JP4397782B2 - 全反射減衰を利用した測定システム - Google Patents

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Description

本発明は、誘電体と薄膜層との界面で光ビームを全反射させ、そのとき生じる全反射減衰を利用して測定を行う測定システムに関するものである。
金属中においては、自由電子が集まるとこれらの自由電子が集団的に振動して、プラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化して考えるときには上記プラズマ波を表面プラズモンと呼ぶ。従来、この表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置が種々提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、 Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特許文献1)。
上記表面プラズモン測定装置は、基本的に、プリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生する光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰(ATR)の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームが上記界面にp偏光で入射するときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角θSPより表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。すなわち表面プラズモンの波数をKSP、表面プラズモンの角周波数をω、真空中の光速をc、金属、被測定物質の誘電率をそれぞれεm、εsとすると、以下の関係がある。
Figure 0004397782
そこで、上記反射光強度が低下する入射角である全反射減衰角θSPを知ることにより、被測定物質の誘電率εs、つまりは屈折率に関連する特性を求めることができる。
なおこの種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角θSPを精度良く、測定することを目的として、フォトダイオードアレイ等のアレイ状の光検出手段を用いることが考えられている(例えば、特許文献2参照)。この光検出手段は、それぞれが前記界面において互いに異なる反射角で全反射した光ビームの反射光成分を受光するように上記反射角の角度方向に併設された複数の受光素子からなるものである。
その場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、この受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。そしてこの微分手段としては、例えば、互いに隣接する2つの受光素子の出力の差分を求める手段を用いることができる。
また、上述のように2つの受光素子の出力の差分を求めて全反射減衰角θSPに対応する試料液の特性を検出する場合、アレイ状の光検出手段の代わりに二分割フォトダイオードを用い、この二分割フォトダイオードを上記角度方向に移動させて上記差分の値を得る方式を採用することも可能である。つまりその場合は、二分割された各フォトダイオードの出力の差分に基づいて、全反射減衰角θSPに対応する試料の特性を知ることができる(特許文献3参照)。
なお、特に、金属膜上にセンシング物質(リガンド)を配し、このセンシング物質に対する分析対象試料(アナライト)の結合の有無、結合量の変化等を測定する場合、上記差分法を用いれば感度の高い測定が可能となる。
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば非特許文献1の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生する光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過後、光導波層において、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
なお、この漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段や二分割フォトダイオードを用いることができる。また、それと併せて上述の差分手段が適用されることも多い。
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上にセンシング物質を固定し、このセンシング物質上に分析対象試料を含む試料液を分注し、所定時間が経過する毎に上述の全反射減衰角θSPの角度を測定している。
試料液中の分析対象試料が、センシング物質と結合するものであれば、この結合により薄膜上の物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角θSPを測定し、該全反射減衰角θSPの角度に変化が生じているか否か測定することにより、分析対象試料とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて分析対象試料がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
なお、分析対象試料とセンシング物質との結合状態を測定するためには、全反射減衰角θSPの角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角θSPの角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は全反射減衰角θSPの角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と分析対象試料との結合状態を測定することができる。
このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め形成された薄膜層上にセンシング物質が固定された測定チップに、溶媒中に分析対象試料である被検体を溶解した試料液を注入し、あるいは送液しながら供給して、上述した全反射減衰角θSPの角度変化量の測定を行っている。
