JP4402907B2 - 材料加熱方法および加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本明細書で開示する発明は、金属材料を加熱処理して、半溶融状態を得る技術に係り、例えばチクソキャスティング法に利用されるビレットを半溶融状態に加熱する技術に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
チクソキャスティング法による鋳造では、鋳造される金属材料を鋳造前に予め加熱し、半溶融状態にしておく必要がある。この鋳造前の加熱処理の対象となるビレットは、ダイカストマシンに装填し易いように円柱等の形状に加工され、鋳型に注入する前の段階で、鋳型に充填するのに適した流動性を示す半溶融状態の温度にまで加熱される。半溶融状態となったビレットは、ダイカストマシンの機構によって鋳型内部に加圧注入され、所定の成形金属部品が成形される。
【0003】
ビレットの加熱に関する技術としては、特許文献1に記載された技術が公知である。特許文献1に記載された技術は、高周波誘導加熱によるビレットの加熱の均一性を高めることを目的としたもので、ビレットを構成する合金の共晶点付近まで、より高電圧の第1高周波電圧による誘導加熱を行い、その後により低電圧の第2高周波電圧による誘導加熱を行うというものである。これにより、ビレット全体が均一に加熱されるまでの加熱時間をより短くできるという利点がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−146436号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
アルミ合金からなるビレットを加熱した場合、表面付近と内部との温度の不均一性が問題となる。上述したように、ビレットは半溶融状態になるように加熱され、鋳型に注入される。この際、ビレット全体が一様で均一な温度になっていないと、鋳型に注入された状態で、鋳型内において鋳造材料の温度が不均一になってしまう。これは、得られる鋳物の材質が不均一になる原因となる。特に、高周波誘導加熱によりビレットを加熱した場合、表面の溶融が先に進んでしまい、搬送の際にビレットが変形する等の問題が生じる。なお、前述の特許文献1に記載された技術は、加熱の途中において発生するビレット内部の温度不均一性を速やかに解消する技術であるが、表面と内部との間に温度差がある状態において、表面が先行して温度上昇することについては考慮していない。また、鋳造の作業時間を短縮するために、ビレットの加熱をより短時間に行うことが望まれるが、ビレットの加熱を短時間に行おうとすると、上述した表面での溶融が進んでしまう現象がより顕著になるという不都合があった。したがって、従来の技術においては、短時間の加熱によってビレットを均一性よく半溶融状態にすることは困難であった。
【0006】
本発明は、金属材料を半溶融状態に加熱する際に発生する金属材料中の温度の不均一を解消し、鋳物の材質を均一にするとともにビレットの変形等の不具合の発生を防止することを目的とする。また本発明は、短時間の加熱によってビレットを半溶融状態にする場合でも、加熱の均一性を確保できる技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した課題について検討した結果、以下の知見を得た。この知見は、ビレットを構成するアルミ合金の比熱が融点に近い温度で急激に大きくなるピークを有する点に関係する。図6は、A−357アルミ合金における比熱と温度との関係を示すグラフである。図6に示す比熱―温度特性では、比熱が約577℃をピークとした温度依存性を示す状態が示されている。以下、ビレットとして図6に比熱―温度特性を示すアルミ合金を高周波誘導加熱によって加熱した場合を例に挙げて説明を行う。なお、A−357とは、ASTM(American Society For Testing and Materials)(米国材料試験協会)によって標準化された合金の呼称である。
【0008】
高周波誘導加熱によって加熱が行われてゆくと、表皮効果に起因してビレットの表面が内部よりも優先的に加熱される。この結果、加熱の過程において表面の温度が内部に比較して高くなる。そして、ビレットが加熱されてゆき、その表面温度が約577℃(比熱のピーク)を超えた段階で、ビレットを構成するアルミ合金の比熱は急激に低下する。
