JP4357068B2 - 単結晶インゴット製造装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法)により単結晶インゴット(特に、シリコン単結晶インゴット)を製造する単結晶インゴット製造装置及び方法、特に、電力消費量が低減されたクーラー付CZ法シリコン単結晶に関する。
【0002】
【従来の技術】
[CZ法単結晶インゴット製造装置]
CZ法による単結晶の引き上げ方法は周知の技術であり、CZ法単結晶インゴット製造装置も広く普及している。CZ法により単結晶を得るにあたっては、原料融液から単結晶の引き上げが行われるが、最近では固液界面近傍における単結晶の温度勾配を大きくして、より高速に単結晶を引き上げることができる単結晶インゴット製造装置がいくつか提案され(特開昭63−256593、特開平8−239291、特許第2562245号)、既に実用化されている。
【0003】
図7は、従来の単結晶インゴット製造装置の一例を簡略図示した縦断面図である。この図7に示されるように、従来の製造装置10は、単結晶インゴット11を取り囲んで原料融液15の液面およびヒーター16からの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽部材12と、引上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)を冷却するためのクーラー13を有している。クーラー13は、単結晶引き上げインゴット11の軸方向の温度勾配を高くするために設けられるもので、インゴット11の引き上げ速度を高めて単結晶インゴットの生産効率を向上させるために、現在では多くのCZ法単結晶インゴット製造装置に採用されている。
【0004】
[単結晶インゴットのテール部]
ところで、CZ法による単結晶インゴットの製造では、単結晶を所望の長さに成長させた後、一般にテール部と呼ばれる逆さ円錐状の絞り込み部分を形成させる必要がある。それは、単結晶引き上げインゴットをいきなり融液から引き上げてしまうと、スリップ転移と呼ばれる結晶転移がインゴット内に発生し(スリップバック)、その部分は製品として使用することができなくなってしまうためである。
【0005】
ここで、スリップバックは、融液面から切れたところの直径分だけインゴット内に戻って発生するため、製品として適切なウエハをインゴットからできるだけ多く取るためには、ウエハに加工される部分(以下、直胴部分)にスリップバックを発生させないように、引き上げの終了に至る過程において、インゴットの径を注意深く絞りこんでテール部を形成する必要がある。
【0006】
テール部の形成に関し、テール部は直胴部の直径ぐらいの長さに形成するのが普通である。その理由は、短すぎると酸素の異常析出部分が直胴部にかかりその部分が製品化できなくなってしまうからである一方で、テール部はウエハとして製品化できない部分であるため、それが長すぎると不経済だからである。
【0007】
このテール部を形成するには、単結晶インゴットの軸方向の温度勾配を低くして単結晶インゴットを引き上げればよいということが当業者にはよく知られている。そしてそのために従来は、一般的に、テール部を形成する際にルツボを余分に加熱して融液温度を上げることによって単結晶引き上げインゴットの温度勾配を下げていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特にクーラーを使用して単結晶引き上げインゴットの温度勾配を意図的に高く設定しているような場合には、より高い温度を融液に与えなければならなくなる。そしてその加熱を行うために電力消費量が増大し、不経済であるのは勿論であるが、この加熱により石英ルツボが異常に加熱され、ルツボ中に存する気泡が大きくなって弾け、その破片が結晶に付着し転移を生じさせたり、多結晶化させたりするという問題が生じる場合がある。
【0009】
また、クーラーの冷却に打ち勝つルツボ加熱を行うためには、実際には多大なる電力を投入しなければならないので、電源装置が大型化してしまうという問題や、過剰な熱に晒される炉内部品が早く劣化してしまうという問題もあった。
【0010】
ところで、単結晶インゴット製造装置においては、インゴットの製造工程がすべて終了し、インゴットを炉内から取り出した後、次の製造工程に入る前に炉内のいわゆるホットゾーンを解体・清掃する必要がある。そして、作業員がこの解体作業に入るためには、ホットゾーンを十分に冷却する必要があるが、その冷却のためには、従来の装置では一般に6時間程度の時間が必要であり、それが単結晶インゴット製造の1サイクルあたりの時間を長引かせ、製造効率を落としているという問題があった。これに関し、クーラー冷却に打ち勝つルツボ加熱を行った場合には、ホットゾーンの冷却のための時間が更に長くなってしまうことになる。