上記測定チップに試料液を供給し、センシング物質と被検体とが結合すると、センシング物質の屈折率が変化し、全反射減衰角θSPの角度が変化する。従って測定開始から所定時間経過した時点までの、全反射減衰角θSPの角度変化量を求めることにより、被検体がセンシング物質と結合するものであるか否かを判定し、さらに、結合する場合には、被検体とセンシング物質との結合状態などを分析することができる。
特開平6−167443号公報 特開平11−326194号公報 特開2002−365212号公報 「分光研究」第47巻 第1号(1998)
ところで、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置を利用して測定を行う場合、複数の測定チップをまとめて取扱い、それらを用いて複数の試料に関する一連の測定を行うことが多い。このような測定の形態は、特に前述のランダムスクリーニングにおいて多く適用されている。
ところが、このようにして複数の試料に関する一連の測定を行う場合には、例えば複数の測定チップの光ビーム入射系に対するセッティング角度が不正になる等の原因から、その一連の測定のいくつかが不正になされてしまうこともある。
本発明は上記の事情に鑑みて、複数の試料に関する一連の測定が正常になされたか否かを確認することができる、全反射減衰を利用した測定システムを提供することを目的とする。
本発明による第1の全反射減衰を利用した測定システムは、
光ビームを発生する光源と、
前記光ビームに対して透明な誘電体ブロック、およびこの誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる薄膜層を備えてなる測定チップと、
前記光ビームを、前記誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で該光ビームが全反射するように、この光ビームを前記誘電体ブロックに対して入射させる光ビーム入射光学系と、
前記界面で全反射した光ビーム中の暗線位置を測定する暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
算出された前記特性値のバラツキを表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
前記演算手段が、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)、および最大結合量(Rmax)のうちの少なくとも1つを前記特性値として、そのバラツキを算出するものであることを特徴とするものである。
なお上述の「薄膜層」は、本システムが表面プラズモン測定装置から構成される場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置から構成される場合はクラッド層および光導波層となることは、前述した通りである(以下、同様)。
また上記「バラツキ」とは、特性値の分布状態を示す統計上の指標を広く指すものであり、具体的には、変動係数、標準偏差、分散値、最大値と最小値との差、最大値と最小値との差を平均値で除したもの等が挙げられる。
また、本発明による第2の全反射減衰を利用した測定システムは、上記と同様の光源と、測定チップと、光ビーム入射光学系と、暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
算出された前記特性値のバラツキを所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて前記一連の測定の良否を判定する手段と、
この判定結果を表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
前記演算手段が、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)、および最大結合量(Rmax)のうちの少なくとも1つを前記特性値として、そのバラツキを算出するものであることを特徴とするものである。
また、本発明による第3の全反射減衰を利用した測定システムは、上記と同様の光源と、測定チップと、光ビーム入射光学系と、暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
算出された前記特性値のバラツキを表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
測定チップとして、前記薄膜層の上にさらに、特定物質と結合するセンシング物質が固定されたものが用いられるとともに、
このセンシング物質の固定量を求める手段が設けられ、
前記演算手段が、前記センシング物質の固定量が所定値未満あるいは所定値以上である測定チップから得られた特性値については、前記バラツキを算出する上で除外するように構成されていることを特徴とするものである。
また、本発明による第4の全反射減衰を利用した測定システムは、上記と同様の光源と、測定チップと、光ビーム入射光学系と、暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
算出された前記特性値のバラツキを所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて前記一連の測定の良否を判定する手段と、
この判定結果を表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
測定チップとして、前記薄膜層の上にさらに、特定物質と結合するセンシング物質が固定されたものが用いられるとともに、
このセンシング物質の固定量を求める手段が設けられ、
前記演算手段が、上記センシング物質の固定量が所定値未満あるいは所定値以上である測定チップから得られた特性値については、前記バラツキを算出する上で除外するように構成されていることを特徴とするものである。
また、上述のようにセンシング物質の固定量を求める手段が設けられた上で、前記演算手段が、センシング物質の固定量に基づいて前記特性値を補正するように構成されることも好ましい。
