JP4407889B2 - エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、折り畳まれたエアバッグにガスを供給するインフレータの固定構造の改良を図ったエアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、折り畳まれたエアバッグにガスを供給してエアバッグを膨張させ、衝突時等の衝撃を緩衝するエアバッグ装置があり、また、そのガスを供給するインフレータの形状が円筒状に構成され、いわゆるハウジングに収容された状態でその塑性変形を利用してインフレータをハウジングに固定する構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このエアバッグ装置においては、ハウジングを構成する取付ブラケットは、インフレータの外径よりも若干大きな内径を有する断面円弧状の固定座部と、固定部の両側端縁よりそれぞれ延設状とされた保持リング部と、各保持リング部の延設端に連設された逆U字形連結部とを備えている。
【0004】
そして、取付ブラケットをインフレータに外装し、逆U字形連結部の閉じ塑性変形により保持リング部を縮径させて、取付ブラケットにインフレータを固定する構造とされている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−290702号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常、エアバッグ装置においては、インフレータをハウジング等に固定するに際し、ボルト等を利用するが部品点数が多くなり、組付性が悪いという問題があった。
【0007】
これに対し、前記特許文献1の構造によれば、いわゆるカシメ加工によりインフレータを固定する構造であり、固定用のボルト等が不要となり、部品点数を削減する利点があるものの、外方突出状とされている逆U字形連結部をカシメて塑性変形させる構造であり、塑性変形後の逆U字形連結部が外方に突出しているため、エアバッグに干渉して悪影響をおよぼす懸念や、カシメ工具が複雑になるおそれがあった。
【0008】
また、取付ブラケットに対するインフレータの挿入時に当接する位置決め突起により、インフレータの軸方向の一方向に対しては移動が規制されるものの、反対方向に対しては規制がなく、抜脱するおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、軸方向への抜けを有効に防止した安価なインフレータの固定構造を有するエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するための技術的手段は、エアバッグにガスを供給する略円柱状のインフレータと、インフレータを固定する筒状のハウジングを備えたエアバッグ装置において、前記インフレータに周方向に沿って両側壁を有する1つの凹部が設けられ、前記ハウジングに周方向の割溝を介して塑性変形可能な2つの固定部が設けられ、ハウジングにインフレータを組み込んで前記各固定部を塑性変形させることにより、それぞれの固定部を各側壁に当接させてインフレータの軸方向移動を規制した状態で前記凹部に係止させると共に、ハウジングにインフレータを押し付け固定する点にある。
【0014】
さらに、前記固定部の塑性変形が一方向のプレスにより変形可能な形状である構造としてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、関連技術に係る第1の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態におけるエアバッグ装置も前記特許文献1に開示のものと同様、シートにおけるシートバックの側面に配置されるいわゆる側突用のエアバッグ装置を一例として説明する。
【0016】
図1および図2に示される如く、エアバッグにガスを供給するためのインフレータ1は細長の略円柱状に構成されており、その軸方向一端部には、より小径に形成されたガス吹出部2が備えられ、該ガス吹出部2には、その周面に円孔状の多数のガス吹出口2aが形成されている。
【0017】
また、インフレータ1の軸方向他端部には、ガス発生信号が入力される信号線接続用のコネクタ部3が備えられると共に、インフレータ1におけるコネクタ部3寄りの外周面には、周方向に沿って凹部としての環状の凹溝部4が形成されている。
【0018】
