JP4400859B2 - 樹脂発泡体の製造方法および該発泡体を用いた紙葉類重送防止部材 - Google Patents

樹脂発泡体の製造方法および該発泡体を用いた紙葉類重送防止部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂発泡体の製造方法および該樹脂発泡体より形成される紙葉類重送防止部材に関し、詳しくは、押出ガス発泡で樹脂発泡体を製造方法を改良して気泡径をコントロールできるようにし、該樹脂発泡体の耐摩耗性を向上させるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットプリンター、レーザープリンター、静電複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構では、トレイの上面に取り付けられ、給紙ローラとの間に紙を挟んで搬送する分離シート等の紙葉類重送防止部材が用いられている。
【0003】
上記分離シート等の紙葉類重送防止部材は摩擦係数が高いことが要求されているが、従来は分離シートに加わる負荷が低いため、紙との接触で発生する摩耗量も比較的少なく、よって、耐摩耗性はさほど要求されていなかった。
近年、低コスト化に向けて部品点数を少なくする傾向にあり、紙送り機構もより簡単にするため、一枚紙送り毎に給紙ローラが空転する機構としたものもある。この場合、分離シートに加わる負荷は空転する給紙ローラとの接触で大きくなり、高強度で耐摩耗性を有することが要求されている。
【0004】
従来、上記紙葉類重送防止部材はウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム材料より形成されている。これらのゴム材料からなる分離シートは摩擦係数が高く、耐摩耗性が優れているが、上記一枚紙送り毎に給紙ローラが空転させる場合に分離シートに加わる荷重に対しては耐摩耗性が十分ではない。かつ、これらのゴム部材からなる分離シートでは通紙時に紙と分離シートとの接触により、「鳴き」と呼ばれる不快な振動音を発生しやすい不都合がある。
【0005】
上記「鳴き」の問題に対して、ゴム材料に化学発泡剤を配合し、加硫させて発泡ゴム体を設け、空隙で鳴きを発生させる振動を吸収している紙葉類重送防止部材が提供されている。しかしながら、加硫工程が必要であるためコスト高になり、かつ、化学発泡剤を用いるために環境上の配慮が必要となる。
【0006】
上記した問題に対して、ゴム材料に化学発泡剤を配合し、加硫して発泡体を製造方法に代えて、熱可塑性樹脂に高圧ガスを注入してガス発泡させる物理的方法で発泡体を製造する方法が特開2003−127201号(特許文献1)で提案されている。この特許文献1の熱可塑性エラストマー発泡体の製造方法では、熱可塑性エラストマーに不活性ガス又は水又は化学発泡剤を混入させ、ダイス手前の圧力を10MPa以上に保持して押出し気泡させることによって、表面の凹凸を10μm以下とした熱可塑性エラストマーの発泡体を製造している。
上記ダイス手前の圧力を10MPaに保持するために、ダイスの出口部の形状は図4(A)(B)に示す形状とされている。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−127201号公報
【0008】
【発明の解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1のダイスの出口構造では、図4(A)に示す構造とした場合、出口先端1に連続する部分が直線状部分1aとなって、同一断面であるため、圧力が急激に落とされず圧力勾配が穏やかであるため、気泡が大きくなり、連続気泡が発生しやすく、気泡径を小さくすることが困難となる問題がある。よって、製造される発泡体の強度が低下する問題がある。
また、図4(B)に示す構造では、側面が一部カットされた円柱2を設け、該円柱2を回転させて断面積を小さくしているが、この部分で詰まりが発生し易い問題がある。
【0009】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、ダイス(口金)の出口構造を改良して、気泡径をコントロールすることができ、それにより、気泡径を小さくして強度および耐摩耗性を向上させ、かつ、発泡体とすることで空隙により振動音の発生を抑制できる樹脂発泡体の製造方法および該方法により製造される紙葉類重送防止部材を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、第一に、溶融温度+10℃の溶融粘度Aに対する溶融温度+60℃の溶融粘度B(B/A)が0.1以上であるエステル系熱可塑性エラストマーの混練物に化学発泡剤を配合せず、該混練物に対して炭酸ガスからなる高圧ガスを注入して口金のテーパ状出口より押し出し、該テーパ状出口のテーパ角度θを出口部分の中心軸線に対して5°≦θ≦20°の範囲として出口開口先端を最小断面積とし、該出口部分での樹脂圧を急激に低下させて、上記混練物中に分散・溶解された上記ガスが上記出口開口より押し出される際に気泡を発生させ、押出ガス発泡だけで発泡体としていることを特徴とする樹脂発泡体の製造方法を提供している。
