JP4392455B2 - リン酸アルミニウムの製造方法 - Google Patents
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代表的な例として、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)と塩化アルミニウム(AlCl3)とを水に溶解し、水酸化ナトリウムを用いてpHを3.8になるように調整した後に、1〜4週間加温することによって製造する方法が報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
新実験化学講座8、丸善 無機リン化学、講談社サイエンティフィック
(i)リン酸含有化合物を酸性水溶液に溶解させた、pHが1.49未満の第1の水溶液に対して、アルカリ性水溶液に溶解するアルミニウム含有化合物を前記アルカリ性水溶液に溶解させた第2の水溶液を、前記第1の水溶液のpHが1.49〜2.49となるまで加えることによってリン酸アルミニウムを生成する工程を含む、リン酸アルミニウム製造方法。
本発明のリン酸アルミニウム製造方法によれば、リン酸含有化合物を酸性水溶液に溶解させた、pHが1.49未満の第1の水溶液に対して、アルカリ性水溶液に溶解するアルミニウム含有化合物をアルカリ性水溶液に溶解させた第2の水溶液を、第1の水溶液のpHが1.49〜2.49となるまで加えることによって、純度の高いリン酸アルミニウムを製造することができる。
リン酸無水素塩とは、リン酸塩であって、水素塩ではない化合物をいう。例えば、リン酸アンモニウム((NH4)3PO4)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸三カリウム(K3PO4)、リン酸アンモニウムマグネシウム(MgNH4PO4)、および、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)があげられるが、これらに限定されない。
リン酸一水素塩とは、リン酸塩であって、一水素塩の化合物をいう。例えば、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、リン酸一水素マグネシウム(MgHPO4)、および、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4)があげられるが、これらに限定されない。
リン酸二水素塩とは、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、および、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)があげられるが、これらに限定されない。
これらリン酸含有化合物は、単一種類で用いてもよく、また、複数種類を組み合わせて用いても良い。
しかし、リン酸資源は、枯渇が問題となっている資源のひとつであり、さらに、一部の国においては戦略物質として指定され、その輸出が規制されている事態を踏まえれば、廃棄物から回収した廃棄物由来のリン酸資源を原料として用いることは、環境保全の面のみならず、自国資源の有用活用の面からも優れている。従って、廃棄物から回収したリン酸化合物を用いることが好ましい。
リン酸資源を高濃度で含む廃棄物としては、例えば、下水汚泥、農業廃水汚泥、家畜糞尿、および、これらの焼却灰やばいじんが挙げられるが、これらに限定されない。下水汚泥、および、その焼却灰やばいじんからは、特にリン酸アンモニウムマグネシウムやヒドロキシアパタイトなどを高効率で回収することができる。畜産系廃棄物、および、その焼却灰やばいじんからは、特にリン酸一水素カルシウムやヒドロキシアパタイトなどを高効率で回収することができる。
ここで、アルミニウム含有化合物には、アルミニウム単体(Al)も含まれる。
アルミニウム含有化合物として、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩を用いると、硫酸成分とカルシウム成分とが反応して硫酸カルシウムを生じ、目的生成物であるリン酸アルミニウムとの分離精製が煩雑になってしまう可能性がある。よって、この場合には、アルミニウム含有化合物のなかでも、アルミニウム単体、水酸化アルミニウム、または、酸化アルミニウムを用いることがより好ましい。
これらアルミニウム含有化合物は、単一種類で用いてもよく、また、複数種類を組み合わせて用いても良い。
アルミニウム含有化合物の由来は問わず、天然由来であっても、合成品であっても良い。
なお、第2の水溶液を加えた後の第1の水溶液のpHを1.54以上とする場合には、第2の水溶液を加える前の第1の水溶液のpHは1.54未満であれば良く、リン酸含有化合物を溶解させる酸性水溶液は、リン酸含有化合物を溶解させた後の第1の水溶液のpHが1.54未満となるような酸性水溶液であれば良い。
加える際の温度や圧力は特に限定されず、例えば、常温常圧下でも高い収率でリン酸アルミニウムを生成することができ、また、加温常圧下でも行うことができる。
熟成させる方法は、例えば、リン酸アルミニウムを生成した溶液中、即ち、母液中で、静置または攪拌する方法があげられるが、これらに限定されない。熟成させる時間は、特に限定されないが、3時間以上が好ましく、12時間以上が特に好ましい。
このように製造したリン酸アルミニウムの使用方法は、特に限定されないが、焼却飛灰の重金属安定化剤や、都市ごみ焼却場の排ガス処理剤中の高機能添加剤として利用することができる。また、この他の用途としては、例えば、セラミック原料、医薬品原料、および、化粧品原料として利用することができる。
