本発明のガスセンサ用制御回路ユニット(以下、単に制御回路ユニットともいう)は、ガスセンサに接続して使用され、該ガスセンサの作動制御回路と、その作動制御回路中の回路パラメータから、少なくとも2種以上のガス成分の濃度を算出可能な複数の信号を検出する信号検出回路とを備える。この構成によれば、既存のガスセンサに装着することにより、1つのガスセンサを複数種類のガス成分濃度を検出可能なものとして機能させることができるので、必要なセンサの個数を削減することができ、経済的である。回路パラメータは、例えばガスセンサの検出部が発する電気信号あるいはそれに基づいて生成される別の電気信号の、電流値あるいは電圧値等である。具体的には、各々酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成された第一ポンプ素子と酸素濃度検出素子と第二ポンプ素子と、それら第一ポンプ素子と酸素濃度検出素子と第二ポンプ素子とを加熱する加熱素子とを有し、前記第一ポンプ素子と前記酸素濃度検出素子との間に第一処理室が、前記酸素濃度検出素子と前記第二ポンプ素子との間には第二処理室が形成され、外部からの被測定ガスを一定の拡散抵抗のもとに前記第一処理室内に導く第一拡散律速部が設けられ、前記第一処理室と前記第二処理室とを連通させる拡散律速部が設けられたNOxセンサに接続して使用されるガスセンサ用制御回路ユニットであって、
前記第一ポンプ素子に対する通電電圧を制御して、前記酸素濃度検出素子の出力電圧がほぼ一定となるように前記第一処理室内の酸素分圧レベルを制御する第一ポンプ素子制御回路と、前記第二処理室から酸素を汲み出す方向に、前記第二ポンプ素子に対して一定電圧を印加する第二ポンプ素子制御回路と、前記加熱素子の発熱を制御する発熱制御回路とを有した前記NOxセンサの作動制御回路と、
該作動制御回路中の回路パラメータから、前記被測定ガス中のNOx濃度と酸素濃度を算出可能な複数の信号を検出する信号検出回路であって、前記第一ポンプ素子に流れる電流(第一ポンプ電流)を検出し、その検出信号を出力する第一ポンプ電流検出回路と、前記第二ポンプ素子に流れる電流(第二ポンプ電流)を検出し、その検出信号を出力する第二ポンプ電流検出回路とを有した信号検出回路と、
前記第一ポンプ素子、前記酸素濃度検出素子及び前記第二ポンプ素子の温度が予め定められた温度目標値に近づくように、前記発熱制御回路に対し前記加熱素子の発熱制御を指令する発熱制御指令手段と、A/D変換回路によりデジタル変換された第一ポンプ電流検出信号に基づいて、前記被測定ガス中の酸素濃度情報を生成する酸素濃度情報生成手段と、第一ポンプ電流の検出信号と第二ポンプ電流の検出信号とに基づいて前記被測定ガス中の窒素酸化物濃度情報を生成する窒素酸化物濃度情報生成手段として機能するマイクロプロセッサとを備え、
前記信号検出回路と、前記NOxセンサの作動制御回路と前記マイクロプロセッサとが、前記窒素酸化物濃度情報と前記酸素濃度情報とを自動車エンジンの制御信号として出力する出力回路とともに回路基板に一体に組みつけられるとともに、該回路基板がケースに収容され、該ケースに前記NOxセンサがケーブルを介して接続されており、
前記第一ポンプ電流の値と、前記第二ポンプ電流の値と、前記被測定ガス中の窒素酸化物濃度との関係を表す特性につき、予め設定された標準的な特性に関する情報(以下、標準特性情報という)を記憶した標準特性情報記憶部と、
前記第一ポンプ電流の値と、前記第二ポンプ電流の値と、前記被測定ガス中の窒素酸化物濃度との関係を表す特性につき、予め実測した前記NOxセンサの特性を前記標準的な特性に一致させるための補正情報を記憶した補正情報記憶部とが前記回路基板に実装され、
前記マイクロプロセッサにより機能実現される前記窒素酸化物濃度情報生成手段は、前記第一ポンプ電流と前記第二ポンプ電流との各信号を検出するとともに、前記補正情報に基づいて各検出値を補正した上で、前記標準特性情報を用いて前記被測定ガス中の前記窒素酸化物濃度の情報を生成するものとされており、
前記NOxセンサの特性は、前記第二ポンプ電流のNOx濃度に対する変化率を表すゲインを含むものであり、前記補正情報は、前記被測定ガス中の酸素濃度によって変化する該ゲインを前記酸素濃度に応じて修正するものであることを特徴とする。
この構成によれば、第一ポンプ電流検出回路と第二ポンプ電流検出回路とを備えることで、その第一ポンプ電流の検出信号を被測定ガス中の酸素濃度検出に使用でき、かつ第一ポンプ電流の検出信号と第二ポンプ電流の検出信号とを被測定ガス中の窒素酸化物濃度検出に使用できる。従って、既存のNOxセンサに装着するのみで、これにNOxセンサのみならず酸素濃度センサとしての機能を簡単に付与することができ、ひいてはNOx濃度及び酸素濃度(空燃比)の検出系の構成を簡単にできる。
他方、本発明者らの検討によれば、NOxセンサにおいて一般に、第一処理室に導入される被測定ガス中の酸素濃度が変動すると、第二ポンプ電流のNOx濃度依存性が影響を受け、従来のように第二ポンプ電流の値のみでは、正確なNOx濃度の検出ができないことが判明している。本発明のガスセンサ用制御回路ユニットあるいはガスセンサシステムでは、被測定ガス中の酸素濃度を反映した第一ポンプ電流の検出信号と、第二ポンプ電流の検出信号との双方に基づいてNOx濃度を検出するようにしているので、より精度の高い測定が可能となっている。
この場合、第一ポンプ素子制御回路は、第一処理室から第二気体流通部を通って第二処理室に導かれる気体中の酸素濃度をほぼ一定となるように、第一ポンプ素子に対する通電電圧を制御するものと見ることもできる。
上記制御回路ユニットには、第一ポンプ素子制御回路と、第一ポンプ電流検出回路と、第二ポンプ素子制御回路と、第二ポンプ電流検出回路とを互いに一体的に組み付ける組付け手段を設けることができる。これにより、ユニット全体がコンパクト化され、NOxセンサへの取付けも容易となる。
また、該制御回路ユニットには、第一ポンプ素子、酸素濃度検出素子及び第二ポンプ素子の温度が予め定められた温度目標値に近づくように、発熱制御回路に対し加熱素子の発熱制御を指令する発熱制御指令手段として少なくとも機能するマイクロプロセッサを設けることができる。これにより、NOxセンサに該制御回路ユニットを装着するだけで、各素子の温度制御を行うことが可能となり、かつ発熱制御指令手段も含めたユニット全体の構成を一層コンパクトなものとすることができる。
さらに、上記制御回路ユニットには、第一ポンプ電流検出回路による第一ポンプ電流検出信号と、第二ポンプ電流検出回路による第二ポンプ電流検出信号とを、それぞれデジタル変換するA/D変換回路を設けることができる。これにより、第一ポンプ電流検出信号と第二ポンプ電流検出信号とをマイクロプロセッサ等によりデジタル処理したい場合に、ユニットから直接デジタル出力を取り出すことができるので便利である。
そして、前述のマイクロプロセッサを搭載する場合には、該マイクロプロセッサを、A/D変換回路によりデジタル変換された第一ポンプ電流検出信号に基づいて、被測定ガス中の酸素濃度情報を生成する酸素濃度情報生成手段として機能させ、同じく第一ポンプ電流の検出信号と第二ポンプ電流の検出信号とに基づいて被測定ガス中の窒素酸化物濃度情報を生成する窒素酸化物濃度情報生成手段として機能させることができる。これにより、制御回路ユニットから、酸素濃度情報と窒素酸化物濃度情報とを取り出すことも可能となる。
