JP4392713B2 - 空気入りタイヤの成形組立て方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、空気入りタイヤの成形組立て方法に係わり、更に詳しくは重荷重用タイヤの成形組立て成形時に、ビード部材廻りの座屈や亀裂等を防止し、高品質のタイヤを製造することが出来る空気入りタイヤの成形組立て方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りタイヤの成形方式は、図3に示すように、成形ドラム1にカーカス部材2を筒状に巻付け、このカーカス部材2の両側縁部の外周面にビードフィラー3をビードコア4の外周面に環状に巻付けて成るビード部材5を装着した後、前記ビードフィラー3をブラダー6を介してタイヤの内側に折り返し、その外周両側部にサイドゴム部材7及びキャップ部材8を順次積層させた後、加硫工程にてタイヤをインフレートして加硫成形する方法である。
【0003】
また従来の重荷重用空気入りタイヤの成形方式として、バンド成形工程、ファースト成形工程(第1段成形工程)、セカンド成形工程(第2段成形工程)の3ステージの成形方式が知られている。
【0004】
然しながら、上記のような3ステージの成形方式では、ビード部材廻りをファースト成形工程で組立てるために、セカンド成形工程のインフレート加工時に、ビード部材廻り内外に引っ張り力や圧縮力が発生する。即ち、図4に示すように、ビードフィラー3をブラダー6を介して成形ドラム1の内側に折り込む際には、ビードフィラー3の内面側には、圧縮力Faが作用し、また外表面には引っ張り力Fbが作用する。
【0005】
更に、加硫工程では、再びビードフィラー3が外側に変形を受けるので、ビードフィラー3の外側面には圧縮力Faが発生し、内面側には引っ張り力Fbが発生し、加硫時のゴム流れからビードフィラー3の表面に座屈(バックル)現象や亀裂(クラック)等が発生し易いと言う問題があった。
【0006】
また、ビードフィラーの内側への折り返し時に、折り曲げられたビードフィラーの内部応力により、加硫時のサイドゴム部材の肉厚(ゲージ)が不安定になるのを防止するめに、ビードフィラーの内側周上に複数の切込み部を設けた発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−200907号公報(第2〜第3頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、ビードフィラーの内側周上に複数の切込を設けたものでは、ビードフィラーをタイヤの内側に折り返す際には、切込み部により内部応力を低減させることが出来る反面、加硫成形時に外側に折り返す際には、ビードフィラーの外側面には圧縮力が発生し、最終製品としてのタイヤのビード部材の表面には座屈現象や亀裂等が発生し易いと言う問題があった。
【0009】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、3ステージ成形方式でも、インフレート成形した場合と類似するビード廻りの状態を得ることが可能であり、ビード部材の表面に座屈現象や亀裂等を発生させず、ビード部材廻りの薄肉軽量構造の仕様にも適用でき、高品質のタイヤを成形することが出来る空気入りタイヤの成形組立て方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記目的を達成するため、成形ドラムにカーカス部材を筒状に巻付け、このカーカス部材の両側縁部に、ビードフィラーの基端部から先端部に向かって切り込み深さが順次浅くなる複数本の環状切欠溝を外周面に形成したビードフィラーをビードコアの外周面に環状に巻付けて成るビード部材を装着した後、前記ビード部材のビードフィラーを環状切欠環溝に沿って成形ドラムの内側に折り返し、その外周両側部に離型シートを介在させた状態でサイドゴム部材をそれぞれ積層させた後、前記カーカス部材を膨張させて、その両側縁部をそれぞれビード部材の外側に折り返した後、前記離型シートを取外し、サイドゴム部材をビード部材上に積層させ、更にカーカス部材中央にキャップ部材を積層した後、加硫工程にてタイヤを加硫成形することを要旨とするものである。
【0011】
ここで、前記ビードフィラーの外周面に形成する少なくとも一本以上の環状切欠溝は、ビードフィラーの押出し成形時、またはビードフィラーの成形後に加工するものである。
【0012】
このように、ビードフィラーの基端部から先端部に向かって切り込み深さが順次浅くなる複数本の環状切欠溝を外周面に形成したビードフィラーをビードコアの外周面に環状に巻付けて成るビード部材を装着するので、ビードフィラーをタイヤの内側に折り返す際には、環状切欠溝が開いてビードフィラーの内部応力を低減させることが出来、また加硫成形時に外側に折り返す際には、環状切欠溝を閉じることでビードフィラーの外側面には圧縮力を発生させず、ビード部材の表面に座屈現象や亀裂等の発生を防止し、ビード部材廻りの薄肉軽量構造の仕様にも適用でき、高品質のタイヤを成形することが出来るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0014】
なお、以下の説明において、従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0015】
図1は、この発明の空気入りタイヤの成形組立て方法を実施するための成形ドラム端部の組立て説明図を示し、1はファースト成形工程の成形ドラム、2は成形ドラムに筒状に巻付けたカーカス部材であって、このカーカス部材2の両側縁部に、図2に示すような外周面に少なくとも一本以上(この実施形態では3本であるが、本数には限定されない)の環状切欠溝9a,9b,9cを形成した環状のビード部材10が装着される。
【0016】
なお、この実施形態におけるカーカス部材2とは、カーカス層、インナーライナー、スチールまたは有機繊維補強層、ゴムシート等を総称している。
【0017】