【0009】
したがって、ビレットの表面が先に比熱のピークの温度(約577℃)に達し、遅れたタイミングでビレットの内部がその温度に達する。そして、比熱のピークを過ぎると、ビレットの表面付近の比熱が急激に低下する。これにより、ビレットの表面付近における温度上昇が加速される。この際、ビレットの内部では、まだ比熱が表面に比較して大きい状態にある。よって、ビレットの表面の温度が急激に上昇し、ビレットの内部の温度上昇はそれ程でない状態となる。この結果、ビレットの表面と内部との温度差が急激に開いてゆく。
【0010】
こうして、ビレットの表面温度が比熱のピークを超えた段階で、表面の温度が内部の温度に対して急激に高くなる現象が現れる。一方、アルミ合金が溶融し始める温度は、比熱のピーク付近にほぼ一致している。従って、単純に加熱をしていったのでは、ビレットの表面温度が比熱のピークとなる値を超えた段階で、その温度上昇が加速され、結果として表面での溶融が進む。つまり、溶融が起こる温度範囲において、温度上昇が表面において優先的に進み、表面における溶融が速く進んでしまう。こうして表面は溶融が進んでいるのに内部は固相状態であるといった、不均一な状態になってしまう。本発明は、以上の知見に基づき得られた発明である。
【0011】
本発明は、所定の第1温度でピークを示す比熱を有する材料の加熱方法であって、前記材料の表面温度が前記第1温度を超え、前記ピークからの前記比熱の減少が継続する温度領域から選択される第2温度になるまで加熱を行う工程と、前記材料中に温度分布の不均一が存在している状態で、前記材料の表面温度を前記第2温度に維持する工程と、前記材料の表面における温度と内部における温度との差が所定の値以内に収まった状態で前記維持する工程を解除する工程と、を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、比熱がピークとなる第1温度の近傍の第2温度に被加熱材料の表面温度を維持することで、表面の溶融が内部に比較して著しく進行してしまう事態を避けることができる。すなわち、比熱がピークとなる第1温度付近では、当該材料の溶融が始まるので、第1温度の近傍の第2温度に表面を維持した際、表面での半溶融化は起こるが、表面を第2温度に維持することで、比熱の急激な減少に起因する表面でのさらなる溶融は抑制される。また、表面の温度が第2温度に維持された状態では、内部の温度が第2温度に近づくように上昇するので、内部での半溶融化も進行する。こうして、表面のさらなる溶融を抑制しつつ、内部での半溶融化を進行させ、それにより全体の半溶融化を一様に進め、例えばチクソキャスティング法に利用するのに好ましい半溶融状態を得ることができる。
【0013】
本発明において、「所定の第1温度でピークを示す比熱」とは、図6に例示するように、温度に依存して比熱が極大値を示す比熱―温度特性をいう。ここで、第1温度は、ピークの頂部(極大値を示す部分)の温度をいう。このピークは、合金であればその共晶点付近に存在し、材料によって異なる値をとる。材料としては、アルミ合金等の金属材料が挙げられる。しかしながら、これらに限定されず、比熱が温度に依存してピークを有し、さらにその比熱のピーク付近の温度で半溶融状態と成り得る材料であれば、本発明を適用することができる。
【0014】
材料中に温度分布の不均一が存在している状態とは、被加熱材料の表面の温度と内部の温度に許容できない程度の温度差が存在している状態をいい、通常この温度差は30℃以上である。
【0015】
加熱の方法としては、誘導加熱を挙げることができ、誘導加熱には数々の方法がある。例えば、ソレノイドコイル中に材料を配置し、ソレノイドコイルに交流電圧を加える方法が挙げられる。内部とは、表面近傍でなく、その材料の幾何学的な中心またはそれに近い部分をいう。たとえば、材料の形状が円柱であれば、その中心軸上の中央の部分、球であれば球の中心をいう。
【0016】