他方、上記マイクロプロセッサが出力するデジタル信号のうち、酸素濃度情報、窒素酸化物濃度情報、酸素濃度情報に基づいて生成される空燃比情報、及び酸素濃度情報に基づいて生成される過剰酸素率情報の、少なくともいずれかに関するデジタル信号をアナログ変換し、これを対応するアナログ信号として出力するD/A変換回路を設けることもできる。これにより、上記各情報をアナログ出力の形で取り出すことが可能となり、自動車エンジンをはじめとする内燃機関等の制御信号としても活用しやすくなる。また、上記デジタル信号に基づいて、被測定ガスの酸素濃度、窒素酸化物濃度、空燃比及び過剰酸素率の少なくともいずれかを表示する表示装置を設けることもできる。これにより、各情報の内容を視覚的に把握することが可能となる。
また、接続対象となるNOxセンサが、第一ポンプ素子と、酸素濃度検出素子と、第二ポンプ素子とを加熱する加熱素子との少なくともいずれかのものの温度を検出する温度検出部とを備えたものである場合、上記マイクロプロセッサは、温度検出部にて検出される温度の情報と第一ポンプ電流検出信号及び第二ポンプ電流検出信号とに基づいて、温度補正された酸素濃度及び窒素酸化物濃度の各情報(以下、これらを総称して被検出成分濃度情報という)を生成する被検出成分濃度情報温度補正手段として機能するものとすることができる。
これにより、例えば酸素濃度検出素子の温度が、排気ガス温度の急変等により一時的に変化することがあっても、温度補正された形で被検出成分の濃度情報が生成されるので、該被検出成分の検出精度を良好に維持することができる。この場合、酸素濃度検出素子の温度は、サーミスタや熱電対など、別途設けられた温度センサを用いて測定してもよいが、各素子を構成する固体電解質の内部抵抗の値が温度によって変化するので、これを利用して温度を測定するようにすれば温度センサを設ける必要がなくなり、ひいては測定系の構成を単純化できる利点がある。この場合、上記制御ユニットには、酸素濃度検出素子を温度検出部として、その内部抵抗を測定するための内部抵抗測定制御回路を設ければよい。また、マイクロプロセッサを設ける場合には、そのマイクロプロセッサにより機能実現される発熱制御指令手段は、内部抵抗の測定結果に基づいて、第一ポンプ素子、酸素濃度検出素子及び第二ポンプ素子の各温度が予め定められた温度目標値に近づくように、発熱制御回路に対し加熱素子の発熱制御を指令するものとすることができる。
上記内部抵抗測定制御回路には、酸素濃度検出素子に対し一定の内部抵抗検出電流を通電する内部抵抗検出電流通電回路を設けることができる。これによれば、定電流通電時の印加電圧から酸素濃度検出素子の内部抵抗を簡単に測定することができる。この場合、上記マイクロプロセッサは、該内部抵抗検出電流を通電したときに酸素濃度検出素子に印加される電圧(以下、抵抗検出電圧という)を、酸素濃度検出素子の内部抵抗情報として検出する内部抵抗情報検出手段として機能するものとすることができる。
内部抵抗測定制御回路は、酸素濃度検出素子に対し内部抵抗検出電流を通電してその内部抵抗を測定した後、該酸素濃度検出素子に対し、内部抵抗検出電流とは逆方向の修正電流を通電する修正電流通電回路を備えるものとして構成することができる。酸素濃度検出素子に内部抵抗測定用電流を通電すると、酸素濃度検出素子内においてその通電と逆方向に酸素が輸送され、酸素濃度検出素子両側の酸素濃度に変化を生ずる。その結果、NOxセンサが被検出成分濃度の測定に復帰した際に、その酸素濃度の変化が被検出成分濃度の測定精度に対する誤差の要因ともなりうる。また、酸素濃度検出素子の内部抵抗値が高い場合には、酸素濃度検出素子内の酸素イオンが移動しにくくなって、電流通電に伴い分極を生ずることもある。そこで、修正電流通電手段により、酸素濃度検出素子に対し内部抵抗検出電流を通電してその内部抵抗を測定した後、該酸素濃度検出素子に対し、内部抵抗検出電流と逆方向に修正電流を通電するようにすれば、その通電により上記とは逆向きに酸素が輸送されるので、変化した酸素濃度が内部抵抗測定前の状態に近づき、復帰後の被検出成分濃度の測定精度が高められるとともに、酸素濃度検出素子の分極状態も解消することができる。この場合、修正電流の大きさ及び通電時間は、内部抵抗検出電流通電時に輸送されると考えられる酸素量とほぼ同量の酸素が、該修正電流の通電により逆輸送されるように設定するのがよく、例えば内部抵抗検出電流とほぼ大きさが同じ電流を、該内部抵抗検出電流とほぼ同時間通電するのがよい。
次に上記制御回路ユニットないしガスセンサシステムには、第一ポンプ電流の値と、第二ポンプ電流の値と、被測定ガス中の窒素酸化物濃度との関係を表す特性につき、予め設定された標準的な特性に関する情報(以下、標準特性情報という)を記憶した標準特性情報記憶部と、第一ポンプ電流の値と、第二ポンプ電流の値と、被測定ガス中の窒素酸化物濃度との関係を表す特性につき、予め実測したNOxセンサの特性を標準的な特性に一致させるための補正情報を記憶した補正情報記憶部とを設けることができる。そして、マイクロプロセッサを設ける場合には、そのマイクロプロセッサにより機能実現される窒素酸化物濃度情報生成手段を、第一ポンプ電流と第二ポンプ電流との各信号を検出するとともに、補正情報に基づいて各検出値を補正した上で、標準特性情報を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度の情報を生成するものとすることができる。
この構成によれば、異なるNOxセンサを用いて同じ被測定ガスのNOx濃度を測定したとしても、各NOxセンサ毎のバラツキは固有の補正情報によって補正されるため、いずれのNOxセンサによっても同様の測定結果が精度良く得られる。また、各NOxセンサ毎に第一ポンプ電流の値と、第二ポンプ電流の値と、被測定ガス中の窒素酸化物濃度との関係を表す特性を記憶しているのではなく、標準的な特性の他には補正データを記憶しているのみなので、記憶容量が小さくて済む。
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を参照して説明する。 図1は、ガスセンサの一例としての窒素酸化物センサ(以下、NOxセンサという)1を示している。すなわち、NOxセンサ1は、それぞれ横長板状に形成された第一ヒータ2、第一ポンプ素子3、酸素濃度検出素子4、第二ポンプ素子5及び第二ヒータ8がこの順序で積層され一体化されたものとして構成されている。また、第一ポンプ素子3と酸素濃度検出素子4との間には第一処理室9が、酸素濃度検出素子4と第二ポンプ素子5との間には第二処理室10が形成されている。
各素子3〜5は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成されている。そのような固体電解質としては、Y2O3ないしCaOを固溶させたZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2にはHfO2が含有されていてもよい。本実施例では、Y2O3ないしCaOを固溶させたZrO2固体電解質セラミックが使用されているものとする。一方、第一及び第二ヒータ2,8は、公知のセラミックヒータで構成されており、各素子3〜5を所定の作動温度、例えば750〜850℃、望ましくは780〜830℃(例えば800℃)に加熱する役割を果たす。この加熱温度は、ヒータ2,8の耐久性向上のため、従来のNOxセンサよりはやや低めに設定されている。
各素子3〜5の境界部分には、Al2O3等を主体とした絶縁層(図3に示す絶縁層260等:図1では示さず)が介挿されている。このような積層一体化されたセンサの構造は、上記各素子3〜5となるべきセラミックグリーンシート(セラミック成形体)を積層して焼成することにより製造することができる。
