JP4400981B2 - 超音波嚥下物性評価システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、嚥下困難者にふさわしい食品か否かの判断の指標を与える嚥下物性評価システムに係り、特に、超音波を利用して食品の嚥下物性を評価する超音波嚥下物性評価システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
食品の物性評価法には、粘度計を用いた評価法、レオメーターを用いた評価法等が知られている。
【0003】
例えば、特開平11−75769号公報には、食品物性評価項目に「硬さ」を利用した例が記載されている。
【0004】
しかし、かかる例における評価は、口腔外での物性評価にすぎず、人が食べているときの物性評価を行っているわけではない。すなわち、このような評価方法は、食品を口腔外で測定しているため、食品単体の物性を評価しているにすぎず、嚥下時の物性評価を行なっているわけではない。
【0005】
また、人が実際に食べているときの食品物性評価法として、そしゃく筋などの筋電位の測定による評価法が一般的に知られている。
【0006】
例えば特開昭57−43730号公報及び特開平1−270865号公報には、人が実際に食べているときの食品物性を評価する方法が記載されている。
【0007】
しかし、かかる例は、そしゃく筋の筋電位を測定することにより、そしゃく時の食品物性を評価することが主目的であり、嚥下時の物性評価をしているわけではない。すなわち、上述した例では、口腔内の食感、付着性、弾力性などのそしゃく時の評価が主目的であり、人が飲み下すときの食品物性の評価が加わっていないものである。
【0008】
一方、人が実際に食品を飲み下したときの評価法として、食品の嚥下の様子をX線透視し、該透視映像をビデオカメラで収録し、嚥下機能の観察を行う評価も行なわれている。
【0009】
しかし、かかる手法は、測定者及び被検者ともに、負担が多く、手軽には行なえない難しい技術である。またこの方法では食品の嚥下時の速度などの測定は難しい。すなわち、嚥下障害が起こっている個所の特定等を行うための観察にすぎないからである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来においては、人が嚥下する時の咽頭部における食品物性そのものを評価する手法は存在しないが、今後、嚥下困難者等にふさわしい安全な嚥下障害対応食品の開発を進展させる上で、かかる評価システムの出現が望まれるところである。
【0011】
本発明の目的は、人が嚥下する時の咽頭部における食品物性を、超音波を利用して評価する超音波嚥下物性評価システムを提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために本発明は、人体咽頭部を通過する食品の運動情報を超音波によって体外より測定し当該食品の嚥下物性を評価するシステムであって、
前記人体咽頭部に当てられ、超音波を送波すると共に反射超音波を受波する超音波プローブと、
この超音波プローブを送受波駆動すると共に反射波を信号処理して前記人体咽頭部を通過する前記食品の運動情報をドプラ法により測定する本体とを具備する。
【0013】
また本発明における前記本体は、前記運動情報として前記食品の最高流速比、平均流速比及びドプラ流速スペクトル面積比のうち少なくとも一つを測定する手段を具備することができる。
【0014】
さらに本発明の前記本体は、前記運動情報として前記食品の最高流速比、平均流速比及びドプラ流速スペクトル面積比のうち少なくとも一つを測定すると共に該測定データと予め保持した基準データとを比較することにより前記食品の嚥下物性を評価する手段を具備することができる。
【0015】
またさらに本発明の前記本体は、前記超音波プローブをBモードにて送受波駆動すると共に該Bモードによる断層像情報を生成する手段を具備することができる。
【0016】
本発明は、測定時の人体の基本姿勢として、食品を飲み込むことができる姿勢に保ち、超音波プローブを、人体咽頭部つまり喉の筋肉など食品以外の動きの影響を受け難い場所に当てることが望ましい。また食品物性の評価のためのパラメータとして、食品が人体咽頭部を嚥下する際の最高流速比、平均流速比及びドプラ流速スペクトル面積比のうち少なくとも一つを測定する。
【0017】
