JP4396029B2 - 沸騰水型原子炉圧力容器の炉底部取替え工法 - Google Patents

沸騰水型原子炉圧力容器の炉底部取替え工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器胴の炉底部にこれを貫通するように複数の制御棒駆動機構ハウジングを備えた沸騰水型原子炉圧力容器(RPV)の炉底部取替え工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、多くの原子力発電所で採用されている沸騰水型原子炉(BWR)の圧力容器(RPV)は、その性質上極めて高い安全性が要求されることから、定期的な供用期間中検査等が義務付けられ、優れた健全性が確保されるようになっている。
【0003】
すなわち、従来のRPVは、格納容器のペデスタル上に支持立設された縦長の容器胴内に、炉心,シュラウド,気水分離器,蒸気乾燥器,ジェットポンプ等の炉内構造物を備えると共に、その炉底部に、下鏡,制御棒駆動機構ハウジング,シュラウドサポート等の炉底構造物を備えた構造となっているが、これら構造物は、低合金鋼やステンレス鋼,高ニッケル鋼等の金属材料から形成され、熱や放射線等の影響による径年劣化が避けられない。そのため、供用期間中検査の超音波探傷検査等によって欠陥や亀裂等の不都合が発見された場合は、その箇所を新たなものと取替えたり、あるいは必要な補修等が施されるようになっている。
【0004】
また、最近では既存の原子力発電プラント自体の長寿命化も検討されており、これに伴いRPV及び炉内構造物の健全性を長期に亘って維持するための技術が重要となってきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この供用期間中検査等によって発見された不都合箇所が炉内構造物である場合、例えば、炉心を覆うシュラウドに応力腐食割れ等が発生した場合には、その取替は既に多くのRPVで実際に行われており、その取替え工法も確立されているが、炉底構造物、例えば一部の制御棒駆動機構ハウジングに不都合が発生した場合には、これを効率的且つ安全に取替え、又は補修する技術・工法は現在のところ確立していない。
【0006】
すなわち、この炉底構造物が設けられる炉底部は、多数の制御棒駆動機構ハウジング等が密集・林立していることから、不都合が生じた部分のみを局所的に補修・取替えするのは容易ではなく多くの工期及び費用が掛かるといった不都合がある。
【0007】
また、一般に、シュラウド等の炉内構造物に比べて劣化が進行し難い炉底構造物の一部に不都合が発見された場合には、他の部分も検出されない程度の劣化が進行していると考えるのが自然であるため、係る場合には炉内構造物を含めたRPV全体を新たなものと交換することが望ましい。
【0008】
しかしながら、RPV全体を交換するには、例えば、その上部の燃料プール内の使用済み燃料等を全て別の場所に移し替えたり、これを収容する原子炉建屋の天井部に大きな開口を形成したり、さらにこれを吊り上げるための超大型クレーンを新たに設置しなければならならず、原子炉建屋を新設するのと同じ程度の工期と膨大なコストを要するといった問題が生ずる。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、炉底部の取り替えを容易かつ効率的に実施することができる新規な沸騰水型原子炉圧力容器の炉底部取替え工法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、請求項1に示すように、容器胴の炉底部に球面状の下鏡を備えると共に、この下鏡にこれを貫通するように複数本の制御棒駆動機構ハウジングを備えた沸騰水型原子炉圧力容器において、上記容器胴内の炉内構造物をその上部開口部側から順次撤去した後、上記下鏡を上記制御棒駆動機構ハウジングの周囲から環状に切断してその制御棒駆動機構ハウジングと共に一体的に撤去し、その後、その下鏡の切断部に、予め新たな制御棒駆動機構ハウジングを貫装した下鏡部材、あるいは貫装前の新たな下鏡部材を溶接して据え付けるようにしたものである。
【0011】
