JP4397448B2 - 高炉の出銑滓量制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉内の溶銑を溶滓ごと出銑孔から出銑滓として排出する際の高炉の出銑滓量制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉では、一般的に、コークスや鉱石等を上方から投入し、炉の下部に設けられた羽口から熱風を送風することにより、当該羽口前方の所謂レースウエイで燃焼に類似した温度上昇が発生し、これによって鉱石が溶融し、溶銑と溶滓として炉床に流下する。溶滓とは、溶銑以外の文字通り滓であり、スラグとも呼ばれ、一般的には、比重の関係から、溶滓より溶銑が下方に溜まる。このように高炉の炉床部に貯留された溶銑及び溶滓(以下、単に溶銑滓とも記す)は、炉壁下端部に形成された出銑孔から出銑滓として排出される。
【0003】
この出銑滓排出の際の従来の制御方法としては、例えば特公昭63−65730号公報に記載されるものがある。この従来技術は、羽口からの送風量と出銑孔深度とを相対的に制御するものであり、例えば出銑孔深度が浅くなったときには、羽口からの送風量を減少することにより、出銑孔近傍のガス流れが不活発となり、出銑孔近傍にスラグが付着して、出銑孔深度が深くなるなどとしている。また、出銑の末期において、出銑孔からガス吹きが生じる,所謂荒出の状態になると、羽口からの送風量を減少することにより、炉床部に貯留している溶銑滓のレベル,つまり液面を安定させ、ガス吹きを抑制できるとしている。なお、出銑作業が終了したら、前記出銑孔にマッドと呼ばれる充填材を押し込んでそれを閉塞する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の出銑滓制御方法では、出銑孔深度が浅くなったときには、羽口からの送風量を減少することにより、出銑孔近傍のガス流れが不活発となり、出銑孔近傍にスラグが付着して、出銑孔深度が深くなり、逆に出銑孔深度が浅くなったときには、羽口からの送風量を増加することにより、出銑孔近傍のガス流れが活発になり、出銑孔近傍のスラグが剥離されて出銑孔深度が浅くなるとしている。しかしながら、羽口からの送風量を変更したからといって、出銑孔近傍にスラグが付着したり、そこからスラグが剥離されたりすることはなく、それによって直接的に出銑孔深度が変化するということはない。つまり、例えば出銑孔深度が浅いときに羽口からの送風量を減少しても、それ以上、出銑孔深度,つまり炉床部を覆うマッド堆積層が深くなることはない。
【0005】
また、後述するように、高炉の出銑作業では、安定した出銑滓量を長時間に渡って排出することが最大の目標である。このことは、逆に言えば、同等の出銑量が要求されているときには、出銑回数を減少させることと同じである。
しかしながら、前記従来の出銑滓制御方法において、出銑の末期における荒出状態で、羽口からの送風量を減少すると、ガス吹きは抑制できるものの、実際の出銑時間を長くすることはできない。即ち、荒出状態となってから、出銑滓量を増加安定させるように羽口からの送風量を減少すると、ガス吹きは抑制されるものの、出銑滓量も減少するから、これ以上の安定した出銑滓は望めないとして出銑孔をマッドで閉塞する。ところが、実際の高炉の炉床部には、排出されない溶銑や溶滓(特に溶滓)が貯留し続け、出銑滓のバランスが崩れてしまうことがある。そこで、出銑孔を複数形成して二箇所以上から出銑作業を行う,所謂ラップ出銑が行われる。このようにラップ出銑を行うと、今度は出銑滓が多量に排出されるため、炉床部の溶銑滓が短期に減少し、出銑滓作業は短時間で終了する。この繰返しにより、排出される溶銑量の全体に対する比,つまり出銑比を高めて増産しようとすればするほど、ラップ出銑回数が増加し、出銑回数も増加することになり、出銑時間そのものは短縮されてしまうという結果になる。
【0006】