なお上記「センシング物質の固定量」とは、重量等の絶対量のみを意味するものではなく、例えば測定された暗線位置を示す信号量等、センシング物質の固定量を間接的に示す量をも含むものとする。
本発明による第1、第3の全反射減衰を利用した測定システムは、暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料と含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、算出された特性値のバラツキを表示する表示手段とを備えているので、システム利用者は、表示されたこの特性値のバラツキに基づいて、一連の測定が正常になされたか否かを知ることができる。すなわち、暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料に関する測定結果は本来互いに同じものとなり、それは暗線位置の変化が必ず生じないことが既知である複数の基準試料についても同様であるので、それら複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキは小さいものとなる筈である。そこで、表示されたこのバラツキが通常考えられる値より大きい場合は、その測定が不正になされたと判断することができる。
他方、本発明による第2、第4の全反射減衰を利用した測定システムは、上述のような特性値のバラツキを所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて前記一連の測定の良否を判定する手段と、この判定結果を表示する表示手段とを備えているので、システム利用者は、その表示された情報から直接的に、一連の測定が正常になされたか否かを判断可能となる。
また、本発明による第3、第4の全反射減衰を利用した測定システムにおいて、特に測定チップとして、前記薄膜層の上にさらに前述のセンシング物質が固定されたものが用いられ、前記演算手段が、上記センシング物質の固定量を求め、該固定量が所定値未満あるいは所定値以上である測定チップ(それは本来、測定に使用されるべきものではない)から得られた特性値については、特性値バラツキを算出する上で除外するように構成されているので、測定チップに起因する測定不良の要因は除いて、その他の測定操作等に起因する測定不良が有ったか否かを正確に判別可能となる。
また前記演算手段が、センシング物質の固定量に基づいて前記特性値を補正するように構成された場合は、センシング物質の固定量の違いによる特性値の変化分を補償して特性値を正確に求めることができ、ひいては、測定不良が有ったか否かを正確に判別可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態による全反射減衰を利用した測定システムを示す概略平面図であり、図2および図3はそれぞれ、そのシステムに用いられた表面プラズモン測定装置の概略平面図、概略側面図である。
本実施形態の全反射減衰を利用した測定システムは、複数の誘電体ブロックに光ビームを並列的に入射させることにより複数の試料液の分析を同時に行うものであり、試料液は2次元状に配置された多数の試料液収容部を有する試料液収容プレートであるウェルプレートによって供給される。
図1に示す通り、この全反射減衰を利用した測定システムは、表面プラズモン測定装置101と、この表面プラズモン測定装置101の測定に使用される試料液11に対して前処理を施す液処理部60と、液処理部60で処理された試料液11が配された測定チップ9を表面プラズモン測定装置101の測定位置に移送する被測定物投入装置200とを備えている。
表面プラズモン測定装置101は、図2および図3に示すように、同様の構成の複数の表面プラズモン測定ユニット101A、101B、101C…により構成されている。以下、各測定ユニットの構成について、個別の要素を表す符号であるA、B、C…の符号は省略して説明する。
各測定ユニット101は、光ビーム13を発生する光源であるレーザ光源14と、光ビーム13に対して透明な誘電体ブロック10、この誘電体ブロック10の一面に形成された、金属膜からなる薄膜層12、および薄膜層12の表面上に試料液11を保持する試料液保持部10aを備えてなる測定チップ9と、上記光ビーム13を、誘電体ブロック10と薄膜層12との界面10bで全反射するように、該誘電体ブロック10に対して入射させる入射光学系15と、上記界面10bで全反射した光ビーム13中の暗線の位置を測定する暗線位置測定部29とを備えている。
暗線位置測定部29は、上記界面10bで全反射した光ビーム13を平行光化して光検出器17に向けて射出するコリメータレンズ16と、コリメータレンズ16から出射した光ビーム13を受光してその光強度を検出する光検出器17と、光検出器17に接続された差動アンプアレイ18と、差動アンプアレイ18に接続されたドライバ19と、ドライバ19に接続されたコンピュータシステム等からなる信号処理部20とからなる。
なお光ビーム13は、必ずしも上記のように平行光化して光検出器17に入射させる必要はなく、平行光化して入射させない場合には、コリメータレンズ16を除いて光ビーム測定部29を構成することができる。
入射光学系15は、レーザ光源14から射出された光ビーム13を平行光化するコリメータレンズ15aと、この平行光化された光ビーム13を集光して界面10bにおいて収束させる集光レンズ15bとから構成されている。
光ビーム13は、集光レンズ15bによって上述のように集光されるので、界面10bに対して種々の入射角θで入射する成分を含むことになる。なお、この入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そのため、界面10bで全反射した光ビーム13には、種々の反射角で全反射した成分が含まれることになる。なお、上記入射光学系15は、光ビーム13を界面10b上で点状に収束させずにデフォーカス状態で入射させるように構成してもよい。そのようにすれば、界面10b上のより広い領域において光ビーム13が全反射されるので、全反射減衰の状態の検出誤差が平均化されて全反射減衰角の測定精度を高めることができる。