これによって、炉底構造物を全て撤去して新たなものと取り替えることができるため、炉底部の取り替えを容易かつ効率的に実施することができる。
【0012】
また、請求項2に示すように、この炉底部の取り替えに際して、新たな下鏡部材を大型鍛造材で形成すれば、従来のものでは存在していた下鏡の溶接線が無くなって健全性が向上することから、その後の溶接線に対する超音波探傷検査等を省略することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る沸騰水型原子炉(BWR)の圧力容器(RPV)を示したものである。
【0015】
図示するように、このRPVはペデスタルP上に立設された円筒状の縦長容器胴1内に、上下が上部格子板2a及び炉心支持板2bで支持された炉心(燃料集合体)2が収容されており、その炉心2の周囲には円筒状のシュラウド3及びジェットポンプ4等の炉内構造物が、またその炉心2の上部には炉心スプレーノズル5,気水分離器6,蒸気乾燥器7等の炉内構造物が順次設けられた構造となっている。
【0016】
また、この容器胴1の底部には下方に膨らんだ半球面状の下鏡8が一体的に形成されており、さらにこの下鏡8には制御棒9を下方から炉心2側に案内するための制御棒駆動機構ハウジング10が複数本貫通した状態で一体的に設けられている。尚、上記炉心2を覆う円筒状のシュラウド3は、この下鏡8側に固定されたリング状のシュラウドサポート3aによって固定された状態になっている。そして、本実施の形態においては、特にこの下鏡8,シュラウドサポート3a,制御棒駆動機構ハウジング10等を炉底構造物と称する。
【0017】
一方、この容器胴1の上部開口部には、その上方に膨らんだ半球面状の容器蓋11が設けられており、図示しない多数のスタッドボルトによって着脱(開閉)自在となっている。
【0018】
そして、このような構造をしたBWRに対して炉底構造物の一部に欠陥が見つかった場合には、先ず、従来のシュラウド取替え工法によってその炉内構造物を全て撤去する。具体的には、図示しない天井クレーンによって容器蓋11を取り外して容器胴1の上部開口部を開き、この上部開口部から蒸気乾燥器7,気水分離器6,炉心2等を撤去した後、シュラウド3をシュラウドサポート3a側から切断して撤去すると共にその周囲のジャットポンプ4等を全て撤去する。
【0019】
次に、このようにして容器胴1内の炉内構造物が全て撤去されたならば、図2及び図3に示すように、シュラウドサポート3aをその底部及び周囲から切断して撤去した後、図4に示すように天井クレーンの吊り具Cを容器胴1内の炉底部まで降ろし、下鏡8に貫装された各制御棒駆動機構ハウジング10,10…をこの吊り具C側から支持する。この各制御棒駆動機構ハウジング10,10…の支持方法としては、特に限定されるものではないが、図示するように、各制御棒駆動機構ハウジング10の下から留め具S付きのワイヤーWを容器胴1側にそれぞれ挿入すると共にそれら各ワイヤーWの先端をハンガーHに固定し、このハンガーHを吊り具Cで吊るようにすれば、安定且つ均一に各制御棒駆動機構ハウジング10,10…を支持することができる。
【0020】
その後、このように吊り具Cで各制御棒駆動機構ハウジング10,10…を支持したならば、図5に示すように下鏡8をそれら各制御棒駆動機構ハウジング10,10…の周囲から環状に切断して容器胴1から完全に分離した後、そのまま容器胴1内を上昇させてこれら各制御棒駆動機構ハウジング10,10…を切断した下鏡部材8aと共に容器胴1の上部開口部側から撤去し、図6に示すように下鏡8の周縁部とシュラウドサポート3aの一部が容器胴1側にリング状に残った状態とする。尚、この各制御棒駆動機構ハウジング10,10…の撤去に際しては、これらを拘束するフレーム12や制御棒駆動水圧系配管13等を除去しておき、フリーの状態にしておくことはいうまでもない。また、図5では下鏡8aの切断位置がシュラウドサポート3aの内側としているが、配置上その外側で切断した方が効率的な場合もある。
【0021】
そして、このようにして全ての制御棒駆動機構ハウジング10が下鏡部材8aと共に撤去されたならば、その容器胴1側の切断面に開先加工を施し、これと平行してあるいは予め製作された制御棒駆動機構ハウジング10を新たな下鏡部材8aに対して除去された状態と同じ状態で一体的に取り付けたものを用意する。
