JP4393501B2 - ドラム式洗濯機 - Google Patents

Description

本発明は、回転軸心線を横にした回転自在なる洗濯ドラムが外枠筐体内に防振支持されているドラム式洗濯機に関する。本発明のドラム式洗濯機は、乾燥運転機能を有するドラム式洗濯乾燥機も含む。

ドラム式の洗濯機は、特開２００３−７９９９５号公報（特許文献１）に記載されている。このドラム式洗濯機は、投入口が斜め上向きになるように、洗濯ドラム槽（以下、単にドラムと呼ぶ）の回転軸を前側が奥側（後ろ側）よりも高くなるように傾けて設置し、ドラムを内置する外槽がサスペンションで防振支持されている。

特開２００３−７９９９５号公報

ドラム式洗濯機においては、洗濯，すすぎを終えて脱水を行った場合、洗濯物がドラムの下部に偏った状態で回転が始まるため、ドラムにとって大きな偏荷重となり、共振回転数通過時や定常回転時に大きな振動を生じ易い。このような振動は、外枠と外槽の衝突，床振動や騒音の原因となるため、さまざまな振動減衰手段が検討されている。

また、使い勝手向上のため大容量化が図られているが、高感度外観デザインと設置容積の最少化も要求され、外枠内容積の高効率利用が求められている。

本発明は上記問題を解決するものであり、起動時および定常回転時の振動振幅を抑え、容積効率が高く設置床の振動が少ないかつ低騒音のドラム式洗濯機を提供することを目的とする。

上記の目的を達成するために、本発明のドラム式洗濯機は、外枠と、外枠内に支持機構によって支持された外槽と、この外槽内に回転軸を横にしたドラムと、ドラムを回転駆動する駆動手段と、外槽内への給排水機構と、ドラムの回転駆動および外槽への給排水を制御するコントローラとを備えたドラム式洗濯機において、前記ドラムの前部に、複数の層に区分けされ各層の内部に液体を内蔵した流体バランサを装着し、前記流体バランサは、径方向の最も外周側に位置する最外層が、最も内周側に位置する最内層よりも奥側に後退して設けられており、前記流体バランサの前面外周部に奥側に後退する段部が形成されたものである。

本発明によれば、流体バランサの最外層を最内層よりも奥側に後退させたことにより、ドラムを大径化しても、外枠と干渉することなく流体バランサを大径化して層数を増やして多層化することができ、内蔵液量を増やすことができる。従って、不つり合い量に対するキャンセル量を多くすることができ振動振幅を小さく抑えられる。

この結果、設置容積の小さいコンパクト大容量機で低振動・低騒音のドラム式洗濯機が提供可能となる。

以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。図１は本発明の実施例であるドラム式洗濯機の縦断面図を示す。

この図では、本発明の主要素である支持機構周りと洗濯機の基本構成要素のみについて記載し、その他の要素例えばパネルスイッチ等は省略し図示していない。その主要構成は、薄鉄板製の外枠１と、この外枠１を支持する合成樹脂製のベース２、このベース２から支持機構３を介して弾性支持されるとともに振動検出のための振動センサーを外周に設置している合成樹脂製の外槽４、外槽４の前面には外枠１との間で水密性を保つためのベローズ６、このベローズ６と嵌合し外枠１に設けられたガラス扉７、外槽４に回転可能に設置され不つり合いをキャンセルするための流体バランサ８を前部に装着し回転軸に支持するためアルミ製のフランジ９を底部に有し側面に通水孔を前面に開口部を有するＳＵＳ製のドラム５、外槽４の底部に締結され他端にモータロータ１０を有する回転軸を支持する軸受とモータステータ１１が装着されているアルミダイキャスト製の槽ベース１２である。

尚、ドラム５の回転軸は、水平若しくは前側が奥側（後ろ側）よりも高くなるように傾斜させて横向きに配置されている。

洗濯，すすぎおよび脱水時には、ドラム５がブラシレスモータにより回転駆動される。また、脱水回転時には、振動センサーにより振動検出が行われ予め用意された判定基準により通過や回転加速および非通過や定速の判定が決定されることになる。これらの駆動および振動検出並びに給排水などの制御はすべてコントローラにて行われる。

図２は流体バランサ８およびドラム５への装着状態を示し、流体バランサ８はリング内容積の５０％以下となる適量の塩化カルシウム飽和水溶液を充填した５層の同心リング
８１〜８５から構成され、各層は周方向に流通孔を有するバッフルで複数の部屋に分割された構成となっている。また、洗濯機前方から見て奥方向に段付きとなった最外層でドラムに装着され、ドラムの回転中心と同軸になるよう構成されている。

