JP4401131B2 - インクジェット記録用キャストコート紙 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録方式に好適なインクジェット記録用キャストコート紙に関する。
近年のインクジェットプリンターの目覚しい進歩や、デジタルカメラの著しい普及により、インクジェット用記録媒体に要求される品質も年々高くなってきている。特に、従来の銀塩写真に対抗する光沢を有するインクジェット用記録媒体において、この傾向が顕著である。この光沢タイプのインクジェット用記録媒体は種々の方法で製造できるが、キャストコーターを用いるキャストコート法が最もコストメリットが大きい。
キャストコート法とは、原紙上に塗工液を塗工し、この塗工層をキャストドラムで光沢仕上げする方法であり、具体的には(1)塗工層が湿潤状態にある間に鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し、乾燥するウェットキャスト法(直接法)、(2)湿潤状態の塗工層を一旦乾燥あるいは半乾燥した後に再湿潤液により膨潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するリウェット法、(3)湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)、の3種類の方法が知られている。各製造方法の原理は、湿潤状態の塗工層を鏡面仕上げの面に押し当て、塗工層表面に光沢を付与する点で同一である。
ところで、一般にインクジェット用記録媒体は、原紙上に、シリカ、アルミナなどの多孔質の顔料と結着剤とを含有するインク受理層を塗工形成し、吐出されたインクをインク受理層で吸収、定着させるようになっている。結着剤は、それぞれの目的に応じ、ポリイニルアルコール、カゼイン、でんぷん、SBR、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂などが使用される。
そして、キャストコート法によるインクジェット用記録媒体(インクジェット記録用キャストコート紙)の光沢性、インク吸収性、発色性等を改善するため、インク受理層中の成分を改良した技術が種々報告されている。例えば、キャスト塗工層(インク受理層)中に、1次粒子及び2次粒子が所定の平均粒子径を持つシリカ微細粒子、及びコロイダルシリカを含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、塗工層に所定の合成シリカと水性ウレタン樹脂とを含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−85242号公報 特開平9−156210号公報
しかしながら、上記した各技術の場合、高光沢な記録媒体が得られるものの、印字ムラ、特にシアン色の印字ムラが悪いという問題がある。ここでいう印字ムラとは、インクジェット記録方式により、ベタ部を出力した際に発生する濃淡ムラのことをいう。
従って、本発明は光沢感に優れ、印字ムラ、特にシアンの印字ムラがないインクジェット記録用キャストコート紙を提供することを目的とする。
本発明者等の調査の結果、キャストコート法で設けた塗工層の表面には亀裂が発生すること、また、この亀裂中にインクが選択的に吸収され、亀裂部分と亀裂のない部分との間に濃度差が生じ、結果として印字ムラが発生していることを突きとめた。
そこで、種々検討を行った結果、インク受理層の結着剤として以下の樹脂エマルジョンを用い、顔料として以下のコロイダルシリカを用いることで上記問題点を解決することが可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のインクジェット記録用キャストコート紙は、基紙の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤を含む塗工液を用いたキャストコート法によりインク受理層を設けたインクジェット記録用キャストコート紙であって、前記結着剤は、前記塗工液に分散した状態でエマルジョン粒子の平均粒子径が700nm以下のウレタン樹脂エマルジョンを含有し、かつ、前記顔料はBET比表面積200〜600m /gの合成非晶質シリカ:50質量%以上と、前記塗工液に分散した状態で一次粒子径20〜50nmの球状コロイダルシリカが複数個房状に凝集して二次粒子径200〜400nm(但し、200nmを除く)となり、環を形成しないコロイダルシリカ:5〜30質量%とから実質的になる
前記キャストコート法はゲル化キャストコート法であることが好ましい。
本発明によれば、光沢感、印字濃度、インク吸収性に優れ、印字ムラ(特にシアン色)がないインクジェット記録用キャストコート紙を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明のインクジェット記録用キャストコート紙は、基紙の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤を含む塗工液を用いたキャストコート法によりインク受理層を設けたものである。