第一処理室9の両側壁部分には、該第一処理室9と外部の被測定空間とを連通させる第一気体流通部11が形成されている。図1(b)に示すように、第一気体流通部11は、第一処理室9の幅方向両側において第一ポンプ素子3と酸素濃度検出素子4との間にまたがる形態で形成されるとともに、第一処理室9の側縁に沿って第一ポンプ素子3ないし酸素濃度検出素子4の長手方向に延びており、多孔質Al2O3焼成体等により連通気孔を有する多孔質セラミック体として構成されている。これにより、該第一気体流通部11は、外部からの排気ガスを一定の拡散抵抗のもとに第一処理室9内に導く拡散律速部として機能する。
次に、第一処理室9と第二処理室10とに挟まれた部分は、酸素イオン伝導性固体電解質で構成された隔壁12となっている。換言すれば、上記2つの処理室9,10は、該隔壁12を挟んで隣接して配置されている。そして、この隔壁12には、第一処理室9と第二処理室10とを連通させる第二気体流通部13が形成されており、その厚さ方向中間部には酸素基準電極14が埋設されている。第二気体流通部13も、第一気体流通部11と同様に多孔質セラミック体として構成されており、第一処理室9内の気体を第二処理室10へ一定の拡散抵抗のもとに導く拡散律速部として機能する。なお、上記拡散律速部は、多孔質セラミック体(あるいは金属体)で形成する代わりに、小孔やスリットで構成してもよい。
他方、隔壁12の第一処理室9に面する表面には第一電極15が形成されており、酸素濃度検出素子4の要部は、該第一電極15と、酸素基準電極14と、それら電極15,14の間に挟まれた隔壁部分12aとによって構成されている。一方、第二ポンプ素子5の両面には、それぞれ電極17,18が、第一ポンプ素子3の両面には、電極19,20がそれぞれ形成されている。なお、電極15,14は、酸素濃度検出素子4の長手方向において互いにずれた位置関係で形成されている。
上記各電極14,15,17〜20はいずれも、各素子3〜5を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極(例えばPt多孔質電極)として構成されている。このような多孔質電極は、例えば上記金属ないし合金の粉末と、下地となる固体電解質セラミックとの密着強度を向上させるために該下地と同材質の固体電解質セラミック粉末を適量配合してペーストを作り、これを用いて下地となるべきセラミックグリーンシート上に電極パターンを印刷形成して、一体焼成することにより形成される。
なお、図1に示すように、各素子3〜5の各電極14,15,17〜20からは、素子の長手方向に沿ってNOxセンサ1の取付基端側に向けて延びる電極リード部14a,15a,17a〜20a(図1では14a,15a,20aのみ表れている)がそれぞれ一体に形成されており、該基端側において各素子3〜5には接続端子14b,15b,17b〜20bの一端が埋設されている。そして、図2に示すように、各接続端子(20b)は、金属ペーストの焼結体として素子の厚さ方向に形成された導通部(20c)により、電極リード部(20a)の末端に対して電気的に接続されている(図では、電極リード部20aの場合について代表させて示している)。
また、図1に示すように、酸素基準電極14は第二気体流通部13と干渉しない位置に形成されている。これにより、NOx濃度の検出出力をより安定化させることができる。一方、酸素濃度検出素子4の第一電極15は、第二気体流通部13と重なりを有する位置に形成され、該第二気体流通部13に対応する位置には、気体の流通を確保するために貫通穴15hが形成されている。
次に、第一処理室9及び第二処理室10には、図3(b)に示すように、焼成時の処理室空間の潰れを防止する支柱部210が、散点状あるいは千鳥状に形成されている。このような構造の製造方法を第一処理室9を例にとって説明する。すなわち、図3(a)に示すように、第一ポンプ素子3となるべきセラミックグリーンシート220と、同じく酸素濃度検出素子4となるべきセラミックグリーンシート230との各々の対向面において第一処理室9に予定された領域に、セラミック粉末ペースト(例えば多孔質Al2O3粉末ペースト)を用いて、支柱部210となるべき支柱部パターン266a及び266bを形成する。また、その支柱部パターン266a及び266bと重なりを生じない位置において同じく該第一処理室9に予定された領域に、焼成時に燃焼ないし分解する材質の粉末ペースト(例えばカーボンペースト)により補助支持パターン267a及び267bを形成する。さらに、上記第一処理室9に予定された領域を除く他の領域には、絶縁層パターンとしての貼合わせコート269がAl2O3粉末ペースト等により支柱部パターン210の高さよりも小さい厚さで形成される。また、図示はしていないが、第一処理室9となるべき領域の両側には、多孔質Al2O3焼成体による第一気体流通部11(図1)を形成するための連通部パターンが多孔質Al2O3粉末ペーストにより形成される。
これを焼成することにより、図3(b)に示すように、第一ポンプ素子3と酸素濃度検出素子4との間においては、補助支持パターン267a及び267bが消失するとともに、上記支柱部パターン266a,266bが焼成により一体化して支柱部210が形成される。また、この支柱部210により大きさが規定された形で第一処理室9が形成され、その幅方向両側には図1(b)に示すような多孔質セラミック体による第一気体流通部11が形成される。一方、第一処理室9を除く他の領域においてそれら酸素濃度検出素子4と第一ポンプ素子3とは、貼合わせコート269に基づく絶縁層260を介して互いに接合される。
ここで、図4に示すように、支柱部パターン266a,266bと、補助支持パターン267a,267bとは平面をほぼ埋め尽くすように相補的に形成され、例えば図3(a)のグリーンシート220及び230を互いに積層した際に、補助支持パターン267a,267bによる補強効果に基づき、支柱部パターン266a,266bが両者の間で潰れることが防止ないし抑制される。また、グリーンシート220及び230は柔軟であり、図3(a)に誇張して示すように、貼合わせコート269が支柱部パターン266a,266bの合計厚さよりもかなり薄く形成されていたとしても、グリーンシート220及び230が少し橈むことで、両者は貼合わせコート269を介して密着でき、焼成により支障なく一体化することができる。
図5は、NOxセンサ1を用いた本発明のガスセンサシステム(以下、単にセンサシステムという)の一例の電気的構成を示すブロック図である。すなわち、該センサシステム30は、上記NOxセンサ1と、該NOxセンサ1に接続された本発明の一実施例たるNOxセンサ用制御回路ユニット(以下、単に制御回路ユニットという)31とによって構成されている。制御回路ユニット31は、マイクロプロセッサ52と、NOxセンサ1とマイクロプロセッサ52とを接続する周辺回路51とから構成されている。マイクロプロセッサ52は、出入力インターフェースとしてのI/Oポート52aと、これに接続されたCPU53、RAM55、ROM54等により構成されている。CPU53は、RAM55をワークエリアとしてROM54に格納された制御プログラムにより、酸素濃度情報生成手段及び窒素酸化物濃度情報生成手段として機能する。
周辺回路51は、第一ポンプ素子制御回路56、第二ポンプ素子制御回路57、基準用定電流電源回路58、リミッタ回路59、内部抵抗測定制御回路60、 ヒータ制御回路(発熱制御回路)72、内部抵抗測定制御回路60からの検出出力をデジタル変換するA/D変換回路64、第一ポンプ素子制御回路56及び第二ポンプ素子制御回路57からの検出出力をデジタル変換するA/D変換回路65等を含んで構成されている。これらA/D変換回路64及び65からのデジタル出力は、I/Oポート52aよりマイクロプロセッサ52に入力される。