本実施例では、径方向において最も内側に位置する第１層８１から径方向外側に向かって形成された第４層８４までは、各部屋の回転軸方向における前側端部が回転軸方向においてほぼ同じ位置（Ｌ１−Ｌ１の位置）に揃うように形成されている。また第１層８１から第４層８４までの各部屋の奥側（後ろ側）端部は、回転軸方向においてほぼ同じ位置
（Ｌ３−Ｌ３の位置）に揃うように形成されている。径方向において最も外側に位置する第５層８５は、内側に位置する第１層８１から第４層８４に対して、前側端部が距離Ｄ１だけ回転軸方向において奥側にずれるように配置されている。また第５層８５の奥側（後ろ側）端部は、内側に位置する第１層８１から第４層８４の奥側端部に対して、距離Ｄ２だけ回転軸方向において奥側にずれるように配置されている。すなわち、少なくとも最も外側に位置する最外層８５の各部屋の前側端部及び奥側端部が、最も内側に位置する最内層８１の各部屋の前側端部及び奥側端部より、それぞれ回転軸方向において奥側にずれることにより、外観上において流体バランサ８の外周部が奥側に段差Ｄｓだけ後退した段部を形成する。この段部は、流体バランサ８の前側外周部に段部を形成するほか、背面側内周部にも背面側から見て前側に向けて引っ込んだ段部を形成する。前側外周部に形成された段部は、外枠１の前面から上面にかけて形成された湾曲部との干渉を避け、ドラム５の径を大きくするのに有効である。また、流体バランサ８の背面側内周部に形成された段部は、ドラム内の容積を大きくするのに役立つ。

流体バランサ８は、その最外層の外周面をドラム５の内周面に接触させて装着されている。最外層８５の各部屋の奥側端部をＤ２だけずらしたことにより、ドラム５の周壁との回転軸方向の接触長さを長くすることができ、流体バランサ８とドラム５との固定がより確実なものとなる。

脱水運転は、定常回転に至るまでに振動センサーにより通過させる不つり合い量を決めている。従って、流体バランサの効果により定常回転時の外槽の最大振動振幅は、決定される構成となっている。

本発明のドラム式洗濯機のように大口径のドラム５に装着される流体バランサ８は、その径が大きくなり回転時の遠心力も大きく、共振通過時には十分内壁に張り付いた遠心力場状態にあり慣性質量としての作用が大きく働き共振振幅の低減が図られる。また、定常回転時には、図３に示すように多層化による高性能により、不つり合い量が低減され、振動振幅の減少が図られる。

また、本発明のドラム式洗濯機のように、外観デザインを重視した大きな湾曲を有する外枠形状の場合、容積効率を高めるためには、内包される外槽４の形状は外枠１の形状に倣うことになる。従って、容積効率を高めるためには、外槽４に内包されるドラムも外枠形状に倣う必要がある。

本発明のドラム５は、図２に示すように、内側層より洗濯機前方から見て奥方向に段付きとなった流体バランサ８の最外層８５でＳＵＳ製のドラム胴部に装着された構成となっている。このため、外槽４内の前後方向が有効に活用でき、高い容積効率が図られる。本発明では、流体バランサ８の形状は内側層より洗濯機前方から見て奥方向に１段の段付き構造であるが、多段の段付き構造であっても本来の目的は十二分に達成される。

図２に示すように、流体バランサ８の各層は内蔵液体の安定化のため、バッフル１３により周方向に複数個の部屋（室）に分割されている。バッフル１３には、本来のバランサ機能を果すため、前記の部屋間を連通させる開口部が設けられている。回転軸が横型のドラム洗濯機では、回転初めには内蔵液が重力の影響で下方に偏っている欠点があり、低速回転時には液移動がスムーズに行えるよう、開口部面積は大きいことが望まれる。しかし、開口部面積が大きい場合、高速回転時には、振動により内蔵液が揺動され悪影響を及ぼすことが分かっている。したがって、低速回転時には液移動がスムーズで高速回転時には液移動し難い開口部が望まれる。

本発明では、流体バランサ８は胴部８ａと蓋部８ｂがスピン溶着により接合製作される構成とし、胴部８ａおよび蓋部８ｂには内蔵流体の動きを抑制するバッフル１３が設けられ、各バッフル１３には内蔵流体が連通するための開口部１４が形成されている。開口部１４は、各部屋（室）の内周側に形成され、回転軸方向の長さ（幅）Ｗが径方向の長さ
（高さ）Ｈよりも長い略長方形をした開口部８１１，８２１，８３１，８４１，８５１と、回転軸方向の長さ（幅）Ｗが径方向の長さ（高さ）Ｈよりも短いスリット状の開口部
８１２，８２２，８３２，８４２，８５２とを有する。