本発明は、安定した出銑滓量を確保することにより、出銑回数を減少して出銑時間そのものを長くすることができる高炉の出銑滓量制御方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記諸問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る高炉の出銑滓量制御方法は、高炉内の溶銑を溶滓ごと出銑孔から出銑滓として排出する際の出銑滓量の制御方法であって、前記出銑孔から排出される各出銑回の出銑滓量を増加させたいときには、前記出銑孔をマッドで閉塞する際、当該出銑孔に押込むマッド押量を減少させてマッド堆積層を薄くすることによって、コークス充填層との間の空間を大きくして溶銑及び溶滓の流動性を向上させることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のうち請求項2に係る高炉の出銑滓制御方法は、高炉内の溶銑を溶滓ごと出銑孔から出銑滓として排出する際の出銑滓量の制御方法であって、前記出銑孔から排出される各出銑回の出銑滓量を減少させたいときには、前記出銑孔をマッドで閉塞する際、当該出銑孔に押込むマッド押量を増加させてマッド堆積層を深くすることによって、コークス充填層との間の空間を小さくして溶銑及び溶滓の流動性を低下させることを特徴とするものである。
ここで、後述するように、これらの発明は、羽口より下方のコークス充填層と出銑孔が開口されるマッド堆積層との間で、溶銑及び溶滓(溶銑滓)が流動する空間に着目してなされた。即ち、この空間が大きいと溶銑滓の流動性が向上するので出銑滓量は増加するし、逆に空間が小さいと溶銑滓の流動性が低下して出銑滓量は減少する。この空間は、コークス充填層かマッド堆積層の何れか一方又は双方を制御することで調整可能である。そこで、本発明では、前記出銑孔深度で分かるマッド堆積層の状態,つまり深いか浅いかをコントロールし、もって当該マッド堆積層とコークス充填層との間の空間を調整する。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明に係る高炉の出銑滓量制御方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、図1には、本実施形態の高炉の羽口から炉床部までの縦断面図を示す。高炉の炉壁1の下部には、その全周に渡って、熱風送風口としての羽口2が設けられている。この羽口2には、図示されない熱風炉で1000℃程度まで加熱されたガスが供給され、当該羽口2から高炉内に吹出された熱風は、後述するコークス充填層4にレースウエイ3と呼ばれる高熱空間部を形成する。
【0010】
一方、高炉の上方から投入されたコークスや鉱石等は、前記羽口2より下方では、ほぼコークスだけからなるコークス充填層4を形成する。これは、前記レースウエイ3での高温加熱によって鉱石が溶融し、それが溶銑及び溶滓,つまり溶銑滓9として炉床部に流下するためである。また、炉床部は、耐火材からなるマッドで覆われて、マッド堆積層5を構成している。このマッドは、炉壁からマッド堆積層5まで穿設された出銑孔7を閉塞するために用いられるものであり、このマッド堆積層5が、本来の炉床を保護している。
【0011】
そして、高炉の炉床部,つまり前記マッド堆積層5上に溶銑滓9が或る程度溜まったら、前記炉壁1からマッド堆積層5まで出銑孔7を貫通し、この出銑孔7から溶銑滓9を出銑滓として排出する。
次に、前記羽口のレイアウトの一例を図2に示す。本実施形態の高炉では、第1出銑孔7(a)から第3出銑孔7(c)までの三つの出銑孔を用いる。一方、炉壁には全周に渡って、計33個の羽口2が設けられている。全ての羽口2は、共通の熱風供給源に接続されており、どの羽口2からも十分な熱風を吹出すことができるようになっている。
【0012】
そして、本実施形態では、前記各出銑孔の上方の羽口2(a),具体的には第1出銑孔7(a)の上方で、それを挟むように配設されている第1及び第33羽口2(a)、第2出銑孔7(b)の上方で、それを挟むように配設されている第15及び第16羽口2(a)、第3出銑孔7(c)の上方で、それを挟むように配設されている第18及び第19羽口2(a)の各羽口径を、その他の羽口2(b)の羽口径より大きくして、それら出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量が、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加できるようになっている。但し、例えば出銑作業に用いられる出銑孔7は、原則的に一つだけであることなどから、これら出銑孔上方で羽口径の大きな羽口2(a)には、熱風の送風量を調整するための流量制御弁8を介装してある。
【0013】