また光ビーム13は、界面10bに対してp偏光で入射させる。そのようにするためには、予めレーザ光源14をその偏光方向が上記所定の方向となるように配設すればよい。その他、光ビーム13を界面10bに対してp偏光で入射させるには、波長板で光ビーム13の偏光の向きを制御するようにしてもよい。
また、この表面プラズモン測定装置101は、各測定ユニット101A、101B、101C…の信号処理部20A、20B、20C…に接続された1つの表示手段21を備えている。
他方、上記誘電体ブロック10は、例えば透明樹脂等により形成することができ、四角錐の4つの稜線が集まる頂角を含む一部分が切り取られた形状とされている。その試料液保持部10aは、四角錐の誘電体ブロック10の底面の周囲が四角錐の広がりながら延びる方向に嵩上げされた形として形成されたものである。したがって、この周囲が嵩上げされた部分で囲まれた凹部10cの底面に上記薄膜層12が位置し、この凹部10cに試料液11が貯えられる。
薄膜層12は、例えば金、銀、銅、アルミニウム等の金属膜で構成することができる。なお、薄膜層12の表面上にはセンシング物質30が固定されるが、このセンシング物質30については後述する。また光ビーム13は、誘電体ブロック10の試料液11を保持する側とは反対側から誘電体ブロック10に向けて入射せしめられる。
なお隣接する複数の測定チップ9は、図4に示すように、互いに連結されて一体的取扱いが可能なチップ連結ユニット80を構成している。ここでは、一例として、8個の測定チップ9を連結固定してなるチップ連結ユニット80を用いており、測定チップ9が8個一列に並べられた状態で取り扱われる。
なおチップ連結ユニット80は、より詳しくは、ユニット支持板81に形成された複数のユニット支持孔82のそれぞれに、各測定チップ9が嵌合支持されてなるものである。チップ連結ユニット80を構成する各測定チップ9は、誘電体ブロック10が前述のような形状とされたことから、テーパ状の上記ユニット支持孔82に嵌合して、このユニット支持孔82を通り抜けないようになっている。
さらに、上記チップ連結ユニット80は、図5に示すように、複数まとめてチッププレート211にセットされ、この状態で運搬および取扱いがなされる。例えば、チップ連結ユニット80が8個の測定チップ9を連結固定してなる場合には、チップ連結ユニット80が12ユニットまとめられて、すなわち96個の測定チップ9が1枚のチッププレート211上にまとめられて取り扱われる。
また、例えば、チップ連結ユニット80が6個の測定チップ9を連結固定してなる場合には、チップ連結ユニット80が64ユニット(8本×8組)まとめられて、すなわち386個の測定チップ9が1枚のチッププレート211上にまとめられて取り扱われる。
図1に示す被測定物投入装置200は、チッププレート211から取り出されたチップ連結ユニット80を矢印Yで示す方向に移動させる連結ユニット移送部120、チップ連結ユニット80を連結ユニット移送部120に供給するチップ供給手段210、チップ連結ユニット80の各測定チップ9に試料液11を供給する試料液自動供給機構220、チップ連結ユニット80を連結ユニット移送部120から取り外して排出するチップ排出部230を備えている。
連結ユニット移送部120は、チップ供給手段210に対応する作業位置P1において、チップ供給手段210から、8個の測定チップ9で構成されたチップ連結ユニット80を受け取り、チップ連結ユニット80を、試料液自動供給機構220に対応する作業位置P2、表面プラズモン測定装置101に対応する作業位置P3、およびチップ排出部230に対応する作業位置P4に順次移送する。
チップ供給手段210は、上記チップ連結ユニット80を収容したチッププレート211をセット部212に受け入れ、そこからチップ連結ユニット80を1つ(1ユニット)ずつ連結ユニット移送部120に供給する。
なお本例では、チップ連結ユニット80を構成する各測定チップ9の薄膜層12に予め、タンパク、DNA,RNA、多糖類等のセンシング物質が固定され、上記連結ユニット移送部120にはその状態でチップ連結ユニット80が供給される。そして、連結ユニット移送部120は、チップ連結ユニット80を作業位置P2に移送する。
作業位置P2に配置された試料液自動供給機構220は、上記チッププレート211上の各測定チップの配置に一致させて形成された多数の穴(ここでは、96穴)を有するウェルプレート221の各穴に収容した各試料液11を、チップ連結ユニット80の各測定チップ9の凹部10cに分注するものである。なお、各試料液11が互いに異なる成分からなる試料液であってもまとめて試料液11と言う。
上記各穴(以後、試料液収容部221Sという)に試料液11を収容したウェルプレート221が試料液自動供給機構220のセット部222に受け入れられると、各試料液収容部221Sに収容された試料液11が、試料液自動供給機構220の試料液供給用ピペット71によって吸引される。そして試料液自動供給機構220が、上記試料液供給用ピペット71を、作業位置P2に位置するチップ連結ユニット80の各測定チップ9上に移動させ、吸引された試料液11をこの試料液供給用ピペット71から測定チップ9の凹部10cへ供給する。
なお、ウェルプレート221に収容された各試料液11の各測定チップ9への供給は、チッププレート211に収容されていた各測定チップのチッププレート211上における位置と、各測定チップに供給される各試料液11のウェルプレート221上における収容位置とが対応するように行われる。
本実施形態のように複数の測定チップ9をチップ連結ユニット80にまとめて取り扱う場合は、図6に示すような分注機226を採用することが望ましい。この分注機226は、チップ連結ユニット80における測定チップ9の数と同数の分注ノズル227が、チップ連結ユニット80における測定チップ9の配置ピッチと同じピッチで配置されてなるものであり、1つのチップ連結ユニット80の各測定チップ9に同時に試料液11を分注することができる。
その後チップ連結ユニット80は、連結ユニット移送部120によって作業位置P3に移送される。この作業位置P3に配置された表面プラズモン測定装置101は、試料液11が配された各測定チップ9に対して全反射減衰角の測定、つまり暗線位置測定を行う。そしてこの測定の後、チップ連結ユニット80は、連結ユニット移送部120によって作業位置P4に移送される。