また、マイクロプロセッサ52のI/Oポート52aには、データ記憶部66、マイクロプロセッサ52からのデジタル出力信号をアナログ変換するD/A変換回路67が接続されている。D/A変換回路67には、そのアナログ変換された出力に基づいて、被検出ガスの窒素酸化物(以下、NOxとも記す)濃度、酸素(以下、O2とも記す)濃度、空燃比(以下、A/Fとも記す)等の情報を反映したアナログ信号出力を生成する出力回路68が接続されている。さらに、I/Oポート52aには、マイクロプロセッサ52からのデジタル出力信号に基づいて、NOx濃度、O2濃度、A/F等の値を表示する(例えば数値表示する)表示装置69が接続されている。
図6は、周辺回路51の詳細を示す回路図である。まず、基準用定電流電源回路58は酸素濃度検出素子4の酸素基準電極14側に接続されており、センサ作動温度における酸素濃度検出素子4の内部抵抗値よりも十分大きい抵抗値(例えば該内部抵抗値の1000〜5000倍程度)を有する抵抗器90を介して、該酸素濃度検出素子4に対し電源電圧AVccを印加するようになっている。これにより、酸素濃度検出素子4には第一処理室9側から該酸素基準電極14側に酸素が汲み込まれる方向に、ほぼ一定の微小電流I0が印加され、多孔質の酸素基準電極14内をほぼ100%に近い酸素濃度の基準ガスで満たす役割を果たす。
第一ポンプ素子制御回路56は、ポンプ電流制御部62とPID制御部63とを含み、PID制御部63の入力側は、内部抵抗測定制御回路60と基準用定電流電源回路58とを介して、酸素濃度検出素子4の酸素基準電極14(正極側)に接続されている。他方、PID制御部63の出力側は、ポンプ電流制御部62のオペアンプ102と、リミッタ回路59とを介して第一ポンプ素子3の外側の電極20(正極側)に接続されている。さらに、第一ポンプ素子3と酸素濃度検出素子4との第一処理室9に面する各電極19及び15は配線70によりPID制御部63の出力側に共通結線されている。
PID制御部63は、要部が2つのオペアンプ104,105と周辺の抵抗器及びコンデンサから構成される。このうち前段のオペアンプ104は抵抗器104a及びコンデンサ104bとともに、ローパスフィルタ機能を備えた反転増幅器として機能する。その正側には基準電圧Vr1(例えば2.5V)が入力され、負側には酸素基準電極14に接続される。この負側の入力電圧は、酸素濃度検出素子4の出力電圧となるが、該出力電圧は酸素基準電極14側の酸素濃度と第一処理室9側の酸素濃度との差に基づいて、酸素濃度検出素子4に生ずる濃淡電池起電力が主体になるものである。
ここで、上記負側入力は、バイアス電圧Vr2によりバイアスされている。該バイアス電圧Vr2は、酸素濃度検出素子4の出力電圧Vemfの目標値Vemf0を、上記基準電圧Vr1から差し引いた値(すなわちVr1−Vemf0)として設定されている。従って、オペアンプ104は、VemfとVemf0との差Vemf−Vemf0を反転差動増幅して出力する形となる。なお、基準電圧Vr1とバイアス電圧Vr2とは、電源電圧AVcc(本実施例では例えば8V)を抵抗器104g,104hあるいは104i,104jにより分圧調整して作られている。
次に、2段目のオペアンプ105は、周辺の抵抗器あるいはコンデンサ105a〜105fとともにPID動作部を形成し、オペアンプ104からの入力電圧と基準電圧Vr1との差分に応じたPID動作を行う。ここで、抵抗器105e,105bはその比例項を、抵抗器105fとコンデンサ105aは積分項を、抵抗器105eとコンデンサ105dは微分項をそれぞれ形成するためのものである。なお、コンデンサ105cは、該PID動作部にローパスフィルタ機能を付与するためのものである。
該PID動作部の出力は、ポンプ電流制御部62の要部をなす電流制御用のオペアンプ102に入力される。このオペアンプ102は単電源型のものであり、PID動作部からの入力電圧Vkと基準電圧Vr1との差分に応じて、その出力を0から最大値(本実施例では電源電圧AVcc)までの範囲で変化させ、第一ポンプ素子3に対し第一処理室9から酸素を汲み出す向きのポンプ電圧(通電電圧)Vpを印加する。これにより、第一処理室9内の酸素分圧は、酸素濃度検出素子4の出力電圧(自身に生ずる酸素濃淡電池起電力に基づき、第二気体流通部13を通って第二処理室10に導かれる気体中の酸素濃度を反映したものとなる)がPID制御されつつ上記目標値Vemf0に維持されるよう、第一ポンプ素子3への通電電流値、すなわち第一ポンプ電流Ip1’が制御されることとなる。
ここで、リミッタ回路59は、第一ポンプ素子3に過剰なポンプ電圧Vpが印加されないよう、その上限値を制限する役割を果たす。このようなリミッタ回路59の機能は各種回路構成にて実現できるが、本実施例では、次のような回路構成を採用している。すなわち、該回路の要部をなすのは、電圧制御点PCにそれぞれダイオード59f,59gを介して接続された2個のボルテージフォロワ用のオペアンプ59d,59eであり、各々上限電圧Vmax(本実施例では例えば6V)と下限電圧Vmin(本実施例では例えば2V)とを出力側にて保持するように作動する。なお、VmaxとVminとは、電源電圧AVccを抵抗器59a〜59cにより分圧調整する形で作られている。そして、制御点PCの電圧がVmaxを超えようとした場合はダイオード59fが導通してオペアンプ59dの出力電圧と平衡し、その値がVmaxに維持される。他方、Vminを下回ろうとした場合は、ダイオード59gがオペアンプ59eの出力電圧と平衡し、その値がVminに維持される。
ポンプ電流制御部62においては、例えばPID作動部の出力経路上に電流検出用抵抗器101が設けられている。この抵抗器101は、第一ポンプ電流検出回路の主体をなすものであり、その両端電圧の差が第一ポンプ電流Ip1’(ただし、後述の第二ポンプ電流Ip2が重畳されている)の検出信号として、周辺の抵抗器103a〜103dとともに差動増幅器を構成するオペアンプ103により電圧信号の形で取り出され、さらにA/D変換回路65でデジタル化されて、図5のマイクロプロセッサ52に入力される。ただし、電流検出用抵抗器101の両端電圧を個別にA/D変換してマイクロプロセッサ52に入力し、マイクロプロセッサ52の内部処理によりその差分を演算して電流値検出を行ってもよい。
次に、第二ポンプ素子制御回路57は、第二ポンプ素子5に対して、第二処理室10から酸素を汲み出す方向の一定の第二ポンプ電圧Vp2を印加するためのものであり、印加電圧発生部75と第二ポンプ電流検出回路76とを備える。印加電圧発生部75は、電源電圧AVccを分圧調整することにより所期の印加電圧を発生させる抵抗器75a,75bと、ボルテージフォロワ用のオペアンプ106とを含み、該オペアンプ106の出力側電圧が印加すべきポンプ電圧Vp2に維持される。また、第二ポンプ電流検出回路76は、例えば第二ポンプ電圧Vp2の入力経路上に設けられた電流検出用抵抗器107を主体に構成される。該抵抗器107の両端電圧の差が第二ポンプ電流Ip2の検出信号として、周辺の抵抗器108a〜108dとともに差動増幅器を構成するオペアンプ108により電圧信号の形で取り出され、さらにA/D変換回路65でデジタル化されて、図5のマイクロプロセッサ52に入力される。ただし、この場合も電流検出用抵抗器107の両端電圧を、個別にA/D変換してマイクロプロセッサ52に入力するようにしてもよい。
ここで、酸素濃度検出素子4の出力電圧の目標値Vemf0は、例えば300〜500mV(本実施例では、例えば350mV)の範囲で調整される。これは、ネルンストの式に基づいて算出される酸素分圧値に換算して10−10〜10−6atm(本実例ではおおむね10−7atm)の範囲に対応するものである。このことは、酸素濃度検出素子4が検出する第一処理室9内の酸素分圧、換言すれば、少なくとも第二気体流通部13を通って第二処理室10に導かれる気体中の酸素分圧が上記範囲で調整されることを意味する。