【0011】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、単結晶引上げ中インゴットを冷却するためのクーラーを備える単結晶インゴット製造装置において、ルツボを余分に加熱して温度を上げることなしにテール部を形成することができる装置及び方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題に鑑みて本発明者らが鋭意研究を行った結果、単結晶インゴット製造装置に備えられているクーラーを、単結晶インゴットの製造工程に応じて適切な箇所に適宜移動させることにより消費電力量の低減及び製造時間の短縮を図ればよいということを見出し、本発明を完成するに至った。
また、消費電力量の低減は主にテール形成時にクーラーを固液界面から遠ざけることによって達成されるが、その際には、単結晶温度の再上昇に起因する結晶欠陥の不具合発生をも考慮すると好適であるということも見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
より具体的には、本発明は、以下のような装置及び方法を提供する。
【0014】
(1) 原料融液から引き上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)の所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置を制御する方法であって、前記単結晶引き上げインゴットのテール部を形成する際に、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけることにより単結晶インゴット製造装置の電力消費量を低減する方法。
【0015】
このようにすることによって、テール部形成の際に、クーラー冷却に打ち勝つルツボ加熱を行う必要が無くなるので、電力消費の低減が実現されることになる。
【0016】
(2) 加熱されたルツボ内の原料融液から単結晶インゴットの引き上げを行うチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、引き上げ中の単結晶インゴットの所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるCZ法単結晶インゴット製造装置を制御する方法であって、前記単結晶インゴットを前記原料融液から引き上げた後に、前記クーラーと加熱が終了したルツボとを近づけることにより単結晶インゴットの製造時間を短縮する方法。
【0017】
ここで、「クーラーと加熱が終了したルツボとを近づける」ということは、CZ法単結晶インゴット製造装置の熱源であるヒータに近づき、冷却を行うということを意味する。また、「クーラーと加熱が終了したルツボとを近づける」ことは、ルツボをクーラーに向かって上昇させたり、クーラーをルツボに向かって下降させたり、或いはこれらの動作を組み合わせたりすることによって実施することができる。
【0018】
(3) 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)の所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、前記単結晶引き上げインゴットのテール部を形成する際に、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけるために前記クーラーが上昇することを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0019】
(4) 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴットの所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、前記単結晶インゴットを前記原料融液から引き上げた後に、加熱が終了したルツボを冷却するためにクーラーが下降することを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0020】
(5) 前記ルツボ内にまでクーラーが下降することを特徴とする上記記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0021】
(6) 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴットの所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、前記単結晶インゴットを前記原料融液から引き上げた後に、前記クーラーと加熱が終了したルツボとを近づけることによって当該ルツボの冷却を行うために当該ルツボを上昇させることを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0022】
