JP4395561B2 - 銅の浸出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する利用分野】
本発明は、硫化銅鉱物を含む鉱石から銅を浸出する方法に関し、特に硫砒銅鉱、四面砒銅鉱などの砒素を含む鉱石から銅を浸出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅を含む鉱石には一般的に酸化鉱と硫化鉱がある。酸化鉱については、硫酸を用いてヒープもしくはダンプリーチング法で浸出し、溶媒抽出法と電解採取法によって銅を回収するプロセスが実用化されている。硫化鉱を構成する銅鉱物には黄銅鉱のほかに輝銅鉱などの二次銅鉱物がある。一部の二次銅鉱物についても、硫酸とバクテリアの作用を利用してヒープまたはダンプリーチング法で浸出した後、酸化鉱と同様、溶媒抽出法と電解採取法によって銅を回収する方法が適用されている。一方、黄銅鉱などの一次銅鉱物や、硫砒銅鉱のような一部の二次銅鉱物の場合、上述のような浸出方法では銅を効率的に回収できない。黄銅鉱の場合、浮選して得た精鉱を、従来の乾式製錬法などで処理して銅を回収できるが、硫砒銅鉱などの砒素を含む鉱石の場合、乾式製錬法では大気汚染などの環境上問題を生じるおそれがあり、資源があっても採掘されていないのが現状である。したがって、硫砒銅鉱などの硫化銅鉱物から、ばい焼等の熱処理工程を経ずに銅を効率的に回収しうる湿式処理法の確立が要求されている。これまで、硫化銅鉱物から銅を浸出する方法として加圧浸出法などの処理方法が提案されているが、このような方法は、浸出条件が高温高圧であり、設備費が高額となり、プロセスが複雑になるため実用化されていない。したがって常温常圧に近い条件で銅を回収する新しいプロセスの開発が期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来提案されてきた処理方法は、条件が複雑であったり、浸出率が低い、使用する薬剤が高価であるなどの理由から実用化されてこなかった。本発明の課題は、上記問題点を克服し、硫化銅鉱、特に硫砒銅鉱などの砒素を含む硫化銅鉱から銅を効率よくかつ経済的に回収する方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述した課題について、主に硫砒銅鉱を含有する鉱石を用い、鋭意研究した結果、発明者らは次のような方法を開発するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、硫化銅鉱から銅を浸出する方法において、硫化銅鉱の鉱石または精鉱を濃度10mg/L以上2,000mg/L以下の銀イオンを含む溶液と接触させる前処理工程と、前処理後のパルプを固液分離して余剰の銀イオンを含む溶液と前処理後鉱石とに分離する固液分離工程と、前記前処理後鉱石を浸出液(例えば硫酸酸性溶液など)で浸出する浸出工程とを含む銅浸出方法を提供するものである。前記固液分離工程で得られた余剰の銀イオンを含む溶液を新たな鉱石または精鉱のための前処理工程へ繰り返すことによって銀の消費量を抑えるとともに余剰の銀イオンによる後工程への影響を削減することができる。前記浸出工程において浸出時のパルプに鉄酸化細菌を主とするバクテリアを添加し、かつ酸素濃度が2〜20体積%、好ましくは5〜10体積%となるような気体を吹き込むことが望ましい。また、前記浸出工程において酸化剤として過マンガン酸カリウム、二酸化マンガンおよび過酸化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種をパルプに添加してもよい。前記硫化銅鉱が硫砒銅鉱、四面砒銅鉱の少なくとも1種を含む鉱石の場合、前記浸出工程においてパルプのpHを1.0〜4.0の範囲内に制御することによって砒素を沈殿除去することができる。また、鉄酸化細菌を主とするバクテリアを添加した浸出工程においては、パルプのpHは1.2〜1.8の範囲が望ましい。また、鉱石中に鉄が少ない場合は、黄鉄鉱等の鉄を含む鉱石を添加するとより効果的である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明における被処理原料としては、硫化銅鉱が用いられる。硫化銅鉱を構成する銅鉱物としては、輝銅鉱、黄銅鉱、硫砒銅鉱、四面砒銅鉱などが挙げられる。本発明の方法は、特に硫砒銅鉱などの砒素を含む鉱石に対して有利に適用される。
