JP4403417B2 - 基準原盤、芯出し調整方法 - Google Patents
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Description
また、相変化記録方式や色素変化記録方式でユーザーデータが記録再生可能な記録可能型の光ディスク(いわゆるリライタブルディスクやライトワンスディスク)については、記録トラックを形作るグルーブ(溝)が形成されているが、このような光ディスクを製造するためには、その製造工程において、まずグルーブに相当する凹凸パターンが形成された光ディスク原盤が製造される。そして光ディスク原盤からスタンパが形成され、スタンパを用いて光ディスクが大量生産される。
原盤製造装置は、レジスト層が形成された原盤基板上を回転させると共に、対物レンズで集光したレーザ光を照射する。このとき、レーザ光は、その焦点深度内にレジスト原盤表面上に追従するようにフォーカス制御される。この動作により、所定のトラックピッチにて、原盤上のレジスト材料を感光させることで、ピット列あるいはグルーブを記録する。
一般的にはこの後に現像(エッチング)工程を行い、レジスト材料の段差によりピット列あるいはグルーブを形成する。
理想的には、スライダの位置をx=0、つまりスライダの移送の原点位置としたときに、レーザ光の照射位置が回転機構(スピンドルモータと呼ぶ)の回転中心位置に一致するのが望ましい。これはスライダによるスライド設定位置が、原盤上の半径位置と一致させる状態となるためである。
実際には誤差が生ずることになるのだが、そのときのx方向の誤差は、スライダの原点校正により補正できる。
まずピックアップヘッドを原盤製造装置(カッティングマシン)に装着する。
また表面にレジスト層を形成した原盤(通常のカッティングに使う原盤と同様のもの)を原盤製造装置にセットする。
そして所定の回転速度、例えば600rpmで原盤を回転させる。またレーザパワー設定として通常のカッティングに用いる記録レーザーパワー条件を適用する。
本来、理想的には、スライダが原点位置にあるときは、レーザ照射位置はスピンドル回転中心(つまり原盤の回転中心)に一致しているはずであるため、このように、スライダが原点位置とされた状態で原盤にレーザ照射を行っても、レーザによる露光部分は点になるだけであるはずだが、芯出し前のずれがあることにより、原盤上にはリング状のパターン(ピット列又はグルーブのパターン)が露光形成されることになる。
そして上記のようにスライダ半径位置x=0.000mm、つまりスライダ原点位置でのレーザ照射により、回転されている原盤には、図19に示す小円C1が形成されることになる。
次にスピンドル回転を停止させて、スピンドル角度位置設定θ=0.0degにて固定し、所定の記録レーザパワーでレーザ照射を行いながら、スライダ半径位置をx=−0.020mmからx=0.200mmまで移動させる。すると、原盤には例えば図20(a)における直線L1が露光記録される。
さらに、スピンドル回転を停止させたまま、スピンドル角度位置設定θ=15.0degにて固定し、所定の記録レーザパワーでレーザ照射を行いながら、スライダ半径位置をx=−0.020mmからx=0.200mmまで移動させる。すると、原盤には例えば図20(a)における直線L2が露光記録される。
図19は、原盤上における相対的なレーザ照射位置とレーザ照射位置の軌跡として描かれたリング状の小円C1、大円C2をxy平面状にあらわしたものである。このxy平面では、スライド進行方向をx軸、xに垂直な方向をy軸、スライドの半径設定値をプラスに設定したときのレーザ光照射位置をx軸上プラス方向と定義する。このxy平面の各記号は以下のとおりである。
O:スライダ原点位置でのレーザ光照射位置(=小円C1描画時のスライダ設定位置)
P:スピンドル回転中心
H:スピンドル回転中心Pからx軸への垂線の足(回転中心Pのx座標値)
|a|=OH:x軸方向の芯ずれ
|b|=PH:x軸に垂直な方向(y軸方向)の芯ずれ
r0=PO:小円C1の半径
r1:大円C2の半径
x1:大円C2の描画時のスライダ設定位置
まず2つのリングとして小円C1、大円C2を記録した原盤をレーザ顕微鏡にて観察して、2個のリングの半径を測定する。即ち小円C1の半径r0と、大円C2の半径r1を実測する。
この小円C1の半径r0、大円C2の半径r1、大円描画時のスライダ設定値x1の関係は、図19のように表され、次の関係式が成り立つ。
r02=a2+b2
r12=(x1−a)2+b2
a={(r12−r02)/2x1}−(x1/2)
|b|=√(r02−a2)
ここで、y軸方向での芯ずれの方向、即ち上記の「b」の正負は、直線L1,L2で判別できる。
即ち小円C1、大円C2、直線L1,L2の関係が図20(a)のようであれば、b>0である。一方、小円C1、大円C2、直線L1,L2の関係が図20(b)のようであれば、b<0である。
まず上記「a」を補正するようにスライドの原点位置を補正する。例えば、スライド原点位置が120.500[mm]であったとしたら、これを120.500−a [mm]に置き換える。
また上記「b」を補正するようにピックアップヘッドの取付位置を補正する。例えばb=−150μmであったとしたら、ピックアップヘッドの位置をy軸+方向に150μm動かす。
このように調整した後、再び上記のように動作(小円C1、大円C2、直線L1,L2の描画と観測・a、b算出)を行ってずれ量を確認し、所定の許容量に収まれば芯出しOKとする。a値、b値がいまだ許容範囲に収まっていなければ、さらに同様の動作を繰り返すことになる。
ピックテストでy方向移動量を計測しながら行う調整にて正確に補正を行うには相当の熟練が必要である。またピックアップヘッドを固定するネジのネジ穴のx方向の遊び分だけx方向にずれるリスクがあり、0点カットの結果のみをもとにしてx方向とy方向を同時に追い込むことは非常に困難であった。
そこで本発明は、より短時間で精度の良い芯出し調整を実現できるようにすることを目的とする。
また上記基準リングの半径は20μm〜65μmの範囲内とされている。
また上記基準リングは、同心円状の複数のリングパターンとして記録されている。
