JP4400044B2 - アルカリ蓄電池用ニッケル正極の製造方法およびアルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池等に用いられる焼結式ニッケル正極の製造方法に関し、詳しくはニッケル焼結基板の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に急速充放電用アルカリ蓄電池の正極板には、内部抵抗が小さくサイクル特性に優れた焼結式ニッケル電極が用いられている。この焼結式ニッケル電極の製造方法としては、活物質の保持体としての多孔性ニッケル焼結基板を硝酸ニッケルなどの酸性ニッケル塩水溶液に浸漬・乾燥、ついでアルカリ水溶液中に浸漬してニッケル塩を水酸化ニッケル(活物質)に転換するという活物質の充填操作を複数回繰り返すのが一般的である。
【0003】
ニッケル焼結基板への活物質の充填操作を複数回繰り返すのは、1回の活物質充填操作では所望の活物質充填量が得られないからであり、複数回繰り返して行うことで所望の活物質充填量が確保できる。活物質の充填効率を上げ、1回の充填操作で基板へ充填される活物質量を増やすために、酸性ニッケル塩水溶液を高濃度にすることが一般的に行われており、具体的には比重1.7〜1.8g/cc程度の硝酸ニッケル水溶液などが用いられている。硝酸ニッケル水溶液を用いる場合、常温では比重を1.7〜1.8g/ccとすることはできないため、加温して用いるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、このような高濃度の酸性ニッケル塩水溶液はpHが低く腐食性が強い。加温して用いるにあたってはなおさらである。そのため活物質充填操作に際し、ニッケル焼結基板を高濃度の酸性ニッケル塩水溶液に長時間浸漬すると、ニッケル焼結体が腐食して焼結基板の機械的強度が低下するとともに集電性も低下する。焼結基板の機械的強度が低下すると、これを電池に用いて充放電を繰り返した際に電極の膨潤が引き起こされる。
【0005】
なぜなら正極の充放電反応が活物質の膨張収縮を伴うものであり、この膨張収縮を焼結体が抑制できなくなるからである。この電極の膨潤によって正極板中の細孔容積が変化し、本来、正極,負極,セパレータに適切に分布しているべき電解液の偏在が起こることとなり、その結果、電池の内部抵抗が高まり充放電特性やサイクル寿命特性などに悪影響を及ぼす。
【0006】
また、ニッケル焼結体の集電性が低下することが充放電特性に多大なる悪影響を及ぼすことは言うまでもない。具体的には正極活物質の利用率が低下したり放電電圧が低下したりする。
【0007】
ところで、ポータブル機器の性能向上にともない市場からの高エネルギー密度電池への要望はますます高まってきており、アルカリ蓄電池用ニッケル正極においてもそのエネルギー密度向上が切望されている。そのため焼結式ニッケル正極においても焼結基板のニッケル量を削減することで基板を高多孔度化し、活物質充填操作の繰り返し回数を多くすることで活物質充填量を増加させることが試みられている。しかしながら焼結基板のニッケル量を削減することは、とりもなおさず基板の強度が弱くなりやすいことを意味しており、腐食性の強い高温の酸性ニッケル塩水溶液による機械的強度や集電性への影響は深刻なものがある。このことから多孔性のニッケル焼結基板の腐食を防止する効果的な手段が求められていた。
【0008】
以下に、従来のアルカリ蓄電池用極板の製造方法について具体的に述べる。
【0009】
