JP4396405B2 - 内燃機関の燃料供給装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に燃料を供給するための燃料供給装置に関する。
こうした装置としては、例えば特許文献1に示されるものが知られている。この装置は、燃料タンクの燃料を汲み上げるフィードポンプと、同ポンプが汲み上げた燃料を更に加圧して内燃機関に供給する高圧ポンプとを備えている。更に、同装置は、機関始動時においてその始動に必要な燃料噴射圧を早期に確保するために、フィードポンプの汲み上げた燃料を加圧して内燃機関に供給するブースタを備えている。
このブースタは、燃料供給路において高圧ポンプと並列に設けられ、フィードポンプの吐出圧を受けて移動することで燃料を加圧するピストンを備えている。そして、フィードポンプの始動に伴いピストンが上記吐出圧を受けて移動すると、これによりブースタから上記吐出圧よりも高圧な燃料が吐出され、燃料噴射圧が機関始動に適した圧力にまで速やかに昇圧される。
また、特許文献2、及び特許文献3に示される装置では、こうしたブースタを作動させるために、フィードポンプの吐出圧ではなく、電動モータや電磁ソレノイド等の専用駆動源からの動力を利用するようにしている。
特開平10−9075 特開平8−135538 特開2000−297674
しかしながら、特許文献1の装置では、フィードポンプの始動に伴うその吐出圧の上昇に基づき上記ピストンが移動される。従って、ピストンの移動、即ち燃料加圧が開始されるまでには、フィードポンプの駆動が開始されてからその吐出圧がピストンを移動し得るだけの大きさにまで上昇する必要があり、これがブースタにおいて燃料加圧の開始を遅らせ、機関の始動性向上を阻む要因となっている。
その点、特許文献2や特許文献3の装置では、こうしたフィードポンプの吐出圧を利用することなく電動モータや電磁ソレノイドの発生する動力によってピストンを直接移動することができるため、上述したようなフィードポンプの吐出圧の上昇を待つことなく燃料噴射圧を速やかに上昇させることができる。しかしながら、これらの装置では、ブースタの駆動専用に設けられた電動モータや電磁ソレノイド等の駆動源を配置するためのスペースを特段に確保することが必要となり、その分、装置の大型化する懸念が生じる。
本発明はこうした問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置自体の大型化を招き難く、且つ、機関始動時の燃料噴射圧を速やかに上昇させることのできる内燃機関の燃料供給装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
先ず、請求項1に記載の発明は、燃料噴射弁に燃料を供給するための燃料供給路にフィードポンプ及び高圧ポンプを配設し、燃料を前記燃料供給路を介して前記フィードポンプから前記高圧ポンプに供給し同高圧ポンプから前記燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、関始動時において前記燃料供給路とは別に備える燃料通路を介して前記燃料噴射弁に燃料を加圧して供給するブースタを前記フィードポンプ及び前記高圧ポンプとは別に備え、前記フィードポンプを駆動するための回転軸により前記ブースタを直接駆動するようにしたことをその要旨とする。
請求項4に記載の発明は、燃料をフィードポンプから高圧ポンプに供給し、同高圧ポンプから燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、前記高圧ポンプとは別に機関始動時において燃料噴射弁に燃料を供給するブースタを備え、前記フィードポンプを駆動するための回転軸により前記ブースタを直接駆動するようにしたことをその要旨とする。
請求項5,6に記載の発明は、燃料をフィードポンプから高圧ポンプに供給し、同高圧ポンプから燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、前記フィードポンプを駆動するための回転軸により直接駆動されるブースタを備えることをその要旨とする。