(基紙)
本発明に使用される基紙としては、塗工紙、未塗工紙等の紙が用いられる。前記紙の原料パルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、脱墨パルプ等を単独または任意の割合で混合して使用することが可能である。尚、前記紙のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。また、不透明度を向上させるため、前記紙中に填料を含有させることが好ましいが、この填料は、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂微粒子等、公知の填料の中から適宜選択して使用することができる。操業性の点から、前記基紙の透気度は1000秒以下であることが好ましく、又、塗工性の点から基紙のステキヒトサイズ度は5秒以上であることが望ましい。
(インク受理層の顔料)
インク受理層用の塗工液中の顔料としては、塗工液に分散した状態で一次粒子径10〜100nmの球状コロイダルシリカが複数個房状に凝集した房状コロイダルシリカを含有したものを用いる。球状コロイダルシリカの一次粒子径が10nm未満であるとインク吸収性が低下し、100nmを超えるとインク吸収性は向上するがインク発色性が低下する。
ここで、「コロイダルシリカが複数個房状に凝集」とは、上記コロイダルシリカが分散した状態(塗工乾燥前)を観察した場合に、凝集コロイダルシリカの短手方向(凝集体の最も長い方向と垂直な方向)から見ると、実質的に少なくとも2個の球状コロイダルシリカが結合している部分があることをいう。以下、複数個房状に凝集したコロイダルシリカがを、適宜「房状コロイダルシリカ」と称する。
コロイダルシリカが房状に凝集した状態を模式的に例示したものを図1〜3に示す。図1は、符号a、bのシリカの部分で短手方向に2個の球状コロイダルシリカが結合した場合である。なお、例えば、図中の符号a、bのシリカが無い場合は、短手方向に1個のコロイダルシリカしかなく、シリカが鎖状に凝集した状態となり、本発明には含まれない。図2は、短手方向に3〜4個の球状コロイダルシリカが結合した場合であり、又、図の上から下へ向かって短手方向のシリカの結合個数が減少しており、葡萄の房のような凝集状態となっている。図3は、凝集シリカの短手方向と長手方向の長さがほぼ等しく、又、図の上から下へ向かって短手方向のシリカの結合個数がほぼ同じ(3〜4個)である。又、「実質的」とは、分散した状態のコロイダルシリカを観察した場合に、上記鎖状シリカがほとんど観察されないことを示し、又、凝集しない単体のコロイダルシリカが存在していてもよいことを示す。
上記房状コロイダルシリカを用いることで、印字ムラ(特にシアン色のムラ)が改善できる理由は明らかではないが、次のように考えられる。つまり、インク受理層をキャストコート法で形成すると表面に亀裂が発生するが、塗工液中に房状の凝集シリカが存在すると、インク受理層内の個々の亀裂の大きさ(亀裂の長さや巾)が小さくなり、一方で表面の単位面積中の亀裂の数が増える。その結果、亀裂がインク受理層表面に一様に分散した状態となり、亀裂の生じた部分と亀裂の生じない部分とでインクの濃度差が目立たなくなり、ムラが抑制されると考えられる。
又、前記塗工液に分散した状態で上記した球状コロイダルシリカの二次粒子径が50〜800nmであることが好ましい。この二次粒子径も球状コロイダルシリカの凝集状態を反映する指標であり、二次粒子径が50未満であるとインク受理層のインク吸収性が低下し、800nmを超えるとインク受理層の光沢が低下する傾向にある。なお、上記一次粒子径はBET法で、二次粒子径は動的光散乱法等で測定できる。
又、上記房状コロイダルシリカとして、一次粒子径10〜100nm(BET法粒子径)の球状コロイダルシリカをコロイダルリン酸アルミニウムで被覆接合し、これを凝集させて二次粒子径(動的光散乱法粒子径)50〜800nmとしたものを用いることが好ましい。このような凝集シリカとして、具体的には日産化学工業株式会社のスノーテックスHSシリーズ等を挙げることができる。
さらに、本発明の効果を損なわない程度に、上記房状コロイダルシリカの他、従来公知の顔料成分、具体的には水酸化アルミニウム、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等のアルミナやアルミナ水和物、合成シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛等を顔料として用いることができる。
本発明においては、インク受理層のインク吸収性を更に向上させる点で、上記房状コロイダルシリカの他、BET比表面積が200m/g以上、より好ましくは250〜450m/gの顔料成分を用いることが好ましい。BET比表面積は大きい程、インク吸収性を向上させるが、450m/gを超えるとインク受理層に大きな亀裂が発生し、印字ムラが大きくなる。このようなBET比表面積を有する顔料成分のうち、沈降法で製造された合成非晶質シリカを用いると、インク吸収性に加えて発色性も向上するので、より好ましい。