従来、多孔性のニッケル焼結基板の防食方法として、酸素の共存化で高温にて、ニッケル焼結基板のニッケル表面に耐酸化性の酸化ニッケルを生成させることは公知とされている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば酸化ニッケルの生成量が少なすぎると基板の腐食を充分に抑えることができない一方、酸化ニッケルの量を増加させすぎると、活物質と基板との間の導電性が著しく損なわれて活物質の利用率が低下するという問題がある。言うまでもなく酸化ニッケルの電気伝導性が乏しいことがその原因であり。また、ニッケル焼結基板のニッケル表面に耐酸化性の酸化ニッケルを生成させると、酸性ニッケル塩水溶液と焼結体との濡れ性が低下するため、多孔性ニッケル焼結基板を硝酸ニッケルなどの酸性ニッケル塩水溶液に浸漬・乾燥、ついでアルカリ水溶液中に浸漬してニッケル塩を水酸化ニッケル(活物質)に転換する活物質充填操作において酸性ニッケル塩水溶液が多孔質焼結基板に充分浸透しないという問題をも有している。換言すれば、活物質充填効率が低くなるため活物質充填操作の回数が増加してしまうのである。
【0010】
また、ニッケル焼結基板の表面にコバルト酸化物を生成させて、基板の腐食を防止する方法も公知となっている(例えば、特許文献2参照。)。この方法においては基板の表面に生成させるコバルト酸化物の量が少なすぎると防食効果が充分に得られず、また、コバルト酸化物の量をいたずらに増加させると電池において放電電圧の低下を招く傾向がある。
【0011】
なお、コバルト酸化物層を構成する具体的方法として、ニッケル焼結基板を硝酸コバルトなどの酸性コバルト塩水溶液に浸漬・乾燥した後、アルカリ水溶液中に浸漬してコバルト塩を水酸化コバルトに転化し、ついで加熱処理を行う方法も公知となっている。しかしながら、この方法においては、防食処理をしていないNi焼結体に対して酸性コバルト塩水溶液を使用するため、浸漬工程およびこれに続く乾燥工程におけるニッケル焼結体の腐食は避けられない。
【0012】
【特許文献1】
特開昭59−96659号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開昭63−216268号公報(第1頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルカリ蓄電池用ニッケル焼結基板の腐食を防止するとともに、基板−活物質間の電気伝導性を良好に維持して、正極活物質の利用率が良好で、電池の放電電圧が大きく低下することなく、正極活物質充填操作における充填効率を低下させないアルカリ蓄電池用ニッケル正極の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、多孔性のニッケル焼結基板を空気中で酸化してニッケル焼結体の表面にニッケル酸化物層を形成し、この焼結基板を、濃度が10〜30重量%、温度が60〜90℃である水酸化ナトリウム水溶液もしくは水酸化カリウム水溶液に、浸漬・水洗・乾燥することにより、酸性金属塩水溶液に対する濡れ性を向上させ、酸性コバルト塩水溶液に浸漬・乾燥し、ついでアルカリ水溶液に浸漬して、空気中において100〜150℃で乾燥させることにより、ニッケル酸化物層の表面に2価よりも大きい価数のコバルト酸化物の被膜を形成し、その後、酸性ニッケル塩水溶液への含浸をとも
なう活物質充填操作を行う。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、まず多孔性ニッケル焼結基板を空気中で酸化してニッケル酸化物層を基板表面に形成し、ニッケル焼結体の耐食性を高める。ついでこの焼結基板をアルカリ液に浸漬・水洗・乾燥して、ニッケル焼結体の酸性ニッケル塩水溶液に対する濡れ性を向上させる。ここで用いるアルカリ液としては水酸化ナトリウム水溶液もしくは水酸化カリウム水溶液が好ましく、その濃度は10〜30重量%、アルカリ液の温度は60〜90℃であることが好ましい。
【0016】