また、さらに上記基準リングの外周側となる特定の半径位置から、同心円状の複数トラックもしくはらせん状の連続トラックとして露光されたリング状領域が、1又は複数単位形成されている。
また、上記移送機構の移送方向がx方向、上記x方向と水平面上で直交する方向がy方向とし、上記芯出し調整は、上記x方向と上記y方向の調整を行う場合、上記リング状領域は、上記y方向の調整可能範囲長に相当する半径範囲内に形成されている。
また上記リング状領域が複数形成される場合、各リング状領域は互いに異なるトラックピッチのトラックにより形成されている。
また上記リング状領域の外周側もしくは内周側の一方に隣接して、上記リング状領域のトラックピッチとは異なるトラックピッチの2トラック以上の識別用リングパターンが露光形成されている。
また、基準原盤は、上記無機レジスト層にレーザ光による露光が行われた後、エッチング処理が行われたものであるとする。
また、基準原盤は、上記無機レジスト層にレーザ光による露光が行われた後、エッチング処理が行われ、さらに表面に反射膜が成膜されたものとする。
また上記移送機構の移送方向がx方向、上記x方向と水平面上で直交する方向がy方向とし、上記芯出し調整は、上記x方向における上記移送機構の原点位置を調整するとともに、上記レーザ光を出力するピックアップヘッドの取付位置としてy方向の位置の調整を行うことで、上記レーザ光の照射位置が上記基準リング内となるようにする。
レーザ光の戻り光の波形を観測することで、レーザ光照射位置を直接確認できる。具体的には基準リングとレーザ光照射位置の関係が確認できる。
これはスライダやピックアップヘッドの調整によって、レーザ光照射位置が基準リング内となったことを直接確認できることを意味する。
即ち、レーザ光照射位置が戻り光波形から確実にフィードバックされ、レーザ光照射位置が基準リング内にあれば、芯出し調整精度は、必ず基準リングの半径r0未満となる。
また計算によりずれ量を見積もることができ、従来必要であったずれ量確認のための「0点カット」も不要である。
そしてレーザ光照射位置が半径r0の基準リングの内側となるように調整するだけで、芯出し調整精度を少なくともr0未満に抑えることができる。
また幾何学的な計算により、レーザ光照射位置と原盤回転中心位置とのずれ量を見積もることが出来る。この見積もられたずれ量は、いわゆる「0点カット」から得られるずれ量の測定値に十分近い値を示す。つまり「0点カット」の手間を省いてずれ量を正確に見積もることが可能である。
これらのことから、本発明の基準原盤を用い、本発明の芯出し調整方法を実行することで、芯出しに要する時間を劇的に短縮することができる。
[1.ディスク製造工程]
[2.原盤製造装置の構成]
[3.基準原盤の作成]
[4.基準原盤を用いた芯出し調整]
まず図17を参照して、光ディスクの製造工程を述べる。
図17(a)はディスク原盤を構成する原盤形成基板100を示している。先ず、この原盤形成基板100の上に、スパッタリング法により無機系のレジスト材料からなるレジスト層102を均一に成膜する(レジスト層形成工程、図17(b))。本例では、ディスク原盤を製造するマスタリング工程として、無機系のレジスト材料を用いたPTMマスタリングを行うが、この場合、レジスト層102に提供される材料としては、遷移金属の不完全酸化物が用いられ、具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。
なお、レジスト層102の露光感度の改善のために基板100とレジスト層102との間に所定の中間層101を形成しても良く、図17(b)ではその状態を示している。レジスト層102の膜厚は任意に設定可能であるが、10nm〜80nmの範囲内が好ましい。
続いて、上記のように生成したディスク原盤103の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図17(e))、これをディスク原盤103から剥離させた後に所定の加工を施し、ディスク原盤103の凹凸パターンが転写された成型用のスタンパ104を得る(図17(f))。
そのスタンパ104を用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスク基板105を成形する(図17(g))。
その後、スタンパ104を剥離し(図17(h))、その樹脂製ディスク基板の凹凸面にAg合金などの反射膜106(図17(i))と、膜厚0.1mm程度の保護膜107とを成膜することにより光ディスクを得る(図17(j))。即ちピット列が形成された再生専用ディスクや、グルーブが形成された記録可能型のディスクが製造される。
例えば、遷移金属の酸化物として化学式MoO3を例に挙げて説明する。化学式MoO3の酸化状態を組成状態を組成割合Mo1-xOxに換算すると、x=0.75の場合が完全酸化物であるのに対して、0<x<0.75で表される場合に化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。
また、遷移金属では1つの元素が価数の異なる酸化物を形成可能なものがあるが、この場合には、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より実際の酸素含有量が不足している場合とする。例えばMoは、先に述べた3価の酸化物(MoO3)が最も安定であるが、その他に1価の酸化物(MoO)も存在する。この場合には組成割合Mo1-xOxに換算すると、0<x<0.5の範囲内であるとき化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。なお、遷移金属酸化物の価数は、市販の分析装置で分析可能である。
このような遷移金属の不完全酸化物は、紫外線又は可視光に対して吸収を示し、紫外線又は可視光を照射されることでその化学的性質が変化する。この結果、無機レジストでありながら現像工程において露光部と未露光部とでエッチング速度に差が生じる、いわゆる選択比が得られる。また、遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト材料は、膜材料の微粒子サイズが小さいために未露光部と露光部との境界部のパターンが明瞭なものとなり、分解能を高めることができる。