作業位置P4に配置されたチップ排出部230は、チップ連結ユニット80を連結ユニット移送部120から取り外して、回収用ウェルプレート231の中に排出する。
ウェルプレート221の各試料液収容部221Sに収容された各試料液11は、互いに異なる成分を有する多数の試料液11を収容したマザープレート255、あるいはドータプレート256から、分注機250によって分注されたものである。この試料液11を収容したウェルプレート221が試料液自動供給機構220に受け入れられる前に、各試料液11に対して液処理部60による種々の前処理が施されるが、この前処理は本発明とは直接関係が無いので、その説明は省略する。
そして上記連結ユニット移送部120が、チップ供給手段210から逐次受け入れたチップ連結ユニット80を作業位置P1、P2、P3、P4へ移送する動作を繰り返すとき、それと並行して上記測定を行うことにより、チッププレート211上にまとめられた96個の測定チップ9と、ウェルプレート221上の各試料収容部221Sに収容された96種類の試料液11とを組み合わせた全ての測定を行うことができる。
以下、表面プラズモン測定装置101による試料分析について説明する。図3に示す通り、レーザ光源14から射出された光ビーム13は、入射光学系15を通して、誘電体ブロック10と薄膜層12との界面10b上に収束せしめられる。
界面10b上で収束して全反射した光ビーム13は、コリメータレンズ16を通して光検出器17によって検出される。光検出器17は、複数の受光素子であるフォトダイオード17a、17b、17c…が1列に並設されてなるフォトダイオードアレイであり、フォトダイオードの並設方向が図3の紙面に略平行で、かつコリメータレンズ16を通して平行光化されて入射される光ビーム13の伝播方向に対して略直交するように配設されている。したがって、上記界面10bにおいて種々の反射角で全反射された光ビーム13の各成分を、それぞれ異なるフォトダイオード17a、17b、17c…が受光することになる。この光検出器17は、各フォトダイオード17a、17b、17c…によって検出された上記光ビーム13の強度分布を示す信号を出力する。
界面10bに特定入射角θSPで入射した光ビーム13の成分は、薄膜層12とこの薄膜層12に接している物質との界面に表面プラズモンを励起させるので、この光については反射光強度が鋭く低下する。つまり上記特定入射角θSPが全反射減衰角であり、この角度θSPにおいて反射光強度は極小値を示す。この反射光強度が低下する領域は、図3にDで示すように、界面10bで全反射した光ビーム13中の暗線として観察される。
次に、光検出器17から出力された光ビーム13の強度分布を示す信号の処理について詳細に説明する。図7は、この表面プラズモン測定装置の電気的構成を示すブロック図である。図示の通りドライバ19は、差動アンプアレイ18の各差動アンプ18a、18b、18c…の出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路22a、22b、22c…、これらのサンプルホールド回路22a、22b、22c…の各出力が入力されるマルチプレクサ23、このマルチプレクサ23の出力をデジタル化して信号処理部20に入力するA/D変換器24、マルチプレクサ23とサンプルホールド回路22a、22b、22c…とを駆動する駆動回路25、および信号処理部20からの指示に基づいて駆動回路25の動作を制御するコントローラ26から構成されている。
上記フォトダイオード17a、17b、17c…の各出力は、差動アンプアレイ18の各差動アンプ18a、18b、18c…に入力される。この際、互いに隣接する2つのフォトダイオードの出力が、共通の差動アンプに入力される。したがって各差動アンプ18a、18b、18c…の出力は、複数のフォトダイオード17a、17b、17c…が出力する光検出信号を、それらの並設方向に関して微分したものと考えることができる。
各差動アンプ18a、18b、18c…の出力は、それぞれサンプルホールド回路22a、22b、22c…により所定のタイミングでサンプルホールドされ、マルチプレクサ23に入力される。マルチプレクサ23は、サンプルホールドされた各差動アンプ18a、18b、18c…の出力を、所定の順序に従ってA/D変換器24に入力する。A/D変換器24はこれらの出力をデジタル化して信号処理部20に入力する。
図8は、界面10bで全反射した光ビーム13の界面10bへの入射角θ毎の光強度と、差動アンプ18a、18b、18c…の出力との関係を説明するものである。ここで、光ビーム13の界面10bへの入射角θと、全反射した光ビーム13の光強度Iとの関係は、同図(1)のグラフに示すようなものであるとする。
また同図の(2)は、フォトダイオード17a、17b、17c…の並設方向を示しており、先に説明した通り、これらのフォトダイオード17a、17b、17c…の並設方向位置は上記入射角θと一義的に対応している。
そしてフォトダイオード17a、17b、17c…の並設方向位置、つまりは入射角θと、差動アンプ18a、18b、18c…の出力I’(反射光強度Iの微分値)との関係は、同図(3)に示すようなものとなる。すなわち、ここで暗線位置を測定するとは、ファとダイオードアレイ上の暗線位置を検出することであるが、それは、対応する入射角θを検出するものとみなすことができる。
信号処理部20は、A/D変換器24から入力された微分値I’の値に基づいて、差動アンプ18a、18b、18c…の中から、微分値として正の値を有し、かつ全反射減衰角θSPに対応する微分値I’=0に最も近い出力が得られているもの(同図(3)の例では差動アンプ18eとなる)と、微分値として負の値を有し、かつ全反射減衰角θSPに対応する微分値I’=0に最も近い出力が得られているもの(同図(3)の例では差動アンプ18dとなる)を選択し、それらの差動アンプが出力する微分値に基づいて、全反射減衰角θSPを算出する。なお、場合によっては微分値I’=0を出力している差動アンプが存在することもあり、そのときはその差動アンプに基づいて全反射減衰角θSPを算出する。以後、信号処理部20は、所定時間が経過する毎に上記と同様な動作を繰り返し、全反射減衰角θSPを算出し、測定開始時からの角度変化量を求めて表示手段21に表示させる。