請求項1,4,5,6に記載の発明の構成によれば、ブースタをフィードポンプと同時に駆動開始することが可能となる。従って、例えば、フィードポンプの吐出圧によってブースタを駆動する構成と比較して、機関始動時におけるブースタの始動応答性の向上を図ることができる。また、ブースタをフィードポンプとは別の駆動源により駆動する構成とは異なり装置の大型化を招き難い。
また、請求項2,4,5,6に記載の発明は、前記回転軸から前記ブースタに駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とを切り替え可能な切替機構を備えることをその要旨とする。
同構成によれば、フィードポンプの回転軸からブースタへの駆動力供給が停止された状態とすることにより、例え回転軸の回転駆動中であってもブースタの駆動を停止することが可能となる。従って、ブースタの駆動が不要な際において、上記回転軸の負荷、ひいては内燃機関の燃費の低減を図ることができるようになる。
請求項3,4,5に記載の発明は、前記ブースタは、燃料を加圧するためのピストンと、前記駆動力の供給が停止された状態にあるときに前記ピストンを加圧開始位置に復帰移動可能なスプリングとを有することをその要旨とする。
同構成によれば、スプリングの弾性力によってピストンを加圧開始位置に復帰移動させることができる。
請求項4,6に記載の発明は、前記切替機構は、前記回転軸に形成されたウォームと、同ウォームに螺合され同ウォームの回転運動を前記ブースタに内蔵された燃料加圧用ピストンの直線運動に変換可能なウォームスライダとを備え、前記ウォームスライダの回転を規制又は許容することを通じて前記各状態の切り替えを行うものであることをその要旨とする。
同構成によれば、切替機構においてウォームスライダの回転が規制された状態では、ピストンの直線運動がウォーム即ち回転軸の回転運動に連動したものとなる。従って、ブースタに対し回転軸の回転に応じた駆動力供給がなされることとなる。
一方、ウォームスライダの回転が許容された状態では、ピストン及びウォームの各運動が非連動となり得る。この状態では、例えば、ウォームスライダがウォームと連れ回りしたり、同ウォームよりも高速でこれと同じ方向に回転したりといった状態が生じ得るようになる。上記連れ回りが生じた場合には、回転軸の回転中であれピストンが停止されることとなる。また、ウォームスライダがウォームよりも高速でこれと同じ方向に回転した場合には、ピストンが、上記ウォームスライダの回転が規制されたときと反対の方向に移動(直線運動)されて加圧開始位置に戻り得るようになる。
従って、ウォームスライダの回転が許容されれば、回転軸の回転中であれブースタによる燃料加圧がなされないように、換言すれば、燃料加圧のための回転軸からブースタへの駆動力供給を停止することができるようになる。
請求項7に記載の発明は、前記切替機構は前記ブースタの吐出側の燃料圧力に応じた受圧部材の変位に基づき前記各状態の切り替えを行うものであることをその要旨とする。
同構成によれば、例えば、切替機構において上記各状態の切り替えを行うための駆動源が不要となり、構成の簡素化が可能となる。
以下、本発明を車載用のディーゼル式内燃機関に適用される燃料供給装置として具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、上記燃料供給装置の概要を示す構成図である。そして図2は、同装置において機関始動時にコモンレール内の燃料を加圧可能なブースタ等を示す断面図であり、詳細には図2(a)がその縦断面図、図2(b)が図2(a)のb−b線における断面図である。
本実施形態の燃料供給装置10は、燃料タンク11から燃料噴射口12a即ち燃料噴射弁12に向けて燃料を供給するための燃料供給路13を備えている。この燃料供給路13の途中には、燃料タンク11の燃料を汲み上げるためのフィードポンプ14、及び同ポンプ14の汲み上げた燃料を加圧する高圧ポンプ15が配設されている。両ポンプ14,15はそれぞれ共通の回転軸16を介して、これらの駆動源であるとともに燃料供給先でもある内燃機関17に駆動連結されている。
内燃機関17からの駆動力によって両ポンプ14,15が駆動されることで、フィードポンプ14を介して燃料タンク11の燃料が高圧ポンプ15側に圧送され、同圧送された燃料が高圧ポンプ15によって更に加圧されて燃料噴射弁12側に送られる。なお、燃料噴射弁12は内燃機関17内に燃料を噴射するためのものであり、実際には同機関17内に配設されるものであるが、図1においては便宜上、これらを離間して示している。
