JP4400190B2 - 負極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
また、上記非水系のリチウム二次電池は、その製造工程において徹底したドライ環境を維持する必要があるため、製造コストが高くなってしまうおそれがある。そのため、特に電気自動車用の二次電池をにらんだ将来の量産化に対応しにくく、価格的にもきわめて高価になってしまうという問題があった。
したがって、水系リチウム二次電池においては、水溶液中で安定で、かつ水の電気分解により酸素や水素を発生しない電位範囲において、可逆的に大量のリチウムを吸蔵及び脱離できる活物質、つまり可逆容量の大きい活物質を用いることが望まれている。
また、水系リチウム二次電池は非水系のリチウム二次電池に比べて電位幅が少ないため、少しでもエネルギー密度を高くするため、活物質としては平坦な電位曲線をもつものが望まれている。
上記負極活物質は、平均粒径が5μm以下の微粒子よりなる、スピネル構造のLiV2O4を含有することを特徴とする負極活物質にある。
このように、上記第1の参考発明によれば高いエネルギー密度を発揮でき、可逆的に大きな放電容量を取り出すことができる負極活物質を提供することができる。
焼成後にLiV2O4となるような化学量論比にて原料粉末を混合し、原料混合物を作製する混合工程と、
上記原料混合物を温度700℃以下で焼成する焼成工程とを有し、
上記焼成工程は、上記原料混合物を焼成して3価のバナジウム化合物を作製する第一焼成工程と、酸素分圧が1.0×10 -3 atm以下の酸素含有ガス中で上記バナジウム化合物を焼成してLiV 2 O 4 を生成する第二焼成工程とを有することを特徴とする負極活物質の製造方法にある(請求項2)。
このように700℃以下という低温にて焼成を行うことにより、上記焼成工程におけるLiV2O4の粒成長を抑制することができる。その結果、LiV2O4よりなる上記負極活物質の微粒子を、平均粒径が5μm以下という非常に小さなものにすることができる。そして、このようにして得られる上記負極活物質は、電位曲線の平坦性に優れ、高いエネルギー密度を発揮できると共に、可逆的に高い充放電容量を発揮できるものとなる。即ち、水系リチウム二次電池の負極活物質として好適なものとなる。
上記負極活物質として、上記第1の発明の負極活物質を用いていることを特徴とする水系リチウムイオン二次電池にある。
また、上記負極活物質中のLiV2O4は、Li及びVを金属元素の主成分とするスピネル構造であれば、他の元素によって陽イオン置換や陰イオン置換されたものであってもよい。
このような原料粉末としては、例えばLiを含有する化合物と、Vを含有する化合物とを組み合わせて用いることができる。Liを含有する化合物としては、例えばLi2CO3、LiCl、LiNO3、Li2O、及びLi2SO4等を用いることができる。また、Vを含有する化合物としては、例えばV2O5、V2O3、及びV2O4等を用いることができる。
焼成時の温度が700℃を越える場合には、上記焼成時にLiV2O4よりなる粒子が粒成長して、その粒径が5μmを越えて大きくなるおそれがある。その結果、上記負極活物質における可逆的に取り出すことのできる放電容量が低下するおそれがある。
この場合には、温度700℃という低温の焼成にて、LiV2O4よりなる、平均粒径の小さい上記負極活物質を容易に作製することができる。
酸素分圧が1.0×10-3atm(約1.0×102Pa)を越える場合には、3価のバナジウム化合物が酸化され過ぎて、目的物質であるLiV2O4を充分に得ることができないおそれがある。
上記リチウム塩としては、例えばLiNO3、LiOH、LiCl、及びLi2SO4等がある。これらのリチウム塩は、それぞれを単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
上記水溶液電解液のpHが6未満の場合には、上記負極活物質が不安定となり、電池の容量やサイクル特性が低下するおそれがある。
このような正極活物質としては、オリビン構造のLiFePO4、LiMn2O4、LiMnO2、LiMnNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、及びLiNiO2等がある。なお、上記正極活物質中の遷移金属元素の一部を他の元素で置換してもよい。
導電材は、正極の電気伝導性を確保するためのものであり、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉末状体を用いることができる。また、導電材としては、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの活物質、導電材、結着剤を分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
次に、本発明の実施例について、図1を用いて説明する。
本例においては、電解液として水溶液電解液を含有する水系リチウム二次電池用の負極活物質を作製し、これを用いて水系のリチウム二次電池を作製する。本例の負極活物質は、平均粒径が5μm以下の微粒子よりなる、スピネル構造のLiV2O4を含有する。
本例の負極活物質の製造方法は、混合工程と焼成工程とを有する。混合工程においては、焼成後にLiV2O4となるように原料粉末を混合し、原料混合物を作製する。また、焼成工程においては、上記原料混合物を温度700℃以下で焼成する。また、本例の焼成工程は、第一焼成工程と第二焼成工程とからなる。第一焼成工程においては、上記原料混合物を焼成して3価のバナジウム化合物を作製する。また、第二焼成工程においては、酸素分圧が1.0×10-3atm以下の酸素含有ガス中で上記バナジウム化合物を焼成してLiV2O4を生成する。