前記ビード部材10は、上述した環状切欠溝9a,9b,9cを形成したビードフィラー11をビードコア12の外周面に環状に巻付けて構成してあり、環状切欠溝9a,9b,9cは、ビードフィラー11の基端部11aから先端部11bに向かって切り込み深さが順次浅くなっている。
【0018】
そして、この発明の実施形態では、前記カーカス部材2の両側縁部にビード部材10を装着した後、前記ビード部材10のビードフィラー11を環状切欠環溝9a,9b,9cに沿ってタイヤの内側に折り返し、その外周両側部に離型シート12を介在させた状態でサイドゴム部材13をそれぞれ積層させる。
【0019】
その後、前記カーカス部材2を膨張させて、その両側縁部をそれぞれビード部材10の外側に折り返した後、前記離型シート12を取外し、サイドゴム部材13をビード部材10上に積層させ、更にカーカス部材2の中央にキャップ部材14を積層した後、加硫工程にてタイヤを加硫成形するのである。
【0020】
なお、この実施形態におけるキャップ部材14とは、ベルト層、補強層、アンダートレッド、キャップトレッド等を総称している。
【0021】
この発明では、ビードフィラー11の外周面に少なくとも一本以上の環状切欠溝9a,9b,9cを形成しておくことで、ビードフィラー11をタイヤの内側に折り返す際には、環状切欠溝9a,9b,9cが開いてビードフィラー11の内部応力を低減させることが出来、また加硫成形時に外側に折り返す際には、環状切欠溝9a,9b,9cを閉じることでビードフィラー11の外側面には圧縮力Faを発生させず、ビード部材10の表面に座屈現象や亀裂等の発生を防止でき、またビード廻りの薄肉軽量構造の仕様にも適用でき、高品質のタイヤを成形することが出来るものである。
【0022】
更に、離型シート12を介在させた状態でサイドゴム部材13をそれぞれ積層させるので、サイドゴム部材13をセカンド工程のインフレート後に組み立てる、所謂、サイドオーバー構造とすることが出来るものである。
【0023】
以上のように、この発明の実施形態では、ビードフィラー11の外周面に環状切欠溝9a,9b,9cを形成しておくことで、ビードフィラー11をタイヤの内側に折り返す際には、環状切欠溝9a,9b,9cが開いてビードフィラー11の内部応力を低減させることが出来、また加硫成形時に外側に折り返す際には、環状切欠溝9a,9b,9cを閉じることでビードフィラー11の外側面には圧縮力Faを発生させず、ビード部材10の表面に座屈現象や亀裂等の発生を防止し、ビード部材廻りの薄肉軽量構造の仕様にも適用でき、高品質のタイヤを成形することが出来るものである。
【0024】
【発明の効果】
この発明は、上記のように成形ドラムにカーカス部材を筒状に巻付け、このカーカス部材の両側縁部に、ビードフィラーの基端部から先端部に向かって切り込み深さが順次浅くなる複数本の環状切欠溝を外周面に形成したビードフィラーをビードコアの外周面に環状に巻付けて成るビード部材を装着した後、前記ビード部材のビードフィラーを環状切欠環溝に沿って成形ドラムの内側に折り返し、その外周両側部に離型シートを介在させた状態でサイドゴム部材をそれぞれ積層させた後、前記カーカス部材を膨張させて、その両側縁部をそれぞれビード部材の外側に折り返した後、前記離型シートを取外し、サイドゴム部材をビード部材上に積層させ、更にカーカス部材中央にキャップ部材を積層した後、加硫工程にてタイヤを加硫成形するので、ビードフィラーをタイヤの内側に折り返す際には、環状切欠溝が開いてビードフィラーの内部応力を低減させることが出来、また加硫成形時に外側に折り返す際には、環状切欠溝を閉じることでビードフィラーの外側面には圧縮力を発生させず、ビード部材の表面に座屈現象や亀裂等の発生を防止し、ビード部材廻りの薄肉軽量構造の仕様にも適用でき、高品質のタイヤを成形することが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の空気入りタイヤの成形組立て方法を実施するための成形ドラム端部の組立て説明図である。
【図2】この発明の空気入りタイヤの成形組立て時におけるビードフィラーの変形状態を示す説明図である。
【図3】従来の空気入りタイヤの成形組立て方法を実施するための成形ドラム端部の組立て説明図である。
【図4】従来の空気入りタイヤの成形組立て時におけるビードフィラーの変形状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 成形ドラム 2 カーカス部材
3 ビードフィラー 4 ビードコア
5 ビード部材 6 ブラダー
7 サイドゴム部材 8 キャップ部材
Fa 圧縮力 Fb 引っ張り力
9a,9b,9c 環状切欠溝
10 ビード部材 11 ビードフィラー
11a 基端部 11b 先端部
12 離型シート 13 サイドゴム部材
14 キャップ部材

Claims (2)

  1. 成形ドラムにカーカス部材を筒状に巻付け、このカーカス部材の両側縁部に、ビードフィラーの基端部から先端部に向かって切り込み深さが順次浅くなる複数本の環状切欠溝を外周面に形成したビードフィラーをビードコアの外周面に環状に巻付けて成るビード部材を装着した後、前記ビード部材のビードフィラーを環状切欠環溝に沿って成形ドラムの内側に折り返し、その外周両側部に離型シートを介在させた状態でサイドゴム部材をそれぞれ積層させた後、前記カーカス部材を膨張させて、その両側縁部をそれぞれビード部材の外側に折り返した後、前記離型シートを取外し、サイドゴム部材をビード部材上に積層させ、更にカーカス部材中央にキャップ部材を積層した後、加硫工程にてタイヤを加硫成形する空気入りタイヤの成形組立て方法。
  2. 前記ビードフィラーの外周面に形成する少なくとも一本以上の環状切欠溝は、ビードフィラーの押出し成形時、またはビードフィラーの成形後に加工する請求項1に記載の空気入りタイヤの成形組立て方法。
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