異なるリン酸またはリン酸塩化合物を含むリン酸成分含有酸性水溶液10種類と、異なるアルミニウム含有化合物を含むアルミニウム成分含有アルカリ性水溶液2種類とを、以下の方法で調製した。
リン酸塩化合物としては、リン酸アンモニウム(A0-a液)、リン酸三ナトリウム十二水和物(A0-b液)、リン酸三カリウム(A0-c液)、リン酸アンモニウムマグネシウム六水和物(A0-d液)、および、ヒドロキシアパタイト(A0-e液、ここまで、リン酸無水素塩)、リン酸水素二アンモニウム(A1-a液)、リン酸水素二ナトリウム十二水和物(A1-b液)、リン酸水素二カリウム(A1-c液)、リン酸一水素マグネシウム三水和物(A1-d液)、および、リン酸一水素カルシウム二水和物(A1-e液、ここまで、リン酸一水素塩)、リン酸二水素アンモニウム(A2-a液)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(A2-b液)、および、リン酸二水素カリウム(A2-c液、ここまで、リン酸二水素塩)を、それぞれ使用した。
具体的には、水酸化ナトリウム211.0 g(5.28 mol)を、2 Lビーカーに量り取った。イオン交換水960 mLと水酸化アルミニウム209.8 g(2.69 mol)とを加えた後、この混合物を90℃で過熱攪拌し溶解させることによって、アルミニウム成分含有アルカリ性水溶液を調製した。この溶液をB1液とした。B1液の比重が1.227 g/mLであったことから、B1液の水酸化ナトリウム濃度を4.69 mol/Lと算出し、アルミニウム成分の濃度を2.39 mol/Lと算出した。
同様に、水酸化ナトリウム211.0 g(5.28 mol)を、2 Lビーカーに量り取り、イオン交換水960 mLと無水硫酸アルミニウム459.9 g(1.34 mol、アルミニウム成分換算2.69 mol)とを加えた後、この混合物を90℃で過熱攪拌し溶解させることによって、アルミニウム成分含有アルカリ性水溶液としてB2液を調製した。B2液の水酸化ナトリウム濃度は4.69 mol/Lであり、アルミニウム成分の濃度は2.39 mol/Lであった。
上記A1-e液にB1液を加えていくリン酸アルミニウムの製造方法において、B1液を全て加え終えた後のA1-e液のpHが生成物に与える影響を示すべく、A1-e液のpHがそれぞれ1.49(実施例1)、1.54(実施例2)、1.67(実施例3)、1.78(実施例4)、1.80(実施例5)、1.88(実施例6)、2.03(実施例7)、および、2.49(実施例8)となるまでB1液を加えた実施例1〜8と、A1-e液のpHがそれぞれ1.00(比較例1)、2.71(比較例2)、3.02(比較例3)、3.43(比較例4)、3.54(比較例5)、4.25(比較例6)、4.39(比較例7)、および、4.57(比較例8)となるまでB1液を加えた比較例1〜8を行った。
これら実施例1〜8および比較例1〜8の詳細は、以下の通りである。
200 mLビーカーに入れたA1-e液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB1液22.5 mLを14℃〜30℃で1時間かけて滴下した。この時点で、白色沈殿の析出がわずかに観察された。なお、B1液全量滴下後のpHは1.00であった。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた。しかし、白色沈殿の析出量は著しく少なかった。吸引ろ過により沈殿をろ別し、ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄した後、105℃で乾燥させた結果、微量のリン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
[実施例1] pHが1.49の場合
200 mLビーカーに入れたA1-e液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB1液24.0 mLを14℃〜30℃で1時間かけて滴下した。この時点で、白色沈殿が析出した。なお、全量滴下後のpHは1.49であった。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過により沈殿をろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
200 mLビーカーに入れたA1-e液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB1液24.5 mLを14℃〜30℃で1時間かけて滴下した。この時点で、白色沈殿が多量に析出した。なお、全量滴下後のpHは1.54であった。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過により沈殿をろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
[実施例3〜8] pHが1.67〜2.49の場合
実施例3においてはB1液26.0 mL(B1液全量滴下後のpHは1.67)、実施例4ではB1液27.0 mL(B1液全量滴下後のpHは1.78)、実施例5ではB1液28.0 mL(B1液全量滴下後のpHは1.80)、実施例6ではB1液28.5 mL(B1液全量滴下後のpHは1.88)、実施例7ではB1液29.0 mL(B1液全量滴下後のpHは2.03)、そして、実施例8ではB1液29.5 mL(B1液全量滴下後のpHは2.49)を用いた他は、実施例2の方法に従って行った。