(7) 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)の所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、前記単結晶引き上げインゴットのテール部を形成する際に、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけるために前記クーラーが上昇すると共に、前記単結晶インゴットを前記原料融液から引き上げた後に、加熱が終了したルツボを冷却するためにクーラーが下降することを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0023】
(8) 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)の所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置を用いて単結晶インゴットを製造する方法において、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーの間の距離を変化させることにより前記単結晶引き上げインゴットの径の大きさを調整する方法。
【0024】
即ち、クーラーは、単結晶引き上げインゴットの所定箇所の引き上げ方向における温度勾配の調整に大きく貢献するのみならず、前記固液界面における単結晶引き上げインゴットの状態に大きな影響を与える。ここで、上記方法において、前記クーラーと前記固液界面との間隔を小さくすれば、前記固液界面における状態が固化のほうに振れ、引き上げられるインゴットの径が大きくなる。この一方で、前記クーラーと前記固液界面との間隔を大きくすれば、前記固液界面における状態が液化のほうに振れ、引き上げられるインゴットの径が小さくなる。
【0025】
[単結晶温度の再上昇に起因する結晶欠陥の発生の防止]
また本発明は、テール形成時にクーラーを固液界面から遠ざける際の、単結晶温度の再上昇に起因する結晶欠陥の不具合発生をも考慮している。即ち本発明において、消費電力量の低減だけにとらわれてクーラーを直ぐに遠ざけてしまうと、クーラーによる結晶冷却効果が急激に低減され、欠陥形成温度以上にある高温部分が欠陥形成領域を通過する際の結晶冷却速度が低下してしまい、これに伴って結晶欠陥(Grown-in欠陥)の密度やサイズが意図したものと異なってしまい(具体的には、密度減・サイズ大となってしまう)、該部分が製品対象領域から外れてしまうというような不具合がある(これは、クーラーによる温度制御が急激に外されることに起因する一種の暴走現象とも言える)。
【0026】
また、クーラーを直ぐに遠ざけてしまうと、クーラーによる冷却効果が除かれてしまうことによって、一旦欠陥形成温度領域を通過した部分の温度が上昇して再び欠陥形成温度となり、微細であった欠陥(Grown-in欠陥)が成長してしまうという不具合(リバウンド現象)によっても、製品対象領域が減少してしまう。
【0027】
このようなこと(暴走現象やリバウンド現象)を回避するためには、電力消費量の低減を図る一方で、単結晶引き上げインゴットの製品対象領域の末端が欠陥形成温度領域を脱するまで冷却されてからクーラーの上昇等を行う必要があることを本発明者らは見出したのである。
【0028】
ところが、クーラー上昇等のタイミングを遅延させることによって製品対象領域の減少を回避することはできるものの、その一方では、クーラー上昇等を遅延させた分だけ消費電力が増大してしまうこととなるので、最終的なウエハを得る際のコストの算出等をし、その最適化を図ろうとするする場合には、クーラー上昇等の遅延に基づいて生じる消費電力増大によるロスと製品対象領域の拡大によるメリットの間の調整を図る必要がある。
【0029】
このようなことから本発明は、より具体的には以下のようなものも提供することになる。
【0030】
(9) (1)記載の方法において、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけるにあたって、当該遠ざけるタイミングを遅らせることにより、引上げられる単結晶インゴットの製品対象領域を多くする方法。
【0031】
(10) (9)記載の方法において、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけることによる電力消費量の節約量と、当該遠ざけるタイミングを遅らせることによる製品対象領域の増分と、の兼ね合いを考慮してクーラー上昇のタイミングを調整することによって、ウエハ生産経済の最適化を図る方法。