上記酸素分圧が10−10atm未満(あるいは出力電圧目標値Vemf0が500mV以上)になると、第一処理室9内において被測定ガス中のNOxの分解が進み過ぎ、該NOxの検出精度が低下する場合がある。他方、上記酸素分圧が10−6atmを超えると、第二処理室10に導かれるガス中に残留する酸素濃度が高くなり過ぎ、後述する第二ポンプ素子5のオフセット電流値が過剰に大きくなって、NOxの検出精度が低下する場合がある。他方、本発明者らの検討によれば、第一処理室9内の酸素分圧は、導入される被測定ガス中のNOxがある程度分解を起こすレベルに設定されることが、センサの温度変化や被測定ガス中の酸素濃度変化に対するNOxの検出出力の安定性を確保する上で重要であることが判明している。従って、上記酸素分圧が10−6atmを超えると、NOxの分解がほとんど生じなくなり、NOxの検出出力の安定性を確保できない場合がある。
次に、内部抵抗測定制御回路60は、例えばCMOS−IC等で構成された両極性型アナログスイッチ回路79を含み、そのスイッチSw1が、例えば酸素基準電極14から第一ポンプ素子制御回路56に向かう経路上に配置されている。さらに、アナログスイッチ回路79と第一ポンプ素子制御回路56との間にはサンプルアンドホールド回路(以下、S&H回路と記す)120が設けられている。他方、アナログスイッチ回路79のSw2及びSw3には、電流値ICで極性が互いに異なる定電流電源回路77,78がそれぞれ接続されている。また、S&H回路120を経て出力される後述の内部抵抗検出信号ΔVSは、A/D変換回路64でデジタル変換されてマイクロプロセッサ52に入力されるようになっている。
なお、第一ポンプ電流制御回路56、第二ポンプ電流制御回路57、及びアナログスイッチ回路79の各スイッチSw1〜Sw3は、マイクロプロセッサ52からの制御信号を受けてオン・オフする(図10参照)。
図7は、ヒータ制御回路72の例を示すものである。同図(a)のヒータ制御回路72では、マイクロプロセッサ52から与えられるヒータ制御値をアナログ変換するD/A変換回路80と、これに接続されたトランジスタ82とを備え、このトランジスタ82にヒータ2及び8が接続されている。トランジスタ82は能動領域で作動し、与えられるヒータ制御値に応じてヒータ2,8の通電電流を増加させる。
一方、同図(b)は、PWM(pulse width modulation)制御方式を採用したヒータ制御回路72の例を示すものである。この回路72の主体をなすのはPWM制御回路85であり、マイクロプロセッサ52から与えられるヒータ制御電圧値をアナログ変換するD/A変換器86と、三角波(あるいはのこぎり波)発生回路87と、それらD/A変換器86及び三角波発生回路87からの出力がそれぞれ入力されるオペアンプ88とを含んで構成されている。オペアンプ88は単電源型のもので、ヒータ制御電圧値と三角波入力値との大小関係に応じてゼロ及びゼロでない所定電圧Vのいずれかを出力するコンパレータとして作動する。この場合、そのコンパレータ出力のデューティ比がヒータ制御電圧値に応じて変化する形となり、ヒータ2,8の発熱が調整される。
さて、図5において、第一ポンプ素子制御回路56、第二ポンプ素子制御回路57、基準用定電流電源回路58、リミッタ回路59、内部抵抗測定制御回路60、ヒータ制御回路72、A/D変換回路64,65、マイクロプロセッサ52、D/A変換回路67、出力回路68等は回路基板32に組みつけられ、互いに一体化されている。そして、図8に示すように、この基板32がケース31aに収容され、制御回路ユニット31を構成している。該制御回路ユニット31は、ケーブル89とコネクタ90とを介してNOxセンサ1に着脱可能に装着される。
図5に戻り、データ記憶部66は、マイクロプロセッサ52に着脱可能に装着される半導体メモリデバイスとして構成されている(以下、半導体メモリデバイス66とも記す)。本実施例では、図8に示すように、該データ記憶部として、EPROMとして構成されたほぼボタン状の半導体メモリデバイス(例えば、ダラス・セミコンダクター・コーポレーション製の商品名タッチメモリボタン(DS1995))66が使用されている。この半導体メモリデバイス66は、直径2cm足らずの小型のものであり、ほぼ菱形のマウント66a(同社製の商品名タッチメモリマウントブロダクツ(DS9093x))にはめ込まれ、このマウント66aがケース31aの外面にビス止めされる。
以下、上記NOxセンサシステム30の作動について説明する。概略は以下の通りである。まず、図6において、アナログスイッチ回路79のスイッチSw1をオンとし、同じくスイッチSw2,Sw3をオフとして、第一ポンプ素子制御回路56と第二ポンプ素子制御回路57とを作動させる(これらは図5に示すように、マイクロプロセッサ52からの作動指令信号を受けて作動する)。被測定ガスは第一気体流通部11を介して第一処理室9内に導入され、そこで第一ポンプ素子3の作動により酸素が汲み出されて、酸素濃度検出素子4の出力電圧が一定の目標値Vemf0が維持されるようにその酸素濃度が調整される。このときの第一ポンプ電流値Ip1’の検出信号はA/D変換回路64を介してマイクロプロセッサ52に入力される。
酸素濃度調整後の被測定ガスは第二気体流通部13を介して第二処理室10に流入する。このとき第二ポンプ素子5に流れる第二ポンプ電流Ip2は、被測定ガス中のNOx濃度に応じて変化する。しかしながら、第二ポンプ電流Ip2の値とNOx濃度との関係は、被測定ガス中にもともと含有されている酸素濃度レベルによって変化するため、その酸素濃度レベルと第二ポンプ電流Ip2との両方の値を特定することにより、NOx濃度を知ることができる。
この場合、第一ポンプ電流値Ip1’は被測定ガス中の酸素濃度に応じて変化するため、この第一ポンプ電流値Ip1’の値に基づいて該酸素濃度を知ることができる。ただし、図6の回路構成では、電流検出抵抗器101が検出する上記電流値Ip1’は、前述の通り第一ポンプ素子3を流れる真の電流値Ip1に対し、第二ポンプ電流値Ip2が重畳されたものであるから、Ip1’−Ip2(以下、この値をIp1と記し、これを第一ポンプ電流値と呼ぶ)の値に基づいて酸素濃度を決定することとなる。ただし、一般にはIp1の電流レベルと比較してIp2の電流レベルは小さいので、Ip2の重畳の影響がほぼ無視できると判断できる場合には、上記Ip1’を近似的に第一ポンプ電流値として用いても差しつかえない。
そして、図5のマイクロプロセッサ52による酸素濃度及びNOx濃度の決定手順であるが、まず、Ip1’とIp2とからIp1を求め、データ記憶部66に記憶されたIp1と酸素濃度COXとの関係(数値テーブルもしくは数式)を参照して酸素濃度COXの値を決定する。他方、データ記憶部66に記憶されたIp1、Ip2及びNOx濃度CNXの関係(例えば図9に示すような2次元の数値テーブル200)を参照してNOx濃度CNXの値を決定する。なお、この2次元の数値テーブル200は、個々のNOxセンサ毎に実験により定められたものが使用される。
上記決定されたCOXあるいはCNXの値は、D/A変換回路67及び出力回路68を経て、酸素濃度及びNOx濃度のアナログ出力信号として外部に出力される他、デジタル情報の形で表示装置69(例えば液晶ディスプレイあるいは7セグメントLED表示装置等を表示部として含む)に送られ、濃度値が数値等により視覚表示される。なお、マイクロプロセッサ52にてIp1の値に基づいてA/Fや過剰酸素濃度を算出し、これを出力するようにしてもよい。