燃料供給路13における燃料噴射弁12と高圧ポンプ15との間にはコモンレール18が配設されている。高圧ポンプ15から吐出された燃料はコモンレール18に一旦蓄積された後に燃料噴射弁12から噴射される。なお、燃料噴射弁12は内燃機関17の気筒毎に設けられており、本実施形態ではコモンレール18に気筒数と同じ数の燃料噴射弁12が接続されているが、図1においてはそのうち一つのみを代表して示している。また、燃料供給路13における高圧ポンプ15とコモンレール18との間には、同コモンレール18側から高圧ポンプ15側への燃料の逆流を阻止する逆止弁19が配設されている。
ところで、内燃機関17の始動に際してその自立運転の開始を早期化、即ち始動性を向上させるためには、コモンレール18の圧力即ち燃料噴射圧を機関始動に適した圧力にまで早期に高めることが有効である。本実施形態のように各ポンプ14,15が多段配置される態様においては、フィードポンプ14の吐出圧はその駆動開始に伴い比較的早期に目標の圧力まで上昇される一方、高圧ポンプ15の吐出圧はフィードポンプ14よりも高い圧力を目標とすることもあって、その目標圧力に達するまでの所要時間が比較的長くなる傾向にある。
本実施形態の燃料供給装置10においては、こうした不都合を解消すべく、機関始動時においてコモンレール18内を加圧可能なブースタ30が設けられている。ブースタ30は、加圧すべき燃料の導入される加圧室31と、同室31を区画するとともに同室31内の燃料を加圧すべくスライド移動可能に配設されたピストン32とを備えている。加圧室31内で加圧された燃料は、燃料通路33を介してコモンレール18に供給され得るようになっている。なお、加圧室31は、ブースタ30内においてピストン32をスライド移動可能に収容する収容室34の一部であり、ピストン32を挟んで同室34と反対側に区画される低圧室35には、連通路36を介して燃料タンク11が連通されている。
ブースタ30は、回転軸16に駆動連結されている、換言すれば、回転軸16の回転に基づきピストン32がスライド移動されるようになっている。即ち、回転軸16の先端(図における右端)にはウォーム40が形成されており、同ウォーム40には略有底円筒状のウォームスライダ41が螺合されている。ウォームスライダ41の内周面にはウォーム40に対応した螺旋溝が形成されており、これによりウォームスライダ41がウォーム40の回転に伴って回転軸16の軸線方向にスライド移動され得るようになっている。また、ウォームスライダ41にはスラストベアリング42を介して上述のピストン32が連接されている。
本実施形態では、こうした構造により、回転軸16の回転運動が燃料加圧のためのピストン32の直線運動(上記スライド移動に相当)に変換され得るようになっている。なお、ブースタ30の加圧室31には、加圧後のピストン32を加圧開始位置に復帰させるべく(図の左方に向けて)同ピストン32を押圧するスプリング37が配設されている。ちなみに、このスプリング37の押圧力は、上記ピストン32とウォームスライダ41との連接状態を保つようにも作用する。
ウォーム40とウォームスライダ41とを螺合させるこうした構造においては、ウォームスライダ41が回転しないように規制されているとき、ピストン32の直線運動がウォーム40即ち回転軸16の回転運動に連動したものとなる。この状態では、ブースタ30に対し回転軸16の回転に応じた駆動力供給がなされることとなる。
一方、仮にウォームスライダ41についてその回転が許容された場合には、ピストン32の直線運動と回転軸16の回転運動とが非連動となり得る。この状態では、例えばウォームスライダ41がウォーム40と連れ回りしたり、或いはウォーム40よりも高速でこれと同じ方向に回転したりといった状態が生じ得るようになる。
上記連れ回りが生じた場合には、回転軸16の回転中であれピストン32のスライド移動が停止されることとなる。また、ウォームスライダ41がウォーム40よりも高速でこれと同じ方向に回転した場合には、ピストン32が、上記ウォームスライダ41の回転が規制されたときと反対、即ち図の左方に向けてスライド移動されて上記加圧開始位置に戻り得るようになる。