印字ムラを改善させるため、上記房状コロイダルシリカと他の顔料成分とを併用する場合、房状コロイダルシリカを好ましくは全顔料中5重量%以上、より好ましくは10重量%以上含有させる。また、インク吸収性を向上させるため、上記房状コロイダルシリカと他の顔料成分とを併用する場合、房状コロイダルシリカを好ましくは全顔料中50重量%以下、より好ましくは30重量%以下含有させる。
(インク受理層の結着剤)
インク受理層用の塗工液中の結着剤としては、塗工液に分散した状態でエマルジョン粒子の平均粒子径が700nm以下の樹脂エマルジョンを含有するものを用いる。一般に、樹脂エマルジョンはエマルジョン粒子と希薄溶液とから構成されるが、エマルジョン粒子の平均粒子径を700nm以下にすることで、インクジェットキャストコート紙の白紙光沢度や印字濃度を向上できる。また、エマルジョン粒子の平均粒子径を700nm以下とすることで、キャストコート法でインク受理層を形成する際に発生する亀裂の大きさを小さくし、亀裂の深さを浅くすることができ、結果として印字ムラ(特にシアン色)を抑制する作用をも有する。なお、上記樹脂エマルジョンは、塗工液中に分散しているが、塗工、乾燥後は顔料の結着剤となる。
上記エマルジョン粒子の粒子径は、50〜200nmとするのが好ましい。粒子径が50nm未満であるとインク受理層の層強度が低下し、擦り傷が生じ易くなる。エマルジョン粒子の平均粒径は、樹脂を構成するモノマーの構成を変えることにより調整できる。また、後述するようにエマルジョン粒子がウレタン樹脂である場合、酸価を上げると粒子径が小さくなり、酸価を下げると粒子径は大きくなるため、酸価を調整することにより粒子径を調整できる。なお、エマルジョン粒子の粒子径はBET法や動的光散乱法等で測定できる。
上記樹脂エマルジョンは、水系であることが好ましい。「水系」とは、水又は水と少量の有機溶剤からなる媒体中で、エマルジョン粒子が分散、安定化することを意味する。なお、有機溶剤を用いる場合は、有機溶剤が水に対し50重量%未満、好ましくは10重量%未満であり、かつ樹脂液の引火点が無いことが必要である。又、上記樹脂エマルジョンは結着剤として皮膜形成能を有する必要があるので、エマルジョン粒子の主成分が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
樹脂エマルジョンとしては、具体的にはスチレン−アクリル樹脂及びその誘導体、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂及びこれらの誘導体等のエマルジョンを使用できるが、インク吸収性を向上させる点から、ウレタン樹脂エマルジョンを用いることが特に好ましい。
上記ウレタン樹脂エマルジョンは、例えば適当なポリイソシアネート化合物と活性水素化合物との反応により得られる。ポリイソシアネート化合物としては脂肪族又は脂環族系のものが好適に使用でき、その種類は特に制限されるものではない。工業的に容易に入手可能なポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシルレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の、いわゆる無黄変型若しくは難黄変型のポリイソシアネート化合物が挙げられる。又、上記無黄変型若しくは難黄変型のポリイソシアネート化合物のアルキル置換体、アルコキシ置換体、及びニトロ置換体が挙げられる。さらに、上記無黄変型若しくは難黄変型のポリイソシアネート化合物と多価アルコールとの変性体や変性物として、プレポリマー型変成体、カルボジイミド変成体、ビュレット変成体、ダイマー化反応変成物、及びトリマー化反応変成物等が挙げられる。
上記ポリイソシアネート化合物と反応し得る活性水素化合物としては、例えばポリエーテルポリオール化合物が挙げられる。ポリエーテルポリオール化合物は、環状エーテル化合物の開環重合又は共重合によって得られ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコール、並びにこれらのエチレンオキサイド変性品及びプロピレンオキサイド変性品等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独又は2種類以上混合して用いてもよい。
上記ポリエーテルポリオール化合物を開環重合又は共重合によって製造する場合に使用できる開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロヘキサンジオール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールS等の芳香族ポリオール;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、イソフォロンジアミン、ノルボルネンジアミン等の活性水素化合物を挙げることができる。