ところで、NOx濃度の検出精度を確保するには、上記各素子3〜5の温度、特に第一処理室9内の酸素濃度を検出する酸素濃度検出素子4の温度を一定に制御する必要があり、このためには、ヒータ制御回路72から各ヒータ2,8への通電電流量を、酸素濃度検出素子4の温度が目標温度となるように制御する必要がある。そこで、本実施例では、マイクロプロセッサ52により、図6のアナログスイッチ回路79のスイッチSw1〜Sw3のオン・オフ状態を切り換えることにより酸素濃度検出素子4の温度をその内部抵抗RVSから検出し、この検出した内部抵抗RVSが一定値(つまり酸素濃度検出素子4の温度が目標温度)となるように、ヒータ制御回路72からヒータ2,8への通電量を制卸するようにしている。
以下、この場合の作動について、図14〜図16はそのフローチャートを用いて説明する。まず、図14のS1において、NOxセンサ1の活性化処理を行う。活性化処理の目的は、ヒータ2,8の通電を開始し、各素子3〜5を所定の作動温度に安定化させることにある。そして、素子温度の検出は、酸素濃度検出素子4の内部抵抗を測定し、その内部抵抗値RVSが図12に示すように一定の温度依存性を示すことを利用して行う。
その処理の詳細を図15に示している。すなわちS101において、ヒータ制御回路72に制御値Viとして初期設定値Vh0を設定する。このとき、アナログスッチ回路79のSw1〜Sw3は全てオフとする。この状態で、S102でヒータ制御回路72に対し、ヒータ制御電圧値Viの初期設定値Vh0を出力することでヒータの通電が開始される。そして、S103において通電開始から一定時間t0が経過したら、温度制御処理に入る。まず、S105で活性化判断カウンタ値Nをクリアする。
次いで、S106に進み、内部抵抗測定処理となる。その流れを図16のフローチャート(ただし、ここでは、LFにて示したS201〜S208の部分のみ)と図10の回路図を用いて説明する。さらに、図11に、その処理におけるアナログスイッチ回路79(図6)のSw1〜Sw3の作動タイミング図を、酸素濃度検出素子4の酸素基準電極14側の電圧信号VSと対応付けて示している。まず、図10においてS&H回路120は、アナログスイッチ回路79のスイッチSw1がオフとなったときに、酸素濃度検出素子4の酸素基準電極14側の出力電圧VSの直前の値をホールドするためのコンデンサ121と、ボルテージフォロワとして機能するオペアンプ122(以下、ボルテージフォロワ122という)と、ボルテージフォロワ122の出力電圧と酸素基準電極14から直接入力される出力電圧VSとの差分を増幅するオペアンプ123(以下、差動増幅器123という)とを含んでいる。
図16の処理の流れにおいては、まず、S201において、図6のアナログスイッチ回路79のSw1をオンとする。これにより、酸素濃度検出素子4の酸素基準電極14側の出力電圧信号VSが、ボルテージフォロワとしてのオペアンプ122を経て第一ポンプ素子制御回路56に出力される。このとき、コンデンサ121の端子電圧はVSのレベルに応じて変化する。そして、内部抵抗の測定タイミングが到来すると、S202で、Sw1をオフとし、代わってSw2をオンとする。すると、コンデンサ121によりSw1がオフとなる直前の出力電圧VS1がホールドされる。このホールドされた出力電圧信号VS1はボルテージフォロワ122を経て第一ポンプ素子制御回路56に供給される。これにより、第一ポンプ素子制御回路56は、内部抵抗測定のためにSw1がオフとなっている間も、ホールドされた出力電圧VS1を受けて作動を継続する形となるので、NOxセンサ1の第一処理室9内の酸素濃度が大きく変化する不具合を生じない。
他方、Sw2がオンになると、酸素濃度検出素子4に内部抵抗検出用の定電流ICが通電される。ICを通電すると、酸素濃度検出素子4の出力電圧VSの値は、その内部抵抗に応じた値だけ降下する。この値と、先にホールドされたVS1の値(すなわち、IC通電前の出力電圧)との差分ΔVSが差動増幅器123にて増幅され、A/D変換回路64を経てマイクロプロセッサ52に入力される。そして、定電流ICの通電開始から一定時間t1だけ経過後の酸素濃度検出素子4の出力電圧VSの値をVS2として、このときの差動増幅器123の出力ΔVS=VS1−VS2(内部抵抗検出信号)を、RAM55の測定値メモリエリアに格納する。そして、内部抵抗RVSは、このΔVSを前述の定電流ICの値で割った値として算出され、RAM55の測定値メモリエリアに格納する(S204)。
ここで、定電流ICの通電開始から一定時間t1だけ経過後にVSを測定しているのは次の理由による。すなわち、酸素濃度検出素子4に定電流ICを通電すると、酸素濃度検出素子4内においてその通電と逆方向に酸素が輸送され、酸素濃度検出素子4両側の酸素濃度に変化を生ずる。その結果、図11に示すように、濃淡電池起電力EmひいてはVSの値も電流ICの通電継続に伴い変化する。ここで、内部抵抗測定の精度を確保するためには、通電により不可避的に生ずるVSの変化を常にほぼ一定のものとすることが大切である。そして、内部抵抗測定用電流として一定の電流ICが使用されるわけであるから、VS測定までの通電時間が常にt1となるように制御すれば、それによる酸素輸送量すなわち酸素濃度検出素子4両側の酸素濃度変化もほぼ一定となり、濃淡電池起電力EmひいてはVSの変化をほぼ一定とすることができる。
次に、定電流ICの通電により、酸素濃度検出素子4両側の酸素濃度変化が生ずることにより、別の問題として、NOxセンサ1がNOx濃度の測定に復帰した際に、その酸素濃度の変化が測定精度に影響を及ぼす場合がある。また、酸素濃度検出素子4の内部抵抗値が高い場合には、酸素濃度検出素子4内の酸素イオンが移動しにくくなって、電流通電に伴い分極を生ずることもある。
この問題を解決するために、本実施例では次のような方式を採用している。すなわち、図16のS205〜S208において、VSの検出後さらに一定時間t2が経過後にSw2をオフとして定電流ICの通電が終了する一方、代わってSw3をオンとすることにより、極性が逆の定電流電源78(修正電流通電手段)によりICとは逆方向で大きさが同じ修正電流IAを、ICの合計通電時間t1+t2にほぼ等しい時間t3だけ通電し、その後Sw3をオフとする(S208)。これにより、酸素濃度検出素子4において上記とは逆向きにほぼ同量の酸素が輸送され、IC通電により生じた酸素濃度変化が解消されて、内部抵抗測定前の状態に近づけることができる。なお、酸素濃度検出素子4の内部抵抗測定用の電流ICの通電時間を十分短くできる場合など、酸素濃度検出素子4両側の酸素濃度変化に及ぼす影響が小さいと判断できる場合には、図6において、修正電流IAを発生するための定電流電源78を省略することも可能である(なお、これに対応してアナログスイッチ回路79も、スイッチチャンネル数の少ないものを用いればよい)。
さて、図15に戻り、前述の通りRVSの値は酸素濃度検出素子4の素子温度Tと一定の関係を有しており、該関係を補正情報としてデータ記憶部66(図5)に記憶しておけば、RVSの値から素子温度Tを決定することができる。また、RVSの値そのものを温度情報として使用することもできる。本実施例では、各種内部抵抗RVSの値と素子温度Tの値とを互いに対応付けて示すマップがデータ記憶部66に記憶されており、このマップを参照して補間法によりRVSに対応する温度Tを求めるようにしている(S107)。なお、算出された内部抵抗RVSの値は、RAM55(図5)に格納され、新たな内部抵抗RVSの検出・算出が行われた場合は上書き更新される。