「その表面における温度とその内部における温度との差が所定の値以内に収まる」というのは、表面と内部との温度差が許容できる温度差以内になった状態、あるいは許容できる温度差に成り得る状態の温度差に収まることをいう。この許容できる温度差は、実施形態に応じて決めればよい。勿論、温度差が0である場合が理想である。なお、第2温度に維持する工程を解除するタイミングは、表面における温度と内部における温度との差が所定の値以内に収まった時点から所定時間経過した段階であってもよい。つまり、表面を第2温度に維持することで、表面における温度と内部における温度との差を所定の値以内に収め、その状態を所定の時間維持し、その後に表面を第2温度に維持する工程を解除してもよい。勿論、表面における温度と内部における温度との差が所定の値以内に収まった時点で、第2温度に維持する工程を解除してもよい。
【0017】
第2温度は、特定の温度、あるいはある程度の幅をもった温度領域として捉えることができる。
【0018】
半溶融状態とは、完全に溶融はしていないが、固相状態と液相状態とが混在した状態をいう。一般にチクソキャスティング法により成形ができる程度に軟化した状態を半溶融状態ということができる。半溶融状態は、半凝固状態と表現することもできる。
【0019】
図6に例示するように、比熱がピークとなる温度を越えると、比熱は急激に低下する。この比熱が低下する温度―比熱特性の斜面(右下がりの斜面)では、僅かな温度上昇で、比熱が急激に低下するので、急激に温度上昇が起こり易い。また、この比熱が急激に低下する温度領域は、溶融が進行する温度領域でもある。よって、この温度領域から第2温度を選択することで、表面においてある程度の溶融を進行させつつ、その進行が急激に進まないようにし、かつ内部の温度を第2温度に上昇させて内部の半溶融化も進行させ、それにより全体の半溶融化の均一性を確保することができる。
【0020】
本発明において、第2温度を、第1の温度を超え、比熱が減少傾向を示す温度領域から選択することは好ましく、特に第2温度を、比熱が示すピークの頂部とその裾部との間の温度領域から選択することは好適である。ピークの頂部とは、図6の例でいうとA点のことであり、裾部とはB点のことである。上記の温度領域から第2温度を選択することで、表面における溶融を抑制しつつ、内部の温度を第2温度へと上昇させ、それにより表面と内部との間でバランスのとれた半溶融状態を得ることができる。なお、第2温度を裾部より高い温度とすると、表面での溶融化の傾向が大きくなり、内部での溶融が進む前の段階で表面での溶融が進む。
【0021】
本発明者等が行った定量的な解析によれば、第2温度を第1温度より10%高い温度以下の温度とすることが好ましい。第2温度が第1温度より高すぎると、表面での溶融が進行し過ぎて好ましくない。つまり、第2温度が第1温度に比較してある程度以上高いと、内部の溶融が進行する前の段階で表面の溶融が進んでしまう。この不都合を回避するためには、第2温度を第1温度より10%高い温度以下の温度とするのが適当である。
【0022】
本発明は、加熱される材料がチクソキャスティング法で用いられるアルミ合金ビレットであり、加熱が誘導加熱である場合に用いて好適である。チクソキャスティング法による鋳物の成形では、材料が鋳型の隅々まで物性に偏りがない状態で均一に注入されることが重要となる。本発明によれば、均一な半溶融状態を保ったビレットを得ることができるので、チクソキャスティング法に適用した場合に、均一な品質を有した鋳物を得ることができる。特に本発明によれば、ビレットの表面が内部に比較して先に溶融してしまう現象を抑えることができるので、加熱の時間が短くても均一性の高い半溶融状態を得ることができる。したがって、ビレットを短時間で加熱し、半溶融状態にする技術に適用して有用となる。
【0023】
本発明の加熱装置は、上記の加熱方法を適用した所定の第1温度でピークを示す比熱を有する材料の加熱を行う装置であって、加熱手段と、前記材料の表面温度が前記第1温度を超え、前記ピークからの前記比熱の減少が継続する温度領域から選択される第2温度になるまで加熱し、前記材料中に温度分布の不均一が存在している状態で前記材料の表面温度を前記第2温度に維持し、前記材料の表面における温度と内部における温度との差が所定の値以内に収まった状態で前記維持を解除する制御を前記加熱手段に対して行う制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0024】