従って、ウォームスライダ41の回転が許容されれば、回転軸16の回転中であれブースタ30による燃料加圧がなされないように、換言すれば、燃料加圧のための回転軸16からブースタ30への駆動力供給を停止することができるようになる。本実施形態においては、こうした回転軸16からブースタ30に駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とを切り替えることによりピストン32の移動態様を変更可能とする切替機構が設けられている。この切替機構は、上述したウォーム40及びウォームスライダ41と、同ウォームスライダ41の回転に関しその規制と許容とを切り替え可能な切替アクチェータ50とで構成される。
即ち、切替アクチェータ50の筐体51内には、受圧部材52をスライド移動可能に収容する収容室53が形成されている。受圧部材52は、この収容室53を二つの圧力室53a,53bに区画する。受圧部材52には、先端が筐体51外に突出されるようにして配置された係合ピン54が固定されている。係合ピン54は、受圧部材52の往復スライド移動に伴ってその先端部がウォームスライダ41の外周面に近接/離間されるようになっている。
上記二つの圧力室53a,53bのうち、係合ピン54の一部が収容される圧力室53aにはブースタ30の加圧室31の圧力(燃料)が導圧路55を介して導入されるようになっている。そしてもう一方の圧力室53bは連通路56を介して燃料タンク11と連通されるとともに、同室53b内には係合ピン54をウォームスライダ41側に近接させるように受圧部材52を付勢する押圧ばね57が収容されている。即ち、切替アクチェータ50においては、ブースタ30の加圧室31の圧力を受ける受圧部材52がその圧力に応じてスライド移動する構成となっており、このスライド移動に伴って係合ピン54の先端部がウォームスライダ41に対し近接/離間され得るようになっている。
本実施形態では、圧力室53aの圧力(即ち加圧室31の圧力)が所定圧αより高いとき係合ピン54がウォームスライダ41から離間する方向にスライド移動する一方、所定圧αよりも低いときには係合ピン54が上記と逆、即ちウォームスライダ41に近接する方向にスライド移動するよう、押圧ばね57のばね係数等が設定されている。なお、受圧部材52は、実質的には両圧力室53a,53bの差圧に基づきスライド移動するものであることから、本実施形態では、上記所定圧αを絶対圧ではなく、燃料タンク11の内圧を基準とした相対圧であるものとする。また、本実施形態においては、この所定圧αを、内燃機関17の始動に適した燃料噴射圧(以下、この圧力を「機関始動燃圧」と称する)と同一或いはこれよりもやや高い値に設定している。
一方、ウォームスライダ41の外周面には、回転軸16の軸線方向に延在する係合溝58が形成されている。この係合溝58には、上述の係合ピン54の先端部が挿入係合され得るようになっており、この係合がなされた状態にあってはウォームスライダ41の回転が規制され、上述の如く回転軸16からブースタ30に対して同回転軸16の回転に応じた駆動力供給がなされることとなる。逆に、係合ピン54が係合溝58から離脱した状態においては、ウォームスライダ41の回転が許容されることとなるため、上述の如く、回転軸16からブースタ30への駆動力供給が停止され得るようになる。
従って、このような構成により本実施形態では、ブースタ30の加圧室31の圧力に応じた受圧部材52の変位に基づき、燃料を加圧すべく回転軸16からブースタ30に駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とが切り替えられることとなる。
以下、このように構成された燃料供給装置10の作用について、図3を参照して説明する。
図3(a)は、機関停止状態、即ち回転軸16の回転が停止された状態を示すものである。また、同図は、ピストン32が上記加圧開始位置に配置されて加圧室31の容積が最大とされた状態を示している。同図の状態では、加圧室31の圧力が上記所定圧αよりも低いことから、係合ピン54が受圧部材52によりウォームスライダ41に当接する位置にまで押し出されて係合溝58に挿入係合されている。これにより、ウォームスライダ41の回転が規制される。