その後、さらに、比重1.05〜1.15g/ccの酸性コバルト塩水溶液に浸漬・乾燥しニッケル酸化物層の表面にコバルト塩水溶液を付着させて、これをアルカリ水溶液に浸漬したのちに、空気中において100〜150℃で乾燥させることで前記ニッケル酸化物層の表面に2価よりも大きい価数のコバルト酸化物の被膜を形成する。これによりニッケル焼結体の耐食性はさらに高まる。このようにして得られた耐食性に優れた多孔性ニッケル焼結基板を用いて酸性ニッケル塩水溶液への含浸をともなう活物質充填操作を複数回行い、アルカリ蓄電池用ニッケル正極板を作成した。本発明ではニッケル焼結体にニッケル酸化物層を形成する手法とコバルト酸化物被膜を形成させる手法とを併用するので、前述のニッケル酸化物層の導電性が低いことによる利用率低下の問題やコバルト酸化物による放電電圧低下の問題を最小限に抑えることができる。
【0017】
活物質充填操作の具体的な一例は、比重1.7〜1.8g/ccで80℃に加温した硝酸ニッケルの水溶液に多孔性ニッケル焼結基板を浸漬・乾燥した後、25重量%程度の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、ニッケル塩を活物質である水酸化ニッケルに転化し、ついで充分に水洗を行いアルカリ溶液を除去・乾燥するものである。
【0018】
活物質充填操作を行う時点では多孔性ニッケル焼結基板の耐食性が高められているので高濃度で、高温のニッケル塩水溶液を用いても基板、とくにニッケル焼結体、の腐食は極めて起こりにくく、機械的強度が低下することはない。また、酸性ニッケル塩水溶液に対する濡れ性が高められているので活物質充填効率が低下することがなく、充填操作1回あたりの充填量も多く確保することができる。
【0019】
また、本発明は上述した製造方法によるニッケル正極と、水素吸蔵合金またはカドミウムを主構成材料とする負極と、セパレータと、アルカリ電解液とから構成したアルカリ蓄電池である。ニッケル正極の製造に際し、耐食性および濡れ性に優れた多孔性ニッケル焼結基板を用い、基板の機械的強度および集電性を良好に維持しているので、サイクル寿命特性や放電特性に優れたアルカリ蓄電池とすることができる。
【0020】
もちろん、本発明に係るニッケル正極はニッケル亜鉛蓄電池など、他のアルカリ蓄電池にも適用可能である。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明の実施例に基づきさらに詳しく説明する。
【0022】
(実施例1)
ニッケル粉末、増粘剤、水を混練して得られたニッケルペーストをニッケル鍍金が施された穿孔鋼板に塗着し、これを還元性雰囲気中で焼結し、多孔度が約85%のニッケル焼結基板を得た。次いで、このニッケル焼結基板を、400℃の空気雰囲気下の電気炉で3分間加熱し、ニッケル焼結体の表面にニッケル酸化物層を形成させた。このようにして得た、ニッケル酸化物層を形成させた基板を、80℃,25重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬し、充分に水洗を行いアルカリ溶液の除去・乾燥を行った。その後、さらにこの基板を25℃、比重1.05g/cc,pH2の硝酸コバルト水溶液に10分間浸漬し、80℃で充分乾燥させた後、80℃,25重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、アルカリ水溶液を除去せずに100℃で30分間乾燥し、次いで、充分に水洗を行いアルカリ溶液を除去し、乾燥を経て本発明に係る焼結基板aを作製した。
【0023】
この焼結基板aを80℃、比重1.75g/cc,pH1.5の硝酸ニッケル水溶液に浸漬し、80℃で充分乾燥させた後、80℃,25重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、ニッケル塩を活物質である水酸化ニッケルに転化し、ついで充分に水洗を行いアルカリ溶液を除去・乾燥するという一連の活物質充填操作を所定の活物質量になるまで繰り返してニッケル正極を作製した。得られた正極を本発明に係る正極aとする。正極aと、カドミウムを主構成材料とする負極と、セパレータとを重ね合わせて渦巻き状に巻回し、4/5SCサイズの円筒形金属ケースに挿入し、アルカリ電解液を注入したのち、正極aと電気的に接続された封口板で封口して公称容量1.2Ahのアルカリ蓄電池を構成した。このアルカリ蓄電池を電池Aとする。