上述のようにレジスト材料を構成する具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。この中でも、Mo、W、Cr、Fe、Nbを用いることが好ましく、紫外線又は可視光により大きな化学的変化を得られるといった見地から特にMo、Wを用いることが好ましい。
例えば図18(b)には1つのピット形状を示しているが、AOMで変調されたレーザ発光強度は図18(c)のようになる。原盤上のフォトレジストの露光はいわゆる光記録であるため、図18のようなレーザにより露光された部分が、そのままピットとなる。
この場合、レーザ照射による熱の蓄積を抑圧してピット幅の均一化を計るために、通常図18(a)に示すようなパルス光で露光する。即ちこの場合には、一般にクロックに同期したNRZ変調信号が、そのHレベルの長さに応じてクロック周期より短い時間幅のパルス信号へ変換され、変換されたパルス変調信号に同期して直接変調可能な半導体レーザーへ電力供給される。これによって図18(a)のような与熱用のパルス発光Ppと、ピット長に応じた加熱用のパルス発光P1〜Pnとしてのレーザ出力が行われる。
PTM方式でマスタリングを行う本例の原盤製造装置の構成例を図1に示す。この原盤製造装置は、上記図17(c)(d)のマスタリング工程において、無機レジストを塗布したディスク原盤103に対してレーザ照射による熱記録動作により、ピットパターンやグルーブパターンの露光を行う。
また、この原盤製造装置は、後述する基準原盤103Rの作成も行う。基準原盤103Rは、芯出しに用いる原盤である。芯出しとは、この原盤製造装置において、スライダ45が原点位置にあるときに、レーザ光の照射位置がスピンドル回転中心に一致するように、スライダの原点位置調整(x方向調整)や、光学系(ピックアップヘッド10)の位置調整(y方向調整)を行うことである。
図17で説明したマスタリング工程に先立って、基準原盤103Rを用いて原盤製造装置で芯出し調整が行われることで、その後原盤製造装置により適切な精度のディスク原盤103が製造できることになる。
なお、図1ではマスタリング工程においてピット列としての凹凸パターンを形成する原盤製造装置の構成例を説明する。
ピックアップヘッド10内において、半導体レーザとしてのレーザ光源11は、例えば波長405nmのレーザーを出力するものとされる。このレーザ光源11には、例えばRLL(1−7)pp等のNRZ変調信号が図18(a)のようにパルス変調信号に変換されたレーザ駆動信号DLが供給され、このレーザ駆動信号DLに則って発光する。
レーザ光源11から出射したレーザ光は、コリメータレンズ12で平行光とされた後、アナモルフィックプリズム13でスポット形状が例えば円形に変形され、偏光ビームスプリッタ14に導かれる。
そして偏光ビームスプリッタ14を透過した偏光成分は、λ/4波長板14,ビームエキスパンダ16を介して対物レンズ26に導かれ、この対物レンズ26で集光されてディスク原盤103(無機レジスト層102が形成された原盤形成基板100)上に照射される。
なお、基準原盤103Rを作成する際や、芯出し調整を行う際には、対物レンズ26で集光されたレーザ光は基準原盤103R上に照射されることになる。
即ち、対物レンズ26で集光されたレーザ光スポットによる熱記録で、ピット列としての露光パターンがディスク原盤103上に形成されていく。
なお、図17(d)で述べたように、露光されたディスク原盤103をNMD3等のアルカリ現像液で現像することにより、露光した部分のみが溶出し、所望のピット形状としての凹凸パターンが形成されるものである。
フォトディテクタ20の受光面は、例えば4分割受光面を備え、非点収差によるフォーカスエラー信号を得ることができるようにされている。
フォトディテクタ20の各受光面では、受光光量に応じた電流信号を出力して反射光演算回路21に供給する。
反射光演算回路21は、4分割の各受光面からの電流信号を電圧信号に変換すると共に、非点収差法としての演算処理を行ってフォーカスエラー信号FEを生成し、そのフォーカスエラー信号FEをフォーカス制御回路22に供給する。
フォーカス制御回路22は、フォーカスエラー信号FEに基づいて、対物レンズ26をフォーカス方向に移動可能に保持しているアクチュエータ29のサーボ駆動信号FSを生成する。そしてアクチュエータ29がサーボ駆動信号FSに基づいて、対物レンズ26を原盤103(又は基準原盤103R)に対して接離する方向に駆動することで、フォーカスサーボが実行される。
記録データ生成部43は、ディスク原盤103にピット露光パターンとして記録するデータDTを出力する。例えば主データとして映像信号や音声信号、さらには物理情報、管理情報等のデータを出力する。
データDTは、レーザ駆動パスル発生部42に供給される。レーザ駆動パスル発生部42は、データDTに基づいて、実際にレーザ光源11をパルス発光駆動するためのレーザ駆動パルスを生成する。即ち図18(a)に示したように、形成するピット長に応じて、予熱用パルスPpとパルスP1〜Pnとしてのタイミング及び光強度でレーザ発光が行われるようにするためのパルス波形を生成する。
このレーザ駆動パルスはレーザドライバ41に供給される。レーザドライバ41は、レーザ駆動パスルに基づいてレーザ光源11としての半導体レーザに対して駆動電流を印加する。これによって、レーザ駆動パルスに応じた発光強度でのレーザのパルス発光が行われることになる。
またモニタディテクタ17から得られた光強度モニタ信号SMは、レーザドライバ41に供給される。レーザドライバ41は、光強度モニタ信号SMを基準値と比較することでレーザ発光強度を所定レベルに保つ制御を行う。
なお、レーザドライバ41は、例えば0.01mW間隔で、レーザーパワーを可変できるものとされている。
ディスク原盤103にマスタリング記録を行う場合や、基準原盤103Rを作成する際には、コントローラ40はレーザドライバ41に対して記録パワー(例えば9〜10mW程度)のレーザ出力を実行させる。また基準原盤103Rを用いて芯出しを行う際には、コントローラ40はレーザドライバ41に対して再生パワー(例えば0.5mW程度)のレーザ出力を実行させる。