そしてこの状態から、内燃機関17を始動すべくセルモータ(図示なし)の駆動が開始されると、図3(b)に示されるように、これに伴って回転軸16が回転駆動されることでピストン32が図面右方に移動されて加圧室31の燃料が加圧される。加圧された燃料は燃料通路33を介してコモンレール18に供給され、燃料噴射圧が上記機関始動燃圧に至ることとなる。本実施形態では、この燃料加圧によって加圧室31の圧力が少なくとも上記所定圧αを超える程度にまでは上昇され得るよう、燃料加圧のためのピストン32のスライド移動量等が設定されている。
こうした加圧室31の圧力上昇に伴って切替アクチェータ50の圧力室53aの圧力が上記所定圧αよりも高くなると、図3(c)に示されるように、受圧部材52が図面上方に移動し係合ピン54がウォームスライダ41の係合溝58から離脱する。その結果、切替アクチェータ50によるウォームスライダ41の回転規制が解除、即ちウォームスライダ41の回転が許容されることとなる。これにより、ウォームスライダ41に対してこれを図面右方に移動させるための駆動力がウォーム40から供給されなくなり、ピストン32によるそれ以上の燃料加圧がなされなくなる。
こうしたウォームスライダ41の回転規制の解除に伴いブースタ30における燃料加圧が終了された後は、コモンレール18の圧力即ち燃料噴射圧が高圧ポンプ15によってそれ以上に高められていくこととなる。
ところで、加圧室31の圧力はピストン32の加圧面32aに作用するものであって、スプリング37の弾性力と同様、ピストン32を上記加圧開始位置に向けて押し戻すように、即ち戻り移動を生じさせるように働く。この戻り移動は、ウォームスライダ41の回転が許容された状態で、同スライダ41が回転軸16の回転方向と同じ方向に、同回転軸16よりも高速で回転することによって実現される。
ウォーム40とウォームスライダ41とを螺合させるこうした構成では、ウォーム40の回転トルクが小さくても比較的容易にピストン32をスライド移動できる一方、ピストン32を押圧した際に生じる上記戻り移動に関しては、ウォーム40とウォームスライダ41との摩擦の影響等によりその移動速度が上昇し難いものとなる。換言すれば、上記構成によればこうした戻り移動に関してその速度を抑制することができ、その結果、上記加圧開始位置へのピストン32の復帰に伴う加圧室31の圧力低下、ひいては燃料噴射圧の低下が抑制されるようになる。
本実施形態では、上述の戻り移動によってピストン32が上記加圧開始位置に至ると、図示しないストッパによってそれ以上の移動が阻止されてピストン32が同位置で停止するようになっている。これにより、次回の機関始動時においてブースタ30の加圧すべき燃料が加圧室31内に確保されることとなる。
この状態で内燃機関17の運転が停止されこれに伴って各ポンプ14,15の駆動が停止されると、燃料供給装置10内における高圧側から低圧側への燃料リーク等により、燃料噴射圧即ち加圧室31の圧力が徐々に低下する。この圧力低下に伴って切替アクチェータ50の圧力室53aの圧力が所定圧αよりも低くなると、受圧部材52が下方に移動して係合ピン54がウォームスライダ41に当接する。
この状態では、回転軸16の回転が停止していることから、ウォームスライダ41の回転も生じておらず、係合溝58が係合ピン54と対向する位置になければ同ピン54がウォームスライダ41に当接されていても係合溝58には挿入係合されない。仮にこうした場合であっても、次回の機関始動時において回転軸16の回転とともにウォームスライダ41が連れ回りすることで係合溝58が係合ピン54と係合可能な位置まで回転される結果、これら係合ピン54と係合溝58とが再度係合されることとなってウォームスライダ41はその回転が規制されるようになる。従って、これ以降は回転軸16の回転運動に応じたピストン32の直線運動、即ち燃料加圧が可能となる。
図4(a)は、こうした燃料供給装置10の作用に基づくコモンレール18の圧力推移、及び機関回転速度の推移を示す、本実施形態に関してのタイムチャートである。図4(b)は、その比較例として示すものであり、フィードポンプの吐出圧によってブースタを駆動する従来態様に関する同様のタイムチャートである。