また、後述するように、本実施形態では、前記出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加したり減少したり、或いは両者を同等に制御したりするものであるため、前記羽口2のレイアウトは、例えば図3に示すようなものであってもよい。即ち、全ての羽口2の羽口径を、前記出銑孔上方の羽口2(a)の羽口径と同程度とし、全ての羽口に流量制御弁8を介装する。従って、例えば出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加させるならば、当該出銑孔上方の羽口2(a)に介装される流量制御弁8を開き且つその他の羽口2(b)に介装される流量制御弁8を閉じればよい。逆に例えば出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に減少させるならば、当該出銑孔上方の羽口2(a)に介装される流量制御弁8を閉じ且つその他の羽口2(b)に介装される流量制御弁8を開けばよい。また、全ての羽口2からの送風量を同等にするならば、全ての羽口2の流量制御弁8の開度を同程度にすればよい。
【0014】
次に、前記羽口に設けられた流量制御弁について図4を用いて説明する。この流量制御弁は、セラミックスを弁体8aとした高温・高圧・高流速下でも長時間の使用に耐えられるものであり、送風支管11の延長部12と、羽口2内のブローパイプ13に接続するための下部ベンド14との間の球面短管15に一体化されている。この流量制御弁8の開度は、手動若しくはアクチュエータによって連続的に変更可能であり、その風量割合特性は図5に示すようになっている。なお、風量割合は、各弁開角度(開度)での風量を全開風量で除した値の百分率で表れる。
【0015】
次に、本実施形態の出銑滓量制御方法の原理について説明する。
まず、安定した出銑滓量を確保しながら出銑時間を延長する理想について図6の出銑滓量特性図を用いて説明する。即ち、例えば安定した出銑滓量が期待できるとするならば、高炉の耐久性からも材料供給の面からも、溶銑や溶滓ができる量,即ち造銑滓量は一定であることが望ましく、実際の操業でも造銑滓量は一定になるようにしている。つまり、例えば造銑滓量を増加させようとすれば、炉内温度を上昇させなければならないことから炉体の耐久性が低下するし、原材料もプロセス的に増加供給しなければならない。これに対して、一般的な出銑滓量特性は、図6のように表れる。即ち、何らの操作も施さない場合、出銑の経時と共に、出銑孔系が、熱による損耗で大きくなるために、出銑滓量は出銑後期に増加する。これを一定である造銑滓量に近づけて、出銑時間を延長するためには、初期の出銑孔径を小さくしておかなければならないことから、出銑初期には出銑滓量は造銑滓量より少なくなってしまう。出銑時間の延長は、実際の出銑滓量を造銑滓量に近づけることによって可能となり、それを安定化させることにより大幅な延長が可能となる。
【0016】
一方、前記特公昭63−65730号公報に記載されるように、出銑の末期に荒出状態が発生するのは、羽口からの送風量が多過ぎて、内部の圧力が高くなり、それにより炉床部の溶銑滓の液面が波立ってしまうためであると考えられており、従って荒出状態になると羽口からの送風量を減少し、ガス吹きを抑制するようにしていた。しかしながら、そのようにすると、確かにガス吹きは抑制されるものの、出銑滓量そのものも減少してしまい、安定した出銑滓量が得られないとして出銑作業を終了している。つまり、従来は出銑滓量を増加しようとして羽口からの送風量を減少しているにも係わらず、実質的には出銑滓量が減少してしまうという矛盾があった。また、このように羽口からの送風量を減少するために、羽口径そのものを小さくすると、今度は増産のために送風量を増加させたくとも対応できないことなどの問題もあった。なお、出銑作業の終了は、出銑孔をマッドで閉塞することで行われる。
【0017】