この決定された素子温度Tが、上限値Tmax、下限値Tminの設定温度範囲内に入っているか否かがS108、S110で判断される。素子温度Tが上限値Tmaxよりも大きくなっている場合は、ヒータ制御電圧値Viが一定の値ΔViだけ減少してヒータ2,8の発熱が抑制され、逆に下限値Tminを下回っている場合にはヒータ制御電圧値ViがΔViだけ増加してヒータ2,8の発熱が促進される(S109,S111)。また、Tmin≦T≦TmaxであればVi現状の値が維持され、活性化判断カウンタ値Nをインクリメントする(S112,S113)。
そして、活性化判断カウンタ値Nの値が、例えば設定値NSに到達するまで、上記S106〜S113の処理を一定の時間間隔taで繰返し(S114,S115)、NがNSに到達すれば、素子温度Tはほぼ上記設定温度範囲内に維持されたものとみなし、図6においてアナログスイッチ回路79のSw2をオフ、Sw1をオンとし所定時間twだけウォームアップした後、活性化処理が終了する(S116,S117)。
図14に戻り、活性化処理S1が終了するとS2に進み、ポンプ電流Ip1及びIp2の値を検出し、酸素濃度COXとNOx濃度CNXとを決定する。しかしながら、ポンプ電流Ip1及びIp2の値は素子温度Tによって変動するから、以下のようにして補正を行う(S3)。まず、RAM55(図5)に記憶されている酸素濃度検出素子4の内部抵抗値RVSの値を読み込んで、対応する温度Tを前述のマップ301を参照して決定する。そして、ポンプ電流Ip1及びIp2の値に対する各温度毎のポンプ電流補正量ΔIp1及びΔIp2は予め実験的に決定しておくことが可能であるから、各ΔIp1及びΔIp2の値と素子温度Tの値とを互いに対応付けて示すマップをこれに基づいて作成し、これをデータ記憶部66に記憶しておけば、各ポンプ電流補正量ΔIpはこのマップを参照して補間法によりに決定することができる。そして、ポンプ電流補正量ΔIp1及びΔIp2を実測されたIp1及びIp2に加算してこれを補正するとともに、その補正後のポンプ電流値Ip1及びIp2に対応する酸素濃度COXとNOx濃度CNXとを決定する(S4)。これら値はS5において出力される。以降はS2に戻って以降の処理が繰り返される。
次に、素子温度Tは、活性化処理の際に設定された後も、前述したものと同様の内部抵抗測定処理を行うことで、上記炭化水素濃度の検出処理と並行してその制御が継続される。その処理の流れを図16に示している。なお、この処理ルーチンは、図15のルーチンに対する割り込み処理ルーチンとして、クロックパルス(図示しないクロック回路による)に基づく時間計測によりCPU53(図5)が周期的に実行するものである。該実行の周期であるが、例えば0.3〜1msの範囲で設定することができる。実行周期が1msを超えると、温度測定ひいてはセンサによる濃度検出精度が十分確保できなくなる場合がある。一方、0.3ms未満になると、CPU53の処理時間に占める温度測定処理の比率が大きくなり過ぎ、濃度検出精度が十分確保できなくなる場合がある。ただし、CPU53としてクロック周波数の高いものなど、高速処理の可能なものを採用することで、実行周期を上記値以下とできる可能性もある。
まず、内部抵抗RVSの測定に係るS201〜S208の処理については、センサ活性化処理のところで既に説明済みであるから省略する。また、RVSから素子温度Tを決定し、それに基づいてヒータ制御電圧値Viを決定するS210〜S215に至る処理は、図15のセンサ活性化処理のS107〜S112に至る処理とほぼ同一であるので、これも説明を省略する。その後、S216で時間t4だけ待機した後、S217でSw1をオンとし、内部抵抗測定処理は終了する。以降は、再び図14の濃度測定処理ルーチンの実行となる。素子温度Tの測定値は該内部抵抗測定処理が行われる毎に更新され、常にその更新された素子温度Tの情報が、図14の濃度測定処理ルーチンにおいても使用される。また、ヒータ温度も、素子温度Tの測定値に基づいて定期的に補正されることとなる。
これにより、ヒータ2,8により酸素濃度検出素子4の温度が設定値に精度よく保持され、被検出ガス中の炭化物濃度の測定精度が向上する。また、被検出ガスが自動車エンジンの排気ガスである場合、図13(a)に示すように、エンジンが急加減速を行った場合に排気ガス温度が急激に変化し、これに対応して酸素濃度検出素子4の温度Tが急激に変化した場合でも、図13(b)に示すように、酸素ポンプ電流Ipの温度変化分を補正することにより、素子温度Tの復帰を待たなくても、比較的精度の高い炭化物濃度の測定を続行することが可能となる。
なお、内部抵抗測定処理は、濃度測定処理ルーチンに対する割り込みルーチンとするのではなく、該濃度測定処理ルーチンのサブルーチンとして実行させることもできる。この場合のフローチャートの例を図17に示す。S1〜S5の濃度の決定・出力処理は図14と全く同じであるが、異なる点はS301〜S303のステップを追加することにより、1回判定が終了する毎に測定カウンタNmをカウントアップするようになっている点である。そして、S302でNmが一定のカウント数Ngに到達した場合に、S304として図16に示したものと全く同一の内部抵抗測定処理が実行される。なお、内部抵抗測定処理実行後は、S301へ戻って測定カウンタNmが1に戻り、以下同様の処理が繰り返される。この方法においては、内部抵抗測定処理が定期的に行われる点では変わりはないが、必ずしも一定の時間間隔ではなく、濃度測定処理が一定回数終了する毎に実行される点に特徴がある。こうすれば、NOx濃度あるいは酸素濃度の測定処理が内部抵抗測定処理のために途中で中断されることがなくなり、エラー等の発生頻度も少なくなる。
さらに、定電流発生回路を図6に示す77と78との2台を用いる代わりに、図示しない極性切替え回路を用いて1台のものを随時極性を切り替えて使用するようにしてもよい。また、マイクロプロセッサ52側から指令された電流値及び極性により、その内容に応じた電流を発生できる回路(例えば電圧/電流変換回路を含むもの等)を用いるようにしてもよい。
また、図5の制御回路ユニット31ではマイクロプロセッサ52を搭載した形となっていたが、図22に示すようにこれを省略する構成とすることもできる。この場合、ヒータ制御回路72への入力端子72t、A/D変換回路64,65からの出力端子64t,65t、各制御指令信号の入力端子56t,60t,57t等を、コネクタ(あるいは基板32に設けられたカードエッジ)91にまとめ、ここに外部(例えば自動車側に搭載されたもの)のマイクロプロセッサを着脱可能に装着して使用する形態となっている。他方、図21に示す例では、マイクロプロセッサ52を搭載しているが、これはヒータ制御回路72への制御指令手段としてのみ機能し、A/D変換回路64,65からの出力端子64t,65t、各制御指令信号の入力端子56t,60t,57t等はコネクタ91にまとめられ、ここに外部の別のマイクロプロセッサが接続されて使用されるようになっている。
次に、Ip1から酸素濃度COXを決定し、またIp1とIp2とからNOx濃度CNXとを決定する別の方法について説明する。まず、図1のNOxセンサ1につき予め標準品を定め、この標準品について酸素を含まない試験用ガスを被測定ガスとしたときの、NOx濃度に対する第二ポンプ電流Ip2の特性(第一ポンプ電流Ip1をほぼゼロとした場合のNOx濃度出力特性に相当する)を測定し、これを標準電流パラメータ特性としてマイクロプロセッサ52のROM54(図18)に記憶しておく。そして、マイクロプロセッサ52は、第一ポンプ電流Ip1と第二ポンプ電流Ip2とを検出し、これら検出値から標準電流パラメータ特性に基づいて被測定ガス中のNOx濃度を求めるのである。なお、酸素を含まない試験用ガスを被測定ガスとしたときの、NOx濃度に対する第二ポンプ電流Ip2の変化率はほぼ一定であり、以下、これをゲインと称する。