【0007】
本発明の方法を図1の工程図に従って説明する。まず硫化銅の鉱石または精鉱に銀イオンを含む溶液を接触させて前処理を行う。この溶液の銀イオンの濃度は10〜2,000mg/Lの範囲内が好ましく、最適濃度は対象鉱石の性状に合わせて決定される。銀イオンの濃度が10mg/L未満では前処理の効果が不十分であり、2,000mg/Lを超えると薬剤費が高くなり経済的に不利益である。次に、銀イオン消費量を削減しかつ次工程への銀イオンの影響を最小にするため、前処理後の余剰の銀イオンを含む溶液および前処理後の鉱石を洗浄した溶液は再び次バッチすなわち新たな処理原料の前処理工程へ繰り返される。これによって銀の消費量を抑えることができ、また、後工程をバクテリアリーチング法で行う場合、高濃度の銀イオンによるバクテリアの生育阻害を防止することができる。前処理後の鉱石は銅浸出工程へ送られる。浸出方法は既知の硫酸、塩酸、硝酸あるいはアルカリによる化学的浸出方法でも効果的である。この場合、パルプのpHを1.0から4.0、好ましくは、1.2から2.5の間に調節し、砒素などを鉄と砒酸鉄として共沈させることによって浸出液から取り除くことができ、これによって連続浸出が可能になる。
また、浸出方法として更に好ましいのは、常温常圧でのバクテリアリーチングであり、非常に経済的である。バクテリアリーチングにおいては、バクテリアの活性を上げるため、酸素濃度が大気組成である20%以下2%以上、好ましくは5〜10%になるように酸素濃度を調節した気体を浸出時のパルプに吹き込む。この空気吹き込みによって銅の浸出率を向上できるだけでなく、処理能力の増大(滞留時間の削減)を図ることができる。酸素濃度の調節法として空気の酸素を希釈することが簡便である。空気の希釈には窒素ガス、二酸化炭素、排ガスなどを使用できる。浸出溶液中には砒素などの有害成分が溶け出してくるが、このパルプのpHの値は浸出工程に悪影響を与えない数値が望ましい。例えば、バクテリアリーチング法におけるバッチ方式では、累積する砒酸鉄中の砒素の影響を抑えるためにpHを1.2〜1.8に調節することが好ましい。pHの調節には硫酸の使用が好ましい。
pH1.2未満の場合はバクテリアの活性度が下がる可能性があり、逆にpHが1.8を超えると砒酸鉄のような沈殿物の生成により浸出反応が阻害される可能性がある。また、バクテリアリーチング法においては、鉱石中に鉄が少ない場合には黄鉄鉱等の鉄を含む鉱石を添加してやるとより効果的に浸出できる。浸出後の水溶液からの銅の分離回収は、従来公知の溶媒抽出法や電解採取法等により実施することができる。
【0008】
【実施例】
次に、本発明の方法を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例1および実施例3の実験に使用した鉱石試料は海外の鉱山で採取された銅鉱石であり、その主たる銅鉱物は硫砒銅鉱や四面砒銅鉱を含む。
【0009】
[実施例1]
蒸留水に硝酸銀を溶解して銀イオン濃度1,000mg/Lに調整した溶液に鉱石を混合して固体濃度1重量%のパルプとし、これを2時間攪拌して銀イオンと鉱石を接触させる前処理を行った。前処理後のパルプをろ過し、余剰の銀をろ液として取り除いた。処理後の鉱石1gを300mLの三角フラスコに入れ、あらかじめ前培養しておいた鉄酸化細菌を1×10cell/mLとなるように接種し、全量が100mLとなるように鉄抜き9K培地「(NHSO=3g/L、KHPO=0.5g/L、MgSO7HO=0.5g/L、KCl=0.1g/L、Ca(NO=0.01g/L」を4倍に希釈したもので調整した。その後、硫酸でpHを1.5に調整し、30℃、120rpmで旋回振とうを行った。浸出時間と銅浸出率の関係をプロットしたグラフを図2に示す。図2に示されるように、浸出時間28日後の銅浸出率は、前処理をしない場合23%であったが、前処理をした場合78%に改善された。
【0010】
[実施例2]
実施例1で使用した培地にFeSO7HOを44g(0.16mol)/L加えた9K培地2Lで鉄酸化細菌の培養を行った。第一鉄酸化率が90%以上に達した後9K培地を一定流量(0.11L/h)で供給し、連続培養を行った。また、同時に通気コントローラーで二酸化炭素濃度は7%に固定し、窒素ガスを用いて酸素濃度を調整した気体を1L/minで吹き込み、30℃で培養を行った。気体の酸素濃度を変化させて行った試験の結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