【0024】
(比較例1)
実施例1と同様にして、多孔度が約85%のニッケル焼結基板を得た。次いで、実施例1と同様に、このニッケル焼結基板を、400℃の空気雰囲気下の電気炉で3分間加熱し、ニッケル焼結体の表面にニッケル酸化物層を形成させた。実施例1においてニッケル酸化物層形成に次いで実施した、水酸化ナトリウム水溶液中への浸漬・水洗・乾燥からなる一連の操作を行わずに、この基板を25℃、比重1.05g/cc,pH2の硝酸コバルト水溶液に10分間浸漬し、80℃で充分乾燥させた後、80℃,25重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、さらに、アルカリ溶液を除去せずに100℃で30分間乾燥し、次いで、充分に水洗を行いアルカリ溶液を除去し、乾燥を経て焼結基板bを作製した。
【0025】
この焼結基板bを実施例1と同様な一連の活物質充填操作を繰り返してニッケル正極bとし、実施例1と同様にして公称容量1.2Ahのアルカリ蓄電池を作製した。このアルカリ蓄電池を電池Bとする。
【0026】
(比較例2)
実施例1と同様にして、多孔度が約85%のニッケル焼結基板を得た。実施例1で実施したニッケル酸化物層形成およびニッケル酸化物層形成に次いで実施した水酸化ナトリウム水溶液中への浸漬・水洗・乾燥からなる一連の操作を行うことなく、この基板を25℃、比重1.30g/cc,pH2の硝酸コバルト水溶液に10分間浸漬し、80℃で充分乾燥させた後、80℃,25重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、さらにアルカリ溶液を除去せずに、100℃で30分間乾燥した。次いで、充分に水洗を行いアルカリ溶液を除去・乾燥して焼結基板cを作製した。
【0027】
この焼結基板cを実施例1と同様な一連の活物質充填操作を繰り返してニッケル正極cとし、実施例1と同様にして公称容量1.2Ahのアルカリ蓄電池を作製した。このアルカリ蓄電池を電池Cとする。
【0028】
(比較例3)
実施例1と同様にして、多孔度が約85%のニッケル焼結基板を得た。次いで、実施例1と同様に、このニッケル焼結基板を、400℃の空気雰囲気下の電気炉で3分間加熱し、ニッケル焼結体の表面にニッケル酸化物層を形成させ焼結基板dを得た。
【0029】
この焼結基板dを実施例1と同様な一連の活物質充填操作を繰り返してニッケル正極dとし、実施例1と同様にして公称容量1.2Ahのアルカリ蓄電池を作製した。このアルカリ蓄電池を電池Dとする。
【0030】
(比較例4)
硝酸コバルト水溶液の比重を1.05g/ccとした以外は比較例2と同様にして焼結基板eを作製した。
【0031】
この焼結基板eを実施例1で示したと同じ一連の活物質充填操作を繰り返してニッケル正極eとし、実施例1と同様にして公称容量1.2Ahのアルカリ蓄電池を作製した。このアルカリ蓄電池を電池Eとする。
【0032】
実施例1および比較例1における充填操作回数と活物質充填量との関係を図1に示す。本発明に係る正極aにおいては所定の活物質充填密度に達するまでの充填操作回数は、7回であったのに対し、比較例である正極bは、充填操作が9回必要であった。すなわち、正極bの作製に際しては、正極aを作製する場合と比較して充填操作回数が2回多くなっている。これは、比較例の基板bの硝酸ニッケル水溶液に対する濡れ性が低いため、硝酸ニッケル水溶液が基板bに充分に浸透しなかったため、もしくは、硝酸ニッケル水溶液を含んだ基板bを乾燥する工程において、硝酸ニッケル塩がニッケル焼結基板から漏れ出したことによると考えられる。
【0033】
正極bの作製に際して、正極aを作製する場合と比較して充填操作回数が多くなったことが、基板の硝酸ニッケル水溶液に対する濡れ性の差異に起因することを証明するため、基板aおよび基板bの硝酸ニッケル水溶液に対する濡れ性についてさらに詳細に検討を加えた。濡れ性の評価に際してはメニスコグラフ法を採用した。参考までにメニスコグラフ法について説明を加える。