スライダ45は、スライドドライバ48によって駆動され、ディスク原盤103が積載された、スピンドル機構を含む基台全体を移動させる。即ち、スピンドルモータ44で回転されている状態のディスク原盤103は、スライダ45で半径方向に移動されながら上記光学系によって露光されていくことで、露光されるピット列によるトラックがスパイラル状に形成されていくことになる。
スライダ45による移動位置、即ちディスク原盤103の露光位置(ディスク半径位置:スライダ半径位置)はセンサ46によって検出される。センサ46による位置検出情報SSはコントローラ40に供給される。
メモリ49は、コントローラ40において実行されるプログラムコードを格納したり、実行中の作業データを一時保管するために使用される。この図の場合、メモリ49は、例えばプログラムを格納するROM(Read Only Memory)、演算ワーク領域や各種一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)、EEP−ROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリを含むものとして示している。
原盤製造装置では、基台部60に対してピックアップヘッド10が取り付けられる。基台部60に取り付けられたピックアップヘッド10の下方には、スピンドルテーブル61に積載されたディスク原盤103(又は基準原盤103R)が位置する。
このスピンドルテーブル61がスピンドルモータ44によって回転されることでディスク原盤103(又は基準原盤103R)が回転される。
スピンドルテーブル61及びスピンドルモータ44は、スライダ45に搭載された状態となっている。このスライダ45がスライド軸62に沿って原盤の半径方向に移動されることで、スピンドルモータ44及び原盤配置部61が移送され、ピックアップヘッド10とディスク原盤103(基準原盤103R)の相対位置が半径方向に移動される。
このスライダ45の移動方向をx方向とする。
芯出しの際のx方向の調整は、スライダ45の移動の原点位置を調整するものとなる。換言すれば、スライダ45が原点位置にあるときに、ピックアップヘッド10からのレーザ光の照射位置としてのx方向の位置が、スピンドルモータ44の回転中心に一致するように調整する。
基台部60とピックアップヘッド10を図3,図4に示している。
図3に示すように、ピックアップヘッド10の筐体は、上部筐体10a、下部筐体10b及び取付部10cを有して成る。図1の対物レンズ26やアクチュエータ29は下部筐体10b内に配置されている。
取付部10cには、その4隅に取付ネジ52の挿通孔51が形成されている。この挿通孔51は、y方向に長孔とされる。例えばy方向に1mmの範囲でピックアップヘッド10の基台部60に折り付ける位置を可変調整できるようにする長孔である。
また下部筐体10bの側面にはネジ孔53が形成されている。
また基台部60の下面側には板状部63が形成され、この板状部63にはプッシュネジ66に対するネジ孔64と、プルネジ67に対する挿通孔65が形成されている。
上記のように取付部10cの挿通孔51は、y方向の径が長い長孔とされていることで、ピックアップヘッド10の取付位置は、y方向に調整可能である。
y方向の微調整はプッシュネジ66とプルネジ67を用いて行うことができる。
図4(b)はプッシュネジ66とプルネジ67の状態を示している。プッシュネジ66は、ネジ孔64に噛合した状態で、その先端がピックアップヘッド10の下部筐体10bの側面に当接するものとされる。プルネジ67は、挿通孔51を挿通して下部筐体10bに設けられているネジ孔53に噛合する。
従って、プッシュネジ66によってピックアップヘッド10をy方向に押し、プルネジ67によってy方向に引く動作が行われるものとなり、プッシュネジ66とプッシュネジ66の調整によって、ピックアップヘッド10のy方向位置を微調整できる。
後述する芯出しの際のy方向の調整は、プッシュネジ66とプルネジ67によって、ピックアップヘッド10からのレーザ光の照射位置としてのy方向の位置が、スピンドルモータ44の回転中心に一致するように調整するものとなる。
プッシュネジ66とプルネジ67で調整した状態で、取付ネジ52をしめることで、ピックアップヘッド10は調整位置に固定される。
なお、プッシュネジ66とプルネジ67は、例えば1回転あたり740μmのものなどを用いればよい。
例えば上記図1と同様の構成の原盤製造装置を用いて、芯出しに使用する基準原盤103Rを作成する。基準原盤103Rの作成について図5〜図10を参照して説明する。
図5は基準原盤103Rの作成手順を示している。
基準原盤103Rの作成に用いる原盤製造装置の芯ずれ量は予め測定されており、例えば上述した図19で示したx方向のズレ量a=0μm、y方向のズレ量|b|=18μmであることがわかっているとする。
また基準原盤103Rの作成に用いる原盤製造装置ではピックアップヘッド10のセンタリング精度を、x方向誤差:±2μm以内、y方向誤差:±25μm以内にする。基準原盤103Rは芯出し用のジグであり、高精度が要求されるため、x方向およびy方向の誤差は小さいほど望ましい。
基準原盤の基板は、例えばシリコンで、厚みを0.725mm、形状を直径200mmの円形とする。例えばこのシリコン基板上に、70nm厚のシリコンをスパッタし、さらに70nm厚のレジスト材料をスパッタする。レジスト材料はタングステンとモリブデンを含む不完全酸化物である。
以下、記録条件はいずれも直流(DC)発光レーザにより、原盤上での対物レンズ出射パワー=6mW、スピンドル回転はCAV(一定角速度)で600rpmとする。
図6に基準リング91を示している。
本例では、上記記録条件により、基準リング91として、半径r0=約25μmの3本のリングを記録する。
基準リング91としての3本の各リングは次のように記録する。
・1番目のリング:スライダ45の設定位置xを、x=√(24.52−|b|2)[μm]に固定してレーザ光を照射し、円形のトラック1周だけ記録する。
・2番目のリング:スライダ45の設定位置xを、x=√(25.02−|b|2)[μm]に固定してレーザ光を照射し、円形のトラック1周だけ記録する。
・3番目のリング:スライダ45の設定位置xを、x=√(25.52−|b|2)[μm]に固定してレーザ光を照射し、円形のトラック1周だけ記録する。