【0032】
(11) 請求項3記載の装置において、前記単結晶引き上げインゴットの製品対象領域の末端が欠陥形成温度領域を脱するまで冷却されてから、前記クーラーが上昇することを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
なお、本発明の実施態様としては、以下のようなものが挙げられる。
【0033】
(12) シリコン単結晶インゴット製造装置である(11)記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0034】
(13) (3)から(7)または(11)記載の装置において、クーラーの昇降速度が可変であることを特徴とするCZ法単結晶引上げ装置。
【0035】
なお、前記単結晶引き上げインゴットの製品対象領域の末端が欠陥形成温度領域を脱するまでの冷却は、るつぼの下降によっても行えるため、以下のような実施態様も考えられる。なお、るつぼの下降は、テール切れが生じない程度の速度(例えば、1mm/min程度以下)で行う。
【0036】
(14) (3)または(11)記載の装置において、前記単結晶引き上げインゴットの製品対象領域の末端が欠陥形成温度領域を脱するまでの冷却を行うにあたり、前記るつぼが下降する機構を備えていることを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0037】
[単結晶インゴット製造装置の動作]
本発明に係る単結晶インゴット製造装置においては、その一つの態様として、単結晶引き上げインゴットのテール部を形成する際に、単結晶引き上げインゴットの径が所望の割合で減少しているかどうかを監視して、前記クーラーと原料融液の表面との距離を変化させることにより、単結晶引き上げインゴットの径の漸減を得るように動作する。
【0038】
このための制御は、いわゆるフィードバック制御により行うのが一般的である。より具体的には、実際の径の大きさを測定し、想定した径の大きさと測定値とを比較して、もしそれらが異なっていれば、引き上げ条件を変化させて所望の想定径が得られるように誘導(自動制御)するように構築をすることができる。従って、テール部を形成するときも、上記操作をフィードバック系を採用して行うことにより、所望の長さと角度を有するテール部を形成することが可能になる。
【0039】
前記上昇したクーラーは、前記単結晶引き上げインゴットの引上げ終了後には、前記所定位置またはより下方に再び下降してホットゾーンを冷却するように自動制御され、このようにテール部作成中に上昇させたクーラーを引き上げ終了後に炉の下部に降ろすことにより、ホットゾーンを強制的に冷却することが可能になる。
【0040】
[用語の定義等]
本発明に係る方法及び装置は、引き上げられる単結晶インゴットの種類に影響されるファクターが無く、CZ法一般に適用できる方法であると考えられるので、引き上げられる単結晶インゴットがシリコン単結晶インゴットである場合に限られない。
【0041】
本明細書において、温度勾配とは、ルツボから引き上げ中の単結晶インゴットの縦軸における温度変化の度合いを意味する。ここで、温度勾配が高い(または大である)とは、温度の変化が急峻であることを意味し、温度勾配が低い(または小である)とは、温度の変化がなだらかであることを意味する。
【0042】
また、本明細書において、ホットゾーンとは、単結晶インゴット製造装置の炉内においてヒーターによって加熱される部分(主に、熱遮蔽体より下の区画)を意味する。
【0043】
「欠陥形成温度領域」というのは、そこにおける軸方向の温度勾配(℃/mm)がインゴット中の成長時導入欠陥(Grown-in欠陥)、特にボイド状欠陥の形成に特に関係していると考えられる温度領域であって、引き上げられているシリコン単結晶インゴットの1120℃近傍の温度領域(大体1080℃〜1150℃の温度領域)のことをいう。
【0044】
【発明を実施するための形態】
図1は本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置の好適な実施形態を示す簡略縦断面図である。以下、図1を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0045】
[全体構成]