【0034】
メニスコグラフ法とは、一定の温度に制御され、液体を満たした槽に、被測定試料を一定速度で一定の深さまで浸漬し、濡れる前の試料にかかる浮力と、濡れによる垂直方向への濡れ応力(引き込み力)を高感度の電子天秤により連続的に記録し、得られた作用力対時間曲線を解析することにより、濡れ性を評価するものである。図3に測定原理図を示す。
【0035】
メニスコグラフ法において被測定試料を基板aおよび基板bとしその寸法は20mm×20mmとした。また、温度を80℃、液体を5.5mol/lの硝酸ニッケル液、浸漬速度を10mm/秒、浸漬深さを5mm、浸漬時間を30秒として評価を実施した。結果を図2に示す。図2から明らかなように、比較例1の基板bと比較すると、実施例1の本発明に係る基板aの方が濡れる前の試料にかかる浮力が小さく、最大の濡れ応力が大きい。このことから、基板aの方が濡れ性が高いことがわかる。
【0036】
基板aと基板bの差異は既に述べたようにニッケル酸化物層形成に次ぐ、水酸化ナトリウム水溶液中への浸漬・水洗・乾燥からなる一連の操作の有無のみである。このことから、実施例1でニッケル酸化物層形成に次いで実施した水酸化ナトリウム水溶液中への浸漬・水洗・乾燥からなる一連の操作が基板の濡れ性を高めたことは疑う余地がない。なお、詳細なメカニズムは不明であるが、基板の水酸化ナトリウム水溶液中への浸漬・水洗・乾燥からなる一連の操作において、その前段階でニッケル焼結体の表面に形成されたニッケル酸化物層のごく表面が一部水酸化ニッケルに化学変化したことで濡れ性が高まった可能性が考えられる。
【0037】
次に、実施例1の本発明電池Aと比較例2の電池Cの充放電試験を実施した。これらの電池を雰囲気温度20℃において電流値1.2Aで1.5時間充電し、電流値1.2Aで端子電圧が1.0Vに至るまで放電した時の放電曲線を図4に示す。本発明の電池Aは比較例2の電池Cと比較して高い放電電圧を示した。
【0038】
電池Cの放電電圧が低い現象は、比較例2の基板cを作製する際に、基板の防食効果を充分に得るため、多くのコバルト酸化物を添加した、すなわち、実施例1よりも高い比重(高濃度)の硝酸コバルト水溶液を使用したために起こった現象であり、本発明の基板aは、ニッケル焼結体の表面がニッケル酸化物層で覆われ、さらにその表面に2価より大きい価数のコバルト酸化物、おそらくオキシ水酸化コバルトと思われる、を生成させることによって、少量のコバルト酸化物で高い防食効果を得ることができるのでコバルト酸化物量が多すぎることによる放電電圧の低下がみられないのである。
【0039】
次に、実施例1で作製した本発明電池Aと比較例3および4で得られた電池D,Eの充放電サイクル寿命試験を実施した。雰囲気温度20℃において電流値1.2Aで1.5時間充電し、電流値1.2Aで端子電圧が1.0Vに至るまで放電する充放電サイクルを繰り返したときの充放電サイクル数と放電容量との関係、すなわちサイクル寿命特性、を図5に示す。
【0040】
電池Dは400サイクルで、電池Eは500サイクルで、それぞれ放電容量が初期容量の約60%にまで低下した。これに対して、本発明の電池Aは1000サイクルに至ってもなお、初期容量の約80%の放電容量を維持している。
【0041】
比較例の電池D,Eは、いずれもニッケル焼結基板を強酸性の硝酸ニッケル水溶液に浸漬したときに腐食されるので、焼結基板の機械的強度が低下しているものと考えられる。従って充放電の際に起こる活物質の膨張および収縮によって電極の膨潤が引き起こされる。このため、正極板の細孔容積が多くなり、セパレータに保持されていた電解液の一部が正極に取り込まれ、その結果、セパレータが保持する電解液は減少する。すなわち、本来、正極,負極,セパレータに適正に分布していなければならない電解液の正極への偏在が起こるのである。このようなメカニズムでセパレータは液枯れ状態に陥り、電池の内部抵抗が高くなる。これにより、比較的少ない充放電サイクルにおいて放電特性の低下すなわち著しい容量劣化が起こったのである。