上述のように、測定チップ9の薄膜層12の近傍の誘電率つまりは屈折率が変化すると、それに応じて全反射減衰角θSPも変化するため、この全反射減衰角θSPの角度変化量を時間の経過とともに測定し続けることにより、薄膜層12の近傍の誘電率の変化を調べることができる。
なお、薄膜層12の上に、試料液11中に溶解している特定物質と結合するセンシング物質30を固定した場合、試料液11中の特定物質とセンシング物質30との結合の進行、あるいは解離の進行に応じて薄膜層12近傍の誘電率(屈折率)が時間の経過とともに変化する。したがって、上記全反射減衰角θSP(微分値I’)を測定し続けることにより、上記結合、あるいは解離の進行状況を調べることができる。
そのようなセンシング物質30と特定物質との組合せとしては、例えば、例えば生理活性高分子物質(タンパク、DNA,RNA,多糖類)と医薬品を構成する化合物との組み合わせを挙げることができる。一般に、薄膜層12上に生理活性高分子物質を効果的に吸着させるためには、薄膜層12に対して自己組織化膜(SAM膜)やデキストラン等を結合させる。
次に、暗線位置測定が正常になされたか否かを確認するための構成について、図9も参照して説明する。図5に示したチッププレート211に12個のチップ連結ユニット80をセットして測定を行う場合、各チップ連結ユニット80の1個の測定チップ9には、暗線位置変化が必ず生じることが既知である第1基準試料(Positive Control)が、また別の1個の測定チップ9には、暗線位置変化が必ず生じないことが既知である第2基準試料(Negative Control)が供給される。つまりこの場合、通常の測定対象の試料液11は、1個のチップ連結ユニット80においてそれぞれ6個の測定チップ9を用いて測定に供される。
そして暗線位置測定を行う際には、上記2種の基準試料に対しても通常と同じ測定処理がなされる。このとき信号処理部20は、ドライバ19の出力信号に基づいて、上記第1基準試料および第2基準試料の暗線位置測定に関する特性値として、それぞれ結合速度定数kaおよび解離速度定数kdを求める。ここで結合速度定数kaは結合反応の速さを示す値であり、また解離速度定数kdは解離反応の速さを示す値である。
また信号処理部20は、各基準試料それぞれについて、上記結合速度定数kaおよび解離速度定数kdの各バラツキを示すCV(Coefficient of Variation)値を求める。このCV値は変動係数と呼ばれ、標本の標準偏差を平均で除した値で定義されるものである。信号処理部20はさらに、そのCV値を所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて、96個の測定チップ9を用いた一連の測定の良否を判定する。この判定結果は後述するように、上記CV値と併せて各基準試料毎に表示手段21に表示される。
さらに信号処理部20は、ドライバ19の出力信号に基づいて、96個の測定チップ9について各々センシング物質30の固定量を求める。このセンシング物質30の固定量は、図8(1)に示した全反射減衰角θSP(試料供給前の初期値)が該固定量に対応して変化することから、本実施形態ではこの初期の全反射減衰角θSPを示す値で定義して間接的に求めるものとする。センシング物質の固定量の測定方法としては勿論これに限られるものではなく、その他に、固定反応前後で測定する方法や、センシング表面に参照部を設けてこれを利用する方法などを適用することもできる。
また信号処理部20は、上述のようにして求めたセンシング物質30の固定量を所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて、そのセンシング物質30が固定されている測定チップ9の良否を判定する。また、このセンシング物質30の固定量を用いて、結合速度定数kaおよび解離速度定数kdや、前述の解離定数KDや最大結合量Rmaxを求めるようにしてもよい。
図9は、表示手段21における各情報の表示状態を示すものである。なお同図でa、b、cで示すのがそれぞれ、第1基準試料の特性値バラツキ、第2基準試料の特性値バラツキ、センシング物質30の固定量を示す表示領域である。
同図の領域a、bに示される通り本例では、第1基準試料の結合速度定数kaのCV値=0.05、解離速度定数kdのCV値=0.1であり、また第2基準試料の結合速度定数kaのCV値=0.05、解離速度定数kdのCV値=0.09である。そして本例では、これらのCV値と比較する前述の閾値は0.1であって、それ以下であれば基準試料に対する測定は正常になされていると判定する。したがって両基準試料の結合速度定数kaおよび解離速度定数kdには、いずれも「OK」の表示が付されている。
そこでシステムの利用者は、これらの表示を見て、両基準試料に対する暗線位置測定は正常になされたと確認することができ、ひいては、それらの基準試料とともに行われた通常試料に関する一連の暗線位置測定も正常になされたと判断することができる。
なお、前述のようにして求めたセンシング物質30の固定量が所定の基準範囲に無い(つまりある所定値未満か、あるいは別の所定値以上)測定チップ9から得られた結合速度定数kaおよび解離速度定数kdについては、CV値の算出から除外するように信号処理部20を構成しておくことが望ましい。そのようにすれば、測定チップに起因する測定不良の要因は除いて、その他の測定操作等に起因する測定不良が有ったか否かを正確に判別可能となる。
また信号処理部20を、センシング物質30の固定量に基づいて結合速度定数kaおよび解離速度定数kdを補正するように構成しておくことも好ましい。そのようにする場合は、センシング物質30の固定量の違いによる定数kaおよびkdの変化分を補償してそれらを正確に求めることができ、ひいては、測定不良が有ったか否かを正確に判別可能となる。
また、上記閾値との比較に基づく測定可否の判定を信号処理部20に行わせることなく、つまり上記「OK」のような表示は省いて、結合速度定数kaおよび解離速度定数kdのCV値のみを表示させ、そこからシステム利用者が測定可否の判定をするようにしても構わない。あるいはその反対に、結合速度定数kaおよび解離速度定数kdのCV値は表示させないで、測定可否の判定結果だけを表示させるようにしてもよい。