実施例3〜8のいずれの反応系内の様子も、実施例2と同様に、B1液を全量滴下した時点で多量のリン酸アルミニウムの白色沈殿の析出が観察された。
200 mLビーカーに入れたA1-e液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB1液30.0 mLを14℃〜30℃で1時間かけて滴下した。全量滴下後のpHは2.71であった。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を吸引ろ過によりろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、白色粉体を得た。
[比較例3〜8] pHが3.02〜4.57の場合
比較例3においてはB1液32.0 mL(B1液全量滴下後のpHは3.02)、比較例4ではB1液33.0 mL(B1液全量滴下後のpHは3.43)、比較例5ではB1液34.0 mL(B1液全量滴下後のpHは3.54)、比較例6ではB1液35.5 mL(B1液全量滴下後のpHは4.25)、比較例7ではB1液36.0 mL(B1液全量滴下後のpHは4.39)、そして、比較例8ではB1液36.5 mL(B1液全量滴下後のpHは4.57)を用いた他は、比較例2の方法に従って行った。
実施例1〜8および比較例1〜8で生成物として得た白色粉体のそれぞれについて、X線回折分析(X-ray diffraction, XRD分析)を行い、データベース(Joint Committee on Powder Diffraction Standards, JCPDS)および市販のリン酸アルミニウムと比較することによって、白色粉体の成分を同定した。
この一方で、比較例2〜8において得た生成物も、JCPDSのリン酸アルミニウムのデータ、そして、市販のリン酸アルミニウムと同一の回折角を有していることより、主生成物はリン酸アルミニウムであることが分かった。
これら焼成後の粉体のXRD分析の結果を、実施例1、および、比較例2、5および8の生成物については焼成前のXRD分析の結果とあわせて、図1〜5に示す。
図2における焼成後の生成物のXRD分析チャートは、図1及びJCPDSのPDFファイル(powder diffraction file)PDF#20-44と非常に良い一致を示した。従って、生成物を焼成した後のXRD分析結果からも、実施例1〜8および比較例1における生成物はリン酸アルミニウムであることが支持された。
また、図3および4における焼成後の生成物のXRD分析チャートも、図1及びPDF#20-44と良い一致を示し、そして、図5における焼成後の生成物のXRD分析チャートは、PDF#11-500と良い一致を示した。このことから、比較例2〜8における主生成物もリン酸アルミニウムであることが分かった。
なお、焼成前のリン酸アルミニウムのピークがブロードであった理由としては、焼成前のリン酸アルミニウムはアモルファス形状をとっていたことによると推察される。
これに対し、比較例3、4および6、7の生成物には、成分分析の結果、リン酸アルミニウムの他にも、水酸化アルミニウムやCa9Al(PO4)7が含まれていることが分かった。また、生成物に含まれるリン酸アルミニウムの量は、pH2.49を境目として、pHが上昇するに従って減少していた。
次に、リン酸成分含有酸性水溶液におけるリン酸含有化合物の種類がリン酸アルミニウムの製造方法に与える影響を示すべく、各種リン酸またはリン酸塩を含有する酸性水溶液を用いて、実施例9〜22(A3液、A0-a液〜A0-e液、A1-a液〜A1-e液、および、A2-a液〜A2-c液を使用)を行った。
これら実施例9〜22の詳細は、以下の通りである。
A3液100 mLを200 mLビーカーに入れ、スターラーを用いて攪拌しながら、pHが2.00になるまでB1液を14℃〜30℃で滴下した。この時点で、白色沈殿が多量に析出した。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた。沈殿を吸引ろ過によりろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
A3液の代わりに、実施例10ではA0-a液、実施例11ではA0-b液、実施例12ではA0-c液、実施例13ではA0-d液、実施例14ではA0-e液、実施例15ではA1-a液、実施例16ではA1-b液、実施例17ではA1-c液、実施例18ではA1-d液、実施例19ではA1-e液、実施例20ではA2-a液、実施例21ではA2-b液、そして、実施例22ではA2-c液を用いた他は、実施例9の方法に従って行った。
実施例9〜22で生成物として得たリン酸アルミニウムのそれぞれについて、XRD分析により、化合物の同定を行った。
リン酸含有化合物として、リン酸、リン酸無水素塩、または、リン酸一水素塩を用いた、実施例9〜22においては、生成した粉体をそのままXRD分析することによって、JCPDSのリン酸アルミニウムのデータ、および、市販のリン酸アルミニウムと同一の回折角を検出することができ、生成物はリン酸アルミニウムであると同定することができた。
図7及び図8は、それぞれ、実施例20および21における生成物の焼成前と焼成後のXRD分析結果である。これら図7及び図8が明示するように、焼成後の生成物のXRD分析チャートは、図1およびPDF#20-44と良い一致をしており、この結果から、リン酸含有化合物としてリン酸二水素塩を用いた場合の生成物もリン酸アルミニウムであると同定された。