【0022】
その後、この新たな制御棒駆動機構ハウジング10を同じく新たな下鏡部材8aと共に、撤去された状態と同じように格納容器内の天井クレーンによって吊り下げてその容器胴1の上部開口部から容器胴1内を降下させて、撤去された下鏡8の開口部分に位置決めしてはめ込んだ後、その下鏡部材8aの周縁部を容器胴1側の切断面に溶接して据え付けると共に、同じく除去されたシュラウドサポート3aに代わり新たなシュラウドサポート3aをその切断部に溶接して取り付け、その溶接部に対して必要な熱処理や検査を行った後、従来のシュラウド取替え工法に従ってその上方にシュラウド3や炉心2等の炉内構造物を据え付けることで本発明の炉底部の取替えが完了することとなる。
【0023】
尚、この新規な制御棒駆動機構ハウジング10と下鏡部材8aは、予め一体化したものを現地に搬入することが好ましいが、これらを別個に製作し、現地にて据え付けるようにしても良い。但し、この場合下鏡部材8a側に制御棒駆動機構ハウジング10を据え付ける貫通孔を予め形成しておく必要がある。
【0024】
このように本発明の炉底部取替え工法は、制御棒駆動機構ハウジング10の全てを下鏡8と共に一体的に撤去して新たなものに交換するようにしたことから、不都合が発見された部位のみを交換する方法に比べて信頼性の高い補修・交換を実施することができ、また、容器全体を交換する方法に比べて短期間、且つ低コストで実施することが可能となる。
【0025】
また、この取り替えに際して、新たな下鏡部材8aを一体鍛造材で形成すれば、従来のものでは存在していた下鏡8の溶接線が無くなることから、その部分の健全性が向上すると共に、その後の溶接線に対する超音波探傷検査等を省略することも可能となり検査作業性も向上することとなる。
【0026】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、炉底構造物を全て撤去して新たなものと取り替えることができるため、炉底部の取り替えを容易かつ効率的に実施することができる。この結果、炉底構造物の信頼性及び健全性が向上し、RPV全体の長寿命化に大きく貢献することができる等といった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炉底部取替え工法の対象となる沸騰水型原子炉圧力容器の実施の一形態を示す構造図である。
【図2】炉内構造物を全て撤去した沸騰水型原子炉圧力容器の底部付近を示す部分断面図である。
【図3】図2の状態からシュラウドサポートを撤去した状態を示す部分断面図である。
【図4】図3の状態から炉底構造物を吊り具で支持した状態を示す部分断面図である。
【図5】図4の状態から炉底構造物を吊り具で吊った状態を示す部分断面図である。
【図6】容器胴底部の炉底構造物を全て撤去した状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 容器胴
2 炉心
3 シュラウド
3a シュラウドサポート
8 下鏡
8a 下鏡部材
10 制御棒駆動機構ハウジング

Claims (2)

  1. 容器胴の炉底部に球面状の下鏡を備えると共に、この下鏡にこれを貫通するように複数本の制御棒駆動機構ハウジングを備えた沸騰水型原子炉圧力容器において、上記容器胴内の炉内構造物をその上部開口部側から順次撤去した後、上記下鏡を上記制御棒駆動機構ハウジングの周囲から環状に切断してその制御棒駆動機構ハウジングと共に一体的に撤去し、その後、その下鏡の切断部に、予め新たな制御棒駆動機構ハウジングを貫装した新たな下鏡部材、あるいは貫装前の新たな下鏡部材を溶接して据え付けるようにしたことを特徴とする沸騰水型原子炉圧力容器の炉底部取替え工法。
  2. 上記新たな下鏡部材を一体鍛造材で形成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉圧力容器の炉底部取替え工法。
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