この矛盾について、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て、本発明を開発した。即ち、出銑滓量が少ないということ,つまり排銑滓性が悪いということは、炉内出銑孔近傍での溶銑滓の流動性が悪いということであり、流動性が悪化する原因は温度が低いか、抵抗となるものが存在するかの何れかである。このうち、実際の操業では溶銑滓の温度をほぼ一定になるようにコントロールしていること、また排銑滓性の悪い出銑孔からの出銑滓温度が低いとは限らないことから、出銑滓量は、溶銑滓が貯留している炉床部のうち、例えば前記図1に示すように、コークス充填層4とマッド堆積層5との間の空間6における溶銑滓9の流動性が関与していることを見出した。但し、この空間6とは、単純に層同志間の空間というだけでなく、実質的には層をなさないコークス間の隙間といった空間も含んでいる。この空間6が大きいと、溶銑滓9の流動性が向上して出銑滓量が増加する(排銑滓性が向上する)。また、逆にこの空間6が小さいと、溶銑滓9の流動性が低下して出銑滓量が減少する(排銑滓性が低下する)。この流動性に関しては、後段に詳述するように、主として粘性の大きい溶滓の方が影響を受け易いのであるが、何れにしてもこの空間をコントロールすることができれば、出銑滓量を自在に調整できることが判明した。
【0018】
この空間6を構成する要素は、当然ながらコークス充填層4とマッド堆積層5との相対的な位置関係である。例えば図1において、コークス充填層4の出銑孔側端部を破線で示す位置まで変位させることができれば、マッド堆積層5との間の空間6は広がる。逆に、マッド堆積層5のうち、出銑孔7部位におけるコークス充填層4側端部を破線で示す位置まで変位させても、コークス充填層4との間の空間6は広がる。このうち、前者は、出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加させることで可能となることが分かった。つまり、出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加させると、コークス充填層4全体が出銑孔7から遠ざかる方向に移動しようとしたり、或いは出銑孔側のコークス充填層4が密になるように圧縮されたりすることにより、当該コークス充填層4の出銑孔側端部は出銑孔7から遠ざかり、マッド堆積層5との間の空間6が大きくなるのである。
【0019】
このため、本実施形態では、前記図2に示すように、前記各出銑孔上方の羽口2(a)の羽口径を、その他の羽口2(b)の羽口径より大きく設定して、当該出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加できるようにしてある。また、出銑滓以外のときには、前述のように、炉内での造銑滓を可及的に安定させるのが望ましく、また後述のように炉体を保護するためにも、前記各出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量と同等にする必要がある。更に、後述するようにマッドの使用量を減少しようとするならば、逆に当該出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に減少する必要も生じる。そのため、本実施形態では、少なくとも前記各出銑孔上方の羽口2(a)に流量制御弁8を介装して、その送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増減調整できるようにしている。
【0020】
また、この羽口間の送風量の関係は相対的なものであるから、例えば前記図3に示すように、全ての羽口2の羽口径を、前記図2における出銑孔上方の羽口2(a)の羽口径と同等とし、且つ全ての羽口2に流量制御弁8を介装し、前述のように出銑時には、出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加し、それ以外のときには、例えば全ての羽口2からの送風量を同等とし、或いは出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に減少するようにしてもよい。
【0021】
一方、後者,即ちマッド堆積層5のうち、出銑孔7部位におけるコークス充填層4側端部を変位させることは容易ではない。そこで、出銑孔7までの溶銑滓9の流動性を高めるべく、単に出銑孔深度を浅くする,つまりコークス充填層4から遠い位置に出銑孔7を開口するようにすることも考えられる。しかしながら、一般の高炉では、例えば出銑樋等の関係から、出銑孔を開ける位置もその角度もほぼ規制されており、出銑孔の開口部位を変更することは困難である。そこで、出銑滓量を全体的に増加させたいとき,つまり、出銑孔深度を浅くすべく、前記マッド堆積層5のうち、出銑孔部位におけるコークス充填層4側端部を当該コークス充填層4から離し、両者間の空間6を大きくしたいときには、出銑孔7を閉塞し、そこから押込まれるマッド押量を減少すればよい。逆に、出銑滓量を全体的に減少させたいとき,つまり、出銑孔深度を深くすべく、マッド堆積層5のうち、出銑孔部位におけるコークス充填層4側端部を当該コークス充填層4に近づけ、両者間の空間6を小さくしたいときには、出銑孔から押込むマッド押量を増加すればよい。