本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置は、通常のCZ法シリコン単結晶インゴット製造装置と同様に、密閉容器たるチャンバー21内に、シリコン融液22の製造・貯蔵のためのルツボ23と、このルツボ23を加熱するためのヒータ24と、を備えている。そして、この他にも適宜、通常のCZ法シリコン単結晶インゴット製造装置と同様に、ヒータ24に電力を供給する電極、ルツボ23を支持するルツボ受け、ルツボ23を回転させるペディスタル、ルツボを昇降させるルツボ昇降装置、断熱材、メルトレシーブ、内筒などが備え付けられるが、図面の簡略化のために図示しない。また、この装置には、シリコン融液22及びヒータ24からシリコンインゴット27への熱の輻射を遮蔽するための熱遮蔽体28と、この熱遮蔽体28の内側に配置されたクーラー19と、が備え付けられている。
【0046】
更に、本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置は、特に図示していないが、この種のCZ法シリコン単結晶インゴット製造装置に通常装備される不活性ガスの導入・排気システムを備えている。そして、このようなシステム下にあって、熱遮蔽体28は不活性ガスの流通路を調整する働きも兼ね備えている。
【0047】
[クーラー]
本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置において特徴的なことは、熱遮蔽体28の内側に、その中を冷却水が流通する配管で構成されたクーラー19が昇降自在に取り付けられていることである。本実施例においては、クーラー19は、引き上げ中の単結晶インゴットを取り巻く円筒部に螺旋状の冷却水配管20を内蔵し、チャンバー21の外側に設けられたクーラー昇降装置(図示せず)により、インゴットの軸方向に沿って昇降させることができる(特願平9−275097号参照)。このような昇降装置を実現するための機械的手段は例えばボールネジとロッドであるが、これに限定されるものではない。
【0048】
配管で構成されているクーラー19の中には冷却水が流通されるが、冷却水は、供給管(図示せず)を介して供給される。この供給管を含む給排管をチャンバー21内に貫入する個所には、蛇腹部材29が取り付けられており、これによって気密とフレキシビリティが保たれるようにされている。直胴部の形成中には、結晶欠陥形成に深く関係する所定箇所の温度勾配を適正に調整するために、クーラー19を同一の場所に固定しておく。
【0049】
[テール部の形成]
次に、図2を参照しながら、本発明に係る単結晶インゴット製造装置を用いたテール部の形成工程について説明する。図面の簡略化のために、本発明の説明に直接関係ない部材については図示を省略する。
【0050】
上述したように、クーラー19は直胴部形成中には、単結晶引き上げインゴットの所定の箇所に所望の温度勾配を与えるような位置(図中のA)に固定されている。そして、テール部の形成工程に移行するとき、クーラー19をBの位置まで引き上げる。これにより、クーラー19と融液表面との距離が広がり、その結果、引き上げられるインゴットの径が徐々に絞り込まれる。
【0051】
ここで、クーラー19を位置Bまで引き上げる際には、一気に引き上げるのではなく、徐々に引き上げるようにすることが好ましい。これは、融液表面からクーラー19までの距離を急激に広げると、直胴部の熱履歴が変わり、酸素の異常析出部が2カ所にできるなどの問題が生じてしまうためである。
【0052】
なお、上記工程は、オペレータが直視しながら装置を操作することによっても実行可能であるが、通常は自動制御の方法によって行う。
【0053】
[テール部形成の動作フロー]
図3は、本発明に適用可能なフィードバック自動制御のプロセスを、流れ図で示したものである。以下、図3を参照しながら制御の流れについて説明する。
【0054】
まず、テール部の形成を開始(S41)すると、クーラー昇降機構を作動させ、所定量だけクーラー19を上昇させる(S42)。つぎに、インゴットの結晶径が所望の大きさであるかどうかを比較する(S43)。比較の結果、所望の結晶径が得られている場合には、そのままその位置でクーラー19を保持する(S44)。しかしながら、もし所望の結晶径が得られていない場合には、実際に検出された結晶径が所望の結晶径よりも大きいか小さいかを判定する(S45)。この結果、実際の結晶径が所望の値よりも大きい場合には、プロセスS42へ戻ってさらにクーラー19を上昇させ、その後は同じプロセスを繰り返す。
【0055】
一方、実際に検出された結晶径が所望の値よりも小さい場合には、必要な量だけクーラー19を下降させる(S46)。その後、制御プロセスはS43へ戻り、実際の結晶径と所望の結晶径とが比較される。
【0056】