【0011】
上記発明は、本発明者が多種の熱可塑性樹脂について、口金形状を種々変更して実験を繰り返して知見したものであり、溶融温度+10℃の溶融粘度Aに対する溶融温度+60℃の溶融粘度B(B/A)が0.1以上である熱可塑性樹脂の混練物に対して、テーパ状出口のテーパ角度θの角度を上記範囲にすることにより、口金の出口部分で樹脂圧を急激に落とすことができる。よって、圧力を速やかに開放することができるため、混練物中の上記ガスが均一でセル径の小さい気泡を発生させ、樹脂発泡体を得ることができる。
【0012】
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、溶融温度+10℃の溶融粘度Aに対する溶融温度+60℃の溶融粘度B(B/A)が0.1以上、好ましくは、0.3以上で、限りなく1に近付くことが好ましい。
即ち、溶融粘度の温度依存性が大きいと、溶融温度より高い温度に加熱されると溶融粘度が低下し、気泡が巨大化し破泡しやすくなる一方、温度を低下させると急激な粘度変化が生じるため、口金出口部分の温度変化および押出直後の温度変化で粘度硬化が急速に進み、出口開口で詰まりが発生しやすいと共に均一な発泡を実現しにくい。しかしながら、温度依存性が上記B/Aが0.1以上と低い場合には、口金出口部分および押出直後に温度低下があっても急速に硬化せず、ゆっくりと硬化が進むため、均一な気泡発生が促進される。上記した理由より、溶融粘度の温度依存性が小さくなることが望ましく、B/Aは1に限りなく近いことが好ましい。
【0013】
また、口金のテーパ状出口のテーパ角度θを出口部分の中心軸線に対して5°≦θ≦20°、好ましくは8°≦θ≦15°としている。
これは、5°より小さいと、圧力勾配が緩やかとなり樹脂圧を急激に低下させることができないため、混練物中の気泡が口金出口より押し出された時点で樹脂中に溶解したガスを均一に発生しにくいことによる。一方、20°より大きいと、急激な圧力の上昇により口金から開放後、気泡が急成長し連続発泡の状態となりやすく、かつ、押出機にも過負荷がかかることとなる。
【0014】
また、上記テーパ状出口の先端開口は、厚さ(縦寸法)Tに対する幅(横寸法)W(W/T)を30以下、好ましくは7以下とすることが好ましい。これは、W/Tが30より大きいと、幅が小さく非常に細長い開口となるため、口金出口で樹脂が詰まり易くなるからである。
また、テーパ上出口の先端開口の断面積は11mm2以下とするのが好ましく、7mm2以下とするのがより好ましい。これは11mm2より大きいと、口金出口の断面積が大きくなるためヘッド圧が十分高くならず、出口からガス抜けが生じ、高圧ガスによる発泡体の気泡が大きくなり連泡する場合もあるからである。
【0015】
上記のように、熱可塑性樹脂としてエステル系熱可塑性エラストマーを用いると共に上記高圧ガスとして炭酸ガスを用い、化学発泡剤を配合せずに、押出ガス発泡だけで発泡体としている。
上記エステル系熱可塑性エラストマーは比較的溶融粘度の温度依存性が低く、かつ、安価に入手できると共に、押し出しガス発泡した状態で弾性ゴムと同様な物性を付与することができる。特に、耐熱性と物理的強度のバランスがよいものが好適に用いられる。エステル系熱可塑性エラストマーはハードセグメント成分(ポリエステル)とソフトセグメント成分(ポリエーテル)の比率やハードセグメント成分の種類、分子量の大きさ等によって種々のグレードがあるが、溶融温度があまり低くなく、低硬度のエステル系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。具体的には、硬度90A、比重1.15、溶融温度203℃、溶融粘度2015Pa・s(102sec-1(240℃))で、上記B/Aが0.7のエステル系熱可塑性エラストマーが最も好適に用いられる。
【0016】
また、高圧ガスとして炭酸ガスを用いることにより、低コスト化を図ることができると共に、環境にも配慮したものとなるからである。ガスの圧力は2MPa以上が良く、さらには2.5MPa以上が好ましい。
【0017】