各タイムチャートにおける圧力P1は上記機関始動燃圧を示し、時点t0は上記セルモータの駆動即ちクランキングの開始時点を示している。また、時点t1,t11はそれぞれコモンレール18の圧力が上記圧力P1に至った時点を示している。即ち、各タイムチャートにおいては、時点t0から時点t1,t11までの期間が、概ね、内燃機関17においてクランキングが開始されてから自立運転が開始されるまでの期間に相当する。
これらタイムチャートから読みとれるように、本実施形態の燃料供給装置10においては、上記クランキングが開始されてから内燃機関17において自立運転が開始されるまでの期間が従来態様に比較して大幅に短縮されている、即ち機関始動性に関し大幅な改善がなされている。
上述したように、本実施形態では、回転軸16によりブースタ30が直接駆動されるため、ブースタ30をフィードポンプ14と同時に駆動開始することが可能となる。従って、例えば、フィードポンプの吐出圧によってブースタを駆動する上記従来態様(例えば特許文献1の構成)と比較して、機関始動時におけるブースタ30の始動応答性の向上を図ることができる。
また、例えば、フィードポンプの駆動源とは別にブースタの専用駆動源を設けた従来態様(例えば上記特許文献2,3の構成)では、同駆動源を配置するためのスペースが必要となり燃料供給装置が大型化する懸念がある。その点、本実施形態では、ブースタ30の駆動源としてフィードポンプ14の駆動源を共用しているため、仮にブースタ30の駆動力確保のために同駆動源を大型化する必要が生じたとしても、上記従来態様のように専用駆動源を別途設けることに比較して、駆動源の配置スペースの増加を容易に抑えることができる。従って、燃料供給装置10の大型化を容易に回避し得るようになる。
そして本実施形態では、上記切替機構を設け、回転軸16からブースタ30への駆動力供給が許容される状態と同供給が停止された状態とを切り替え得るようにしたため、例え回転軸16の回転駆動中であってもブースタ30の駆動を停止することが可能となる。従って、ブースタ30の駆動が不要な際において、回転軸16の負荷、ひいては内燃機関17の燃費の低減を図ることができるようになる。
また、上記切替機構においては、加圧室31の燃料圧力に応じた受圧部材52の変位に基づき上記各状態の切り替えを行うようにしたため、例えば、切替アクチェータ50の係合ピン54をスライド移動させる駆動源を特段に設ける必要がなくなる。更に、例えば、上記切替制御を電子制御装置等を用いて電気的に行う態様と比較して、こうした電気的な構成(回路等)が不要となる分、構成の簡素化が可能となる。
更にブースタ30においては、ウォームスライダ41の回転規制が解除された状態にあるときにピストン32を上記加圧開始位置に復帰移動可能なスプリング37が設けられている。これによれば、ピストン32を上記加圧開始位置に復帰移動させる際に、例えば回転軸16を逆回転させる等の必要がなくなる。
また、ウォームスライダ41の回転に関しては、これを規制するか否かの基準を、上記機関始動燃圧と同一或いはこれよりやや高い所定圧αに設定し、圧力室53aの圧力がこの基準よりも高いときに限って上記回転規制を解除するようにした。従って、ブースタ30による燃料加圧時には、回転軸16が回転してさえいればコモンレール18内圧が上記機関始動燃圧を上回らない限り上記燃料加圧が中断されることがない。また、既にコモンレール18内圧が所定圧αより高い状態にある際には、機関始動時であれブースタ30による燃料加圧がキャンセルされることとなるため、こうした燃料加圧の不要な際における無駄なエネルギ消費が回避されるようになる。
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば、以下の様態としてもよい。
・上記実施形態では、ウォーム40、及びウォームスライダ41を用いて回転軸16からブースタ30に駆動力を供給したが、これに限らず、例えば回転軸16側に設けたピニオンギヤとブースタ30側に設けたラックとを連結する等、他の構成によって回転軸16からブースタ30への駆動力供給を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、ブースタ30の吐出側の燃料圧力を受圧部材52に受圧させ、この燃料圧力に応じた受圧部材52の変位に基づき上記切替機構における上記各状態の切り替えを行うようにしたが、これに限らず、下記のようにしてもよい。即ち、例えば、切替アクチェータ50の圧力室53aの圧力を変更するための専用の圧力源を設けてもよい。この場合、コモンレール18の圧力を検出するセンサを設け、その検出値に基づき上記圧力源を駆動制御するようにしてもよい。