上記の制御プロセスを繰り返すことにより、所与の条件に合った結晶インゴットのテール部を形成することができるようになる。上記実施形態においては、クーラー19を昇降装置によって昇降させているが、融液表面とクーラー19の距離を広げるための他の方法、すなわちルツボ23を昇降させてもよく、またクーラー19の昇降とルツボの昇降とを組み合わせて行ってもよい。ここで、ルツボ23は図示しないルツボ昇降装置により昇降させられているので、このルツボ昇降装置を操作することにより、ルツボ23の上げ下げを自在に行うことができる。図示しない昇降装置の操作は、オペレータが行ってもよく、上記したようなフィードバック自動制御方法において行うようにしてもよい。これらのことは、クーラー19の昇降とルツボ23の昇降とを組み合わせたケースにおいても同様である。
【0057】
[結果]
ここで、単結晶インゴットと原料融液との固液界面からのクーラー19の遠ざけを、1)クーラー昇降装置によりクーラー19を上昇させる、2)ルツボ昇降装置によりルツボ23を下降させる、3)上記1)及び2)の両方を行う、という方法によって行った場合の結果を図4及び表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
図4より、本発明に係る方法を実行した場合には、従来と比較して、電力消費量を著しく低減することができるということが分かる。また、表1より、本発明に係る方法を適用した場合には、テール部に生じる有転位本数を低減することができるため、単結晶化率が向上することが分かる。同時に、電力量の低減に伴って過熱が避けられるがゆえに黒鉛ルツボに与える負荷が少なくて済むので、同一本数の単結晶を引き上げた場合に、使用される黒鉛ルツボの数が少なくて済み、経済的であるということも分かる。
【0060】
[クーラーの上昇タイミングの遅延]
前述した製品対象領域の減少という不具合を回避するために、この実施の形態においては、単結晶引き上げインゴットの製品対象領域の末端がCZ炉内で再び欠陥形成温度にまで上昇する可能性がなくなるまで冷却されてからクーラー19の上昇等を行う。これについて以下に詳細に説明をする。
【0061】
まず、図6は、本発明の原理を説明するための図であり、図6(A)は、融液面からの距離に対する結晶温度の関係を示すグラフであり、クーラーが設置されている場合における距離と結晶温度の関係を示すグラフである。また、図6(B)は図6(A)の補足説明をするための図であり、他の図面と同様の構成要素には同一符号を付している。
【0062】
この図6(A)において、欠陥形成温度領域(引き上げられているシリコン単結晶インゴットの1120℃近傍の温度領域(大体1080℃〜1150℃の温度領域))が示されている。この図6(A)に示されるように、欠陥形成温度領域に相当する高さ(図6(B)のH)は約43mmから約60mmである。従って、製品対象領域(図6(B)の斜線部分)の末端Xの融液面からの距離hが約60mmを越えてからクーラー19の上昇を行うようにすれば、まずはクーラーによる温度制御が急激に外されることに起因して発生する欠陥形成の暴走現象(冷却速度のクーラーによる制御が外されることに起因して発生する欠陥形成温度以上の部分の欠陥形成の不具合)による製品対象領域の減少が回避され、同時に、リバウンド現象による製品対象領域の減少を回避することができるということになる。従って、この実施の形態においては、テール部分(図6(B)の網掛け部分)の形成にあたってクーラー19を上昇させて電力消費量の低減を図るにしても、想定される製品対象領域の末端Xの融液面からの距離hが60mmを越えるのを待ってから、クーラー19の上昇を行うようにしている。
【0063】
[ホットゾーンの強制冷却]
次に、単結晶インゴットの引き上げ終了後における、クーラー19を用いたホットゾーンの強制冷却について説明する。
【0064】
テール部の形成が終わると、単結晶インゴットの製造工程は完了する。ここで、本発明においては、図5に示されるように、テール部の形成終了後、引き上げられていたクーラー19を再度ルツボ23に向かって下降させ(図中のC)、ルツボ23を含むホットゾーンを強制的に冷却する。これにより、次の製造工程への移行時間を短縮することができ、全体として製造サイクルの短縮が達成される。
【0065】
ホットゾーンの炉内部品の中でもっとも高い熱を持つ部品はルツボ23であるので、クーラー19をルツボ23にできるだけ近接させて、ルツボの冷却を促進することが望ましい。ここで、熱遮蔽体28がクーラー19の下降を妨げる場合には、熱遮蔽体28を共に下降させるか、または熱遮蔽体28をクーラー19の通り道を作るように炉の外側方向に移動するような構造としてもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る単結晶インゴット製造装置、その制御方法、および単結晶インゴットの製造方法は、単結晶インゴットのテール部形成時において、安定な単結晶引き上げ、および消費電力の低減を可能にする。
【0067】
また、テール部形成時に加える熱量を少なくできるので、ルツボに代表される炉内部品への負荷を軽減でき、部品の寿命を長くすることが可能となる。