上記ポリエーテルポリオール化合物を開環重合又は共重合によって製造する場合に使用できる環状エーテル化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−メチルトリメチレンオキサイド、3,3’−ジメチルトリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができる。
又、上記ポリイソシアネート化合物と反応させる際、上記ポリエーテルポリオール化合物と他の活性水素化合物とを併用することができる。このような活性水素化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロヘキサンジオール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールS等の芳香族ポリオールなどのポリオール化合物;ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、シリコンポリオール;シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、ピロメリット酸等の有機酸と前記ポリオールとの縮合反応生成物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、イソフォロンジアミン、ノルボルネンジアミン等のポリアミンを使用することが出来る。これらはそれぞれ単独又は2種類以上混合して用いてもよい。
また、上記結着剤には、上記樹脂エマルジョンに加え、本発明の効果を損なわない範囲で他の結着剤成分を併用することもできる。他の結着剤成分としては、成膜性を有する樹脂、例えば酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、尿素エマルジョン、アルキッドエマルジョン及びこれらの誘導体等が挙げられる。特に、インク受理層の形成にゲル化キャストコート法を用いる場合には、塗工液の塗工性を向上させるため、結着剤として、上記樹脂エマルジョンに加え、カゼインを配合することが好ましい。
上記樹脂エマルジョン、又は上記樹脂エマルジョンと他の結着剤成分を合わせた結着剤の配合量は、顔料100重量部に対して、5〜30重量部であることが好ましいが、必要な塗工層強度が得られる限り、特に限定されるものではない。また、上記樹脂エマルジョンと他の結着剤成分とを併用する場合、他の結着剤成分は全結着剤中30重量%以下であることが好ましく、特に20重量%以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用キャストコート紙におけるインク受理層(塗工液)は、顔料と結着剤とを含むが、これ以外の成分を含むことを排除するものではない。例えば、インク受理層は、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、顔料分散剤、離型剤、発泡剤、pH調整剤、表面サイズ剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、防腐剤、耐水化剤、染料定着剤、界面活性剤、湿潤紙力増強剤等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有することができる。これらは、例えばインク受理層中に15重量%を超えない範囲で含まれていることが好ましい。
上記した塗工液を基紙上に塗工する手段としては、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ゲートロールコーター、ショートドウェルコーター等の公知の塗工装置をオンマシン、あるいはオフマシンで使用できる。
インク受理層となる塗工液の塗工量は、基紙の表面を覆い、かつインク受理層が充分なインク吸収性が得られる範囲で任意に調整することができるが、記録濃度及びインク吸収性を両立させる観点から、片面当たり、固形分換算で5〜30g/mであることが好ましく、特に、生産性をも加味すると10〜25g/mであることが好ましい。30g/mを超えると、キャストドラム鏡面仕上げ面からの剥離性が低下しインク受理層が鏡面仕上げ面に付着するなどの問題を生じる。
本発明において、インク受理層の塗工量を多く必要とする場合には、インク受理層を多層にすることも可能である。また、支持体とインク受理層の間にインク吸収性、接着性他各種機能を有するアンダーコート層を設けても良い。さらに、インク受理層を設けた面の反対側にさらにインク吸収性、筆記性、プリンター印字適性他各種機能を有するバックコート層を設けても良い。
本発明においては、少なくとも最表層のインク受理層をキャストコート法で形成することによって光沢を付与する。なお、キャストコート法とは、塗工後の湿潤状態にある塗工面を加熱した仕上げ面に圧着して乾燥する方法である。特に、銀塩写真に匹敵する面感、光沢を付与することができる点で、最表層のインク受理層はゲル化キャストコート法で形成されていることが好ましい。