本発明の加熱装置を用いることで、例えばチクソキャスティング法に用いられるアルミビレットの加熱に適した加熱方法が実現される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を説明する。まず、実施形態の熱処理装置について説明する。図1および図2は、発明を利用した熱処理装置の一例を示す模式図である。図1は熱処理装置の断面図、図2は熱処理装置を横から見た図、図3は、熱処理装置のブロック図である。
【0026】
図1〜3に例示する熱処理装置は、ソレノイド状のコイル101、コイルに高周波電流を供給する配線102,103、断熱材104、レール105、トレイ109、台座110、高周波電源107、高周波電源制御装置108を備える。コイル101には、高周波電源107から配線102および103を介して高周波電流が供給される。コイル101内には、円筒形状に成形された断熱材104が図示しない支持手段により配置されている。
【0027】
ビレット106は、ステンレス製のトレイ109上に配置された耐熱セラミックス製の台座110上に配置されている。トレイ109は、レール105に固定されており、図示しない搬送装置によってレール105を移動させることで、ビレット106はコイル101中をその軸方向に移動する。
【0028】
高周波電源107は、コイル101に高周波電流を配線102および103を介して供給する。高周波電流の周波数は、50Hz〜3kHzから適宜選択される。なお、高周波という語句には、特に特定の周波数領域を限定する意図はない。よって、誘導加熱に使用される周波数は、任意に選択することができる。
【0029】
図1〜3に例示する構成では、コイル101と高周波電源107とによりビレット106を加熱するための加熱手段が構成されている。高周波電源107からコイル101に高周波電流を供給することで、コイル101内に交番磁界を発生させ、それによりビレット106に誘導電流を発生させ、ジュール熱によりビレット106を加熱する。
【0030】
高周波電源制御装置108は、高周波電源107を制御する制御手段であり、高周波電源107からコイル101に供給される高周波電力の強さ、周波数、そのONおよびOFFを制御する機能を有する。
【0031】
高周波電源制御装置108は、高周波電源107からコイル101に供給される高周波電力のパラメータ(電力、周波数、供給時間等)とビレット106各部の温度との関係を示すデータを記憶し、このデータに基づいて、コイル101に供給する電力の値やその供給時間等を制御し、ビレット106の加熱状態を制御する。
【0032】
以下、実施形態によりビレットを加熱する手順を説明する。まず、基本的な処理の流れを説明する。図4は、熱処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に例示するフローチャートは、高周波電源制御装置108によって実行される。なお、図示しない制御コンピュータを高周波電源制御装置108に接続し、その制御コンピュータにより、図4に例示するフローチャートが実行されるように、高周波電源制御装置108を介して高周波電源107を制御する構成としてもよい。
【0033】
まず、ビレット106を図1および2に例示する状態で設置し、熱処理を開始する(ステップ401)。熱処理を開始したら、コイル101に高周波電流を供給し、誘導電流によるビレット106の加熱を開始し(ステップ402)、さらに、ビレット106の表面温度が所定の温度に達したか否かを判断する(ステップ403)。
【0034】
温度の計測は、何らかのセンシング手段(例えば熱電対や放射温度計)によって行う。あるいは後述するように、加熱時間とビレット106表面の温度との関係を予め求めておき、加熱時間から温度を推測する方法も採用することができる。所定の温度は、比熱がピークを示す温度を僅かに越えた範囲の温度領域から選択される。例えば、図6の比熱―温度特性を有するアルミ合金の場合、比熱がピークを示す温度は約577℃であるので、この温度を僅かに超えた温度が所定の温度として設定される。例えば、この所定の温度は、580〜585℃の温度範囲から選択される。この温度範囲は、比熱がピークを示した後の減少領域(右下がりの斜面)に含まれる。なお、温度の計測点は、ビレット106の円柱表面の適当な位置とする。
【0035】
ステップ403において、ビレット106表面の温度が所定の温度に達していなければ、ステップ403の前に戻り、ビレット106表面の温度が所定の温度に達していれば、その温度を維持する処理を行う(ステップ404)。