本発明においては、従来のように食品の物性を生体外で機器分析するのと比べて、実際に食品を飲み下した時の当該食品の平均流速比、最高流速比、ドプラ流速スペクトル面積比の測定を行なうので、嚥下障害者向け食品の物性評価をより正確な指標として得ることができるものであり、また、個々の食品について、嚥下時の物性特性を評価することができる。さらに、嚥下困難者にふさわしい食品か否かの判断の指標となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る超音波嚥下物性評価システムの一実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の超音波嚥下物性評価システムを用いて、人体咽頭部を通過する食品の運動情報を超音波ドプラ法により測定し且つ評価する実施状況を示すものである。
【0020】
本システムは、人体Pの咽頭部NEに当てられ、超音波を送波すると共に反射超音波を受波する超音波プローブ10と、この超音波プローブ10を送受波駆動すると共に反射波を信号処理して前記咽頭部を通過する前記食品の運動情報をドプラ法により測定する超音波嚥下物性評価システム本体(以下本体という)100とからなる。また、本体100には、必要に応じてVTR200及びプリンタ300が接続されている。さらに、本体100には、超音波プローブ10から導出されたケーブル100Aがコネクタ等を介して接続されている。
【0021】
なお、一例として、被検者である人体Pは、椅子500に背筋を伸ばし、つまり背中、頸部、頭部を垂直に保って座っている。椅子500の近傍には、三脚400A及び延長ロッド400Bからなるプローブ支持機構400が置かれる。三脚400Aの頂部に、取付角度が任意に設定可能にして延長ロッド400Bの一端部が支持され、その他端部には、本体100から導出されたケーブル100Aの先端の超音波プローブ10が取り付けられる。
【0022】
超音波プローブ10は、微小の超音波振動子を配列したものであり、本実施形態では、医用超音波システムで用いられる、いわゆるリニアスキャンプローブを使用する。この超音波プローブ10は、その超音波送受波面が人体Pの人体咽頭部NEに当てられる。一般に、超音波減衰を少なくするために超音波プローブ10の超音波送受波面と人体咽頭部の皮膚との間にはゼリー10Aが塗られる。
【0023】
ここで超音波ドプラ法の原理図を図2に示す。図2において、例えば、食道GU内を食品である移動体MTが速度vで移動する。この食道GUに角度θで、周波数foの超音波ビームを送受すると、移動体MTの移動に基づくドプラ効果を受けて反射波は周波数fo+fdとなる。 このときのfdはドプラ偏位周波数と称され、ドプラ情報とされる。ドプラ計測装置は、ドプラ情報に基づき移動体MT等の運動情報を計算し、表示するようにしている。
【0024】
一方、咽頭部NEは、食道、気管、頸動脈が存在するが、本発明にあって超音波プローブ10で測定するドプラ情報は、専ら食道を嚥下する食品からのものを取得するものなので、超音波プローブ10からの送受波ビームと食道とが適格に位置決めされる必要がある。このため、食道と他の器官との峻別を行うために断層像の視野が広くとれるリニアスキャンプローブは好適である。発明者らは、超音波プローブ10の振動子配列方向(プローブの長手方向)が、食道の伸長方向に直交し且つビーム送受波方向が食道の伸長方向に対して20度傾くように、プローブ支持機構400を調整して超音波プローブ10を人体咽頭部NEに当てている。
【0025】
もっとも、食道の伸長方向に沿う方向に超音波ビームが送受されると大きいドプラ効果が現れることから、前述したビーム送受波方向の角度(20度)にとらわれることなく、適宜変更し得るものである。また、発明者らは、パルスドプラ法を採用し且つ断層像の視野を広くとるためにリニアスキャンプローブを用いたが、他の形式のプローブとして例えばセクタスキャンプローブや頸部形状に合致した送受波面を有するプローブ又は連続波ドプラ法が適用されるプローブを用いることができる。
【0026】
図3は、画面に現れた断層像を示しており、断層像を得るべくBモード動作させつつ超音波プローブ10を人体咽頭部NEに当てて、画面の右に頸動脈、中央に食道及び左に気管が現れるように超音波プローブ10と咽頭部NEとの位置決めを行う。
【0027】
図4は、図3にて位置決めしたときの超音波プローブ10と咽頭部NEとの位置関係を模式的に示している。
【0028】
図5は、食道と超音波プローブ10のビーム角との関係を示している。
【0029】
一方、図6に示すように、超音波プローブ10を一端に接続したケーブル100Aの他端が接続された本体100は、超音波プローブ10をドプラ駆動の一例としてパルスドプラ駆動する送信部110と、超音波プローブ10からの受信信号を受信処理する受信部120とを有する。
【0030】
また本体100は、受信部120からの受信信号に断層像を得るための処理を施すBモード処理部130と、受信部120からの受信信号に信号処理を施してドプラ評価情報を演算するドプラ評価演算部140とを有する。
【0031】