前記インフレータ1が固定されるハウジング6は、インフレータ1が一側方より挿入可能な筒状に構成されており、塑性変形可能な金属材、例えば、スチール材を折曲形成して略八角筒状に形成されている。そして、重合状とされた部分がスポット溶接等により接合され、固着具としての一対の取付ボルト7がハウジング6の軸方向に適宜間隔を有して外方突出状にカシメ止めされている。
【0019】
また、ハウジング6の一方側端部には、内側に折り曲げ形成された整流板8が備えられており、ハウジング6の他方側からインフレータ1が挿入された際に、ガス吹出部2の挿入端が当接してインフレータ1の挿入位置が規制される構造とされている。
【0020】
さらに、図1に示される如く、ガス吹出部2が整流板8に当接した状態で、インフレータ1の凹溝部4位置に対応して、ハウジング6に、凹溝部4に嵌合可能な嵌合部9がプレス加工等により内方突出状に形成されている。
【0021】
また、ハウジング6における嵌合部9と対向する反対側の面には、周方向の割溝10を介して内方向に塑性変形可能な適宜幅を有する固定部11が設けられている。なお、本実施形態では、凹溝部4近くとガス吹出部2近くとの2個所に固定部11が設けられた構造とされている。
【0022】
そして、インフレータ1のハウジング6に対する固定に際しては、図1の仮想線で示される如く、インフレータ1のガス吹出部2を挿入側としてハウジング6の一方側より筒内に挿入していく。その後、ガス吹出部2が整流板8に当接するとインフレータ1の挿入が規制され、この当接状態において、インフレータ1の凹溝部4とハウジング6の嵌合部9とは軸方向に合致した位置に位置される。
【0023】
この状態で、嵌合部9の反対側より、各固定部11を矢印で示される如く、嵌合部9の有する対向する内面方向の一方向にそれぞれプレス加工することによって塑性変形させれば、凹溝部4に嵌合部9が嵌合した状態で、塑性変形された各固定部11により対向するハウジング6内面にインフレータ1が押し付け固定された状態が得られる。
【0024】
このインフレータ1固定状態のハウジング6を、前記特許文献1と同様、エアバッグ内に挿入し、各取付ボルト7を介して所定の取付フレームに取り付け固定すればよい。
【0025】
本実施形態は以上のように構成されており、ハウジング6に対するインフレータ1の固定に際しては、ハウジング6内にインフレータ1を挿入して各固定部11を塑性変形させるだけでよく、固定のためのボルト等が不要で、部品点数が削減でき、軽量安価なエアバッグ装置を提供できる。
【0026】
また、インフレータ1の固定状態において、凹溝部4に嵌合部9が嵌合しているため、インフレータ1の軸方向移動が有効に規制でき、ガス吹出口2aの位置ずれも有効に防止できる。この際、各固定部11によって、嵌合部9が凹溝部4に嵌合する方向に押し付け固定されているため、嵌合部9の凹溝部4からの不用意な離脱も有効に防止できる。
【0027】
さらに、整流板8によってインフレータ1の挿入位置を規制する構造としているため、凹溝部4と嵌合部9との位置決めが容易に行えると共に、整流板8によって、各ガス吹出口2aから噴出供給されるガスを所望の方向に効率よく案内することができる利点もある。
【0028】
また、一方向からのプレス加工によりインフレータ1を固定できる構造としているため、量産工程でのセッティングが簡単であり、特別な装置も必要でなく、組付性に優れるエアバッグ装置を提供できる。
【0029】
なお、本実施形態においては、凹溝部4と嵌合部9がそれぞれ単一の構造とされているが、それぞれ複数備えられた構造としてもよい。この場合、インフレータ1の軸方向移動がより確実に規制される利点がある。
【0030】
また、固定部11が複数備えられた構造とされているが、単一であってもよく、固定部11が1つの場合は凹溝部4にできるだけ近い位置に備えることが、凹溝部4から嵌合部9の離脱を有効に防止する観点からより好ましい。
【0031】
さらに、インフレータ1の外周面に凹溝部4を設け、ハウジング6に凹溝部4に嵌合可能な嵌合部9を設けた構造を示しているが、インフレータ1の外周面に凸部を設け、ハウジング6にその凸部が嵌合可能な外方突出状の嵌合部を設ける構造としてもよい。
【0032】
図3は関連技術に係る第2の実施形態を示しており、前記第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
即ち、本実施形態によれば、一方の固定部11が凹溝部4にオーバーラップする位置に備えられた構造とされており、プレス加工により塑性変形させた場合には、凹溝部4に一部が侵入する干渉した状態となる構造とされている。