ゲル化キャストコート法(凝固法)を用いてインク受理層を形成する場合においては、前記公知の塗工装置でインク受理層用塗工液を塗工後、未乾燥のインク受理層を凝固液にてゲル化させ、加熱した仕上げ面に圧着し、乾燥する。凝固液に用いる凝固剤としては、蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸等のカルシウム、亜鉛、マグネシウム等の各種の塩が用いられる。凝固液を塗布する方法は、記録層に塗布できる限り特に制限されず公知の方法(例えばロール方式、スプレー方式、カーテン方式等)の中から適宜選択して用いることができる。
以下に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
(基紙の作製)
広葉樹クラフトパルプ(L−BKP)100部を叩解して濾水度350mlcsfとしたパルプに、炭酸カルシウム4部、カチオン化デンプン1部、ポリアクリルアミド0.3部、アルキルケテンダイマー乳化物0.5部を添加し、長網抄紙機を用いて常法により抄紙した後、前乾燥を行い、その後、燐酸エステル化デンプン5%とポリビニルアルコール0.5%とを含む液をサイズプレスで乾燥重量3.2g/mとなるように塗布した後、後乾燥及びマシンカレンダー処理を施して、坪量100g/mの基紙を得た。
顔料として合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−37B、トクヤマ社製、BET比表面積260〜320m/g)70部及び房状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスHS−M−20、日産化学工業社製、一次粒子径20〜30nm、二次粒子径150〜300nm)30部、結着剤として樹脂エマルジョン(水性ウレタン樹脂、商品名:TAP−218、荒川化学工業社製、エマルジョン粒子の平均粒子径75nm)30部とカゼイン(ALACID lactic casein(ニュージーランド産)10部の混合物、離型剤(商品名:ノプコートSYC、サンノプコ社製)5部を含有する固形分濃度30%のインク受理層用塗工液を調製した。
次に、コンマコーターを用い、目標塗工量18g/mで上記塗工液を前記基紙に塗工した後、下記の凝固液で凝固処理し、塗工層が湿潤状態にあるうちに、100℃に加熱された鏡面仕上げの金属面に圧着し、乾燥してインクジェット記録用キャスト紙を製造した。
(凝固液の調製)
凝固液として蟻酸カルシウム(朝日化学工業社製)5%、染料定着剤(商品名:ダイフィックスYK−50、大和化学社製)1%を含有した凝固液を調製した。
実施例1の樹脂エマルジョンに代えて、ウレタン樹脂(商品名:HUX−380、旭電化工業社製、エマルジョン粒子の平均粒子径100nm)を用い、これを上記カゼインと併用して結着剤としたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
実施例1の樹脂エマルジョンに代えて、アクリル樹脂(商品名:ボンロンS482、三井化学社製、エマルジョン粒子の平均粒子径150nm)を用い、これを上記カゼインと併用して結着剤としたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
実施例1の樹脂エマルジョンに代えて、スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:SN−335R、日本A&L社製、エマルジョン粒子の平均粒子径190nm)を用い、これを上記カゼインと併用して結着剤としたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
実施例1の樹脂エマルジョンに代えて、ウレタン樹脂(商品名:HUX−980、旭電化工業社製、エマルジョン粒子の平均粒子径630nm)を用い、これを上記カゼインと併用して結着剤としたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
実施例1の房状コロイダルシリカに代えて、房状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスHS−M−20H、日産化学工業社製、一次粒子径20〜30nm、二次粒子径200〜400nm)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
実施例1の房状コロイダルシリカに代えて、房状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスHS−L、日産化学工業社製、一次粒子径40〜50nm、二次粒子径200〜400nm)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
(比較例1)
実施例1の結着剤に代えて、ウレタン樹脂(商品名:UX−156、旭電化工業社製、平均粒子径1000nm)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
(比較例2)
実施例1の結着剤に代えて、ウレタン樹脂(商品名:HUX290HM 63、旭電化工業社製、平均粒子径2000nm)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