さらに本体100は、Bモード処理部130からの断層像情報とドプラ評価演算部140からのドプラ評価情報とを取り込み、標準TVスキャンに変換するDSC(デジタル・スキャン・コンバータ)150と、このDSC150の出力を表示するモニタ160とからなる。
【0032】
さらに、図7に示すように、ドプラ評価演算部140は、ドプラ計算部141、パラメータ計算部142、基準データ保持部143、比較部144からなる。
【0033】
ドプラ計算部141は、受信部120からの受信信号に高速フーリエ変換処理、自己相関処理又は相互関処理等の信号処理を施してドプラ偏位周波数をはじめとしたドプラ情報を得る。
【0034】
パラメータ計算部142は、ドプラ計算部141で計算したドプラ情報に基づき人体咽頭部を通過する食品の運動情報を示すパラメータとして、食品の最高流速比と、平均流速比と、ドプラ流速スペクトル面積比と、最高流速比と平均流速比の対比とを計算する。
【0035】
基準データ保持部143は、取得過程は後述する食品の運動情報を示すパラメータの基準データとして最高流速比の基準データ、平均流速比の基準データ、ドプラ流速スペクトル面積比の基準データ、最高流速比と平均流速比との対比の基準データを保持している。
【0036】
発明者らは、基準データ保持部143に保持される基準データを次のようにして取得した。この基準データは、食品が嚥下する際に実際に測定された運動情報と比較されて食品の嚥下物性を評価するためのデータである。発明者らは、既に医療機関等で適不適の評価が定まっている複数の食品の嚥下時の運動情報を測定し、適とされている食品と不適とされている食品との峻別を、測定した運動情報の値で境界付けすることを試みたものである。
【0037】
医療機関等で不適と評価されている食品試料としては、水やウーロン茶等の無調整液体と、砕0.8%寒天(砕0.8%の茶寒天をスプーンでクラッシュしたもの)とを使用した。
【0038】
医療機関等で適と評価されている食品試料としては、砕2.0%ゼラチンゼリー(砕2.0%の茶ゼラチンゼリーをスプーンでクラッシュしたもの)と、ヨーグルトと、そしゃく5分粥(そしゃく回数10)と、プリン(市販のカッププリンを舌で5回押し潰したもの)と、そしゃく全粥(そしゃく回数10)と、トロミ付き液体(カスタードクリーム状にしたウーロン茶)とを使用した。
【0039】
これら8種の食品を、実際に被検者に嚥下してもらい且つ本システムにより食品の運動情報を示すパラメータである最高流速比と、平均流速比と、ドプラ流速スペクトル面積比とを計算した。
【0040】
また、測定条件としては、摂取する食品は一回に飲み下す量を一定量にして飲み下すものとする。測定場所(超音波プローブの当て位置)は下咽頭部(喉頭蓋から食道部)が喉の筋肉など他の動きの影響を受け難く、測定が至便である。超音波プローブの当て方は、水平に対する角度を固定して、鎖骨のすぐ上部分が望ましい。
【0041】
このときBモードで画面上の右に頸動脈、中央に食道、左に気管がくるように、超音波プローブの向き及び位置を調整することが望ましい(図3〜図5を参照)。さらに空嚥下(何も口にしない状態での嚥下)において測定の妨害になるドプラ流速スペクトルが無いことを測定毎に確認することが望ましい。
【0042】
図8は本システムで測定される、ドプラ流速スペクトルを示しており、縦軸が速度、横軸が時間である。またスペクトルには、各速度の食品粒子数を明るさで示している。従って、図9に示すように、ドプラ情報は輝度と速度とで規定される図形でも示される。
【0043】
図10に示すように、最高流速比は、1回の嚥下における最高流速又はその指標となる速度を求め、水の値との比で表している。図10によると、医療機関等で不適と評価されている無調整液体は1.0、砕0.8%寒天は0.75であり、医療機関等で適と評価されている砕2.0%ゼラチンゼリー、ヨーグルト、そしゃく5分粥、プリン、そしゃく全粥及びトロミ付き液体は、いずれも0.75を超えない値であり、しかも0.75の食品を境に各食品の値には顕著な差があると認められた。よって、発明者らは、最高流速比が0.75を超える値の食品は、嚥下に好ましくない物性を有するものと判断した。
【0044】
図11に示すように、平均流速比は、1回の嚥下における平均流速又はその指標となる速度を求め、水の値との比で表している。図11によると、医療機関等で不適と評価されている無調整液体は1.0、砕0.8%寒天は0.75であり、医療機関等で適と評価されている砕2.0%ゼラチンゼリー、ヨーグルト、そしゃく5分粥、プリン、そしゃく全粥及びトロミ付き液体は、いずれも0.75を超えない値であり、しかも0.75の食品を境に各食品の値には顕著な差があると認められた。
【0045】
よって、発明者らは、平均流速比が0.75を超える値の食品は、嚥下に好ましくない物性を有するものと判断した。