次いで、この混合物をプレス成形し、水素気流中で700℃で3時間焼成し、3価のバナジウム化合物として、V2O3とLi2VO2との混合物を作製した(第一焼成工程)。この混合物を自動乳鉢で20分間混合し、その後、酸素分圧を1.0×10-3atmに調整した、炭酸ガスと酸素とよりなる酸素含有ガス中で、温度650℃で48時間焼成した(第二焼成工程)。さらに自動乳鉢で20分間混合し、上記第二焼成工程をもう一度繰り返し行って、微粒子よりなる、スピネル構造のLiV2O4を得た。これを試料Eとした。
まず、試料C1について説明する。この試料C1は、上記試料Eよりも高い温度で焼成することにより作製したLiV2O4よりなる。
試料C2は、試料Eの作製に用いた五酸化バナジウムの代わりに三酸化バナジウム(V2O3)を用い、上記試料E及び試料C1よりもさらに高い温度で焼成して作製したLiV2O4よりなる。
試料C3は、上記試料E、試料C1及びC2とは異なり、LiV3O8よりなるものである。
試料C3の作製方法としては、まず、炭酸リチウム(Li2CO3)と、五酸化バナジウム(V2O5)とを目的物質であるLiV3O8となるような化学量論比にしたがって自動乳鉢で20分間混合した。この混合物をアルゴン雰囲気流中で700℃まで昇温し、12時間保持した。その後炉冷し、LiV3O8を得た。これを試料C3とした。試料C3におけるLiV3O8の合成は、XRDにより確認した。
次に、実施例1にて作製した4種類の負極活物質(試料E、及び試料C1〜試料C3)のうち、負極活物質としてスピネル構造のLiV2O4よりなる3種類の負極活物質(試料E、試料C1、及び試料C2)について、可逆的に利用できる容量を見積もるために、単極でのサイクリックボルタモグラム測定を行った。
具体的には、まず試料Eを70wt%、導電材としてのカーボンを25wt%、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5wt%混合して混合粉末を作製した。次いで、この混合粉末10mgをSUSメッシュ上に約0.6ton/cm2で圧着して試料極を作製した。また、同様にして、上記試料C1及び試料C2を試料Eの代わりにそれぞれ用いて試料極を作製した。
一方、700℃を越える高い温度で作製した負極活物質(試料C1及び試料C2)においては、XRD解析においては試料Eと同様のほぼ単相のLiV2O4が生成しているにもかかわらず、可逆容量が試料Eの半分未満で非常に小さかった。この原因は明確ではないが、試料C1及び試料C2においては、その製造時に700℃を越える高温で合成したことによって、表1に示すごとくその平均粒径が大きくなり、すべてのLiを可逆的に取り出すことが困難になったからと考えられる。また、高温での焼成が負極活物質の表面活性を低下させたためであると考えられる。
次に、上記試料E、試料C1〜試料C3をそれぞれ負極活物質として用いて4種類の水系リチウム二次電池(電池E、電池C1〜電池C3)を作製する。
図2に示すごとく、本例の水系リチウム二次電池1は、正極2と負極3と、水溶液電解液とを有する。正極2は、正極活物質としてLiFePO4を含有する。また、負極3は、負極活物質として、上記にて作製した試料E、試料C1〜試料C3のいずれかを含有する。また水溶液電解液は、リチウム塩としてのLiNO3を水に溶解してなる。
まず、負極活物質としての試料Eを70重量部、導電材としてのカーボンブラックを25重量部、結着剤としてのポリエチレンテレフタレートを5重量部混合し、負極合材を作製した。この負極合材15mgを予め電池ケース11の内側に溶接したSUSメッシュ上に約0.6ton/cm2で圧着して負極3を形成した。
即ち、電池C1は、その負極に負極活物質として上記試料C1を、また電池C2は、負極活物質として上記試料C2を、また電池C3は、負極活物質として上記試料C3をそれぞれ含有するものである。なお、その他の構成は、上記電池Eと同様である。
具体的には、まず、上記電池E及び電池C3とをそれぞれ定電流方式で充電電流密度1mA/cm2にて1.5Vまで充電し、1分間放置した後、放電電流密度1mA/cm2で0.05Vまで放電させた(充放電試験)。このとき、充放電は、温度20℃でおこなった。
放電時の、各電池(電池E及び電池C3)の放電容量(mAh/g)及び電位(V)の関係を放電曲線として図3に示す。なお、図3において、横軸は、正極活物質1gあたりの容量に換算した放電容量を示し、縦軸は、各電池の電位を示す。
電池Eは、負極活物質として上記試料Eを含有している点を除いては、上記電池C1〜電池C3と同様の構成を有している。したがって、電池Eが優れた放電容量及び電位の平坦性を示すことができるのは、電池Eがその負極活物質として、上記試料E、即ち平均粒径が5μm以下の微粒子よりなる、スピネル構造のLiV2O4を用いているからと考えられる。
2 正極
3 負極
4 セパレータ
Claims (1)
- 電解液として水溶液電解液を含有する水系リチウム二次電池に用いる負極活物質を製造する方法であって、
焼成後にLiV 2 O 4 となるような化学量論比にて原料粉末を混合し、原料混合物を作製する混合工程と、
上記原料混合物を温度700℃以下で焼成する焼成工程とを有し、
上記焼成工程は、上記原料混合物を焼成して3価のバナジウム化合物を作製する第一焼成工程と、酸素分圧が1.0×10 -3 atm以下の酸素含有ガス中で上記バナジウム化合物を焼成してLiV 2 O 4 を生成する第二焼成工程とを有することを特徴とする負極活物質の製造方法。
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