Figure 0004395561
【0012】
酸素濃度が0%のときは第一鉄は全く酸化されず、酸素濃度の増加にともなって第一鉄酸化率は増大し、酸素濃度5〜9%のときに30%を超えるが、さらに酸素濃度が高くなると第一鉄酸化率は低下し、酸素濃度が大気組成濃度(20%)を超えると第一鉄はほとんど酸化されなかった。従って、酸素濃度を5〜9%に調節することによって鉄酸化細菌は活性化され、銅の浸出速度も上昇すると想定される。
【0013】
[実施例3]
実施例1と同様に前処理を行った銅鉱石8gと蒸留水を1000mLのセパラブルフラスコに入れ、硫酸でpHを2に調整した後、全量を蒸留水で800mLにした。このセパラブルフラスコを500rpmで攪拌し、酸化剤として濃度0.2mol/Lの過マンガン酸カリウム溶液を添加し、鉱石の浸出を行った。浸出時のpHはコントローラーで2に調整した。銀イオンによる前処理をした場合としない場合の試験結果を表2に示す。
【0014】
【表2】
Figure 0004395561
Figure 0004395561
【0015】
過マンガン酸カリウム100mL添加時の銅浸出率は、前処理をしない場合25%であったのに対し、前処理をした場合には52%であった。また、一旦溶出した砒素は浸出後すぐに鉄と共沈し、浸出後の溶液中の砒素濃度は0.8mg/Lであった。
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、銅鉱石または銅精鉱を銀イオンで前処理することによって銅硫化鉱からの銅浸出率を大きく改善することができる。また、バクテリアを用いて浸出する場合、酸素濃度を調節した空気を吹き込むことによってバクテリアの活性が改善される。硫砒銅鉱のような砒素を含む銅鉱石を浸出する際には、浸出時のpHをコントロールすることによって溶出した砒素を鉄と共沈させ、安全な沈殿物として系外に除去することができる。これによって、従来有効利用されていなかった硫砒銅鉱などの砒素を含む鉱石を銅資源として活用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例1における浸出時間と銅浸出率の関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 硫化銅鉱の鉱石または精鉱を濃度10mg/L以上2000mg/L以下の銀イオンを含む硝酸銀水溶液と接触させる前処理工程と、前処理後のパルプを固液分離して余剰の銀イオンを含む溶液と前処理後鉱石とに分離する固液分離工程と、該固液分離工程で得られた銀イオンを含む溶液を鉱石または精鉱の前処理工程へ繰り返す工程と、前記前処理後鉱石を浸出液で浸出する浸出工程とを有してなる銅の浸出方法。
  2. 前記浸出工程において浸出時のパルプに鉄酸化細菌を主とするバクテリアを添加し、かつ酸素濃度が2体積%以上20体積%以下となるような気体を吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の銅の浸出方法。
  3. 前記酸素濃度が5体積%以上10体積%以下であることを特徴とする請求項2に記載の銅の浸出方法。
  4. 前記浸出工程において酸化剤として過マンガン酸カリウム、二酸化マンガンおよび過酸化水素からなる群より選んだ少なくとも1種をパルプに添加することを特徴とする請求項1に記載の銅の浸出方法。
  5. 前記硫化銅鉱が硫砒銅鉱、四面砒銅鉱の少なくとも1種を含む鉱石であり、前記浸出工程においてパルプのpHを1.0以上4.0以下の範囲内に制御することによって砒素を沈殿除去することを特徴とする請求項1または4に記載の銅の浸出方法。
  6. 前記硫化銅鉱が硫砒銅鉱、四面砒銅鉱の少なくとも1種を含む鉱石であり、前記浸出工程においてパルプのpHを1.2以上1.8以下の範囲内に制御することによって砒素を沈殿除去することを特徴とする請求項2または3に記載の銅の浸出方法。
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