【0036】
ステップ404の処理は、高周波電源制御回路108によって行われる。なお、ビレット106表面の温度を所定の値に維持する時間は、実験あるいはコンピュータ・シミュレーションにより求めておく。たとえば、ビレット106の表面を所定の温度に維持する時間と、ビレットの表面温度と内部温度との差、さらには溶融状態との関係を予め調べておく。そしてこのデータから、ビレットの表面温度と内部温度との差が許容できる値以下になり、さらに必要とする半溶融状態になる時間を求め、それらからステップ404における所定の温度に維持する時間を求めておく。
【0037】
ステップ404の後、上記の所定時間が維持されたかを判断し(ステップ405)、ビレット106の表面が所定の温度に所定の時間維持されていれば、加熱を終了し(ステップ406)、そうでなければ、再度ステップ405の判断を繰り返す。ステップ406において加熱が終了すれば、熱処理を終了する(ステップ407)。後はビレット106をコイル101内から取り出し、図示しないダイカストマシンに移送し、チクソキャスティング法による鋳造を行う。
【0038】
以上が本発明の一実施形態の流れの概略の説明である。実際の実施に当たっては、ビレット106表面の温度計測が煩雑であるので、以下に例示する方法を採用するのが簡便である。
【0039】
図5は、本発明の実施形態をより簡便に実施する場合の一例を説明するフローチャートである。熱処理に当たり、まず、熱電対を各部に取り付けたビレット106の試験体を用意し、加熱条件のパラメータと試験体各部の温度変化との関係を示す試験データを予め調べておく。この前調査は、コンピュータ・シミュレーションで行ってもよい。そして、上記試験データに基づく制御データを高周波電源制御装置108に記憶させておく。
【0040】
必要なデータを高周波電源制御装置108に入力した状態で、ビレット106を図1および2に示す状態で設置し、熱処理を開始する(ステップ501)。まず、コイル101に高周波電源107から高周波電流を流し、ビレット106に対する加熱を開始する(ステップ502)。高周波電源制御装置108では、予め入力しておいたデータを参照して、所定時間経過したかを判断する(ステップ503)。ステップ503で判断される所定時間は、ビレット106表面の温度が、予め設定した温度に到達するまでの加熱開始からの経過時間である。
【0041】
加熱が足りない結果、ステップ503の判定結果が「NO」であれば、ステップ503の前に戻り、加熱を継続する。ステップ503の判定結果が「YES」であれば、間欠加熱モードに移行する(ステップ504)。間欠加熱モードは間欠的に高周波電力を変化(あるいは断続)させてコイルに供給することで、ビレット106の表面温度を所定の値に維持する加熱のモードである。
【0042】
この間欠加熱モードの開始(ステップ504)によって、ビレット104の表面温度は所定の温度に維持される。これにより、ビレット104表面の温度上昇が先行してしまう不都合が回避される。プログラムに従い、間欠加熱モードを実行したら、間欠加熱モードを終了し(ステップ505)、熱処理を終了する(ステップ506)。
【0043】
以下、図5のフローチャートに例示した処理手順を実行した場合におけるビレットの加熱状態を、コンピュータ・シミュレーションによって得たデータに基づいて説明する。図7は、コンピュータ・シミュレーションに用いたビレットの概要を示す図であり、図8はコンピュータ・シミュレーションによって得たビレットの加熱状態を示すグラフである。図8の横軸は、最初の加熱開始からの経過時間、縦軸左はコイルに投入される電力の値(出力負荷)、縦軸右は温度である。図8には、図7に示すビレット600の表面601における温度推移(実線)と内部602における温度推移(破線)と、出力負荷(点線)とが示されている。なお、表面601は円柱の両端から等距離の表面の位置であり、内部602は円柱の軸の両端から等距離の位置である。また図9は図8の一部を拡大したグラフである。
【0044】
