JP4404761B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液（以下、電解液と称す）の改良に関するものであり、特に耐電圧を改善した電解液に関するものである。

従来、中高圧用アルミニウム電解コンデンサ用の電解液では、エチレングリコール等の溶媒に、高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、ホウ酸またはそのアンモニウム塩、およびマンニトール等の多価アルコール類が配合されている。このような電解液において、ホウ酸と多価アルコール類とはエステル化合物を形成し、その構造的な特性により電解液の耐電圧が向上することが知られている。さらに、電解液に対して、合成高分子であるポリビニルアルコールを配合することも提案されている（例えば、特許文献１〜３参照）。
特公平７−４８４５９号公報（第１−４頁） 特公平７−４８４６０号公報（第１−３頁） 特公平７−６３０４７号公報（第１−４頁）

しかしながら、ポリビニルアルコールは、エチレングリコールを主成分とする溶媒に対する溶解性が著しく低いため、電解液の加熱と攪拌が長時間必要になるという問題点がある。また、ポリビニルアルコールを含む電解液は、電解紙への含浸性が低く、大量に添加することができない。さらに、多価アルコール類は主溶質であるカルボン酸ともエステル反応を起こすことがあるため、電解液自身の特性変化が大きくなるという問題点がある。

以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、エチレングリコールに対する溶解性、比抵抗、耐電圧、および熱的安定性を改善可能な電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。

本発明は、上記の課題を解決するため各種検討した結果、見出されたものであり、フルフリルメタクリレートがエチレングリコールに対する溶解性に優れ、かつ、フルフリルメタクリレートがカルボニル基を有することに着目して、比抵抗の増大を抑制しながら、耐電圧および熱的安定性の改善を図ろうとするものである。

すなわち、本発明の電解コンデンサの駆動用電解液は、エチレングリコールを主成分とする溶媒に、少なくとも、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で示されるフルフリルメタクリレートとを配合したことを特徴とする。

本発明において、フルフリルメタクリレートの配合量は、電解液全体に対して０．１０〜５．００ｗｔ％であることが好ましい。配合量が０．１０ｗｔ％未満では耐電圧向上の効果が十分でなく、５．００ｗｔ％を超えると比抵抗が高くなる傾向にある。

本発明において、カルボン酸の例として、ギ酸、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、デカン酸、安息香酸、サリチル酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、２−メチルアゼライン酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸等が挙げられる。

カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、ｔ−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩、イミダゾリニウム塩等の溶融塩を例示することができる。

エチレングリコールに混合する副溶媒としては、プロピレングリコール等のグリコール類、γ−ブチロラクトン、Ｎ−メチル−２−ピロリドン等のラクトン類、Ｎ−メチルホルムアミド、Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド、Ｎ−エチルホルムアミド、Ｎ，Ｎ−ジエチルホルムアミド、Ｎ−メチルアセトアミド、Ｎ，Ｎ−ジメチルアセトアミド、Ｎ−エチルアセトアミド、Ｎ，Ｎ−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等の炭酸類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のオキシド類、エーテル類、ケトン類、エステル類、スルホラン、スルホラン誘導体、水等を例示することができる。これらの溶媒は一種類だけでなく、二種類以上を混合して使用することができる。

上記の電解液には、漏れ電流の低減、耐電圧向上、ガス吸収等の目的で種々の添加剤を加えることができる。添加剤の例として、リン酸化合物、ホウ酸化合物、多価アルコール類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのランダム共重合体及びブロック共重合体に代表される高分子化合物、ニトロ化合物等が挙げられる。

本発明を適用した電解液において、フルフリルメタクリレートは、耐電圧を向上させ、かつ、エチレングリコールに対する溶解性が高い。しかも、フルフリルメタクリレートは、主溶質のカルボン酸とのエステル化反応が少ない。従って、本発明を適用した電解液を用いた電解コンデンサは、熱的安定性に優れ、高温下での信頼性を高めることができる。

本発明を適用した電解コンデンサの駆動用電解液は、エチレングリコールを主成分とする溶媒に、少なくとも、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で示されるフルフリルメタクリレートとを配合したものであり、後述するように、比抵抗、耐電圧、および熱的安定性を改善することができる。ここで、フルフリルメタクリレートの配合量は、電解液全体に対して０．１０〜５．００ｗｔ％であることが好ましい。

本発明に係る電解液において、フルフリルメタクリレートが耐電圧や熱的安定性を向上させる理由は、エチレングリコールを主溶媒とする電解液中で、フルフリルメタクリレートが主溶質のカルボン酸とエステル化反応を起こしにくく、かつ、フルフリルメタクリレートのカルボニル基部分が電極箔の酸化皮膜と反応して耐水性の皮膜を形成するため、電解液と電極箔との化学反応が抑えられるので、耐電圧や熱的安定性の向上を図ることができると考えられる。

以下、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。まず、表１、２に示す組成で電解液を調合した後、３０℃における電解液の比抵抗と８５℃における火花発生電圧（電解液の耐電圧）を測定した。その結果を表１、２に示す。なお、表１中、「耐圧向上剤Ａ」はフルフリルメタクリレートを意味し、「耐圧向上剤ＰＶＡ」はポリビニルアルコールを意味する。

表１、２より分かるように、フルフリルメタクリレートを配合した実施例１〜１０では、従来例１〜５と比較して、比抵抗が大きく上昇することなく、耐電圧が向上していることが分かる。また、フルフリルメタクリレートは、ポリビニルアルコールと比較してエチレングリコールに対する溶解性に優れ、電解液の加熱、攪拌時間が短時間で済むという結果が得られた。

また、表１、２に示す電解液を用いて、中高圧用アルミニウム電解コンデンサを作製し、１０５℃の高温雰囲気中での信頼性試験を行った結果、本発明の実施例１〜１０に係る電解液は、容量減少や損失増大が小さいなど、熱的安定性にも優れ、高温下での信頼性が高いことが確認できた。

ここで、フルフリルメタクリレートの配合量は０．１０ｗｔ％未満では耐電圧向上の効果が十分でなく（実施例１参照）、５．００ｗｔ％を超えると比抵抗が高くなり、低比抵抗用途に不向きとなる傾向にある（実施例５参照）。よって、フルフリルメタクリレートの配合量は、０．１０〜５．００ｗｔ％の範囲が好ましい。

なお、本発明は実施例に限定されるものではなく、先に例示した各種溶質を単独または複数配合した電解液や、その他添加剤を加えた電解液、副溶媒を混合した電解液でも実施例と同等の効果があった。

Claims (2)

1. エチレングリコールを主成分とする溶媒に、少なくとも、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で示されるフルフリルメタクリレートとを配合したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
   

   
2. 請求項１において、フルフリルメタクリレートの配合量が、電解液全体に対して０．１０〜５．００ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。