(比較例3)
実施例1の房状コロイダルシリカに代えて、球状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスN30G、日産化学工業社製、一次粒子径10〜20nm、個々のコロイダルシリカが凝集せず分散したもの)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
(比較例4)
実施例1の房状コロイダルシリカに代えて、鎖状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスUP、日産化学工業社製、一次粒子径10〜20nm、二次粒子径40〜100nm、個々のコロイダルシリカが一列に凝集して分散したもの)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
各実施例及び比較例において、顔料中の合成非晶質シリカとコロイダルシリカの配合比は70/30であり、全顔料と樹脂エマルジョンの配合比は100/30であった。
各実施例及び比較例のインクジェット記録用キャストコート紙を、以下の項目により評価した。
(評価)
(1)白紙光沢度
JIS K7105の方法に準じ、グロスメーター(商品名:GM−26PRO、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、白紙部分の20度鏡面光沢度を測定した。
(2)インクジェット記録品質評価
インクジェットプリンター(商品名:PM−970C、セイコーエプソン株式会社社製)を用いて所定のベタパターンの記録を施し、得られた印字物について、下記の評価を行った。
(2−1)印字濃度
ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタパターンの濃度を、マクベス濃度計RD915(Macbeth社製)で測定し、測定値の合計を印字濃度とした。
◎:測定値の4色合計が8.00以上
○:測定値の4色合計が7.8以上8.0未満
△:測定値の4色合計が7.6以上7.8未満
×:測定値の4色合計が7.6未満
(2−2)印字ムラ
シアンベタ印字部の印字ムラ(濃淡ムラ)を目視により下記の基準に従って評価した。
◎:印字ムラは見られず良好なレベル
○:印字ムラが若干あるが、実用上満足できるレベル
△:印字ムラがややあり、実用上やや不満足なレベル
×:印字ムラが著しく、実用できないレベル
(2−3)インク吸収性
レッド(マゼンタとイエローの混色)とグリーン(シアンとイエローの混色)の各ベタ画像が隣接するパターンの境界部における滲み(ブリード)を下記の基準に従って評価した。
○:境界部で滲みが殆ど認められない
△:境界部で滲みがやや認められる
×:境界部で滲みが著しく認められる
得られた結果を表1に示す。なお、表中の評価記号が◎、○であれば実用上問題なく使用可能であるが、△、×は実用上問題がある。

表1から明らかなように、実施例1〜7の場合、白紙光沢度、印字濃度、印字ムラ、及びインク吸収性の評価がいずれも良好であった。なお、ウレタン系樹脂エマルジョンを用いた実施例1、2、5の場合、エマルジョン粒子の平均粒子径が小さくなるほど、印字濃度が向上し、光沢度が高くなる傾向があり、エマルジョン粒子の平均粒子径を100〜150nmとすると好ましい。
一方、樹脂エマルジョン中エマルジョン粒子の平均粒子径が700nmを超えた比較例1、2の場合、白紙光沢度が35%未満に低下するとともに、印字濃度も低下した。特に、中エマルジョン粒子の平均粒子径が2000nmである比較例2の場合は、さらに印字ムラ評価も劣った。顔料として房状のコロイダルシリカを配合しなかった比較例3、4の場合、印字ムラ、インク吸収性の評価が劣り、実用に適さないものとなった。
コロイダルシリカが房状に凝集した状態を示す模式図である。 コロイダルシリカが房状に凝集した状態を示す別の模式図である。 コロイダルシリカが房状に凝集した状態を示すさらに別の模式図である。
符号の説明
a、b 球状コロイダルシリカ

Claims (2)

  1. 基紙の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤を含む塗工液を用いたキャストコート法によりインク受理層を設けたインクジェット記録用キャストコート紙であって、前記結着剤は、前記塗工液に分散した状態でエマルジョン粒子の平均粒子径が700nm以下のウレタン樹脂エマルジョンを含有し、かつ、前記顔料はBET比表面積200〜600m /gの合成非晶質シリカ:50質量%以上と、前記塗工液に分散した状態で一次粒子径20〜50nmの球状コロイダルシリカが複数個房状に凝集して二次粒子径200〜400nm(但し、200nmを除く)となり、環を形成しないコロイダルシリカ:5〜30質量%とから実質的になるインクジェット記録用キャストコート紙。
  2. 前記キャストコート法はゲル化キャストコート法である請求項1記載のインクジェット記録用キャストコート紙。
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