なお、シミュレート条件は、周波数:380Hz、初期温度:10℃、ビレット長:240mm、ビレット径:75mm、コイル効率:0.358、放熱係数:0.8である。また、ビレット600の材料として、図6に比熱―温度特性を例示するアルミ合金を用いた場合を想定している。また、加熱処理装置は、図1〜図3に示す装置の利用を前提としている。なお、コイル効率とは、コイルに供給した電力がビレットを加熱する熱量に変換される割合をいう。例えば、コイル効率:1.000というのは、コイルに供給した電力が全てビレットの加熱に寄与する熱量となることを意味する。また、放熱係数とは、黒体放射を1とした場合における熱放射の効率をいう。
【0045】
図8および図9の例では、最初の30秒の手前まで連続して155kWの高周波電力をコイルに投入し、ビレット表面の温度を574℃付近にまで加熱し、その後に間欠加熱モードに移行している。間欠加熱モードでは、高周波電力の投入を間欠的にかつ投入電力を段階的に下げる方法によりビレット600の加熱が行われる。間欠的な加熱により、ビレット600の表面温度は小刻みに上昇と下降を繰り返す。この際、温度上昇のピークは、585℃を越えないように制限される。実際には、図8および9に示すような温度変化をビレット600の表面601が示すように、コイルへの高周波電力の投入パターン(間欠的な制御状態)を決めておき、それが高周波電源制御装置において実行される。
【0046】
なお、ビレット600の表面601が図9に示すような温度変化を示しても、表面601における溶融が許容できる程度に収まることを前もって調べておく必要がある。
【0047】
この例では、ビレット600の表面601の温度が585℃を越えないように間欠加熱モードの加熱パターンを制御することで、ビレット600の表面601の温度を572℃付近と585℃の間で上下させながら582℃付近に収束させ、同時に内部602の温度を582℃付近にまで上昇させている。
【0048】
図6から明らかなように、585℃は比熱―温度特性のピークの裾部B点よりやや低い温度であり、582℃はA点に頂部を有するピークの右下がりの斜面に含まれる温度である。582℃付近は、当該アルミ合金が溶融する温度であるので、図8および図9に示すような温度変化が得られる加熱を行うことで、表面601と内部602とにおいてバランスのとれた溶融が行われ、ビレット600全体をバランス良く半溶融状態にすることができる。図8および図9の例は、平均で580℃〜582℃付近の表面温度となるように、間欠的な加熱をビレット600に対して行い、それによりビレット600の表面601と内部602の温度を582℃付近に収束させて均一な溶融が進行するように加熱制御を行った例と捉えることもできる。
【0049】
この実施形態では、130秒を越えた時点で高周波電力の供給を停止している。高周波電力の供給停止後、ビレット600は、その表面601の温度が内部602よりやや低い温度になった状態で、徐々に冷却されてゆき、この過程においても半溶融化が進行する。高周波電力の供給停止後に、表面601の温度が内部602の温度より低くなるのは、表面601からの放熱の影響があるからである。表面601の温度が内部602の温度に比較してやや低く維持される状態は、ビレット600の形状を維持し、その搬送を行い易い状態とする点で有用である。
【0050】
また、図9の例では、間欠的な加熱を加熱開始から90秒の手前の段階で止め、以降は定常的な加熱としている。これは、放熱による表面601の温度低下と、温度上昇の勢いによる内部602の温度上昇によって、少しタイミングが遅れて、表面601と内部602との温度差が無くなることを見越しているからである。
【0051】
図10に示すのは、コイルへの高周波電力の供給を徐々に段階的に下げていった加熱モードを採用した場合のコンピュータ・シミュレーション結果である。シミュレーション条件は、図8および9の場合と同じである。図11は、図9の一部を拡大したグラフである。
【0052】
図10および図11の場合、加熱を間欠的に途絶えさせず、段階的に変化させている。このため、ビレット表面の温度変化が図9の場合に比較して滑らかになっている。
【0053】
この例の場合も図8および図9の場合と同様に、ビレット600の表面601の温度と内部602の温度が582℃付近で一致するように、加熱の制御を行っている。得られる効果は、図8および図9のデータが得られる間欠加熱モードを採用した場合とほぼ同じである。ただし、この例の場合の方が内部602の温度の立ち上がりが速くなっている。
【0054】