また、こうした圧力室53aの圧力変更を通じた係合ピン54の位置変更に限らず、例えば、係合ピン54を電磁ソレノイドや電動モータ等を用いてスライド移動させるように構成してもよい。同構成を採用した場合、係合ピン54の移動のために駆動電力が消費されることとなるが、例えばブースタのピストン自体を電磁駆動する態様に比較して、駆動に必要な電力消費量を低減でき、ひいては電力供給に用いられる回路等を電気的に小容量とすることができる。
・上記実施形態では、ピストン32を上記加圧開始位置に戻すためにスプリング37を利用したが、これに限らず、例えば、内燃機関17の自立運転が停止されているときにセルモータを機関始動時と逆の方向に回転させるなど、回転軸16を逆回転させることでピストン32を戻すようにしてもよい。この場合、例えば圧力室53aの圧力が所定圧αより低いとき即ちウォームスライダ41の回転が切替アクチェータ50によって規制された状態でピストン32を戻すことができる。これに対してスプリング37を利用した上記実施形態では、切替アクチェータ50による上記ウォームスライダ41の回転規制が解除されることでピストン32が戻され得るようになっている。そのため、例えば、ブースタ30による燃料加圧がなされても内燃機関17が自立運転を開始し得なかった場合など、ピストン32が上記加圧開始位置に復帰完了するまで圧力室53aの圧力を所定圧αより高く維持し続けるのが困難な状況では、復帰途中でウォームスライダ41の回転が規制されてピストン32の戻りが不完全となる懸念が生じる。その点、セルモータを利用した上記態様によれば、こうした問題を解消できる。
また、こうした内燃機関17のセルモータによるものに限らず、例えば、ピストン32を上記加圧開始位置に戻すための駆動源を別途設けるようにしてもよい。ピストン32を上記加圧開始位置に戻すときに必要とされる駆動力は、ブースタ30において燃料を加圧するときのそれよりも小さい。そのため、例えば、燃料加圧時に必要とされる駆動力の全てを発生させる駆動源を特段に設けることに比較すれば、上記加圧開始位置にピストン32を戻すためにのみ用いられる駆動源に関してはこれを小型なものとし易くなる。即ち、燃料供給装置10の小型化が容易となる。
・上記実施形態においてフィードポンプ14は、内燃機関17(又はセルモータ)によって駆動されたが、同内燃機関17の始動に際して駆動開始され得る構成が採られればよく、必ずしも内燃機関17と駆動連結されていなくてもよい。例えば、フィードポンプ14の駆動専用の電動モータ等を設けるようにしてもよい。
・本発明を、上記したようなディーゼル式内燃機関に限らず、例えばガソリン式内燃機関に適用してもよい。
一実施形態の燃料供給装置の概要を示す構成図。 (a)は切替機構を示す拡大断面図、(b)は(a)のb−b線における断面図。 (a),(b),(c)は燃料供給装置の作用を説明する図。 コモンレールの圧力及び機関回転速度の推移態様を示すタイムチャートであり、(a)は本実施形態に関し、(b)は従来態様に関する。
符号の説明
10…燃料供給装置、11…燃料タンク、12…燃料噴射弁、12a…燃料噴射口、13…燃料供給路、14…フィードポンプ、15…高圧ポンプ、16…回転軸、17…内燃機関、18…コモンレール、30…ブースタ、31…加圧室、32…ピストン、37…スプリング、40…ウォーム、41…ウォームスライダ、50…切替アクチェータ、52…受圧部材、54…係合ピン、58…係合溝。

Claims (7)

  1. 燃料噴射弁に燃料を供給するための燃料供給路にフィードポンプ及び高圧ポンプを配設し、燃料を前記燃料供給路を介して前記フィードポンプから前記高圧ポンプに供給し同高圧ポンプから前記燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、