また、測定可否の判定に供するためにバラツキを求める特性値として、上記結合速度定数kaおよび解離速度定数kdの他に、解離定数KDや最大結合量Rmaxを求めるようにしてもよい。なお解離定数KDとは、上記の解離速度定数kdを結合速度定数kaで除した値である。すなわち、解離定数KDは、解離定数KD=解離速度定数kd/結合速度定数kaの式で示される値である。一方最大結合量Rmaxとは、試料と生理活性高分子物質との間において化学的な結合反応が飽和したときの、試料と生理活性高分子物質との間の化学的な結合量を示すものである。
他方、図9のcの領域には、8×12個並べられた測定チップ9と対応を取って、各測定チップ9を用いてなされた測定の結果、つまり全反射減衰角θSPの変化状態等が表示され、またそれと併せて、各測定チップ9におけるセンシング物質30の固定量が表示されている。なお本実施形態では、さらに各測定チップ9毎に、上記結合速度定数kaおよび解離速度定数kdも表示されるようになっている。
そこでシステム利用者は、表示された測定チップ9毎のセンシング物質固定量を見て、その測定チップ9を用いた測定が正常になされたか否かを判定することができる。また特に本実施形態では、センシング物質固定量が前記所定の閾値に満たない測定チップ9に関しては、「×」のマークが付加表示されるようになっている。そこでシステム利用者は、このマークが付された測定チップ9は不良であって、それを用いた測定の結果は信頼できるものではないということが即座に分かるようになっている。
なお、上述のように8×12個並べられた測定チップ9と、各測定チップ9を用いてなされた測定の結果とを対応付けて表示するには、例えば、測定チップ9を1個ずつ表面プラズモン測定装置101に移送する連結ユニット移送部120(図1参照)の動作を制御する信号と、該表面プラズモン測定装置101のドライバ19から信号処理部20に送られる測定信号との同期を取る、あるいは測定チップ9にバーコードなどの識別手段を付しておき、暗線位置測定時に併せてその識別手段を読み取る、等の方法を適用すればよい。
また、上記センシング物質固定量と閾値との比較に基づく測定チップ9の良否判定を信号処理部20に行わせることは必ずしも必要ではなく、センシング物質固定量の表示だけを行わせてもよい。あるいはそれとは逆に、センシング物質固定量の表示は行わないで、測定チップ9の良否判定結果だけを表示手段21に表示させるようにしてもよい。
以上、測定チップとして、カップ状に形成されたものを用いる形態について説明したが、金属膜上に別部材を圧接し、流路を形成してなる形態も望ましい。これにより、精度の高い結合速度定数ka、解離速度定数kdの測定が可能になる。
次に図10を参照して、本発明の全反射減衰を利用した測定システムに適用され得る漏洩モード測定装置について説明する。
以上説明した表面プラズモン測定装置101は、一部の構成を変更することにより漏洩モード測定装置とすることができる。図10は、そのようにして構成した漏洩モード測定装置の測定ユニットを示す側面図である。なおこの図10において、図3中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する。
この漏洩モード測定装置も、上述の表面プラズモン測定装置と同様に測定チップ9を用いるように構成されている。この測定チップ9の上面に形成された凹部10cの底面にはクラッド層40が形成され、さらにその上には光導波層41が形成されている。これらクラッド層40と光導波層41とによって薄膜層が形成されている。
誘電体ブロック10は、例えば合成樹脂やBK7等の光学ガラスを用いて形成されている。一方クラッド層40は、誘電体ブロック10よりも低屈折率の誘電体や、金等の金属を用いて薄膜状に形成されている。また光導波層41は、クラッド層40よりも高屈折率の誘電体、例えばPMMAを用いてこれも薄膜状に形成されている。クラッド層40の膜厚は、例えば金薄膜から形成する場合で36.5nm、光導波層41の膜厚は、例えばPMMAから形成する場合で700nm程度とされる。
上記構成の漏洩モード測定装置において、レーザ光源14から射出された光ビーム13を誘電体ブロック10を通してクラッド層40に対して全反射角以上の入射角で入射させると、該光ビーム13の多くの成分が誘電体ブロック10とクラッド層40との界面10bで全反射するが、クラッド層40を透過して光導波層41に特定入射角で入射した特定波数の光は、該光導波層41を導波モードで伝搬されるようになる。こうして導波モードが励起されると、特定入射角で入射した入射光のほとんどが光導波層41に取り込まれるので、上記界面10bに特定入射角で入射し、全反射された光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。
光導波層41における導波光の波数は、該光導波層41上の試料液11の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角である全反射減衰角を知ることによって、試料液11の屈折率や、それに関連する試料液11の特性を分析することができる。
以上のような漏洩モード測定装置を用いて本発明の測定システムを構成することも可能であり、その場合にも、先に説明した表面プラズモン測定装置を用いた場合と同様の効果を奏することができる。
本発明の一実施形態による全反射減衰を利用した測定システムの概略構成図 上記システムに用いられた表面プラズモン測定装置の要部を示す概略平面図 上記表面プラズモン測定装置の要部を示す概略側面図 チップ連結ユニットを示す斜視図 チップ連結ユニットをチッププレートにセットした状態を示す平面図 試料液自動供給機構の分注機の一部を示す正面図 表面プラズモン測定装置の電気的構成を示すブロック図 光ビームの界面への入射角と差動アンプの出力との関係を示す図 表示手段に表示された内容を示す概略図 漏洩モード測定装置の一例を示す概略側面図
符号の説明
9 測定チップ
10 誘電体ブロック
11 試料液
13 光ビーム
14 レーザ光源
15 入射光学系
16 コリメータレンズ
17 光検出器
20 信号処理部
21 表示手段
29 暗線位置測定部
30 センシング物質
80 チップ連結ユニット
101 表面プラズモン測定装置
101A、101B、101C… 測定ユニット

Claims (4)