【0068】
さらに、本発明に係る単結晶インゴット製造装置およびその制御方法は、単結晶インゴット製造後におけるホットゾーンの冷却時間を短縮し、単結晶インゴット製造サイクルの短縮(効率化)を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る単結晶インゴット製造装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る単結晶インゴット製造装置の動作を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る単結晶インゴット製造装置の制御プロセスを示す流れ図である。
【図4】本発明に係る単結晶インゴット製造装置の制御方法を適用した結果を表すグラフを示す流れ図である。
【図5】ホットゾーンの強制冷却を説明するためのブロック図である。
【図6】本発明の原理を説明するための図であり、特に、図6(A)は、融液面からの距離に対する結晶温度の関係を示すグラフであり、図6(B)は図6(A)の補足説明をするための図である。
【図7】従来の単結晶インゴット製造装置を示す簡略縦断面図である。
【符号の説明】
19 クーラー
20 冷却水配管
21 チャンバー
22 原料融液
23 ルツボ
24 ヒータ
27 単結晶インゴット
28 熱遮蔽体
29 蛇腹部材
H 欠陥形成温度領域に相当する高さ
X 製品対象領域の末端
h 製品対象領域の末端の融液面からの距離
Claims (9)
- 原料融液から引き上げ中の単結晶インゴットの所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法による単結晶インゴット製造装置を制御する方法であって、
引き上げ中の前記単結晶インゴットのテール部を形成する際に、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけることにより単結晶インゴット製造装置の電力消費量を低減する方法。 - 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴットの所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法による単結晶インゴット製造装置であって、
引き上げ中の前記単結晶インゴットのテール部を形成する際に、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけるために前記クーラーが上昇することを特徴とする単結晶インゴット製造装置。 - 加熱されたルツボ内の原料融液から引き上げ中の単結晶インゴットの所定個所の冷却を行うクーラーを炉内に備えるチョクラルスキー法による単結晶インゴット製造装置であって、
引き上げ中の前記単結晶インゴットのテール部を形成する際に、前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけるために前記クーラーが上昇すると共に、前記単結晶インゴットを前記原料融液から引き上げた後に、加熱が終了した前記ルツボを冷却するために前記クーラーが下降することを特徴とする単結晶インゴット製造装置。 - 請求項1記載の方法において、
前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけるにあたって、当該クーラーを遠ざけるタイミングを遅らせることにより、引上げられる単結晶インゴットの製品対象領域を多くする方法。 - 請求項4記載の方法において、
前記単結晶インゴットと前記原料融液との固液界面から前記クーラーを遠ざけることによる電力消費量の節約量と、当該クーラーを遠ざけるタイミングを遅らせることによる製品対象領域の増分との兼ね合いを考慮して前記クーラーの上昇のタイミングを調整することによって、ウエハ生産経済の最適化を図る方法。 - 請求項2記載の装置において、
引き上げ中の前記単結晶インゴットの製品対象領域の末端が欠陥形成温度領域を脱するまで冷却されてから、前記クーラーが上昇することを特徴とする単結晶インゴット製造装置。 - シリコン単結晶インゴット製造装置である請求項6記載の単結晶インゴット製造装置。
- 請求項2、3または6に記載の単結晶インゴット製造装置において、
前記クーラーの昇降速度が可変であることを特徴とする単結晶インゴット製造装置。 - 請求項2または6に記載の単結晶インゴット製造装置において、
引き上げ中の前記単結晶インゴットの製品対象領域の末端が欠陥形成温度領域を脱するまでの冷却を行うにあたり、前記ルツボが下降する機構を備えていることを特徴とする単結晶インゴット製造装置。
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