    関始動時において前記燃料供給路とは別に備える燃料通路を介して前記燃料噴射弁に燃料を加圧して供給するブースタを前記フィードポンプ及び前記高圧ポンプとは別に備え、前記フィードポンプを駆動するための回転軸により前記ブースタを直接駆動するようにしたことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
  2. 前記回転軸から前記ブースタに駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とを切り替え可能な切替機構を備える
    請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
  3. 前記ブースタは、燃料を加圧するためのピストンと、前記駆動力の供給が停止された状態にあるときに前記ピストンを加圧開始位置に復帰移動可能なスプリングとを有する
    請求項2に記載の内燃機関の燃料供給装置。
  4. 燃料をフィードポンプから高圧ポンプに供給し、同高圧ポンプから燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、
    前記高圧ポンプとは別に機関始動時において燃料噴射弁に燃料を供給するブースタを備え、前記フィードポンプを駆動するための回転軸により前記ブースタを直接駆動するようにし、
    前記ブースタは、燃料を加圧するためのピストンと、前記駆動力の供給が停止された状態にあるときに前記ピストンを加圧開始位置に復帰移動可能なスプリングとを有し、
    前記回転軸から前記ブースタに駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とを切り替え可能な切替機構を備え、前記切替機構は、前記回転軸に形成されたウォームと、同ウォームに螺合され同ウォームの回転運動を前記ブースタに内蔵された燃料加圧用ピストンの直線運動に変換可能なウォームスライダとを備え、前記ウォームスライダの回転を規制又は許容することを通じて前記各状態の切り替えを行うものである
    ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
  5. 燃料をフィードポンプから高圧ポンプに供給し、同高圧ポンプから燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、
    前記フィードポンプを駆動するための回転軸により直接駆動されるブースタと、
    前記回転軸から前記ブースタに駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とを切り替え可能な切替機構とを備え、
    前記ブースタは、燃料を加圧するためのピストンと、前記駆動力の供給が停止された状態にあるときに前記ピストンを加圧開始位置に復帰移動可能なスプリングとを有する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
  6. 燃料をフィードポンプから高圧ポンプに供給し、同高圧ポンプから燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置において、
    前記フィードポンプを駆動するための回転軸により直接駆動されるブースタと、
    前記回転軸から前記ブースタに駆動力が供給される状態と同供給が停止された状態とを切り替え可能な切替機構とを備え、
    前記切替機構は、前記回転軸に形成されたウォームと、同ウォームに螺合され同ウォームの回転運動を前記ブースタに内蔵された燃料加圧用ピストンの直線運動に変換可能なウォームスライダとを備え、前記ウォームスライダの回転を規制又は許容することを通じて前記各状態の切り替えを行うものである
    ことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
  7. 前記切替機構は前記ブースタの吐出側の燃料圧力に応じた受圧部材の変位に基づき前記各状態の切り替えを行うものである
    請求項2〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料供給装置。
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