リン酸アルミニウムの製造方法において、硫酸成分とカルシウム成分との両方が含まれる場合の影響を示すべく、アルミニウム成分含有アルカリ性水溶液として硫酸アルミニウムを溶解させたB2液を使用し、リン酸成分含有酸性水溶液としてリン酸水素二ナトリウムを溶解させたA1-b液を用いた実施例23と、リン酸成分含有酸性水溶液としてリン酸一水素カルシウムを溶解させたA1-e液とを用いた実施例24とを行った。
これら実施例23および24の詳細は、以下の通りである。
200 mLビーカーに入れたA1-b液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB2液25.0 mLを室温(25℃)で1時間かけて滴下した。この時点で、白色沈殿が多量に析出した。なお、全量滴下後のpHは1.75であった。
室温で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過により沈殿をろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムの白色粉体を得た。
200 mLビーカーに入れたA1-e液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB2液25.0 mLを室温(25℃)で1時間かけて滴下した。滴下するに従って白色沈殿が多量に析出した。全量滴下後のpHは1.90であった。
室温で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過により沈殿をろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムと硫酸カルシウムとが混合した白色粉体を得た。
これら実施例の結果、リン酸アルミニウムの製造方法において、硫酸成分とカルシウム成分との両方が含まれる場合には、リン酸アルミニウムと硫酸カルシウムとが生成した。
アルミニウム含有化合物をアルカリ性水溶液に溶解させた後に、リン酸成分含有酸性水溶液にこのアルカリ性水溶液を加えていきpHを1.49以上とすることによってリン酸アルミニウムを製造する方法(実施例25)と、リン酸成分含有酸性水溶液に先にアルミニウム含有化合物を加えた後に、アルカリ性水溶液を加えていくことによってpHを1.49以上とする方法(比較例9)との比較を行った。
まず、リン酸0.075 molを蒸留水で100 mLにメスアップすることによって、0.75 mol/Lのリン酸成分含有酸性水溶液を調製した。
このリン酸成分含有酸性水溶液100 mLを200 mLビーカーに入れ、スターラーを用いて攪拌しながら、pHが2.00になるまでB1液を14℃〜30℃で滴下した。この時点で、白色沈殿が多量に析出した。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた。沈殿を吸引ろ過によりろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
リン酸0.01 molを蒸留水で100 mLにメスアップすることによって、0.10 mol/Lのリン酸成分含有酸性水溶液とした。この溶液を200 mLビーカーに移し、スターラーを用いて攪拌しながら、塩化アルミニウム0.01 molを加え溶解させた。溶液のpHは1.45であった。また、この時点で沈殿の析出は一切観察されなかった。
このようにして調製したアルミニウム含有化合物が溶解したリン酸成分含有酸性水溶液に、1.0 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを2.49となるまで上昇させていったが、沈殿は一切生じなかった。さらにpHを4.50まで上昇させていったが、この場合にも、溶液が薄く白濁したのみで沈殿物を回収することはできなかった。
引続き、室温(25℃)で24時間攪拌を続けたものの、ごく僅かに白濁が観測されたのみで、析出物を回収することさえできなかった。
これまでの実施例1〜25では、14℃〜30℃という低い温度でリン酸アルミニウムを生成できることを示してきたが、加温状態においても同様に効率良くリン酸アルミニウムを生成できることを実証すべく、実施例26を行った。
200 mLビーカーに入れたA1-e液100 mLを、スターラーを用いて攪拌しながら、その中にB1液24.0 mLを60℃で1時間かけて滴下した。この時点で、白色沈殿が多量に析出した。なお、全量滴下後のpHは1.49であった。
60℃で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過によりろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
濃度が薄いリン酸成分含有酸性水溶液とアルミニウム成分含有アルカリ性水溶液とを用いても、同様に効率良くリン酸アルミニウムを生成できることを実証すべく、実施例27を行った。
まず、希薄リン酸成分含有酸性水溶液と希薄アルミニウム成分含有アルカリ性水溶液とを、以下の方法で調製した。
リン酸一水素カルシウム二水和物1.72 g(0.01 mol)を量り取り、3 mol/Lの塩酸水溶液に溶解させつつ、100 mLにメスアップすることによって、0.10 mol/Lの希薄リン酸成分含有酸性水溶液を調製した。この溶液をdil.A1-e液とした。