【0046】
図12に示すように、ドプラ流速スペクトル面積比は、得られたドプラ流速スペクトルの面積をピクセル数をカウントすること等により求め、水との比で表している。図12によると、医療機関等で不適と評価されている無調整液体は1.0、砕0.8%寒天は0.95であり、医療機関等で適と評価されている砕2.0%ゼラチンゼリー、ヨーグルト、そしゃく5分粥、プリン、そしゃく全粥及びトロミ付き液体は、いずれも0.95を超えない値であり、しかも0.95の食品を境に各食品の値には顕著な差があると認められた。
【0047】
よって、発明者らは、ドプラ流速スペクトル面積比が0.95を超える値の食品は、嚥下に好ましくない物性を有するものと判断した。
【0048】
嚥下に好ましい食品の物性とは、食品が咽頭部をゆっくりまとまって通過することであり、本発明により測定されるパラメーターが、前述した値を超える値であると、嚥下に好ましくない物性を有する食品であることがわかった。
【0049】
さらに、発明者らは、各パラメータの対比を検討した。
【0050】
先ず、食品毎の最高流速比と平均流速比との対比を検討した。図13に示すように、医療機関等で不適と評価されている無調整液体及び砕0.8%寒天と、医療機関等で適と評価されている砕2.0%ゼラチンゼリー、ヨーグルト、そしゃく5分粥、プリン、そしゃく全粥及びトロミ付き液体とは、分布領域が異なると判断することができる。図示の斜線部領域に位置する食品は、嚥下物性が好ましくないと判断できる。
【0051】
次に、食品毎の平均流速比とドプラ流速スペクトル面積比との対比を検討した。図14に示すように、医療機関等で不適と評価されている無調整液体及び砕0.8%寒天と、医療機関等で適と評価されている砕2.0%ゼラチンゼリー、ヨーグルト、そしゃく5分粥、プリン、そしゃく全粥及びトロミ付き液体とは、分布領域が異なると判断することができる。図示の斜線部領域に位置する食品は、嚥下物性が好ましくないと判断できる。
【0052】
次に、食品毎の最高流速比とドプラ流速スペクトル面積比との対比を検討した。図15に示すように、医療機関等で不適と評価されている無調整液体及び砕0.8%寒天と、医療機関等で適と評価されている砕2.0%ゼラチンゼリー、ヨーグルト、そしゃく5分粥、プリン、そしゃく全粥及びトロミ付き液体とは、分布領域が異なると判断することができる。図示の斜線部領域に位置する食品は、嚥下物性が好ましくないと判断できる。
【0053】
上述し且つ図10〜図13で示した嚥下物性の判断基準であるデータが、図7に示す基準データ保持部143に予め保持されている。なお、図13〜図15に示した各パラメータの対比のうちで、基準データ保持部143には、図13に示す最高流速比と平均流速比との対比だけを基準データとして保持したが、多くの比較を行う場合には、図14及び図15に示すパラメータの対比を保持することもできる。
【0054】
次に上記のように構成された本実施形態のシステムの動作を図16を参照して説明する。図16に示すように、ステップS1として、プローブの位置決めを行う。すなわち、先に図示し且つ述べたように、超音波プローブ10と咽頭部NEとの位置関係をBモードによる断層像にて確認しながら、移動体である食品の運動情報を的確に捉えるように超音波プローブ10を咽頭部NEに当てる。
【0055】
次に、ステップS2として、被検者に実際に供試食品を嚥下をしてもらう。
【0056】
次に、ステップS3として、本システムによりドプラ情報の演算をし、ステップS4として、最高流速比、平均流速比、ドプラ流速スペクトル面積比、最高流速比と平均流速比との対比に関するパラメータを計算する。
【0057】
次に、ステップS5として、比較・評価表示を行う。
【0058】
図17は、本システムの比較・評価表示である画面表示160Aの一例を示しており、供試食品F1〜F5につき、最高流速比と、平均流速比と、ドプラ流速スペクトル面積比と、最高流速比と平均流速比との対比とを測定している。
【0059】
ここで、最大流速比については0.75を超える値、平均流速比についは0.75を超える値及びドプラ流速スペクトル面積比については0.95を超える値は嚥下に適していないとして例えば×で表示が行われる。○表示は嚥下に適していると判断された場合を示している。
【0060】
また、画面表示160Aでは、最高流速比と平均流速比との対比も行われ、上述と同様に、嚥下に適しているか否かを例えば○×で表示が行われる。
【0061】
さらに、特定の供試食品F1についてドプラ流速スペクトル等が表示される。
なお、斜線部は、測定データが基準データに適さないことを示している。
【0062】