さらに、化学発泡剤を配合せずに、上記高圧ガスを注入して押出ガス発泡だけで発泡体とすると、環境に好ましくない化学発泡剤を用いないで押出ガスだけで発泡体を得ることができると共に、リサイクルする際にも気泡として高圧ガス以外のものが含まれていないため、環境に配慮したものとなる。
【0018】
上記押出ガス発泡で発生させる気泡を平均200μm以下で、かつ、発泡倍率を2倍以上とすることが好ましい。
上記発泡倍率が2倍よりも小さいと、気泡が少なく樹脂マトリックスが多いため、気泡密度が小さくなり発泡体として機能しなくなる。発泡倍率は好ましくは3倍以上である。 また、樹脂発泡体の気泡のセル径は平均200μm以下としているのは、200μmよりも大きいと、気泡同士の壁が成長段階で破壊して2以上の気泡が結合し、1つの大きな空隙となる連続気泡(連泡)となるからである。好ましくは100μm以下である。
上記200μm以下の小さいセル径し、該気泡を均一に分布させると、強度および耐磨耗性を向上させることができる
【0019】
本発明は、第二に、上記方法により製造された樹脂発泡体より形成される紙葉類重送防止部材を提供している。該紙葉類重送防止部材では、強度および耐摩耗性が向上しているため、紙送りローラの空転時に発生する摩耗量が少なく耐久性を備えたものとなり、ガス発泡により生じる気泡の空隙で「鳴き」と呼ばれる振動音の発生を抑制することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂発泡体の実施形態について説明する。
本発明の樹脂発泡体は、ポリエステルおよびポリエーテルからなるエステル系熱可塑性エラストマーに、圧力2.5MPaの二酸化炭素ガスを注入して押出ガス発泡させたものからなる。
【0021】
本発明に用いるエステル系熱可塑性エラストマーは、図1に示すTPEE−aで、B/Aが0.7で、溶融温度が200℃であり、210℃(溶融温度+10℃)の溶融粘度Aが2100Pa・s、260℃(溶融温度+60℃)の溶融粘度Bが1470Pa・sである。
図1中、TPEE−bはB/Aが0.3で、溶融温度が200℃であり、210℃(溶融温度+10℃)の溶融粘度Aが3000Pa・s、260℃(溶融温度+60℃)の溶融粘度Bが900cpsである。
TPEE−cはB/Aが0.07の本発明の範囲外のもので、溶融温度が160℃であり、170℃(溶融温度+10℃)の溶融粘度Aが3700Pa・s、220℃(溶融温度+60℃)の溶融粘度Bが260Pa・sである。
【0022】
上記エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE−a)を図2に示す押出装置で押出ガス発泡させている。
該押出装置は、スクリユー式の短軸押出機10の一端にホッパー11を備え、他端にヘッド21を介して口金12を付設している。
上記ホッパー11より押出機10の搬送空間10a内に原料(上記エステル系熱可塑性エラストマー)が投入される。搬送空間10a内にはスクリユー(図示せず)が装着され、該スクリユーの回転で投入された原料は出口10b側へと混練しながら押し出される。上記搬送空間10aの搬送路の中間位置に高圧ガス注入口10cを設け、高圧ガス安定供給装置20より所要温度に加熱した二酸化炭素ガスを混練物中に注入している。
【0023】
上記高圧ガス注入口10cの位置は、十分に混練された状態で高圧ガスが混練物に供給され、かつ、注入後に混練物中で分散すると共に口金12の出口から押し出されるまでの間で混練物の全体に渡りガスを十分に溶解させることができる中間位置としている。この位置は、高圧ガスの溶融時間をできるだけ長くするために、可塑化が可能な最大の長さの位置(図1のC4)としている。
【0024】
詳しくは、樹脂の押出ガス発泡では、ヘッド21および口金12の温度が低いほど気泡のセル径は小さく、発泡倍率も高くなることを、本発明者は実験の繰り返しで知見している。
また、一般に、樹脂温度が高ければ炭酸ガスの溶解度は低下する一方で、炭酸ガスの樹脂への拡散係数は温度上昇に応じて増加する。
これらの点から、温度および炭酸ガス投入時から口金出口で押し出されるまでの時間(押出搬送距離とスクリユーの回転速度により規定される)を制御することで、押出機10の搬送空間10a内で樹脂に供給した炭酸ガスが十分に溶解させることができ、これが均一且つ高発泡のポイントとなる。
【0025】
本実施形態では押出機10の搬送空間の各部の温度を搬送機に付設したヒータを温度制御することにより調節し、かつ、ガス注入位置から口金出口までの距離に応じてスクリユーの回転速度を調節することにより、高圧ガス注入口10cから樹脂混練物中に注入されたガスが十分に拡散され、かつ樹脂混練物中に十分に溶解されて口金出口より押し出す設定としている。
