合には、内歯歯車110の歯先円半径r1は、複数の外ピン134における、内歯枠132の径方向内側端134Aを連ねて形成される円136の半径となる。又、歯元円半径r2は、複数の外ピン134における、内歯枠132の径方向外側端134Bを連ねて形成される円138の半径となる。従って、これら値r1、r2から上記瞬間中心Pを設定すればよい。
【0062】
本実施形態によれば動力伝達にあまり寄与しない歯面における相対滑り速度は低減できないが、このように外ピン134による内歯を採用することにより、この部分での滑りを吸収できる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、合理的な思想に基づいて、重要な噛合点の滑り速度を激減させることが出来るので、動力伝達効率を向上させると共に騒音を低減することが可能になる。又、歯車の寿命を延ばすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の案出過程における揺動内接噛合遊星歯車構造の解析モデルを示す概念図
【図2】本発明の実施形態に係る揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機を示す断面図
【図3】同増減速機の外歯と内歯の歯形形状を示す部分拡大図
【図4】同増減速機の外歯と内歯の噛合状態を示す部分拡大図
【図5】同増減速機の外歯の歯面上の滑り速度の解析結果を示す線図
【図6】同増減速機において、外ピン仕様の内歯歯車を適用した部分拡大断面図
【図7】従来の揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機を示す全体断面図
【図8】図7のVIII−VIII断面図
【図9】同増減速機における外歯と内歯の噛合状態を示す線図
【符号の説明】
105…外歯歯車
110…内歯歯車
111…内歯
120…増減速機
130…外歯
132…内歯枠
134…外ピン

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  1. トロコイド曲線を含んだ歯形を有する外歯歯車、及び該外歯歯車と内接噛合する歯形を一体に有する内歯歯車を備え、該外歯歯車及び内歯歯車が相対的に偏心揺動運動することによって両歯車間に歯数差分に相当する相対回転を生じさせ、前記偏心揺動運動と前記相対回転との回転数差に依存する増・減速比で動力を伝達する揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機において、
    前記揺動内接噛合遊星歯車構造が減速機構として用いられる場合の前記減速比をI、前記偏心揺動運動の偏心量をe、前記内歯歯車の歯先円半径をr1、歯元円半径をr2、とした場合に、
    r1<(I+1)*e<r2
    の関係を満たすように前記外歯歯車及び内歯歯車の形状を設定した
    ことを特徴とする内接噛合遊星歯車構造の増減速機。
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