ところで、本実施例では、被測定ガス中のNOx成分が過剰に分解してしまうことのないよう、第一処理室9内の酸素濃度を前述の分圧範囲(10−10〜10−6atm)内で制御しているため、第二処理室10には、被測定ガス中のNOxだけでなく第一処理室9において残留している酸素も不可避的に流入する。従って、第二ポンプ電流Ip2は、被測定ガス中のNOx濃度に対応して変化するものの、被測定ガス中の酸素濃度の影響も受ける。つまり、被測定ガス中のNOx成分がゼロの場合であっても、被測定ガス中に残留した酸素濃度によって第二ポンプ電流Ip2は変化する。このため、上記標準品としてのNOxセンサ1について、NOx成分がゼロの試験用ガスを被測定ガスとしたときの、酸素濃度に対する第二ポンプ電流(以下、オフセット電流という)の特性(以下・オフセット特性という)を予め測定しておき(図19参照)、これを標準オフセット特性(図19参照)としてマイクロプロセッサ52のROM54(図18)に記憶しておく。そして、検出された第二ポンプ電流Ip2から、そのときの酸素濃度(第一ポンプ電流Ip1から測定される)に対応したオフセット電流Ip2OFFを差し引くことにより、換言すれば第二ポンプ電流Ip2と第一ポンプ電流Ip1とに基づいて新たな電流パラメータIpxを定め、これと上記標準電流パラメータ特性に基づいてNOx濃度を求めるようにするのである。
ポンプ電流制御の際の第一ポンプ電流Ip1は被測定ガス中の酸素濃度に依存して変化するため、上記標準品としてのNOxセンサ1について、NOx成分がゼロの試験用ガスを被測定ガスとしたときの、酸素濃度に対する第一ポンプ電流の特性(Ip1特性という)を予め測定しておき、これを標準Ip1特性(図19参照)としてマイクロプロセッサ52のROM54(図18)に記憶しておく。そして、検出された第一ポンプ電流Ip1から標準Ip1特性に基づいて酸素濃度を検出する。この酸素濃度から上述の通りオフセット電流Ip2OFFを求めることができる。
なお、第二ポンプ電流Ip2はNOxセンサ1の温度(以下、素子温度という)の変化に伴って変化するため、検出された第二ポンプ電流Ip2は素子温度に応じて前記した方式により補正するのが好ましい。ここで、被測定ガスの温度が急変したような場合には、温度制御を被測定ガスの温度変化に追従させることができず、素子温度が被測定ガスの温度変化によって変化することがある。この場合、その素子温度に伴って第二ポンプ電流Ip2が変化する。このため、上記標準品としてのNOxセンサ1につきその温度に対する第二ポンプ電流Ip2の特性(以下、温度特性という)を予め測定し、これを標準温度特性(図19参照)としてマイクロプロセッサ52のROM54(図18)に記憶しておく。そして、前記したものと同様の方法により内部抵抗RVSから求めた素子温度から標準温度特性に基づいて補正量を求め、検出された第二ポンプ電流Ip2につき温度補正を行う。
また、NOx濃度を検出するに当たり、ゲインは被測定ガス中の酸素濃度によって変化するため、標準電流パラメータ特性は酸素濃度に応じて修正するのが好ましい。本実施例では、上記標準品としてのNOxセンサについて、ある酸素濃度(例えばゼロ)におけるゲインと、別の酸素濃度におけるゲインとを予め測定することにより、酸素濃度に対するゲインの1次関数的な特性(以下、ゲイン特性という)を演算し、これを標準ゲイン特性(図19参照)として、マイクロプロセッサ52のROM54(図18)に記憶している。そして、第一ポンプ電流Ip1から検出された酸素濃度から、標準ゲイン特性に基づいてゲインの補正量を求め、検出された第二ポンプ電流Ip2につきゲイン補正を行う。なお、上記ROM54が標準特性記憶手段に相当する。
上述した各特性、すなわちIp1特性、オフセット特性、温度特性、ゲイン特性、Ip2特性は、NOxセンサ1ごとに微妙に異なる。このため、どのNOxセンサに対しても絶えず上記各標準特性を用いてNOx濃度を検出していたのでは、十分な検出精度が得られない。そこで、本実施例では、NOxセンサごとに上記各特性を予め測定し、その測定した各特性が上記各標準特性と一致するような各補正データ(Ip1特性補正データ、オフセット特性補正データ、温度特性補正データ、ゲイン特性補正データ)を作成し、それをデータ記憶部66に格納してある。
この場合のNOx濃度を検出する手順につき、図20のフローチャートに従い説明する。このNOx濃度検出処理では、まずS400にて図15と全く同様の処理によりセンサ活性化処理を実行する。活性化が終了するとS4l0に移行し、酸素濃度検出素子4の内部抵抗RVSを読み込む。また、S420では、第二ポンプ電流Ip2と第一ポンプ電流Ip1とを検出する。そして、S430では、S410において読み込んだ内部抵抗RVSに基づき、第二ポンプ電流Ip2に対する温度補正量を算出し、温度補正を行う。
すなわち、被測定ガスの温度が急変しても、第二ポンプ電流Ip2からNOx濃度を正確に検出できるようにするために、酸素濃度検出素子4の内部抵抗RVSから酸素濃度検出素子4の温度つまり素子温度を求め、この素子温度に対応する温度補正量を、ROM54(図18)に記憶された標準温度特性に基づいて求める。そして、このようにして求めた温度補正量につき、データ記憶部66から読み出した温度特性補正データで補正して補正済温度補正量とし、これを用いて温度補正を行う。なお、NOxセンサ1が標準品の場合、補正済温度補正量と標準温度特性によって求めた温度補正量とが一致する。
こうして温度補正が行われるとS440に進み、温度補正後の第二ポンプ電流Ip2からオフセット電流値を差し引いて、電流パラメータIpxを算出する。すなわち、データ記憶部66に格納されたIp1特性補正データを読み出し、第一ポンプ電流Ip1をこのIp1特性補正データで補正して補正済第一ポンプ電流Ip1とすることにより、その補正第一ポンプ電流Ip1から標準Ip1特性をそのまま用いて被測定ガス中の酸素濃度を求める。そして、この酸素濃度から標準オフセット特性をそのまま用いてオフセット電流値Ip2OFFを求め、このオフセット電流値Ip2OFFを、データ記憶部66から読み出したオフセット特性補正データで補正することにより補正済オフセット電流値Ip2OFFとする。この補正済オフセット電流値Ip2OFFを第二ポンブ電流Ip2から減じた値を、電流パラメータIpxとして用いる。
続くS450では電流パラメータIpxに対してゲイン補正を行う。すなわち、S440において第一ポンプ電流Ip1により求めた酸素濃度から、標準ゲイン特性をそのまま用いてゲインを求め、このゲインをデータ記憶部66から読み出したゲイン補正データで補正して補正済ゲインとし、これからゲイン補正係数(たとえば、補正済ゲイン/標準電流パラメータ特性におけるゲイン)を求め、この補正係数を用いて電流パラメータIpxのゲイン補正を行う。なお、NOxセンサ1が標準品の場合、補正済ゲインと標準ゲイン特性から求めたゲインとが一致する。
そして、続くS460では、このゲイン補正後の電流パラメータIpxから、標準電流パラメータ特性を用いてNOx濃度を求め、これを被測定ガス中のNOx濃度として出力する。
以上のような各補正データは、各NOxセンサに固有のものであるため、NOxセンサごとにデータ記憶部66が添付される。そして、図8のコネクタ90を外して別のNOxセンサ1に交換する場合には、そのNOxセンサ1に添付されたデータ記憶部66に差し替えた上で、窒素酸化物濃度を検出する。
なお、本発明の適用対象となるガスセンサはNOxセンサに限られるものではなく、例えば炭化水素(HC)を検出するHCセンサにも適用可能である。この場合、検出対象となる複数のガス成分は、例えば2以上のHC成分とすることもできるし、酸素と、1又は2以上のHC成分とすることもできる。また。HCセンサ以外では、COセンサやアンモニアセンサ等にも適用可能である。