【0022】
また、これらの組合わせでマッドの使用量,所謂原単位を低減させることができる。即ち、例えば前述のように出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量に対して、相対的に増加させ、これによりコークス充填層4とマッド堆積層5との空間6を大きくして溶銑滓9の流動性を高めると、マッド堆積層5が高温の溶銑滓9に晒され、その部分のマッド耐火物が損耗し易くなる(これが羽口送風量減少時に出銑孔深度が浅くなる真の理由である)。そこで、例えば出銑滓量を増加させる必要がないときや、出銑作業時以外のときには、例えば出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量と同等とするか、或いはそれより相対的に減少し、出銑孔7部位のマッド堆積層5が流動性のよい溶銑滓9に晒されにくくして、その損耗を抑制防止することができる。更に、コークス充填層4をマッド堆積層5に近づけると、コークス充填層4の下端部がマッド堆積層5に埋もれてしまうような状態になる。このようになると、マッド堆積層5は、コークス充填層4によって溶銑滓9から保護されるようになり、マッド堆積層5の損耗はより一層抑制防止される。このように、出銑滓量を増加させる必要がないときや、出銑作業時以外のときには、例えば出銑孔上方の羽口2(a)からの送風量を、その他の羽口2(b)からの送風量と同等とするか、或いはそれより相対的に減少することにより、マッド堆積層5の損耗を抑制防止し、出銑孔深度を確保しながら、マッド原単位を低減することが可能となる。
【0023】
ここまでは、前述したコークス充填層とマッド堆積層との間の空間が、溶銑滓全体の流動性に影響するとしてきたが、この空間の大きさの影響は、溶銑より溶滓の方が受け易い。これは、比重の関係で溶銑の上に溶滓が存在していること、溶滓の粘性の方が溶銑の粘性より遙に高いことなどに依存している。つまり、コークス充填層とマッド堆積層との間の空間の大きさをコントロールすることによって、排銑性と排滓性とのバランス,即ち出銑滓バランスをコントロールすることができるのである。
【0024】
先に触れたように、出銑作業中に羽口からの送風量を減少する従来の出銑滓制御方法では、前記コークス充填層とマッド堆積層との間の空間が小さくなり、特に溶滓の流動性が低下して排滓性が悪化する一方、当該空間の大きさにさほど影響を受けない溶銑はどんどん排出される。従って、この状態で出銑作業を中止し、次の出銑までの間に、炉床部に貯留される溶滓の割合は溶銑に比して次第に増加することになる。そこで、幾度かの出銑作業を繰返すと、出銑滓バランスが崩れ、溶滓を多量に排出する必要が生じる。そのため、前述のようなラップ出銑や出銑孔径を拡径する作業を行い、炉内の溶滓を一斉に排出するのである。従って、どうしても出銑回数が増加し、作業負荷も増大してしまうという問題が残存する。
【0025】
ところが、前述のようにコークス充填層とマッド堆積層との間の空間は、溶銑の流動性よりも溶滓の流動性に大きな影響を与えるので、所望の出銑滓バランスに対して、例えば排銑性がよく、排滓性が悪いときには、前記出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に増加させることにより、単に出銑滓量を増加させるだけでなく、排滓性を向上し、出銑滓バランスを所望の状態に近づけることができる。逆に、所望の出銑滓バランスに対して、例えば排銑性が悪く、排滓性がよいときには、前記出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に減少させることにより、単に出銑滓量を減少させるだけでなく、排銑性を向上し、出銑滓バランスを所望の状態に近づけることができる。このように、本実施形態では、出銑滓バランスをコントロールすることにより、出銑作業毎に、安定した出銑滓量を長時間に渡って確保でき、その結果、出銑回数が低下して出銑時間を長くすることができるのである。
【0026】