【0026】
また、口金12の出口構造は、図3(A)に示すように、出口部分のランド部12aから出口開口12bに向けて先細りするテーパ状出口12cを設け、出口開口12bを最小面積としている。上記テーパ状出口12cの内周面の角度θは出口の中心軸線に対して5°≦θ≦20°の範囲とし、本実施形態では10゜としている。
【0027】
また、最小断面積となる出口開口12bは、図3(B)に示すように、長方形状とし、該出口開口12bの幅をW、厚さをTとすると、W/Tを30以下として細長い形状とはせずに、厚さを大きくして出口で詰まりを発生させないと共に、発泡が促進できる形状としている。本実施形態ではWを7mm、Tを1mmとしW/T=7としている。この出口開口12bの断面積は製造量によっても相違するが、大きすぎるとヘッド圧力が低下する問題があるため、11mm2以下、好ましくは7mm2以下としている。
【0028】
つぎに、上記押出装置によりエステル系熱可塑性エラストマーを押出ガス発泡で発泡させて樹脂発泡体を製造する工程について説明する。
上記エステル系熱可塑性エラストマーのTPEE−Aをスクリュー式単軸押出機10のホッパー11に投入し、該押出機10を30rpmで回転して混練しながら押し出す。該押出機10の内部は2.5MPaの圧力に保持し、搬送途中で、高圧ガス安定供給装置20より温度50℃とした二酸化炭素ガスを2.5MPaの圧力で混練物中に注入する。注入したガスは混練物中に均一に分散すると共に溶解する。ガス注入後は短時間で出口側へと押し出し、出口部に付設した口金12のテーパ状出口12cで圧力を急減させ、混練物に溶かし込んだ二酸化炭素ガスを気泡化して発泡体を製造している。
なお、本実施形態では単軸押出機を用いているがこれに限定されず、2軸押出機を用いてもよい。
【0029】
上記方法で樹脂発泡体を製造すると、口金の出口開口の出口圧は7〜10MPaとなり、押出機10から押し出されると急激に圧力が減少するので、混練物に溶かし込んだ二酸化炭素ガスが気泡化し、発泡体を得ることができる。
上記方法で製造した樹脂発泡体は、発泡倍率が2倍以上(本実施形態では3.2倍)、セル径が平均200μm以下(本実施形態では平均100μm)となり、小さな気泡が均一に分散された発泡状態の良いものとなる。
【0030】
以下、本発明の樹脂発泡体の実施例1〜6および比較例1〜6について詳述する。
実施例1〜6、比較例1〜6は、表1に記載の溶融温度+10℃の溶融粘度Aに対する溶融温度+60℃の溶融粘度B(B/A)であるポリエステル、ポリエーテルのエステル系熱可塑性エラストマーa、b,cを用いている。
a:粘度比(B/A)が0.7(東洋紡績(株)製、ペルプレンP47D)
b:粘度比(B/A)が0.3(東洋紡績(株)製、ペルプレン P90BD)c:粘度比(B/A)が0.07(東洋紡績(株)製、ペルプレン P30B)
【0031】
押出機として、Φ30単軸押出機(サン・エヌ・ティ製)に用い、押出機の内部を180℃〜240℃に加熱していると共に、2MPaの圧力に保持した。上記温度は図2中の各位置C1〜C7で下記の温度に設定した。
C1−200℃、C2−220℃,C3−240℃、C4−240℃、C5−230℃,C6−230℃、C7−220℃、H(ヘッド温度)−200℃、
D(口金温度)−200℃,C3−230℃
なお、ガス投入口はC4の位置とした。
押出機出口にヘッドを介して付設した口金のテーパ状出口のテーパ角度θを表1に記載のように実施例および比較例でそれぞれ設定した。
【0032】
上記押出機のスクリユーを30rpmにて回転して、ホッパーより上記a、bあるいはcの材料を投入し、加熱しながら混練して押し出した。該押出工程の中間位置C4で、高圧ガス安定供給装置(昭和炭酸製)で50℃に加熱された2.5MPaの二酸化炭素ガスを流量50g/hで混練物中に注入した。
口金のテーパ状出口の出口圧は表1に記載の圧力に設定した。この出口圧力は口金出口付近に設置した樹脂圧力計を用いて、樹脂圧力を測定した。
【0033】
【表1】
Figure 0004400859
【0034】
上記実施例1〜6、比較例1〜6のシート状の発泡体について、後述する方法により、発泡倍率(倍)、セル径(μm)、発泡状態の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0035】
(発泡倍率の測定)
発泡後の比重と発泡前の比重を測定し、(発泡前の比重/発泡後の比重)より発泡倍率を求め、体積の増加率を測定した。
2倍以上が適正値であり、3倍以上がさらに好ましい値である。