ここで|b|は現状のピックアップヘッド10からのレーザ光照射位置のy方向誤差の絶対値である。
そして半径約25μmの円を描くのであるが、レーザ光照射位置が原盤回転中心Pから|b|だけずれているから、スライダ45の設定位置xは、上記式でもとめられることになる。
また、ここでは基準リング91を半径r0=25μm前後としているが、基準リング91の半径は、20μm〜65μmの範囲内で設定することが適切である。
本例では基準原盤103Rに3つのドーナツリングを形成するものであり、ステップF103では、最も小さい径のドーナツリングとして小ドーナツリングを形成する。
図7に基準リング91の周囲に形成された小ドーナツリング92を示している。
この小ドーナツリング92は、半径r1〜r2までの区間の、連続した同心円トラックにより形成される。
半径r1=50μm、半径r2=75μmとすると、小ドーナツリングを記録する際には、まずスライダ45の設定位置xを、x=√(50.02−|b|2)[μm]に固定してレーザ光を照射し、円形のトラック1周を記録する。
以降、スライダ45の位置を+1μm移動して1周記録するという動作を25回繰り返す。これにより、半径50μm〜半径75μmの間に、トラックピッチTP=1μmで26本の同心円状のトラックが記録され、小ドーナツリング92が形成される。
これによって、図7に示すようにトラックピッチTP=2μmの2本の識別用リングパターン93が、小ドーナツリング92の外周側に隣接して形成される。
図8の例では、中ドーナツリング94として、半径0.15mm〜0.3mmまでの区間に、連続したスパイラル状のトラックを形成している。中ドーナツリング94のトラックはトラックピッチTP=2μmとする。
また、中ドーナツリング94の外周に隣接しては、2本の識別用リングパターン95を形成する。識別用リングパターン95のトラックピッチTP=4μmとする。
半径0.15mm〜0.30mmの中ドーナツリング94のトラックの露光を行うために、まずレーザ光源11から出力するレーザパワーを再生パワー(0.5mW)としてフォーカスオンとする。スピンドルモータ44は600rpmの角速度一定(CAV)で回転させる。
スライダ45は、最初に半径位置x=0.10mmに移動させ、スライド移動速度=20μm/secに設定する。そして、半径位置x=0.35mmを移動先目標値にセットしてスライド移動を開始させる。
コントローラ40は、センサ46からの半径位置情報SSによりスライダ45の半径位置を監視して、スライダ45が半径位置x=0.15mmに到達するタイミングで、レーザドライバ41を制御して、レーザ光源11からのレーザ出力パワーを6mWに切り換えさせる。これによって、半径位置0.15mmからスパイラル状のトラックが記録されていく。600rpmで回転されている基準原盤103Rが、スライド移動速度=20μm/secで移送されることで、スパイラル状のトラックのトラックピッチTP=2μmとなる。
その後コントローラ40は、スライダ45が半径位置x=0.30mmに到達するタイミングで、レーザドライバ41を制御して、レーザ光源11からのレーザ出力パワーを再生パワー(0.5mW)に切り換えさせる。
続いて半径位置x=0.30mmの近辺で、スパイラルトラックが終了している半径を1μm単位の分解能で探す。そしてその半径位置より、スライダ45を+4μm移動させ、1トラック記録し、さらにスライダ45を+4μm移動させ、1トラック記録する。
以上の動作により、約0.15mm幅にわたるトラックピッチTP=2μmの中ドーナツリング94と、その外周側にトラックピッチTP=4μmの2本の同心円状の識別用リングパターン95が記録されたことになる。
図8の例では、大ドーナツリング96を、半径0.6mm〜0.9mmまでの区間に、連続したスパイラル状のトラックとして形成している。大ドーナツリング96のトラックはトラックピッチTP=4μmとする。
また、大ドーナツリング96の外周に隣接しては、2本の識別用リングパターン97を形成する。識別用リングパターン97のトラックピッチTP=8μmとする。
半径0.6mm〜0.9mmの大ドーナツリング96のトラックの露光を行うために、まずレーザ光源11から出力するレーザパワーを再生パワー(0.5mW)としてフォーカスオンとする。スピンドルモータ44は600rpmの角速度一定(CAV)で回転させる。
スライダ45は、最初に半径位置x=0.40mmに移動させ、スライド移動速度=40μm/secに設定する。そして、半径位置x=1.1mmを移動先目標値にセットしてスライド移動を開始させる。
コントローラ40は、センサ46からの半径位置情報SSによりスライダ45の半径位置を監視して、スライダ45が半径位置x=0.6mmに到達するタイミングで、レーザドライバ41を制御して、レーザ光源11からのレーザ出力パワーを6mWに切り換えさせる。これによって、半径位置0.6mmからスパイラル状のトラックが記録されていく。600rpmで回転されている基準原盤103Rが、スライド移動速度=40μm/secで移送されることで、スパイラル状のトラックのトラックピッチTP=4μmとなる。
その後コントローラ40は、スライダ45が半径位置x=0.9mmに到達するタイミングで、レーザドライバ41を制御して、レーザ光源11からのレーザ出力パワーを再生パワー(0.5mW)に切り換えさせる。
続いて半径位置x=0.9mmの近辺で、スパイラルトラックが終了している半径を1μm単位の分解能で探す。そしてその半径位置より、スライダ45を+8μm移動させ、1トラック記録し、さらにスライダ45を+8μm移動させ、1トラック記録する。
以上の動作により、約0.3mm幅にわたるトラックピッチTP=4μmの大ドーナツリング96と、その外周側にトラックピッチTP=8μmの2本の同心円状の識別用リングパターン97が記録されたことになる。
上記のようにもっとも小さいリングである基準リング91の半径は25μmとした。
芯出しに使用する基準原盤103Rにおける基準リング91の半径は、20μmから65μmの範囲内に形成されていればよい。その根拠は次のとおりである。
基準原盤103Rやディスク原盤103を原盤製造装置のスピンドルテーブル61に装着する際の偏芯精度は約10μmかそれ以下である。即ち基準原盤103Rをスピンドルテーブル61上にチャッキングするときには、必ず偏芯が発生し、この偏芯量は最大10μm程度であり、片側振幅で±10μm、ピークトゥピークで20μmに相当する。