以上のように本実施形態によれば、頸部を流れる食品を超音波パルスドプラ法により直接咽頭部を流れる食品の最高流速比、平均流速比、ドプラ流速スペクトル面積比及び最高流速比と平均流速比との対比等のパラメータを測定し、これらと基準データとを比較することにより、従来の食品を直接測定することによって判断していた嚥下物性評価に比べて、生体内での食品の物性を安全且つ正確に評価することができる。
【0063】
本実施形態の評価法を用いることにより、様々な食品が持つ物性について嚥下障害に適しているかの判断ができ、さらに嚥下障害者に安全な物性を持つ食品を提供することができ、もって、嚥下障害者が口から食べる喜びを与え、QOL(Quality Of Life:生活の質)の向上に貢献するものである。
【0064】
なお、上述した本実施形態のシステムの例では、パラメータとして、最高流速比、平均流速比、ドプラ流速スペクトル面積比、最高流速比と平均流速比との対比の4つを用いたが、これに限ることなくドプラ流速スペクトル面積比と平均流速比との対比及びドプラ流速スペクトル面積比と最高流速比との対比を用いることもできる。また、これ以外の一つ又は2以上のパラメータの組合せを用いることができる。
【0065】
また、発明者らは、嚥下の評価に用いることができると判断した6つのパラメータのうち、特に最高流速比、平均流速比、ドプラ流速スペクトル面積比については高い評価精度を得られるものと考える。
【0066】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、人体咽頭部に当てられ、超音波を送波すると共に反射超音波を受波する超音波プローブと、この超音波プローブを送受波駆動すると共に反射波を信号処理して前記人体咽頭部を通過する前記食品の運動情報をドプラ法により測定する本体とを具備したことにより、食品が嚥下する際の咽頭部における食品物性を、超音波を利用して評価する超音波嚥下物性評価システムを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波嚥下物性評価システムの一実施形態を示す概略図。
【図2】超音波ドプラ法の原理を示す図。
【図3】人体咽頭部の断層像の表示例を示す図。
【図4】本発明における人体咽頭部と超音波プローブとの関係を示す模式図。
【図5】本発明における食道と超音波ビームとの関係を示す図。
【図6】本実施形態の超音波嚥下物性評価システムの詳細なブロック図。
【図7】同実施形態におけるドプラ評価演算部の詳細なブロック図。
【図8】ドプラ情報の一波形を示す図。
【図9】ドプラ情報の一例を示す図。
【図10】各食品毎の最高流速比を示す図。
【図11】各食品毎の平均流速比を示す図。
【図12】各食品毎のドプラ流速スペクトル面積比を示す図。
【図13】各食品毎の最高流速比と平均流速比との対比を示す図。
【図14】各食品毎の平均流速比とドプラ流速スペクトル面積比との対比を示す図。
【図15】各食品毎の最高流速比とドプラ流速スペクトル面積比との対比を示す図。
【図16】本システムの動作手順を示す流れ図。
【図17】本システムの表示例を示す図。
【符号の説明】
10…超音波プローブ、10A…ゼリー、100…超音波嚥下物性評価システム本体、100A…ケーブル、110…送信部、120…受信部、130…Bモード処理部、140…ドプラ評価演算部、141…ドプラ計算部、142…パラメータ計算部、143…基準データ保持部、144…比較部、150…DSC、160…モニタ、160A…表示画面、200…VTR、300…プリンタ。
Claims (4)
- 人体咽頭部を通過する食品の運動情報を超音波によって体外より測定し当該食品の嚥下物性を評価するシステムであって、
前記人体咽頭部に当てられ、超音波を送波すると共に反射超音波を受波する超音波プローブと、
この超音波プローブを送受波駆動すると共に反射波を信号処理して前記人体咽頭部を通過する前記食品の運動情報をドプラ法により測定する本体と
を具備する超音波嚥下物性評価システム。 - 前記本体は、前記運動情報として前記食品の最高流速比、平均流速比及びドプラ流速スペクトル面積比のうち少なくとも一つを測定する手段を具備する請求項1記載の超音波嚥下物性評価システム。
- 前記本体は、前記運動情報として前記食品の最高流速比、平均流速比及びドプラ流速スペクトル面積比のうち少なくとも一つを測定すると共に該測定データと予め保持した基準データとを比較することにより前記食品の嚥下物性を評価する手段を具備する請求項1記載の超音波嚥下物性評価システム。
- 前記本体は、前記超音波プローブをBモードにて送受波駆動すると共に該Bモードによる断層像情報を生成する手段を具備する請求項1乃至3のいずれか一項記載の超音波嚥下物性評価システム。
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