【0042】
これに対して電池Aでは、本発明の方法によって極めて高い耐食性が付与されているために優秀なるサイクル寿命特性を示したのである。
【0043】
なお、硝酸コバルト水溶液に浸漬し、充分乾燥させた後、水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、アルカリ液を除去せずに乾燥させる一連の操作においてアルカリ液を除去せずに乾燥させる温度を110℃,120℃,130℃,140℃,150℃とした以外は実施例1と同様にしてアルカリ蓄電池を作製した。電池Aと同様にこれらの電池のサイクル寿命特性を測定したところ1000サイクルにおける容量はそれぞれ初期容量の83%,80%,80%,78%,75%であり、優れたサイクル寿命特性を示した。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリ蓄電池用ニッケル焼結基板の腐食を効果的に防止するとともに、基板−活物質間の電気伝導性を良好に維持して、正極活物質の利用率が良好で、電池の放電電圧が大きく低下することなく、正極活物質充填操作における充填効率を低下させないアルカリ蓄電池用ニッケル正極を得ることができる。また、ニッケル焼結基板の腐食が効果的に防止できるためサイクル寿命特性に優れたアルカリ蓄電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】充填操作回数と充填密度との関係を示す図
【図2】焼結基板を硝酸ニッケル水溶液に浸漬した際の濡れ応力の変化を示す図
【図3】メニスコグラフ法の測定原理図
【図4】放電容量と放電電圧との関係を示す放電曲線図
【図5】充放電サイクル数と放電容量との関係を示す充放電サイクル寿命特性図
【符号の説明】
A 装置が動き始めた点
B 試料が液面に接触した点
C 試料が溶液に押し付けられた状態において、濡れが開始された点
D 濡れの進行により、液面が水平に戻ろうとしている点
E 濡れて行く過程で、液面が水平に戻った点
F 濡れが更に進み、その濡れの力により試料が引き下げられている点
G 最大の濡れが検出された点
H 設定時間により、試料が引き上げられた始めた点
I 試料が溶液により離れる瞬間の力の点
J 試料が溶液より離れ、基本位置に戻った点
Claims (2)
- 多孔性のニッケル焼結基板を空気中で酸化して基板の表面にニッケル酸化物層を形成し、ついでこの基板を、濃度が10〜30重量%、温度が60〜90℃である水酸化ナトリウム水溶液もしくは水酸化カリウム水溶液に、浸漬・水洗・乾燥した後、酸性コバルト塩水溶液に浸漬・乾燥し、ついでアルカリ水溶液に浸漬して、その後、空気中において100〜150℃で乾燥させることにより、前記ニッケル酸化物層の表面に2価よりも大きい価数のコバルト酸化物の被膜を形成した後、酸性ニッケル塩の含浸をともなう活物質充填操作を行うアルカリ蓄電池用ニッケル正極の製造方法。
- ニッケル正極と、水素吸蔵合金またはカドミウムを主構成材料とする負極と、セパレータと、アルカリ電解液とからなる発電要素をケースに収容してなり、前記正極は、多孔性のニッケル焼結基板を空気中で酸化して基板の表面にニッケル酸化物層を形成し、この基板を、濃度が10〜30重量%、温度が60〜90℃である水酸化ナトリウム水溶液もしくは水酸化カリウム水溶液に、浸漬・水洗・乾燥した後、酸性コバルト塩水溶液に浸漬・乾燥し、ついでアルカリ水溶液に浸漬後、空気中において100〜150℃で乾燥させることで前記ニッケル酸化物層の表面に2価よりも大きい価数のコバルト酸化物の被膜を形成した後、酸性ニッケル塩水溶液への含浸をともなう活物質充填操作を行ったものであるアルカリ蓄電池。
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