従って、芯出しの際に、確実にレーザ光照射位置を基準リング91の内側に位置するように調整するためには、基準リング91の半径は10μmの2倍以上が必要である。
つまり基準リング91の半径範囲の下限を、偏芯量片側振幅の2倍である20μmとすることで、偏芯を有して回転する基準原盤103Rの最小リングのなす軌跡よりも内側の領域を確実に確保することが出来る。
レーザ光照射位置(芯ずれ)のx方向誤差を0と仮定したときに、ディスク原盤103上で半径21mmより外周の領域においてx方向誤差を0.1μm以内とするために許容されるy方向ずれは、最大65μmである。図9に示す半径rについて、
r2=x2+b2 (r>0) であるから、
x=21mm、r−x=0.1μmのとき、
b2=r2−x2=21000.12−210002=4200.01であり、
|b|=64.8 [μm]
よって、|b|<65μmであれば、半径21mmより外周側の領域において、x方向誤差は0.1μm以内となる。
基準リング91より大径のドーナツリング96、94、96は、芯出しの際に戻り光波形を観察して基準リング91を見つけやすくするためのものであり、その半径範囲や数は多様に考えられる。
また大ドーナツリング96(及び識別用リングパターン97)は、半径位置0.9mm近辺までとしており、つまり全てのリングは半径1mm以内の領域に記録されている。これは、y方向の調整可能範囲長、つまりピックアップヘッド10の取付位置調整として補正可能な範囲が1mmとしたことによる。つまり、ピックアップヘッド10の取付位置が調整されていない状態(芯出し実行前)から調整状態に追い込んでいくときに、各ドーナツリングが適切な調整のためのガイドとなるようにするものである。
また、基準リング91及びドーナツリング92、94、96のそれぞれのトラックピッチTPが異なるようにするのは、オシロスコープ200で戻り光波形を観測する際に、その戻り光波形が、基準リング91及びドーナツリング92、94、96のうちのどのリングによるものかを判別するためである。
もちろん、芯出しの際に、未調整の状態で非常に小径の基準リング91をオシロスコープ200での戻り光波形から発見するのは比較的難しいため、各ドーナツリング92,94,96等、1つ以上のドーナツリングを設けることが調整作業にとって好適である。
例えばトラックピッチTP=8μmに相当する戻り光波形、トラックピッチTP=4μmの波形と連続して観測されたら、それは大ドーナツリング95の外周端部近辺と判断できる。一方、トラックピッチTP=4μmの波形に連続してトラックピッチTP=8μmの波形が無く、ミラー面相当の波形となったら、そこは大ドーナツリング95の内周端部近辺と判断できる。
識別用のリングパターン93、95、97は、このように各ドーナツリング92,94,96の外周側/内周側を判別するために設ける。
またこのことから、わかるように、識別用のリングパターンを各ドーナツリング92,94,96の内周側のみに形成するようにしてもよい。
或いは、小ドーナツリング92については内周側、中ドーナツリング94については外周側などというように、ドーナツリング毎に識別用リングパターンの形成位置が異なるようにしてもよい。
また識別用リングパターン93,95,97は、それぞれ3トラック以上形成しても良い。
無機レジスト層102の場合、レーザ光の露光によって、露光部分111は10nm程度、僅かにもりあがる現象があり、この露光によって反射率が変化する。即ち図10(a)で非露光部分の反射率Rf1と、露光部分111の反射率Rf2は異なるものとなる。このため、現像を行わなくとも、戻り光波形として各リングを観測できる。従って、現像(エッチング)しない状態でも、基準原盤103Rとして使用できる。
この場合、反射率Rf1、Rf2の差が大きくなり、戻り光波形として各リングをより容易に観測できるようになる。
この場合、反射率Rf1、Rf2の差がより大きくなり、戻り光波形として各リングをさらに容易に観測できるようになる。
基準原盤103Rを用いた原盤製造装置の芯出しについて説明する。
芯出しを行う場合、原盤製造装置においてピックアップヘッド10を基台部60に取り付けるとともに、スピンドルテーブル61には基準原盤103Rを搭載する。なお取付ネジ52はこの時点では、緩やかに締めておく。また図1に示したように、ピックアップヘッド10で得られる戻り光信号がオシロスコープ200で観測できるようにする。
まずステップF201として、スライダ45をx方向に動かしてリングを見つける動作を行う。即ち原盤製造装置においては、レーザ光源11から再生パワーとして例えば0.5mWのパワーでレーザ出力を行うようにしながら、スライダ45を移動させる。調整を行う作業者は、そのときにオシロスコープ200により戻り光波形を観測する。
この場合、ピックアップヘッド10は取付調整を行っていないため、y方向の芯ずれ量は未知である。そしてスライダ45がx方向に移動することによって、レーザ光照射位置の軌跡は、例えば図12のSL1、SL2・・・に示すように、そのときのy方向の芯ずれ量によって異なるものとなる。
軌跡SL2は、レーザ光が大ドーナツリング96にはかかるが中ドーナツリング94よりも外れている状態である。
軌跡SL3は、レーザ光が大ドーナツリング96及び中ドーナツリング94にはかかるが小ドーナツリング92よりも外れている状態である。
軌跡SL4は、レーザ光が大ドーナツリング96、中ドーナツリング94、小ドーナツリング92にはかかるが基準リング91よりも外れている状態である。
軌跡SL5は、レーザ光が基準リング91にもかかっている状態である。
図13(a)(b)(c)は、レーザ光軌跡がそれぞれドーナツリング96,94,92を横切るときに観測される戻り光波形を模式的に示している。レーザ光がトラックを横切るときには、トラックとしてのグルーブ又はピット列で戻り光が回折されて反射率が低下する。
図13(a)は、スライダ45がx方向に外周側から内周側に移動して大ドーナツリング96を横切ったときの戻り光波形であり、まず識別用リングパターン97の通過によりトラックピッチ8μm相当の2つの波形が観測され、それに続いてトラックピッチ4μm相当の波形が連続して観測される。