【0036】
(セル径の測定)
得られた発泡体の断面を電子線走査顕微鏡にて観察し、断面の平均セル径を求めた。
200μm以下が適正値であり、100μm以下がさらに好ましい値である。
【0037】
(発泡状態)
得られた発泡体の上記発泡倍率および上記セル径から、発泡状態を判断した。上記発泡倍率および上記セル径の好ましい範囲のものを「良い」、適正範囲のものを「まあまあ良い」、適正範囲から少し外れるものを「やや悪い」、適正範囲から大きく外れるものを「悪い」とした。
【0038】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5はエステル系熱可塑性エラストマーを用いてB/Aを0.1以上とし、口金のテーパ状出口のテーパ角度θを5°≦θ≦20°の範囲内として押出成形しているため、ダイ出口圧が好適な高圧となり、樹脂を押し出す際に樹脂圧を急激に下げることができるので、適正な発泡状態となった。特に、実施例1〜4は出口開口の形状を幅Wと厚さTの関係W/Tを7.0とし、細長い形状とせずに正方形に近づけたため良好な発泡状態となった。
【0039】
一方、比較例1、2は、テーパ角度θを5°よりも小さく、比較例5、6はテーパ角度θを20°の範囲よりも大きくしたため、口金出口圧が好適な圧力とならなかったため、発泡倍率は低く、セル径も大きかった。
また、比較例3、4は、B/Aが0.1よりも小さかったため、口金のテーパ状出口のテーパ角度を5゜以上で20゜以下の範囲としているが、発泡倍率が低く、セル径も大きく、発泡状態が悪かった。
【0040】
上記した結果より、溶融粘度の温度依存性が低い熱可塑性樹脂に高圧ガスを注入し、一定のテーパ角度とした口金の出口から押し出すことにより、押し出される際に、均一でセル径の小さい気泡を有する樹脂発泡体を製造することができることが確認できた。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、溶融粘度の温度依存性が低いエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂に高圧ガスを注入し、口金に設けたテーパ状出口から押し出すことで、押し出される際に、均一でセル径の小さい気泡を有する樹脂発泡体を製造することができる。
上記方法によれば、化学発泡剤を用いないため、環境にもやさしく、製造コストの低減も図ることができる。
【0042】
さらに、樹脂発泡体であるため、ゴム発泡体と比較して強度および耐摩耗性に優れ、分離シート等の紙葉類の重送防止部材として成形した場合に耐久性に優れたものとなる。また、気泡の空隙部に振動音を吸収できるため、上記紙葉類重送防止部材で問題となっていた「鳴き」を低減あるいは防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いる熱可塑性エラストマーの温度と溶解粘度との相関性を示す線図である。
【図2】 本発明の製造方法に用いる押出機の概略図である。
【図3】 本発明の製造方法に用いるダイを示し、(A)は断面図、(B)は正面図である。
【図4】 (A)(B)は従来例の口金の出口形状を示す断面図である。
【符号の説明】
10 押出機
11 ホッパー
12 口金
12a ランド部
12b 出口開口
12c テーパ状出口
20 高圧ガス安定供給装置
21 ヘッド

Claims (4)

  1. 溶融温度+10℃の溶融粘度Aに対する溶融温度+60℃の溶融粘度B(B/A)が0.1以上であるエステル系熱可塑性エラストマーの混練物に化学発泡剤を配合せず、該混練物に対して炭酸ガスからなる高圧ガスを注入して口金のテーパ状出口より押し出し、該テーパ状出口のテーパ角度θを出口部分の中心軸線に対して5°≦θ≦20°の範囲として出口開口先端を最小断面積とし、該出口部分での樹脂圧を急激に低下させて、上記混練物中に分散・溶解された上記ガスが上記出口開口より押し出される際に気泡を発生させ、押出ガス発泡だけで発泡体としていることを特徴とする樹脂発泡体の製造方法。
  2. 上記テーパ状出口の先端開口は、厚さTに対する幅W(W/T)が30以下としている請求項1に記載の樹脂発泡体の製造方法。
  3. 上記押出ガス発泡で発生させる気泡を平均200μm以下で、かつ、発泡倍率を2倍以上としている請求項1または請求項2に記載の樹脂発泡体の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法で製造された樹脂発泡体より形成される紙葉類重送防止部材。
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