  1. 光ビームを発生する光源と、
    前記光ビームに対して透明な誘電体ブロック、およびこの誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる薄膜層を備えてなる測定チップと、
    前記光ビームを、前記誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で該光ビームが全反射するように、この光ビームを前記誘電体ブロックに対して入射させる光ビーム入射光学系と、
    前記界面で全反射した光ビーム中の暗線位置を測定する暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
    前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
    算出された前記特性値のバラツキを表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
    前記演算手段が、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)、および最大結合量(Rmax)のうちの少なくとも1つを前記特性値として、そのバラツキを算出するものであることを特徴とする全反射減衰を利用した測定システム。
  2. 光ビームを発生する光源と、
    前記光ビームに対して透明な誘電体ブロック、およびこの誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる薄膜層を備えてなる測定チップと、
    前記光ビームを、前記誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で該光ビームが全反射するように、この光ビームを前記誘電体ブロックに対して入射させる光ビーム入射光学系と、
    前記界面で全反射した光ビーム中の暗線位置を測定する暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
    前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
    算出された前記特性値のバラツキを所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて前記一連の測定の良否を判定する手段と、
    この判定結果を表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
    前記演算手段が、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)、および最大結合量(Rmax)のうちの少なくとも1つを前記特性値として、そのバラツキを算出するものであることを特徴とする全反射減衰を利用した測定システム。
  3. 光ビームを発生する光源と、
    前記光ビームに対して透明な誘電体ブロック、およびこの誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる薄膜層を備えてなる測定チップと、
    前記光ビームを、前記誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で該光ビームが全反射するように、この光ビームを前記誘電体ブロックに対して入射させる光ビーム入射光学系と、
    前記界面で全反射した光ビーム中の暗線位置を測定する暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
    前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
    算出された前記特性値のバラツキを表示する表示手段とが設けられた測定システムであって、
    測定チップとして、前記薄膜層の上にさらに、特定物質と結合するセンシング物質が固定されたものが用いられるとともに、
    このセンシング物質の固定量を求める手段が設けられ、
    前記演算手段が、前記センシング物質の固定量が所定値未満あるいは所定値以上である測定チップから得られた特性値については、前記バラツキを算出する上で除外するように構成されていることを特徴とする全反射減衰を利用した測定システム。
  4. 光ビームを発生する光源と、
    前記光ビームに対して透明な誘電体ブロック、およびこの誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる薄膜層を備えてなる測定チップと、
    前記光ビームを、前記誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で該光ビームが全反射するように、この光ビームを前記誘電体ブロックに対して入射させる光ビーム入射光学系と、
    前記界面で全反射した光ビーム中の暗線位置を測定する暗線位置測定手段とを備えた全反射減衰を利用した測定システムにおいて、
    前記暗線位置の変化が必ず生じることが既知である複数の基準試料および/または必ず生じないことが既知である複数の基準試料と、測定対象の試料とを含む複数の試料について一連の暗線位置測定がなされたとき、前記複数の基準試料の暗線位置測定に関する特性値のバラツキを算出する演算手段と、
    算出された前記特性値のバラツキを所定の閾値と比較し、その比較結果に基づいて前記一連の測定の良否を判定する手段と、
    この判定結果を表示する表示手段とが設けられた、全反射減衰を利用した測定システムであって、
    測定チップとして、前記薄膜層の上にさらに、特定物質と結合するセンシング物質が固定されたものが用いられるとともに、
    このセンシング物質の固定量を求める手段が設けられ、
    前記演算手段が、前記センシング物質の固定量が所定値未満あるいは所定値以上である測定チップから得られた特性値については、前記バラツキを算出する上で除外するように構成されていることを特徴とする全反射減衰を利用した測定システム。
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