つづいて、水酸化ナトリウム21.1 g(0.53 mol)を、200 mLビーカーに量り取った。イオン交換水96 mLと水酸化アルミニウム2.80 g(0.035 mol)とを加えた後、この混合物を90℃で過熱攪拌し溶解させることによって、希薄アルミニウム成分含有アルカリ性水溶液を調製した。この溶液をdil.B1液とした。
室温(25℃)で24時間攪拌を続け、生成した沈殿を熟成させた後、吸引ろ過により沈殿をろ別した。ろ物をイオン交換水20 mLで3回洗浄し、105℃で乾燥させた結果、リン酸アルミニウムを白色粉体として得た。
Claims (17)
- リン酸含有化合物を酸性水溶液に溶解させた、pHが1.49未満の第1の水溶液に対して、アルカリ性水溶液に溶解するアルミニウム含有化合物を前記アルカリ性水溶液に溶解させた第2の水溶液を、前記第1の水溶液のpHが1.49〜2.49となるまで加えることによってリン酸アルミニウムを生成する工程を含む、リン酸アルミニウム製造方法。
- リン酸含有化合物を酸性水溶液に溶解させた、pHが1.54未満の第1の水溶液に対して、アルカリ性水溶液に溶解するアルミニウム含有化合物を前記アルカリ性水溶液に溶解させた第2の水溶液を、前記第1の水溶液のpHが1.54〜2.49となるまで加えることによってリン酸アルミニウムを生成する工程を含む、リン酸アルミニウム製造方法。
- リン酸含有化合物を酸性水溶液に溶解させた、pHが1.49未満の第1の水溶液に対して、アルカリ性水溶液に溶解するアルミニウム含有化合物を前記アルカリ性水溶液に溶解させた第2の水溶液を、前記第1の水溶液のpHが1.49〜1.80となるまで加えることによってリン酸アルミニウムを生成する工程を含む、リン酸アルミニウム製造方法。
- リン酸含有化合物を酸性水溶液に溶解させた、pHが1.54未満の第1の水溶液に対して、アルカリ性水溶液に溶解するアルミニウム含有化合物を前記アルカリ性水溶液に溶解させた第2の水溶液を、前記第1の水溶液のpHが1.54〜1.80となるまで加えることによってリン酸アルミニウムを生成する工程を含む、リン酸アルミニウム製造方法。
- 前記アルカリ性水溶液が、アルカリ金属の水酸化物を含有する水溶液であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記アルカリ金属の水酸化物が、水酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
- 前記酸性水溶液が鉱酸を含有する水溶液であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記酸性水溶液が塩酸、硝酸、または、リン酸を含有する水溶液であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
- 前記リン酸含有化合物が、リン酸、リン酸無水素塩、および、リン酸一水素塩からなる群から選択される1以上のリン酸含有化合物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リン酸含有化合物が、リン酸アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸アンモニウムマグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸一水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、および、リン酸一水素カルシウムからなる群から選択される1以上の化合物であることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
- 前記リン酸含有化合物が、リン酸二水素塩であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リン酸含有化合物が、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、および、リン酸二水素カリウムからなる群から選択される1以上の化合物であることを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
- 前記アルミニウム含有化合物が、アルミニウム単体、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、および、硫酸アルミニウムからなる群から選択される1以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
- 前記第2の水溶液を加えた後の第1の水溶液が、硫酸成分とカルシウム成分とを同時に含有しないことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
- 前記生成したリン酸アルミニウムを母液中で熟成させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
- 前記第2の水溶液が、アルマイト処理によって排出されるアルミニウム含有アルカリ廃液を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リン酸含有化合物が、下水汚泥、農業廃水汚泥、家畜糞尿、または、これらの焼却灰またはばいじん由来であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
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