ここでは、実際にデータを得る試験が煩雑であるので、コンピュータ・シミュレーションから得たデータを示した。このコンピュータ・シミュレーションによって得られるデータは、実際に得られる温度変化に極めて精度良く一致することが確認されている。
【0055】
ビレットの材料としては、A−356アルミ合金を用いることもできる。A356アルミ合金およびA−357アルミ合金は、SSF(Semi Solid Forging)用アルミ合金として知られている。もちろん利用できるアルミ合金は、これらのアルミ合金に限定されない。また、本明細書では、加熱の対象としてアルミ合金の例を説明した。しかしながら、図6に例示するような、温度に依存した比熱のピークを有する材料であれば、本発明は適用可能である。また、加熱の方式も高周波誘導加熱に限定されず、他の加熱方式を適用することもできる。
【0056】
実施の形態では、コイル内に被加熱材料が配置され留めおかれた状態で、加熱を行う例を説明したが、コイル内を被加熱材料が移動しつつ、加熱が行われる方法に本発明を適用することもできる。
【0057】
【発明の効果】
本発明を採用することで、金属材料を半溶融状態に加熱する際に発生する金属材料中の温度の不均一が解消され、鋳物の材質を均一にするとともにビレットの変形等の不具合の発生が防止される技術が提供される。さらに本発明によれば、短時間の加熱によってビレットを半溶融状態にする場合でも、加熱の均一性を確保できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加熱処理装置の概要を例示する断面図である。
【図2】 加熱処理装置の概要を例示する図である。
【図3】 加熱処理装置の概要を例示するブロック図である。
【図4】 加熱処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】 加熱処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】 アルミ合金の比熱―温度特性の例を示すグラフである。
【図7】 ビレットの一例を示す図である。
【図8】 コイルへの投入電力と加熱温度との関係を示すグラフである。
【図9】 コイルへの投入電力と加熱温度との関係を示すグラフである。
【図10】コイルへの投入電力と加熱温度との関係を示すグラフである。
【図11】コイルへの投入電力と加熱温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
101・・・コイル、102・・・配線、103・・・配線、104・・・断熱材、105・・・レール、106・・・ビレット、107・・・高周波電源、108・・・高周波電源制御装置、109・・・トレイ、110・・・台座、600・・・ビレット、601・・・ビレットの表面、602・・・ビレットの内部。
Claims (4)
- 所定の第1温度でピークを示す比熱を有する材料の加熱方法であって、
前記材料の表面温度が前記第1温度を超え、前記ピークからの前記比熱の減少が継続する温度領域から選択される第2温度になるまで加熱を行う工程と、
前記材料中に温度分布の不均一が存在している状態で、前記材料の表面温度を前記第2温度に維持する工程と、
前記材料の表面における温度と内部における温度との差が所定の値以内に収まった状態で前記維持する工程を解除する工程と
を備えることを特徴とする材料加熱方法。 - 前記第2温度は、前記第1温度の10%高い温度以下とすることを特徴とする請求項1に記載の材料加熱方法。
- 前記材料は、チクソキャスティング法で用いられるアルミ合金ビレットであり、前記加熱が誘導加熱であることを特徴とする請求項1または2に記載の材料加熱方法。
- 所定の第1温度でピークを示す比熱を有する材料の加熱を行う装置であって、
加熱手段と、
前記材料の表面温度が前記第1温度を超え、前記ピークからの前記比熱の減少が継続する温度領域から選択される第2温度になるまで加熱し、前記材料中に温度分布の不均一が存在している状態で前記材料の表面温度を前記第2温度に維持し、前記材料の表面における温度と内部における温度との差が所定の値以内に収まった状態で前記維持を解除する制御を前記加熱手段に対して行う制御手段と
を備えることを特徴とする加熱装置。
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