最外層８５および最外層８５の１つ内側の層８４においては、スリット状の開口部852，８４２はそれぞれ開口部８５１，８４１の幅方向の中間部に設けられ、その他の層８１，８２，８３では、スリット状の開口部８１２，８２２，８３２はそれぞれ開口部８１１，８２１，８３１の前側端部に設けられている。この開口部１４の形状はスピン溶着と深い関係がある。各層を区分けするために蓋部８ｂに設けられた隔壁８ｂ１は段部を形成する最外層８５の両側で他の隔壁８ｂ１よりも低くする必要がある。すなわち、段部を形成するために奥側に後退させた層８５に隣接する層８４の外側の隔壁８ｂ１を内側の隔壁
８ｂ１よりも低くする必要がある。そのため、段部を形成するために奥側に後退させた層８５とこれに隣接する層８４では、スリット状の開口部８５２，８４２はそれぞれ開口部８５１，８４１の幅方向の中間部に設けたものである。

また各層８１〜８５において、スリット状の開口部８１２，８２２，８３２，８４２，８５２よりも前側にもバッフル１３ａを設けている。特に、スリット状の開口部８１２，８２２，８３２が開口部８１１，８２１，８３１の前側端部に設けられている層８１，
８２，８３においても、スリット状の開口部８１２，８２２，８３２よりも前側にバッフル１３ａを設けている。胴部８ａには、隔壁８ｂ１と溶着されるために各層を区分けする各隔壁８ｂ１に対応するように、隔壁８ｂ１の受部８ｂ２が各層を形成する部屋（室）の前側端面から突出すように形成されている。バッフル１３ａは径方向に隣接する各受部
８ｂ２の間に設けられている。そして、このバッフル１３ａにより、スピン溶着時の変形を抑制することができ、スピン溶着の作業性が向上する効果がある。スリット状の開口部面積を小さくするため、本実施例では、スリットの幅を１mm程度に設定している。

本発明に係るドラム式洗濯機の縦断面図。 流体バランサに係る要部の詳細図。 多重化の効果を示す計算結果図。

符号の説明

１ 外枠
２ ベース
３ 支持機構
４ 外槽
５ ドラム
６ ベローズ
７ ガラス扉
８ バランサ
９ フランジ
１０ モータロータ
１１ ステータ
１２ 槽ベース
１３ バッフル
１４ 開口部

Claims (4)

1. 前面から上面にかけて形成された湾曲部を有する外枠と、外枠内に支持機構によって支持された外槽と、この外槽内に回転軸を横にしたドラムと、ドラムを回転駆動する駆動手段と、外槽内への給排水機構と、ドラムの回転駆動および外槽への給排水を制御するコントローラとを備えたドラム式洗濯機において、
   前記ドラムの前部に、複数の層に区分けされ各層の内部に液体を内蔵した流体バランサを装着し、
   前記流体バランサは、径方向の最も外周側に位置する最外層が、最も内周側に位置する最内層よりも後ろ側に後退して設けられており、前記流体バランサの前面外周部に後ろ側に後退する段部が形成され、前記最外層を構成し液体を内蔵した各部屋の前側端部及び後ろ側端部は、前記最内層を構成し液体を内蔵した各部屋の前側端部及び後ろ側端部よりも、それぞれ後ろ側にずらして設けられていることを特徴とするドラム式洗濯機。
2. 請求項１に記載のドラム式洗濯機において、
   前記流体バランサは、その最外層の外周面を前記ドラムの内周面に接触させて装着されていることを特徴とするドラム式洗濯機。
3. 請求項１乃至２のいずれか１項に記載のドラム式洗濯機において、
   前記流体バランサに形成された各層は、バッフルによって周方向に複数の部屋に分割されており、
   前記バッフルは周方向に隣接する部屋間で液体の流通を許す開口部を有し、
   前記開口部は、内周側に回転軸方向の長さが径方向の長さよりも長い内周側開口部を有すると共に、内周側開口部の外周側端部から外周側に延設され回転軸方向の長さが径方向の長さよりも短いスリット状の開口部を有し、
   前記最外層では、前記スリット状の開口部が前記内周側開口部の回転軸方向における中間部に位置することを特徴とするドラム式洗濯機。
4. 請求項３に記載のドラム式洗濯機において、前記最内層では、前記スリット状の開口部が前記内周側開口部の回転軸方向における前側端部に位置することを特徴とするドラム式洗濯機。

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