次に、本実施形態の出銑滓量制御方法の作用について、種々の実験結果を用いて説明する。
図7は、出銑回数(図ではTap.No)がa回目以後、前記図2の第3出銑孔の上方の第18羽口及び第19羽口の羽口径を、その他の羽口の羽口径であるΦ120mmからΦ140mmに拡径し、出銑時以外は流量制御弁を制御することにより、当該第18羽口及び第19羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量と同等とし、当該第3出銑孔からの出銑作業中は流量制御弁を全開とすることにより、当該第18羽口及び第19羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、約1.5倍程度に増加するようにしたものである。なお、図7cに示すように、前記a回目以前の出銑作業の平均出銑時間x- は191分,a回目以後の平均出銑時間x- は198分で、出銑時間そのものはさほど変化していない。
【0027】
ここでは、スラグ指数という評価指標を用いて、a回目前後での出銑状態を比較する。まず、このスラグ指数は、出銑時間に対する出滓時間の比(=出滓時間/出銑時間)である。出銑時間とは、文字通り、出銑孔を開けてからそれを閉じるまでの時間である。出滓時間とは、出銑樋の或るレベルまで出銑滓が溜まったときから出銑孔を閉じるまでの時間である。つまり、スラグ指数とは、特に出銑初期の段階での出銑滓量を評価するものと考えればよく、前記図6の出銑滓量特性図で、出銑初期の出銑滓量を造銑滓量に近づけることができているかどうかという評価指標になる。図7aには、前記出銑回数a回目以前のスラグ指数のヒストグラムを、図7bには、当該出銑回数a回目以後のスラグ指数のヒストグラムを示す。これらより、前記出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に増加させた出銑回数a回目以後は、スラグ指数の高い度数が多くなっていることが分かる。ここで、このスラグ指数が大きいということは、出銑初期から出銑滓量が多いということであるから、通常に考えれば、出銑時間そのものは短くなりかねない。しかしながら、前記出銑回数a回目以後も、出銑時間は短くなっていないことから、出銑作業中、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に増加することにより、前記コークス充填層とマッド堆積層との間の空間を大きくして溶銑滓の流動性を高め、もって出銑初期からの出銑滓量を増加させると共に出銑時間を確保して、高出銑比を達成できることが分かる。
【0028】
次に図8〜図13には、出銑回数(Tap.No)20〜50回目で、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量と同等とし、出銑回数50〜60回目(図中に網かけした部分)で、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量の30%程度まで減少し、また出銑回数60回以後は、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量と同等に戻したときの各物理量や評価指標を示した。
【0029】
まず、図8には前述したスラグ指数の各出銑回毎の変化を示した。前述のように出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に減少すると、前記コークス充填層とマッド堆積層との間の空間が小さくなって、当該空間における溶銑滓の流動性が低下するため、出銑初期の出銑滓量も低下し、従って前記出銑樋の所定のレベルまで出銑滓が溜まるのが遅くなるため、前記出銑回数50〜60回目ではスラグ指数は小さくなっている。また、この影響は次第に大きく表れることも分かる。一方、出銑回数60回目で出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量と同等にすると、スラグ指数は即座に大きくなっている。従って、出銑孔上方の羽口からの送風量を増加する制御に対する、スラグ指数の応答性は高いことが分かる。
【0030】