なお、観測される波形の周期は、トラックピッチ±αに相当する。±αは偏芯成分である。
図13(b)は、スライダ45がx方向に外周側から内周側に移動して中ドーナツリング94を横切ったときの戻り光波形であり、まず識別用リングパターン95の通過によりトラックピッチ4μm相当の2つの波形が観測され、それに続いてトラックピッチ2μm相当の波形が連続して観測される。
図13(c)は、スライダ45がx方向に外周側から内周側に移動して小ドーナツリング92を横切ったときの戻り光波形であり、まず識別用リングパターン93の通過によりトラックピッチ2μm相当の2つの波形が観測され、それに続いてトラックピッチ1μm相当の波形が連続して観測される。
ステップF202、F204,F205,F206では、レーザ光照射位置の軌跡がどのような状況であったかを判別するものとなる。
もし、軌跡SL1のような状況である場合は、レーザ光照射位置は全てミラー面となって、図13のような露光部分に応じた戻り光波形は観測されない。この場合は、ピックアップヘッド10の取付位置が例えば取付不良などで、大きくずれていることになる。このため、大ドーナツリング96が観測されなかった場合、作業者は調整手順をステップF202からF203に進め、ピックアップヘッド10の取付をやり直す。そしてステップF201として、再度スライダ45をx方向に移動させながら戻り光波形を観測する。
各ドーナツリング96,94,92及び基準リング91はトラックピッチを違えてあるので、図13のように戻り光波形からレーザ光照射位置がどの位置にあるのかを簡単に把握することができる。また、ドーナツリング96,94,92の外側に隣接する識別用リングパターン97,95,93は、それぞれ隣接するドーナツリングよりもトラックピッチを大きくしているので、戻り光波形でドーナツリングのエッジ位置を検出したときにそれが内側のエッジなのかそれとも外側のエッジなのかを簡単に把握することができる。
例えば軌跡SL2の状況の場合、観測される戻り光波形は図14のようになる。即ちまず識別用リングパターン97と大ドーナツリング96による波形が観測され、その後ミラー部分を通過して、反対側の大ドーナツリングに内周側から達することで、大ドーナツリングによる波形が観測される。
例えばこの場合、大ドーナツリング94のみが検出できたことになるため、ステップF207では、検出した最小のリングとして大ドーナツリング96を用いて、半径位置x1、x2を見いだす。この場合の半径位置x1、x2は、例えば図12,図14に示すように大ドーナツリングの内周側エッジ部分の半径位置とすればよい。
即ち、ここでは、図14のように大ドーナツリングの内周エッジが観測されるタイミングでのスライダ45の半径位置としてx1,x2を見いだせばよい。
また軌跡SL4の場合は、戻り光波形から大ドーナツリング96、中ドーナツリング94、小ドーナツリング92が検出できるため、ステップF207では、小ドーナツリング92の内周エッジが観測される半径位置としてx1,x2を見つける。
また軌跡SL5の場合は、戻り光波形から大ドーナツリング96、中ドーナツリング94、小ドーナツリング92及び基準リング91が検出できるため、ステップF207では、基準リング91の内周エッジが観測される半径位置としてx1,x2を見つける。
半径位置x1,x2の平均値x aveは、x方向の原点位置とすべき位置を予測する値となる。
そしてその状態でステップF209では、プッシュネジ66,プルネジ67によりピックアップヘッド10の位置をy方向に動かしながら戻り光波形を観測し、レーザ光照射位置が基準リング91の内側になるようにする。
このため、ピックアップヘッド10をy方向に動かしながら、戻り光波形を観測して、より小さいリングが観測できる方向を探す必要がある。
続いてステップF210で、スライダ45を基準リング91を横切るように移動させながら、戻り光波形を観測する。そして半径r0=25μmの基準リング91において半径位置x1、x2を見いだす。
この場合、次のように作業を行う。図15(b)は、基準リング91を横切ったときの戻り光波形を示している。なお、図15(a)の波形は、スピンドルインデックスパルスとよぶパルス波形で、その周期はスピンドルモータ44の1回転に同期している。例えばスピンドル回転速度が600rpmのとき、スピンドルインデックスパルスの1周期は100msecである。
基準原盤103Rはおよそ10μmかそれ以下の偏芯を持ってスピンドルテーブル61上に固定されている。
基準リング91としての3本のトラックの内、真ん中のトラックに着目すると、基準原盤103Rが1回転する間に、真ん中のトラックによる反射率低下が2回起こり、これらの間隔が等間隔になったとき、つまり図15(b)中のT1とT2の両間隔ともに50msecに一致するときに、レーザ光照射位置と基準原盤103Rの回転中心位置との距離が、ちょうど半径r0に一致する。
このように、基準リング91に対してレーザ光照射軌跡が横切る間隔がデューティ50%となるようにy方向を微調整する。この場合、ピックアップヘッド10をプッシュネジ66、プルネジ67でy方向に動かして、戻り光デューティ50%となる2点y1, y2の中間点y aveを見出す。このときにはプッシュネジ66、プルネジ67の回転角度を頼りにするとよい(プッシュネジ66、プルネジ67のピッチは1回転あたり740μm)。確実にレーザ光照射位置が基準リング91の内側にあればよい。プッシュネジ66、プルネジ67による調整ができたら、取付ネジ52を強く締めて、ピックアップヘッド10の位置を確定させる。
そして、デューティ50%において例えば真ん中のトラックの戻り光波形が得られる半径位置をx1とし、またスライダ45を移動させて、もう1箇所のデューティ50%となる戻り光波形が得られる半径位置をx2とする(xはマイナスの値もとり得る)。
x方向誤差aについては、図16から、a=(x2+x1)/2として求める。
y方向誤差bは、|b|=r02−{(x2−x1)/2}2 で求める。
この結果、|a|<2μm, |b|<65μmであればよい。もしこの条件を満たさなければ、例えばステップF209,F210をやり直す。