【0034】
従って、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を奏すると共に、固定部11が凹溝部4に干渉した状態で塑性変形されているため、この固定部11によってもインフレータ1の軸方向移動を規制できるため、より確実にインフレータ1を固定できる利点がある。
【0035】
図4および図5は関連技術に係る第3の実施形態を示しており、前記第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
即ち、本実施形態によれば、ハウジング6における固定部11が、インフレータ1の凹溝部4位置に対応して設けられると共に、凹溝部4の溝幅Lよりも若干幅の狭い軸方向長さを有した構造とされている。
【0037】
そして、ハウジング6にインフレータ1を組み込んで固定部11を塑性変形させることにより、固定部11が凹溝部4に嵌合状に係止されると共に、固定部11により対向するハウジング6内面にインフレータ1が押し付け固定された状態が得られる構造とされている。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同様の構成とされている。
【0038】
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、ハウジング6内にインフレータ1を挿入して固定部11を塑性変形させるだけでよく、固定のためのボルト等が不要で、部品点数が削減でき、軽量安価なエアバッグ装置を提供できる。
【0039】
また、インフレータ1の固定状態において、凹溝部4に固定部11が嵌合しているため、凹溝部4の溝幅Lと固定部11の横幅(軸方向長さ)との僅かの差以上のインフレータ1の軸方向移動が有効に規制でき、ガス吹出口2aの位置ずれも有効に防止できる。
【0040】
さらにこの場合においても、一方向からのプレス加工によりインフレータ1を固定できる構造としているため、量産工程でのセッティングが簡単であり、特別な装置も必要でなく、組付性に優れるエアバッグ装置を提供できる。
【0041】
なお、本実施形態においても、凹溝部4とそれに嵌合される固定部11が単一の構造とされているが、それぞれ複数備えられた構造としてもよい。この場合、インフレータ1の軸方向移動がより確実に規制される利点がある。
【0042】
図6は本発明に係る第4の実施形態を示しており、前記第3の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
即ち、本実施形態によれば、インフレータ1における凹溝部4がより幅広の溝幅Sを有する構造とされ、塑性変形により凹溝部4に係止される固定部11が一対備えられた構造とされている。
【0044】
この際、各固定部11は、それぞれ凹溝部4の溝幅Sの1/2よりも短い軸方向長さの横幅を有した構造とされ、各固定部11は塑性変形により凹溝部4に嵌合状に係止された状態においては、図6に示される如く、凹溝部4の両端部で各固定部11が嵌合状に係止される構造とされている。なお、その他の部分は、第3の実施形態と同様の構成とされている。
【0045】
従って、両固定部11によりインフレータ1の相反する方向の軸方向移動が規制され、ガス吹出口2aの位置ずれも有効に防止できる。また、第3の実施形態と同様、ハウジング6内にインフレータ1を挿入して固定部11を塑性変形させるだけでよく、固定のためのボルト等が不要で、部品点数が削減でき、軽量安価なエアバッグ装置を提供できると共に、一方向からのプレス加工によりインフレータ1を固定できる構造としているため、量産工程でのセッティングが簡単であり、特別な装置も必要でなく、組付性に優れるエアバッグ装置を提供できるという利点もある。
【0046】
なお、本実施形態においては、単一の凹溝部4に一対の固定部11が嵌合状に係止することによりインフレータ1の軸方向移動を規制する構造を示しているが、複数の凹溝部4にそれぞれ各固定部11が嵌合状に係止して、各固定部11によりインフレータ1の相反する方向の軸方向移動を規制することによって、インフレータ1の軸方向移動を規制する構造であってもよい。さらには、このような固定部11の数も一対に限らず、それ以上の数の固定部11が備えられた構造であってもよい。
【0047】