また、図9には出銑された銑バランスを、図10には出滓されたスラグバランスを示す。バランスとは、各出銑回において排出された量から投入した量を減じた値である。つまり、バランスが正値なら排出された量が投入した量より多いのであるから、排出性がよいのであり、負値なら排出性が悪いことになる。これらより明らかなように、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に減少すると、前記コークス充填層とマッド堆積層との間の空間が小さくなるため、この空間における流動性の影響を大きく受けるスラグの排滓性が低下し、さほど影響を受けない排銑性は相対的に向上している。また、この実施形態では、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量と同等にすると、銑バランスもスラグバランスも零近傍でバランスする。このことから、逆に出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に増加すると、排滓性が向上し、相対的に排銑性は低下することが想定される。
【0031】
次に、図11には各出銑回毎の出銑時間の変化を示す。前述のようなスラグ指数及び排銑滓バランスの変化に伴って、出銑回数50〜60回目では、出銑滓しにくい状態が継続され、全体的に出銑時間が短くなる傾向にある。このことと、前記スラグバランスとを考え合わせれば、従来、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に減少させる制御では、出銑作業の度に溶滓が蓄積され、やがてラップ出銑や出銑孔拡径によって、炉内の溶銑滓を一斉に排出しなければならなくなったことが理解される。
【0032】
次に、図12には出銑孔深度の変化を、図13には単位マッド押量当たりの出銑孔深度の変化を示す。図12は、意図的に出銑孔深度を変化させなかったことを表しており、図13は、その変化させない出銑孔深度に対して、単位マッド押量当たりの出銑孔深度が大きくなっているので、結果的に使用されるマッド押量が次第に減少していることになる。つまり、前述のように、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に減少させると、コークス充填層とマッド堆積層との空間が小さくなり、マッド堆積層が溶銑滓に晒されにくくなったり、或いはコークス充填層によって覆われて保護されるようになったりするため、マッド堆積層が損耗しにくく、その分だけ、出銑孔を閉塞する際に用いられるマッド押量が少なくて済むのである。また、この影響は、次第に大きく表れている。一方、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量と同等にすると、単位マッド押量当たりの出銑孔深度は即座に小さくなっていることから、前記コークス充填層とマッド堆積層との間の空間が大きくなるときのマッド堆積層の損耗の応答性は高いことが分かる。
【0033】
また、このことを逆に考えれば、出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、意図的に変化させない状態で、例えば出銑滓量を増加したいときには、前記コークス充填層とマッド堆積層との間の空間を大きくすればよいのであるから、そのようなときにはマッド堆積層を薄くすべく、マッド押量を減少してゆけばよい。逆に、出銑滓量を減少したいときには、コークス充填層とマッド堆積層との間の空間を小さくしてマッド堆積層を深くすべく、マッド押量を増加してゆけばよい。
【0034】
次に、前述のような出銑滓量制御を行った後と、それ以前の変化を図14に示す。ここでは、連続するAからXまでの各月のうち、N月から前述の送風量制御を行った結果を示しており、同図14aには出銑比を、同図bにはラップ出銑回数を、同図cには出銑回数を、同図dにはマッド原単位を夫々示す。これらから明らかなように、K月からW月までの高出銑比要求に対して、従来の制御方法では、次第にラップ出銑回数が増加してしまっている。これは出銑滓バランスにこだわらず、羽口からの風量を減少して溶銑の排出を優先した結果、溶滓が炉内に蓄積し、それを排出するために発生したのである。これに対して、本実施形態の制御を行ったN月からは出銑滓バランスを適切に保持することで、溶滓の蓄積を回避し、もってラップ出銑回数を減少させることができた。
【0035】