そしてステップF212では、スライダ45の原点位置を校正する。即ち、x1,x2の中心値x ave=(x2−x1)/2を計算し、このスライダ原点位置=x aveとなるように原点校正を行う。
以上により、芯出しとしての調整作業が完了する。
本例の方式により芯だしを行い芯ずれ量(p値)を計算により見積もったあと、0点カットを行って実際の芯ずれ量(q値)をレーザ顕微鏡により実測した。
p値とq値の結果は下記の通りである。
p値:x方向ズレ量a=−1.7μm、y方向ズレ量|b|=4.8μm
q値:x方向ズレ量a=−2.0μm、y方向ズレ量|b|=5.4μm
このようにp値とq値は十分に近い値を示している。よって0点カットを省略し、p値をもって芯ずれ量とみなすこが可能であることが分かった。
また幾何学的な計算により、レーザ光照射位置と原盤回転中心位置とのずれ量を見積もることが出来る。この見積もられたずれ量は、いわゆる「0点カット」から得られるずれ量の測定値に十分近い値を示す。つまり「0点カット」の手間を省いてずれ量を正確に見積もることが可能である。
これらのことから、従来の芯出し調整にくらべて、本方式では芯出しに要する時間を劇的に短縮することに成功した。例えば実際には数時間を要した調整作業を0.5時間程度とすることが可能となった。
また各ドーナツリング92,94,96に隣接する識別用のリングパターン93、95、97が設けられていることで、オシロスコープ200で戻り光波形を観測するときに、レーザ光が各リングパターンの外周側にあるか、内周側にあるかを容易に判別できる。
記録されるリング(基準リング91やドーナツリング92,94,96)はグルーブでもピット列でもよい。ピット列を記録する際にはいわゆるライトストラテジという方式のパルスでレーザ光源11を発光させて各ピットの露光を行う。
また各リングは同心円でもスパイラルでもいずれでも良い。
また、上記図1の原盤製造装置は、ピット列の凹凸パターンを有するディスク原盤103、つまり再生専用ディスクの製造に用いるディスク原盤103の原盤製造装置として説明し、その芯出しを行う例を説明したが、もちろんライトワンスディスクやリライタブルディスクの製造のためのディスク原盤103を作成する原盤製造装置についても、基準原盤103Rを用いた同様の方式で芯出しを行うことができる。
Claims (11)
- 光ディスク原盤製造装置において、ディスク原盤とレーザ照射位置との相対位置関係をディスク原盤の径方向に移動させる移送機構が原点位置にあるときのレーザ照射位置が、ディスク原盤の回転中心に、所定の調整精度の範囲内で一致させるようにする芯出し調整に用いる基準原盤として、
基板上に無機レジスト層が形成されているとともに、レーザ光による上記無機レジスト層の露光により、回転中心から上記調整精度に基づいて半径が決められた基準リングとしてのパターンが記録されていることを特徴とする基準原盤。 - 上記基準リングの半径は20μm〜65μmの範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の基準原盤。
- 上記基準リングは、同心円状の複数のリングパターンとして記録されていることを特徴とする請求項1に記載の基準原盤。
- さらに、上記基準リングの外周側となる特定の半径位置から、同心円状の複数トラックもしくはらせん状の連続トラックとして露光されたリング状領域が、1又は複数単位形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基準原盤。
- 上記移送機構の移送方向がx方向、上記x方向と水平面上で直交する方向がy方向とし、上記芯出し調整は、上記x方向と上記y方向の調整を行う場合、
上記リング状領域は、上記y方向の調整可能範囲長に相当する半径範囲内に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基準原盤。 - 上記リング状領域が複数形成される場合、各リング状領域は互いに異なるトラックピッチのトラックにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基準原盤。
- 上記リング状領域の外周側もしくは内周側の一方に隣接して、上記リング状領域のトラックピッチとは異なるトラックピッチの2トラック以上の識別用リングパターンが露光形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基準原盤。
- 上記無機レジスト層にレーザ光による露光が行われた後、エッチング処理が行われたものであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、又は請求項7に記載の基準原盤。
- 上記無機レジスト層にレーザ光による露光が行われた後、エッチング処理が行われ、さらに表面に反射膜が成膜されたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、又は請求項7に記載の基準原盤。
- 光ディスク原盤製造装置において、ディスク原盤とレーザ照射位置との相対位置関係をディスク原盤の径方向に移動させる移送機構が原点位置にあるときのレーザ照射位置が、ディスク原盤の回転中心に、所定の調整精度の範囲内で一致させるようにする芯出し調整方法として、
基板上に無機レジスト層が形成されているとともに、レーザ光による上記無機レジスト層の露光により、回転中心から上記調整精度に基づいて半径が決められた基準リングとしてのパターンが記録されている基準原盤に対して、上記無機レジスト層の記録感度に満たない非記録レーザパワーでのレーザ光の照射を行うとともに、
上記レーザ光の戻り光を観測して、上記レーザ光の照射位置が上記基準リング内となるようにすること特徴とする芯出し調整方法。 - 上記移送機構の移送方向がx方向、上記x方向と水平面上で直交する方向がy方向とし、
上記芯出し調整は、
上記x方向における上記移送機構の原点位置を調整するとともに、
上記レーザ光を出力するピックアップヘッドの取付位置としてy方向の位置の調整を行うことで、上記レーザ光の照射位置が上記基準リング内となるようにすることを特徴とする請求項10に記載の芯出し調整方法。
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