図7は関連技術に係る第5の実施形態を示しており、前記第3の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
即ち、本実施形態によれば、インフレータ1における凹溝部4の溝幅Tよりも固定部11の前記横幅が短く形成された構造とされている。
【0049】
そして、ハウジング6にインフレータ1を挿入して、ガス吹出部2が整流板8に当接した状態で、各固定部11を塑性変形させれば、凹溝部4位置に対応する固定部11は凹溝部4におけるガス吹出部2寄りに位置して嵌合状に係止される構造とされている。なお、その他の部分は、第1の実施形態と同様の構成とされている。
【0050】
従って、整流板8と固定部11との協働によりインフレータ1の相反する方向の軸方向移動が有効に規制され、ガス吹出口2aの位置ずれも防止できる。また、第3の実施形態と同様、ハウジング6内にインフレータ1を挿入して固定部11を塑性変形させるだけでよく、固定のためのボルト等が不要で、部品点数が削減でき、軽量安価なエアバッグ装置を提供できると共に、一方向からのプレス加工によりインフレータ1を固定できる構造としているため、量産工程でのセッティングが簡単であり、特別な装置も必要でなく、組付性に優れるエアバッグ装置を提供できるという利点もある。
【0051】
なお、前記各実施形態において、塑性変形される固定部11が係止される凹部や嵌合部9が嵌合される凹部として周方向環状の凹溝部4を形成した構造としているが、周方向全体に形成せずに必要部分にのみ凹部を設ける構造であってもよい。
【0052】
また、前記第4の実施形態および第5の実施形態において、固定部11が係止する凹部としての凹溝部4を形成した構造を示しているが、凸部としての周方向環状の突条部を形成し、固定部11が突条部に係止してインフレータ1の軸方向移動を規制する構造であってもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明のエアバッグ装置によれば、インフレータに周方向に沿って両側壁部を有する1つの凹部が設けられ、ハウジングに周方向の割溝を介して塑性変形可能な2つの固定部が設けられ、ハウジングにインフレータを組み込んで各固定部を塑性変形させることにより、それぞれの固定部を各側壁に当接させてインフレータの軸方向移動を規制した状態で凹部に係止させると共に、ハウジングにインフレータを押し付け固定する構造とすることにより、上記同様、固定部の塑性変形によりインフレータの軸方向移動が有効に規制でき、ガス吹出口の位置ずれが防止できると共に軸方向への抜けを有効に防止した安価なインフレータの固定構造を有するエアバッグ装置を提供することができる。
【0058】
また、固定部の塑性変形が一方向のプレスにより変形可能な形状である構造とすれば、量産工程でのセッティングが簡単であり、特別な装置も必要でなく、組付性に優れるエアバッグ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態を示す要部断面図である。
【図2】 図1のII−II線断面矢視図である。
【図3】 第2の実施形態を示す要部断面図である。
【図4】 第3の実施形態を示す要部断面図である。
【図5】 図4のV−V線断面矢視図である。
【図6】 第4の実施形態を示す要部断面図である。
【図7】 第5の実施形態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1 インフレータ
2 ガス吹出部
2a ガス吹出口
4 凹溝部
6 ハウジング
8 整流板
9 嵌合部
11 固定部
Claims (2)
- エアバッグにガスを供給する略円柱状のインフレータと、インフレータを固定する筒状のハウジングを備えたエアバッグ装置において、
前記インフレータに周方向に沿って両側壁を有する1つの凹部が設けられ、前記ハウジングに周方向の割溝を介して塑性変形可能な2つの固定部が設けられ、ハウジングにインフレータを組み込んで前記各固定部を塑性変形させることにより、それぞれの固定部を各側壁に当接させてインフレータの軸方向移動を規制した状態で前記凹部に係止させると共に、ハウジングにインフレータを押し付け固定することを特徴とするエアバッグ装置。 - 前記固定部の塑性変形が一方向のプレスにより変形可能な形状であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置。
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