また、このラップ出銑回数の減少と共に、出銑滓量及び出銑滓バランスを適切に保持することによって、出銑回数が低減しており、このことから高出銑比下で出銑時間が延長できていることが分かる。また、出銑時以外や高出銑滓量が要求されていないときには、前記出銑孔上方の羽口からの送風量を、その他の羽口からの送風量に対して、相対的に減少させることで、コークス充填層とマッド堆積層との間の空間を小さくし、もってマッド堆積層の損耗を抑制するようにしたため、結果的にマッド原単位を低減し、コストの低廉化を図ることができた。また、このように全体に操業を安定させることで、更なる炉体の寿命延長を達成させることができた。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る高炉の出銑滓量制御方法によれば、出銑孔に押込むマッド押量を減少させてマッド堆積層を薄くすることによって、コークス充填層との間の空間を大きくして溶銑及び溶滓の流動性を向上させ、これにより出銑孔からの出銑滓量を増加させることができるので、例えば出銑初期や出銑末期で出銑滓量が減少しがちなときにも、それを増加方向に制御して、出銑滓量を安定し、もって出銑時間そのものを長くすることができる。
【0037】
また、本発明のうち請求項2に係る高炉の出銑滓量制御方法によれば、出銑孔に押込むマッド押量を増加させてマッド堆積層を深くすることによって、コークス充填層との間の空間を小さくして溶銑及び溶滓の流動性を低下させ、これにより出銑孔からの出銑滓量を減少させることができるので、例えば出銑後期で出銑滓量が増加しがちなときにも、それを減少方向に制御して、出銑滓量を安定し、もって出銑時間そのものを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炉の羽口から炉床部までの状態を示す縦断面図である。
【図2】出銑孔及び羽口の一例を示す説明図である。
【図3】出銑孔及び羽口の他の例を示す説明図である。
【図4】図2又は図3に用いられる流量制御弁の説明図である。
【図5】図4の流量制御弁の特性説明図である。
【図6】一般的な出銑滓量の説明図である。
【図7】羽口送風量を変更する前後の説明図であり、(a)は羽口送風量を変更する以前のスラグ指数の度数率を示すヒストグラム、(b)は羽口送風量を変更した以後のスラグ指数の度数率を示すヒストグラム、(c)は羽口送風量を変更する前後の各出銑毎の出銑時間の説明図である。
【図8】羽口送風量を変更したときのスラグ指数の変化を示す説明図である。
【図9】羽口送風量を変更したときの銑バランスの変化を示す説明図である。
【図10】羽口送風量を変更したときのスラグバランスの変化を示す説明図である。
【図11】羽口送風量を変更したときの出銑時間の変化を示す説明図である。
【図12】羽口送風量を変更したときの出銑孔深度の変化を示す説明図である。
【図13】羽口送風量を変更したときの単位マッド押量当たりの出銑孔深度の変化を示す説明図である。
【図14】羽口送風量を変更する前後の説明図であり、(a)は羽口送風量を変更する前後の出銑比の変化を示す説明図、(b)は羽口送風量を変更する前後のラップ出銑回数の変化を示す説明図、(c)は羽口送風量を変更する前後の出銑回数の変化を示す説明図、(d)は羽口送風量を変更する前後のマッド原単位の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
1は炉壁
2は羽口
3はレースウエイ
4はコークス充填層
5はマッド堆積層
6は空間
7は出銑孔
8は流量制御弁
9は溶銑滓
Claims (2)
- 高炉内の溶銑を溶滓ごと出銑孔から出銑滓として排出する際の出銑滓量の制御方法であって、前記出銑孔から排出される各出銑回の出銑滓量を増加させたいときには、前記出銑孔をマッドで閉塞する際、当該出銑孔に押込むマッド押量を減少させてマッド堆積層を薄くすることによって、コークス充填層との間の空間を大きくして溶銑及び溶滓の流動性を向上させることを特徴とする高炉の出銑滓量制御方法。
- 高炉内の溶銑を溶滓ごと出銑孔から出銑滓として排出する際の出銑滓量の制御方法であって、前記出銑孔から排出される各出銑回の出銑滓量を減少させたいときには、前記出銑孔をマッドで閉塞する際、当該出銑孔に押込むマッド押量を増加させてマッド堆積層を深くすることによって、コークス充填層との間の空間を小さくして溶銑及び溶滓の流動性を低下させることを特徴とする高炉の出銑滓量制御方法。
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